Y氏のコメントに答えて その2 第7艦隊の兵員数を抜いて議論してもしょうがない
沖縄にはアジアの全兵員数の4分の1が来ているからどーたらこーたらと、このYという人は言っていますので、これも見ておきましょう。
この兵員数論議は、面積で7割以上が沖縄に集中している」という主張がグラつき始めた頃から、出始めました。
この74%集中論は「嘘は言っていないが、ほんとうのことも言っていない」という数字です。
詳しくはこちらをご覧ください。
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もちろん沖縄の負担は大きいのです。しかしいくらなんでも、「在日米軍基地の7割以上が沖縄にある」というのは、安保の実態と違いすぎます。
また、沖縄の左翼陣営とマスコミは、この数字を反基地闘争や、オスプレイ反対運動の根拠としていました。
そしてとうとう、「沖縄にこんなに基地が多いのは差別されているからだ。本土政府はイヤなものはみんな沖縄に押しつけている。だから独立だ」という過激な主張の論拠にまでなってしまいました。(写真 国連総会で承認された琉球共和国。な、わきゃありませんが、これはあながち冗談ではなく琉球独立学会というところが真剣にやっていることです。地元2紙や左翼団体も陰日向に応援しているようです。ま、やってみたら、というところです。今の東アジア情勢では、100%中国領になりますから)
本来の意味を離れて、政治的駆け引きに使われる概念になってしまったわけです。
百田さんに怒鳴られた地元2紙がお経のように、「沖縄にだけ基地負担を」と言い続けたおかげで、いまでも沖縄県民の多くはこれを丸のままホントだと思ってしまっています。
というわけで、沖縄の負担を認めた上で、もっとクールに見ましょうよ、というのが私の意見です。
さて、この74%論がグラついてきたあたりから出てきた新手の沖縄集中論が、兵員数比較論です。 アレがダメならコレはどうだ、というわけです。
さて、このY氏は沖縄と本土を比較しようとしているのに、いきなり「アジア全域の米軍は10万いてぇ」などと間口を拡げられても困りますねぇ。
これにはネタ元があって、屋良朝博氏の講演会の発言が発生源のようです。
※http://nisiyamatookinawa.web.fc2.com/back/okinawa_1101_89.htm
いちおう土俵に乗っておきますが、韓国と沖縄が増えるのには理由があります。それは韓国には第2師団がいて、沖縄には海兵隊がいるからにすぎません。
陸軍や海兵隊は陸上兵員ですから兵員数が、他の海軍や空軍と較べて段違いに多いからです。
そりゃ、陸軍や海兵隊が、機械を動かす海軍や空軍より、兵隊の頭数が多いのは当然です。
だからと言って、陸上戦力にのみ米軍の軍事力が集中しているという認識は、まったく誤りです。
その理由は、軍隊は制空権(航空優勢)があってナンボのものだからです。いくら戦車でイチビッていても、上から飛行機で簡単にドカンっとやられてしまいます。
ですから、陸上戦力の頭の上をカバーする航空優勢(制空権)が重要なのです。というか、これなしでは、米軍は絶対に作戦行動を起こしません。
これを保つための空軍の航空勢力、空母を進出させるための制海権を押える海軍があって初めて陸上戦力は意味を持つので、陸上兵力の陸軍と海兵隊の数だけ数で比較しても、まったくなんの意味もありません。
これだけを見ても、このY氏はまじめに沖縄問題と在日米軍を考えていないのが、よくわかりますね。
というわけであまり意味があるとは思えない比較ですが、兵員数を比較してみます。これには米軍自身の算出したものがあります。
※「U.S. Forces Japan About U.S. forces
Japan」「在日米軍公式サイト」
・在日陸軍兵員数 ・・・約2千人
・沖縄基地の海兵隊兵員数・・・約1万6千人
・在日海兵隊基地 ・・・約9千人(軍属を含む)
・在日米海軍司令部 ・・・約6千人
・第7艦隊 ・・・約1万3千人
・在日米空軍 ・・・約1万3千人(軍属を含む)
これを見ると、おおよそ沖縄の海兵隊と第7艦隊で、半分半分というところでしょうか。つまり、沖縄と本土はフィフティフィフティで兵員も負担しているのです。
(写真 横須賀基地の米海軍イージス艦。このような艦艇は沖縄には配備されていない)
ところが、外務省2012年版「在日米軍主要部隊・戦力展開状況」をみるとまったく違います。※http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/pdfs/taisei05.pdf
在日米軍人数
合計:約36,700
陸軍:約2,500
海軍:約6,800
空軍:約12,500
海兵隊:約15,000
ありゃ、海軍の兵員数がまるで違うと気がつきましたか。米軍自身は1万9千人と言っているのに、外務省はたった6千800人です。
その違いはおわかりですね。第7艦隊の1万3千人を外務省はわざわざハズしてカウントしているからです。
外務省の数字は、第7艦隊の司令部要員や基地要員の兵員数でしかないのです。
これは、第7艦隊が、日米の政治的配慮で「母港」ではなく、「前方展開基地」に分類されているために、統計数字から除外されてしまっているからです。
もちろん、米本土と変わらない恒久的設備を持つ横須賀が単なる前方展開基地なわけがありません。
簡単に言えば前方展開基地とは、緊張する前線近くに配備される即応部隊の前進拠点です。沖縄の米軍基地群はその性格を担っています。
(写真 横須賀のバースごとにこのような巨大な付属機械工場があって、多くの日本人従業員が働いている。このような存在は沖縄にはない。下写真は横須賀第6ドックで修理される米空母キティホーク。このような巨艦を修理できるのも、海外ではここ横須賀と佐世保だけである。こんな施設を持つ軍港が、ただの「前方展開基地」なわけがない)
第7艦隊の艦艇は出入りしていますから、いつも丸々1万3千人いるわけではありませんが、それは沖縄海兵隊も一緒で、ローテション配備でアフガンに行ったり、強襲揚陸艦に乗り込んだりしています。
それはアチラさんの運用上の都合なので、なんともいいようがありません。
とまれ、在日米軍の負担を首都圏で少なく見せたいという日米の政治的思惑あってこんな奇妙なことになっているわけです。
このようなわけで、兵員数や面積の比較は余り意味がありません。いかようにも操作できるからです。
ほんとうに在日米軍基地の本質を見たかったら、その基地の果たしていることを世界情勢の中で見ねばならないのです。
■写真 うちの愛犬のタローです。小犬の時は、もっと可愛いかった。
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失礼ですが、7割強の数字は共同施設をカウントしての数字だと思います。 昨日の記事の防衛省データの括弧書きされている施設が一時使用のカテゴリーです。計算して見ましたが厚木などの施設含めないと7割強の数字は導き出せませんでした。
投稿: | 2015年8月30日 (日) 07時31分
私も管理人さんと同じく、
面積や兵員の比較しても意味が無いと思いますが
74%の数字は、専用だけじゃなく共同使用も含まれいたと思いますよ。含まれないのは一時使用 だけだったと思います。
投稿: 元本部町民 | 2015年8月30日 (日) 07時57分
ご指摘ありがとうございます。ウッカリミスです。当該部分は削除し、正しい説明をしている過去記事をご案内しました。なお主旨全体には変化はありません。
投稿: 管理人 | 2015年8月30日 (日) 08時17分
皆さん、ツッコミ速い!
やっぱりこちらの読者さん、レベル高いわぁ。
琉球タイムスって、ガセ新聞だと分かってますが、相当に頭悪そうですね。
体裁はそれっぽいですが、中身は高校生が学祭でふざけて出すウソ新聞レベルで「うわぁー…ケッ!」て感じ。大人には見るに堪えない酷さです。
これ、沖タイか琉新がわざわざ輪転機回して印刷してるんでしょうか?
もはや病気ですよ。
投稿: 山形 | 2015年8月30日 (日) 09時31分
あえて面積を語るなら74%(うち1/3は北部訓練場、1/3がシュワブとハンセン)ですね。
沖縄県の基地面積の多くは訓練場や射撃場なのかな、それを除いても前線である沖縄の比率は高けど。
常連の皆さんは面積や兵員数云々と言わない方々。
確か上瀬谷は6月末で返還完了と思います。
USJは国頭村が有力みたいですね。
投稿: 多摩っこ | 2015年8月30日 (日) 16時31分
多摩っこさん。おっしゃるとおりです。ハンセン、シュアブ、北部訓練場が面積負担の元凶です。
ところが、これらは地元でも使い道がない傾斜地であって、あの稲嶺名護市長すら、かえさないでくれと防衛局に懇願しているほどの場所です。
ましてや北部訓練場に至っておやです。ですから、これらが返還されれば、いちばん困るのが地元行政です。各種助成がなくなりますから。
山形さん、琉球タイムス、一見よくできていて、私も一瞬、えっとおもっちゃいました(爆)。
投稿: 管理人 | 2015年8月30日 (日) 16時50分
管理人さんのおっしゃる基地の機能をみよとは、このあたりを指しているのかと解釈してます。
知事や反基地派が74%を連呼し移設反対を続けるなら重要度の低い北部訓練場(過半分は返還予定)や他の訓練場、射撃場の返還交渉を国は進めるのではないかと考えます。
稲嶺市長は反基地だけで経済には疎い!?反日の朴大統領と似たところがあるような(笑)
岩国に普天間から部隊の一部が移転したり、厚木の艦載機移転予定に愛宕山の住宅建設など、安倍総理が地元に上手く利益誘導しているのかなと感じます。
投稿: 多摩っこ | 2015年8月30日 (日) 22時30分