山本太郎議員の抱腹質問
前からそう思っていましたが、今回の国会質問を聞いて、内田樹先生ふうにいえば「反知性主義」も、とうとうここまできたかと失笑しました。
※http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150730-00000005-jct-soci
山本議員は国会で、こう質問しています。
「(北朝鮮、中国、ロシアが弾道ミサイルで原発を狙ったとして)今回の法案、中身、仮定や想定を元にされてないですか?」「都合のいいときだけ想定や仮定を連発しておいて、国防上ターゲットになりうる核施設に関しての想定、仮定できかねますって、これどんだけご都合主義ですか」(J-CASTニュース 7月30日)
(写真 国会で追及する山本議員。暑いんだから握り拳を上げんなよ。「二代目辻本」の襲名も近い。支援団体のコワイ人たちとはうまくやってるかい)
この人、「国際紛争については軍事力でなく外交力で対処すべきだなどと自党の対案を述べた」(同)そうですが、原発に弾道ミサイル撃ってくるような国と、どうして「外交交渉で対処」できるんでしょうかね(爆笑)。
まぁいいか、どうせ深く考えちゃいないんだから。
この山本太郎議員のシッチャカメッチャカの質問は、中露北が発射する弾道ミサイルの脅威も、原発の安全性も、同じ器でワーワーやるっていう手法で、こういうタチの悪いやり口をアジ演説と呼びます。
シールズのお兄さんたちが、国会前の宣伝カーの上でやっている奴ですね。
山本議員は、「ほーら、答えられないだろう」と大喜びしていたみたいだが、まぁそりゃ、まともな大人だったら答えられないよ。
呆れたことには、「ツイッターや山本氏のフェイスブックには、賛辞も相次いでおり、「分かりやすくていい質問!」「国防上の弱点を指摘したものでみごとだ」「そもそも原発を抱えて戦争なんてあり得ない」といった声が書き込まれた」、そうです。類は友を呼ぶ、か。
田中規制委員長なんかは、まじめな学者だから、「その時の原発の放射性物質の蓄積状況次第で・・・」なんて答えていましたが、「それは国防上の問題なんで、わたしゃ知らん」と言い返せばいいだけです。
首相も答えにくいでしょう。だって、北の弾道ミサイルの脅威なんて、はっきり言って、ほぼゼロですからね。
ただし、「ない」と言えば、待ってましたとばかりに、今の集団的自衛権がらみで、じゃあやっぱり日米安保条約なんていらないんだと短絡するアホが出ますからね。
そうすると、審議の迷路にまた踏み込みかねない。だから答えるのが難しいのです。
安倍氏は答えにくいでしょうから、私が代わって言っておきましょう。現実的には、「川内原発に北のミサイルが当たる」可能性はありません。
なぜかと言えば、たしかにi北の弾道ミサイルの射程内には入っていますが(上図参照)、北に当てるだけの精密誘導技術がないからです。
世界の底辺技術国の北朝鮮の弾道ミサイルは、600㎞以上飛んだ後に、照準点とズレる距離がなんと50㎞です。
1996年に台湾総督選挙で、中国が発射したM9ミサイルは、短射程にもかかわらず、500mハズれていました。
北朝鮮の弾道ミサイル誘導技術は、中国よりはるかに劣っているとみられていますから、たぶん川内原発を狙えば、錦江湾あたりに落ちてくると思われます。、
確率論として、数百発撃って一発くらい近くに落ちるていどです。
え、中露はどうなんだって。はい、そんなマネする確率は限りなくゼロです。
北朝鮮は、金正恩という、頭の部品が間違って組み立てられてしまった人が独裁者していますから、まったくないとは言えませんが、中露がこんな原発を弾道ミサイルで狙うという頭のネジがはずれた行為をすること自体、確率ゼロです。
(図 中国原発の設置状況 レコード・チャイナより)
というのは、中国の原発はすべて沿海部に集中しています。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-3aba.html
また原発新規建設数は69基であり、そのうち約4割を占める24基が中国に集中しています。こんな国が、他国の原発を弾道弾ミサイルで攻撃できますか(失笑)。
常識で考えてほしい。山本議員は、現状で原発ゼロのわが国ではなく、中国に対してこそ反原発運動をすべきなんですよ。
中国で事故ったら、北九州と北陸、東北一帯が偏西風で被りますからね。
話を戻します。中国の原発が沿岸に集中していることは、海からの攻撃に極めて脆弱だということです。もう狙ってくれ、といわんばかりです。
おそらく米海軍のトマホーク巡航ミサイルにとって、建屋に当てるのは赤子の手をひねるようなものです。
ではなぜ、こんな場所に設置して平気なのかといえば、米国がそんな攻撃を仕掛けるのは、自分が同じことをやった場合に限られると踏んでいるからです。
ですから逆に言えば、中国が他国の原発を弾道ミサイルで狙うなんてことは、絶対にやるはずがありません。
やるとすれば、もっとスマートにハッキングくらいは考えているでしょうか。これまた、サイバーセキュリティは重要ですが、別次元の問題です。
山本議員が分かっていないのは、核や弾道ミサイルというオモチャは、「使えない兵器」なのです。
使った場合の相手国と、その同盟国(日本の場合は米国ですが)の核報復を覚悟せねばならず、それは現代においては即、全面戦争となるからです。
米国の「核のカサ」によって日本は守られており、中露は共に米国の戦略ミサイル原潜の報復ターゲットになっていることをよく理解しています。
もし、中国が東風などを撃てば、リアルタイムで弾道ミサイル警戒衛星に捕捉され、遅くとも数時間後には、中国近海から飛翔してくる米国の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の姿を見ることになります。
それだけの覚悟があるなら試してみればいいというのが、国際政治です。
米国は、ただしその場合、その発射ボタンに手をかけた国は、100%滅びますよ、その覚悟があるんですね、と問うています。
だから、核兵器やそれを運搬する弾道ミサイルは政治的脅迫には使えても、現実の武器にはなりえないのです。
さらに付け加えれば、万が一この北の暴れん坊将軍様が、暑さのあまり発作的にぶっ放したりしたら危ないので、PAC3という弾道ミサイル防衛(MD)で、そんな気にならないように保険をかけています。
ちなみに、2012年4月に、北朝鮮が東シナ海に弾道ミサイルを発射すると予告した時に、政府は自衛隊のPAC3を、沖縄に配備しようとしました。
すると、地元2紙はなんと書いたと思います。
「このままだと、日米一体となった沖縄の軍事要塞化が進むのではないか、との懸念が強い。沖縄に対するこれ以上の軍事強化は沖縄の為にならない。それは負担軽減の流れに逆行する。標的になる不安を高める」(沖タイ 2012年4月4日)
スゴイですね。現状の沖縄に配備した装備では、弾道ミサイルに対応できず、沖縄県民を守れないから、PAC3搭載イージス艦とPAC3を緊急配備したのです。
それを「沖縄の軍事要塞化をすすめる」ときたもんだ。もう、イッちゃってるね。
これでほんとうに、島に弾道ミサイルが落下して犠牲者が出たりすれば、今度は「日本政府は県民を守らなかった」とやるんでしょうね。
(写真 沖縄平和センターのPAC3配備反対デモ。「オレたちを守るなぁ」という世界一珍しいデモ。オスプレイなら攻撃的性格もないわけでもないからわからないでもないが、PAC3は純粋な防御兵器だ。自分を「守るな」とは正気を疑う)
それはさておき、山本議員の質問にまともに政府が答えなかったのは、こう答えるしかなかったからです。ま、もっとも思っていても、実行できませんけどね。
「山本議員のご質問にお答えします。
議員がご懸念の、北の弾道ミサイルの原発に対する攻撃があった場合の避難についてですが、現行の避難計画と大きな相違はありません。
しかし,山本議員のご懸念の想定に対してましては、さっそく各原発周辺にMD基地を設置すると同時に、常にPAC3搭載イージスを配備する検討に入りたいと思います。
つきましては、応分の防衛費の増額を覚悟ください。
また、弾道ミサイルと並んで、原発に対するゲリラ・コマンドによる攪乱的な攻撃が予想されますので、各原発に警察対テロ特殊部隊SATの分遣隊を常駐させたいと考えます。
同時に、市民の姿をして原発を破壊する破壊工作者が発生することが十分に考えられます。
そのために、今まで過激なテロ活動をした経歴のある過激派団体に対して、これを未然に封じ込めるために、新たな法整備を検討いたします。
そして、さらに大きな視点から今後、他国との共同行動の無制限化、自衛のための相手国の攻撃、空爆と策源地敵領土への侵攻、海上交通網の無制限の共同護衛等が必須となってまいります。
山本議員のご懸念を払拭すべく、このような検討を急ぎたいと考える次第でございます。
以上、山本議員の深いご理解と、力強いご支援に深く感謝いたす次第でございます」
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