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電力自由化論は東電極悪論から誕生した

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反原発・再エネ派の飯田哲也氏が福島事故のあとに、再エネと同じくらい、熱を込めて語ったのが、発送電分離、俗に言う、電力自由化です。 

飯田氏は、原発批判と変わらないくらいの分量で、事故原因は東電の地域独占システムが遠因にあり、それは国が国策で原子力を導入した見返りなのだ、と説きました。 

そして、発電、小売りまで電力会社が一貫して占有しているから、再エネのPPS(新電力会社)が不当に差別されているのだ、とします。 

この電力の安定供給のために生れた垂直統合(インテグレーション)を、飯田氏は江戸時代の幕藩体制になぞらえて説明します。

「日本は、こんな時代後れの封建的地域独占体制が残っているからダメなんだ。ドイツを見習え!」というわけです。

そして、東電は自分の原発からの電気をメーンにしているために、PPSは差別されて不当にクソ高い送電託送料を吹っ掛けられているから広まらないのだ、としました。

東電はただの戦犯ではなく、再エネ拡大を阻むとんもない極悪な会社だとしたのですね。

今でもこの「気分」は、汚染水問題などで形を変えて、反原発派の中にしっかり生き残っています。

そして、こんな戦犯の東電がアグラをかく電力システムを、ヨーロッパのように電力自由化してしまえば、電力料金がやすくなり、再エネ比率がグングン伸びて、めでたくドイツのような脱原発国家ができるんだ、と叫びました。 

3b17e6dcfa41f487fcc97368967244f3(写真飯田哲也氏。読みは「テツナリ」です。肩書を見ると、バリバリの原発村出身者だと分かる)

つい、「叫ぶ」と書きましたが、あの人、言い方がもの柔らかなんで(顔も柔らかそうだけど)、お茶の間に浸透しちゃったんですね、この脱原発=電力自由化論。 

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(写真 福島事故後のドイツの反原発デモ。デモの人たちはエネルギーヴェンデと呼ぶ再エネ政策を支持している)

この論法は国民に、大いに受けました。

飯田氏が、東電処罰意識に論拠を与えただけではなく、「原子力社会」(実際はそうでもないのですが)に替わるエネルギー源を示し、その上に立って、新たな社会も構想しているように感じられたからです。

まずは、なんと言っても怒りです。この怒りなくしては、その後の電力自由化論は不発に終わったことでしょう。

ま、こんなかんじです。当時を再現してみます。

東電こそが悪の総本山だ!独占の上にのさばったエリート様達が、地震が来るのを分かっていたくせに、手抜きしやがって、あげくに地震で原発が壊れるわ、津波をかぶって冷却系がショートするわで、原発がボンっかよ。 

許せねぇ、東電!死ね、東電!くたばれ、東電!東電解体!

よくも悪しくも、これが事故直後の「民意」でした。気分はわからないではありません。 

事故調報告書が出る1年以上前であり、当時の福島第1でいかなる戦いが繰り広げられていたのか知らなかった私にすら、東電へのたぎるような怒りがありました。 

6321961450_6800d59828_b(写真 東電本店前抗議行動)

この怒りの気分に、当時「脱原発」と言っていた運動家たちが乗りました。以後、反原発と名を変えた今も、彼らの定番の意見となっています。 

今思うと、まったく度を失った議論ですが、これは非常にうまい議論の仕方でした。 

まず絶対悪として東電を仕立てて、彼らが弁解できないことを幸いに、徹底的に東電ひとりを「悪」に仕立て上げるやり方でした。 

悪いことに、当時の菅政権が、自分の事故処理の失敗やリスク・アナウンスのデタラメぶりを棚に上げて、ことあるごとに東電を敵と見立てたのですから、もう大変です。 

まがいなりとも首相の地位にある人が、「東電は敵前逃亡を企てている。オレはそれを必死に止めているんだ」とアジったものですから、もう東電への怒りが大爆発しました。

今でこそ「原発右翼」呼ばわりされている(爆笑)私自身、2011年初夏には、仲間たちと売れなくなった作物をダンプ゚にでも積んで、東電本店前にブチまけてやるかと、あながち冗談でもなく考えていたほどですから。 

しなかったのは、それを一足先に共産党系の人たちがしてしまったために、一緒にされたくはなかっただけの話です(苦笑)。 

とまぁ、今だから冷静に語れますが、当時の混乱した状況で、飯田氏たちが作り出した東電極悪論を背景にして、この発送電分離・電力自由化論が出てきたのだ、ということを思い出しましょう。 

次回に続けます。 

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コメント

あの当時、東電は日帝・ナチスと同列の絶対悪でしたね。
潰した後に電力供給はどうするの? と、最初から懐疑的に思っていました。

あの頃の自分の苦労なんて、ガソリンと計画停電くらいでしたか。
それなりに深刻ではあったけど、管理人さんに比べたら全然でした。

投稿: プー | 2015年5月11日 (月) 11時38分

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