ギリシャに残された3ツの選択肢
コリアの主張について書こうかと思いましたが、結局やめました。頭が痛くなるからです。
「愛国心とは、ならず者の最後の避難所だ」という言葉があるそうですが、ここまで主張が徹頭徹尾、虚妄を虚妄て塗り固めたという事例も珍しいのではないでしょうか。
軍艦島を「アウシュビッツ強制収容所」と呼び、そこで強制連行で連れてこられた朝鮮人が奴隷として酷使されていたなどというのですから、イっちゃっているとしか思えません。B級スプラッタムービの見すぎじゃないですか。
まさに根も葉もない混じり気のない嘘です。これなら慰安婦問題のほうが、根はないが葉はある嘘なぶん多少ましでした。
その上、日本は土壇場で、後ろから袈裟懸けに斬りつけられたわけで、これまた、これほどまでの詐欺的外交にはなかなかお目にかかれません。
ここまでひどい嘘と裏切りを目の当たりにすると、クールダウンの時間を頂戴したいと思います。
(写真 勝利に沸くアテネ市民。いまの「勝利」は明日の地獄なのだが・・・)
さて話を転じてギリシャです。ご存じのとおりチプラス政権が「勝利」しました。もっと拮抗するかと思いましたが、想像以上の圧勝です。
チプロス政権は、ひとことでいえば,骨の髄までの大衆迎合主義政権です。何一つ解決策を出さず、要求だけを口にするだけの政権にすぎません。
幼稚で無責任でありながら、狡猾です。対案は皆無で、ただ国民の感情を煽り立てているだけにすぎません。
これとよく似た政治指導者が、東アジアに浮かぶ島の首長にいたよなぁ(笑)。
一方ドイツが押しつける緊縮財政も相当に問題で、今、ギリシャが陥っている極端なデフレ状況時に、緊縮財政をしたら、どのような結果になるのかわかりそうなものです。
まぁ、分からないからこそ財政再建原理主義者なのですが。 これまた、東アジアに浮かぶ国の財務省にいっぱいいたなぁ(苦笑)。
いわば貧血で体力が残っていない重病患者に、さらなる節食と運動を要求するようなものです。
景気を浮揚させねば、財政再建は不可能なはずなのに、緊縮財政による賃金カット、年金の切り下げ、税制改革などという消費者負担だけで、なんとかしようというのですから、初めから無理があります。
たしかに、ギリシャは国力以上の豊かな暮らしをしていたことは事実ですし、それが勤勉を徳目とする、北の民族の怒りを買っていたことも事実です。
だからといって短期間の極端な緊縮財政は国民生活への負荷が大きすぎるのです。これまた、別の意味での感情論です。
これでは、ハッキリ言って国は残って、国民は死にます。そんな処方箋は間違っているのです。
(写真 ギリシャ・バルファキス財務相。ゲーム理論が専門の経済学者でもある。いちおう辞任したということになっているが、本気で辞めたと思うお人好しはいない。ちなみにギリシャ女性の人気者だそうだ)
かといって、景気を浮揚させる財政政策を独自に取れないというユーロ・システムの本質的欠陥から、こうとでもするしかなかったというのも一面の事実です。
つまりは、2010年以降、完全な財政破綻を来していたギリシャに対して、よせばいいのに金を貸し込んでいたヨーロッパ各国の銀行団を救済する目的で、ズルズルと引っ張っているうちにツケの満期が来てしまったわけてす。
ですから、ユーロの改革要求とは、自分たちの国の債権者たちの救済が真の目的で、ギリシャ国民がどうなろうと知ったことか、というのがアレクシス・チプラスの言い分であって、それもまた事実なのです。
ユーロの誤りは、余りに短い期間に、余りに極端な緊縮財政を命じたために、国民生活の打撃を過少に評価していました。
ユーロが要求したのは、ギリシャのプライマリーバランス(基礎的財政収支)のGDP比率をセロから、いきなり3年後の18年までに3.5%の黒字にするという無茶なものでした。
英国フィナンシャルタイムズ(7月1日)は、「これを達成するには、GDP比で7%に相当する資金を調達する一方で経済規模を10%縮小させるような財政政策手段が必要になる」としています。
とうぜんこのような現金はギリシャの国庫にはありませんし、7%の経済成長などもっと無理です。
どうやって緊縮財政で内需を拡大しろっつうんだ、無理ぬかせ、というのがギリシャの言い分でした。
国民の年金や公務員賃金のカットと公務員数の削減、消費増税と税金の捕捉強化という、国民の財布を直撃するメニューばかりがズラ~と並ぶことになります。
かくして、若者の失業者は路頭にあふれ、老齢者の自殺者が急増しました。
(写真 勝利に酔う少女たち。こういうのを見るとなにが「勝利」なのか、複雑な心境になる。フィナンシャルタイムズ7月5日)
本来、ギリシャが独立通貨を持っていたならば、財政政策による為替レートの切り下げが可能でした。
アテネの造幣局の輪転機をフル回転させて、ドラクマを刷りまくることです。この方法は米国FRBも日銀も採用している一般的な経済政策です。
これによってドラクマ安に導き、アテネ・エーゲ海クルーズ大特価セールを実現するという経済再建策も可能だったかもしれません。
現実に、かつてギリシャは過去200年間で2年に1回くらい、デフォルトを起こしてきたという倒産・夜逃げのベテランです。
しかしそのたびごとにドラクマが投げ売られて暴落する結果、対外債務が縮小するという肉を斬って骨を断つ、ならぬ、肉を切らせて骨を残すという脅威のサバイバル術で泳ぎ渡ってきました。
いい子の皆さん、マネしないように。IMFから借りた金でそれをやると、韓国の「IMF危機」の時のように、徹底的に「国内改革」をやられちゃいますからね。
今、世界の金融界のリストでギリシャは、「恒常的デフォールト状態(国)」と表記されています。http://www.world401.com/saiken/default.html
今回「みんなの通貨」になってしまったために、その奥の手が使えないのです。ですから、このようなギリシャにはそれなりの対応があったはずです。
たとえば、メルケルの女子寮の寮母のような厳しい緊縮財政要求だけで攻めるのではなく、経済再建できるまで一定期間、緊縮を猶予し、経済成長をなまぬるく見守るという手段もあったはずです。
しかし、メルケルが求めたのは景気浮揚によらない財政再建オンリーでした。これでは断食療法をやれと言っているに等しくなります。
ちなみに、これと同じ考えの持ち主が、わが国の財務省官僚です。
これに対するギリシャ国民の既得権防衛衝動が、この大衆迎合主義のチプラス政権を生み出したのです。
しかし一方で、ユーロが栄えたのは、南のギリシャと、北のドイツが、貿易上の凸凹関係にうまくハマったからでもあったのも事実です。
これがユーロの原動力であり、かつ、他の経済圏には知られたくない恥部でした。
ですから、ギリシャが沈没してしまえば、ドイツもさすがに潰れるということはありえないものの、厳しい状況になるのは目に見えていました。
だから、ダラダラと貸し込んで、とうとう7月5日を迎えたわけです。
(図 今後のギリシャのハードル。あと2週間で次の債務の期限,そして翌月にはまた新たな期限がくる。3連続デフォールトをゆるすほど、ユーロは甘くないだろう)
今後についてフィナンシャタイムズ(同)はこう述べています。
「1つは、正真正銘のユーロ圏離脱である。ギリシャ政府は新しい通貨を導入し、ギリシャの法律に基づく契約すべてを新通貨建てに切り替える。
新通貨のユーロに対する価値は、間違いなく急落する。どの程度下落するかは、政府が作る政策と制度(特に中央銀行の統治)次第だろう」
「2つ目の展開は、政府が支払い不能になりながらもユーロ圏に残留するというものだ。 論理的にはあり得ることだ。銀行システムについては、保険がかかっていない負債を株式に転換することで資本を増強できるだろう。技術的には実行可能だと思われる。ただ、民間の富には大きな負のショックをもたらすだろう」
チプラス政権は、「民意」を背景にして、後者の方法に進む可能性は残されています。ただし、これも相当に厳しいハードルだと思われます。
ただし、フィナンシャルタイムズがあえて書かなかった、3番目の方法があることはあります。
それは先日ご紹介した、ロシアと中国に国有財産の港湾や空港を売り払って租借地として、それを担保として資金援助してもらうという隠球です。
チプロスはかなり真剣に、ロシアや中国と水面下で手を組む動きを見せています。
これは、コミュニスト同士の相性の良さからなのかどうか知りませんが、ヨーロッパ全域の安全保障の根幹に関わります。
ギリシャ国民の皆さん、どうかこの方法だけはおとりにならないように。
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緊縮財政案にも問題点、というか致命的欠陥はあったのですね。もし私がギリシャ国民だとしたら、賛成に投じていたか、少し分からなくなりました。一方でEUがもう少しヌルい対応策を打ち出していたところで賛成票が上回ったかというと、今回の数字を見る限りそれはないなとしか思えませんね。それぞれが自分にとって最良の決断をした結果、最悪の事態を招いてしまった印象です
ギリシャ国民の心情を思うと、このまま死ぬよりはという「ワンチャン」狙いで露中に付くような選択をしてしまう気がします
投稿: 教師志望 | 2015年7月 7日 (火) 21時02分
テレビ解説より分かりやすい、ありがとうございます。
3つ目で動く可能性が高いと思います。
どうなるんだろう
投稿: 多摩っこ | 2015年7月 7日 (火) 23時45分