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2015年6月27日 (土)

土曜雑感 グレーゾーン対処について考えてみる

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今回の安保法制審議は、ミニ迷宮となりかかっています。 

もちろん、「徴兵制がやってくる」みたいなヨタを平気で言う野党第一党と、対する与党側の驕りもあります。

しかしそれだけてはなく、アレもコレもと詰め込みすぎで、様々なことがテンコ盛りになっているせいもあるかもしれません。

中には集団的自衛権と直接関係ないものも含まれてます。その代表例が、グレーゾーン事態への対処です。 

こんなものは、さっさと安保法制と切り離して提出しておくべきでした。

ちょっと解きほぐしておきましょう。 

グレーゾーンというくらいですから、白か黒か、分からないビミョーな状況です。 

今まで自衛隊は、正面玄関から正規軍が、「どうも失礼。侵略を始めさせて頂きます」と宣言して来るケースを想定していました。 

鎌倉時代の合戦よろしく、「やぁやぁ、われこそは〇〇国なり。いざ、手合わせを」というケースを考えていたんですね。 

これは昨日もお話した、60年代から70年代にかけてのソ連を想定した冷戦期モデルです。 

ところが、今とかくアジアを不安定化させている中国、あるいは北朝鮮は、「人民戦争方式」といって、「オレは正規軍だぞ」という格好ではまずやってきません。

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中国というのは実にヘンな国で、毛沢東がゲリラ戦争で勝利したために、兵力224万(日本の10倍)を越える強大な軍事大国になっても、ゲリラ的な裏技が大好きです。 

まずは多数の漁船に特殊部隊を乗せて、「わしらは漁民ですら。台風で避難させて下され」とか言いながら、尖閣や離島に入り込んできます。

表面的には民間人のように見せる、これがキモです。 ベトナムやフィリピン、インドネシアなどだと、不法侵入した中国漁船を爆破することすら厭いませんが、他ならぬわが国だけは違います。

20150522020113sdfo1(写真 インドネシアによって爆破された中国漁船。15年5月20日)

やって来られる側は、漁民だと思って、海保や警察が対処すると、バリバリと機関銃でやられてしまうことになります。

南シナ海では、ベトナムとフィリピンがさんざんこの「漁民のふり」でやられて、いつのまにか岩礁が埋め立てられて海軍基地や飛行場ができてしまいました。 

E61d4d38(写真 南シナ海で建設中の中国軍基地。フィリピン外務省4月18日。中国は軍事目的だと認めた)

ちなみに、うちの国ときたら、海岸までが海保、一回浜に上がったら警察と縄張りがあって大変でした。 

え、自衛隊はどこに出てくるかって。はい、どこにも出られません。もし、仮に近海に海自の艦艇がいたとしましょう。

世界指折りの練度と装備を有する海自は、地団駄踏みながらひたすら眺めているだけです。 

目の前で警官が撃ち殺されようと、海保が巡視船ごとロケット弾で沈められようと、住民がバタバタ殺されていようと、ただジっと傍観しているしかありません。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/1-836a.html#comment-128097179

自衛隊法には、自衛隊の武器使用を、おそらく世界で唯一だと思いますが、正当防衛以外で使用してはならないと定めています。

その正当防衛も、自分が弾を食らって死んでからの話となります。それは自衛隊法第90条があるからです。 

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(図 防衛のプロが語る15事例のリアリティ」http://kenpou-jieitai.jp/symposium_20141005.html

そして、先ほどのような目の前で覆面団体がやりたい放題の狼藉を働いている場合すら、自衛隊法第82条の海上警備行動があって初めて反撃が可能になります。(陸自の場合は防衛出動)

それ以前に発砲して相手を射殺すれば、なんと殺人罪で告訴されて、最高死刑になるかもしれません。

防衛出動を発動できるのは、首相ですが、ひとりでは決められません。閣議了承がいるのです。

「自衛隊は、これらのケースに治安出動や海上警備行動などで対処するが、発令には閣議決定が必要で、閣僚を招集して閣議を開いている間に事態が悪化するおそれがある。現在も閣僚の署名を順次集める「持ち回り閣議」の方式があるが、閣僚が地方にいる場合やグレーゾーン事態が深夜や未明に発生した場合、迅速な決定ができないと指摘されてきた」(産経5月15日)

防衛出動は、首相ひとりで決められず、閣僚の署名もいりますから、夜や地方にいたらどーすんのとか、まるで鏡の国の話です。

その上に、国会承認も必要です。今の岡田民主だと一刻を争う事態にも、「慎重に見極めてから」と言いかねません。

辻本女史など、「そんなもの認めると徴兵制が来る」とでも言うのてしょうな。寂聴さんは「戦争は最大の悪です」とでものたまうのでしょうか。ホントに言いそう。

そして、翁長知事ときたら徹底して非協力を貫くでしょう。ああ、ユーウツ。

やや脱線しますが、現在、集団的自衛権を行使して米国艦船が共同行動中に攻撃を受けたら、即座に反撃できるように法整備しようとしています。

しかし、仮にこの場に海保の船がいたらどうでしょうか。

新たな法改正によっても、自衛隊は、米軍がやられた場合には反撃できますが、海保がやられた場合は反撃できません。防衛出動(海上警備行動)が下されるまでは、ただやられいるのを傍観しているだけです。

まぁ、米軍が即座に反撃してくれるから、いいのか(苦笑)。いかに現行の自衛隊法が歪んだ法律か、おわかりになったでしょうか。

この防衛出動を電話などを使って、もう少しスムーズにできるようにしようというのが、新しい「戦争法」です。

脱力するほどあたり前のことで、なぜ今更と言いたくなるようなことではありませんか。

本来は、新しい領海警備法体系を作って、このようなグレーゾーン事態に事態に対応するべきです。

また、今まで作られることもなかった交戦規定(ROE)も作るべきでしょう。しかし例によって、それには公明党までもが反対だそうで、提出すらされませんでした。

本気で政府は、日本国民を守る気があるのだろうか、と怒りすら感じます。

「グレーゾーン事態をめぐっては、政府・自民党は当初、法改正による武器使用基準の見直しを求めたが、与党協議会で難色を示した公明党に配慮する形で見送り、現行法内での「運用改善」で合意した」(同)

とまぁ、いつもながらの「運用改善」、つまりは現場指揮官の裁量に丸投げしてしまうということのようです。

自衛隊法の欠陥が少しずつでも改善されていくことはいいことには違いありませんが、あまりにもわずかの現実対応でしかありません。

首相が先日言ったように、もう改釈が限界点に達しているのは確かです。

「戦争をさせない」という言い方でなにか批判したつもりになっている護憲勢力の人にお伺いしたいのですが、このような自国民を守ることもまた「戦争は悪」ですか。

といっても改憲などは、事実上無理のまた無理ですから、来世紀までわが国はこの調子を続けるつもりなのようです。

沖縄マスコミの皆さんは、年がら年中、「日本軍は県民を守らなかった」と言っているのですから、今回の法整備に対して「これで県民が守れるのか!」と怒るべきではないでしょうか。

なお、分かりやすくするために、この記事のシナリオでは海自でしたが、実際には離島防衛に対しては陸自が投入されるでしょう。

いずれにせよ、先島諸島(宮古・八重山)は、もっとも緊張が高まっている地域なのにもかかわらず、防衛の空白地帯です。

本来は、ここに駐屯地を持つべきですが、今の翁長知事は「新基地反対」と言いそうでです。

■写真 ホウズキの花です。もう青い実がつきかかっています。

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