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2015年8月18日 (火)

安倍談話 通り一片の「謝罪と反省」はいらない

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この安倍談話の特徴はいくつかありますが、そのひとつは<近代>という時代の流れの中で植民地主義を見ようとしたことです。
 

この部分です。
平成27年8月14日 内閣総理大臣談話 - 首相官邸
http://matome.naver.jp/odai/2143956104644333801

「百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に、植民地支配の波は、十九世紀、アジアにも押し寄せました。その危機感が、日本にとって、近代化の原動力となったことは、間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。
 世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました」

 この部分は、ある意味で非常に挑戦的です。なぜなら、19世紀から20世紀にかけての西欧帝国主義を真正面から批判しているからです。 

ヨーロッパ諸国、とりわけ英国にとって決して愉快なことではないでしょう。 

英国の主要紙フィナンシャルタイムスは、苦々しげにこう述べています。

「安倍晋三首相は14日、日本の戦時中の行いに対し自らの明確な謝罪の表明を拒んだ。痛切な反省を表明した歴代政権談話の形式を引き継いだものの、文脈を顕著に変えた。  第2次世界大戦で日本が敗戦し70年目を迎える節目となる談話で安倍首相は、過去のおわびを継承すると述べたが、西洋の植民地支配への抵抗に関する、よりナショナリスト的な話に組み換えた。
歴代の首相が使った、「植民地支配」「侵略」などカギとなる文言を繰り返すことによって、安倍首相は、かつての敵である中国や韓国から激しい批判を避けようとした。
しかし、安倍首相は、自身の保守系支持基盤に向け、日本の歴史解釈は定まっていないこと、そして同国はずっと謝罪し続ける意図はないというシグナルも送った。「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と同氏は述べた」2015年8月15日)

 さて、このFT紙の批判は当たっているでしょうか。 

19世紀半ばまでに、植民地列強によって、アジア、アフリカはほぼ完全に植民地支配されていたのは紛れもない事実です。 

唯一のアジアにおける例外は、日本とタイを残すのみでした。 

日本が明治維新という「コントロールされた革命」を実行しなければ、我が国もまた、英仏露によって分割された植民地になったことは避けられなかったことでしょう。 

いわば日本の近代の原点は、この西欧植民地主義に対するひりつくような危機感にあったと言っても間違いではありません。

Main_image_2(写真 アヘン戦争)

この危機感の軽重の違いが、中国と日本の温度差でした。中国はその巨大な中華帝国を取りまく華夷文化圏が長城の如く不変であると信じていました。 

そしてまた、中華を宗主国とする、韓国、琉球王国といった冊封国にとっても、それは動かざる真実でした。 

彼らは押し寄せる列強帝国主義の前で、眠り続けていることを選んだのです。 

脱線しますが、日中両国に属する両属国家だった琉球王国は、この明治維新を嫌って、中華帝国に密使を送ります。幸地朝常です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-85e9.html 

幸地は、清国の軍勢が日本を蹴散らしてくれることを夢見ていました。 

しかし、崩壊の淵に立っていた清国には、そのような力があろうはずもなく、幸地の援軍要請は列強の介入による、琉球の分割統治を招きかねない最悪なものでした。 

このようなひとつ判断を誤れば、列強の介入を招き、分割されて植民地に転落する、そのような切り立ったエッジの上を歩む、そういう時代だったのです。 

一方、極東の小国にすぎなかった我が国にとって、我が国を守る力はあまりに小さく、余りに非力でした。 

我が国が独立国として存続するには、今までの幕藩体制を根底から変革するという痛みを味わいながら、致命的に遅れていた西欧近代技術を積極的に取り入れねばならなりませんでした。 

当時「お雇い外国人」と呼ばれたインストラクターの大部分は英国人でした。英国が、日本に鉄道や通信などの近代技術を教えてくれたのです。 

そして、近代日本が誕生まもなく直面したのが、ロシアの世界規模の南下運動でした。 

ロシアの南下膨張に対抗するべく英国は「グレートゲーム」と呼ばれる壮大な規模の戦いを随所で戦わねばなりませんでした。 

英国はインドに侵入しようとするロシアとアフガニスタンで戦火を交え、後にはその舞台は極東へと移りました。 

これが日露戦争です。我が国が日英同盟という絆なしに勝利することは、ありえなかったことでしょう。 

日本海海戦の旗艦だった三笠は、英国製でした。当時我が国には、自力で戦艦を作る能力がなかったからです。

また、東郷平八郎も、英国海軍で教育を受けています。

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このように、日本を<近代>という動乱の時代に招待したのは英国であり、良き教師となったのは英国でした。

そしてロシアと戦う後ろ楯になってくれた世界唯一の同盟国もまた英国です。

つまり日本の近代は、フィナンシャルタイムスの母国である英国なしで語れないのです。 

ですから、この時代をFT紙のように、「西洋の植民地支配への抵抗に関する、よりナショナリスト的な話に組み換えた」と裁断されることには抵抗感があります。 

フィナンシャルタイムスにお聞きしたいのですが、近代帝国主義の時代においてナショナリズムといった民族主義なしに、どうしてこの日本というアジアの小国が民族的困難を乗り切れたのでしょうか。

空論です。もしそれを悪と呼ぶならば、19世紀から20世紀中盤までの時代で、非ヨローッパ地域におけるただひとりの「悪」は我が国であり、日本人は悪党でけっこうです。 

全世界の無数にある有色人種で、ただひとつの屈しなかった国、それが我が国なのですから。 

しかし、日本はその後の国家選択において大きな誤りを犯しました。国際協調の流れに背いて、孤立化の道を選んだのです。 

そしてその道は三国同盟と戦争へとつながっていました。

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この部分について、安倍談話はこう述べています。 

「当初は、日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。
 満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。
 そして七十年前。日本は、敗戦しました」

 この点についてもまた、FT紙は「ナショナリズム的に組み換えた」と言いたいのでしょうか。 

この安倍談話の記述は、概括的ですが、的確です。 

戦前の日本の政治システムの根本的欠陥は、政治と軍隊との間が元老という賢者たちによって調整されていて、制度的な歯止めがなかったことです。 

軍は、大臣を内閣に出さないだけで内閣を退陣に追い込めました。潰したければ、大臣を引き上げればよかったのです。

これが軍部の独走、後には関東軍という現場の独走すら招きました。 

憲法も議会もありながら、軍を統制しきれず、その軍すら内部で陸軍と海軍の醜悪な抗争を繰り広げ、またその内部でいくつもの派閥に分裂し、中央と現場が争う、これでまともな国家運営ができたらミラクルです。 

このような混乱に、愚かなポピュリストの近衛文麿が現れ、我が国を中国戦線への泥沼へ、そして日米戦争へと駆り立てて行ったのです。 

この経過については機会をみて詳述します。 

さて整理すれば、安倍談話の歴史総括は以下です。 

①近代は植民地主義の時代であり、わが国の近代はそれとの抵抗の中から生れた。
②日本の独立と日露戦争の勝利は、世界の植民地支配にあえぐ人々を勇気づけた。
③日本は国際協調の道を歩んだが、日本は満州事変、国際連盟の脱退を経て 国際秩序の破壊者の道を選んでしまった。
④日本内部の統治システムの脆弱さによって、軍を統制する歯止めを失い、戦争の道を選択する致命的誤りを犯した。

一部でやや首を傾げる部分もありますが、おおむね真摯だと評価できるのではないではないでしょうか。

この安倍談話の歴史認識をカテゴリー分けするなら、ライトではなくむしろリベラル保守だと思われます。

特にいわゆる「大東亜戦争」を、「アジア民族の解放」とする大義をスルーしたことは評価できます。

もし、このライトの皆さんの好きな「歴史の大義」を前面に打ち出したのならば、この談話はぶち壊しになったはずです。

大戦におけるアジア諸国の独立は、あくまでも結果であって、日本の意図ではありませんでした。

これを強調することは、強い言い方をすれば偽善です。

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この、「大東亜解放の大義」を押し出すかしないか、という部分こそが、保守とリベラル保守の大きな歴史認識の差です。 

これは北岡伸一氏の意見に近いもので、氏の持論は明治期の戦争を自衛戦争とし一方、昭和期のそれを侵略戦争だと規定しています。 

いわば、戦前と戦後に断絶があるとした考え方です。司馬遼太郎氏などもこれに近い考え方です。

これに強い批判をしてきたのが保守知識人でした。 

有識者懇には保守論客として有名な中西輝政氏も入っていましたが、安倍氏は結局、北岡氏に近い線でまとめたようです。 

私は賢明だと思います。この談話は安倍氏の歴史観の発表場所ではないのですから。

とは、これが現職の、しかもおそらくは長期政権になるであろう首相が、日本の近代の道のりを世界に発信し、その栄光と蹉跌と、それを踏まえた未来を語ったことです。

この安倍談話の姿勢は、中韓や野党、マスコミがうるさいから謝っておこうというという事なかれ主義とは一線を隠しています。

歴史は、通り一遍の「謝罪と反省」であるかぎり、ただの文字でしかありません。知恵でもなければ、経験ですらないのです。

そういえば、歴史のことをドイツ語でGeschichtejと呼びますが、実は物語も同じです。歴史とは、物語であり、河のような流れです。

歴史を語る人が百人いるように、聞く人も百人います。それぞれが自らの母国の百通りの物語を持っているのです。

その大河の一部を切り取って、「謝罪」をして見せるほうが傲慢なのではないでしょうか。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-d286.html

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コメント

安倍談話、今回もスピーチライター氏がこまかく穴の無い西洋好みの文言を丁寧に並べましたね。
一読して何て意地悪な談話だろうと苦笑しました。韓国は無視して、中国を誉め殺しながら現在を牽制し、欧米の近代植民地政策にもふれながら戦争を反省する。
これ位白々しく言いっ放して良いのだと思います。
国内的には、私達が国際社会の雄に躍り出て危うい背伸びをした振る舞いを筋だけ通そうと繰り返して孤立していった戦前の失敗を検証する際に、好き嫌いでなく冷たい位なリアリストになる時間をもっと持ちたいですね。
欧米は対等な相手に程きつい事言ってきたりしますが、普段からもう何百年も対等に殴り合ってきた国々なので、ほらやっぱり黄色人種だからとか言ったら負けです。太々しい笑顔でずんずん進む中国はある部分尊敬します。

村山談話が「国策を誤り」と一言で切って捨てた近代史に、随分切り込んでくれましたね。
歴史の必然を考えるのはリアリストには当然の視点ですが、これを世界に向けて発信したことに驚きました。
物足りない部分は今後に期待、ということで。

プーさん、私も驚きました。発したからには戦前の八紘一宇だとか共栄圏だとかとは全く違う事を行動でアピールしないと、やばいと思います。

ふゆみさん。そうはならないと思いますよ。明日書きますね。

確かに西洋の植民地支配は英国にとって耳の痛い話かもしれませんが、その一方で同じフィナンシャルタイムズの8月17日付の社説「アジアは過去より未来に目を向けよ」では、中韓が歴史問題を政治的に利用していることを冷静に分析し、安倍談話に対し好意的に解釈しています。
談話の中の「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」の部分についても、社説では「歴史の教訓は決して忘れてはならないが、過去を終わったものとすべき潮時というものがある。アジアの平和の展望にとっては、その時は今だ。」と述べています。
FTはアジアに弱いという勝手な思い込みがありましたが、想像以上に冷静な判断に驚きました。

管理人様
そうならない事を切に願っています!

ふゆみさん、おそらく事前の根回しあってのことだと思うのです。
最低限アメリカ、多分イギリス、もしかして中国も。
韓国と日本の野党は外されていますね(笑)

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