天津港大爆発にみる「中国の常識」
私たちは意識することなく立脚しているのが、「自分たちの国」の常識です。
それが通用しないのが中国であることが、あらためて明らかになりました。それが8月12日に天津港で起きた大爆発事故です。
これをケーススタディしてみれば、この中国という国家と社会が、いかに異質なものかわかるでしょう。
簡単に事実経過を追ってみます。
まず天津市浜海新区の港湾地区にある国際物流センター内にある危険物専用の倉庫港湾施設で、8月12日午後11時、TNT火薬にして約3トン分の大爆発がありました。
下の写真は、第1回目の爆発だとされています。
そしてそのわずか30秒後にTNT火薬21トン分の大爆発が起きます。下の写真はおそらく2回目の爆発だと思われます。
その結果、現場には直径100メートルのクレーターが開きました。
まるで爆撃にあったようです。爆発後の周辺にビルがありますので、較べていただければ、その大きさがわかります。
まずそれについての当局の発表です。
「天津港で8月12日に発生した瑞海公司の危険物倉庫の爆発事故に関する第10回記者会見が19日に行われ、天津市の何樹山副市長は「数日間の作業の結果、爆発した倉庫内の危険化学物質の種類は約40種類、量は2500トンであることが確認された。危険化学物質の処理案も確定した」と述べた。新華網が伝えた」(人民網日本語版 2015年08月20日)
※http://j.people.com.cn/n/2015/0820/c94475-8939123.html
この爆発場所は、瑞海国際物流有限公司の化学物質保管倉庫ですが、ここには軍事用ミサイル、ロケットの燃料が納められていたようです。
天津市は、国からロケット先進特別区に指定されています。
いちおう建前としては「平和利用」ですが、中国において平和利用と軍事利用の区別がまったく意味がないのは、ご承知のとおりです。
「瑞海国際物流有限公司」の倉庫は仕分け用で、中国紙・新京報によると、爆薬の原料となる硝酸カリウムや、水に触れると可燃性ガスが発生する炭化カルシウムなど16種類の取り扱いがあった。事故当時、具体的にどんな物質が保管されていたかは不明だが、中国紙・南方都市報は、河北省の化学企業が、倉庫に猛毒のシアン化ナトリウム700トンを保管していたと報じた」(読売8月15日)
漏れだした危険な化学物質は、何副市長によるとおおよそ3ツに分けられます。
①爆発物質。硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、計約1300トン。これは古くから使われている火薬の主要成分で、爆発を引き起こします。
②可燃物。主に金属ナトリウムとマグネシウム、計約500トン。これは燃焼剤です。焼夷弾や爆弾の原料になります。
③猛毒物質。シアン化ナトリウム、約700トン。これは、通称青酸ソーダとも呼ばれ、経口致死量は成人の場合わずか 200~300 mg/人です。
推測ですが、②のマグネシウムなどの燃焼剤に着火し、それが①の硝酸アンモニウムなどの爆発物質を爆発させ、付近にあった青酸ソーダを流出させたと思われます。
上の爆発中の写真を見ると、マグネシウム粉に引火したと思われる火の粉が降り注いでいるのが分かります。
また流出した青酸ソーダは、ただちに高温で気化し、付近一帯に広く拡散しました。当局は3キロの避難を命じています。
付近の海岸には、下の写真のように大量の魚の死体が浮きました。
政府が情報統制をしているために因果関係はあきらかではありませんが、おそらくは爆発の影響だろうと考えるのが妥当でしょう。
この青酸ガスが、報じられている神経ガスの正体のようで広範囲に拡散しました。中国は下の写真にあるように、軍の化学防護部隊まで出動させています。
事故に当たって、23の消防中隊および93両の消防車両、計600人が出動しました。
しかし彼らは、天津ロケット特別区が何を意味しているのか,何を保管しているのかさえ知らされないままに、なんと化学物質に水をかけるという素人でも分かりそうなことをしでかしています。
この瑞海国際物流有限公司に保管されていた金属ナトリウム、マグネシウムは500トン、いちおう存在してはいる許可貯蔵量の30倍以上です。
事故後にこの社長は捕まりましたが、倉庫会社の幹部役員が元天津港公安局長の息子であり、コネで許可を得ていたとの証言もでているようです。
こんな賄賂では済まず、おそらくは消防当局まで袖の下が行き渡っていたと思われます。そうでなければ、こんな初歩的大失態は考えられません。
その上、法律で危険物質の保管施設は、住宅地区から1キロ以内には建設できないはずが、わずか600m近くにマンション群が立ち並んでいて、被害を被っています。
日本では金属ナトリウムなどは倉庫はもとより、運搬容器に至るまで消防法によって危険物2類(可燃性固体)として「火気厳禁」「禁水」の表示が義務づけられています。
また日本の消防署は管区の化学工場や倉庫について、常時立ち入り検査を実施して、詳細な現地情報を持っています。
特に日本がすごいのではなく、これが工業国としてあたりまえの国際常識で、中国のほうが異常なのです。
こんな危険な金属ナトリウムを、210度で爆発する硝酸アンモニウムや硝酸カリウムの近くに大量に保管していたというのですから、開いた口が塞がりません。
しかも、消防署もその事実を知らず、それに水をかけて大爆発を誘発させています。
消防官が、金属ナトリウムなどの化学物質に水をかけたらどうなるのか、知らないことはありえないと思いますので、たぶん何も知らされてんなかったのでしょう。
放射能の恐ろしさを知らされず、高線量下で白衣とマスクだけで作業してほとんどが亡くなった、チェリノブイリの消防隊員を思い出してしまいました。合掌。
つまり、法律はいちおう「ある」が、上から下まで賄賂漬けで誰も守らない、違法な野放しの危険物質がどんどん増殖していく、知らぬは殉職した消防隊員と巻きぞいを食った住民ばかりなり、というわけです。
犠牲者は、殉職した消防隊員を中心にして、いちおう123名ですが、こんなもので済むと思っている中国人はいないでしょう。
長くなりましたので、次回に続けます。
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全く酷い事故でした。
あれだけの巨大施設がありながら、現場には化学消防車もなく、実際に現場に真っ先に駆け付けて放水してしまい犠牲になったのは、「消防隊員」とはいっても専門職員ではなく日本でいうところの消防団のような方々だったとか…。
いくらなんでも、何から何まで杜撰すぎます。
投稿: 山形 | 2015年8月24日 (月) 06時35分
マスコミは夜中の相模原の爆発を頻りに採り上げて連想させようとしていますね。
全然次元が違うのに。
投稿: プー | 2015年8月24日 (月) 07時05分
プーさん。
全くねえ。
相模原補給厰火災と総火演直後にちょいとフライパスした米海軍のMV-22オスプレイばかりマスコミ(と、何でもハンターイ!な人々)はワイワイと騒ぎますね。全く次元の違う話なんですがねぇ。
相模原で何が起きたのか?未だに不明ですが、少なくとも弾薬や燃料はあそこには無いはずなのでよくわかりません。
医療用の酸素ボンベや夜営用物品の固形燃料等々を保管していた可能性は高いので、何らかの原因で引火・爆発したのかも…と。
朝になってみたら、全焼した倉庫は1棟だけ。
「ああ、そんなもんで良かった」と思いつつ、一体何が起こったのやら。
放水せずに待機した日本の消防は、当たり前ながら流石ですね。
とは感じながらも、相模原補給厰は『沖縄どころではない!』大人口市街地ど真ん中でやはり危ないなぁと。
よっぽどマシな普天間問題を考えたらねえ…。
翁長さんや沖縄左翼さんたちには、普天間が無くなったら運動のシンボルと国という金蔓が無くなっては困るのでしょうけど。
辺野古に移設されては逆に困るのでゴネまくるしか無いのでしょうねえ。
投稿: 山形 | 2015年8月24日 (月) 10時34分
消火活動に向かった消防士たちは2、3カ月の研修を受けただけの若者だったとか、形ばかりの国だと再認識。
投稿: 多摩っこ | 2015年8月24日 (月) 18時47分
過去に事故を起こした新幹線を 負傷者ごと埋めた国ですから
なんでも、有りかと思います。 パキスタンに中国産原発作るそうですが、爆発しない様、
切に願います。
投稿: 元本部町民 | 2015年8月24日 (月) 20時18分