安保法制審議をめぐる、国会内外の奇妙な風景
よく第9条を、「戦争放棄した平和憲法」という人がいます。この認識は、ほとんど日本人の常識と化していて、今回のような護憲論争になると、がぜん頭をもたげます。
まるで、9条を傷つけると、即座に戦争にでもなるようてす。
「タレントのラサール石井さんは16日、国会前で行われた反対デモに参加してきたという。その後、ラサールさんのツイッターには反発する声が届いたらしく、19日には
「国会前に行っただけで『あっちの人か』『サヨクか』『組織と繋がってるのか』とかうるせえわ。報道見てじっとしていられず自分の意志で一人で行った人は沢山いるはず。演劇仲間はみんな行った。悪いけどスマホの前でウダウダしてるあんたらと違って俺達世代は身体の芯から人間の作りが違うんだ!」(J-cast7月21日) ※http://www.j-cast.com/2015/07/21240757.html
(写真 「9条を守れ」と叫ぶ首相官邸前のデモ隊。「ウォーイズオバー」やピースマークなんて、私たちがやっていた70年代反戦運動のまんまパクリだ。進歩しないなぁ)
はぁ、なんともすごいね、石井さん。「芯から人間の作りが違う」ですか。
私はこの石井氏のような、まるでデモ参加者が、選ばれたエリートで、悪辣な政府と戦って遅れた大衆を「国民主権」に導いている、そういう思い上がった意識そのものに虫酸が走ります。
反体制を気取った裏返しのエリート意識が、全身からプンプン匂ってくるようです。
デモという行為をなにか特別な人格の発露と考えて、悩んだり、ためらったりする人を高見から怒鳴りつけているのですから、まったくたまったもんじゃありません。
自分はデモに行くことでなにか高尚なことでもしていると錯覚し、今、首相官邸前で歴史を作っているんだ、朝日新聞風に言えば「国民主権を作るのはこのデモ参加者たちだ」、というむず痒くなるような選良意識が、石井氏などにこう言わせる底にあります。
私からみれば、石井氏が小馬鹿にする、デモ隊に特定の左翼政党の影をみて、「スマホの前でうだうだする」人のほうが、よほどまともな判断力をもっているように思えます。
だって、そのとおりだからです。首相官邸前抗議行動の中心にいるのは、労組とSEALDsです。
朝日やTBSは巧みに赤旗が映り込む映像をカットしていますが、行ってみれば赤旗だらけなのはすぐにわかることです。
(写真 赤旗一杯の反安保デモ。過激派系動労千葉や日教組の旗が見える。皆さん、かなりのご高齢で、マスコミには若者ばかり写るが、このような人たちが大部分のようだ)、
このSEALDsは、シールズと読むらしいのですが、末尾に小文字でsをつけるところまで、米海軍特殊部隊NAVY SEALsの名のパクリだというのも、なんかオシャレでバカ(笑)。
これが「憲法を守れ!全国青年学生統一行動」みたいな左翼臭ムンムンのネーミングだったら、これほどブレークしなかったよね(苦笑)。ザブトン一枚。
それはさておき、このシールズは、「自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクションです。担い手は10代から 20代前半の若い世代です。私たちは思考し、そして行動する」そうです。
※SEALDs
建前は「従来の政治的枠組み超えたリベラル勢力の結集」を目指し、自発的青年学生を中心とした大衆組織ということです。
このシールズを核にして、石井氏のような「自分の意志でデモに行った人」が「従来の枠組みを越えて」集まるという構造なんだ、と言いたいようです。
ちょっと考えてみましょう。
数万人規模の抗議行動を実施するためには、左翼政党の組織力が不可欠です。先日、10万人が国会前に集まって抗議行動をしたと報じられていました。
まぁ、10万人は例によっての「10倍吹かしの法則」に従えば実数は1万人前後だったと思いますが、それでもこれだけの規模の集会、デモを組織するには大変な組織力か要ります。
まずは、センターとなる事務局を置き、そこに事務局員を恒常的に貼り付け、多くの準備のための会議を開き、無数の指示を与え、メガホン、チラシやプラカードなどの小物や街宣車を準備し、指揮・統制するための多くのリーダーを養成せねば、この規模の集会は動きません。
これにどれだけの金がかかるか想像してください。 そしてこの財源はどこから来るのでしょうか?
また、地方や学園でビラを撒き、集会や勉強会を組織して拡大活動するなどは、仕事のある一般人にはとうていできることではありません。
それができるのは、唯一、学生活動家と専従スタッフを多数抱えた左翼政党とその青年組織に限定されます。
共産党は、この事務局の中枢を握って実権を掌握し、代表には無党派の文化人などをダミーで出しておきます。
一見外目には、共産党とは無関係なものに見せるためですが、このようにして、労組や大衆団体の事務局を握ることで、共産党は実質的にこれを支配下に置きます。
そしてこのシールズのような大衆組織に浸透している共産党員たちは、党員以外には素顔を見せません。
互いにそ知らぬ顔をしながら、裏で別途に党員だけの会議を開き、上部組織の共産党組織の指令をもらって行動しています。
その共産党組織はピラミッド型の指令系統を持っており、このような大規模な闘争は最終的には党中央委員会常任幹部会が直接に指導しているはずです。
なんだか、まるでタマネギの皮むきのようですが、このようにどんどん「大衆団体」の皮を剥いでいけば、結局一握りの共産党幹部に行きつくというわけです。
今回はこの偽装すらしないで、代表格の学生はいずれも民青(※共産党の下部組織)の構成員のようです。昔と違って、人的余裕がないようですね、共産党さん。
なぜ、私がこんなことを知っているかと言えば、10代から20代にかけての10年間、共産党を身近で濃厚に観察する機会があったからにすぎません。
つまり、はっきり言えば、いまの日本において日本共産党だけしか、大規模な反政府集会を組織する能力を持っていないのです。
彼らこそ、この首相官邸前抗議行動の裏の演出家で、彼らの舞台セッティング、演出、振り付けに従って、集まった人々はシュプレヒコールをし、怒りをぶつけているのです。
私は日本共産党という政党の良さも悪さも知っているつもりですが、どうしてもなじめないのが、この自らの姿を隠して、「大衆」を操るような陰謀家的政治姿勢です。
これは、彼らが長きに渡って暴力的革命路線を歩んだために、官憲の弾圧によって地下政党化し、この「非合法革命党」という時代錯誤な体質が骨の蘂まで染みついてしまったようです。
六全協後に、合法政党として再建されてからも、この陰湿な体質には変化がありませんでした。
この悪しき陰謀家的性格が治らない限り、彼らがほんとうの国民政党になる日は来ないのかもしれません。
このようなことは、少し運動に関わればすぐに見えてくることですが、朝日は相変わらず「名もなき一般人が自発的に集まり戦っている。その先頭に立つのはシールズのような良心的学生たちだ」、と報じています。
どうやら、朝日は60年安保闘争以来の、<共産党+朝日+反体制学生団体>という古典的構図の再来で、安倍政権打倒を狙っているようです。
かつての全学連の代わりに、今はシールズという横文字団体がいるというだけの違いです。
これに乗ったのが、「シールズ人気」にあやかりたい枝野幹事長率いる民主党でした。
枝野氏は、民主党内でももっとも左にブレている人ですが、彼は陳情団に対して、「今回の主役は国民の声と安倍首相との戦いであり、我々は主役ではない」とまで言い切っています。
野党第1党の矜持もなにもない発言ですが、おそらくは本音のはずです。今の民主党に出来るのは、ただの審議の遅れを作る遅滞戦術しかないからです。
(写真 16日夕、衆院本会議で安保関連法案が可決されたのを受け行なわれた抗議活動で演説する民主党の枝野幸男幹事長。こんな人物が、東日本大震災の時の幹事長だったのだから、日本はよく潰れなかったものだ)
枝野氏は世代的に60年安保どころか、70年安保すら知らないでしょうが、60年安保で反安保デモが、やがて「岸倒せ」に代わり、そして岸氏の渋谷の私邸にまで押しかけては「岸殺せ!」と叫んだことを、何かで知ったのでしょう。
ちなみに、この時の岸氏の私邸には幼き日の晋三少年がいて、一緒に「アンポハンタイ」と邸内を練り歩いたそうです。岸氏は笑って見ていたとか。
枝野氏の目論見は、全野党共闘で足並みを揃えて院内で徹底抗戦する姿を国民にアピールし、それに呼応して万余のデモ隊が国会を包囲し、採決に当たっては、一斉に国会の内外で「安倍倒せ!」とシュプレッヒコールをあげる。
これを倒閣につなげ、9条改釈改憲をめぐっての是非を総選挙で問い、これに勝利して第2次民主党政権を作る、まぁこのあたりが枝野氏の思い描く戦略のようです。
しかし、これが成功すれば、共産党には大きな借りができるわけですから、第2次民主党内閣は色濃く共産党色が滲むことでしょう。
まぁ気の毒ですが、彼の思惑どおりになる可能性は極めて低いのが救いですが。
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コメント
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スマホでそれこそちょちょいと調べてみれば、
SEALDsがズバリ「民青」の下部組織だということくらいすぐにわかるのにねえ。
枝野と革マルの関係(JR総連からの献金)なんか、ずっと以前から言われてきましたが、最近の彼の言動を聞いてると、さもありなんです。
左翼過激派はここ20~30年ほどでずいぶん大人しくなりましたから、今の10代や20代の若者は勧誘の執拗さや活動の過激さを知らないのでしょう。
以前は数ある過激派や宗教勧誘の中でも「中核」「民青」と「原理(統一教会)」は特に気をつけろと言われてたもんですが…。
ラサール石井も、すぐに逆ギレするなんて、老け込んだもんだなぁ、と。
投稿: 山形 | 2015年7月23日 (木) 07時15分
ここ数日の蓮の写真、実に良いです。心かおちつきます。
あ、いや、本当は睡蓮のほうがすきなんですがね。蓮=蓮根畑ですから。
やはり花が美しいですね。
投稿: 山形 | 2015年7月23日 (木) 13時22分
SEALDsが使用している車が全労連のものだったってオチも出回ってますしね。志位るズと揶揄されるのもむべなるかな。
投稿: クラッシャー | 2015年7月23日 (木) 19時45分
クラッシャーさん。明日の記事で答えます
投稿: 管理人 | 2015年7月24日 (金) 10時23分
あるマスコミでは自発的に若者が行動を起こしているように書かれていますが、大抵背後に何らかの組織が隠れていると思っているのでちょっと揶揄するつもりでした。多くの若者は確かに自発的に純粋に参加しているのでしょう。こちらもレッテル張りと捉えられような行為をすると同じ土俵にあがりかねませんね。迂闊でした。管理人様の資料を提示しての客観的、多面的な物の見方にはいつも感心させられています。
投稿: クラッシャー | 2015年7月24日 (金) 12時04分
こんばんは、安保法制に関して賛成はしていたのですが
自分自身、戦争法案だ!などという印象操作が嫌で
賛成派という風になったところがありそれではいけないと色々調べている中で管理人様の記事がとてもわかりやすく読ませていただきました。そこで、お願いがあるのですが6月19日に書かれた「歪んだ個別的自衛権しかない国の集団的自衛権論議」内の内容をコチラのブログより引用しましたという形で使わせていただくことは可能でしょうか?当方はブログというものをやっているわけではなく、ニコニコ動画で今回の安保法制について賛成であるべき!反対であるべき!ではなくどういった内容のものなのかということを調べていき最終的には自分で賛成か反対か考えてもらうという趣旨をブロマガという形でやろうと考えています。丸々コピーではなくできるところは自分の言葉にしていきたいと思っております。
ぜひご検討いただけないでしょうか。お返事待っています。失礼しました。
投稿: nava | 2015年7月25日 (土) 21時30分
nava さん。どうぞお使いください。いろいろな情報を共有していきましょう。
あそうそう、あの記事て「PKO自衛隊員の自殺」と写真キャプションに書きましたが、それを報じた東京新聞は、誤報を認めていますので、当該部分は使用なさらないでください。※http://gohoo.org/15062501/
投稿: 管理人 | 2015年7月26日 (日) 01時20分
ありがとうございます!
早速ブロマガにて引用させていただきました。
意味は同じで自分なりの言葉でリライトしようと
しましたがほとんど同じような文章になり、部分的
転載みたいな形になってしまいました。もし、NGであれば記事は即非公開にしますのでご連絡ください。
その1では自衛隊法部分、その2では交戦規定部分を
ほぼ引用させていただいています。記事内にもコチラのブログから引用させていただいたこと明記してあります。このたびは許可頂きありがとうございました。
東京新聞誤報の件、了解いたしました。
投稿: nava | 2015年7月26日 (日) 14時31分