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2015年8月28日 (金)

天津大爆発のチェルノブイリ効果

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私は天津爆発事故は、中国の<チェルノブイリ>になると思っています。 

1986年4月26日に起きたチェルノブイリ事故は、ソビエト帝国の脇腹に刺さった槍のように一気に帝国を衰退に追い込み、そしてわずか5年後の1991年12月25日に崩壊します。  

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この事故は、長年続いたブレジネフの跡目を継いだミハイル・ゴルバチョフ政権の発足直後に起きました。 (※途中にアンドロポフ、チェルネンコが入っていますが短命です)

これによる打撃は人命と経済にとどまらず、目に見えない大きなソビエト帝国の資産を崩壊に導きました。 

それは、ソビエト帝国の絶対的政治権力であった、ソ連共産党の権威失墜です。 

いままで、米国に並ぶ東側陣営の盟主としての威信は、その湧き出るような財力と軍事力、そして技術力によって支えられていました。 

この国民の帝国に寄せる信頼感が根こそぎ奪われたのが、このチェルノブイリ事故でした。 

当時、ソビエト帝国は、宿痾とも言える財政難を抱えていました。根本原因は社会主義経済のあまりの非効率性と硬直性でしたが、それに拍車をかけたのが大軍拡でした。 

レーガンが仕掛けたスターウォーズ計画は、弾道ミサイルを迎撃するというふれこみで、宇宙にまで冷戦を拡大するものでしたが、実はこれには米国の巧妙な罠が仕掛けられていまた。 

レーガンはソビエト帝国にこう言っていました。 

「おい、お前らの弾道ミサイルは全部落せるぜ。核の均衡は崩れた。さぁお前、お互いに累積2兆ドルの巨大赤字を積み上げたが、まだこのチキンレースに乗ってくるかい」 

外交交渉と共に恐るべき軍拡競争が始まります。 

これは、当時泥沼のようになっていたアフガン派兵による出血と絡み合って、ソビエト帝国を経済的社会的衰退に陥れます。 

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そして、そのような時代を背景にして、世界初の原発事故が起きます。チェルノブイリ事故です。

ゴルバチョフは誰よりもこの事故を深刻に受け止めました。それには理由があります。

この事故第一報は、なんとスウェーデンからもたらされました。ゴルバチョフが知ったのはスウェーデンより後のことで、既にその時にはもはや原発は暴走を開始していたのです。 

ゴルバチョフは激怒したと伝えられています。それは、ソビエト帝国でなによりも揺らぐことが許されない共産党の権威が失墜したからです。

民主主義国家においては、一政権の失敗は選挙によって修正可能です。別な党が政権党になるだけの話です。

しかし、一党独裁国家においては、共産党の威信の崩壊はそのまま政体そのものの崩壊へと直結しかねません。

そこでゴルバチョフが踏み切ったのがペレストロイカ(開放)政策でした。 

これが失敗に終わり、ソビエト帝国は74年の生涯を閉じることになります。 

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さて、上海株式市場と、まるで連動したかのように起きた天津爆発事故を聞いて、習近平は何を思ったでしょうか。

たぶん、1986年のゴルバチョフと同じだったはずてす。それは巨大帝国が崩れ落ちていく遠雷のような音です。 

この天津はただの港湾都市ではありません。TEDAという「天津経済技術開発区」という、中国経済のトップに位置づけられる経済区でした。
※http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/a0ab/107528/intro/toyota.html

TEDAは、日本などの海外企業の進出拠点であり、中国における技術開発における最大拠点でした。

中国は、1992年の鄧小平の南巡講話以降、ひたすら経済成長に邁進してきました。

そのビジネスモデルは、外資のカネと技術を呼び込み、それを存分に利用して経済成長するというものでした。

天津はそのモデル都市でした。ですから、今回の事故はこの中国型ビネスモデルの心臓部を突き刺したことになります。

大爆発後にわかったことは、規制の30倍という途方もない量の違法危険物質がおり、その杜撰な管理によって周囲3キロ以上に有害な化学物質がまき散らされたことです。

爆心地からわずか2キロにはTEDAの基幹工場であるトヨタの2ツの工場のうちひとつがありました。

Toyota
日経新聞(8月22日)は、この事故の影響をこう報じています。

「天津では中国の自動車大手、第一汽車集団との合弁会社である天津一汽トヨタが工場の操業停止を延長する。事故現場から約2キロメートルの距離にある泰達(テダ)工場に加え、約70キロメートル離れた西青工場も部品供給が滞るため操業を取りやめる。天津は中国におけるトヨタの最大の生産拠点で、天津一汽トヨタは2014年に主力小型車「カローラ」などを44万台生産した。
 今回の事故による天津の工場の操業停止は9日間に及び、約1万5000台の生産が遅れるもようだ。中国の自動車市場は低迷しているが、トヨタは天津で生産するカローラを中心に堅調な販売を持続している。操業停止が長引くことによる業績への悪影響が懸念されている」

中国政府は国家的メンツにかけて、トヨタに早期の操業再開を要請したようで、トヨタは28日からの再開を約束しています。

しかし、このトヨタ天津工場の地域には、致死性の高い有害化学物質が大量に、しかも、その種類すらわからないほど降り注いだ地域です。

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深刻な化学物質汚染が起きていることは明らかで、そんな場所に従業員を近づけることさえ非常識です。

この発癌性を持つ化学物質汚染は、中長期的影響を残し、除染には膨大な時間と金がかかることでしょう。

この有毒物質の情報をなんら開示しないままに、操業を再開しろというのですから、中国政府はいい根性しています。

まぁ、情報開示といっても、「なんら問題がない。ホットスポットは既に浄化した」としか言わないでしょう。中国式除染は、ブルで埋めるだけですけどね(笑)。

そして、天津大爆発によってチャイナリスクがあらためて再認識され、外資の撤退が加速することは間違いないことです。

短期的には、輸出の玄関口だった天津港の機能停止、世界的サプライチェーンからの切り離しと貿易保険料の値上げをもたらすでしょう。

中期的には、TEDAからの外資の撤退、中国の技術開発拠点の喪失につながっていくことでしょう。

Bkncn201508130541390640813_05011_00(写真 Miletary & Mecanix より引用しました。ありがとうございます)

そして、なにより、中国国民と世界の人々に、株価暴落と同時に映し出された天津の爆発の映像は、中国共産党の権威の失墜というメッセージを強烈に刷り込みました。

これは、今はまだ水面に浮き上がってきませんが、チェルノブイリのように、人々の心に染みつき、離れなくなります。

中国共産党は、これを強権的な統制と、小手先の改革で押さえ込もうとするでしょう。結果、ゴルバチョフのように、いっそう事態を悪化させていきます。

これが、天津大爆発のチェルノブイリ効果です。 

ただし、中国がかつてのソビエト帝国と決定的に違うのは、旧ソ連が世界市場から切り離された閉鎖的な経済圏であったに対して、中国はワールド・サプライチェーンの重要な一部であることです。

私たちも、毒をまき散らしながら沈んでいく中華帝国に備えねばなりません。

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コメント

ゴルビーの時と違う点は、大改革断行のペレストロイカとグラスノスチを進めている最中に起きて政権イメージを落としながらも、情報の全面公開に至ったのがソ連。
習近平は、独裁体制を強化している時に起きたダメージ。ブレジネフ時代のような粛正や弾圧と隠蔽をより強化しているとこが違いですかね。
より傷口を拡げるだけのような気がしますが。

操業再開「要請」って、多分に賄賂と恫喝を含んでいるでしょうね。
天安門事件後の中国包囲網は、鎖は弱いところから断てと日本に外交攻勢を仕掛けて突破しました。
今回はトヨタだったと。
兵法の基本ではあるのでしょうが、そこで働かされる人達は堪らないですね。

お盆頃の人民元切り下げは、投資ではなく製造業・輸出で食っていく、という決意だったはずで、それと共に起こった天津爆発は、政権にとっては退路に潜んだ伏兵に襲われた気分でしょう。
まあ、自業自得ですが。

天気予報で「それでは、雲の動きを見てみましょう」
と動画が映されると、中原の地で雲が生まれ、黄海
を越え、日本列島にジワーっと流れ込んでいます。

風上の利は動かせません。炉の構造が違うとはいえ
将来に中国でチェルノブイリ級原発事故が起これば、
トヨタの話ではなく、日本政府に「被害が及ぶぞー、
イヤやったら、モノとヒトとカネを出さんかい!」と
言ってくるのが中共でしょう。日中友好という事で・・

サヨクさんは「人道、友愛、協力!」で息を吹き返
して、事故を又狂喜するのでしょうが、そうでない
大多数の人々は、巨大な超変態国家である中共が
隣に位置する事に、なんとも言えない深い憂鬱を感
じるのではないでしょうか?

前にも書きましたが、中共崩壊の時には、中国人難民
の数もハンパ無く、風・海流は彼等を運んで来ます。
私の住む地方都市にも中国人は多くいて、多分、緊急
事態となれば本土から呼ぶんだろうなぁ、不法で。

で、中共は無くなればいいと思っているんですけど、
そうなればなったで又タイヘンで複雑な思いですわ。

慧眼恐れ入ります。

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