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2015年6月19日 (金)

歪んだ個別的自衛権しかない国の集団的自衛権論議

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瀬戸内寂聴さんが国会デモで、「戦争がやってくるぅ」と絶叫したそうです。 あのぅ、余計なお世話かもしれませんが、ご高齢ですし病み上がりなのですから、無理せずとも。

「『戦争にいい戦争は絶対にない。戦争はすべて人殺しです。人間の一番悪いところ。二度と起こしてはならない」「若い人たちが幸せになるような方向にいってほしい』と語ると、大きな拍手が起きた」(朝日新聞6月18日) 

寂聴さんたちは特定秘密法の時も、「物言えぬ軍国主義の戦前が来るぅ」と言っていたような気がしますが、ナンデモしゃべれるようで、ま、いいか(笑)。 

寂聴さんの仰せのとおり、「戦争は人殺し」だから、二度と起きない、仮に起きてももっとひどくならないように、安保法制を考えているんですよ。極めて不十分ですがね。 

20150618220534jyakutyo(写真 国会前で演説する寂聴さん。「戦争は人殺しだ。悪だ」という極度の単純化で世の中を見れるのだから、長生きできたのでしょうね。さすが大杉栄を美化した人だ。文学者や映画監督ってほぼ皆この調子。こんな戦争=悪、平和=善みたいな子供のような世界観で、よく芸術が作れると感心する)

さて、今、審議されている安保関連法制審議は、この4つがシナリオとして提示されています。 

①公海上で平行して航行する米国艦船の防護
②米国へ跳ぶミサイルの迎撃
③PKOなどでの多国籍軍への駆けつけ警護
④海外後方支援内容の拡大

 先日の党首討論で、岡田民主党代表がこのようなことを言っていました。 

「岡田氏は『周辺事態は個別的自衛権で十分に対応できる』と改めて強調した」(日経6月17日)

 いうまでもなく、集団的自衛権は「ある、ない」という解釈の問題ではなく、当然それを前提にして国を存立させている国家の自然権です。 

今更「そんなもんはない」といったら、国際社会がたまげます。否定している国は、世界中どこにもないからです。すべての国が、当然所与のものとして考えています。 

第一、日本人が大好きな国連自体が集団安全保障体制ですから、「ない」なら、常任理事国など百年早い、国連に加盟している意味そのものすら疑われます。 

岡田氏がいうように、個別的自衛権で一切が解決するなら、日本は日米同盟も国連も脱退して、個別的自衛権、すなわち一国での防衛のみで安全保障すべてを立てねばならなくなります。 

具体的にはこういうことを指すと国際社会では考えられています。

いままで米軍に依拠していた空母、長距離輸送機などの攻撃投射能力を獲得し、敵国深く侵攻する能力をもつ航空兵力、弾道ミサイル、原子力潜水艦、そしてなにより核の笠を自前で持たねばなりませんから、そのための核兵器開発もせねばなりません。 

そのために、専門家は今の5倍の軍事予算が必要だと計算しています。 

岡田さんも、ずいぶんと危険なことをおっしゃったものです(笑)。おーい朝日さん、ここに「軍国主義者」がいたぞォ! 

Hqdefault(写真 岡田代表「私には理解できない」なら黙っていたら、恥をかかないで済むのにね。正直、この人の質問や党首討論を聴くと、東大卒ってみんなこんなていどかと思う)

さて問題は、こんな低次元な所にはありません。 

日本は個別的自衛権で「できない」ことを、集団的自衛権でやろうとしているのです。 

①のシナリオで米国艦船への共同反撃とありましたが、現法制下では日本は自衛艦のみならず海保、いや民間の船舶が撃たれた場合にも反撃できないのです。 

というのは、自分が撃たれた時には正当防衛で撃ち返すことができますが、自国の艦船が撃たれた時には、総理大臣の防衛出動が発令される前にはできない決まりがあるのです。 

Img_2(写真 2012年、自衛艦に「護衛」される辻本清美さんのピースボート。大爆笑な風景である。この後、9条の祟りにあって、漂流した)

ちょっと分かりにくいかもしれませんから、例をあげましょう。 

たとえば、ピースボートが国籍不明の艦によって攻撃され、撃ちまくられている場所に自衛艦が遭遇したとします。 

銃撃によって、デッキは血の海、撃ち殺された女子供が折り重なって入るのが見えます。船も黒煙を上げて傾いています。 

ピースボートからは、「救助してください」という辻本女史の悲鳴にも似た通信が入ってきます。 

さて、この状況で自衛艦は、その正体不明の艦に反撃できるでしょうか? なお、これは公海上だけではなく、日本領海内でも同じだとお考えください。

当然、人道的にもすべきだろうって、ブーっです。残念、できないのです。 別に、辻本さんだったからではありません。

漁船でも、外国の艦船でも国籍は問いません。自衛隊は「あるもの」をもらうまで、反撃できないのです。

それは「防衛出動」です。定義を押えておきます。

「防衛出動とは、日本に対する外部からの武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態に際して、日本を防衛するため必要があると認める場合に、内閣総理大臣の命令により自衛隊の一部または全部が出動すること」(Wikipedia)

根拠法は自衛隊法第76条です。これも見ておきます。

「■自衛隊法
防衛出動
第七十六条
 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第九条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない」

自衛隊は武力行使するにあたって、総理大臣の命令を受けねばなりませんが、これは国会承認も伴っています。

ですから、非常に時間がかかります。そのような迂遠な手続きがいる理由は、先日の「9条の国の警察的軍隊」の記事で書いた、日本独特のポジティブリスト方式のためです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-1c47.html

ポジティブリストは、和訳で「根拠規則」と言います。ネガティブリストは、「禁止規則」と訳します。

自衛隊は「これだけはやっていい」という根拠規則がない限り動けません。この場合、総理大臣の防衛出動で「やっていい」と明示されるまで、「やってはいけない」のです。 

日本以外のすべての国では、自国軍の交戦規定は、国際法に則っています。国際法とは主にハーグ陸戦条約とジュネーブ条約などの歴史的慣習法のことです。 

このように、寂聴さんなら「戦争は人殺しです」で、思考が停止してしまっていいのですが、現実にはその先まで考えた「人殺し」をデタラメにしないための抑制のルールが必要なのです。それが交戦規定・ROEなのです。 

しかし、このROEが自衛隊には欠落しています。別に政府はいらないと言っているわけではなく、例の憲法がらみで交戦権を否認してしまったために、ややっこしい議論を恐れてうやむやにしていたのです。

なんせROEなど作ろうもんなら、国会が「人殺しの法律を作っている」「戦争法ハンターイ」という声に包まれる国ですからね。

C0046416_853298(写真 ほぼ丸腰で派遣されたPKO部隊。帰国後に自殺者がでたのは当然である。)
追記 PKO帰還隊員の自殺者が5倍と報じた東京新聞は、誤報を認めましたので上のキャプションは訂正します。http://gohoo.org/15062501/

のROEなくして、外国にPKOなどに派遣したんですから、なんともかともひどい国ですよ。

イラクではヘルメットをかすってロケット弾が飛んできても、一切の反撃は禁じられていたそうです。帰国後、精神を病む自衛隊員が多かったそうです。

今頃になって、野党が自衛隊員の「安全」を突然心配し始めたというのは、なんなんでしょうね(苦笑)。

それはさておき、自衛隊法の第90条の「自衛官の武器使用」を見ます。
自衛官に認められた武器使用規定 

「■自衛隊法
第九十条  第七十八条第一項又は第八十一条第二項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、前条の規定により武器を使用する場合のほか、次の各号の一に該当すると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」
 

法律文なのでかったるい表現で申し訳ないのですが、ここで言っているのは、以下の条件以外では武器使用は認めない」ということです。 

ではその条件です。これがまたまわりくどいので、武器使用を認めているケースのみを抜粋します。 

「一 他にこれを排除する適当な手段がない場合 
二  他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
三  暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合」 
つまり、「明白な危険があり」あるいは「高い蓋然性があり」、なおかつ、「武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合」だけは反撃していいということです。
 
逆に言えば、自衛隊法は、「明らかな身の危険を感じるまでは、武器を使ってはならない」と言っているわけです。
 
これは警察官の職務執行法ととまったく同じです。というか、警察官職務執行法第7条をそのまま自衛隊法にしてしまったのです。
警察官職務執行法
「■警察官職務執行法
第七条
 (略)但し、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三十六条 (正当防衛)若しくは同法第三十七条 (緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない」
「刑法第37条(緊急避難) 
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為(以下略)」
F201312171152471301413081(写真 国際法すらよく知らないで、マリに派遣された中国軍PKO部隊。日本と違ってこちらは、危なそうな奴らが近づいたらすぐにぶっ放す気満々)
長々と書きましたが、これがいわゆる刑法の「正当防衛」条項と呼ばれるものです。自衛隊法は、この刑法第37条の「正当防衛」条項に根拠を置いています。
では改めて、最初のピースボート襲撃事件の情景に戻ります。自衛艦は、自分に攻撃を向けられていない以上、「正当防衛」にはあたりません。
この自衛艦の艦長は、防衛出動が下される数時間は、指をくわえて民間船が沈むまで見ていなければならないのです。
しかし、なにぶん遠く離れた公海上での出来事だと、日本にとっての不正急迫ではないので、出ないかしれませんね(涙)。
まぁ、沈んだ船からの救助くらいは可能でしょうが。それにしても非人道的の極みです。
Pn2007102901000801___ci0003
(写真 インド洋上給油作戦。日本は非常に各国海軍に感謝されたが、万が一の時には共同で反撃かできなかった)
このポジティブリストで、事細かに任務は指定されています。
例えばテロ対策特措法によって、インド洋に行って海上給油の任務が与えられた自衛艦は、「任務は給油である」と命じられた場合、それ以外のことはできません。
仮に、給油をしようとしていた外国艦船が攻撃を受けても、例によって「オレ第9条の国だから、助けられんもんね」と言うしかありませんでした。
もちろん、漁船がやられそうだろうと、民間船が沈められようとしても、ポジティブリストにない以上、「オレ、9条の国の軍隊のようなものだもんね。許してね」と言うしかなかったわけです。
もちろん、他国はそんな複雑な日本の特殊事情は知るわけがありませんから、何も助けようとしないわが国の「軍隊のようなもの」に怒り心頭の発したことでしょう。そういう状況がなくて幸いでした。、
なんともスゴイ自衛隊法を作ったもんです。縛っておかないと、暴れ出して、また中国侵略のひとつもしちゃうと、妄想したのでしょうがね。
頼まれても自衛隊は中韓には行きませんって。万万が一しそうだったら、私40年前の反戦少年に戻って戦います。
自国の艦船の攻撃に対してなにもできないわが国が、米艦との共同反撃ですって。笑止です。
この法制が通ると、海自は僚艦が攻撃された場合は眼をつむり、米海軍がやられそうになれば助けられるという大笑いなことになるわけです。
まずは、今ある自衛隊法のおかしさを洗い出してから、集団的自衛権というより高度なテーマに取り組むべきではなかったのでしょうか。
まずは、そこからです。
お断り 執拗に非難のコメントか入ってきます。それも全部HNなしです。
おそらく同一人物です。
なんとかの一つ覚えのように「日本にもROEあるぞ」という内容です。
日本にも類似のものは、そのつとど作っていますが、諸外国のようなものは日本に存在しません。
自衛隊の運用方法ででなんとか凌いでいる状況です。
それはポジティブリストという根幹かあるからですす。
そこを問うたのがこの記事ですが、佐藤議員がコー言った、アーいったばかりです。こんな古い記事に対して答える義務はないので、このコメント欄は閉鎖します。
(2015年6月15日)

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