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2015年9月

2015年9月30日 (水)

ついに国連人権理事会で「民族自決権」を主張し始めた翁長氏と、それをブロックした我那覇真子氏

129

国連人権委員会で、翁長雄志知事がわずか2分間ですが、スピーチしました。

翁長知事がこのような政府の専管事項である外交・安全保障において、公人でありながら頭越し「県外交」をする当否については、今回はふれません。 

本来あってはならないことですし、そのようなことが常態化することは決して沖縄のためにもよくないことだとだと思います。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-8e8f.html

さて、内容です。特に目新しいことは言っていません。あいもかわらず、「基地を自主提供したことはない」「0.6%の土地に73.8%の米軍基地」などという、私たちにとっては壊れたレコードのようなことを繰り返しているにすきません。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-974e.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-dd3e.html

ただし、この国際会議の場で翁長氏は、一点だけきわめて重要なことを述べていることに注意せねばなりません。

それは、とうとう翁長氏が公然と、「民族自決」を主張し始めたことです。 

今まで翁長氏の主張はとりあえず「日本の一部」としての発言に止まっていましたが、とうとうその一線を越えて、「先住民族の民族自決権」を唱え始めたことになります。

それはこの部分です。

「私は、沖縄の自己決定権がないがしろにされている辺野古の現状を、世界の方々にお伝えするために参りました」
I would like the world to pay attention to Henoko where Okinawans’ right to self-determination is being neglected.

この翁長氏が使った、”right to self-determination”(セルフデタミネーション) という文言にご注意ください。 

このアブナイ言葉は、その「取り扱い注意」の性格からか、公式邦訳ではおとなしく「自己決定権」と直訳されていますが、もちろん正確ではありません。

このセルフ・デタミネーションは、そんな一般的なものではなく、はっきりと「民族自決権」と訳すべき用語なのです。 

下の写真のような、カタルーニャ自治州問題などで使われているのが、この「民族自決権」という用語なのです。

Photo_4

定義を押えておきます。

「民族自決、self-determinationとは、各民族集団が自らの意志に基づいて、その帰属や政治組織、政治的運命を決定し、他民族や他国家の干渉を認めないとする集団的権利。自決権ともいう」Wikipedia

このセルフ・デターミネーションという概念は、国際法上の権利用語です。 

国際法的根拠は、国連憲章第1条2、国連総会決議第1514号(1960年12月14日)「植民地諸国、諸人民に対する独立付与に関する宣言」にあるとされています。 

1966年の国際人権規約によって規約締結国は自決権を保障せねばなりません。日本は1979年に批准しています。 

このように、この「セルフ・デターミネーション」という概念は、安易に一般化できる概念ではなく、植民地人民の独立の権利としてのみ用いられるべき用語なのです。 

なお、ウィキによれば、「植民地の独立がほぼ達成された今日では、国家内部の先住民少数民族にも自決権が及ぶかどうかが議論の対象となっている」そうで、翁長氏が仮に「先住民独立」を唱えたとしても、それがそのまま人権規約上有効かとうかは別の話となるようです。 

いずれにしても、翁長氏は民主的手続を無視して、ひとり勝手に「先住民族民族自決」というルビコン河を渡ってしまったようです。

したがって、論理的には、今後の移設問題は、日本政府と地方自治体との協議ではなく、「支配民族」と「先住民族」との闘争の場になりえるということになります。

沖縄県民の皆さん、前回の知事選で、こんなことまで言わせる権限を翁長氏に与えたのでしょうか? 

Photo_3

さてここで改めて、翁長氏の国連人権委の主張と、それにただちに反論を加えた我那覇真子氏(がなはまさこ)の主張を並記して整理しておきましょう。

①米軍基地について
●翁長
・沖縄基地は、米軍が暴力で接収し、自主的提供はない
。(※歴史的事実ではない。辺野古のキャンプ・シュワブは、住民が積極的に米軍と交渉し、有利な賃貸契約を勝ち取って貸していることは『辺野古誌』にも書かれている)
・米軍基地地は犯罪の温床だ。
・国土のわずか0・6%に、在日米軍専用施設の73・8%が集中している。

●我那覇
・日本とアジア太平洋地域の安全保障におけるアメリカ軍基地の役割は重要なのにもかかわらず、県知事は中国の脅威と米軍基地の役割を無視している。

③人権について
●翁長
・沖縄県民の自己決定権や人権は踏みにじられ続けた。

●我那覇
・沖縄県民は日本の一部として世界最高水準の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受している。

④沖縄県民は「少数民族」「先住民族」か?
●翁長
・沖縄は「民族自決権」をさまたげられた「先住民族」だ。(※「先住民族」という表現はスピーチに登場しないが、論理的にはそうなる)

●我那覇
・沖縄は紛れもない日本の一部であり、「先住民」ではない。
・中国が、県内の公人や支援者を煽動して独立運動を煽動している。

なお、この翁長氏の国連人権委スピーチに先立って、尖閣諸島を市域に含む石垣市議会は、演説において「中国の一方的な領有権主張」が「沖縄県民の人権を侵害している事実」を指摘するよう要望しましたが、ひとこともふれられませんでした。

この中国の脅威をまったくスルーするのは、一貫した翁長氏と地元2紙の基本姿勢です。

翁長氏が一顧だにしなかった石垣市の声については、記事末尾に抜粋ですが掲載いたしましたので、ぜひご覧ください。 

.              。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。. 

Photo

 翁長沖縄県知事の国連スピーチ(全文と訳文)
2015年9月2日
日本の沖縄県の知事、翁長雄志です。
私は、沖縄の自己決定権がないがしろにされている辺野古の現状を、世界の方々にお伝えするために参りました。
沖縄県内の米軍基地は、第2次大戦後、米軍に強制的に接収され、建設されたものです。私たちが自ら進んで提供した土地は全くありません。
沖縄の面積は日本の国土のわずか0・6%ですが、在日米軍専用施設の73・8%が沖縄に集中しています。
戦後70年間、沖縄の米軍基地は、事件、事故、環境問題の温床となってきました。
私たちの自己決定権や人権が顧みられることはありませんでした。
自国民の自由、平等、人権、民主主義も保証できない国が、どうして世界の国々とこうした価値観を共有できると言えるのでしょうか。
日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を無視して、今まさに辺野古の美しい海を埋め立て、新基地建設を進めようとしています。
私は、考えられうる限りのあらゆる合法的な手段を使って、辺野古新基地建設を阻止する決意です。
今日はこのようにお話しする場を与えて頂き、まことにありがとうございました。
 

60381

 ■国連人権理事会における我那覇真子氏スピーチ全文
スピーチは英語 和訳は本人による
http://hi-hyou.com/archives/3368
2015年9月26日
被差別少数琉球民族は存在しない
~デマゴーグとプロパガンダは21世紀の国際社会には通用しない~
 

昨日皆様は、沖縄は紛れもない日本の一部であるにも関わらず、「沖縄県民は日本政府及び米軍から抑圧される被差別少数民族である」とお聞きになられたと思います。
それは全くの見当違いです。
私は、沖縄生まれの沖縄育ちですが、日本の一部として私達は世界最高水準の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受しています。
人権問題全般もそうで すが、日本とその地域への安全保障に対する脅威である中国が、選挙で選ばれた公人やその支援者に「自分達は先住少数民族である」と述べさせ沖縄の独立運動 を煽動しているのです。
我々沖縄県民は先住少数民族ではありません。
どうかプロパガンダ(政治宣伝)を信じないでください。
石垣市議会議員の砥板芳行氏からのメッセージです。
「沖縄県の現知事は無責任にも日本とアジア太平洋地域の安全保障におけるアメリカ軍基地の役割を無視しています。翁長知事はこの状況を捻じ曲げて伝えています。中国が東シナ海と南シナ海でみせている深刻な挑戦行為を知事と国連の皆様が認識をすることが重要 です」

ありがとうございます。 

Photo_2
中山義隆 石垣市長 日本記者クラブ会見) 抜粋 

石垣市の管轄する尖閣諸島についてご説明をさせて頂きます。
東シナ海に点在する無人の島嶼部でありますが、魚釣島、南小島、北小島、久場島、大正島、更には沖の北岩、沖の南岩、飛瀬(とびせ)、とみっつの岩礁等からなっております。
石垣市の行政区域の中ですが、もっとも大きな魚釣島は石垣市から北西約170kmという位置でございます。周辺海域は非常に良好な漁場として知られておりまして、明治時代から昭和の初期にかけましては、羽毛の採取や鰹節の製造などで多くの人が魚釣島等で生活をしておりました。
尖閣諸島の位置の中におきましては、東シナ海の海底に石油の埋蔵の可能性があるというようなかたちで、1968年(昭和43年)に国連アジア極東経済委員会から報告がありまして、それ以降、中国及び台湾が領有権を主張するような場所になっている所でございます。

Photo_7
今日、9月7日でございますけれども、何の因果かわかりませんが、ちょうど5年前の平成22年9月7日に中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突するという事件が起こりました。このことは記憶に新しく、私たちにとっても大変大きな衝撃でありました。尖閣諸島の付近で違法操業中の中国漁船が、取り締まりを実施した海上保安庁の巡視船2隻に体当たりをして来た事件であります。その際、ビデオの流出等、いろいろありまして、そこで、これまでなかなか議論されてこなかった国境離島である尖閣諸島が国民全体が知るというところに至ったわけであります。
中国漁船の衝突事件を契機としまして、本市の尖閣諸島を取り巻く環境は激変してまいりました。
ご存知のように平成24年に当時の東京都石原都知事が、尖閣諸島を買い取るというようなお話をして、全国各地から多額な寄付が寄せられたのも記憶に新しいところでございます。
(略)
その年の9月11日に日本政府が所有者から3島を購入し、所有権を国有化ということになりまして、それ以降、石垣市の尖閣諸島周辺では、中国公船によります領海侵入が連日のように繰り返されているというような状況であります。
特に公船によります領海侵入は、国による国有化前の5回という数字から、国有化後の3年間で既に129回というところまで及んでおります。
 

Photo_5また、中国海洋局所属の固定翼機によります尖閣の領空侵犯も起こっているのも事実であります。
このような現状に関しまして、私どもとしては大変大きな不安を感じるとともに、不測の事態が起こり得ないかということを不安視しているところでございます。
 

先にもお話ししましたけれども、尖閣諸島の周辺の海域はマチ類、カツオ類等、多くの魚が獲れる良好な漁場であります。漁業者においては、この不測の事態を恐れて、現状、漁を控えるという事態になっております。
(略)

市長として現状に対し、大変危機感を感じているところでございます。市民住民の生命財産を守ることは、私のもっとも大事な仕事のひとつであると考えております。平成25年には、尖閣諸島の通過を伴う中国海軍艦艇の活動が計8回、沖縄南方海域での活動が計4回されたと、確認をされております。このような状況を鑑みて、日々の環境が悪化し、現実的な脅威が高まって来ているというふうに感じているところでございます。
(略)
更に安全保障環境の現実的な脅威といたしましては、北朝鮮のミサイルの発射というのがございました。

Photo_6(写真 北朝鮮の発射を迎撃するために石垣市に緊急配備されPAC3を批判する地元紙。地元紙が中国の侵犯を批判したことはついぞ聞かない。別に「潰せ」とも思わないが、いったい県民を守る側にいるのか聞きたい)

(略)
現状は中国海警局【日本の海上保安庁に相当】等の【中国】公船による領海侵犯や尖閣諸島周辺海域での中国海軍の活動などが急速に拡大活発化しているのが現状であります。
(略)
石垣市の尖閣諸島で、中国が領海侵犯を行っていること、近隣諸国でさまざまな不安定要素が出て来ているということを考えまして、これ以上の状況の悪化を止める手立てとしては、政府にしっかりとした外交の中での、もちろん平和的に話し合いで解決されるのがもっとも(ふさわしい策)でございますが、政府が、力による【中国の】現状維持【現状変更?】を容認しないという立場をしっかりと示すと同時に、それに対する備えも作って頂くことが必要かと考えております。
(略)
現在国会において審議されておりますが、安全保障関連法案につきましては、我が国の自衛権に基づいて自衛隊が米軍とも必要に応じ連携しつつ、いかなる状況においても対応できる体制を作り、日本の平和と安全をより確かにするもの、また沖縄を含む全体の安全保障が強化されるものであると考えております。
(以下質疑)
 

※長文につき抜粋としましたが、ぜひとも尖閣を管轄に持つ石垣市長の生の声の全文をお読みください。

■写真 そばの花が満開です。

2015年9月29日 (火)

節vs節 仮想闘論会その2

095
昨日からの節vs節仮想闘論会の続きです。

小林氏のように持説を180度変えるというのはかなりみっともないのですが、昨日も書きましたが、よしとしましょう。

学者が持論を変更することに自由はあります。

ただし、その理由と経過を明らかにすればですが。小林節氏はそれをあきらかにしないまま、変節しています。

氏の言説で唯一転向理由が明らかにされているのは、第189回会議日誌 - 衆議院憲法審査会での、わずかにこの部分です。

「最近は中国のおかげで、9条神話に浸ってよいのかという議論が出てきた。しかし、9条のおかげで70年間(自衛隊が)海外に行かなかったということは大変な実績である。これは、改憲論者の私としては盲点であった」

なにが盲点ですか。笑わせる。

「日本が9条で70年間平和でいられたことがわかった」ですか!呆然となるくらい幼稚な認識です。

こんなシールズの坊やたちていどのことを今さら言い出すならば、集団的自衛権容認など初めから言い出さねばよかったのです。

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これが、「すべての法律の上位法」の守護神を気取る、憲法学の権威のひとりというのですから、なんともかとも。

では、今まで「日米安保で守られていた」「9条で戦争はなくならない」という認識が、いつどこで変化したのか、自ら明らかにせねばなりません。

なぜなら、第9条が突然「70年間日本の平和を守ってきた」わけでも、日米安保が日本の防衛を突然やめたわけでもないからです。

また小林氏は同じ参考人発言で、こうも述べています。

「この憲法の下で現に国会が存在し、国が発展してきたということは間違いない事実であるので、恨み節を言い合うよりも、今をどうするかにエネルギーを使ってほしい。押しつけ憲法論はそのとおりだが、だからその悔しさを改憲に変えなければならないという感情は無駄である」

なにを時代錯誤な。改憲がそんなていどの「悔しさ」で叫ばれている、と考えていること自体がズレ切っています。

今、改憲を必要だと考えているのは、「押しつけ憲法」にルサンチマンを持つあなたのような世代ではなく、眼前の中国の脅威に何も手を打てない苛立たしさに身を焦がし、「今をどうするか」自答している若い世代なのです。

むしろ小林氏のような70歳前後の世代の多くは、いまだ多くが安閑とした「9条の眠り」の中にいます。

9条が「押しつけられた」当座と今が決定的に違うのは、日本を取り囲む脅威のレベルが70年前よりはるかに悪化し、脅威が現実化したことです。

氏が集団的自衛権容認の見解を語ったのは、2013年7月。わずか2年前のことです。

たった2年間で、日本の平和の守り手が、日米安保ではなく、9条だったというコペルニクス的展開が起きたことになります(笑)。

あえて言えば、その間起きたのは、小林氏自身も認めているように、中国の海洋膨張がめざましくなったということくらいでしょうか。

つまり、小林氏は中国の帝国主義的膨張を目の当たりにして、持説であった集団的自衛権容認・改憲という所論を捨てたことになります。

いわば、日本の安全が戦後もっとも危機に瀕して集団的自衛権容認による日米安保の強化が叫ばれている、まさにその時を狙いすましたように、氏は転向したのです。

私たちは、こういう人物をなんと評したらいいのでしょうか。

そしていまや、真逆な立場に変身し、共産党系学者たちと共に全国規模の集団違憲訴訟をせよ、と国民にアジ演説をしてまわるような運動家的学者にまで変身しました。

小林さん、自説の一貫性がもっとも求められるときにこれを裏切り、自らの醜悪さを為政者への汚らしい罵倒で糊塗する・・・、情けないと思いませんか。

あなたは、沖縄県知事の翁長氏に通じるような、人間として自らを律するはずの大事な何かの一線を超えてしまった人物です。

これ以上の批判は、他ならぬ過去の小林節氏自身におまかせするとしましょう。

                  ~~~~~~~

※内容を替えない限り、口語体に転換してあります。もちろん脚色してありますが、主旨には手を加えたり、歪曲したりしておりません。
煩雑になるので、個別に引用元は明示しませんでしたが、発言ソースは以下です。
第189回会議日誌 - 衆議院憲法審査会 
・産経新聞 2006年11月11日 正論
・ダイヤモンドオンライン(2013年7月16日)
・日刊ゲンダイ15年2月21日
・日刊ゲンイダイ2015年7年月14日


              ~~~~~~~~~~~

●司会
「では、そもそも9条についての見解はいかがでしょうか」
 

Photo_5

●ホワイトコバヤシ
「憲法改正には価値的限界があります。
価値的限界は、人類が歴史の中で磨いてきたものであすから、現時点での到達点であり譲りえない価値なのであって、人権の尊重、平和主義などの価値を否定する憲法改正は手続的には可能かもしれないが、あってはならないという考え方です」
 

●ブラックコバヤシ
「反対です。いっそ憲法をすっきり改正すべきです。
そして、(1)「侵略戦争はしない」、(2)「ただし独立主権国家である以上、侵略を受けたら自衛戦争はする」、(3)「そのために自衛軍を持つ」、(4)「国際国家として国際貢献もするが、それには国連決議の他に事前の国会決議も必要とする」と明記すればいいのです」
 

●ホワイトコバヤシ
「安倍首相の暴走を止められないことは恥です!(絶叫)
昨年の7月に、安倍政権は憲法9条の下でも集団的自衛権の行使し、海外派兵を可能にする、という閣議決定をしました。
安倍首相の手口は、今国会でこの閣議決定の中身を拡大解釈して無制限に地球上の何処へでも自衛隊を派遣できるように、しかも支援対象も拡大し、正当防衛なら武器の使用も容認されると言っています。
これでは、いつの間にか戦争に巻き込まれていた、ということは目に見えています。これは『戦争恒久法案』です!」
 

Fm8n(ホワイトコバヤシ先生)

●ブラックコバヤシ
「落ち着きなさいよ、あなた。学者ですか。『戦争恒久法案』なんて造語を作らないで下さい。
ネーミング自体が誤った価値判断を含んでいて、歪曲した情報を伝えます。学者が読み捨てのアジビラまがいの言説を吐いていいんですか。
今回の法改正はあくまでも限定的なもので、あなたが言うような『恒久的に戦争をする』というものじゃない。
9条に話を戻しますが、9条2項では『戦力の保持』も禁止されていますが、戦力を『他国を侵略できる大きな軍隊のこと』と仮定すれば、戦力に至らない程度の自衛力は持てるはずです。
そう考えると、日本に自衛隊があるのはおかしなことではなく、自衛戦争もできることになります。
ですから、日本政府も以前から、『日本は国家の自然権を根拠に自衛権を持てる』という見解を出しています」
 

201107_4_2(ブラックコバヤシ先生)

●ホワイトコバヤシ
「いやなし崩し的にこの手法で、次々と憲法が壊されていることを多くの国民は知らない。憲法改正の先取りをしているんだァ!(絶叫)」
 

●ブラックコバヤシ
「困った人だなぁ。あなた名前はなんて言ったっけ。小林節?私といっしょだ。気分悪い。どうしてそうまで感情的なんです。
いいですか、政府は憲法の立法趣旨に照らして、集団的自衛権を自らの解釈で自制していますが、このままだと日本は、他国に攻められたときに自分たちだけで自衛しなくてはいけません。
しかし、『襲われたら同盟国が報復にゆく』いうメッセージを打ち出せる集団的自衛権は、他国の侵略を牽制する意味においてもメリットがあります。
だから、改めて『日本は集団的自衛権を持っている』と解釈を変更するべきでしょう。
 

0f17a99e97ce5dd701e59c1598611f39(ホワイトコバヤシ先生)

●ホワイトコバヤシ
「今、憲法9条故に過去70年も戦争をしないでこられた我が国を、憲法9条をそのままにして海外で戦争させることをする首相が政権を握っている。
これを止めないとしたら、政治家も官僚もメディアも、そしてそれを許す有権者もまことに恥だと思うべきだ!」
 

●ブラックコバヤシ
「違いますよ。まるであなたの言い方だと、海外に戦争をしかけに行くように聞こえる。歪曲も甚だしい。
今回の法改正で、日本を狙っている国に対しては牽制になるし、中国を恐れている国に対しては安心感を与えられます。
あらゆる意味において、世界は納得するのです。
だから、世界中の国は、中韓を除いてこの法案を全面的に支持しているじゃないですか。それが不可欠である、と政府が考えるならば、その責任において、以下の2例に関しては集団的自衛権を容認しても、9条と矛盾しないのです」
 

●ホワイトコバヤシ
「なし崩し的に戦争ができる国にしていこうとしているんだァ!(絶叫して机を叩く)」
 

Yjimage(ホワイトコバヤシ先生)

●ブラックコバヤシ
「怒鳴らないで下さい。
あなたは必要最小限度の実力行使という概念を知らないんですか。その2例を述べましょう。
例えば、公海上でわが国の自衛艦と併走している米国の艦艇が他国から攻撃された場合に、自衛艦が米艦を支援したら、それは集団的自衛になってしまいますね。
また、同じくわが国の上空を飛んで米国に向かう他国のミサイルをわが国が撃ち落としたら、それも集団的自衛になってしまいます。
しかし、だからといって、そのような行動を自制することは政治的に賢明か?という問題が提起されてくるのです。
わが国に対する直接的な攻撃がなかったとしても、それをわが国が座視すれば日米同盟が損なわれることが明白である以上、仮に形式上は集団的自衛活動になろうとも、わが国の存続に不可欠な軍事行動は、それを許容する憲法9条に違反するものではありません。
つまりこれは、高度に政治的判断を伴う政府の判断なのです」
 

●ホワイトコバヤシ
「もう、あんたとは相いれない。
立憲主義は、権力者の恣意ではなく、法に従って権力が行使されるべきであるという政治原則です。
立憲主義は、人間の本質が神のごとき完璧なものではないという事実を前提とするもので、現代においては選択の対象ではなく所与の前提なのです。
それをひとりの為政者が改釈するなどもってのほかだ。
安倍首相は神なのか!」

●ブラック・コバヤシ
「先にも言いましたが、法令の解釈というものは、政府に解釈権があります。
憲法もまた、政府の責任において、政策を選択せねばなりません。
それが、かつてのイラク戦争のように米軍の友軍として参戦するというなら憲法9条違反でしょうが、日米同盟の死活的存続にとって重要ならば、条文の文言とその立法趣旨の範囲内で、許容し変更されてよいものです。
実際、これまでもそうでした」

●ホワイトコバヤシ
「良心のかけらもない安倍の犬め!名前はなんという!」

●ブラックコバヤシ
「では、あんたは学匪だ。私は小林節慶大教授だ。文句あるか!(怒鳴り返す)」

●ホワイトコバヤシ
「私と同じじゃないか!肩書まで一緒だ。いや、私のほうは「名誉」がつくだけ、お前よりエライ」

●司会
「はい、しらけきりましたところで、今日はこのていどで締めさせていただきたいので、最後にひとことずつお願いします。」

Photo_2

●ホワイトコバヤシ
「今回、強行採決をされても、諦めないで下さい。予定通り、バカがバカをやっただけです。『やっぱり来たか! バカ野郎!』と言っていればいいのです。
強行すれば、参院選はつまずく。いや、つまずかせる。違憲訴訟も準備しています。
法律が成立してしまったら、その瞬間から我々の平和的生存権がシクシクと害され続けるのです。
たくさんの人が集団訴訟を起こすでしょう。今日も弁護士会でお願いをしてきました。
『何百人という話も出ていますが、1000人の弁護団を作りませんか』と。そうすると、地裁の裁判官も『違憲』の判決を出しやすくなる。
私は死ぬまで諦めませぇ~ん!(泣きながら叫ぶ)」

●ブラックコバヤシ
「集団的自衛権は国際法となんら矛盾しません。
したがって、日本政府はかねてから、『国家の自然権を根拠に自衛権を持てる』という見解を出していきています。

政府は憲法の立法趣旨に照らして、集団的自衛権を自らの解釈で自制していましたが、このままだと日本は、他国に攻められたときに自分たちだけで自衛しなくてはいけません。
それは不可能です。日米安保が平和と繁栄の基礎なのです。

我が国が侵略されれば、憲法を支える基盤そのものが破壊されてしまいます。
ですから、『襲われたら同盟国が報復にゆく』というメッセージを打ち出せる集団的自衛権は、他国の侵略を牽制する意味においてもメリットがあります。
世界の国々は例外なく、個別的自衛権と集団的自衛権を持つことを前提にしています。
だから、日本もきっちりと『日本は集団的自衛権を持っている』と解釈変更してよかったと思っています。

私は、30年以上前から自主憲法制定国民会議の会合に出席しており、憲法9条は改正の必要があると今でも思っています。
しかし、戦争体験と占領時の情報コントロールにより、国民は憲法9条に触ることについて感情的な反発を持ってしまっています。
これを和らげるために、まずは新しい人権などから改憲の練習をした方がよいと思います」

●司会
「ありがとうございました。先生がた、次回までに多重人格は治しておいてくださいね」
  

2015年9月28日 (月)

節vs節 仮想闘論会その1

201
え~、本日は先日まで日本全土を席巻しました「護憲台風」の発信源であられた、「お二人」の先生をお招きいたしました。 

ご紹介いたします。 

まずこちらにいらっしゃいますのが、先だっての衆院憲法審査会参考人発言(※)で一躍寵児になられ、護憲派の旗手をされている慶応大学名誉教授「ホワイトコバヤシ」先生です。 

さて、もうおひと方は、かつて産経新聞「正論」欄の執筆者にして、憲法学界の孤児、憎まれっ子でおられた「ブラックコバヤシ」先生でいらっしゃいます。 

今日は、このブラック&ホワイトの両先生お二人に、忌憚のないご討論、いや闘論をお願いいたしたいと思います。 

さぁ、どうぞ!     
             ~~~~~~
 

※内容を替えない限り、口語体に転換してあります。もちろん脚色してありますが、主旨には手を加えたり、歪曲したりしておりません。
煩雑になるので、個別に引用元は明示しませんでしたが、発言ソースは以下です。
第189回会議日誌 - 衆議院憲法審査会 
・産経新聞 2006年11月11日 正論
・ダイヤモンドオンライン(2013年7月16日)
・日刊ゲンダイ15年2月21日
・日刊ゲンイダイ2015年7年月14日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/161755/3
 

●司会
「今回の安保法制の核心を、ズバリお二方からお願いします。まずは、ホワイトコバヤシ先生からお願いします」
 

Photo_2(ホワイトコバヤシ先生)

●ホワイトコバヤシ
「今回問われている問題の本質は、実は、集団的自衛権の解禁の是非というよりも、「憲法は守れ!」という立憲主義の擁護です。
憲法が現実との間で齟齬が生じてはいけないのです。ですから、仮に齟齬が生じたらそれをどのように予防し正しい状態に戻すということが問題になります。
予防し正しい状態に戻すために、日本国憲法が最高法規であると規定されています。
権力は民間人が担うものではなく、国家の中で行動し得る資格のある自然人が権力を帯びた瞬間から権力者になるんです。
それは政治家から町役場の職員まで全てに言えることである。そこで、公務員の憲法尊重義務を憲法に明記してあるのです。
これは憲政上の最高の大義なんですよ。これを踏みにじる安倍政権の暴走を止められないのは、憲法学者としての恥です!(初めからアクセル目一杯)」
 

Photo(ブラックコバヤシ先生)

●ブラックコバヤシ
「なにをおっしゃる。憲法の解釈権は政府にあるんですよ。
今回の集団的自衛権ですが、それは『自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利』にすぎません。
わが国も独立主権国家である以上、国際法上、この権利を有していることは当然です」
 

●ホワイトコバヤシ
「驚くべき謬論、いや暴論ですな。
それでは勝手に為政者が、憲法という最高法典を改竄できるということになる。
あなたも憲法学者なら、憲法は六法全書の中で唯一最高権力を縛る位置にあるくらい知っているだろう。
逆に言うと、民法や刑法は違反をしても、憲法が機能している限り、違反者は裁判所において相応の責任を負わされることとなります。
しかし、憲法は最高権力を管理しなければならないため、後ろ盾が何もなく、今回のようにただ選挙で多数を占めただけの権力者が開き直った時どうするかという問題に常に直面するんですよ。こんなことは到底容認できません」
 

●ブラックコバヤシ
「じゃあ、その最高法典は誰が解釈するんですか。私たち憲法学者じゃなくて、違憲立法審査権を持つ最高裁判所です。
最高裁判決が出るまでの間、法令の解釈権は政府に責任があるのです。
法令の解釈というものは、解釈権を有する者、この場合は政府ですが、その責任において、条文の文言とその立法趣旨の許容限度内で行う選択である以上、時代状況の変化の中で、説得力のある理由が明示される限り、変更されてよいものであるし、これまでもそうでした」
 

●ホワイトコバヤシ
「いや、違う。
集団的自衛権の解禁に賛成する者も、それが憲法9条に反することは認めていますよ。だから彼らは憲法改正を主張しているんでしょう。
その上で、憲法を改正せずに下位法(法律)で上位法(憲法)に明白に違反する事を定めることは、公務員の憲法尊重擁護義務に反するんだと、私は指摘しているんだ」
 

●ブラックコバヤシ
「まったく賛成できません。私も憲法学者で、憲法改正は常々主張してきたつもりだが、今回の集団的自衛権の容認はあくまで限定的であって、なんら第9条に抵触しません。
だから、改憲の必要はないのです」
 

●ホワイトコバヤシ
「最近は中国のおかげで、9条神話に浸ってよいのかという議論が出てきました。しかし、9条のおかげで70年間、自衛隊が海外に行かなかったということは大変な実績です。この輝かしい平和の実績を一為政者が踏みにじろうとしているのは許せません」
 

Photo_3(ブラックコバヤシ先生)

●ブラックコバヤシ
「わかっていませんね、あなた。現実を見なさい。
日本の平和を守ったのは、法典ではなく、日米安保でした。
冷厳に世界史の現実と東アジアの情勢の中で考えてご覧なさい。
わが国の存続と安全は、政府が日米同盟を強化する中で守られてきたのです。
政府は自国の自衛権の存在を認めています。
そうなると、自衛権を持つ独立主権国家が『個別的自衛権』と『集団的自衛権』の両方を持っていると考えるのは、国際法上の常識なのです」
 

※あまり長いので、カットして次回に回します。
「わかりやすい移設問題」は、あさって頃から再開します。沖縄の皆さん、台風の被害が少ないことをお祈りしています。

2015年9月27日 (日)

節を曲げた小林節氏発言録

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日曜日はくつろいだ話題をということで、今回の安保法制で、その流れまで決定づけた護憲派憲法学者の4番バッター・小林節先生の12年と06年の発言をご紹介します。

同名異人ではございません。正真正銘の小林先生です。改解改憲派・集団的自衛権容認派そのものです。

あまりおもしろいので、引用いたします。

小林先生は、過去のご自分とテッテイ討論されて、論破されることを希望します。

あれだけ国民に影響を与えた「良心的憲法学者」として当然ではないでしょうか。

学者が所論を変更すること自体はまったく問題がありません。間違ったと思えば、その都度変更すればよいのです。

ただし、ひとつ重要な条件があります。その理由と経過を明らかにせねばなりません。それが学者として、いやそれ以前に社会人としての最低の義務ではないでしょうか。

しかし、先生はなんの説明もすることなく、主張を全面転換されました。かつては改釈改憲派のリードオフマン、そして今や隠れもない護憲派の重鎮です。

論理の不整合うんぬんの前に、人として不誠実の極みです。世間ではこのような人物を変節漢と呼びます

先生は、下の09年のインタビューをこう結んでいます。

「まずは、改憲派と護憲派を同席させて、きちんと議論をさせること。これまで両者は交じり合うことなく、思想が同じ者同士で感情的な議論ばかりを続けてきましたから」

まったく同感の至りです。

両派のディベート前に、魁より始めよ、です。ぜひ先生におかれましては、御自身の過去の言説との真摯な討論をなされることをお勧めいたします。

いずれにしても、護憲、改憲両派から先生は「節は、節を曲げた」といわれるでしょうね(笑)。

ちなみに、鮮やかに護憲派に変身した先生の現在の主張は、ここからご覧頂けます。比較して、お楽しみください。

コラム 一刀両断 - 新日本海新聞2015/9/22 
長谷部恭男氏・小林節氏「安保法制は違憲、安倍政権は撤回を」

Db531af328bee01a3070405dccdc3818(日刊ゲンダイ15年2月21日)

※衆院憲法審査会参考人発言http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/189-06-04.htm

それにしても、こんないいかげんな憲法学者が、安保法制審議の世論の流れをねじ曲げるような重大な影響を与えたとはね・・・。 

                    ~~~~~~~~

■ダイヤモンドオンライン(2013年7月16日)抜粋
※全文もおもしろいのでこちらからどうぞ。http://diamond.jp/articles/-/39334?page=9
 

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「一方、9条では「戦力の保持」も禁止されていますが、戦力を「他国を侵略できる大きな軍隊のこと」と仮定すれば、戦力に至らない程度の自衛力は持てるはず。そう考えると、日本に自衛隊があるのはおかしなことではなく、自衛戦争もできることになる。日本政府も以前から、「日本は国家の自然権を根拠に自衛権を持てる」という見解を出しています」

「政府は憲法の立法趣旨に照らして、集団的自衛権を自らの解釈で自制していますが、このままだと日本は、他国に攻められたときに自分たちだけで自衛しなくてはいけません。しかし、「襲われたら同盟国が報復にゆく」というメッセージを打ち出せる集団的自衛権は、他国の侵略を牽制する意味においてもメリットがあります。だから、改めて「日本は集団的自衛権を持っている」と解釈を変更するべきでしょう」

「先にも述べた通り、政府は自国の自衛権の存在を認めています。そうなると、自衛権を持つ独立主権国家が『個別的自衛権』と『集団的自衛権』の両方を持っていると考えるのは、国際法の常識です」

「いっそ憲法をすっきり改正して、(1)「侵略戦争はしない」、(2)「ただし独立主権国家である以上、侵略を受けたら自衛戦争はする」、(3)「そのために自衛軍を持つ」、(4)「国際国家として国際貢献もするが、それには国連決議の他に事前の国会決議も必要とする」と明記すればいいのではないか。そうすれば、日本を狙っている国に対しては牽制になるし、日本を恐れている国に対しては安心感を与えられます。あらゆる意味において、世界は納得するのです」 

                。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚

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■産経新聞 2006年11月11日 正論全文
慶応大学教授・弁護士 小林節
 

 ■解釈は政治の責任で変更できる

 ≪憲法は自衛権行使を認む≫

 いわゆる「集団的」自衛権の問題を本当に理解できている国民は実際にはほとんどいないのではなかろうか。しかし、世界史の現実の中でわが国の存続にかかわるこの問題を主権者・国民が一般に理解できていないなどということは、本来あってはならない。そこで、改めてここでその問題を整理しておきたい。

 まず、わが国は憲法9条の1項で「国際紛争を解決する手段としての『戦争』を放棄」し、次いで2項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の『戦力』は…保持しない」と規定している。

 しかし「国際紛争を解決する手段としての戦争」が「侵略戦争」のみを意味し「自衛戦争」までは含まない…という国際的慣行、およびわが国も独立主権国家としての自然権(つまり条文の存否にかかわりのない当然の権利)としての自衛権は持っている…という理解を前提に、わが国は自衛隊を創設し、さらに、かつて侵略国として失敗した経験を前提に、それを極めて自制的に用いてきた。

 そして、集団的自衛権であるが、それは「自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」で、わが国も独立主権国家である以上、国際法上、この権利を有していることは当然であるが、上述のような背景がある憲法9条の下で許される自衛権の行使はわが国を防衛するために必要最小限度の範囲にとどまるべきだと解されているため、集団的自衛権を行使することはその許された範囲を超えるとして、憲法上許されない…とされてきた。以上要するに、わが国は、集団的自衛権は有するが、それを行使することはできない…というのが、従来のわが国の政府解釈である。

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 ≪必要最小限度の実力行使≫

 この解釈を前提にして考えると、例えば、公海上でわが国の自衛艦と併走している米国の艦艇が他国から攻撃された場合に、自衛艦が米艦を支援したら、それは集団的自衛になってしまう。また、同じくわが国の上空を飛んで米国に向かう他国のミサイルをわが国が撃ち落としたら、それも集団的自衛になってしまう。しかし、だからといってそのような行動を自制することは政治的に賢明か?という問題が提起されてくる。

 伝統的な政府解釈によれば、憲法9条の下で許される自衛のための必要最小限度の実力行使については(1)わが国に対する急迫不正の侵害があり(2)それを排除するために他に適当な手段がなく(3)その実力行使が必要最小限度にとどまる-という3要件が確立している。したがって、この要件に照らす限り、上述の2例のような場合にわが国は傍観せざるを得ないことになる。しかし、それでは現場で米国をいわば見殺しにするのだから、自由と民主主義という基本的価値観を共有する同盟国・米国との信頼関係に傷がついてしまうであろう。

 しかし、ここで改めてその障害になっている憲法解釈を直視してみると、まず、憲法条文自体には「集団的自衛」と、(自国が単独で行う)「個別的自衛」の区別などどこにも書かれていない。9条は、単に1項で「戦争」を放棄し、2項で「戦力」の不保持を規定しているだけで、それが、歴史的背景に照らして、侵略戦争の禁止(つまり自衛戦争は可能)と必要最小限度の自衛力の保持と行使は可能…と読まれているだけのことである。

Photo(写真 参考人三羽がらすの長谷部恭男早稲田大学教授と)

 ≪世界の現実的情勢で判断≫

 また、法令の解釈というものは、解釈権を有する者(この場合は政府)が、その責任において、条文の文言とその立法趣旨の許容限度内で行う「選択」である以上、時代状況の変化の中で、説得力のある理由が明示される限り、変更されてよいものであるし、これまでもそうであった。

 だから、世界史の現実と東アジアの情勢の中で、わが国の存続と安全にとって日米同盟の強化が不可欠である、と政府が考えるならば、その責任において、上述の2例のような場合に、仮にわが国に対する直接的な攻撃がなかったとしても、それをわが国が座視すれば日米同盟が損なわれることが明白である以上、仮に形式上は集団的自衛活動になろうとも、わが国の存続に「不可欠」な軍事行動は、それを許容する憲法9条に違反するものではあるまい。

 もちろん、日米同盟がわが国にとって死活的に重要だとしても、他方、侵攻の根拠が崩れてしまったイラク戦争にわが国が米軍の友軍として参戦することは憲法9条の精神に明白に違反してしまうことも自明である。

日曜写真館 湖の船着場跡

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2015年9月26日 (土)

わかりやすい移設問題その2 ナイ発言は米国の本音の一部だが

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この「わかりやすい移転問題」はシリーズ化して、5回くらいで完結させるつもりでいましたが、HNある沖縄人さんの質問に先にお答えして進めることにします。 

頂戴したコメントです。 

「①ジョセフ・ナイ元米国防次官補の「ハフィントン・ポスト」での発言、「中国のミサイル技術が発展し、沖縄の米軍基地は脆弱になった」
②中谷・防衛相の以前の発言「沖縄の基地を分散しようと思えば九州でも分散できるが、抵抗が大きくてできない」「理解してくれる自治体があれば移転できるが『米軍反対』という所が多くて進まないことが、沖縄に(基地が)集中している現実だ」
③森本防衛大臣の発言「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると沖縄が最適の地域である」

 なるほどね。翁長氏も菅氏との会談でもまったく同じことを言っていますね。このナイ発言のソースは、この琉球新報記事です。 

「在沖基地は脆弱」 ナイ氏寄稿 日米同盟再考求める」(2014年9月1日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-230915-storytopic-3.html 

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ジョセフ・ナイは、クリントン政権で国務省のジャパン・ハンドラーをしたことで有名になりました。 

ジャパン・ハンドラーというのは、対日戦略担当という意味です。立場としては、米国のリベラル派に属する人物です。 

ハーバート大の教授(ハーバートはリべラルの牙城ですが)でもあり、著書の『国際紛争 理論と歴史』(有斐閣)は、国際関係論を学ぼうとする人間の必読書になっています。

この業界で知らない人はいないんじゃない、という人物です。 私もかつてヒーヒー泣きながら、読まさせていただきました(笑)。 

さてこのナイの論文は、米国において英文で発表されたのですが、いち早く琉新のワシントン特派員が待ってましたとばかりに和訳して伝えたために、大騒ぎになったものです。 

いまや移設反対派の定番の論拠になっています。できるだけかみ砕いて解説します。 

まぁナイなら言いかねんな、という内容で、特に驚くほどの内容ではありません。 

まずはナイのスタンスを知らないと、始まりません。知らないままで、この部分だけ抜き出すと、まるでナイが急にオリバー・ストーンになっちゃったように聞こえてしまいます(笑)。
オリバー・ストーン監督講演 「戦争終わっていない」 - 琉球新報 -

ナイがこう言った、ああ言ったではなく、ここではナイたちのような傾向を持つ人たちの戦略をお話しすることにします。

さて、ナイは米国民主党系リベラル派らしく、やや孤立主義的趣きをもっています。

もちろん、クリントン時代に米国のアジア外交を預かった国務省高官としてリアリズムは忘れてはいませんが、中国に対して融和的で、わが国に対しては逆に手厳しいという傾向があります。

孤立主義傾向とは、オバマ政権にみえる、「世界の警官なんて損ばかりだから早く辞めたい。できたらボク、お家に引きこもりたい」というストーブさんのようなかんじを思い浮かべれば、近いと思います。

この孤立主義傾向は、共和党系にも根強く、米国が海外の戦場で沢山の戦死者をだすたびに登場します。

米国は、イラク戦争の戦後のテロによって実に4000名以上もの若者を失っています。
イラク戦争における犠牲者数 - econ.keio.ac.jp - Keio University

今はそのひきこもり期にあたっていて、もう海外の紛争に関わるのはごめんだという「空気」が米国内に濃厚にあります。

ナイも、この米国の「空気」の中でしゃべっていることを忘れないでください。

ただし、ナイはティパーティのようなど素人ではありませんから、現実を見据えながら戦略化しています。 

ナイなどの考え方は、外国の「前方展開基地」を段階的に引き払って、米国領のグアム基地に集中させて、ここから米軍機や艦船で対応したらどうかというものです。 

「前方展開基地」とは聞き慣れない言葉ですが、米軍の手足の筋肉のような部分だと思えばいいでしょう。 

在日米軍に対する小川和久氏のうまい例えですが、米軍本社は米国内、大阪本社は横田と横須賀。筋肉に当たるのが沖縄基地。韓国基地などはただの出張所です。 

ナイなどの論者は、米軍の経費が米国財政悪化の大きな原因になっているし、「悪意に囲まれた海外基地は機能が発揮できない」ので、スリム化したいと思っています。 

ですから、出先の「筋肉」部分はどんどんカットして、グアムや米本国に引き上げて、それもやがては大幅に縮小すべきだと思っています。 

この流れが、世界規模の米軍再編です。伊波洋一前宜野湾市長などや社民党が唱えた「普天間基地グアム撤退説」は、これの早トチリです。

これは米軍が21世紀になってやった、「軍事における革命」(RMA)が背景にあります。 

RMAとは、ざっくり言えば、情報ネットワークを高度化して、部隊間の情報の共有を進めて、より高度でより効率的な部隊運用ができるというすぐれものです。 

これによって、脅威の対象の近くにいなくても、遠くからビュンと戦闘機を飛ばしたり、艦船からのトマホーク巡航ミサイルでやっつけることができるというわけです。 

すると、必要なのはミサイルと、それを発射する米軍機、そしてそれを乗せて世界のどこにでも運べる空母ていどじゃないか、こりゃいいわ、ということになります。 

これが空軍=エアと海軍=シーを主力とした、エアシーバトル(空と海からの戦争)という概念です。 

ひと頃の米国の安全保障のトレンドで、最終的には軍事衛星と無人機ドローンだけあればいいんだという極論すら登場しました。 

Photo_2(写真 無人機プレデター)

米国人という人種は、こういうハイテクが大好きなんですよ。

これならややっこしいイラクやアフガンに兵隊を送らずに済むし、上空のドローンでテロリストを仕留めることができるぜ、特殊部隊だけで十分だ、というのが流行でした。 

しかし、現場を預かる米陸軍はこれに反対しました。ロボット戦争など夢想だと知っていたからです。 

実際にドローンは誤爆が日常茶飯事。落ちればハイテクの固まりなので、ゲリラに持っていかれる前に回収しに命がけで行くのは兵隊たちです。たまったもんじゃありません。 

いつの時代でも、地道に地に足をつてけてその紛争地域に丁寧に対応せにゃならん、それが軍の現場の考え方でした。 

一方、現場を知らないナイなどの学者文官はこういう考え方をしがちです。 

琉新の先の9月の記事の、翁長氏がお好みの部分です。

「中国軍が米軍のアキレス腱として捉えているのは、米軍の兵力展開の基盤となる前方展開基地及び航空母艦、そしてRMA(軍事作戦の大変革)によってもたらされた米軍の戦闘基盤であるC4ISR機能(軍隊の作戦指揮における情報処理システム)である」と分析。650㌔の距離にある沖縄に到達可能な弾道ミサイルが80基、巡航ミサイルが350基との表を掲載している。中国軍の動向に関する分析は米国と共有するものだ」

分かりにくい記事だなぁ。たぶん書いた記者が理解して書いていませんね。要するに、沖縄が中国ミサイルの射程にあるというだけの話です。

なにを今さら。 そんなことは、東風21の実戦配備が確認されたのが1990年代中期ですから、20年以上前から分かりきっていました
DF-21 (ミサイル) - Wikipedia

先日の抗日70周年ナンジャラのバレードで登場した下の写真の「東風21」(DF21)は、確かに沖縄を射程に入れています。 

E8dbae8fs

 中国がこれ見よがしにパレードで出したのには理由があります。これは対日本向け弾道ミサイルだからです。

東風21(DF21)の射程は1750㎞以上で、沖縄だけではなく、日本列島まですっぽりと射程に納めています。 

下の地図の右端の赤線でDF21と記された不定形の円が、その射程範囲です。 

配備数は、2000年代の配備数は60~80発、発射基数は70~90基と推測されていますが、いまはさらに増加しているはずです。 

400pxpla_ballistic_missiles_range

 この東風21は、米議会年次報告書によれば、その攻撃対象を、韓国の烏山、群山、日本の嘉手納、三沢、横田と第7艦隊空母です。 

そうです。沖縄だけじゃないのです。横田、横須賀、佐世保などすべての在日米軍基地が東風21の射程に入っているのです。

もちろん東京、大阪もです。中国はこの軍事パレードで、「オレはボタンひとつでお前の国の政治経済、軍事的心臓部を破壊できるぜ」、とスゴんでいるわけです。 

では、琉新記事のように、この東風21の射程に入っているから、米軍を沖縄のみならず、日本本土の横須賀から逃がしてグアムや米本国に撤収させますか? 

ありえません。そんなことをしたら、日本としては米国が同盟の義務を放棄したと考えざるをえなくなります。

つまり、共産党が熱望する安保廃棄が現実になります。

そして日本は日米安保の代わりに,独自防衛の道を選択せざるをえなくなります。

それは、GDPの3~4%を消費し、消費税を20%以上に吊り上げ、核武装まで視野に入れたものになります。

いうまでもありませんが、これは米国までも仮想敵とする、危険きわまる路線です。

一方、米国の立場からすれば、世界戦略が根底から崩壊してしまいます。 

そのようて危険性を度外視して、グアムにまで逃げたとしても、上図でわかるようにもっと長射程のDF4、DF31、DF31C、あるいはDF5Aなどの射程範囲に入ってしまいます。 

つまり、どこまで逃げても、中国のミサイルの「長い腕」から逃げられないのです。 

ナイは、別のインタビューでこう語っています。

「2010年6月19日で新日米安保条約が自然承認されて50年となることを受け、クリントン米政権の国防次官補などを務めた知日派のジョセフ・ナイ米ハーバード大教授が毎日新聞と単独会見し、日米同盟の将来像などについて語った。
ナイ氏は、「米軍地上部隊の日本駐留が拡大抑止に不可欠」と、海兵隊などの在日米軍が日本防衛に果たす意義を強調。一方で、将来、東アジアの安全保障環境が激変した場合、米軍駐留については日本国民が決めるべきだとの認識を示した」(毎日新聞6月20日)

また、移設問題についても、こう述べています。

「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐり、日米関係がぎくしゃくしたことについては、「困難な時期だったが、学習の時期だった。両国が日米同盟の重要性について再認識し、この時期を経て同盟関係は弱くなるどころか、強化されたと考えている」と述べた」(同)

さぁ、ナイが真逆なことを言っていますよ、どっちか正しいんでしょう、琉新さん。

ナイは、2007年にアミテージと一緒に出した、「第2次アミテージ報告」で膨張する中国を世界秩序の中で穏健に位置づけるためには、日本と米国の同盟関係が決定的に重要であって、在沖海兵隊は抑止力として不可欠だと言っています。

だからこそ、日米同盟のトゲになりかっている移設問題をさっさと片づけてくれ、さもないと大変なことになるぞ、と言っているのです。

ここには、何度か私も書いてきた普天間から動きたくないという米軍の本音が見え隠れしています。

狭くなる、滑走路は短くなる、普天間からの移動が大変だ、米軍にとって移設計画はなにひとついいことがないのです。

だから、移設案自体は潰れてくれてもかまわないが、かといってがんばっているパートナーの日本政府のメンツを潰したくない、そんなジレンマが、米国側にもあるのてす。

ナイが現役の国務省高官ならば、こんな琉新記事のような無責任なことは言わなかったはずです。

辞めて久しいから、米軍の本音の一部を言ったというだけです。

そして、その本音も、彼一流のバイアスがかかっているということです。

森本氏などの発言については、来週に続けます。

 

2015年9月25日 (金)

わかりやすい移設問題その1  こんがらがったら、初めから解きほぐしてみよう

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政府と翁長県知事が角を突きあわしています。 

翁長さんは、国内ではラチがあかないとみたのか、米国に県外交したり、国連人権委に行ったりしています。 

う~ん、あまりこういった動きは筋がよくないですね。 Photo_5

というのは、これは基本は国内問題なのです。米国は当事者ですからしかたがないとして、米国すらあまりクチバシをいれないようにデリケートに扱っている問題です。 

この間17年もの曲がりくねった事情を知らない第三国で、「人権侵害だ」と訴えるというのはいかがなものでしょうか。 

そうか、オレが仲裁してやろうなんて常任理事国である中国が言い出したら、もう永久に解決しないばかりか、内政に外国政府を干渉させることになりかねません。 

翁長さん陣営は、国内問題を外国に持ち出して、外圧で状況を有利に運ぼうということは絶対にお止めになって下さい。かえってこじれますよ。 

いまのこの膠着した状況は、政治力学の谷間に落ちたことから来る「流れ」なのです。

この延々と17年間も続く紛争の起こりは本土政府が、「善意」で普天間の危機を除去しようと試みたことから始まります。 

Photo(写真 2004)年8月13日、普天間飛行場所属の大型輸送ヘリコプターCH-53Dシー・スタリオンが訓練中、操縦不能に陥り、市内・沖縄国際大学1号館の北側に接触、墜落炎上した) 

政府バカヤローと思っている方も、県内には多いと思いますが、この程度の「善意」は信じてやって下さいね。 

普天間でCH53というバカデカイ米軍ヘリか墜落したことは、県民のみならず、本土政府も震え上がったのですから。 

いつかこの人口密集地で墜落事故が起きるというのは予測されていました。 

下の空中写真を見てください。これが普天間基地です。 

Google Earthに学校や郵便局などの公共施設を乗せたものを見ると、とてもではないが、基地を置くべき場所でないのはわかります。 

Photo_2(図 Reconsideration of the History による)

まず住宅地があって、その中に基地が落下傘降下したわけではないのですが、現状がこのようになってしまった以上、政府としては早急に対策を立てる必要に迫られました。

また、この事故はもうひとつの別の問題を引き起こします。

それはいち早く駆けつけた(なにせ隣が基地ですから)米軍が、米軍機の残骸をさっさと基地内に撤去してしまったことてす。

ふざけるなと言いたいですね。

日米地位協定でその権利があるかどうか知らないが、まずは墜落した地域の沖縄県警や消防が実地検分するのが筋なはずです。

施政権を持つのは、いうまでもなく、日本政府です。その日本政府の公的機関を無視して、いわば事故を起こした「犯人側」が、さっさと事故現場を封鎖し、証拠物件を押えて移動してしまうというのは、いくらなんでも話が違います。

おまえらは占領軍かって。

日本人はもっと怒るべきです。こういうことにヘンに物分かりがいいから、日本は米国になめられます。

さぞかし、日本側の関係者は歯ぎしりしたことでしょう。こういうことをするから、米軍は恨まれるのですよ。

これで危なく頭上に落ちてくる所だった県民の怒りに火が着きました。当然すぎるほど当然です。私が当時沖縄にいたら、真っ先に抗議集会に馳せ参じたでしょう。 

さて、ここで問題点を整理してみましょう。普天間に基地を置くことには問題がありすぎることはわかりました。

ではどうするのか、です。

一点目として、普天間にこのまま基地を置いておくべきでないなら、移設先や手段はどうするのか。
二点目として、普天間基地の果たしている安全保障上の働きを傷つけないためにはどうしたらいいのか。
三点目として、日米地位協定の不平等性をどうしたら解消できるのか。
四点目として、この移設作業が、沖縄経済の活性化に役立たせるにはどうしたらいいのか。

これらの条件を満たして考えていかないとだめだと、私は思います。

これらはバラバラにあるのではなく、実は同じことを別の言い方で言っているだけのことです。

たとえば、普天間基地は移設しました、役に立ちませんでしたでは、大枚の税金を注ぎ込む意味がありません。

ならば、沖縄海兵隊がなぜここにいるのか、なんのためにここにいるのか、そもそも「海兵隊」ってどんな軍隊なのかをしっかりと、県民に理解してもらわねばなりません。

これをするのが本来、昨日書いた政府の「説明力」なのです。

残念ながら歴代の本土政府は、この肝心要な部分を吹っ飛ばして、飴を配って宥めすかしたりすることばかりしたために、まるで後ろめたいことをしているような印象が県民に生れてしまいました。

もちろん、移設自体は「いいこと」なのです。別に「新基地」を作って県民をもっとイジめてやろう、などと考えているわけではありません。

政府が日米同盟という選択をしたことはベターな選択です。これはしっかりと県民の理解を求めるべきでした。いちばん負担している県なんですから、当然のことです。

今回の安保法制審議でも、政府は奥歯にもののはさまった言い方をするのでイライラさせられましたが、中国の脅威の真正面に位置するのは、他ならぬ沖縄県なのです。

よく朝鮮半島がどーしたの、台湾がどーたら、沖縄は「キイストーン・オブ・パシフィック」だから地政学的にどうのとわかったようなことを言う人がいますが、そんなことまで考えなくてもけっこうです。

なんせ沖縄県自身が、もっとも危険な位置にいるのです。

中国は大陸で東西南北に拡大するだけ拡大してしまって、もう行き場がなくなってしまいました。

その間、四方八方の国々すべてに侵攻して、戦争をしています。あいにく弱いので大部分が負けているのが、ご愛嬌です(苦笑)。

ただし、相手が弱いとよおとカサにかかって攻めてきます。たとえばチベット、ウイグル、フィリピン、ベトナムなどです。

そして陸で行き詰まった中国は、新たな膨張方向として海洋を選びました。それが南シナ海の要塞島建設や、尖閣諸島などがある東シナ海への膨張です。

Cpzs0aouyaaxu5v(中国、南沙諸島のファィアリークロス礁で滑走路運用開始。中国初の滑走路完成だ。スビ礁やミスチーフ礁でも3000m級滑走路建設中)

東シナ海で目障りな日本の領土を突破すれば、晴れて太平洋が待っています。

つまり沖縄県は、中国が膨張すしようとする、ちょうどその真っ正面の扉の場所に当たっているのです。

立場としてはフィリピンやベトナムと一緒なはずですが、不思議なことには沖縄にはその緊張がぜんぜんないどころか、あろうことか知事が「米軍基地は出て行け」などという始末です。

尖閣諸島は沖縄県石垣市です。先日も中国の公船は堂々と侵犯してきました。中国軍機は当然のような顔で、領空侵犯を繰り返しています。

Photo_6(写真 侵犯する中国海警と日本の巡視船)

上の写真は2014年2月19日午前10時20分頃に、尖閣諸島(沖縄県石垣市)久場島西の領海に侵入した中国海警局の公船2隻です。

彼らは海保第11管区の警告に対して、なんと返答してきたと思います。

「釣魚島(尖閣諸島の中国名)および付属の島々は、古来中国固有の領土である。周辺12カイリは中国の領海である。貴船はわが国の領海に侵入した。ただちに退去してください」

特他国の領海に侵犯しておきながら、警告を発して「おまえこそ出ていけ」と言うのが中国という国なのです。ヤクザと一緒です。

中国という国の発想には、根深くこの縄張り根性があります。

いま、習近平は訪米中ですが、前回の訪米時にはなんと、「太平洋を二分割しようぜ。オレはハワイから東をもらうからよ」と言ってのけた国です。

当時米国もG2を考えないでもありませんでしたが、それは太平洋分割ではなく、世界規模の協力関係を築いていこうというもので、本質的に相いれませんでした。

それはさておき、こんなヤクザのような膨張国家の太平洋正面に位置する尖閣から本島まで、延々600㎞以上に渡って、まったく無防備な宮古、八重山諸島が続きます。

防衛の空白地域です。中国に狙ってくれと言っているようなものです。

もし中国が南シナ海でやっているような暴虐を、東シナ海やり始めたらどうします。

残念ですが、自衛隊だけでは沖縄を守りきれません。

沖縄に強力な米軍が「いる」ということで、中国はおいそれと手が出せないのです。

これが沖縄に米軍がいて、基地がある意味です。

長くなりましたので、次回に続けます。

 

2015年9月24日 (木)

移転問題解決には政治の「説明力」が必要だ

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この間、沖縄の方からいくつかコメントを頂いていますが、共通した沖縄の人達の気持ちはよく伝わってきます。 

今回頂戴したコメントは、このようなものです。 

「沖縄出身者です。嫌沖感が強まることをとても懸念します。
政府の説明は
①普天間基地の危険性排除
②中国の脅威に対する抑止力
この2点に集約されなぜ辺野古なのか、なぜ県外移設が不可能なのか示されません。
説明できるのは「地理的決定論」となりますが、これは否定されているという意見もあり、政府が理由に挙げないところをみると根拠になりにくいとも思われます。
「本土で引き受けられる基地は引き受けています。
どうしても沖縄でなければ機能しない基地だけお願いしているのです。」
の根拠をご教示いただけるとありがたいです。
本土に基地があることも理解していますが、これでは沖縄への基地の偏りを説明できません」

コメントについて具体的に解説するのは、次回にさせていただいて、この間、私が沖縄問題について感じていたことを少し書きます。

大変にもっともなご意見だと思います。「なぜいつも沖縄なんだ」という素朴な疑問が県民にあって当然です。

たしかに「新基地」が本土で作られることは絶えてなく、今回の埋め立てをそう呼ぶなら、「またもや沖縄だけか」という感情が湧くのも理解できます。

さらに、「本土がなぜもっと負担を分担していないのか」、という気持ちが常に県民の心にくすぶり続けているのもよく分かっています。

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安倍政権が今までの17年ものしがらみの上で苦悶し、決着すべき時と決意しているのはわかるのですが、政治に求められる「説明力」に欠けているように見えてなりません。

政府が、真正面から沖縄基地の安全保障上の意味を説明しないために、県民には負担感のみが蓄積されていきます。

常に強権で押し切られているという被害者意識が、気分の中にどんどんと溜まっていくことになります。

この鬱憤の混合気に、可燃物が投下されれば、一気に県民の怒りの爆発へと変わります。その光景もまた、何度も見てきました。

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そして本土の人間は日常的に、延々と「沖縄差別」という怨嗟の声を聞かされることになります。

沖縄出身の芸能人に憧れ、本土から「癒しの島」へと毎年大量に渡る本土人が絶えないのに、「沖縄差別」とは!

聞かされた本土人は、いつどこで、誰が?と大いに首をひねったものです。

しかもその理由が、具体的な県民に対する差別事件によるものではなく、基地問題だと言われては、私たち一般国民にはどうしようもないじゃありませんか。

このような身に覚えのない「沖縄差別」の糾弾の声をぶつけられ続けた結果、本土人の中に「いいかげんにしろ」という反感が募り、対抗的に「嫌沖感情」が誕生しました。

このまま行くと沖縄は、反日に精出した結果、日本人の多くを修復不可能な嫌韓に追いやった韓国の轍を踏みかねません。

私は、このような国民の分断を招きかねない域にまで達した移転問題に対して、政府が責任をもって解決することを望みます。

私がいう「解決」とは、基地の移転を遂行するということではなく、それに至った安全保障上の原因を分かりやすく沖縄県民のみならず全国民に説明することです。

政府は責任をもって、いまからでも遅くはないので、県民に対してこのようなことをキッチリと説明すべきです。

「日本とアジアが直面している脅威は何か」
「沖縄基地はどのような役割を果たしているのか」
「沖縄を守るためにはどうしたらいいのか」
「なぜいま辺野古移転しかないのか」
「なぜ本土移転が不可能なのか」
「なぜ段階的縮小案で対応するしかないのか」
「負担軽減策としてなにを用意しているのか」

この政治の「説明力」がないために、とかく那覇の料亭の密室で展開される金と利権構造だけが浮き上がるというのが自民党政治の悪しき体質でした。

残念ながら、安倍政権もまた、その例外ではありませんでした。

今までに投じた移転費用は3千億円。そして今後投じられるであろう税金もまたそれに倍する以上、累計1兆円に登ろうとするコストをかけてやる政府事業ならば、その理由と展望を明示すべきなのです。

一方、沖縄左翼陣営の硬直した姿勢も目に余ります。聞く耳を持たないのですから絶望的になります。

彼らにとって対話とはただの糾弾集会のことであり、抗議行動とは海保との「海戦」のことでした。

Oonagasugafacebook
たとえば、先日行なわれた菅官房長官との「休戦会談」においても、翁長陣営は初めから「県内移設はいかなる形でも拒否」と打ち出してしまっています。

これでは話になりません。唯一可能性が残っていたシュアブ陸上案も、改めて検討すらされたふしすらないようです。

ただひたすら相互に建前だけぶつけているようでは、揉みようがないではないですか。

なぜ翁長氏は、政府中枢の人間が1カ月間、工事を止めて休戦講和をしようと言っているのですから、この機会を最大限使わないのでしょうか。逆に不思議なほどです。

こんなガチガチの姿勢しかできないならば、いっそ県知事には高良鉄美氏のような伝統的左翼人士で十分でした。

翁長氏に期待されてものは、いまやメビウスの輪のようになってしまった移転問題に、なんらかの折り合いを本土政府とつけることでした。

落し所を見つけて着地させること、それが翁長氏の仕事だったはずです。こういう芸当は、高良氏には無理ですが、翁長氏ならあるいは、と思わせたのも事実です。

しかし、買いかぶりでした。腹芸のできない翁長氏などは、ただのハッタリ好きの利権漁り屋にすぎません。

かくして、説明力が欠落した政府は休戦を活かせず、現地に金をバラまくという策に走り、翁長氏は国連で誰も聞いていない演説を2分間やるというパーフォーマンスで人気取りをしているだけとなりました。

これで、再び工事が再開されるならば、また見飽きた衝突の光景が繰り返されることでしょう。

心底、不毛だと思います。

次回は、冒頭のご質問に具体的にお答えします。これも本来なら政府の仕事ですぞ。  

2015年9月23日 (水)

安保法制ミスリードの根源 朝日新聞ドイツ軍アフガン派兵誤報

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へいの安保法制審議で呆れたのは、植村氏を生贄羊にして逃げおおせた朝日が、懲りることなく誤報をしたことです。 

昨年6月15日に出た1面トップ記事はこう述べています。

「01年9月の米同時多発テロで、NATOが密接な関係にある他国のために武力を使う集団的自衛権を行使して米国主導のアフガン戦争の支援を決めると、当時のシュレーダー政権も軍を派遣。その後、同年12月に国連安全保障理事会決議が採択され、加盟国が一致して制裁を加える集団安全保障の枠組みで治安維持と復興支援を目的としたISAFが発足すると、ドイツは02年1月から参加した。
 ドイツは治安が比較的安定しているとされたアフガン北部を担当したが、次第に現地の情勢は悪化。戦闘に巻き込まれる事例も生じ、ドイツ軍によると02年からISAFの任務が終了する昨年までに、帰還後の心的外傷後ストレス障害による自殺者などを含めて兵士55人が死亡し、このうち6割強の35人は自爆テロや銃撃など戦闘による犠牲者だったという」

140615_a_1_u(写真 朝日新聞6月15日)

これが、この安保法制の最初にして最大のマスコミによるミスリードでした。
 

この主張に対して、ただちに小川和久氏が抗議しているのですが、意図的にドイツが加盟するNATOのような集団安保体制と、国連の安全保障を混同し、さらにそれらと我が国がやろうとしている二国間集団的自衛権を混同するという二重三重の歪曲報道をしています。 

そもそもISAF(国際治安支援部隊)は、国連安保理が米国同時多発テロ後の2011年10月2日の決議1386号で、集団安全保障措置について定めた国連憲章第7章に則って創設したものです。
国際治安支援部隊 - Wikipedia

0320b1(写真 朝日新聞 「新戦略を求めて」http://www.asahi.com/strategy/0320b.html 

ドイツ軍を含めて48ヶ国が参加しています。英米独仏などの主要国以外にも、スウエーデン、フィンランドなどの中立国、アジアからはオーストラリア、NZなども派兵しています。 

これは自衛権とはまったく無関係の、国連安保理決議の呼びかけによる国際警察活動です。 

国連による集団安全保障活動は、集団的自衛権とはまったく別の次元の概念です。

これは安全保障問題を語る上での初歩的な知識で、書いた外報部記者が知らなければ馬鹿、知っていてやったなら歪曲報道です。

では、同じ「集団」という言葉が冠しているので、混同されやすいと思いますので、わかりやすく説明しましょう。 

そもそも国連はその本来の役割を、集団安全保障に置いていました。

え、ユネスコみたいな文化活動じゃないのっていう人もいるでしょうが、あれは傍流。あくまでもメーンの仕事は国際平和維持、言い換えれば国際社会の安全保障です。

しかも日本人好みに話し合いで解決ではなく、話し合いが行き詰まったら「実力も辞さない」というのが国連の本来の考え方でした。

学校の頃に習いませんでしたか、国際連盟は強制力を持たなかったので失敗したが、国連はそれを持つことで強力に生まれ変わったって。 

P_image_5(写真 国連憲章各国署名 国連広報センター) 

国連は集団安全保障のために、わざわざ第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」で、丸々一章を当てて詳述しています。

あまり読む機会がないでしょうから、ぜひお読みになってください。
国際連合憲章(日本語)(国際連合広報センター) 

そこには、たぶん護憲派が聞いたら失神するような、紛争に当たって「国連軍」創設までする、と記されています。 

本来創設期の国連がやりたかったことは、この「国連軍」だったのです。当該部分を抜き出してみます。

「●国連憲章第7章第42条
安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる」
「●第45条
国際連合が緊急の軍事措置をとることができるようにするために、加盟国は、合同の国際的強制行動のため国内空軍割当部隊を直ちに利用に供することができるように保持しなければならない。これらの割当部隊の数量及び出動準備程度並びにその合同行動の計画は、第43条に掲げる1又は2以上の特別協定の定める範囲内で、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が決定する」

このように、国連憲章に忠実義務がある加盟国は、集団安保に参加するのが義務なのです。 

忠実義務については、国連加盟時の条件を記した第4条第1項に、「憲章の受託と履行、その能力」として掲げられています。 

このアフガンのISAFは、国連の安保理事会の決議にもとづいて派遣された正式な集団安全保障の取り組みです。本来ならば、「国連軍」と呼んでもちっともおかしくない存在でした。 

では、今回の集団的自衛権はナニかといえば、これは二国間の「同盟」による集団的自衛権なのです。 

国連はいちおう渋々これも認めています。渋々とは第7章の末尾の51条になってやっと集団的自衛権が顔を出すからです。

「●第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない」

ね、あくまでも国連憲章のニュアンスは集団安全保障なので、個別的自衛権、集団的自衛権も例外的て、「できる」にすぎないのだ、と憲章は言っています。 

しかも、できるのだが、すぐにそれはまっとうな方法とは言い難いから、常任理事国に報告して承認を受けろとまで書いています。

末尾にはわざわざ、憲章に基づく機能や責任をさまたげるな、と断っています。

いかに個別的自衛権や集団的自衛権が、世界常識からはずれたものかわかるでしょう。

日米安保条約は相手国が米国という国連の創設国にして中軸国だから、いわば米国が保証人になっているのでなんとか認められているだけです。

今回の安保審議の中でも保守派から、「集団的自衛権は国連憲章でも容認されている」という反論がありましたが、正確ではありません。

あれではまるで国民は、「個別的自衛権がノーマルで、集団的自衛権も目こぼしされているんだ」ていどに受け取ってしまいました。

そうではないのです。あくまでも、集団的自衛権が「容認」されている相手は、国連の安全保障体制に対してなのです。

集団安全保障が大前提のノーマルな形態で、例外として集団的自衛権も許容します、というのが国連憲章第7章の主旨です。

個別的自衛権に至っておや、なおさらです。もはや、お前、一国で戦争オッ始める気かと国際社会から疑われてもしかたがないアブナイ概念なのです。

誰が言い出したんだ、個別的自衛権が平和だなんて!白を黒といいくるめるもいいところです。どうしてこんな簡単ことが、護憲派にはわからないのか不思議なくらいです。

整理します。 

①国連加盟においては国連憲章を遵守する義務がある。
②国連は集団安全保障をとるために国連軍を創設できる。
③加盟国はそれに派兵する義務がある。
④個別的・集団的自衛権は例外として認める。
 

ですから、「集団」と名称の頭につく安全保障には、3種類あるわけです。

●「集団」のつく安全保障3態
①国連による集団安全保障活動
②NATOのような地域的安全保障
③日米安保のような2国間集団的自衛権

現在、③を認める、認めないで大騒ぎしているわけですが、①②の形態も日本国憲法前文と呼応していると考えられます。この部分です。 

「●日本国憲法前文
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」

なかなか格調がありますな。悪文という声もありますが、言いたいことは分かります。

要するに、日本国は「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を永遠に地上から除去するために」「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と言っているのです。

いや、まったくそのとおり。国連の集団的安全保障活動をしっかりやろうぜ、と言っている以外に取りようがありません。

ですから前文の精神に従って、国連平和維持活動や、集団安全保障活動に積極的に参加することこそ、真の護憲活動なのです。

090400(写真 いわゆる「護憲派」の人たちの集会。この人たちに前文からの熟読を勧めたい。それにしても一斉に同じプラカードをかげるなんて不気味だ)

いわゆる護憲派は半世紀以上憲法護持を叫んで来ましたが、本気で「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思」って活動したことがありましたか。

ないでしょう。

護憲派がしたのは、「第9条にノーベル平和賞を」とか、「世界遺産に波頭六しろ」とかやくたいもない自己陶酔だけです。一滴の血はおろか、汗すら流していません。

だから前文にはわざわざ、一国の安逸のみを貪ることのないように、「自国のことのみに専念して他を無視してはならない」と叱咤しているのですよ。

ならば、第9条2項の軍隊保持禁止はどうなるか、ですが、前文とワンセットで見ないことによる近視眼的解釈に陥ってはわからないのです。

あれは国際紛争の解決手段として戦力を用いるな、侵略のためには交戦権を認めない、と書いてあるだけで、前文の理念とは矛盾しません。

ですから前文どおり、日本は「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」(前文)のです。

もちろん、現実には「国連軍」は朝鮮戦争の変則以外に一度も結成されたことはありませんでした。(この変則があったが故に、後に作るのが困難になったわけですが)

しかし、それは常任理事国の中に横車を押す国がいたからです。仕方なくその代りにできたのがNATOのような地域集団安全保障体制です。

また世界規模では、国連軍の代替として生れたのが平和維持活動(PKO)でした。

この憲法精神そのままのPKOにも、朝日は頑強に反対して、まるで日本がアジア侵略でも開始するかのように書き立てました。

困った人たちです。批判するのは自由ですが、もっとPKOがうまく機能するためにはこうしたらいいと具体的提案をしてほしいものです。

さてさて、朝日は今回も性懲りもなく、国連の安保理決議と集団的自衛権をゴチャにして報道し、間違った方向にミスリードしてしまいした。

このミスリードは修正されることなく、反対派の定番主張へと受け継がれ゛安保騒動へと増幅されていきます。 

これが、「安保法制に賛成すると米国の戦争に巻き込まれて、中東に連れていかれる」というヨタ話の源流です。 

そして今もなお、こんな初歩的間違いに気がつかず、南スーダンのPKO部隊やジブチの海賊対処活動に対してさっそく「集団的自衛権の行使が始まった」と叫び始めています。

まったくやれやれです。

あながち皮肉ではなく思いますが、真の「護憲精神」に立ち返って、国連の安全保障活動に積極参加すべき時でしょう。

さぁ皆さん、大きな声でどうぞ。

「憲法を守れ!ドイツを見習え!」

2015年9月22日 (火)

私を「ネトウヨ」と呼んだコメントに答えて 個別的自衛権は戦争の温床思想だ

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あ~あ、とうとうかつての反戦少年も、「ネトウヨ」称号を賜ってしまいました(笑)。昨日は極右で、今日はピンク少年ですか。やれやれ・・・。 

HNからして、「ネトウヨは馬鹿すぎ」ですから、なんともスゴイね。

あいにく、私、「ネトウヨ」ってなにかよく知らんのですよ。検索すると、こういう連中のようです。 

Yjimage(左が「ネトウヨ」というモノだそうでそうとうに暑苦しそう。一方、右が民主党支持者。でもなんか、私が好きじゃない三橋貴明氏みたいだけどな。このマンガが言いたいのは、右翼=非知性的、リベラル=インテリってことのようだ。気の毒にこの図式は、山本太郎氏での登場で崩れ去ってしまった)

す、すまん、笑える。私とまったくかぶっていない。私、何度も書いてきていますが、在特会なんて、そうとうに嫌いなんですがね。まぁいいか。 

気に食わないと、方や「ネトウヨ」と呼び、方や「在日」と罵るってわけですか(ため息)。どこか、東京湾の埋め立て地あたりで思う存分やってほしいもんです。

こういうレッテル貼っただけで、なにか批判が完了したつもりになるっていう荒廃した神経が、ものすごくイヤだ。

さて、笑うのはこれくらいにして、いちおう私の2本の記事に対応しています。

名無し氏のコメントに答えて 安全保障で遊ぶな
「中国が脅威だと思ってる思考停止の馬鹿。そんなに脅威なら中国と同盟結べばいいだろ馬鹿が」
歪んだ個別的自衛権しかない国の集団的自衛権論議
「個別的自衛権があんのに馬鹿かこいつ。ただの戦争推進のクズですね」
「>米国の戦争につき合うかどうかなどは、国の主権の問題です。
イラク戦争を肯定する自民党が米国の戦争に付き合わないと思ってるお花畑の馬鹿」
 

はい、正味これだけです。私がカットしたわけではありません。お願いだから、ここにケンカを売りに来るするなら、もっとしっかり勉強してから来なさい。 

「中国と同盟を結ぶ」だそうです。 

そうか、中国と同盟結びたい諸君らが、安保法制反対デモしているわけですな。わかりやすくて、大変にけっこうです。 

ではせっかくですから、「同盟」という概念を押えておきましょう。 

一般的には「同盟」という概念は、「国家・団体・個人が共通の目的を達成するため、同じ 行動をとること、状態、あるいはその約束」として用いられています。 

労働団体や左翼団体にも「同盟」とつくものが多数ありますが、国際関係論で扱う場合には違った意味で使われます。 

身近な例でみれば、日米安保条約のようなものです。 

「「アメリカ外交にとっての同盟」と同盟理論 - 日本国際問題研究所」によれば、このような定義がなされています。

「同盟は、「特定の他国との紛争あるいは戦争において、互いに支援を得られるという複数国間で相互に抱かれる期待」をもたらすものとされる「提携」(alignment)」

う~ん、例によって専門用語の羅列でわかりにくいですが、おもしろいのはこうも述べていることです。こちらのほうが分かりやすいかもしれません。

軍事力の行使を想定しない協調的安全保障の枠組みは、やはり同盟とは区別されるべき

ここで述べられているのは、「軍事力の行使を前提にしない協調的な枠組みを同盟とは呼ばない」ということです。 

つまり、「同盟」という概念は、特定の脅威対象があり、それに対して軍事力行使を前提としている、ということです。

ただ仲良くしましょうね、友好関係を大事にしましょうね、というていどのことを国際社会では「同盟」とは呼べないのです。 

ですから、このコメント氏の言うように「中国と同盟を結ぶ」ということは、国際社会では、「中国と軍事同盟を結ぶ」ということを意味します。 

それでは中国は軍事力行使の対象として、どこの国をターゲットにしているでしょうか? 

いうまでもなく、中国が最大の軍事力行使の対象にしているのは米国以外ありえません。 

したがって、「中国と同盟を結ぶ」というこのコメント氏の提案は、このような意味で国際社会に発信されるでしょう。 

「日本は日米安保を廃棄し、自由主義陣営から離脱して、中国と軍事同盟関係に入る。以後、米国とは日中同盟で対応することになるから、お見知りおき願いたい」

これが、「思考停止」をせずに、米国に対する「お花畑」幻想から醒めて、選ぶべき日本の外交方針だそうです。

このお兄ちゃん、ものすごーく危険なこと言わはる。

おそらく日本がこれを実行した瞬間、日本は中韓を除くアジア全域の国々から激しい批判を浴び、国際社会で完全な孤立状態になるでしょう。

そして、日本と米国は戦前の日本のように、全面対決コースに突入します。 

これに近いことを主張したのが、鳩山政権の「東アジア共同体構想」です。 

中身があったのかなかったのかよくわからない概念ですか、「東アジア」と地域を限定しているくらいですから、当然、中韓が同盟の対象国となるでしょう。 

素直に受け止めれば、鳩山元首相は、中韓と政治同盟のECや貨幣同盟のユーロ、さらには軍事同盟のNATOまで視野に入れた「同盟」を作りたいと言ったことになります。 

結果は、中韓からすらスルーされてしまって不発に終わりましたが、実現していたら(するわけはありませんが)なかなかモノスゴイことになっていたと思われます。 

このように「同盟」という概念は一国の外交方針の根幹を成しており、気安く「オレ、ヤンキー嫌いになったもんね。習さん、ステキ!」というようなもんじゃないのです。

どうやら、このハトという人は、「友愛」の名の下に戦争の種をまき散らすことが趣味のようです。 

それはさておき、個別的自衛権があるのに集団的自衛権を認めるのは、「戦争推進のクズ」だそうです。 

昨日は極右から「腹切れ、暇人」って言われ、今日は左翼から「戦争推進のクズ」だそうで、忙しいことです。 

では、わかりやすく説明しておきましょう。 

あのね、なぜあのドイツが集団的自衛権しか認めていないのか、よく考えてみなさい。 

戦後のドイツが、個別的自衛権の保有を禁じられている理由を考えれば、少し見えてくるはずです。 

現代ヨーロッパにおいては、一国だけの個別的自衛権は大変危険な考え方とされています。 

ヨーロッパに典型なように、現代世界は、様々な集団的安全保障のネットが張りめぐらされています。 

ヨーロッパの国々で、政治・経済同盟のEC、通貨同盟のユーロ、そして軍事同盟のNATOのいずれかに属さない国は少ないほどです。 

あの軍隊を持たないグリーンランド(※)ですら、NATOに基地を貸して集団的安全保障の笠の下に入っています。
※グリーンランドはデンマークの「高度な自治領グリーンランド - Wikipedia

ちなみにNATOの本部は、伝統的に中立国だったベルギーの首都ブリュセルに置かれています。 

ベルギーは前に書いたことがありますが、長年のあいだ中立国でしたが、2回もドイツの侵略にあって、現在は集団安全保障体制の基軸国のひとつになっています。

Nato (図 NATO加盟国)

 NATO加盟国とECの加盟国を比較してください。ほぼ被っているはずです。非加盟国は個別の事情によります。 

53_map(図 EC加盟国)

自分の頭でモノを考える習慣のない人は、朝日、毎日や報ステの言う通りに、「個別的自衛権=平和的、集団的自衛権=戦争への道」なんて、短絡した図式で見ていると思われます。 

集団的自衛権がこのコメント氏の言うように「戦争推進」だったら、なぜヨーロッパ全域が「戦争推進同盟」を作っているんでしょうか。 

ヨーロッパ人は、戦争をしたくてたまらないウォーラバーなんでしょうか? 

わきゃありません。真逆です。 

NATO条約のキモは、有名な第5条にあります。

NATO条約第5条
NATO締結国(1カ国でも複数国でも)に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃に対して全締結国は、北大西洋地域の安全保障を回復し維持するために必要と認められる、軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する

条約締結国に対する武力攻撃は、国連憲章第51条に言う集団的自衛権の行使が明文で規定されています。  

逆に、この条項は、加盟国の一国が勝手な侵略をした場合、同様に加盟国の「地域の安全保障を回復し、維持するための必要な軍事力」の制裁を受けることになります。 

たとえばこういうことです。A国が邪まな企みで隣国のB国に侵攻したい考えたとします。 

ところがA国にとってはあいにくなことに、そのA国も隣国のB国も揃ってNATOに加盟していました。 

と、どうなるでしょうか?A国がB国に侵攻を仕掛ける前に、その予兆があるはずですから、二国はブリュッセルのNATOやECの国際会議の場に呼び出されて、討議されることになります。

結果、NATOから、「もしA国が侵略した場合、NATO条約第5条を適用することになる。だからつまらないことは止めろ」、と警告を受けるはずです。

それにもかかわらずA国がそんな火遊びをしたら、A国は加盟国すべてのNATO連合軍から厳しい軍事的制裁を受けることになります。

これが、集団的安全保障における抑止の概念です。

集団的自衛権や、それを一歩進めた集団安全保障体制においては、個別的自衛権の行使は認められていないのです。

それは先ほどの例でも見ましたが、一国だけだと、かつてのヒトラーのような狂人が出るかもしれないからです。

そしてそのような狂人によって、ヨーロッパ全域のみならず世界全体を戦争に投げ込むかもしれないからです。

つまり、個別的自衛権は極めて危険な戦争の温床となる思想なのです。 

NATOのような多国籍安全保障体制ができなかったアジアでは、仕方がないので、米国が機軸になって、スポーク&ハブの安全保障インフラを作ってきました。

これが二国間安全保障体制です。そしてそれを支える概念こそが、集団的自衛権なのはいうまでもありません。

NATOにはほど遠いものの、二国間安全保障体制になっただけで、だいぶ安全になります。

たとえば、日本にかつてのようなヤケのヤンパチで世界相手に戦争を起こそうと思う国が現れても、相手同盟国があるかぎり、「ちょっと待った。頭を冷やせ」となるからです。

戦争をしないために多くの国が集まってブレーキをかける、これが集団的自衛権や、集団安全保障体制という人類が長い時間かけて作り上げた戦争防止のためのシステムなのです。

それを「戦争推進」とはモノ知らずにほどがあります。

この安保法制国会では、このコメント並の「識者」が多く見られました。

国際情勢の知識がまったくゼロなのに、「憲法違反は許さぬ」と集団で宣言して回るような憲法学者、最高裁元長官、判事、内閣法制局元長官、防衛省元高官ら、果ては「アベシンゾー、お前は人間じゃない。叩ききってやる」と吠える元国立大学教授たち。

こんな程度での知識で、賛成反対を言うこと自体が、たまったもんじゃありません。 

2015年9月21日 (月)

「平和国家」を叫ぶ人たちが決して言わないこと

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意味不明のコメントが来ました。全編、これレッテル貼りだけで、ナニ言いたいのきみ?という内容です。 

「腹を切れ」「暇人」とまで書いていますが、意味ぜんぜんわかりませ~ん。 

懸命に暗号解読すると、どうやら言いたいのはこの部分みたいですね。 

「アベも所詮はAKB並みの使い捨ての捨て駒。アヘのおかげで日本独立はまた100年は遠くなったのであります」 

アヘとなっていますが、まぁ安倍氏のことでありましょう。アヘだったら、連呼すると盛りのついた猫みたいになってしまいます(笑)。 

まぁ、この人のように、この安保法制や、その前段の宣言文であった70年談話も、いちばん右の人は嫌悪するだろうなと思っていました。 

この右の人が言う「日本独立」という表現は、実は日本共産党も大好きで、反米論者の愛好用語のひとつです。

この人たちによれば、日本は「親米ポチが支配する従属国だ」ということになるようです。

しかし笑えることには、実際にこの「反米愛国路線」を現実に移すと、日米安全保障条約廃棄という一点で、仲良く一致してしまいます。 

ちょうど、一本のヒモの両端を曲げるとくっついてしまうのと一緒です。 

違うのは、右翼が安保廃棄⇒再軍備という戦前の路線に回帰するのに対して、左翼が安保廃棄⇒非武装中立のようなファンタジー空間に入ってしまうことでしょうか。 

あいにく、今の日本は、大日本帝国の失敗をもう一回繰り返すわけにはいきませんし、逆に 米軍制下で丸腰にさせられた敗戦直後に戻ることもまた無理です。 

さて、今回の安保論議を通じて問われたことは、煎じ詰めると、今後日本がどのような外交の方向で進むか、ということです。 

それに対する安倍政権の答えは明確に、日米同盟の濃度を濃くしていくというものでした。

その理由もまた明確でした。現実に、中国の脅威は今までの安全保障の枠組みの想定を大きく越えてしまったからです。

国会審議では、中国への外交的配慮からか名指しを避けたためにホルムズ海峡がどーたら、徴兵制がどーたらという脇道に逸れましたが、後に中国を名指しして法案説明をする頃になると、「必要だ」とする人が半数を占めました。

念ですな、岡田さん、あなたの背中には1億人もいないのですよ(苦笑)。ま、どうでもいいか。

民主党のように、中国の海洋への軍事膨張を、都合よく「見ない」人たちが、中国に秋波を送ることを「平和外交」だ思っています。

この人たちはアジア、特に私たちの住む東アジアでは、歴史的に中華帝国を頂点とする位階秩序があり、それは今でも健在だということを忘れているようです。

いや、忘れているというより、むしろその位階秩序の上で生きることこそが「平和国家」だと思っているらしいのです。

Cay2ogap(写真 2009年12月。当時幹事長だった小沢一郎に率いられた民主党訪中団。総勢630名、現職国会議員143名は史上最大規模である)

上の写真は、当時権勢の絶頂期にあった小沢一郎氏の訪中団の折のものです。

小沢氏は、写真のようにニカニカしながら、民主党現職議員をひとりひとりを胡錦濤首席に握手させて、記念写真を撮らしています。
小沢訪中団 - Wikipedia

もう一枚この民主党議員たちの、参院採決の折の狂態も乗せておきましょう。実はこの二枚には関係があります。

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さて、この訪朝時の小沢氏の梁光烈国防相会談における発言です。

「日本では中国脅威論の名の下に防衛力強化の意見が根強くある」「今後も専守防衛の原則に基づいて国防政策を進めていただきたい」

ちなみに、この訪中で小沢氏は、中国に媚びるあまりこんな悪いリップサービスまで口走ってしまって、国民の顰蹙を買いました。

「こちらのお国(中国) に例えれば、解放の戦いはまだ済んでいない。(略)人民 解放軍でいえば、野戦の軍司令官として頑張っている」

ここまで言うかね。絵に描いたような朝貢外交です。田中角栄の直弟子なるが故でしょうが、政治家としての底が浅さが透けてみえます。

それはさておき、なぜ日本でこういう小沢氏のような朝貢外交が生れてしまうのでしょうか?

それは、東アジアにおいて、NATOやECのような経済・軍事的集団安全保障体制が生れにくい理由にもつながっています。

私はその最大の原因は、中国の位階秩序(華夷秩序)が現存しているからだと思っています。

冷戦が終わっていないからだという意見もありますが、中国が歴史的中華秩序を捨てることができず、その中国が共産化したために重なってしまったのです。

ヨーロッパが、長い戦乱の間に、相互の主権を尊重していくことが平和を守ることにつながると考えたのに対して、中国はそう考えませんでした。

中国にとって世界の中心は中国であり、中国皇帝を慕って世界の指導者たちが貢ぎ物を持って馳せ参ずる、というのが中国が描く「平和的秩序」の原イメージです。

ですから、関係はヨーロッパ圏のような主権平等ではなく、上があって下を従えるという縦の支配秩序なのです。

慕って来る配下の国の指導者たちは温かく迎え、逆らう国には強権で圧力をかけ、時には戦争に訴える、これが中華秩序でした。

この構図がいまでも生きていると改めて世界に見せつけたのが、先日の抗日70周年ナンジャラの軍事パレードでした。

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中国にとっては、自分以外の国々などはしょせん鼻クソのような従属国であって、生き延びたければ、それぞれオレの中華秩序の中で、生存圏を探ればいいのだと考えています。

これでは、ヨーロッパ共同体など生れようもありません。

アジア地域においては、この中華秩序に従属するのか、あるいは距離を開けて自立した主権国家である道を歩むのか、ふたつにひとつしか選択肢はありませんでした。

アジア地域で唯一、自立路線を取ったのは我が国のみでした。

つまり、中国が変わらない限り、おのずと選択の道は限られてしまうのです。2択です。

媚びて自国の生存圏を分け与えてもらうのか、それともその脅威を正面から見据えて自立国家の道を行くのかのふたつです。

Oyamamototarofacebook(写真 喪服で投票パーフォーマンスする小沢氏の唯一の友・山本太郎氏)

これが、今回の安保法制に対する大きな対応の差を生みました。

安保法制に反対する人達が決して口にしないのは、中国の軍拡であったことを覚えているでしょうか。

彼らは「米軍について地球の裏側まで派兵するリスク」を叫びながら、目の前の中国の脅威には堅く口を閉ざしました。

彼らが見ないのは自由ですが、中国の膨張は、東アジアのみならずアジア全域のパワーバランスを大きく変化させました。

それは、従来一貫してアジアの安全保障インフラを提供してきた米国の力が、大きく後退したためでもあります。

今回の安保法制整備の目的は、はっきりしています。

それは、自衛隊と米軍の連携を強化することで、日本と米国は共にひとつの中国という名の脅威に立ち向って行くのだ、というメッセージの発信です。

そしてそれは同時に、中国の脅威を真正面から直視し、日本は中国の押しつける中華秩序に組み込まれる意志がない、という姿勢を示したことになります。

かつて、小沢氏と中国朝貢外交をした民主党議員たちが、身体を張って守ろうとしたのは日本の「平和」ではなく、「宗主国」だったのかもしれません。

それも、昨日今日に始まったことではないのは見てのとおりです。

2015年9月20日 (日)

日曜写真館 彼岸花

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2015年9月19日 (土)

安保法案 可決成立 ご安心下さい。護憲派の皆さん

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安保法案が19日午前2時頃、可決成立しました。 

朝日と並んで強烈な反対をした毎日新聞は、こう書いています。 

20150919k0000m010176000p_size8(写真 参議院本会議。毎日新聞)

「集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案は19日未明にも、参院本会議で採決が行われる。(略)関連法案が成立すれば、平和国家として歩んできた戦後日本の大きな転換点となる」(9月18日) 

残念ながら、そうはなりません。 

法が現実に多少なりとも追いついただけで、今まで自衛隊の現場指揮官の「超法規的対応」だけに頼ってきた現実に、少しだけ法律が追いつくだけの話です。 

今回の審議において、自衛隊という奇妙な存在に対して議論が深まることはなく、、安保法案の目的もそこにない以上、「平和国家」が本質的に変化する可能性はありません。 

自衛隊はあいかわらず「軍隊のようなもの」として、警察官職務執行法の概念の下で動き続けます。 

この安保法は、あくまでも対外的に今までやってきたことを一本化して、日米同盟の密度を濃くして、中国の脅威に備えようというものにすぎません。 

この法審議で、国会の外のお祭騒ぎや、野党、マスコミの論調に影響されなかった人は、「え、こんなこともできなかったのか」と正直に思ったはずです。 

たとえば、避難した邦人が乗った米艦が武装船から攻撃を受けた場合、仮に自衛艦がすぐ脇を一見護衛するかのように航行していたとしても、米艦を守ることは許されていませんでした。 

自衛隊は法の建前では、米艦が蜂の巣のようになろうとも、呆然と眺めているしかなかったのです。 

なぜなら、外国軍のを守って反撃すると個別的自衛権の範疇を越えて、集団的自衛権とやらになってしまうからだそうです。バカか(苦笑)。 

あるいは、PKOで派遣された自衛隊キャンプに、同じ地域で活動しているNGOから救援の要請があったとします。 

現地ゲリラに襲撃されて、小屋に閉じこもっているが、ぐるりと包囲されて銃を乱射されている。助けてくれ、という悲鳴のような要請が来たとします。 

自衛隊は、法の建前上、「なんとか凌いで下さい」と言うしかありませんでした。 

なぜなら、自衛隊には、自分たちに弾が命中した場合にのみ許されるだけの正当防衛しか許されていないからです。自衛隊はペイパータイガーか。

ではこんなケースは、どうでしょうか?日本国籍の漁船が領海内で操業していたところ、国籍不明の武装船から銃撃を受けたとしましょう。 

機関銃で撃ちまくられて漁船は沈みかかかっています。たまたま近くに自衛艦がいました。 

さて、自衛隊は彼ら漁民を救助できるでしょうか? 

できません。自衛隊は、緊急で海上警備行動発令を要請しますが、閣僚のひとりがたまたま海外に行ってしまって不在で連絡がつきませんでした。 

さぁ、自衛隊はどうしたらいいのでしょうか?ここで三択です。 

①当然、自国の漁民を保護する。
②海上警備行動が下りるまで、傍観して何もしない。
③漁船と武装船の間に自分の艦を入れて楯となって防ぐ。

もう答えはお分かりですね。③です。 

さきほどから述べてきた、邦人の乗った米艦も、PKO派遣時のNGO保護も、そして漁船など民間船の保護もすべて自衛隊は、法的にはなにもできませんでした。 

もし守るとすれば、後に現場指揮官が法廷に引きづり出されて、外国人を許可なく撃ったとして殺人罪を求刑される覚悟で反撃するか、自艦を楯にして「専守防衛」を貫くしか許されていなかったのです。

これを多少できるようにしよう。多少スムースにしていこう、その程度の法案です。自衛隊が抱えた巨大な矛盾に較べれば、いじましすぎるくらいです。

とてもじゃないが、「戦後の平和国家の枠組みを変える」なんて起爆力はありませんって。

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初めの問いに戻ります。この法が成立によって、平和国家であることが転換され、「今よりも戦争に近づく危険が大きくなるのではないか」という不安があると言われています。 

安倍首相は違うと言うでしょうが、私は、そのとおりだと答えておきます。 

戦後、日本は軍事行動をせずに済んできました。なぜなら、米国が「平和国家」であることを容認したからです。 

日本国憲法には、ただの一行も「自国民保護」という条項はありません。自国民保護条項が欠落した憲法は、世界でもおそらく日本国憲法だけでしょう。 

皆さんもよくご存じの第9条第2項にはこうあります。 

「9条2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

 改めて読んでみると、スゴイこと書いていますね。 

あまりにスゴイので、GHQから憲法草案をもらった幣原首相がバッタリと気絶しそうになったという話がホントかウソかあるそうです。 

第9条という、本来は自衛権も含めて放棄しているとしか読めない条項ですが、これを作って強要したのは米国です。 

このことは護憲派もよく知っていて、「8月革命説」と言って、「実はアレは革命が起きたということにして解釈しよう」ということになっているようです。これが憲法学者の定説だそうです。

異民族軍に銃剣で脅されて押しつけられた憲法の、どこが「革命」なんだか(苦笑)。憲法学者がファンタジーなのは、なにも今に始まったことじゃないんですよ。

太田光さんは、「第9条を世界遺産にしろ」とのたまうていますが、そう思う人たちだけでそんな国に住んで下さい。

私はこんな国が「国民を守る義務などない」、と宣言しているような国に住むのは、まっぴらごめんです。

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押しつけた当人のマッカーサーが、鮮戦争勃発で心変わりして、「もうお前らを守る余裕ないから、早く自衛隊を作れ」と圧力をかけました。

勝手なもんです。それこそ「法の安定性に欠ける」というもんです。

しかし米国は日本が戦争に参加することまで要求しませんでした。

日本全国に好き勝手に米軍基地を置けることを条件に、戦闘参加をしない日本を認めてきたからです。

この名残は現在の日米地位協定のなかにも残っています。

A 在日米軍が専用で利用している施設
B 日米地位協定2-4-(a) に基づいて日米で共同使用している施設
C 日米地位協定2-4-(b) に基づいて米軍が一時的に利用可能な施設

これによると、米軍は日本の自衛隊施設・演習場のすべてを利用できることになっています。

このような無限大の基地提供と引き換えにして、戦後の「米国の戦争」のすべてに日本の参加は要請されませんでした。

これは、原爆を落してまで根絶したかった、日本人の軍事力を恐怖した名残です。

逆説的に言えば、日本の戦後の「平和国家」は、原爆と絨毯爆撃、あるいは沖縄戦の代償としてあったのかもしれません。

これが、戦後の「平和国家」であり続けられた秘密です。別に9条があったからではありません。

そして、この過去の遺産で守られてきた「平和国家」の期限切れが来ています。

いや、近づいているのではなく、かなり前に切れていたのです。日本国民は、それに気がつかないふりをしていただけです。

現在、米国は極度の内向き志向の時期に入っています。

これはまずオバマの登場で明らかになり、共和党も同時期のティパーティや、今回のトランプの登場でいっそう内向きかげんは明確になりました。

米国は国内に回帰したいのです。膨大な軍事予算を大幅削減し、海外展開している海軍、空軍、海兵隊を呼び戻したいという強烈な誘惑があります。

米国は世界の警官であることを辞めたい!

アジアの安定などは、いっそのこと中国とうまく話あって決めてくれれば幸い、南シナ海を中国とフィリピンが陸で結ばれようと、米国は痛くもかゆくもない、知ったことか!

中東、うちの国にはシェールオイルがでるから勝手にやれ!

こんな心理バイアスがかかっています。

そうされては困るのは、東南アジア諸国とオセアニアだけではありません。国が大きく、シーレーンに依存しているだけに、日本が最大の被害国になるでしょう。

そこで日本は、今まで米国に頼りきり、甘えきっていて「あるのだが、ないことにしよう」としてきた細々とした安全保障上の懸案を解決する重い腰を上げる気になったのです。

ひとことでいえば、「米国の戦争に巻き込まれる」のではなく、真逆に「米国を巻き込む」必要が生じて作ったのが、この安保法制にすきません。

これが、今回の日米新ガイドラインであり、安保法制の整備なのです。

ご安心下さい、護憲派の皆さん。この安保法案は彌縫策であり、とてもじゃありませんが「戦後」を吹き飛ばすだけの起爆剤にはなりようがありません。

それはまことに小さな一歩にすぎません。

月着陸を人類最初に果たしたアームストロング船長を気取れば、こういったところでしょうか。

「自衛隊にとっては小さな一歩だが、日本国民にとっては偉大な一歩だ」

 

2015年9月18日 (金)

コメントにお答えして 「沖縄地方政府」は妄想にすぎない

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昨日は見るともなく国会中継を見てしまって、ちょっと国会から離れたい気分です。

ミズホの長広舌はたまらんかったなぁ。聞くに堪えないのでパチンッと消して、だいぶ立ってからまたつけたらまだウダウダ安保法制と無関係なことをしゃべっていやがる。

もはや生きている公害発生源ですな。

小西、白、福山の各議員は、立派に暴行罪成立要件を満たしています。懲罰委員会というより、警視庁につきだしたほうがいいでしょう。 

それとあの不気味な「セクハラシスタース」。女性を見て吐き気が込み上げたのは初めてです(笑)。 

佐藤議員が暴力を働いたと、民主は叫んでいるようですが、それについては格闘技の観点からの解説はこちらから。写真も解説もこのツイッターからの引用です。
http://togetter.com/li/874992

Photo_2(写真解説 小西参議が止まった後、佐藤参議は飛んできた小西参議を視認。 右腕で押しのけに行きます)

Photo_3(写真解説 この時「佐藤参議が(小西参議を)殴った」という人がいますが、佐藤参議の右コブシの動きの軌道を見ると上に持ち上げた後水平方向へ押しのけていることが分かります。打撃格闘技をやったことのある人は分かりますが打撃ならばこんな軌道は描きません)

                       ~~~~~~

さて、ゴロリと話題を替えます。山口さんに頂いたコメントにこちらでお答えします。

「『新・戦争論』(池上彰、佐藤優)の中での発言ですが、佐藤氏がまず「尖閣問題を軟着陸させるウルトラCのシナリオがある」と切り出します。
それによると、
・日本が連邦制を布き、沖縄に外交権を一部付与し、交渉権を持たせる。
・領有に関する問題は、東京と北京で交渉するが、海上事故防止協定と漁業と尖閣諸島の使用に関しては、那覇の政府と当該の中国の地方政府と交渉すると区別する。
・漁業問題がクリアできれば軍も易々とは出て来れず、そういう体制を作ってしまえば現地も文句は言えない。
・主権の問題に関しては、日本は「棚上げにしていない」と言い続ければいい。

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ひとことで言えば、佐藤優氏の妄想です。 

そもそも、尖閣問題を「解決」するためにあえて全国の行政の仕組み全体を変えるなど、暴論もいいところです。 

佐藤氏がいう「地方政府」がどのようなものか説明がないので分かりませんが、今ある道州制をさらに急進的分離主義の方向に進めたもののような気がします。

道州制すら私は懐疑的です。日本の歴史的な国柄にあっておらず、富裕な地域をとった州と、そうでない地域の格差が開いてしまいます。 

中央政府を解体・弱体化させて道州制の名の下に、わが国をあたかもドイツかさらにはEUのような分権国家になっていくでしょう。

これを正式に政策化したのは旧維新の会でした。  

もし、「維新の会」の主張どおりに消費税11%を地方財源に移管するとした場合、有利になるブロックは、関東では人口と大企業が多い東京、神奈川ていどで、他の県は逆に地方交付税として得ていた税収が大幅に減少することになります。 

全国的にみれば、東北、北海道、九州、四国、中国も同じように大半は税収の減少をもたらすでしょう。  

圧倒的に税収が増えるのは東京と大阪です。なぜなら、共に関西と関東の人口と大企業が一点に集積されているメガロポリスだからです。

今でも税収だけで、ヨーロッパの中小国程度の規模をもっています。  

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この道州制の提唱者が、元東京都知事の石原氏と、大阪市長の橋下氏ですが、この二人は全国的に見て非常に特殊な条件にある大阪と東京の首長であることは、道州制を象徴しています。

彼らの地域だけが栄える仕組みだからです。このふたつの地域は、仮に国として独立してもやっていける希有な地域なのですよ。

そのふたりして唱える道州制の経済的意図は、あまりにも見え透いています。  

それはあからさまに言えば、国に召し上げられて、地方交付金で貧乏県にもっていかれたらたまらない、全部オレに寄こせ、ということです。  

これは緊縮財政が三度の飯より好きな財務省官僚にとってこれ以上のいい話はないはずです。

そりゃそうでしょう、いままで出来なかった地方への交付税交付金カットが実現するのですから、笑いが止まらないはずです。  

財務省の強い影響下にあった野田政権が、橋下「維新の会」と似た道州制の実現を考えていることからもそれは伺えます。  

道州制を実行した場合、東京と大阪を除くほとんどすべての県はビンボーになります。

特に、自主財源が貧弱な沖縄県などは壊滅的になります。

その結果、今でも小泉「改革」以後開くばかりの都市部と地方の格差がいっそう開いていきます。 沖縄県はその最低辺に追いやられるでしょう。 

さらに同じ州の中でも、州都となった都市は栄えますが、それ以外の地方都市は衰退していきます。

それは平成の大合併で、中央市役所所在地のみが発展したことをみればお分かりになると思います。

沖縄の場合那覇だけはなんとか栄えますが、離島経済は壊滅状態になります。基地から交付金でなんとかやってきた小さな自治体は、那覇に吸い上げられていきます。 

今の県制度は問題もありますが、交付金の形で地域格差を修正できる強みもあって、全国均等な発展がなんとか保たれていたわけです。 

もし佐藤氏が言うように連邦制に移行した場合、「日本連邦・沖縄共和国」とでもなるのでしょうか、その場合財源が激減します。

沖縄は差別され虐待され続けているというのが沖縄革新陣営の常日頃の口癖ですが、むしろ本土政府は腫れ物に触るように気を使っているように見えます。

今まで本土政府が沖縄へ投じてきた累計約10兆円という中国へのODAを上回る振興予算の多くがこの県の建築業へと吸い込まれています。

沖縄担当部局予算の6割から8割は公共事業関係です。たとえば08年度は振興予算の8割、11年度は1446億円と63%を占めています。

この「沖縄担当部局」というのは多少解説がいるでしょう。他県にはない沖縄独特のものだからです。

正式には「内閣府沖縄総合事務局」といい、経済産業省、農水省、国土交通省などの中央官庁の統合出先機関で、もちろんこんなモノは沖縄にしかありません。

この3つの省庁の名を聞いただけでピンと来る人も多いかもしれません。この三省庁こそ、公共事業の国側の三大出先だからです。

この霞が関の出先機関を通じて、毎年約3000億円もの予算が消化されていきます。その支出のもっとも多いのが公共事業なのです。なお、基地関連予算はまったく別枠です。

これらが沖縄経済の基盤です。

これが消滅した場合、まず土木業が倒れ、ついで土木業と同系列資本の観光業も打撃を受けます。

沖縄差別論者は、地方政府は「琉球王国」の第一歩を夢見られるので、非常に気持ちがいいでしょうが、それは同時に沖縄経済の壊滅を意味します。

次に、一地域に外交権を付与する連邦制など、世界にもありません。それでは完全独立と一緒で、連邦制の範疇でなくなります。 

そんなことを国境地帯の「地方政府」に外交権を付与したら、翁長氏のように外国政府の息のかかった首長は勝手に国境線の引き直しをしてしまいかねません。 

それはとりもなおさず、戦争の可能性を高めこそすれ、低減させません。 

Img_1(写真 空自・那覇基地。こんな高価で運用にも金がかかるものを「沖縄政府」が維持できるはずもない)

外交というのは、当然バックに軍事力が必要ですからこの地方政府とやらに自衛隊の一部の保有権を委譲するのでしょうか。 

こうなるともう、かつての幕藩体制に逆戻りですな。

ただし、「沖縄政府」は財政貧困ですから、今沖縄にいる空自、海自、陸自を維持することなど夢のまた夢で、フィリピン規模の軍隊すら持てないでしょう。

徴兵制でも敷かないと、兵隊すら充足できなくなるかもしれません(苦笑)。

よもや佐藤氏は、中央政府が無料で在沖自衛隊を委譲してくれるなんて、甘いこと考えているんじゃないでしょうね。

「漁業権だけ」とか言って、歯止めをかけたつもりのようですが、そんなことを「中央政府」と取り決めること自体、ナンセンスです。 

そもそも漁業権が尖閣の問題のありどころではありません。尖閣は中国海軍にとって、太平洋進出の扉なのです。 

それを「漁業権すら解決すれは中国軍は出てこない」・・、わ、はは。佐藤さん頭、大丈夫ですか?

わけねぇっしょ。甘いというより、相手の国の好意に期待するという、外交でもっともやってはならないことを、佐藤氏はしています。 

佐藤氏の下心は見え透いています。彼が沖縄で言っている「琉球独立」のための環境作りにすぎず、実行すれば沖縄は潰れます。

佐藤さん、専門のロシア・東欧や宗教学だけしゃべっていなさい。そのラスプーチン顔でペダンチックに、もっともらしくしゃべるからおかしくなる。

こと沖縄問題での佐藤氏の発言は、インテリの居酒屋談義以上ではありません。

こんなダボラを聞いていた池上さんの顔が見たいものです。

2015年9月17日 (木)

安保法制採決へ

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これを書いている段階では採決に入れないようです。なにやらバリケードまで作っているとか。いい大人が、学生さんの革命ゴッコのまねしてどうするんでしょうね(苦笑)。 

これを指揮しているのが、3.11の時の与党幹事長と官房長官の二人なんですから、まったく背筋が寒くなります。 

おまけに、時の首相がクレージー・カンときたもんだ。よくもったもんだよ、うちの国。 

Plt1508310015p1(写真 反安保集会での野党党首の皆さん。岡田氏は志位氏とはつないでも、小沢氏とはつないでいないのが微笑ましい) 

まぁ、これでこの党が政権に返り咲く可能性は限りなくゼロになりました。誰が国会でバリケード作るような政党に、もう一回政権作ってほしいもんですか。 

100時間を越える時間審議をしているんですから、その間にやりようはいくらでもありました。 

「対案はない。廃案だけだ」なんて叫ぶのが、元の防衛大臣だった北澤俊美議員ですから、もうなんともかとも呆れてものが言えません。

この人は、防衛大臣時代、何ひとつ現場の苦労をわかっていなかったのでしょうね。

1004131738122054(写真 皆さんお忘れかと思いますが、防衛大臣の時の北澤氏。迷彩服を着て、帽子には外国では元帥を表すファイブスターをつけている。政権党時代の民主党は集団的自衛権を当時認めていたことが、先日、国会で暴露された)

もう一回言っちゃおう。ああ、うちの国よくもったよ・・・。

こんな幼児退行現象起こしちゃう奴らが、政権中枢にいて100年に一度の大災害と原発事故の対応をしていたのです。ぞっとします。

彼らは政権から石持て追われましたが、改心していなかったようです。今度は抵抗政党です。

本質的議論を意図的に回避して、ただひたすら足を引っ張り、審議を引き延ばすだけが唯一の「政策」だと考えているのですから手に負えません。

さんざん焦点ボケのことを言い散らして、参院まで追い詰められると、今度は「身体を張って阻止」ときたもんです。

これで今まで、「自民はちょっとね」という支持層も呆れ返りました。この幼児的戦術を取ればとるほど、「1億人がオレたちの背後にいる」というような自己陶酔は深まるようですが、政党支持率は正直に直下降しています。

直近の政党支持率です。

自民は衆院段階の下降をくい止め上昇に転じる一方、民主党は下落が止まりません。あれだけ手厚いマスコミの援護射撃は、民主のカンフル剤にならなかったのです。

下図が報ステという、日本でもっとも自民党を憎悪している番組が調査した政党支持率です。※2015年8月調査 http://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/201508/index.html  

民主党はこの間の旧社会党さながらの抵抗政党型国会戦術によって、リベラル側の支持者を共産党にむしり取られ、政権抗体時に基盤となった「自民はいやだが、共産党はもっといやだ」という保守層の支持を壊滅的に減らしているのがわかります。 

党 名支持率(%)前回比
自民党45.0% +3.7
民主党13.2% -4.1
維新の党4.1% +0.1
公明党5.8% +2.6
共産党5.0% -1.7
次世代の党0.0% 0.0
社民党1.1% +0.3
生活の党と山本太郎となかまたち0.2% -0.2
日本を元気にする会0.0% 0.0
新党改革0.0% 0.0
その他1.1% 0.7
支持なし、わからない、答えない24.5% -1.4

言うも愚かですが、国会とは言論の府です。政策を出し合ってディベートする場所です。北澤氏が「対案がない」と大声で言った瞬間、、言論で戦うのを止めたということです。 

「オレはバカだから、なにもわからないんだ!」、と大声で叫んでいるようなもんです。 

これって、「もう二度と政権党に戻らない、生涯一抵抗政党でいる」ってことを宣言したようなものです。

Hentai(写真 民主党の女性議員たち。スクラムを組んで委員長の入場を阻止しておいて「触るな、セクハラだ」とのこと。わ、はは。もうこりゃダメだ。この女性議員たちには恥という感覚がないのか?)

もし民主党が有効に審議を遅らせたいのなら、こんな土壇場に追い込められて、支持率をどんどん下げる前に、いくらでもやりようがありました。

民主党が本気で、この法案を止めたいのなら、安保法制にはいくつも欠陥があるのですから、そこを突いたらよかったのです。 

そして「徴兵制がやって来る」といった四次元方向に話を持っていかないで、現実の国を取り巻く環境について、個別具体論で問い詰めていけば、ボロボロ欠陥がで出たはずです。 

安保法制は、朝日にかかると「戦後の国のあり方を大きく変える」そうですが、そんな大仰なもんじゃありません。
※朝日社説http://www.asahi.com/paper/editorial.html

今まで現場力で凌いでいたツギハギを、なんとか法制化してサポートする一歩を踏み出しただけです。 

既に内容的には今年4月の「日米安全保障ガイドライン」で決まっていたことです。安保法制はこのガイドラインに沿ったものです。

96958a9e93819481e0e59ae4948de0e5e2e(図 日経新聞2015年4月28 )

具体的にこのガイドラインで示されていたのは、日本を取り巻く国際環境が、戦後最悪になりつつあるという厳しい認識です。

衆院の審議で、首相は外交的配慮で名指しを避けたために、「ホルムズ海峡」方向にボールがスライスしていきましたが、中東なんて関係ありません。

緊迫した状況の中で、場当たり的にギクシャクしないで、あらかじめ起きそうな非常事態に備えていこうとすることです。 

安全保障とは、ひとことで言えば、国の主権を守ることです。ですから、国民が住んで生活し、生産活動を続けている領土領海の安全を守ることです。 

これに関わっている組織はいくつもあります。警察、海の警察である海上保安庁、そして自衛隊です。 

そして、忘れてならないのは、日本と安全保障条約を結んでいる米軍がいます。 

この4つの組織が、有事においてドタバタしないで、任務をシェアしたり、引き渡していくための法律が今回の安保法制なのです。 

政府はこれを「シームレス」と呼びました。何も横文字で言うことはないと思いますが、シームレスとはストッキングじゃなくて、「切れ目がない」ていどの意味です。 

たとえば、外国軍が領海侵犯したり、離島に上陸したりした場合、まず海保が対処します。

いきなり、軍隊が対応すると戦争になるからで、世界各国が海保、つまりコーストガードドを持っているのは、いきなり海軍同士のドンパチを避ける大人の知恵なのです。

しかし、侵入してきたのが外国軍だったとすると、海保は先日お話した「警察比例の原則」で対応せねばならなくなります。

すると、ピストルでカラシニコフと対応することになりかねません。その場合、自衛隊を呼ばねばなりません。

この海保と海自の任務の受け渡しをスムーズに行なうというが、今度の法制のキモのひとつです。

もうひとつのスームズは、自衛隊の防衛出動をスムーズに行なうことです。

今まで何度も書いてきましたが、自衛隊は勝手に動けません。世界一縛りがきつい組織です。

フツーの国の軍隊は、「コレだけはしてはならぬ」ということをリストアップして、それ以外は国を守るためならやっていいのですが、うちの国の自衛隊だけは、「軍隊ではないなにか」なのでできない仕組みになっています。

根本原因は、自衛隊が憲法で認められていない「軍隊のようなもの」だからです。ですから、自衛隊は、警官職務執行法の概念で規制される唯一の「軍隊」です。

「これこれをせよ」という命令をもらって、時には特別措置法を作らねばなりませんでした。

これの幅を拡げるのが今回の法整備のキモのひとつです。たとえば、「駆けつけ警備」です。外国のPKOに行っていても、隣にいるオランダ軍を助けることができませんでした。

Photo(写真 南スーダンに派遣された自衛隊PKO部隊。かつて朝日や護憲派は、PKOすら反対した)

国際警察活動で一緒にがんばっている友軍が攻撃された場合どうするのかについて、当時の自衛隊PKO指揮官はこう言っています。

「偵察と称して出かけて、自らが撃たれることで、自衛反撃の要件を満たして対処する」

こういうことは隣のPKO部隊だけではなく、東チモールでは邦人が救助要請しても建前上は救助ができませんでした。

そこで現場指揮官が考えた苦肉の策は、「事情調査の名目で出動し、自分が撃たれることによって邦人を守る」と考えていたそうです。

米艦や海保が攻撃を受けた場合も、艦を間に割り込ませて防ぐ決意をしていたのです。おそらく、その自衛艦は沈むでしょう。

そんな自らを犠牲にする方法でしか守れない、それが現実です。こんな悲壮な覚悟をしている「軍隊」など、世界のどこにあるでしょうか。

まさに自衛隊の現場力と、悲壮な犠牲精神でなんとか凌いできたのです。これをなんとかしようというのが、今回の法整備です。

もちろん今回の安保法制で解決するわけではまったくありません。山積した矛盾のごく一部を解決するだけです。

これを朝日と民主党はなんと、「戦争法案」と罵倒するのですから、常識を疑います。

今回も、邦人救出を「領域国政府の同意」を前提にして法整備しようとしたところ、案の定、朝日に「抜け道だらけの戦争法案反対」という非難を浴びて、審議は難行しました。

どうも朝日や民主党は、邦人を救助することまでも「戦争」だと言いたいようです。9条護教派の冷血ぶりが透けて見えます。

話を戻しますが、離島や領海に侵攻を受けた場合、海上警備行動などの発令を受けてからでないと自衛隊は動けません。

仮に目の前に、日本漁船が外国軍艦によって蜂の巣にされていても、原則は指をくわえてみているしかなかったのです。

あるいは、漁船と外国軍の間に飛び込んで、自分が撃たれてから反撃することしか不可能でした。

この異常な縛りを少しでも減らすというのが、今回の法整備です。

それは海上警備行動は閣内全員の承認がいるので、せめて電話連絡で閣議了解としようという程度の法整備にすぎません。

また、米軍と共同警戒・監視活動をしていた場合に、今まで米艦が攻撃を受けてもどうしようもなかったことを、守れるようにしました。

これで守れるのは米国だけです。オーストラリアやインドなど別な諸国には適用されません。公明が反対したからです。

これでは、今、実施されている日米印の共同訓練において、インド海軍が攻撃されても防げません。

このように、朝日が言うような「戦後社会のあり方を根本から変える」どころか、実にささやかな法整備でしかありません。

本来なら、自衛隊に領海警備の権限を与える法整備を図るべきですが、それも見送られました。

As20150514000896_comml(写真 安保法制反対デモ。若者ばかりマスコミはスポットをあててヒーロー扱いにしたが、実態はいわゆるオールド「日教組世代」の共産党員と、組合と動員だった。来週から生きがいをなくして可哀相)

民主党長島昭久議員たちが、領域警備法を提出しようと、民主党内でがんばったようですが、あえなく執行部に握り潰されたようです。

これが提出されていれば、「領域」とはどこを指すのか、自衛隊はなにができるのか、できないのかを、中国の脅威と対応してリアルな議論が可能となったはずです。

このような実のある議論を深めて、法案をよりよくしていくならわかりますが、元防衛大臣が「対案なし。廃案だけだ」と言うようではオシマイです。

こういうことで100時間議論して、まだもっと改良が必要だというならわかりますが、「戦争法案反対」から一歩もでないようではどうにもなりません。

朝日と民主党には、こんな古典的罵倒語を進呈します。

豆腐の角に頭をぶつけて死になさい。

■速報 安保法制法案は午後4時30分頃、特別委で可決しました。

Cpezoaluaaaym(写真 鴻池委員長に代わった佐藤議員に襲いかかる民主党議員。佐藤議員はイラク派遣部隊の隊長だった)

「集団的自衛権の限定的な行使容認を含む安全保障関連法案は17日午後の参院平和安全法制特別委員会で、自民、公明両党などの賛成多数で可決された」
(産経新聞16時40分)

2015年9月16日 (水)

尖閣問題 「地方政府同士の交渉」は罠だ

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今日あたりは国会前が荒れそうですが、こちらはこちらのペースでということで、まずはコメントにお答えする中から、考えていきましょう。 

山口さんから頂戴したものです。 

「佐藤優氏が、尖閣は地方政府同士の問題として沖縄と台湾で交渉させれば中国は手出しできないと言っていましたが、それも非現実的な気がします」 

はい、私も同感です。ただ私は非現実的というより、危険な提案だと思っています。

佐藤さんは、ロシアや東欧を語らせると信頼性が高いんですが、沖縄が絡むとハーフウチナンチュー丸出しでバランスを欠いたことを平気で言います。 

彼は、沖縄に住む沖縄県民より、住んでいない分だけ観念的になっています。

Photo(写真 佐藤優氏。顔を見ると、確かにウチナーの血がまざっている。顔はコワイが声はカン高くてかわゆい。彼は左翼だったか、偽装転向者のような気がする)

こういう「本土にいるほうが過激になる」という逆転現象は、基地問題での本土の県民会の若い人たちによく見られました。 

実際の県民は、様々な利害関係もありますし、けっこうしたたかでテーゲーに生きているものです。 

普天間基地のオープンデイには子供を連れて遊びに行き、マスコミから「基地は反対ですか」と聞かれれば、「やっぱり困るよね。危ないし。うるさいし。自衛隊なら我慢するけど」と答えるわけです。 

そのうち息子が、基地の従業員に受かったりすると、思わずやったとオリオンビールで乾杯したりします。県内では、給料いいですからね。 予備校まであります。

しかし、「日本」に居るとこのしがらみから一時的に解放されますから、どんどん「沖縄人」として純化していくことになります。 

結果、「琉球独立」などという、どこから見ても空理空論を平気で口走るようになります。 

佐藤氏は母親が久米島ですが、自分は生れも育ちも関西なので、妙な思い入れというか、ピュアウチナンチューに対するコンプレックスでもおありのようです。 

ですから、こと沖縄問題だと、ひどい左翼バイアスがかかったことを平気で言って、沖縄では地元紙指定「良心的知識人」の座を占めています。 

さて、佐藤氏の意見ですが、そもそも「地方政府」ってなんですか。沖縄県は、地方自治体ですが、「地方政府」ではありませんよ。 

地方政府というのは、ドイツのような連邦国家において語られるべきもので、日本はそのような連邦制をとったことなどかつて一度もありません。 

近代化のプロセスが、まったくドイツと日本は違います。

戦争に明け暮れていた小邦が、強国プロイセンによって統一されて近代的民族国家になったドイツとは違って、日本は中央政権が封じた領主による封建体制が進化して、近代国民国家になりました。 

そのために、たとえば日本の沖縄県と、ドイツのバイエルン州政府とは、権限や財源の幅がまったく異なっています。

そのドイツにおいても外交と国防という外国との交渉事を含む分野は、連邦政府に委譲されています。 

いわゆる「国の専権事項」です。 

翁長氏は政府が沖縄県をハレモノのようにしていることをいいことに、「沖縄県駐米大使」すら派遣しています。

そうそう、よく地元紙は沖縄が「アベ政権の力づくの強権政治」の犠牲者になっていると書き立てますが、力つくで移転をやる気だったら10年以上前に「新基地」はできていますって。

橋本ポマードが言い出してから、 17年もかかっているのは、沖縄県や地元との調整に大変な時間を費やしてきたからです。

力づくでやる気なら成田のように、とうに機動隊を入れて強制代執行で処理しています。

普天間の基地の危険除去という本土政府の「好意」が仇となって、かえって逆に恨まれることになったという悲喜劇です。

それはさておき、翁長知事は沖縄県ワシントン事務所という面妖なものを作って、「初代大使」に在沖米国総領事館のスタッフだった平安山英雄(へんざ)氏を任命しています。 

やれやれ。こんなことをするから翁長氏は、「琉球王」などと揶揄されるのですよ。

フツーの県の在外事務所は、もっぱら県産品の輸出振興ていどのもので、こんな「県外交」をする所ではありません。 

Pickh20150402_a0002000100200003_l(写真 平安山氏に2年の駐在員辞令を出す翁長氏) 

この翁長氏行為は、地元紙がお好きなはずの憲法に違反しています。憲法は9条だけじゃないんだよ、地元紙さん。 

日本国憲法第73条「内閣の事務」は、2項に「外交関係を処理すること」と定めて、外交を国の専権事項に指定しています。
※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-4348.html

したがって、沖縄県という地方自治体に、外国との交渉を進める権限はありません。 

まして、佐藤氏は台湾を「地方政府」と言っていますが、事実歪曲です。

一度として中国が台湾を実効支配した事実はありません。

何度も台湾侵攻を試みましたが、すべて撃退されています。ですから、この台湾を「地方政府」とする佐藤氏の考え自体か、中国政府の主張そのものです。

これを認めると、中央政府が、台湾という地方政府に軍隊を配備するのは自由だということになってしまい、武力侵攻の口実を与えてしまいます。

大変に危険な考えで、外交官だった人だとは思えません。

Kina(写真 喜納昌吉氏。かつてのファンとしては彼が政治家になった時にはたまげた。実際はかなり強引なこともやって民主党県連内部でも批判を浴びていたと聞く。政治主張は、まぁ、ご想像どおりです。)

実は、このような「地方政府同士の交渉」という考えは、既に沖縄にあります。 

たとえば、民主党県連の会長をしていた喜納昌吉氏などはかねてから、「尖閣は沖縄のものだから、沖縄が主体となって、中国との共同開発をすればいい」と述べていました。

喜納氏の考えは、やがて独立する「琉球共和国」の資産として、尖閣海域にあるとされる資源を、中国の豊かな資金を引き込んで開発し、財源とするつもりです。

まぁ、現実にこんなことをやれば、ミュージシャン崩れの甘い幻想など、中国にいいように利用されて乗っ取られるのがオチです。 

佐藤氏の案は、これとほとんど同じです。百歩譲って、台湾が中国の「地方政府」だとして、沖縄県と直接交渉した場合、中国は間接的にパペットの馬英九を介して、影響力を行使します。

「共同開発」に、中国政府のヒモが着いた台湾籍の中国資本を入れることなど朝飯前です。

そしてなにより、警戒せねばならないのは、これは主権侵害につながることだということです。

彼らは、領土問題は「棚上げ」にして平和的に共同開発しましょう」、と言ってくるでしょうが、それ自体が現在の日本政府の「領土問題は存在してい」という立場からの大きな後退です。

つまり主権の切り崩しにほかなりません。こんなことを沖縄県が「県外交」で始めれば、本土政府は沖縄が独立コースに入ったと判断するでしょう。

また、台湾とは良好な関係を続けてきましたが、ここまで中国政府の意図が背後にあるとなれば、警戒感を高めると思われます。

かくして、中国は一粒で四つの美味しいものを食べることができるわけです。

ひとつは、うまくいけば中国資本の尖閣海域での資源開発。
ふたつめには、仮に失敗しても日本の領土主権の切り崩し。
三つ目は、日台関係の分断。
そして四つ目は、沖縄県の「独立」による冊封国としての取り込み。

こういうことを、外務省主任分析官だった人が言うこと自体がありえないことです。孫崎氏や天木氏など、外務省という官庁は大丈夫なのかと心配になります。

■写真 沖縄に咲き乱れているブーゲンビリアです。ごく普通に丹羽に割いています。最近は、ドラゴンフルーツまで庭木になっています。おそるべし、沖縄。

2015年9月15日 (火)

翁長知事承認取り消し 地方自治史に残る汚点

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翁長知事が、とうとう承認取り消しに踏み切ってしまいました。今日はそちらからいきます。

まずは沖縄タイムス(2015年9月14日)です。 

「翁長知事は11日、記者団に「週明けにやる」と、取り消しを決意し、表明時期を明らかにしていた。自身が設置した有識者でつくる第三者委員会が、埋め立て承認の手続きに「瑕疵(かし)あり」と結論付けた報告も踏まえ、取り消しを判断した。
 翁長知事の取り消し表明後、行政手続法に定められた取り消される側(防衛局)の意見を聞く「意見聴取」の手続きに入る。県は精査も含め、約1カ月程度かかるとみている」

記者会見のライブまで流しています。琉球新報などは大好きな号外までを出して、はしゃいでいます。(下写真)

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前代未聞の地方首長による、国家事案の取り消し騒ぎですが、翁長陣営にこの正規の行政法の手続きの場で争って勝つ見込みはないはずです。

選択肢はそう多くありません。国は言うまでもなく、この翁長陣営のチャブ゙台返しに対して不満ですから、100%行政不服審査法で争ってきます。

行政不服審査法は本来、国民の行政行為に対する不服を扱うもので、国と県という行政機関同士が争うものではないのです。

防衛問題という国家の専権事項を、地方首長が覆すという行為自体が異常なのです。そこのところをはっきりとわきまえてこの問題は考えるべきです。

前職の仲井真知事が強調していましたが、県知事の権限は限定されたものです。

公水面の埋め立てに対して、環境配慮がなされているか、海を汚すような工法は取っていないかという、極めて限定された事案に対して審査するだけにすぎません。

この国の法は県知事に、工事が正しいかどうかなどを政治的に「審査」する権限など与えていないのです。

したがって県知事は、申請された計画案が虚偽の申告をしていたり、明らかに環境汚染をすることが予想される工法をとるのがし明らかでない限り、取り消しは不可能です。

そして、いったんこの県の事務上の精査が終了すれば、この決定に自治体は拘束されます。

国と国の間に条約があるように、国と自治体との間にも決め事があります。一回決めたことが、後から一方的に変えるということは、本来絶対にあってはならないことです。

これをしようとしているのが翁長氏です。こういうことを、世間では「革命」的手法と呼びます。

「革命」的手法というのは、「フランス革命」を夢見るシールズの坊やたちならともかく、民主主義国家の行政がやることではありません。

だから今回の翁長知事の承認取り消しは、地方自治史に汚点を記す不祥事なのです。

もし、このようなことが許されるのなら、国と地方自治体との協議など無意味になります。

知事が変わることにクルクルと言うことが変化するのですから、一貫性のある政策がとれません。

実に17年間もかけて、地元の名護市と話合い、県と話し合い、地元民と話し合い、米国に頭を下げまくってなんとか着地点が決まっても、「あ、あれは前職が決めたことだから」でオシマイではたまったもんじゃありません。

常識で考えろよ、と思います。

候補地は実に24カ所もあり、それらをひとつひとつ丁寧に調査して辺野古になりました。

それで決まったわけてはなく、そこから延々と名護市と滑走路の向きはこちらで、長さはこのようにしてと最大限要望を取り入れて現行案があります。

シュアブ陸上案が、私はベストだと思って来ましたが、それに反対したのは他ならぬ名護市ですよ。

これも、「いや~、あの時の名護市長は替わったからねぇ」で済ませられますか。冗談ではない。

沖縄県という場所は、こんなに朝令暮改が効く県なんですか!?「行政の一貫性」という言葉がないのですか。

こんなことをやっていたら法治国家ではなく、中国のような人治が優先する国に堕してしまいます。

首長が替わるごとに、いままでの話し合いをドブに投げ捨てて平然とできるのなら、沖縄は既に法治の国をであることを止めて、人治の国になったということです。

5b35a52a(写真 背徳者翁長。背信者翁長。裏切り者翁長。こう反対派陣営から呼ばれる日も来る)

元自民党県連の大幹部にして、移設の旗振り役だった翁長知事は、この承認取り消しが横車を押すことだと分かってやっています。

ですから、「第三者委員会」という有識者会議をでっち上げました。「第三者の有識者のご意見によれば」という体裁を整えたかっただけです。
※関連記事http:/arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-03a3.html

デッチ上げと言われたくなければ、その人選も賛成反対、各分野からバランスよく集めるべきだからです。

As20150716001102_comml(写真 お手盛り答申を受けとる翁長知事)

ところが、実際は翁長氏の顔色を伺う茶坊主ばかり、反対派一色で固めて「第三者」もないもんです。

その上、本来この第三者委員会は、かつて仲井真リンチ事件で使ったような「百条委員会」とは異なり、あくまでも翁長氏の「私的諮問組織」にすぎません。

百条委員会は、県民によって選ばれた県議会議員によるものでしたが、今回の「第三者委員会」は選挙という民主的手続によらない「諮問機関」にすぎないのです。

こんな翁長氏のイエスマンで出来た私的諮問機関の答申なるものは、初めから結論があってから作ったもので、まったく合法性を持ちません。

そして、恥ずかしくて公開できないので、一時は議事録の公開を拒みました。

産経に暴露されて、担当した県職員が会議において「不本意である」とまで述べたことがバレて、慌てて公表したのです。

このような「法的瑕疵はない」とする県担当職員の声を無視して、作ったのがこの第三者委員会答申なるものです。

そしてこの土木科職員の「瑕疵がなかった」という意見は、県職員個人のものではなく、沖縄県の正式な見解なのです。

「県の意見」たる職員の陳述を、県の最高責任者自らが否定しているのです。

いったい、沖縄県という自治体のガバナンスはどうなっているのですか。呆れてものが言えません。

沖縄に「普通の県」のガバナンスが戻ることを祈ります。 

■写真 わからないでしょう。バナナです。

2015年9月14日 (月)

常総水害 わかっていた浸水範囲と行政の失敗

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常総水害はわが茨城県に、局地的ですが、東日本大震災に匹敵するような大きな爪痕を残しました。

●犠牲者
・死者   ・・・宮城県2人、茨城県2人、栃木県3人 計7人
・行方不明・・・茨城県15名
・けが人 ・・・宮城県2人、栃木県2人、茨城県22人
・住宅被害・・・1万5754棟
 

今、ネットやマスコミで一斉に様々な情報が出ていて、その中にはあらかじめ結論を定めてしまい、攻撃対象を政治的にしたいという思惑があります。 

私はこれには賛成できません。まだ、遺体のすべてが発見されてもおらず、調査は始まったばかりです。結論めいたことを言う段階ではありません。 

私はできるだけ、客観情報の積み重ねをして行きたいと思います。

では最大の疑問である、なぜ堤防がこの地点で崩壊したかから考えていきましょう。

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知られているように、確かにこの地点はかねがね国交省も鬼怒川の危険地域としてマークしていた場所です。

国交省の水害推定マップをもとにした常総市ハザードマップは、皮肉にも今回の水害とほぼ重なります。
常総市洪水ハザードマップ(鬼怒川)

この推定浸水地域によれば、「100年に一度」の大水が来襲した場合、常総市鬼怒川左岸(東側)はほぼ完全に冠水することは分かっていました。
国土交通省関東地方整備局

2015091300000045san0008view(図 常総市の推定浸水範囲(左)と常総市洪水ハザードマップ 産経新聞9月13日より)

しかし、この常総市自身が作ったハザードマップは、なんの役にも立っていませんでした。

冠水範囲は、八間堀川沿いを中心に、2~5mに浸水深と予測され、市役所の周辺でも1~2mの浸水深と予測されていました。

もし、このハザードマップを役立てたいのなら、そもそも水没推定地域に市役所を建設するはずがありません。

033(写真 NHKニュース12日7時より。以下8枚同じ)

もはや笑うべきことに、常総市役所は市民の避難場所として指定されていたにかかわらずあえなく浸水し使用不可能となりってしまい、庁舎電源が1.5mの位置にあったためにこれも停電。

玄関も水圧で開かず、駐車場にあった市の車両がすべて水没したために、わずか数キロ先の距離の高台の施設にまで自衛隊に非常食を取りにいってもらうというみっともなさをさらしました。

朝日新聞(9月11日)は常総市役所のうろたえぶりを、こう伝えています。

「避難場所となった茨城県常総市の本庁舎と隣接した議会棟も10日夜から、氾濫(はんらん)した泥水に囲まれた。
11日朝の段階で停電や断水が続き、食料を届けるのも難しい状況だ。避難した住民約400人や職員、
自衛隊員、消防署員、報道関係者ら計1千人近くが夜を明かした。
 市職員らは10日夕に持ち込んだ発電機で携帯電話を充電しながら、情報を集めている。11日朝になっても、建物玄関付近の水かさは大人の腰あたりまであった。扉には「2人がかりでやっと」(
自衛隊員)という水圧がかかっており、出入りもままならない。
 建物は昨年11月に完成したばかりの鉄筋3階建て。1階を避難所としたが、水かさが増したため2階に移した。近くから避難した会社員新井慎也さん(46)は「市役所は安全だろうと判断して避難してきた。もっと早く市役所が水につかりつつあると知らせてもらえれば、遠くに逃げられたのに」と話した」

思わず、原発でなくてよかったね、と言いたくなります。ちなみに、どうでももいいですが、高杉徹市長は脱原発をめざす首長会議とやらのメンバーです。

高杉市長は福島原発の「100年に一度」は許せなくとも、自分の足元の「100年に一度」はまったく見なかったようです。
脱原発をめざす首長会議

市役所の無能ぶりは光っており、避難指示が遅れただけにとどまらず、あろうことか「西に向っての鬼怒川を渡って避難しろ」という、危険極まりない指示まで出す始末でした。(9月13日NHKスペシャルによる)

この避難指示の失敗により、破堤した三坂町付近の住民は、瞬時に濁流に呑まれて避難する余裕さえありませんでした。

さらに、人口密集地帯の水海道駅周辺の地域でも、事前シミュレーションでは、濁流に呑まれると分かっていながら避難呼びかけすらなかったようです。

そのために千人ちかい住民が被災することになりました。避難指示の失敗については、高杉市長も謝罪しています。

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ではなぜ、この地点であったのか、ここが特別弱い箇所だったのかということですが、後述する土木学会調査団の山田正教授は、そういうわけではないと述べています。

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さて、まず13日、山田正中大教授を代表とする土木学会調査団が現地入りし、調査を開始しました。 

まだ現地の状況を視察した初歩的調査の状況のようですが、いろいろなことが分かり始めています。
土木学会 - Facebook 

「関東・東北水害で、土木学会の専門家や国土交通省関東地方整備局の調査委員会が13日、大規模な被害が出た茨城県常総市を訪れ、鬼怒川の堤防が決壊した現場を調査した。
同学会の山田正中央大教授は取材に、増水した川の水が堤防を越えてあふれ、外側の土手を削り取って決壊に至る「越水破堤」の可能性が高いとの見方を示した。
 (略)となった。
 山田教授によると、周辺の木に付着した泥が堤防の高さを超えていたため、越水した後に決壊したと判断。「あふれた水が非常に速いスピードで堤防を下って浸食したのだろう」と話している。この地点から決壊した理由については、さらなる調査が必要との認識を示した」(日経新聞9月13日)
 

ここで、調査団の山田教授(中大理工学部河川・水文研究室)が示した見解は、堤防の越水破壊の可能性です。

この越水破壊とは、増水した川の水が堤防を越えてあふれ、内側(※)の土手を削り取って決壊に至るものです。※間違って「外側」と書いてしまいました。ご指摘を頂戴してわかりました。もちろん内側です。

この越水破壊のメカニズムを見ておきましょう。NHKニュース13日7時のニュースは詳細にその経過を報じています。

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上の写真は山田教授が、現地でメモ書きしたものですが、堤防破壊はこのようなプロセスで発生します。

①堤防に河川の水が満水近くまて押し寄せます。

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②一部の水が堤防の先端を乗り越えて溢れだします。これが越水現象です。

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③さらに越水が増して、堤防は役割を果たさなくなります。越水した高速の濁流は堤防の内側の基盤を崩し始めます。

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④越水した水のエネルギーによって、堤防は内側から崩壊を開始します。

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⑤堤防は内側からの崩壊により薄くなりもはや、外から流れ込む水のエネルギーに耐えられず、全面崩壊します。

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このように、今回の常総水害は、「100年に一度」といわれた大災害が、100年どころかひんぱんに襲来するものであり、その備えがまったく出来ていないという意味で、人災の側面もあることを教えました。

次回に続けます。

■扉写真 大雨後のわが村の湖畔の水。冠水したために稲穂が水についてしまっている。稲刈り直前で、商品にならない稲も多く出た。

2015年9月13日 (日)

日曜写真館 お稲荷さんってこんなにエキゾチックだったんだ

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2015年9月12日 (土)

名無し氏のコメントに答えて 安全保障で遊ぶな

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私の少し前の記事にコメントがありました。例によって、ちゃんと読みもしないで突っかかってきています。

特に昔の記事に、わけのわからない突っかけられ方をすると、私は物書きではないのでドドっと疲れます。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-6db3.html

大水災害について書こうと思っていましたが、売られたケンカは買うのが私の流儀なので、今日はそちらのほうを。

さて、この名無し氏に典型ですが、安保法制反対の人に共通する特徴は、空論です。

安全保障という、リアルな自分たちの平和と安全をテーマにしているのに、現実がどのようになっているのか、ちゃんと勉強していないので困ります。 

ですから、勝手に自分の頭の中で、「こうに違いない」というイメージを作ってしまいます。 

たとえばこの人物の場合、こんなことを書いています。 

>小さな尖閣諸島に強襲上陸する必要なし。海と空からの攻撃で壊滅できるし安全。 

絶句しますね。

そもそも私は「離島」に侵略があった場合、今の自衛隊の島しょ防衛能力では、守れないと書いたので、普通は「離島」とは八重山諸島・宮古島、与那国など国民が居住する島々のことです。

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尖閣問題は別の大問題ですが、一緒に論じてはかえってわからなくなります。 

沖縄の離島は、中国と緊張している国境線にありながら、まったく自衛隊が駐屯していません。 

宮古島に唯一レーダーサイト要員がいるだけで、戦闘職ではありませんから、本島から与那国までの実に延々650㎞は、「防衛の空白地帯」なのです。

与那国にはスッタモンダにせよ、監視の小部隊が行くようですが、あくまでも監視が主任務で、侵攻を受け止める力はありません。 

私が記事で警鐘を鳴らしているのは、そのことです。この650㎞は、中国という脅威の前面に位置しながら、駐在のピストル一丁しかないのです。

これでどうして住民を守れるでしょうか? 

尖閣は無人島なのに、この人はそれを人が多数住む離島と味噌もクソも一緒にして、ガサツに「空海でカタがつく」と豪語しています。

なにも勉強していない人特有の、機械的な発想です。 

現実には、いちばん可能性がある中国の侵攻方法は、南シナ海の事例から見て、いわゆる「グレーゾーン侵攻」だと思われています。 

一見漁民の姿をした中国軍が民間を装って、「台風から逃れたいので寄港したい」などと言って港に入って来て、そのまま島を武力で制圧して居すわってしまうケースです。

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(写真 中国はいくつも特殊部隊をもっているが、こういう正規軍の姿で侵攻する可能性は低いと見られる)

島の人達は人質状態になります。しかも、相手の正体は中国軍だろうと思っても、名乗らないのでわかりません。 

そんなところにいきなり空から爆撃するなど、できるはずかないでしょう。島民を巻き沿いにするし、第一敵の意志が何かわからないのです。 

この場合、自衛隊をいきなり投入することはまずありえません。 

海保の特殊警備隊(SST)を送って、人質解放を目指すことになります。 

1c4176thumbnail2(写真 海保の特殊警備隊・SST。本職は島の警備ではなく、船舶の臨検)

しかし、日本側には大きなハンディがあります。それは、この海保部隊は(自衛隊もそうですが)「警察比例原則」によって対応することが定められているのです。 

警察比例原則の定義を押えておきます。
警察比例の原則 - Wikipedia 

「警察比例原則とは、警察権の発動に際し、目的達成の ためにいくつかの手段が考えられる場合に、目的達成の障害の程度と比例する限度においてのみ行使することが妥当であるとする原則」 

つまり、犯人の武装の度合いで対処を決めていくということですが、これはあくまでも相手が国内の犯罪だから通用する概念なのです。 

相手の武装集団が初めから島を軍事制圧する気で人質を取っている場合、この警察比例原則どおりに行動すると、果たしてどうなるでしょうか。 

武装して島民を人質にとっているのは、あくまでも軍、ないしは民兵です。

軍というのは、警察や海保が逮捕することが前提なのに対して、相手の戦闘力を消滅させることが任務です。

ですから、相手を撃つことにためらいはありません。どんな武器を使ってもかまいませんから、おそらくいきなり発砲してきます。 

しかもそれは、中国軍の通常装備のカラシニコフ突撃銃やRPGロケット砲でしょう。 携帯型対空ミサイルも装備しているでしょう。

これらの武器類は私が想像で言っているのではなく、北朝鮮の沈んだ不審船から発見されたものです。

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 (写真 参考人で発言する小川和久氏。私の安全保障の師だ)

国会に参考人として呼ばれた小川和久氏は、これについてこのように述べています。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-3ae6.html 

「日本でしか通用しない議論から生まれてくる法律や制度で、自衛隊、海上保安庁、警察の手足を縛らないでほしい。彼らがむきあわなきゃいけない相手はフリーハンドなんです。 
だからグレーゾーン事態で海上保安庁と警察の特殊部隊、全部かき集めて投入しても、10人から20人の向こうの特殊部隊に向き合った場合、1時間で全員死にます」
 

残念ながらそうなります。現時点では、海保隊員たちは殺されに行くようなものです。 

今国会で、自衛隊をどう使うか、海保や警察との役割分担をどう調整していくのか、いかにスムーズにそれをするのかが審議されました。 

具体的には安保法制案に盛り込まれていませんが、それは侵攻する側に手の内を見せないためです。 

民主党の長島昭久議員は領域警備法を対案にするようですが、考え方としては間違っていませんが、あまり細かく設定すると、かえって動けなくなります。 

さて、ここで名無しさんに質問しましょう。これを海自と空自だけでどう対処するのでしょう?

空から爆弾落すのですか。あるいは海自が海から大砲で撃つのでしょうか(苦笑)。 

陸自を派遣するしかないのです。

どうもこの人のようなモノ知らずは左右の別なく、すぐにミサイルを撃ち込めとか、戦闘機で爆撃しろなどと勇ましいことを言いたがりますが、そんなに荒っぽいことやったらたちまち修羅場です。

というわけで、この段階で初めて「存立危機事態」として防衛出動命令が下って陸自の出番となります。

しかし残念ながら、現時点では陸自隊員たちを離島に輸送する手段がありません。 

「おおすみ」などの輸送艦がありますが、北九州から回航していたら数日かかりますから即応できませんし、そもそも強襲揚陸艦として作られていません。

おそらく、自衛隊に配備されるまで、米海兵隊のオスプレイを借りるしかないでしょう。 

現に、今、猛訓練中の水陸機動団は、米軍のオスプレイを借りて訓練しています。

 

Wains3__r__87(写真 米軍と共同訓練中の水陸機動団。ただいま西普連を中心にして準備中。実戦力になるには5、6年先。よく誤解されるが、外征能力がないのでいわゆる「海兵隊」とも、戦前の陸戦隊とも本質的に違う) 

となると、借りられる場所に海兵隊が居てもらわねば困るわけです。 

ふー、やっと沖縄本島の米軍の話になりましたね(笑)。 

>日本政府が自衛隊に尖閣奪還を命じなければ、米軍が勝手に守ってくれるなんてことはないし、アテするのが間違い。自衛隊が動かなければ竹島の二の舞になるだけ。 

意味不明です。ここでも離島警備と尖閣問題を混同していますが、「米国が勝手に守ってくれる」・・・、なんですこりゃ?日本語で書いて下さい。 

「竹島の二の舞」ってナンですか?取られてもいいってことでしょうか。無責任な。

どちらも等しく領土として重要ですが、尖閣の戦略的重要性は竹島の比ではありませんよ。犯されてもいいというのが前提なら、初めから安全保障議論はしないことです。

文化人の中には平気で、「中国が侵略してきたら投降する」と得意気にいう人がいますが、こういう人は安全保障議論のテーブルに着く資格がないので、黙っていてほしいものです。

「離島や尖閣などを米軍が勝手に守ってくれるはずがない」というなら、そのとおりです。 

そんなことは書くまでもなく、当たり前です。自国領土は自分で防衛するのが大前提で、やる気もない国の防衛の肩代わりなどを、米国が自国の青年の血を流してやる義理はありません。 

そこら辺は米国側にも誤解があって、ドナルド・トランプ大統領候補が、「日本はなにもやってねぇだろう」というトンデモ誤解につながっています。 

これを説明しだすと長くなるので省きますが、米国が日米安全保障条約第5条に則って、日本を守るのは、あくまでもせいぜいが日本の補助勢力としてであって、自動的に米軍が戦ってくれるなんてあるはずもないのです。 

NATO条約第5条と違って、日米安保第5条は自動介入条項ではないのです。

ではなんのために、在日米軍がいるのでしょうか?おおかたの国会前にいる皆さんは、それを考えてみたことはないでしょう。 

翁長知事などはいまでも、「ミサイルが飛んでくるのだから、海兵隊はいらない」なんて子供みたいなことを平気で言っていますもんね(ため息)。

誰から吹き込まれたんだろう。こんなデマ。どうせあのニヤニヤ笑いの前泊博盛氏あたりからでしょうが。

453e69b878c573af7c2d06ede8d8bb13(写真 前泊氏。「沖縄の基地はオレがいちばん知っている」という顔で、沖縄の基地問題というと必ず登場するが、その軍事知識はほとんど辻本キヨミ氏並。この人の前職は琉球新報の解説員。お里が知れる)

それはともかくとして、現実の在沖米軍をアテにするとかしないとかいうレベルとは別次元で、日本に「米軍がいてくれている」というプレゼンスが重要なのです。 

名無し氏はこう書いています。 

>安保法制で中国の行動が変わるなんてことはないな。アメリカも中国も全面戦争のメリットないから避ける。 

安保法制は現行の日米安保の穴を埋めていく法制でしかありませんから、中国の対応が変わるも変わらないも、中国に「戦争する気を起こさせない」という意味ではまったく本質的に同じ流れです。 

中国が日米安保によって、日本を攻撃すると「全面戦争になるからメリットがない」と言うのならば、そのとおりです。 

これがプレゼンスです。プレゼンスとは「存在感」のことです。

これについて防衛大学校安全保障・危機管理センターの山口昇教授は、『中央公論』(2010年5月号)でこう述べています。

「日米同盟は日本側の基地の提供とアメリカの軍事力による抑止力、あるいは東アジアにおける国際秩序の提供という、非対称ではあるが一定のバランスの上に成り立っている」

このように米軍が駐留しているということ自体が、国際協調関係の中で重要な重みを持つのです。

それを知らずに、小手先の使える使えない、ミサイルが飛んでくるといった枝葉の理屈に陥ってはダメなのです。

もっと大きく、国際社会の中で、日本がどのよう位置にあって、何を米国と支えているのかという幹を見ねばなりません。

>アメリカが弱小国やテロリストと年がら年中戦争するのに自衛隊がこき使われて、国防以外で自衛隊員が不本意な死に方をする確率の方が高い。

はいはい、いつもの妄想ですね。これについてはこちらを読んで下さい。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-a251.html

どこに、そんなことが法案に書いてありますか。 

何度も書いているように、米国の戦争につき合うかどうかなどは、国の主権の問題です。まったく集団的自衛権とは関係がありません。 

たとえば、イラク戦争に米国と集団安全保証体制を組んでいるNATO諸国がすべて尻尾を振って参加したか、よく調べてみなさい。

「調査なくして発言なし」by毛沢東(笑)。 

同じNATO加盟国でも、独仏は参加していませんし、ポーランドなどは派兵しました。つまり個別の国の判断なのです。 

派兵するか、後方支援に協力するかは、是々非々の問題にすぎません。結局、つまるところ、その主権国家が独自にそれぞれの立場で判断すべきことにすぎないのです。 

その判断ひとつできないほど、日本の民主主義が弱体だと言うのなら別ですが。

Dsc_3889_640(写真 坂本龍一氏と感激もひとしおのシールズの奥田愛基氏。坂本氏は私と同い年で、同じ高校生反戦運動をした人。この人は自分たちの体験の真実を伝えずに、革命的ロマンチズムにいまだ陶酔している。まさに老醜の極み。奥田く~ん、年寄りの甘い顔にダマされるなよ)

国会前の人たちは、自分たちが絶対王制下で起きた「フランス革命」をしていると思っているようです。私はこの坂本龍一氏の発言を聞いた時、脱力しました。

間違った分析からは、間違った情勢認識しか生れず、結果、間違った戦術を取ったあげく、必ず敗北します。 

シールズの皆さん、むしろ親切心で言うのですが、一度きみらの先輩たちがやってきた反安保闘争を振り返ることです。

60年安保闘争や70年安保闘争、あるいはPKO反対闘争がなぜ敗北したのか、なにが間違っていたのか、真剣に振り返ってみたらどうなのです。

いままで一貫して左翼陣営が負け続けてきたのは、全て敵権力が邪悪で狡猾だからじゃないのですよ。

2015年9月11日 (金)

茨城県大水災害について

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私の住む茨城県で大水による大災害が発生しました。いくつものお見舞いを頂戴しました。ありがとうございます。 

我が村は各所で冠水したものの、かろうじて河川や湖の越水や決壊は免れています。上の扉写真は霞ヶ浦の夕方5時撮影のものですが、通常よりはるかに水位が上がっています。 

現時点で(11日午前0時現在)で、茨城県常総市(元の水海道市、石下市)の鬼怒川の堤防が決壊するなどの被害が出て、同市で12人が行方不明、住宅多数が流されました。

被害の全貌は不明です。

Photo

NHKニュースによれば、このような状況だったようです。

「茨城県内を流れる利根川水系の鬼怒川の水位は、▽筑西市下川島にある観測所で、9日午後10時ごろから1時間に1メートル以上のペースで急激に上昇し、午後11時半ごろには氾濫の危険性が非常に高くなる「氾濫危険水位」を超えました。
また、▽常総市水海道本町にある観測所でも、10日の午前2時ごろから1時間に1メートル近いペースで水位が上昇し、午前6時半ごろに「氾濫危険水位」を超えました」(NHK9月11日 1時58分)

県のHPによれば、河川の被害状況は以下です。
台風18号等による本県への影響等について(9月11日1時現在)
http://www.pref.ibaraki.jp/bousai091003.html


・利根川水系・・・7河川11カ所(市管理1河川1カ所)
・鬼怒川水系・・・3河川3カ所
・小貝川水系・・・2河川2カ所
一方、茨城県の緊急対応です。10日朝7時45分に災害警戒本部、10時に災害対策本部をたちあげていますが、既に前日夜の9日24時には、宮戸川左岸(古河市久能地先)で:堤防決壊し、もっとも大きな被害を出した鬼怒川の常総市無神谷地区では10日午前6時には越水が始まっています。
※http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150910/k10010225551000.html
「国土交通省によりますと、茨城県内を流れる利根川水系の鬼怒川は、10日午前6時すぎに常総市の若宮戸付近で堤防から水があふれ、午後0時50分ごろには、常総市の新石下付近で堤防が決壊して氾濫しました。
また、上流に当たる筑西市の船玉付近と伊佐山付近でも10日午前8時ごろまでに水があふれたということです」(NHK9月11日 1時58分)
また、将門川右岸(常総市篠山地先)状況:堤防も越水を開始しています。果たして翌朝7時45分の警戒本部設置が適切だったのか非常に疑問です。今後の検証を待ちたいと思います。
・7時45分に災害警戒本部を設置
・10時00分に災害対策本部を設置
・8時30分に常総市に、9時35分に結城市に対する自衛隊(勝田自衛隊)派遣を要請
・有料道路の開放
 ・水海道有料道路豊岡町-小山戸町9:00-22:00
 ・若草大橋有料道路加納新田-栄町北9:00-20:00
・ヘリコプターの運航
 ・11時00分に消防庁に他県ヘリの応援要請
  ⇒埼玉県、群馬県・山梨県から防災ヘリの応援あり
 ・11時10分に緊援隊航空部隊へ応援要請
 ・12時7分茨城県防災ヘリ活動開始
 ・12時30分航空自衛隊ヘリ活動開始
Afr1509100051p1(写真 決死的救助をする自衛隊救難ヘリ。 市街地における低空ホバリングは、電線などが多いために極めて危険で高度な技量か要求される。もっと大きいヘリを使えなどというばかなことをいうコメンテイターがいたが、このUH60以上となるとUH47になる。そのような大きな機体がこの市街地で、しかも強い横風でホバリングできるかどうか、ちっとはものを考えて言え。自衛隊ヘリは夜までライトを点けて暗視ゴーグルをつけてまで救難活動をした。頭が下がる。この災害が世界一多い我が国で、自衛隊がなければどうなっているのか。写真は産経新聞より)
「茨城県は、大雨で大きな被害が出ている常総市をはじめ、古河市、結城市、下妻市、筑西市、八千代町、それに境町の7つの市と町に災害救助法の適用を決めました。
災害救助法の適用で避難所の運営や避難した人たちへの食料、それに救助にかかる費用について県と国が全額負担することになります」
(NHK9月10日 17時38分) 
鬼怒川の決壊場所について、ハフィントンプレスはこう報じています。
※http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/10/kinugawa-solar_n_8115002.html?utm_hp_ref=japan
「茨城県常総市で9月10日、鬼怒川沿いの堤防沿いの複数の地点から水が氾濫したが、そのうちの1つである若宮戸(わかみやど)付近あたりではもともと堤防がなく、太陽光発電所の建設の際に、堤防の役割を果たしていた丘も削り取られていたことがわかった。(略)この場所には通称「十一面山」という丘があり堤防の役割を果たしていたとされるが、この丘も民間業者のソーラーパネルの設置により、市に無断で削りとられていた」
同紙によれば、上の写真のように2013年12月には河の堆積で自然堤防が存在していました。しかし、所有者のソーラーパネル設置で削り取られています。
上下の写真を比較してください。
Nwakamiyato570_2災害直前の写真です。完全に削り取られて、パネルが設置されているのが分かります。
Nwakamiyato570
そして先日の決壊状況です。まさにこの箇所から決壊しています。
Wjwag5f_20150911015347fe2
「国土交通省によりますと、鬼怒川では、2つの観測所の間にあたる常総市の若宮戸付近で、10日午前6時すぎに堤防から水があふれ、さらに、午後0時50分ごろには常総市新石下付近で堤防が決壊して氾濫しました。
また、筑西市の船玉付近と伊佐山付近でも午前8時ごろまでに水があふれたということです。国土交通省によりますと、茨城県常総市の鬼怒川では10年に1度の大雨でも洪水が起きないよう、堤防の改修工事が進められていましたが、現場付近では工事はまだ行われていなかったということです。
国土交通省によりますと、今回、決壊した鬼怒川の堤防は高さが4メートルほど、最も高いところの幅が4メートルあり、改修工事では堤防の高さをかさ上げしたうえで幅を広げ、より多くの雨が降っても耐えられるようにする計画でした。
現場の下流ではすでに改修工事が始まっている場所もありますが、決壊した現場付近は昨年度から用地買収を始めたところで、工事はまだ行われていませんでした。
また、国土交通省が調べたところ、鬼怒川では今回の大雨で決壊した現場の上流の3か所でも川の水が堤防を越えてあふれていたことが確認されたということです。
国土交通省によりますと、鬼怒川の決壊は昭和13年9月の決壊以降は起きていなかったということです」(NHK午後7時30分)
なお、自衛隊(勝田駐屯地)への災害派遣要請は8時30分に出ました。
自衛隊は、おそらく前夜から情報を収集して、待機状態にあったと考えられますが、自衛隊法によって首長の要請があるまで独自の救援はできません。
これも例の、自衛隊を無意味に縛りつけるポジティブリストがあるからです。
・自衛隊法第83条
1 都道府県の知事、その他政令で定める者は、天変地異その他災害に際して、…中略… 部隊等の派遣を長官又はその指定する者に要請できる」
産経新聞(9月11日)によれば
「防衛省は10日、栃木、茨城両県の大雨災害を受け、自衛官480人、航空機15機、車両70両、ボート40隻などを派遣し、被災者の救助や土嚢による水防活動に当たったと発表した。10日午後8時現在で、ヘリコプターやボートにより計404人を救助した。防衛省によると、ヘリによる救助活動は打ち切ったが、地上での災害支援活動は夜を徹して行われる」
こ自衛隊HPによればこのような出動体制かとられました。
※http://www.mod.go.jp/j/press/news/2015/09/10b.html
・派遣部隊
陸自
施設学校(勝田)、第1施設団(古河)、東部方面航空隊(立川)、第12ヘリコプター隊(宇都宮)、自衛隊東京地方協力本部自衛隊神奈川地方協力本部自衛隊栃木地方協力本部自衛隊茨城地方協力本部第1空挺団(習志野)第1師団司令部(練馬)第12旅団司令部(相馬原)第1施設大隊(朝霞)第1偵察隊(練馬)武器学校(土浦)第1飛行隊(立川)
海自
第21航空群(館山)第51航空隊(厚木)
空自
百里救難隊(百里)、浜松救難隊(浜松)
・派遣規模
人員
約480名
車両
約70両
ボート
約40隻
航空機
15機
その他
LO人員約50名、LO車両約20両
ボートによる救助者:150名、ヘリによる救助者:254名

気象庁は宮城県にも特別警戒警報を出しました。ご無事を心からお祈りします。

「宮城県に大雨の特別警報を発表したことを受けて、気象庁の弟子丸卓也予報課長は11日午前4時25分から記者会見を行い、「宮城県では、これまでに経験したことのないような大雨になっている。重大な危険が差し迫った異常事態と言っていい状況だ。すでに川の氾濫や土砂崩れなどの重大な災害が、すでに発生していてもおかしくない」と述べました。
そのうえで「直ちに自治体の避難情報に従うなど適切な行動を取ってほしい。夜間であることから、周囲の状況をよく確認して行動してほしい。外出が危険になっている場合には、住宅の2階や、崖から離れた部屋に移動するなど、できるだけ安全を確保するようにしてほしい」と呼びかけました」
(NHK9月11日 4時33分 
本日は情報だけをとりまとめました。追って追加情報がありましたら、随時補足していきます。

この災害では、いくつもの問題点が浮かび上がりましたが、それについては明日考えて行きたいと思います。

 

2015年9月10日 (木)

中国経済を自由主義国の常識で見てもわからない

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日本のメディアが中国報道でミスリードするのは、中国を自由主義国家と同じ仕組みだと思っていることです。 

たとえば政治では全国人民代表大会(全人代)を「国会」と説明してみたり、人民解放軍を一般の国の軍隊(国軍)と解説してしまったりしています。 

もちろん、このブログにいらっしゃる人はお分かりになっているでしょうが、中国には「国会」と呼べるものも、「国の軍隊」と呼べるものもありません。 

あるのは、共産党が指名した代表者の集まりであって普通選挙すらなく、軍隊といえば、共産党中央軍事委員会によって指揮される「私兵」にすぎません。 

ちなみになにかというと出てくる武装警察(武警)は、警察組織ではなく、人民解放軍の傘下にある治安用準軍隊です。

これが「中国式民主主義」だそうです。

万事この調子ですから、経済も例外なわけがありません。

日本のメディアでは、中国を西側の市場経済国家同然に見立てて、中国当局が金利を下げれば景気が上向くだろうと言ってみたり、為替レートを下げれば元安に振れて、輸出が増えるだろう、中国は早い時期に回復するだろうというエコノミストすらいます。

気の毒ですが、たぶんそうはなりません。

だって、中国という国の経済は、党が株式や外国為替など金融市場を支配する体制てのですよ。忘れたのですか。

人民解放軍が党の私兵なら、経済は党の私物なのです。

日本なら為替相場が円安になれば、国内製品は自動的に割引セール状態になりますから、メイドインジャパンは有利になります。

中国の場合、元とドルが固定レートでペグされているドル・ペグ制(ドル連動制)です。

ですから、ドル相場に連れて自分の為替レートも動いてしまうために、いくら政府当局が小手先で為替レートをいじっても、再び元に戻ってしまうのです。

R(写真 ロイター)

また、米国FRB(連邦準備委員会)は、2014年10月から常々いつかやらねばならないと言ってきた金融緩和策からの出口プロセスに入り始めました。

米国がとうとう金利を上げる時が来たのです。これに泡を食ったのは中国を含む新興諸国です。

彼らにとって、米国の金利上昇は、米国への資金の逆流を意味しますから、やると言われただけで、一気に景気が冷え込みました。

中国はリーマンショック以降、米国がジャブジャブ輪転機を回してドルを大増刷してくれたおかげで(実際は電子マネーですが)のおかげで、大量のドルを国内市場に呼び込むことができました。

ところが、2012年から13年にかけて中国の不動産市場は、行くところまで行ってしまってとうとうバブルが弾け、そこに14年からは米国の金融引き締めが重なって、ドルはどんどんと流出していくことになります。

E5d60bf28350fb4f0608400b0c1e5c1dそうなるとドルの裏付けがあって、初めてできた元の大増刷もできなくなります。

慌てた習政権は、不動産を見切って、上海株式市場に目を向け、今度は株式バブルを人工的に作り出して、ドルを呼び込もうと考えました。

結果はご存じの通りです。株式バブルもあえなく弾け飛び、歴史的大暴落が始まりました。

8c371d1es(写真 中国のネットジョーク。「ストレスで心臓がおかしくなった投資家のみなさん、ご自分の心電図を株価のチャートと混同しないように」。中国では個人投資家が2億人を超える。日本に爆買いにきていたのは、この株式長者たち)

習は再び膨大な政府資金をつぎ込んで株を買い支える、という自由主義市場ではありえない禁じ手を使ってでもなんとか戻そうとしていますが、少し上がってはドドッと落ちることを繰り返しています。

これは、上海株が、既に国際投機筋の標的になってしまっているからで、彼らハゲタカたちは下がれば買い、少し上がればただちに売り払うことを繰り返して濡れ手に粟のようです。

ちなみに、東京市場の相場の不安定も同じ理由です。しかし中国が実態経済の落ち込みを反映しているのに対して、東京はそれとは無関係の投機筋の利食いによるものです。

朝日さん、2万円を切った、もうアベノミックスは失敗だと喜ばないようにね(苦笑)。

ロイター(2015年 9月 9日)はこう述べています。

人民元相場が純粋に市場で決められるとすれば、おそらく下落するだろう。しかし中国人民銀行は外貨準備に手を付けて元の安定を保とうとしている。
これは永遠に続けられるものではなく、米金利が上昇してドルの魅力が高まればなおさらだ」

その結果起きるのが、中国国民の恐怖感情だ、とロイターは見ています。 

恐怖は恐怖を呼び、そして起きるのが、手持ちの財産を外国に逃がすことです。これが資本逃避(キャピタルフライト)です。

「まず心配なのは、中国市民が国外に資金を移動させようとする可能性だ。マカオの質屋など、闇の両替商に対して最近取り締まりが実施されたことは、当局が資本逃避に神経を尖らせていることを示している」

というわけで、中国政府が躍起となって株式市場を支えようとすれば、虎の子の外貨流出が止まらず、FRBの金融緩和が開始されれば、完全に中国経済の息の根は止まりまることになります。

ですから、この9月に習がオバマに会いに行くという予想もあるようですが、それはFRBが利上げを決定する前に、なんとしてでもそれを止めてもらう懇願のために行くのです。

太平洋の二分割をぶち上げたG2論が遠い昔のようです。

AIIB?なんかそんな話がありましたね(遠い目)。外貨準備のない開発銀行ですか。ご冗談でしょう。

乗り遅れるな、参加しないのは安倍の大失敗と騒いでいたマスコミも沢山あったような。

諸行無常の鐘が鳴る。フェアウェル・チャイナ・ドリーム。 

2015年9月 9日 (水)

中国抗日なんじゃら軍事パレードの隠れたボディランゲージとは  

065
ヒューマンウォッチングという考え方があります。 

元々は野生の霊長類の観察をしていた人たちが、猿の仕草ってニンゲン様の行動分析にも応用できるんじゃないって、考えたのが始まりだそうです。 

動物学者によれば、しょせんニンゲンも言葉をしゃべれる動物にすぎませんから、「言葉」という目くらましを取り去ると、案外分かりやすいということみたいです。 

たとえば、腕を組んだり、足を組むというスタイルは、内心は相手をブロックしたいという意志の現れで、だから握手というのが、拳を解く、利き腕を預けて拳を解くということで友好の儀式足り得るわけです。 

そういやー、ゴルゴはぜったい握手しないもんな(笑)。 

お話は変わって、中国の抗日ナンジャラ軍事パレードです。 

144139167462588944179(写真 屁タレ顔の習。式典中、ずっとこの調子だった。おまけに左手敬礼まで仕出かしている。もう政治生命、いやほんとうの生命すら長くないのかもしれない。今年に入って既に4回暗殺されかかったという)

こういう顔を兵隊がしていたら、一発でチベット送りでしょうな。

心ここにあらずの気持ちがにじみ出ているなんてもんじゃありません。これでは14億人の臣民に君臨する帝王どころか、ただの二日酔いの初老男です。 

習が、いかに上海株の大暴落と外貨払底、そして内部抗争の激化で、心身ともに疲労のピークにあるのが分かります。 カクシャクとしていた光沢民(←誤転換。おもしろいのでこのままに)を見ると、この共産党三国志、まだ結果はわかりませんぞ。

閑話休題。こんなヘタレをよそに、この軍事パレードにはドッと中国ご自慢の新兵器がこれでもかと披露されました。 まさに弾道ミサイル大博覧会。

この中国のアブナイ飛び道具を、ヒューマンウォッチングして、チャイナの陰の声を聞いてみましょう。

まずはこのDF-15B(東風15B)です。
 

Df151153725_copy1(写真 軍事パレードの東風15。台湾攻撃用だとされている)

射程は724km、バッチリ台湾を射程に納める中距離弾道弾です。これは同時に公開されたDF-16(射程800~1000㎞)と並んで、台湾に対する凶悪なメッセージを発しています。 

市民語訳すれば、「独立なんてふざけたまねしやがったら、こいつを叩き込むからな」ということです。 

2009年ののアメリカ国防総省の推測では、年間100発以上増加し、配備数は350~400発、発射基数は90-110基とされているそうです。台湾対岸の福建省に多く配備されています。

この東風15の発展型の東風21の射程はさらに長く、下図のように日本列島もすっぽり入ってしまいます。(図 東風21の射程範囲。日本と韓国がすっぽり入る)

韓国も射程内ですが、クネさんは、「あたしこれだけつくしているんだから、習さんあたしをぶったりしないよね」と思っているんでしょう。 

これを迎え撃つはずの台湾は、3個のパトリオットミサイル部隊は台北エリアに配備していますが、迎撃できるのはわずか10キロ四方なので、どこに飛んでくるかわからない雨あられの中国弾道ミサイルの迎撃は、ほぼ不可能です。 

O0600040013356423921(写真 抗日式典の馬英九。台湾に逃げ込んできて支配階層になった外省人の末裔。香港生れ、米国で教育を受ける。顔がよくて英語が達者なだけがとりえ)

ちなみに総統の馬英九は、同日行なわれた抗日なんじゃら台湾版で、「血と涙の歴史を忘れることはできない」として、中国共産党と国民党が第3次国共合作に意欲を示しました。 

この馬政権の中国べったりは有名でしたが、特に今年に入って顕著で、読売新聞(7月5日)はこう伝えています。 

「台湾は今年に入り、16項目に上る「抗日戦争勝利」関連のシンポジウムや展示会 なども開催し、対日姿勢を強めている。日中戦争の発端となった1937年の盧溝橋事件が起きた7日にもシンポジウムが開かれ、馬氏があいさつする予定だ。日本 関係者は、馬氏の最近の言動について、『歴史問題で完全にカジを切った』と分析 する」

これまた、ヒューマンウォッチングすれば、「いえ習様、この馬めは独立なんぞめっそうもございません。そんな不逞の民進党のヤカバラは叩き潰してご覧にいれますぅ」というところでしょうかね。

それにしても、馬は台湾の学生たちの抗議の声を無視し、、台湾をいままで秘かに守ってきた日本の在日米軍の「恩」も忘れて、大陸方面に走りたいようです。まったく困った男だ。

中国という昇竜に乗りたがる韓国、台湾、そして我が翁長沖縄といった構図ですが、いまや昇竜がハリボテだとバレてしまった上に、メラメラと炎上中です。

この馬、クネ、オナガのお三方、さぁどうする気でしょうかね。ま、知ったことじゃあありませんが。 

それはさておき、中国のもうひとつの兵器によるボディランゲージのとっておきのひと品がが、このDF-21D(東風21D)です。

このメッセージは、明確に日本と米国に向けられています。

E8dbae8fs(写真 東風21。日本攻撃用と見ていいだろう。こういうパレードに出ようとしたのが、村山氏である)

この東風21は、ニュースなどで対艦弾道ミサイル(ASBM)としてとして報道されていたようですが、中距離弾道ミサイルです。

射程は、米国防総省の年次報告書などでは1,500~2,000kmといわれています。

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射程距離にはすっぽりわが日本列島が入ってしまいます。

米国議会諮問機関の「米中経済・安全保証調査委員会」の2010年版レポートには、日本に到着する脅威として、射程1750㎞以上のこの東風21Cを上げています。

配備数は、2000年代の配備数は60~80発、発射基数は70~90基と推測されていますが、いまはさらに増加しているはずです。

なお、この東風21は、米海軍第7艦隊の空母キラーとしての顔も持っていますが、詳述は別の機会ということで。

米議会年次報告書には、その攻撃対象を、韓国の烏山、群山、日本の嘉手納、三沢、横田を挙げています。

同委員会レポートによれば、中国は上記5基地に対して30~50発を打ち込み、さらにこれに加えて巡航ミサイル東海10を撃ち込むと推測されています。

その地対地巡航ミサイル「東海10」(DH10)の悪そうな顔がこれです。

Fdac88bd7de17989(写真 巡航ミサイル東海10。なんか鉄道みたいな名だが、GPSに従って、低空で正確に飛翔してくる)

射程は1,500~2,000kmで、これも日本列島を完全に射程に納めます。これは、地上発射も爆撃機からの発射もできるようです。この保有推定数は350発です。

ランド゙研究所は2011年の『21世紀における中国空軍の行動概念』のなかで、中国は台湾に対する攻撃に先立って、日本の嘉手納、普天間、那覇基地を、東風21は東海10で攻撃すると予測しています。

もちろん軍事的ターゲットを潰せば、お次は日本の政治経済中枢の番です。

というわけで゛習は顔は屁たれていても、ボディランゲージでは、こう言っているのです。

「わかったかぁ、ナロー。アジアの帝王は俺様なんだ。逆らったら弾道ミサイルぶちこむぞ。米国と手を切って俺様の舎弟になりやがれ!」

Plt1509010015p1(写真 駐日中国大使館での抗日70周年に駆けつけた政治家の皆さん。日本共産党の穀田恵二国対委員長、公明党の山口那津男代表、民主党の赤松広隆民主党議員・前衆院副議長、村山富市元首相 産経新聞より)

それにしてもこんな式典に出ようという元首相がいたのは、さすが私も驚きましたね。まぁ、うまい時に持病が出たようですが、

自分の国の安保法制には大反対、自分の頭の上に照準されているチャイナ・ミサイル大博覧会には大喜びで駆けつける・・・、まったくなんともかとも。

この人たちは人だろうか。いかん、言ってはならない約束でした。

2015年9月 8日 (火)

遅れてやって来た中国式帝国主義、

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中国が抗日軍事パレードに、「ダルフールの虐殺者」ことオマール・アル・バシルを招待したのは偶然ではありません。

国際社会になんと言われようと、スーダンは中国のアフリカ進出の拠点であり、バシルはその大事なシンボルなのです。 

この10数年間で、中国はアフリカ諸国との結びつきを急速に強めました。 

やり方は当初の2004年頃には資源外交のかけ声で、アフリカの豊富な天然資源を獲得するのが目的でした。 

ちょうどこの時期が、ダルフール紛争の時期に当たっています。 

ダルフール紛争は、アラブ系の部族の政府と、ダルフールのブラックアフリカン系スーダン人の対立でした。 

これは長年の水と土地をめぐる部族間の争いの素地の上に、天然資源が絡まっていっそう対立が激しくなります。 

Sudan_kadugli1map_2 (地図 JVCより)

スーダンはアフリカ第6位の産油国です。原油の生産量は日産49万バレルです。確認埋蔵量も大きいと見られています。
 

実はスーダンは、ダルフール紛争の以前の1980年代頃から、南部の分離独立運動による内戦のために、ダルフール紛争と変わらない犠牲を払っていました。 

その結果、国土は荒廃し、スーダンは崩壊国家と化していました。これが原因で、欧米石油企業は撤退し、入れ替わるようにして入ってきたのが、90年代中頃からスーダンに進出した中国の国有石油資本(CNPC・ペトロチャイナ)でした。

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ペトロチャイナは、ただの石油会社ではありません。

巨大国有企業であり、国策企業です。彼らは中国共産党常務委員に常に1名枠を持つ最高権力者集団なのです。 

つまりペトロチャイナやシンペックは、中国共産党と中国政府そのものです。

中国はスーダン政府に肩入れし、彼らに石油代金の代わりに大量の武器を与えました。

このことにより、欧米の人権団体や政府から、中国がダルフール虐殺を幇助したと告発されました。

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「中国政府はスーダン政府に武器を供給しており、一方で同国産油量の半分以上を購入していることから、ダルフール紛争をめぐって欧州各国からの圧力に直面している。
国連の統計によると、ダルフール紛争では過去4年間で20万人以上が死亡、200万人以上が自分の家を離れ避難している」(AFP2007年6月)

このAFPの記事にもあるように、中国は自国の10%もの原油をスーダンから輸入し、それはスーダン産油量の55%を占めています。 

石井前スーダン大使はこう述べています。

「スーダンは石油開発、武器、市場の三つとも中国に依存している、アラブ・アフリカ世界でも特異な国だ」

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「米国はスーダンとの貿易、金融取引停止制裁を続けている。このためスーダンに進出している日本企業は皆無といわれる。そうした状況下、スーダン国内の銀行ATMで、中国の代表的なクレジットカード・銀聯カードが使えるというから驚く」(東洋経済2010年07月06日)

やがて中国はスーダンで、後にアフリカ全域で見せることになる、中国式権益確保戦略を開始します。 

まず、石油・資源企業が投資し、資源を担保に自国製機材を輸出します。これには石油生産資材だけではなく、自動車や衣料、武器まで含まれています。 

その代金を原油などの資源で受けるわけですが、その際に自国製製品の価格を安く設定したり、安く資源を輸入します。 

次いで中国人労働者を輸出します。 下図は1984年から2012年にかけて労働者の送り出しの推移を示しています。A01_0401_figure_1(図 中国人年末海外在留労働者数http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0401.html

「労働者の送り出しは1990年代から急増しており、2000年代に入りその増加率は一時鈍化していたが、2012年時点で約51万人にも達している。それに対して、2001年に中国がWTOに加盟後、「海外建設請負」も急速に拡大し、2012年に約34万人に上る」(産業労働研究所)

また送り出し先地域は、アジアとアフリカで二分しています。

「1992年の時点では、労働者の約40%がアジア、約30%がアフリカに約20%がヨーロッパに分布していたが、2012年では、アジアとアフリカのシェアは約45%に上昇する一方、ヨーロッパのシェアは3%に低下した。特にアフリカにおける労働者の受け入れが著しく増加していることが分かる。近年、エネルギー資源の確保やアフリカ向けのインフラ・システムの輸出に伴い、労働者の送り出しが増加したと考えられる」(前掲)

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日米欧の労働者派遣はエンジニアが中心ですが、中国は現業労働者までも数万人単位で輸出し、そこにチャイナタウンを作ってしまいます。 

現地の石油や鉱山を押え、そこに採掘権を確保するやいなや、数万人規模の中国人労働者を送り込んでしまいます。 

今やアフリカ各地には、アフリカに渡った中国人労働者は累積で100万人を超えるといわれ、既に中国人労働者のチャイナタウンが各所にあります。 

この100万人規模まで膨れ上がった中国人労働者コロニーによって、現地住民との人口比率が逆転した地域も生まれました。

ザンビアやケニアでは、そのことによる現地住民との紛争が、いまや暴力事件にまで発展しています。 

もはやこれは名前を替えた移民政策、いや態のいい「棄民」ではないかという強い批判を欧米各国から浴びるようになっています。 

その一方、アフリカで事業をしている中国企業には、中国国内とまったく同様に、いやそれ以上に環境や安全のへの配慮が欠落しています。 

国際水準からすればまだまだ低い中国人労働者の賃金水準をはるかに下回る給与に留め置いています。 

このために、過酷な労働を強いる鉱山労働などで暴動を含む労使紛争が続いています。 

また鉱山も中国国内と一緒かそれ以下の環境基準しか持たないために、汚染物質の垂れ流しは日常茶飯事で、中国企業が進出した地域の自然環境は公害で荒れ果てました。

B8e955e40d44f7feb6e265fecfeb8a65(写真 中国資本による鉱山開発と廃物処理によりカドミウムと鉛汚染が深刻になったザンビアのカブウェ) 

このような中国資本の侵入により、アフリカ随一の工業地帯である南アフリカの商工業者の多くは、中国企業とのダンピングまがいの価格競争に破れました。 

一方、アフリカ農業もザンビアでは、中国人農業労働者のプランテーションから出荷される安い農産物のために地元農業者が圧迫されていることが問題視されています。 

その上に、その国の放送網を支援すると称して、設備と込みで中国中央電子台の番組を放送させけています。 

このソフト戦略は、中国が世界各地でとっているもので、開発途上国の放送インンフラを安く請け負って、代わりに中国製の番組やニュースを垂れ流します。 

これによって中国のプロパガンダは、発展途上国を中心にして世界くまなく浸透するようになりました。  

そして中国が相手かまわず売りつけた大量の武器弾薬によって、アフリカの内戦や部族紛争はいっそう激化しただけではなく、流出した大量の武器はテロ組織の手に渡っていきます。

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そしてこの権益を守るために、一部の国には軍隊まで派遣しています。

このように、かつての植民地宗主国は収奪のためとはいえ、それなりに産業と技術を拓殖したのですが、中国のやり口はまさに「遅れて来た帝国主義」そのものでした。 

このように中国は国内でとってきた、ないに等しい人権、最低の賃金、最悪の労働条件、荒廃した自然環境、少数民族抑圧、そしてそれを軍事中心主義で押さえつけるといった政策を、そのままアフリカに輸出したわけです。 

一事が万事、この国はそうですが、「中華民族の再興」をするには時代が遅すぎたのです。

国境線の引き直しをすることは、世界を相手に軍事侵略国家だと指弾されることであり、人権や環境を無視したアフリカ進出もまた同じように、国際社会で許される時代ではなくなっていました。

この世界が列強の闘技場から、国際協調の時代に転換した後に、タイムスリップしたように登場した19世紀帝国主義、それが中国だったのです。

2015年9月 7日 (月)

中国抗日軍事パレードに来た「賓客」たち

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中国という国は、呆れるほど宣伝が達者なところと、なんというベタな悪手をやりおるのか、という部分が併存しているという面白い国です。 

今回は、世界、なかでもアジア・オセアニア諸国に対する軍事的威嚇という「成果」は大いに上がったでしょうが、同時にこの国の「賓客」がどんな連中なのか、世界に見せつける結果になりました。 

習近平のセルフイメージでは、天安門広場を見下ろす雛壇に毛沢東よろしく陣取り、主要国のVIPを従えて、中国の新兵器の大群を閲兵する・・・、ああうっとりするトップオブザワールド、となるはずでした。

なにせ習は共産党の内部規約に反してまでも、一存で軍事パレードを強行したのですからね。

ちなみに、中国で軍事パレードができるのは国慶節だけですから、戦勝50周年も60周年もなかったでしょう。

そのために延々と3か月も兵隊たちに、炎天下パレード行進の練習をさせていたのです。

気の毒な兵隊たちもさることながら、戦勝70周年と謳っている以上、来てくれなけりゃ格好がつかない「戦勝国」で来たのはプーチンだけでした。 

主要国かどうかは定かではありませんが、後は勝負服に身を固めてカチカチになっているパククネくらいしかいないのですから、吹き出したくなります。 

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 たぶん天津大爆発事故、上海株大暴落という重量級パンチを喰ってろくに寝ていない習の顔が、むくんだように見えるのもむべなるかなです。 

あまりの不人気ぶりにやる気をなくしたためか、あろうことか習は「左手敬礼」を自分の軍隊に向けてしてしまっています。 

144139188040407986179(写真 観閲式に左手敬礼で臨む習。人民日報によれば、あれは「軽く手をあげて挨拶しただけ」だそうだ) 

わ、はは、こりゃすごいね。古今東西、敬礼は右手でするもので、左手でした場合は敬礼と逆な意味になります。 

つまり「バーロー、お前らみんな死ねぇ!ファックユー」という侮辱を意味します。外国の閲兵式でこれをしたら、往時のヨーロッパでは宣戦布告ととられても文句が言えません。 

まぁ、自分の子分たちでよかったねと言ってあげたいところですが、微博(中国版ツイッター)に「敬礼のしかたも知らないのか」という書き込みが大量に入ってしまいました。 

人民日報などの御用メディアは、慌ててこう説明したようです。 

「老子」の一節に『吉事は左、凶事は右に属する。君子は左を貴ぶ、用兵は右を貴ぶ』を挙げたという。古い中国の制度では「国をしっかりと治める場合、左側の方向性を好む。戦いの場合には右側を好む」ことになっていたので、『左手で敬礼をしたのは、武力は用いない意思表示』との見方だ」

苦しいねぇ。共産党中央軍事委員会委員長が、軍隊に「老子式挨拶」ですか(爆)。まぁ、そういうことにしておきましょう(笑)。 

さて、それ以上に世界を驚かせたのが、「賓客」のひとりにスーダンのバシル大統領が混ざっていたからです。 

このオマール・アル・バシルは肩書は、いまや国際社会においてスーダンの国家元首としてではなく、国際刑事裁判所(ICC)国際手配容疑者という肩書のほうで通用している人物です。 

この男が犯したのは、人類史上に汚点を印したダルフール虐殺の下手人としてです。 
ダルフール紛争 - Wikipedia

ICCは、バシル容疑者への人道に対する罪および戦争犯罪の容疑として訴追しています。

虐殺された者だけで20万人とも30万人以上ともいわれ、数千人がレイプされ、2百万人が避難民となった2003年以降のダルフール紛争についてです。

このバシル容疑者についてフィナンシャル・タイムスはこう述べています。

「ICCは、集団殺害犯罪、戦争犯罪、人道に対する罪を犯した個人を起訴するために2002年に設立された。バシル氏をICCの裁判にかけることに議論の余地はない。同氏は、30万人が死亡し、200万人が家を追われた国家ぐるみの暴力行為を扇動した罪を問われている」(2015年6月16日)

外務省HPによれば、彼は自国民に対する大量虐殺容疑でICCに訴追されています。
国際刑事裁判所(ICC)によるスーダン大統領に対する逮捕状発付について

F0076775_11515324_2(写真 200万以上ともいわれるスーダン難民。彼らはいまや欧州にまで難民として流出しており、大きな社会問題となっている) 

このバシル容疑者は免責がありえない戦争犯罪と人道に対しての罪で訴追されながら、国内にいるかぎり「国家元首は在職中は不逮捕特権をもつ」という法律の一項を楯に、守られてきました。 

ただし、この不逮捕特権は、スーダンも加盟している国連安全保障理事会の決議があれば無効になります。

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 実は、この国連常任理事会決議は、既に10年も前の2005年に執行されているのです。 

同じく外務省HPからバシルの逮捕を求めた国連安全保障理事会決議第1593号(2005年)を引用します。
国際刑事裁判所(ICC)によるスーダン大統領に対する逮捕状発付について

●国際刑事裁判所(ICC)によるスーダン大統領に対する逮捕状発付について
平成21年3月4日
 

  1. 3月4日(水曜日)、国際刑事裁判所(ICC)予審裁判部は、オマル・ハサン・アフマド・アル・バシール(Mr. Omer Hassan Ahmed Al-Bashir)・スーダン大統領に対する逮捕状発付を決定しました。我が国はICC締約国であり、ICCの独立性及びその決定を尊重します。 
  2. (略) 
  3. (略) 
  4. 我が国は、今後もスーダンにおける和平プロセスを支援していくとともに、スーダン政府の責任のある対応を引き続き促していく考えです。

したがって、バシル容疑者がスーダンから出国した場合、出国先の国家はただちにバシルを逮捕し、ICCに引き渡す義務があります。

すから、国際社会は彼が国外に出るたびに注目してきました。

先だっての6月にアフリカ連合(AU)首脳会議に出席しようとしたバシルに対して、国際社会はとうとうこの男の悪運もこれまでかと期待を寄せました。

「南アの高等裁判所は、ICCからの引き渡し要請を検証する間、同氏に出国禁止命令を出した。ところが同国政府は15日、自国の判事たちを無視して同氏を帰国させてしまった。この同政府の決断は、ICCにとっても、厳しい戦いで勝ち取った同国の人権問題における信頼性にも打撃となった」(前掲)

南アの高等裁判所が出国停止の検討中に逃げられたというわけですが、もちろん嘘でしょう。

それはさておき、このパシルを逃がした措置によって、南アの国際的地位は大いに下落しました。 

さて、問題は南アとは比較にならない国際的ポジションを占める中国です。この国は常任理事国でありながら、ICC締約国(ICC設立に関するローマ規定の調印を拒んできました。

ですから、中国には法的にはバシル容疑者を逮捕し、ICCに引き渡す義務はありませんから、おそらく身柄の安全をパシルに保証した上で堂々と招待状を送付したもののようです。 

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 米国は即座にこれに抗議しています。

「米国務省のトナー副報道官は8月31日の記者会見で、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領が北京で9月3日に開催される「抗日戦争勝利記念行事」出席のため訪中するとの報道があるとして、懸念を表明した。
『ICCの逮捕状が出ている人物を招待したり、移動を支援したりすることに反対する』と指摘。国連安全保障理事会の常任理事国とし、中国は国際社会の懸念を考慮すべきだと語り中国の対応に不快感を示した」(共同9月1日)

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そして、このバシルと顔を突き合わせてシラっとしていた、驚くべき国際公務員がひとりいました。

いうまでもないパンギムン事務総長です。パン事務総長は、平然として、天安門の雛壇でバシルと並らび、記念写真にも一緒に映り込んでいます。

パン氏はお忘れのようですが、そもそもICC自体が国連の外郭組織です。

ICC規定は、国連全権外交使節会議において決められたもので、その事務方トップのパン自らがこれを無視する行動か許されるはずがありません。

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かくして上の一枚は国連事務総長が、刑事国際手配者と並ぶという、外交史上特筆されるべきレアな一枚となりました。

パン氏はこの軍事パレード出席に対する批判に答えてこう述べています。

国連の潘基文(パンギムン)事務総長は5日までに、国営中国中央テレビのインタビューに応じ、中国共産党と軍、政府が開いた「抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念行事への出席に、日本政府が「中立であるべきだ」と懸念を示したことについて、「国連は中立であるべきだと誤った考えをしている人がいるが、実際はいわゆる『中立』ではなく、公平公正だ」と反論した」(産経9月5日)

パンさん、「公平公正」の意味を辞書で引いてから発言しなさい。「公平公正」とはすべてのものを偏りなく扱うことです。

なるほど確かに、パン氏は軍拡を続けてアジア共通の脅威になっている中国と、ダルフール虐殺の下手人も「偏りなく公平に」扱ったというわけです。

それにしてもこの記念写真を見ると、なぜ国連常任理事国が機能マヒを起こして久しいのか、それが回復する可能性がかぎりなくゼロに近いのか分かって、絶望的な気分になります。

それが改めて分っただけでも、この抗日70周年軍事パレードは意義深いものでした。

 
 

2015年9月 6日 (日)

日曜写真館 夏の終わり、秋の始まり

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写真というのはしょせんと言ってはナンですが、だいたい現実の風景のほうが美しいに決まっています。

冬の早朝の湖の端から登る朝日や、凍えつくような大気の中にたたずむ木々などは、どう撮っても目の前の風景のほうが数倍、繊細にして華麗です。

ただ、数少ない例外がこの「ボケ」を利用した接写です。

「ボケ」というのは撮っている私のことではなく、レンズを極限まで開放値に近づけて、ピントがあった部分だけを周囲から切り抜いてしまう技法です。

上の写真は、F値(絞り値)をF2から4くらいで撮っています。

人間でいえば、眼をめいっぱい見開いて瞳孔を開いている状態ですが、実際、人間はこんなまねはすれば、どっと疲れます。というかできないよ。そんなまね。

この状態をカメラで再現したのがこの「ボケ」です。

人間は脳内に映像情報を伝える時に似たことをしています。

カメラでムクゲの白い花を葉越しに覗いているのですが、おそらく脳神経では排除した前の葉は意識上に登ってこないはずです。

つまり、人間にとって見えているが、見えていないわけてす。

しかし、カメラはこれを几帳面に「前ボケ」として留めてくれます。

ありそうでいてありえない風景、これがカメラの「ボケ」です。カメラってほんとうに面白いと思います。

2015年9月 5日 (土)

日中戦争の「平和」だった実態とは

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日中戦争の大部分は「平和」だった。日本軍はインフラ作りに専念していた、などと書くと暴論といわれるでしょうね。

先日の抗日70周年戦勝軍事パレードにおける習近平首席演説の冒頭部分です。全文を産経が掲載しています。
http://www.sankei.com/world/news/150903/wor1509030048-n2.html 

「中国人民の抗日戦争と世界の反ファシズム戦争は、正義と邪悪、光と闇、進歩と反動の大決戦だった。この惨烈な戦争中、中国人民の抗日戦争は最も早い時期に始まり、最も長く続いた。
侵略者に対し、中華民族の若者は不撓不屈の精神で、血を浴びながら奮戦し、徹底して日本軍国主義の侵略者を打ち負かした。中華民族の5千年以上も発展してきた文明の成果を守った。人類の平和事業を守り、戦争史上まれにみる中華民族の壮挙を作り上げた。 中国人民の抗日戦争勝利は、近代以来、中国の外敵の侵入に対する抵抗の最初の完全なる勝利だった。この偉大な勝利は、日本の軍国主義の中国を植民地とし、奴隷のように酷使しようというたくらみを徹底的に粉砕し、近代以来、外からの侵略に対する戦いで連戦連敗だった民族の恥辱をすすいだ」
 

144139158439323927179(写真 世にも不機嫌な表情の習近平。何があったのか知らないが、主催者の顔じゃないよね)

私の亡父は北支派遣軍の兵士でしたが、一度として「パーロー軍(八路軍)と戦った」という話を聞いたことがありません。 

というか、中国軍が「見えた」のは初めのほうだけらしいのです。あとは、「山賊との戦いみたいなもの」(父の表現)だったそうです。

話を聞くと、意外に平和な話ばかりで、どこで飯を食った、中国の便所は汚かったからの見張りを立てて野糞をしたほうがよかったとか、中国人の墓は土饅頭で、豚を買いに行くと水ばかり呑ませてあって騙されたとか、そういうしゃーない話ばかりだったような気がします。 

当時、本多勝一の『中国の旅』の良き読者だった私は、父が言うに言えないような残虐行為を働いたンだろうと勝手に決めつけていましたから、根掘り葉掘り問うたのですが、父は煙草をふかしながらこう言ったものです。 

「なぁお前、シナ事変なんて、初めだけだったんだよ。初めの徐州会戦なんかは死ぬかと思ったが、後はあんがいノンキなもんだったさ」、

実際、日本軍は逃げる中国軍を追って戦線を拡大しました。 あ、この「中国軍」っていうまでもなく國府軍、いわゆる蒋介石軍のことです。 

クリントン政権で国防総省中国部長を、ブッシュ政権では国務次官補代理をつとめたランディ・シュライバー氏はこう述べています。

「私たちの友邦であり安保上のパートナーである台湾は、日本との戦争における役割、功績を中国に奪われている。戦時中、中国側の死傷者の90%は中華民国の人間だった。人民解放軍が日本軍と戦闘することはほとんどなかった」(外交専門誌「ザ・ディプロマット」8月31日号)

習のいう「中国人民」とやらが蒋介石軍ならばともかく、それが共産党軍(八路軍)ならば、姿形が見えません。

Moutakutou(写真 長征時代の毛沢東。要するに落ち武者である。逃げ回っているのを「長征」・ロングマーチと呼んでしまう神経が、さすが共産党)

というのは、中国共産党は、長征というカッコイイ名を自分でつけていますが、「長征」といっても後ろに進撃していたのです。

延々と逃げ回ったあげく、延安というとんでもない辺境の洞窟に逃げ込んでいたからです。

これを、アグネス・スメドレーやエドガー・スノーらの共産党員ジャーナリストたちが徹底的に美化してしまったために、虚名が世界に宣伝されただけで、実態は敗残兵の巣窟にすぎませんでした。

彼らが戦争中にもっぱらやっていたのは、「延安整風運動」という共産党内部の粛清でした。

「最終的には、中国共産党による迫害同然の運動となった。運動は毛沢東の権力を背景に進められ、一般の中国人民も運動に加わるよう強制された。運動の過程で、1万人以上もの人民が殺害されたと言われる
整風運動 - Wikipedia

共産党は現代の習政権を見てもらえばお分かりのように、常に内部抗争に力の8割を費やしています。そして敗者は殺されます。

504083537628(大紀元は台湾系のメディアであるが、この整風運動の生き残り証言を集めているhttp://www.epochtimes.jp/jp/2010/09/html/d54579.html

「二〇世紀四十年代の延安整風運動、幹部審査運動、鋤奸運動(漢奸粛清運動のこと)党員の反省資料は大体3~5回に及んで書き直された。
一部の反省資料は13回まで書き直された。それは審査にクリアできなければの恐怖の心理そのものである。
運動を行った日々、党員幹部たちはみな緊張焦りの下で、寝食に不安となり、党員幹部たちは強烈な暴力の脅威と理論攻撃により、長い精神的試練の結末、肉体的にも精神的にも震えながらも「党」の強権の元へ屈した」(大紀元 前掲)

まるで連合赤軍の惨殺事件の起きた妙義山キャンプか、ポルポト時代のカンボジアのようです。事実、彼らは皆、毛沢東主義者でした。

共産党は日本軍とは戦わず、もっぱら辺境でこんな内部粛清に興じていたようです。

いちおうこの舞台となった、延安の場所を確認しておきますね。 

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ついでに、日本の支配地域も乗せておきましょう。
640pxjapanese_occupation__map(図 Japanese_Occupation_-_Map)

ぜんぜん重なりませんね。これでは、抗日戦争のやりようがありません。中国共産党はハナから戦う気もないし
、その能力もなかったのです。

国共合作といいながら、実際にやっていたのは、國府軍を背後から襲撃するようなことでした。(1939年晋西事件、山西新軍事件など)

あとはひたすら國府軍の消耗を待つだけでした。

結局はこの「果報は寝て待て」作戦が図に当たって、フロックのようにして共産党は政権を手に入れます。

これは、先日来見てきた蘆溝橋事件から第2次上海事変の日中戦争初期の中で、日本を70万という大軍で攻めまくったのが蒋介石中国、つまり国民党軍だったことからもわかります。  

そして、この後に、逃げる中国軍を追って、日本軍がよせばいいのに南京戦から、徐州、武漢三鎮の制圧まで一気に進んでしまい、ここで激しい戦闘は終了します。  

後は戦争末期に、大陸打通作戦という壮大にして、しゃもない大作戦をしたきりで、あとは防衛庁戦史叢書の題名とおり『北支治安維持戦』という、いたって地味なものになっていきます。  

はい、このように実は日中戦争は延々と8年間も、対ゲリラ戦をやっていたというのが実際なんです。

イラクの米軍に似ていなくもないですが、違うのは、経済建設まで日本軍がやってしまったことです。

父によると、当時中国にいた兵隊さんたちは皆、中国にズっといたいと思っていたそうで、部隊が南方に引き抜かれるとわかると、ドヨーンとなったそうです。 

つまり、國府軍はひたすら逃走・撤退を重ねる、それを日本軍が追う、くたびれて停止して、支配地域の安定を図るために膠着状態になるいうのが、この戦争の通常パターンでした。 

ですから、日米戦争のような正規軍が正面衝突を繰り返す戦闘は、父が言っていたように初期の南京戦までです。 

共産党軍などは脇役というのもおこがましい、せいぜい「通行人A」ていどです。

気の毒にも台湾は、日本との戦争における功績を一切合切、ぜんぶ共産中国に奪われています。

戦時中、中国側の死傷者の90%はシュライバー氏が言うように中華民国の人間で、共産軍が日本軍と戦闘することはほとんどありませんでした。

したがって激戦がないために、戦死者はゲリラ戦での小競り合いによるものでしたので、犠牲者も軍人が中心で、住民を巻き沿いにした戦闘は非常に少なかったようです。 

一方、日本が中国大陸に介入するまでの国民党軍と共産党軍との内戦は、階級闘争ですから、食うか食われるかでした。 

ある都市を國府軍が包囲すれば、赤色区の住民は赤化住民として皆殺しにするということを平気で行なっていました。 

逆に、共産党軍も、地方の農村での地主階層への容赦ない粛清をもっぱらとしていました。

なお、 中国共産党用語における「粛清」とは殺害することです。

後に、中国はこれらすべてを日本軍による犠牲者として計上しています。 

では、日本軍が大戦中に何をしていたのかといえば、もっぱら鉄道を通して、それをゲリラの破壊攻撃から守ることでした。 

日本軍の鉄道建設部隊は、大戦中でありながら、実に1千キロにも及ぶ新路線を作ってしまっています。日本陸軍には鉄道連隊という専門部隊までありました。

250px101(写真 鉄道連隊)

もちろん、中国のためにしたのではなく、日本軍支配地域での物流の改善のためですが、これは「解放」後の中国の貴重なインフラになりました。

なんともすごい鉄道好きな民族性ですが、華南では、港湾建設までしています。

なにも日米戦争やっている時に、中国大陸で千キロも鉄道建設するこたぁないと思うぞ(笑)。 

なんのことはない日本軍が支配地域でもっぱらしていたのは、こんなインフラ作りと治安維持、そして経済活動だったのです。 

このように書くと、「いやそんなことはない。中国共産党は1937年9月に平型関で板垣兵団センメツ戦をしているぞ。ああ偉大なるかな、中国人民解放軍!」といった習の声が聞こえてきますが、ありゃただの宣伝です。

ま、映画「カイロ会談」で省。蒋介石の代りに毛沢東が出席して主役張っていたなんていう、トンデモ映画を平気で作る国ですからね。

もちろん、カイロ会談に中国を代表して出席していたのは毛ではなく蒋介石です。よーやるよ、まったく(苦笑)。

Cn2015093

平型関戦については、一度詳述したことがありますので、詳しくはそちらをご覧ください。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-b7ff.html 

実際の戦闘は国府軍5万人が担い、共産党軍はゲリラ部隊ていどが非武装の輜重部隊を襲撃して、丸腰の兵隊を殺し、物資の略奪を行っただけです。

この戦闘全体にはなんの影響もなく、やったことといえば、死亡した日本兵の金品を略奪しただけでした。まこと立派な抗日戦です。

これをして遊撃戦の勝利、毛沢東思想に基づいた偉大な人民戦争と言うのですから、まぁなんともかとも論評のしようがありません。

2015年9月 4日 (金)

素晴らしいタイミングだった抗日70周年勝利記念パレード

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抗日戦争勝利70周年の大パレードが行なわれました。思わず膝を叩きたいほど見事なタイミングでした(笑)。

もっともやってはならない時期にやり、集めてはならない者たちと肩を組み、見せてはならないものを大っぴらに見せつけてくれました。 

まずは時期として、これほどまでに「ふさわしい時期」はなかったでしょう。

上海総合指数の大暴落により、いかなる方法をしても、中国から資本流失が止まりません。 

現在、暴騰前の水準だった2000ポイントから、さらに1600ポイント以下に下落すると見られています。ピークが5100でしたから、その半分以下になるわけです。

これを見越して、さらに外国人投資家は売り逃げています。

Cn20150706_2これに慌てた中国政府は、株式市場への介入に奔走しています。 

まずは70兆円に登るといわれるPKO(価格維持作戦)を展開し、同時に下落が激しい千余の銘柄の取引停止、空売りの禁止、自社株の売却禁止を連発しました。

フツーの自由主義経済諸国において、株式市場に政府が介入すること自体ありえないタブーです。

なぜなら、それをし始めようものなら、株式相場の本来の意味である、成長企業への健全な投資ができなくなるからです。

株式市場は、市場に委ねるのが自由主義経済の大原則であって、中国政府は資本主義のイロハを頭から否定するものなのです。

え、社会主義国だからいいだろうって。とんでもない。

不動産売買は内国民しかできませんが、上海株式市場は海外に開放されているんですから、国際ルールに則ってもらわねば困ります。

Maxresdefault(写真 一瞬にして財産が消えて巨額の借金が残った市民。いや、この国には市民はいなかったので「人民」)

こんなことをすればするほど外国人投資家は上海株式市場から泡を喰って逃避し、世界の中国株の暴落には歯止めがかからなくなります。

中国という国は「自由主義市場」、言い換えれば資本主義を理解していないのです。根本的にはそこなのです。

本来、市場は、さまざまな人たちの思惑で成り立ち、利害が絡まりあって成立するものです。政府だけの思惑で動くものではありません。

中国政府は一党独裁政治に安住してきたために、経済もまた同じように自らの意思ひとつでどうにでも動かせるものだと勘違いしています。

つまり、政治がそうだから経済もまた、共産党の「私物」であると考えているのです。

その思い込みが、この株価バブル崩壊局面でさらけ出されてしまいました。

既に株価や為替市場は、共産党の「私物」であることを離れて、国際市場の多くの投資家や企業家の手に移っています。それが、共産党政府には分からないのです。

それを株価バブルの前段で起きた土地バブルのように処理したことが、彼らの失敗でした。

頭は毛沢東時代のままの鎖国的市場のままで、市場だけ開放して海外の投資家を呼び込んでしまったギャップが、今後どんどんとあからさまになっていくでしょう。

そしていまや世界の株式市場の注目は、中国政府の資金の残高に向けられています。 

既に かつて中国の自慢の種だった外貨準備高はみるみるうち空になりつつあります。 

去年上半期の公表数字は3兆9930億ドルでしたが、その大きな部分を担っていた米国債は既に大半が売られてしまったと見られています。

ちなみに、現時点において、世界一の保有国は再び日本です。

E5d60bf28350fb4f0608400b0c1e5c1d図 上海総合指数と外貨準備高推移。株価のバブル時期から既に外貨準備を取り崩しているのがわかる

武者リサーチはこのように述べています。
※武者レポートhttp://www.musha.co.jp/short_comment/detail/146

「対外純資本流入の変調は、外貨準備高の減少に現われている。一貫して増加してきた中国の外貨準備高が、2014年6月の3.99兆ドルをピークに、12月末3.84兆ドル、2015年3月末3.73兆ドル、が7月末では3.65兆ドルと大きく減少している。
2014年7月から2015年3月までの経常収支は2148億ドルの黒字、にもかかわらずこの間の外貨準備高が2632億ドル(=3兆9932億ドル-3兆7300億ドル)減少していたのであるから、この9ヶ月間だけで中国からの純資金流出(外貨準備以外の対外資本収支)が4780億ドルに上っていたと計算される」

また、外貨準備高と同様に対外純資産残高も半減しています。

「2013年末の1兆9960億ドルをピークから、2015年3月末には1兆4038億ドルと5922億ドルの激減していることが判明した。本来対外純資産残高は経常収支差額分だけ増加する計算であるはずなのに逆に減っている。
この5四半期(2014年1Qから2015年1Q)合計の経常黒字は2952億ドルなので、純資産減少額と合わせて合計8874億ドルの対外資産価値が消失したことになる。為替換算損などがあり得るとしても、この差額は極めて大きい」

そしてその原因として

「①簿外の資金流出(=資本逃避)が起こっている
②帳簿上の資金流入が架空である
③対外資産において巨額の損失が発生した
④統計そのものが信用できない
以上4つの可能性があるが、消失した金額の巨額さを説明できるのは(統計を信頼するとすれば)、①の資本逃避だけであろう。それは深刻な通貨信認に対する懸念といえる」

中国は、国際決裁通貨になるのが野望で、IMFのSDR(特別引き出し権)になることを要望していましたが、これも挫折したとみられています。 

そして先日に詳しく見ましたが、中国のビジネスモデルの象徴だった天津港での大爆発です
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-97a1.html

3845efce9eb7f4535921c4dc13fd2ce9_xl写真 軍事パレード。中国は軍隊に支えられているという暗喩かとかんぐりたくなる演出)

このような時期に、軍事パレードをして見せるという神経が理解を越えます。

この時期にこそ、中国は「まともな資本主義の国」なのだという発信をする必要がありました。

英国エコノミスト誌(2015年8月21日号)はこう述べています。要約します。
※http://www.economist.com/news/leaders/21660977-communist-party-plundering-history-justify-its-present-day-ambitions-xis-history

20150815_ldp001_1(写真 エコノミスト8月21日号表紙)

「中国習政権による過去の歴史の書き換えとして、
①日本の侵略に対して戦ったのは蒋介石率いる国民党政府であるのに、その成果をあたかも毛沢東率いる共産党の手柄にしていること、
②過去70年間一発の発砲もしなかった平和主義の日本を侵略性を持つ国と悪魔化している」

このエコノミスト誌は従来、欧米リベラルの常として安倍氏を歴史修正主義者と扱い、「中国の脅威を誇張する」と冷水を浴びせてきました。

しかし一転して、中国の軍事膨張に対して警戒感を露にし、こう言い切っています。

「昔の日本に似ているのは中国だ」

つまり、習近平は、こう述べるべきでした。

「中国は自由と人権を擁護する文明国なのです。だから外国人投資家の皆さん、いままでどおり安心して中国に投資して下さい。お願い、上海株を買ってちょ!」

そう言う必要こそあったのです。

Wor1509030042p2(写真 クネはまるでミズホたんのような勝負スーツ。プーチンはなぜオレがこんな臭い場所にいるんだと不機嫌そう。習は孫文を気取って中山服を着て、死んだはずの江沢民と談笑。あんたの人生はあと何か月だろうねと言っているのか。案外、下では足で蹴り合っていたりして。ちなみに後の出席者はアフリカの独裁者たちご一同。まさに魑魅魍魎のひとこま)

ところが、習は真逆をやってしまいました。

中国は、やってもいない戦争に「勝利した」と叫び、自由主義陣営から寝返ったパククネ、そしていまや世界の孤児プーチンらと肩を並べ天安門の上で、皇帝気取りです。

これを私たちはなんと評すべきなのでしょうか。

しかも出し物ときたら、大陸間弾道弾、中距離弾道ミサイル、新型対艦ミサイルといった攻撃兵器ばかり。

075a71ba8b0646f6bdc36a5477e9e7c0(写真 軍事パレードに出た北米を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風5B」※http://big5.chinanews.com/tp/hd2011/2015/09-03/559600.shtml#nextpage)

実に分かりやすく、この国の姿をありのまま世界に発信してしまいました。式典を報じた英国BBCはこう述べたそうです。

「軍事パレードで平和的だったのは、最後に飛んだ鳩だけだった」

2015年9月 3日 (木)

え、第1次大戦は集団的自衛権が引き起こしたって?

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今日は、この通りすがりさんの前半部分の一節を考えてみましょう。 

「集団的自衛権は第一次世界大戦を引き起こした主原因との見方もあり、もっと慎重に扱わなくてはいけないと思います」 

ないよ。どこで仕入れたんですか、こんなデマ。

この方が真面目だというのは伝わってくるのですが、不幸にも反対派のプロパガンダを自分で検証しないで、丸呑みしてしまっています。 

この方は反対派特有の、どうして戦争が不幸にも起きてしまったのか、そこまで遡って考えようとしていません。 

ですから、安直な情報に飛びついてしまっています。戦争のケーススタディをしっかりやらねば原因が分からず、原因がわからねば反対も賛成もありません。

さてこの方は、去年100周年を迎えた第1次大戦について、それが集団的自衛権が起こしたと言っているのですが、当時「集団的自衛権」という概念そのものがありませんでした。 

第1次大戦を考える前に、「集団的自衛権」の「集団的」ってなんでしょうか? 

もちろんそれは「国家間の集まり」を指します。多くの国が、戦争を防ぐために協力し合っているシステムのことです。 

実は、この考え方が生れたのは、第1次大戦の後なのです。国連の前身である国際連盟が考え出した新しい戦争予防のための仕組みです。 

それまで、戦争はそれぞれの国の固有の権利だと思われていました。長年、欧州では戦争が絶えず、常にどこかでドンパチやっていました。 

そして1914年、人類史上かつてない大戦争が起きました。第1次世界大戦です。

Wwimontage(写真 第1次大戦 ウイキペディアより)

この結果、実に5千500万の人が犠牲になっています。これは、以後の第2次大戦まで含んだすべての戦争犠牲者数を上回るものです。 

では、この大戦争がなぜ起きたのかといえば、分からないと答えるのがもっとも正直な答えかもしれません。 

歴史家はいくつもの仮説を出していますが、定説とまで言えるものはないようです。

ただし、「集団的自衛権が大戦の主原因という見方」は、寡聞にして存在しないようです。 

そりゃそうでしょう。集団的自衛権の概念自体、この大戦争の後にできた新しい概念だからです。 原因になりたくてもなれません。

第1次大戦以前の、列強の離合集散的「同盟」を、現代の集団的自衛権と勘違いしているにすぎないのです。、

いや、3B政策と3C政策との間の戦争だったんだ、という俗説があります。 

3B政策とは、ドイツが、ベルリン-ビザンチン(コンスタンチノープル)-バクダッドの線で進出することに対して、英国がケープタウン-カイロ-カルカッタの線で進出したので、戦争になったというものです。 

三国同盟vs三国協商といった説明もここから出ています。しかしこれとセルビアで皇太子を暗殺した一弾とどう関係があるのでしょう。

Ofranzferdinandworldwarfacebook(写真 1914年、サラエボ事件。逮捕される暗殺者。彼の背後にはセルビア軍の秘密結社があったとされる)

そもそも先ほど述べましたが、ここでいう三国ナンジャラと、今のNATOのような集団的安全保障体制とは、本質的にまったく別物です。

では、大戦の勃発の経過を簡単にふり返っておきましょう。 もっとも有力な説を紹介します。

皇太子を殺されたオーストリアは、当然、激怒しましたが、セルビアに対してすぐさま軍事行動をとるつもりはなく、ドイツの支援やセルビアの背後にいると見られていたロシアの動きを探っていました。 

ここでもし、オーストリアがただちにセルビアに単独で報復攻撃をしたなら、第1次大戦は起きなかっただろうといわれています。 

しかし、オーストリアはウンウンと悩みます。ハッキリ言って、ロシアが出て来た場合、勝算がなかったからです。 

一方、ロシアは当然オーストリアがドイツと共に戦争を仕掛けてくると予想して、総動員体制を発令します。 

では、ロシアが本気でやる気だったのかと言えばノーです。やらないとスラブ圏の盟主としてのメンツがたたないと思ったからイチビッただけでした。 

言い忘れましたが、セルビアがあるバルカン半島は、今なお「欧州の火薬庫」と呼ばれています。 

それは、ドイツを盟主とするゲルマン系の勢力と、ロシアを盟主とするスラブ系の瀬力のちょうど真ん中に位置しているからです。 

この二大勢力が腕相撲をしているバルカン半島での一発が、ロシアを総動員命令に走らせたのです。 

このロシアの総動員に敏感に反応した国がありました。それがゲルマン系のボスのドイツでした。 

ドイツはロシアとの独露条約が延長されず、フランスがロシアと同盟を結んだことで、挟み打ちされることを恐れていました。

そこで、考え出されたのが、まず西のフランスを降伏させて、次に東に旋回してロシアを撃つというシュリーフェン・プランだったわけです。

そしてドイツはロシアの総動員令を宣戦布告の前兆ととらえて、シュリーフェン・プランを発動します。
参考資料シュリーフェンプラン - Wikipedia

で、ドイツがどこに侵攻したと思いますか?とうぜんのこととして、セルビアだって思うでしょう。違うのです。中立国のベルギーだったのです。 

ドイツは何の紛争事案もなかったベルギーに対して侵略を開始します。

それはベルギーが弱いと思ったからで、ドイツはベルギーに関心があったのではなく、フランスとの戦争の「通り道」だったからにすぎません。 

ドイツの予想に反して、ベルギーは小国でありながら頑強な抵抗をして、シュリーフェン・プランを打ち砕くために大きな働きを演じます。

ちなみに、中立国ベルギーは第2次大戦の時も、同じようにただ「通り道」だというだけでドイツにもう一回侵略されています。 

なおベルギーは第2次大戦後、積極的にECに加盟し、さらにNATOの中軸国のひとつになっています。

現在のNATOの司令部は、ベルギーの首都ブリュッセルにあります。

この方が言うように、もし第1次大戦が集団的自衛権が原因で起きたとしたら、二度も侵略を受けたベルギーが中立を捨てて、集団安全保障体制の推進者になっているって不思議じゃありませんか。

よく反対派の人たちは安易に、「中立国になれば、平和でいられる」と言いますが、ベルギーをよく見てからもう一回言って下さい。ほんとうにこの人たちは歴史を知らない。

156055(写真 ブリュッセルのNATO本部。日本も欧州に位置していたら当然加盟していたであろう)

それはさておき、ドイツはベルギー国境からフランスを屈伏させ、そこで反転して東のロシアに向うという壮大な妄想計画を持っていたのです。

350pxschlieffen_plan(図 シュリーフェン・プラン ウィキより)

この戦争計画は、制作者である第二帝政ドイツ参謀総長の名をとって「シュリーフェン・プラン」と言います。

ま、作った当人は、この計画が実施される前に亡くなっているんですがね(苦笑)。 

まったくバカバカしい話ですが、このドイツの戦争計画が、ロシアの総動員令で自動的に誘爆してしまったというわけです。 

ほかにも説がありますが、この説が今のところ有力です。

さてさて、この第1次大戦の結果を受けて、「もう戦争はこりごりだ。もう戦争をできない仕組みを世界で話しあってつくろう」としたのが、国際連盟です。

Bundes1(写真 国際連盟総会)

ご承知のように、これは提唱国の米国が不参加を決め込むなど、結局は失敗して、再度、世界は戦争に巻き込まれていきます。

しかし、この時に初めて誕生したのが、国際平和維持の仕組みである「集団的自衛権」と、その発展形態である「集団的安全保障体制」なのです。

なぜか極東の島国では、これを正反対に「戦争になる」と叫んでいる人がいるようなので大変に困ります。消防署や警察を、火付け強盗だというのと一緒です。

戦争は人類のもっとも古い病です。だから、きちんとどのように病気に罹るのか、どうしたら防げるのかを真剣に考えねばなりません。

口先だけで、「病気は悪です」といっても、病気はなくなりません。

今の反対派の人達は、「消防も警察も薬もいらない。うちには9条のお札が貼ってあるから大丈夫だ」と叫んでいるようなものです。 

個人的信念なら自由ですが、これを「国民の声を聞け」などと言われるのは、私としては大変に迷惑です。

2015年9月 2日 (水)

抑止力と交渉は対立する概念ではない

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通りすがりさんという方から、コメントをいただいています。 

通りすがりというのは、一方通行で言うだけ言って去っていくというパターンなので、答える義務はないのですが、まじめに今回の安保法制について考えていらっしゃるようなので、コメント欄でお答えしておきました。 

さて、コメント欄で触れなかったことについて、補足しておきます。この部分です。 

「集団的自衛権は第一次世界大戦を引き起こした主原因との見方もあり、もっと慎重に扱わなくてはいけないと思います。そして、明治維新やGHQ支配時代を見ても、「武力=抑止力」だけが正しいとも限りらないと思います」 

先に後者から行きましょう。 

ため息が出ました。この人は、自衛官の父親をもちながら、安全保障について基本的なことを何も教わってこなかったのですね。 

「武力=抑止だけが正しい」などという馬鹿なことを言う政治家は、日本にはひとりもいないでしょう。(民主党、共産党、社民党には別な意味でいますが) 

武力と交渉は、メダルの表裏で、交渉をするためには抑止力が必要なのです。 

交渉を吹っ飛ばして、いきなり武力に訴えるぶっそうな常習犯は、世界広しといえと中露の二国だけです。

20150521k005(写真 建設中の南シナ海における中国軍事用人工島) 

A0212807_2220640(写真 クリミアに侵攻したロシア軍部隊。こういう無頼漢のようなことをする国は、中国とロシアしかいない)

では、身近な例として沖縄の米軍について例に取りましょう。

とことで言えば、日本にとって米軍は、「自分の抑止力になるからいてくれないと困る」のです。 

同時に、米国にとっては、朝鮮半島や台湾有事、南シナ海の安定維持のために沖縄に戦略上「いる必要がある」のです。 

この日米の利害が一致しているから、米軍に居てもらっているわけです。 

では、「日本にとって抑止力になる」とはどういう意味でしょうか。

その前に「抑止力」とは、ただひたすら武力で攻め込むと短絡している人がいるようですが、まったく違います。 

抑止力とは、「下手に手を出したら、間違いなく痛い目に合いそうだから止めておこう思わせる力」のことです。 

沖縄の場合、残念ながら、それは陸上自衛隊がいるからではありません。本島には少数の陸自の旅団規模の部隊しかおらず、沖縄本島以西は尖閣までズッと「防衛の空白地帯」が続いています。 

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いちばん緊張している方面ががら空きというわけですが、それでも沖縄に攻めてこようと思わないのは理由は簡単。そこに強力な米軍基地があるからです。 

攻めてくれば、逆に米軍にやられてしまうかもしれない、下手をすれば米国と全面戦争になる可能性がある、そう考えるから、安易な手出しができないわけです。 

抑止力というのは、そもそもただ守っていればいいということではありません。 

ただ守っていればいいという考え方こそ、戦後日本の「専守防衛」という政策です。 

では、攻めてこられたらひたすら守るだけでなんとかなるほど、世界は甘いのでしょうか。残念ながら違います。世の中、そんな甘いもんやおまへん。 

現実の国際社会は、抑止に報復力という意味を持たせています。「いざとなったら、あんたを叩き出すだけじゃなくて、後悔するような痛い目にあわせるよ」ということです。 

たとえば、弾道ミサイルを撃ち込まれたら、その発射基地を攻撃したりすることです。 

現在、自衛隊にはこの能力がありません。それは、前に記事にしましたが、戦力投射能力(パワープロジェクション)がまったく欠けているからです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-42bf.html 

戦力投射能力とは、空母打撃群、ミサイル原潜、大型爆撃機などで、他国に侵攻できる能力のことです。

よく「戦争法案を通せば、軍部が独走する」という人がいますが、やりたくてもできませんからご安心を(苦笑)。それに今の日本には、「軍部」なんてありませんから。

この能力を持つのは、日本においては在日米軍だけです。

よく航空自衛隊が北朝鮮のミサイル基地を攻撃するなどという勇ましい話がでてきますが、空論です。そんな能力は空自にはありません。 

日本の持つ抑止力のうち、あるのは「守り」だけあって、「報復する」能力が欠落しているために本来の意味での抑止力足り得ていないのです。 

現時点で、沖縄の先島に侵攻された場合、自衛隊は手の打ちようがありません。 

そもそも陸上兵力を離島に輸送する手段がありませんし、島嶼(とうしょ)で戦う訓練も始めたばかりだからです。 

この能力を持っているのは、沖縄に駐屯する米海兵隊だけです。米海兵隊は、24時間365日、常時2千~3千人程度のただちに動かせる部隊を持ち、その輸送手段としてオスプレイ部隊も持っています。

Image015

そしてその上空を守る航空機も、嘉手納に駐留しています。 

つまり、沖縄防衛のためのワンセットの抑止力を備えているのは、自衛隊ではなく米軍だけなのです。 

さて、このような「抑止力」があって初めて交渉が成立します。それがなければ、相手国は交渉テーブルにすら着かないでしょう。 

誤解があるようですが、交渉とは通常その勝ち負けが決まってからから行なわれるものなのです。

話し合いが破綻して戦争になるのは、互いに強力な抑止力を有している場合だけです。 

O0560034512198438240(写真 尖閣水域の中国海軍艦艇) 

だって、いつでも存分に侵攻できるんですから、事前交渉などはいりませんもんね。自衛隊を完全に叩き潰してから、「さて、話あいをしようか」となります。 

もっともそれは日本にとって交渉というより、ただの敗戦処理にすぎませんが。 

そうならないために、武力衝突が起きる前の事前交渉ができるようにせねばなりません。そのためには、「勝手にやりたい放題させないぞ」という抑止力が必要なのです。

この抑止力のバックがあってこそ、初めて有効な交渉になります。

交渉をするために抑止力が必須なのです。軍事か話合いか、という二項対立ではありません。

それは「武力が正義だ」というような単純な武力信仰ではなく、逆に「敵が攻めて来たら酒を飲んで話合う」というシールズのような薄ら甘い幻想ではなおさらなく、抑止力と交渉というふたつでひとつの存在なのです。 

2015年9月 1日 (火)

死滅に向う中国大陸 その2 想像を絶するカドミウム汚染の進行

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中国の歪んだ近代化は、まず農業に現れました。 

早く出来ればいい、大量に取れればいい、金にさえなればなにをしてもかまわない、そういう拝金主義が農業全体を覆い尽くしました。 

そしてその手段としてもっとも手っとり早かったのが、化学農薬と化学肥料の過剰投入です。

農民にとって化学農薬・肥料は、当時中国政府が力を入れていた重化学工業の副産物としてかつてなく安価に入手できるようになっていました。

他の諸国の農業のように、基本の土づくりを積み上げた上で、補完的に使用するのではなく、無原則無制約に大量投入されました。 

14億の人口の大半を占めるといわれる農民の化学農法への驀進は、いままでいかなる時代の、いかなる国も経験したことのない想像を絶する環境公害をもたらしました。 

Image566(図 中国の国土への窒素の流入と環境への流出量の経年変化 農業環境技術研究所 スケールが日本の10倍となっている※http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rres_CH_K(3).html)

そしてそれは長年、中国政府の情報統制主義によって、完全に闇の中に消えていたのですが、突然に明るみに出ます。
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=69668&type= 

それは2013年のことで、レコードチャイナ(2013年2月21日)が、BBC中国語サイトの情報として間接ながら初めての内部情報を明るみに出します。 

「中国には環境汚染が原因でがん患者が多発する「がん村」が100カ所以上存在している。
中国環境保護部が発表した「化学品による環境リスク防止・制御に関する第12次5カ年計画」(計画)によると、中国政府は第12次5カ年計画(2011~2015年)中に人体や生態環境に深刻な影響を及ぼす化学・工業汚染物質3000種以上に対し、全面的な防止・改善措置を施す予定だ。中国には生産過程で使用する化学物質が登録されているだけでも4万種以上あり、うち3000種余りが危険な化学品として今回リストアップされた」
 

この「ガン村」というのは、かねがね中国環境問題の研究者にはその存在があると言われていた存在でした。

これはかなりの数あると思われていましたが、中国環境保護部自らが「100箇所以上ある」ことを認めたのです。 

まず公害は、日本の代表的公害病の水俣病がそうであるように、公害発生点の農漁村に現れます。

それは水俣のように工場廃液の場合もあったり、農業自らの化学汚染もあります。

公害物質は静かに土壌や水に蓄積され、連鎖し濃度を高めながら水系に沿って汚染を拡大していきます。 

水俣病の場合は、 最初に猫や犬が狂い、村で正体不明の病人や死人がポツリポツリと出はじめます。その時には土も、水も、食べ物も一切が汚染されており、その汚染は胎児にまで拡がっています。  

Image_01(図 水俣病模式図)

そして米や野菜、あるいは水を通じて、都市住民にも黒い影を伸ばして行くようになります。  

やがて、地方都市が変色した川とスモッグで覆われ、首都すらも金星のような有毒ガスの濃霧で覆われる頃には、実は全土が公害で覆い尽くされており、この汚染連鎖の最終局面なのです。 

Photo_6(写真 2013年2月撮影のNASA衛星写真。画面中央右の白いスモッグ帯に小さな白字でBeijingとあるのが北京。スモッグの海底に完全に沈んでいるのが分かる

首都北京のPM2.5汚染は中国の公害の始まりではなく、その汚染の鎖の最終部分にすぎません。  

さて、まずはこの表から御覧ください。中国の重金属汚染データです。 

Photo (2013年「週刊文春」による)

 これは中国長江河口付近で採取された検出データです。

残念ながら、採取採取地点、日時、採取者が明らかになってません。明らかになれば、いっそう信憑性が高まるのですが、具体数値に乏しい中で貴重なデータだとはいえます。  

というのは、中国政府は一貫してこのような土壌汚染を隠匿し、いっさい公表してきませんでした。  

長江河口と言うことですから、上海近辺の長粒米を作る産地のものだと思われます。長粒米は昨今の経済成長で、従来のものよりおいしいということで生産が増えています。 

河口付近は、河から流れて来た汚染と沿岸からの汚染がクロスする場所で、高度な汚染が出やすい場所です。 

さて、この表の右端が我が国の環境基準値(02年制定)です。我が国の基準値と比較してみます。  

・水銀 ・・・244倍
・鉛   ・・・3500倍
・ヒ素・・・1495倍
・カドミウム・・・4.2倍
・BHC   ・・・59倍(※DDTと並んで国際的に検出されてはならない使用禁止農薬)
 

このような地域で生活すれば、水銀を原因とする水俣病が、確実に発生しているはずです。  

Image565(図 中国の河川水窒素濃度分布の推定結果 農業環境技術研究所 約50kmメッシュごとに推定 長江デルタなどの河川周辺の汚染のすさまじさがわかる。隣に日本列島が同一縮尺であるので、較べていただきたい。我が国の半分以上に等しい面積が汚染されてしまっている。この最終年が12年前なので、今はもっと進行していると考えられる。※http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rres_CH_K(3).html)

水俣病は、感覚障害、運動失調、視野狭窄、聴力障害などが発症し、重度の場合は脳障害や、死に至るケースが多発します。 

カドミウムを原因とするイタイイタイ病も間違いなく発生しているはずです。この症状は、骨の強度が極度に弱くなるために、わずかに身体を動かしたりしただけで骨折します。 

くしゃみや医師が検診のために腕を持ち上げた抱けて骨折する場合もあり、身体を動かすことすら出来ず寝たきりとなります。

Img_6(写真 イタイイタイ病の除去の完了を伝える2012年の地元紙。実に発生から40年以上かかっている。いかに公害汚染の除去が時間とコストがかかることなのかわかる。中国人は、今後一世紀以上かけても現在の国土汚染をぬぐい去ることはできないだろうと研究者は言う)

イタイイタイ病は、神通川下流域の富山県婦中町(現・富山市婦中町)で1910年から1970年にかけて多発した公害病で、患者が骨の痛みに耐えかねて「痛い、痛い」と泣き叫んだことから命名されたものです。なんと哀しい病名でしょうか。  

この原因は、神通川上流にある岐阜県飛騨市にある三井金属鉱業神岡鉱山亜鉛精錬所から、精錬工程で出た廃液中のカドミウムが、下流の富山県婦中町周辺の土壌を汚染したために起きました。  

カドミウムは米に濃縮されるために、米を通して水系周辺のみならず広くカドミウム汚染を拡げます。 

富山県イタイイタイ病の場合、基準値を超えた米、野菜を食べ、地下水を飲んだ住民にカドミウム蓄積により発生しました。  

魚介と違って主食の米や野菜を媒介とするので、販路も広く有機水銀より複雑な汚染経路を辿ります。  

規模的にも、日本の場合は水俣病はチッソ水俣工場と昭和電工鹿瀬工場、そしてイタイイタイ病は三井金属工業神岡事業所と特定できる数の工場廃液が原因でした。  

それに対して「中国水俣病」と「中国イタイイタイ病」の原因となる水銀やカドミウムは、いまの時点では見当すらつかないほど多種多数の工場、鉱山から排出されていると考えられます。  

それを考えると、中国の報道による09年の湖南省カドミウム汚染米事件で2名死亡、500人余りがカドミウム中毒などはほんのわずかな露顕した事例にすぎないと思われます。 

長くなりましたので、中国国内のカドミウム汚染は次回に続けます。

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