沖縄米軍へリ事故は特殊な事例だ
菅さんと翁長さんの協議が始まったようです。期待せずに期待しましょう。
食事をしながらだそうですが、いったいどんな顔してメシ喰って、酒をくみかわしてたんでしょうね。無責任な言い方ですが、天井にでも隠れて見たかった(笑)。
このご両人、腹芸のできることにかけてはいい勝負でしょう。これについては来週ゆっくり考えていきます。
まず菅氏の訪沖を歓迎するかのように、米軍がヘリを、場所も選んだようにうるま市浜比嘉島の東側5kmから10kmの海上で落としました。
17名が搭乗していましたが、内7名の負傷者が出ました。そのうち自衛官2名が含まれていたようてす。幸い死亡者は出ていません。
例によって沖縄タイムスは号外を撒いています。前回のオスプレイのハワイ事故でも琉球新報が号外を出しましたが、ホントに米軍機の墜落がお好きなようです。
米軍は世界中に展開していますので、こう言ってはなんですが、よく落ちます。
ですが、世界広しといえど、米軍の輸送機や輸送ヘリが落ちるたびに、号外を出す米軍機墜落フェチはこの2社くらいです。
沖タイの報道は見出しだけでこの調子です。
「空の危険 怒り噴出」「「市民の命脅かす」「関係市長村長 飛行停止を要求」「タイミング最悪」「沖縄の実情目の当たり」
まぁ、内容的には特に引用するようなほどではありません。伝統芸の義太夫を聞くようなものです。
さて、事実から洗い出していきましょう。
まず落ちたのは、当初の報道では米陸軍所属のUH-60汎用ヘリコプターとされていますが、違うようです。
これは、特殊作戦用のMH-60特殊戦ヘリコプターです。
(写真 ナイトストーカーズのサイトから。落ちたのは手前のヘリ)
このMH-60特殊戦ヘリコプターは、名前からして自分で「オレは特殊戦機だ」と名乗っているくらいですから、そりゃもちろん特殊な機体なことには間違いありません。
沖縄に配備されているMH-60は、米陸軍第1特殊作戦群第1大隊に配属されており、嘉手納基地をベースにしています。
この部隊は「ナイトストーカーズ」と呼ばれています。サイトから情報を拾ってみます。
※http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams00/160th.html
「第1大隊(1st Battalion)
第1大隊は、フォート・キャンベル陸軍航空基地に駐屯し4個中隊、1個整備中隊編成で、主に陸軍の第1特殊作戦部隊分遣隊(デルタ・フォース)、海軍の対テロ部隊DEVGRU(SEALチーム6)、CIA(米中央情報局)やFBI(米司法省連邦捜査局)のカウンター・テロ、人質救出チームを輸送・回収する支援任務業務を担っている」
このナイトストーカーズは、米軍特殊部隊の、デルタフォースとか海軍SEALチーム6などを投入する特殊作戦機を運用しています。
ですから、通常のUH60汎用機はいわば空飛ぶライトバン、このMH-60はイジリ回したスペシャルカーというわけです。
原型は一緒ですが、本質的にまったく別な機体だと考えたほうがいいでしょう。
このMH-60はNHKニュース(8月13日)によれば
「ヘリコプターは海賊への対処を想定した訓練のため、艦艇の上を低空で飛行中に甲板にあるクレーンに接触して墜落した可能性があることが、防衛省関係者への取材で分かりました」
この米海軍艦船も分かっています。米事前配備船・ワトソン級車両貨物輸送艦レッドクラウドです。
(写真 米海軍ワトソン級事前集積艦 ウィキ)
この艦にはヘリを着陸させるデッキは用意されていませんから、おそらくホバリング(空中停止)状態で隊員をロープで降ろす、リペリング(つり下げ降下)をしていたものと思われます。
しかし解せないのは、17名という異様に多い数です。定員は、乗員4名、兵士11名です。
2名の余りは陸自の隊員2名が乗ったからでしょうか。この陸自隊員は陸曹で、中央即応団に所属すると発表されています。
常識的に考えて、中央即応集団所属の特殊作戦群隊員が、米軍第1特殊作戦群第1大隊の要員と共同訓練をしていたものだと思われます。
その内容については、事故を発表した米軍側が、「これは特殊任務訓練中だ」と言っていますから、これ以上聞くなというわけです。
陸自の発表では、海賊対処訓練とのことです。推測の域を出ませんが、東シナ海においての臨検などの訓練をしていたのではないででしょうか。
自衛隊は、「訓練」とすると地元自治体への届け出がいるために、「研修」名義にしています。
陸自特殊作戦群、すなわら、日本初の特殊部隊ですが、彼らが公表しにくい類の「研修」を随時米軍特殊部隊と行っていたことの片鱗が、これで分かりました。
といわうわけで、現時点でわかる範囲でまとめれば、こういうことになります。
①事故を起こしたのは、一般的なUH60ではなく、特殊戦用のMH60特殊戦機である。
②所属は、米軍第1特殊作戦群第1大隊(ナイトストーカーズ)であり、嘉手納基地に駐屯している。
③事前集積艦レッドクラウドに、降下(推測)訓練中に、クレーンと接触して墜落した。
④研修で同乗していた陸自隊員の所属は、中央即応団特殊作戦群と思われる。
このように今回の事故は、地上スレスレに飛んだり、海上で揺れ動く艦船に飛び乗ったりすることを任務する特殊作戦機が起こしたレアなタイプの事故であって、これをもって米軍のヘリ一般が危険だと断定するのは間違っています。
またつけ加えるなら、オスプレイと重ねて見ることもナンセンスです。
沖縄海兵隊に配備されているCV22オスプレイは、空軍型のMV22と違ってこのような危険な飛行はしません。
空軍型の特殊作戦機に事故が多いのは、今回の事故でもわかるように、過酷な状況の中での極限的特殊任務によるものであって、したがって、その事故現場は演習地域(海域)に限定されます。
また、仮に着陸事故を起こした場合も辺野古は進入路が海上ですから、市街地に落ちる危険はかぎりなくゼロです。
しかも、オスプレイの墜落の危険があるのは、垂直に離着陸する時であるのは、前回のハワイ事故でも明らかです。
ちょっと説明しておきましょう。
通常、飛行機は飛行中にはそうそう簡単に落ちるものではありません(あたりまえだ)。
落ちる危険性が高いのは離発着時です。 ICAO (国際民間航空機関)の統計では離陸時が21.5%、着陸時が48.3%となっています。
このことから、離陸滑走開始後の3分間と、着陸前の8分間を合わせた11分間を「魔の11分間」と呼んでいます。
オスプレイ場合、飛行場に侵入する時には普通のプロペラ飛行機のようにピューと飛んできて、飛行場の着陸地点の上で止まって、おもむろにストンっと降ります。
ですから、「魔の11分間」は、飛行場の滑走路上なのです。むしろ、一般のプロペラ機よりも周辺住民にとって、安全だといえるでしょう。
それでもなお危険だというならば、辺野古の滑走路の延長線上はただの海なのに対して、普天間基地は市街地ですから、いっそうキケンなのではないでしょうか。
地元2紙のみなさん、詳細を検証しないでいつものように煽ると、天に唾することになりますよ。
※お断り フォントの大きさがバラバラですが、原因不明です。お見苦しいですが気にしないでね。ああ、気持ち悪い。
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ヘリの定員オーバーが言われてわすが、あれは「フル装備の兵隊」の場合で、キャビン乗員13人とする資料もあります。それならコクピット乗員3~4名と合わせても矛盾はありません。
また、辺野古海上案が当初の滑走路1本案から長い検討の末にわざわざ微妙な角度のついたV字滑走路になったのは、当然ながら離着陸進入コースを海上にするための措置です。
はしゃぐ沖縄2紙や、本土の朝日・日テレ・TBSは「そこはタブー。我関せず」
投稿: 山形 | 2015年8月14日 (金) 10時40分
事故を受けて狂喜乱舞&発狂祭り中の地元マスコミがどんだけ騒ごうとも、自衛官含めて任務を遂行中だった方々に、訓練だろうが研修だろうが、本当にお疲れさま、ありがとうと素直に思いましたがね。
平和ボケした一部の日本国民、一部の沖縄県民は、今の自分の安全がタダで当たり前だと思っているようで困ったもんです。
安倍総理の談話、私は評価します。
特に私の子々孫々にまで詫びさせてなるもんかっ!と思うので、よくぞ仰ってくれたと思います。
投稿: ミィ | 2015年8月15日 (土) 01時09分
米軍機が墜ちれば号外で大騒ぎ、でも沖縄で民間機が墜ちても記事は小さいのかもしれない。
訓練に自衛隊も参加してるとは驚きました。
投稿: 多摩っこ | 2015年8月16日 (日) 22時25分