基地移設賛成・反対の裏で進行する、統合リゾート計画
昨年の知事選で、本土、地元を問わず、マスコミがまったく報じなかったことがあります。
それは、この知事選で選ばれた知事こそが、沖縄における大型建設ラッシュの実権を掌握するとです。
昨年11月の知事選において、菅官房長官は仲井真氏に::こう言ったといわれています。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを誘致したいと沖縄県が申し入れています。私も関係会社と会ってきました」(森巧『総理の影』sapio 2015・6による)
少し説明します。
USJ誘致は、単なる大型テーマパーク施設の誘致だけの問題ではありません。
それは、USJという超弩級の人気テーマパークを中心として、IR(カジノ、会議、研修等の複合施設)やMICE(大型会議・研修・宿泊施設)、そしてそこに集客した観光客を南北に運ぶ本格鉄道などによって構成されています。
沖縄県は、翁長知事になってこのような「統合リゾートに関する検討」という文書を作っています。
●沖縄県 I統合リゾートに関する検討について(PDF:442KB)
「沖縄県内では、経済界を中心にカジノの導入を求める意見があり、平成13年には、経済団体が国や県等に対してカジノ導入に関する要請を行いました。
また、平成14年に国が策定した沖縄振興計画においては、質の高い観光・リゾート地の形成に向けた施策展開の中で、「沖縄観光をさらに魅力的なものにするため、夜間や、雨天時及び季節を問わず楽しめるショービジネスをはじめとした多様なエンターテイメントづくりを促進する。」と定められました。
沖縄県では当該計画に基づく取組の一環として、その当時国際観光におけるグローバルスタンダードになりつつあり、時間、天候、季節を問わず楽しめる新たな観光資源としてカジノ・エンターテイメントに着目しました」
ここには、はっきりとカジノ(IR)が、沖縄の「統合リゾート計画」の中心になると記されています。
現在、候補地として、北海道(:小樽・苫小牧)、千葉(幕張沖人工島)、 東京(お台場)、神奈川(山下埠頭)、大阪:(夢洲)、 長崎(ハウステンボス周辺)、 宮崎(:シーガイア)、沖縄(浦添市の米軍キャンプキンザー? 名護市のネオパークオキナワ?)などが候補に上がっているそうです。
政府はこれらの中から3ヶ所に絞る方針と伝えられています。
(写真 大阪カジノ予想図・間違って沖縄コンベンションセンターの画像を掲載してしまいましたので、差し替えさせていただいます。もうしわけありません。ご指摘ありがとうございます)
さて、この「統合リゾート」の目玉はもうひとつあります。それがMICEです。
同じくこの県のレポートには、こうあります。
「平成22年度には、国会の超党派議員で構成される国際観光産業振興議員連盟での議論の進展を踏まえ、日本における統合リゾートが民設民営型になるとの前提で、「沖縄統合リゾートモデル」を検証し、ターゲットによるバリエーションとして、ビジネス層を中心とするMICE誘致型とファミリー層を中心とするアミューズメント・リゾート型を設定するとともに、それぞれに、立地によるバリエーションとして、郊外リゾート型と周辺施設連携型のモデルを設定し、計4つのモデルからなる「沖縄統合リゾートモデル」を再構築しました。また、各モデルごとに経済効果を試算し、アミューズメント・リゾートの郊外リゾート型が最も効果の高いモデルとなりました」
つまり、ファミリー層には郊外型アミューズメントとしてUSJを、ビジネス層には那覇から近いMICEを、そして外国人観光客にはカジノを想定しているわけです。
そしてそのために、今まで貧弱な空港施設しかなかった那覇空港に第2滑走路を増設し、さらに鉄道がなかった本島に南北鉄道を建設するという計画までも付帯しています。
身も蓋もない言い方をすれば、この最大のターゲットは中国人観光客です。
だから、翁長氏氏は就任早々の「宗主国挨拶」で、尖閣と辺野古移設阻止を貢ぎ物にして、福建-那覇航空路を実現したかったのです。
中国人観光客を福建-那覇空路で呼び込み、USJで存分に遊んでもらった後に、カジノで金を落させ、返還跡地のイオン・モールなどの大型ショピングモールで爆買いをさせた後に、さらに南北鉄道でやんばるの海洋博記念公園にまで足を伸ばして一泊してもらう、というところでしょうか。
言うまでもありませんが、こんな構想は、県が独自に作れるものではなく、政府が構想段階からバックアップしています。
菅氏の構想は、これに具体的担保を与えていました。
菅氏は13年8月の盆休みに、お忍びで沖縄を家族「観光」しています。そのとき、名護のホテルで秘かに会ったのが仲井真氏でした。
その時、仲井真氏と同席したメンツが、なかなか興味深いものがあります。
まずは国場幸一氏です。沖縄でこの人の名を知らないものはいないでしょう。県内最大手ゼネコンの「国場組」の社長にして、県商工会議所連合会会長です。
下図の県内建設業ランキングをみると、1位が一族から国場幸之助氏を議員に送り出す国場組、第3位に呉屋氏の金秀、第8位に下地幹郎氏(鳩山政権閣僚)の大米建設が入っています。
また第2位沖電工と10位の 沖縄プラント工業は沖縄電力関係で、仲井真氏の地盤でした。
沖縄の建設業と政界との強い結びつきが分かります。
この国場一族を語りだすと、そのまま沖縄戦後史になるといわれるような一族の、目下の頭領だと思えばいいでしょう。
これに「琉球放送のナベツネ」こと小禄邦夫氏でした。
(写真 小禄氏。もうなんだか、そのあのモノスゴイ迫力。眼があっただけで謝っちゃいそう)
小禄氏は、仲井真氏と共に「ウェルコム沖縄」を立ち上げて、離島のデジタル化を進めた間柄で、当時総務大臣だった菅氏とその時に接点を持ったとされています。
この菅・仲井真・国場・小禄の四者会談で、菅氏が提示したのが、例の「進行予算3460億円という法外な振興予算でした。
ヤボな説明は不要でしょう。もちろん移設の見返りです。
この振興予算は1671億円の一括交付金を含んでおり、これは沖縄県が何にでも使えるという予算です。
これをUSJやカジノの誘致、あるいはMICEに当てて、さらに公共事業費1417億円で南北鉄道建設に当てたらたらどうなのか、というのが菅氏の腹案であったと思われます。
これは空約束ではなく、後に上京した仲井真氏に対して満額回答を与えて、その時に仲井真氏が吐いたとされる「有史以来の予算。基地関係も前に進む予感があって、いい正月になる」という言葉でした。
この慎重な仲井真氏とも思えない不用意な言葉は、地元2紙に揚げ足を取られて、「金で沖縄を売った仲井真」というキャンペーンを張られることになります。
このような大型計画が目白押しの中で、経済界の中で仲井真降ろしの旗を振ったのが、かねてから仲井真憎しを公言していた「かりゆしグループ」の平良氏であり、国場組の下請けの苦渋を呑まされてきて、国場にはひとかたならぬ恨みを抱く金秀の呉屋氏でした。
この両人は、このまま進行すれば、この巨大利権は、国場組を中心とする親自民党勢力に独占されると危惧しました。
これを仲井真ごとぶっ潰し、翁長氏を知事にすることで、自らで独占するというのが、彼らの目論んだ下克上の絵図でした。
かくして、彼らは翁長王朝を夢想する野心家・翁長氏を御輿に乗せて走り出すことになります。
「辺野古の美しい海」がどうたらなどという台詞は、恥部を隠すイチジクの葉でしかないことが、少しお分かりいただけたでしょうか。
長くなりましたので、次回に続けます。
※USJがUFJになっていました。すいません。銀行かって。行ってみたいな、大阪のホグワーツ城。
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コメント
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おはようございます。
変換ミスが
那覇空港の第二滑走路の増設のくだり→本島に南北鉄道を「解説」と建設のランキング表の上、沖縄の建設業と政界との「協力」な結びつきの箇所です。
読まれましたら、このコメントは消してください。
投稿: 多摩っこ | 2015年6月 3日 (水) 08時40分
ありがとうございます。最近、老眼で(号泣。転換ミスの山。助かります。
投稿: 管理人 | 2015年6月 3日 (水) 08時47分
沖縄を統合リゾートにして経済的自立を促進する、という考え自体は良いと思うのですが。
これを日本国としてやるか、中華の政治経済に乗っ取られるのかでは雲泥の差がありますね。
AIIBがやってやる! とか言い出すかも。
金秀建設に仕事が回ってくるかどうか。
投稿: プー | 2015年6月 3日 (水) 08時58分
はじめまして。
毎回楽しく読ませていただいてます。
転勤で沖縄に越して3年目。本土とのギャップに戸惑いつつも、このサイトも参考に沖縄の人の本音の部分を感じながら生活してます。
さて、「沖縄カジノ予想図」とされてる写真ですが、これはシンポジウムが開かれた宜野湾市の「沖縄コンベンションセンター」の写真です。
カジノ予想図ではありませんのでお間違えなく。
投稿: 宜野湾在住の内地民 | 2015年6月 3日 (水) 15時08分
ありがとうございます。沖縄IRの予想図はまだありませんでした。大阪のそれと差し替えさせていただきます。ご指摘ありがとうございます。
皆様、今後とも間違いは遠慮なくご指摘ください。誠実に対応させていただきます。
投稿: 管理人 | 2015年6月 4日 (木) 01時38分