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« ギリシャに残された3ツの選択肢 | トップページ | 2度にわたる大戦の反省から生れた、NATOという叡知 »

2015年7月 8日 (水)

ギリシャ離脱を阻む二重三重の縛りとは

035
昨日の記事で、国民投票でのチプラス政権「勝利」以後の、ギリシャの行く末を考えてみました。 

基本的にシナリオは、3プラス1です。 

①シナリオ1・・・ユーロ脱退⇒独自通貨・ドラクマに復帰⇒ユーロ諸国の支援打ち切り⇒財政破綻の爆発⇒銀行業務凍結などの国内経済・社会の大混乱⇒ドラクマ大暴落⇒競争力回復 

②シナリオ2・・・デフォールトしながらユーロ残留⇒緊縮財政要求をはねつけてのユーロからの支援取り付け⇒返済が不可能なので債務は増大する一方⇒「恒常的デフォールト」状態の日常化 

③シナリオ3・・・ユーロ離脱・EC残留⇒「みんなの通貨」(共同通貨)のユーロからは離脱し、ECの枠組みには残留 

④プラス1シナリオ・・・港湾・空港、鉄道などの国有財産売却を担保にして、ロシア・中国から支援を受け入れる 

Img_8294ac28e749bc2035da97e83cb55bc(写真 メルケルに怒られるチプラス。しかし、こんなていどめげるタマではないのはこの顔でわかる。しかしメルケルさん怒るのはわかるが、こんな男でも一国の首相だ。指さしちゃまずいだろう)

国民投票の前には、ユーロ側の「ユーロ残留・緊縮財政受け入れ」プランがありましたが、これは自動消滅しかかっています。 

もっともユーロ側は、粘り強く提案し続けるでしょうが、国民投票の「民意」のお墨付き貰ったチプラスが、もはやイエスというはずがありませんから、シナリオからはずしました。 

①は常識的なコースで、普通はどこの国でも、ここに至ったらこう考えるでしょう。このドラクマ回帰をすれば、今までのようにかなりの確率で債権は圧縮可能です。 

ただし、これは一種の劇薬・取り扱い注意な方法で、銀行凍結、社会保障制度の壊滅、失業者の爆発的増大などの劇症が出ます。 

今まで口当たりのいいことしか言ってこなかった大衆迎合主義の社会主義政権が、この劇症に耐えられるか、です。 

Img_667492ded417ebb7083e450e6355052(写真  勝利を喜ぶギリシャ国民。苦々しくドイツ国民は眺めていただろう。彼らからすればこの恩知らずだ)

では②のデフォールトしても残留はどうでしょうか。腹がたつほと虫がいいのですが、これがチプラスの狙いです。 

いわば金正恩ばりの、瀬戸際戦術のギリシャ・バージョンといえるでしょう。 

「わしら潰れっぞ。ユーロも巻き込んでやる。ワ、ハハ。そうなったらおのれらもヤバイやろ。ざまぁさらせ。ほなら、早く金貸せや、オラオラ」(河内弁で)という脅しです。

これにユーロが屈すると、今年中にあと2回も残されている債務期限もなんのそのです。 

しかしこの方法は、今度はユーロ側の方のドイツ、フランスなどの国内政治がキレる可能性があります。 

この2国は温度差はあるものの、「支援疲れ」が極点に達しつつあり、国内の富がギリシャの底抜けの樽に、これ以上無制限に注がれることを嫌悪しています。 

実際、欧州議会では移民排除・支援拒否を掲げる極右勢力の台頭がめざましく、安易なギリシャへの妥協は、自分の政権の墓穴を掘る可能性が出てきました。 

③のユーロ離脱、EC残留は、一見ありゃ、これ別だったの、という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょうが、はい、別なのです。(欄外参照) 

ヨーロッパ地域には3種類の共同体制があります。 

ひとつめが大枠としてのEC(ヨーロッパ共同体)です。簡単にいえば、ヒト・モノ・カネの自由な往来を実現するために誕生した枠組みです。 

域内は、労働者の自由往来、無関税、そして統一の共同通貨ユーロで運営されています。 

ふたつめが、ECの「みんなの通貨」の部分がユーロです。ECを「ひとつの国」と見立ててECB(ヨーロッパ中央銀行)が、一括して仕切ります。 

ただし、ユーロに入るか入らないかは各国の自由意志ですし、審査基準もそれなりに厳しいものがあります。 

たぶん今のわが国だと厳しいかもね(苦笑)。ギリシャが入ってるだろうって。そう、二重帳簿作って、ごまかして入ったんです(爆)。 

英国やスウェーデンなどは、国内で独自の財政政策の余地を残しておくために、ユーロには未加盟です。 

Natoplanes1(写真  NATO加盟各国空軍のデモ飛行 )

そして三番目が、ECの集団安全保障部門、いわば「みんなの安保」です。これがNATO(北大西洋条約)です。 

これは加盟国に対する攻撃は、すべての国に対する攻撃と考えて対応します。逆に、一国が侵略をしたとすれば、他の加盟国の制裁が待っています。 

そのうちゆっくり論じようと思いますが、私はこのNATOの集団安全保障体制こそが、現代で最も進んだ「犯し犯されない」という平和を維持する最良の手段だと思っています。 

わが国では、その議論の百歩前で、「戦争は悪です」「集団的自衛権は違憲です」「徴兵制が来る」というレベルで止まっているんですから、幼稚すぎて話になりません。

NATOが大学なら、日本の論議レベルは保育園児並です。 

それはさておき、このようにヨーロッパ諸国には、経済的・社会的、そして安全保障体制の共同のインフラが二重三重に張りめぐらされているわけです。

2012061511144756(写真  ギリシャ独自通貨ドラクマ。少年少女は見たこともないかもしれない。絵柄はゼウスだそうで大変に重厚なデザインだが、実はただの紙切れ予備軍にすぎない。いままでこの札でさんざんデフォールトして紙屑にしたために、国民に尻をふかせないためにゼウスの絵柄にした。今回から絵柄をメルケルに替えて、拭きやすくするという噂もある。ウソ) 

というわけで、シナリオに戻ります。この③ユーロ離脱・ドラクマ回帰・EC残留は、①と②の妥協点です。 

いわば渋い大人のセレクトという奴ですが、なにせ相手はおこちゃまのチプラスです。「なんだ、結局①と一緒じゃん」と考えることでしょう。 

しかも、この方法だと、④のロシア・中国との二股外交という手段が使えなくなります。 

というのは、ロシア・中国、なかでもロシアは支援に際して、EC脱退、できるならNATOも脱退することを希望するはずだからです。 

④の外道シナリオは、ユーロ脱退だけては可能になりません。次にECを抜け、そしてさらにNATOすらも脱退せねばダメなのです。

これには、ギリシャ軍部が断固反対するでしょう。NATO装備のギリシャ軍は、脱退した瞬間、部品供給がストップして鉄屑の山になるからです。

ギリシャ軍部と右派は、国を二分する力を持っていますから、これを強行すると、第2次内戦になる可能性もあります。

しかし、チプラスがコミュニストだと知っているオバマは、「ギリシャをECから脱退させるな」と発言しています。

これはズバリ、ギリシャのEC脱退がNATO脱退とシンクロしてしまう可能性があるからです。

それを押してチプラスがやるなら、もはやギリシャ危機はヨーロッパ地域のみならず、自由主義社会全体の問題にまで発展していくことになるでしょう。

 

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コメント

自分は、チプラスは中露のスパイで中露の傘下に入ると予想し、実際国有資産の売却で加速かと思いましたが、軍がいましたか。
クーデター、実際に起こっていますね。

自由主義陣営が軍政支援とか、冷戦時代に逆戻りですね。
仕掛けたのはあっちですが。

ふと疑問に思ったのですが、ロシア側にはギリシャを継続的に支援するだけの余裕はあるんでしょうか
いや、ギリシャという地政学的要衝を手中に収めるチャンスですから、何が何でもという構えで来るだろうとは思うのです。ですが、例えば軍。どこぞのウクライナよろしく武器供給が行われたり、ロシア軍が入ったりしないのでしょうか。ロシアにギリシャ軍部を納得させられるだけの何かがなければ片手落ち感がすごいのですが

教師志望さん、プーさん。一回私のお答えを書きましたが、明日の記事に加筆してアップすることにしました。よろしくどうぞ。

その大学レベルのNATOが目の前で崩壊するんだから世話ねーだろ
知識に関してはあんたもトーシロ、幼稚園児と一緒じゃねーの
金を出すのは渋るくせに、じゃあ戦争のときはさらに大事な命は差し出すと思うのか
これを信じるからアホだと思うわ、金は出さないけどお前と一緒に戦ってやるよと言うんだよな?あんたwお気楽だね

ギリシャの映像をみると、コジキの様なヤツは見当たり
ません。新しい大型スクーターやら乗ってるし、オネー
サンは化粧・ファッションは念入りだし。私の住む日本
の地方都市は、もっと地味でビンボー臭いですわ。

ドイツとギリシャは、自由主義陣営という安保上の最後
の絆だけで繋がっている。TOM&JERRYみたいにずーー
と今のような悪フザケが続くような気がしてきて目眩が
します。どうか、ヘタして、中露の独裁コミュニスト達
の手に落ちないように願うしかありません。

呆れるわwさん
ココは私的なブログですから、読んで呆れるのは勝手
ですけど、それなら憎まれ口を叩かずに、すぐにログ
オフして二度と来なきゃいいのでは?そして書くなら
書くで、賢明な貴方から、アホな凡人にも解りやすい
文章で説明しないと。自分の気持ちを、ただ殴り書き
したようなコメントでは、管理人さんが生温かい哀れ
みの気持ちを持つだけですよ。それともプロのアラシ
の方の、雑な仕事なんですか?

呆れるわwさん

言いたいことは何となく分かるけど、端折りすぎて多くの人には伝わらないでしょう。
管理人さんと違って、そういう努力をしていません。
他人を罵るだけなんて、まさにお気楽ですね。

アホンダラさん、プーさん、荒らしは無視するに限ります。反論するだけ時間の無駄です。

教師志望さん、プーさん。記事で別なことを書いてしまったので、コメント欄で。

いままでのウクライナ支援を見ていると、決定的に重要な地域に対してはロシアは財政支援と天然ガスを安く出すことによる支援をしています。

ただ、それはウクライナがNATOとの極めて重要な緩衝地帯だからです。
ロシアの長年のヨーロッパ・米国への要求は、旧東欧の属国群は諦めるが、旧ソ連圏には手をださないでくれ、というものでした。
ロシアからみれば、今回のウクライナ紛争は、その約束を破って、欧米がネオナチを使って合法政権を暴力的に打倒したからこうなったのだ、と言いたいのです。

さて、ギリシャですが、記事にも書きましたが、ウクライナと同じ手段は相当に難しいと思います。
というのは、既にギリシャはEU・NATOの加盟国だからです。
ロシアがそれをやればしゃれになりません。堂々たるNATOに対する敵対行動です。
したがって自動的に、欧米全体を軍事的に敵に回すことになります。
これが集団安全保障システムのスゴサです。「ワンフォーオール・オールフォーワン」という原則がNATOの神髄です。

また、ギリシャ軍部はコチコチの反露です。
なにせ、ギリシャ軍は戦後、黒海を封鎖し、ロシアの南下を阻止するために作られたような軍隊だからで、戦後の共産党との内戦に勝った後は軍政を敷いていた時期もあります。
チプラス政権は、70年代にこの軍政から民政に変えた運動の末裔たちです。

しかし、今でも隠然たる影響力を軍部は持っています。チプラス政権が、NATOを脱退して極端な親露政策を強行し続ければ、軍部は猛反発するでしょう。クーデターも辞さないかもしれません。
この場合、EU諸国は口では建前上は非難しても、渋々という顔をして容認することになるでしょう。

いずれにしても、中露の影響力の行使は、経済的な部分に当面は限定されます。ロシアならば、原油の供給、中国ならば港湾施設の爆買いなどです。

ただしギリシャ危機が引き金となって、EUが解体するようなことになれば、話は別で、もっと露骨な介入をするでしょうね。
これはヨーロッパのみならず、世界の安全補償体制が根幹から揺らぐことにつながります。

なんか馬鹿なコメントがNATOが解体するのがどーたらと言っていましたが、そんな徴候はまるでありませんよ。
むしろNATOはウクライナ危機を背景に、解体どころか強化される傾向にあります。

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