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2015年9月 7日 (月)

中国抗日軍事パレードに来た「賓客」たち

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中国という国は、呆れるほど宣伝が達者なところと、なんというベタな悪手をやりおるのか、という部分が併存しているという面白い国です。 

今回は、世界、なかでもアジア・オセアニア諸国に対する軍事的威嚇という「成果」は大いに上がったでしょうが、同時にこの国の「賓客」がどんな連中なのか、世界に見せつける結果になりました。 

習近平のセルフイメージでは、天安門広場を見下ろす雛壇に毛沢東よろしく陣取り、主要国のVIPを従えて、中国の新兵器の大群を閲兵する・・・、ああうっとりするトップオブザワールド、となるはずでした。

なにせ習は共産党の内部規約に反してまでも、一存で軍事パレードを強行したのですからね。

ちなみに、中国で軍事パレードができるのは国慶節だけですから、戦勝50周年も60周年もなかったでしょう。

そのために延々と3か月も兵隊たちに、炎天下パレード行進の練習をさせていたのです。

気の毒な兵隊たちもさることながら、戦勝70周年と謳っている以上、来てくれなけりゃ格好がつかない「戦勝国」で来たのはプーチンだけでした。 

主要国かどうかは定かではありませんが、後は勝負服に身を固めてカチカチになっているパククネくらいしかいないのですから、吹き出したくなります。 

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 たぶん天津大爆発事故、上海株大暴落という重量級パンチを喰ってろくに寝ていない習の顔が、むくんだように見えるのもむべなるかなです。 

あまりの不人気ぶりにやる気をなくしたためか、あろうことか習は「左手敬礼」を自分の軍隊に向けてしてしまっています。 

144139188040407986179(写真 観閲式に左手敬礼で臨む習。人民日報によれば、あれは「軽く手をあげて挨拶しただけ」だそうだ) 

わ、はは、こりゃすごいね。古今東西、敬礼は右手でするもので、左手でした場合は敬礼と逆な意味になります。 

つまり「バーロー、お前らみんな死ねぇ!ファックユー」という侮辱を意味します。外国の閲兵式でこれをしたら、往時のヨーロッパでは宣戦布告ととられても文句が言えません。 

まぁ、自分の子分たちでよかったねと言ってあげたいところですが、微博(中国版ツイッター)に「敬礼のしかたも知らないのか」という書き込みが大量に入ってしまいました。 

人民日報などの御用メディアは、慌ててこう説明したようです。 

「老子」の一節に『吉事は左、凶事は右に属する。君子は左を貴ぶ、用兵は右を貴ぶ』を挙げたという。古い中国の制度では「国をしっかりと治める場合、左側の方向性を好む。戦いの場合には右側を好む」ことになっていたので、『左手で敬礼をしたのは、武力は用いない意思表示』との見方だ」

苦しいねぇ。共産党中央軍事委員会委員長が、軍隊に「老子式挨拶」ですか(爆)。まぁ、そういうことにしておきましょう(笑)。 

さて、それ以上に世界を驚かせたのが、「賓客」のひとりにスーダンのバシル大統領が混ざっていたからです。 

このオマール・アル・バシルは肩書は、いまや国際社会においてスーダンの国家元首としてではなく、国際刑事裁判所(ICC)国際手配容疑者という肩書のほうで通用している人物です。 

この男が犯したのは、人類史上に汚点を印したダルフール虐殺の下手人としてです。 
ダルフール紛争 - Wikipedia

ICCは、バシル容疑者への人道に対する罪および戦争犯罪の容疑として訴追しています。

虐殺された者だけで20万人とも30万人以上ともいわれ、数千人がレイプされ、2百万人が避難民となった2003年以降のダルフール紛争についてです。

このバシル容疑者についてフィナンシャル・タイムスはこう述べています。

「ICCは、集団殺害犯罪、戦争犯罪、人道に対する罪を犯した個人を起訴するために2002年に設立された。バシル氏をICCの裁判にかけることに議論の余地はない。同氏は、30万人が死亡し、200万人が家を追われた国家ぐるみの暴力行為を扇動した罪を問われている」(2015年6月16日)

外務省HPによれば、彼は自国民に対する大量虐殺容疑でICCに訴追されています。
国際刑事裁判所(ICC)によるスーダン大統領に対する逮捕状発付について

F0076775_11515324_2(写真 200万以上ともいわれるスーダン難民。彼らはいまや欧州にまで難民として流出しており、大きな社会問題となっている) 

このバシル容疑者は免責がありえない戦争犯罪と人道に対しての罪で訴追されながら、国内にいるかぎり「国家元首は在職中は不逮捕特権をもつ」という法律の一項を楯に、守られてきました。 

ただし、この不逮捕特権は、スーダンも加盟している国連安全保障理事会の決議があれば無効になります。

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 実は、この国連常任理事会決議は、既に10年も前の2005年に執行されているのです。 

同じく外務省HPからバシルの逮捕を求めた国連安全保障理事会決議第1593号(2005年)を引用します。
国際刑事裁判所(ICC)によるスーダン大統領に対する逮捕状発付について

●国際刑事裁判所(ICC)によるスーダン大統領に対する逮捕状発付について
平成21年3月4日
 

  1. 3月4日(水曜日)、国際刑事裁判所(ICC)予審裁判部は、オマル・ハサン・アフマド・アル・バシール(Mr. Omer Hassan Ahmed Al-Bashir)・スーダン大統領に対する逮捕状発付を決定しました。我が国はICC締約国であり、ICCの独立性及びその決定を尊重します。 
  2. (略) 
  3. (略) 
  4. 我が国は、今後もスーダンにおける和平プロセスを支援していくとともに、スーダン政府の責任のある対応を引き続き促していく考えです。

したがって、バシル容疑者がスーダンから出国した場合、出国先の国家はただちにバシルを逮捕し、ICCに引き渡す義務があります。

すから、国際社会は彼が国外に出るたびに注目してきました。

先だっての6月にアフリカ連合(AU)首脳会議に出席しようとしたバシルに対して、国際社会はとうとうこの男の悪運もこれまでかと期待を寄せました。

「南アの高等裁判所は、ICCからの引き渡し要請を検証する間、同氏に出国禁止命令を出した。ところが同国政府は15日、自国の判事たちを無視して同氏を帰国させてしまった。この同政府の決断は、ICCにとっても、厳しい戦いで勝ち取った同国の人権問題における信頼性にも打撃となった」(前掲)

南アの高等裁判所が出国停止の検討中に逃げられたというわけですが、もちろん嘘でしょう。

それはさておき、このパシルを逃がした措置によって、南アの国際的地位は大いに下落しました。 

さて、問題は南アとは比較にならない国際的ポジションを占める中国です。この国は常任理事国でありながら、ICC締約国(ICC設立に関するローマ規定の調印を拒んできました。

ですから、中国には法的にはバシル容疑者を逮捕し、ICCに引き渡す義務はありませんから、おそらく身柄の安全をパシルに保証した上で堂々と招待状を送付したもののようです。 

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 米国は即座にこれに抗議しています。

「米国務省のトナー副報道官は8月31日の記者会見で、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているスーダンのバシル大統領が北京で9月3日に開催される「抗日戦争勝利記念行事」出席のため訪中するとの報道があるとして、懸念を表明した。
『ICCの逮捕状が出ている人物を招待したり、移動を支援したりすることに反対する』と指摘。国連安全保障理事会の常任理事国とし、中国は国際社会の懸念を考慮すべきだと語り中国の対応に不快感を示した」(共同9月1日)

Photo

そして、このバシルと顔を突き合わせてシラっとしていた、驚くべき国際公務員がひとりいました。

いうまでもないパンギムン事務総長です。パン事務総長は、平然として、天安門の雛壇でバシルと並らび、記念写真にも一緒に映り込んでいます。

パン氏はお忘れのようですが、そもそもICC自体が国連の外郭組織です。

ICC規定は、国連全権外交使節会議において決められたもので、その事務方トップのパン自らがこれを無視する行動か許されるはずがありません。

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かくして上の一枚は国連事務総長が、刑事国際手配者と並ぶという、外交史上特筆されるべきレアな一枚となりました。

パン氏はこの軍事パレード出席に対する批判に答えてこう述べています。

国連の潘基文(パンギムン)事務総長は5日までに、国営中国中央テレビのインタビューに応じ、中国共産党と軍、政府が開いた「抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念行事への出席に、日本政府が「中立であるべきだ」と懸念を示したことについて、「国連は中立であるべきだと誤った考えをしている人がいるが、実際はいわゆる『中立』ではなく、公平公正だ」と反論した」(産経9月5日)

パンさん、「公平公正」の意味を辞書で引いてから発言しなさい。「公平公正」とはすべてのものを偏りなく扱うことです。

なるほど確かに、パン氏は軍拡を続けてアジア共通の脅威になっている中国と、ダルフール虐殺の下手人も「偏りなく公平に」扱ったというわけです。

それにしてもこの記念写真を見ると、なぜ国連常任理事国が機能マヒを起こして久しいのか、それが回復する可能性がかぎりなくゼロに近いのか分かって、絶望的な気分になります。

それが改めて分っただけでも、この抗日70周年軍事パレードは意義深いものでした。

 
 

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コメント

バシル容疑者、自分も調べましたが中国とズブズブなんですね。
アフリカからの賓客は、大なり小なり彼みたいなのでしょう。
そんな人達しか来て貰えなかった、という現状なのですね。

なるほど中国は、対外工作は驚くほど冷徹に手段を選ばず、面子にかけては信じられないほど熱烈に手段を選ばない国ですね。
こんなのを見ると、中国はやっぱり最期まで突っ張り通す国なんだな、とこちらも腹を括らなければなりませんね。

潘事務総長、中立ではなく公正公平だと日本に反論!
大爆笑でした。こんなバカヤローを国連トップにした韓国(あれっ、ちょっと前までは北との関係で国連加盟すらできなかったんじゃなかったんでは?)のロビー力には脱帽です。
ま、あちらじゃ最近はアメリカでの慰安婦像設置否決等々を「汚い日本のロビーに負けるな!」なんて言ってますが。

いやあ、習近平の「俺がジャイアンだぁぁ!」ばかり目立つパレードでしたね。
国連常任理事国が中共にある時点でおかしいですから。韓国同様、嘘も100回1000回繰り返せば本物の歴史になると無条件に信じているようです。

それにしても、参加首脳の面々ときたら…。もう
爆笑ものです。

パククネさん?知らんわ。板挟みの苦悩とか報道されてますが、ただの中華帝国への媚び。じゃあさっさとそうハッキリ言って柵封されれば?


習近平さん、いくら国産自慢したくてもねぇ、乗ってるのがビンテージ物の紅旗770とか(笑)、折角自慢の最新兵器を御披露目したのに、もう時代錯誤のダサさが際立ちましたね!

先月天津で起こった大爆発事故。
未だ行方不明者が十数名残っており、原因究明も為されていないうちに
エコパーク構想なるものが持ち上がったとかで地元住民から非難囂々とか。
そらそうでしょう。他の国(北朝鮮とかは除いて)では有り得ないことです。
かつて起こった高速鉄道事故での証拠隠滅を彷彿とさせる話ですね。
大昔なら強権でもって隠蔽できたかも知れませんが、
今や国民一人一人がスマホを持ち歩いている時代です。
いかに中国とは言え隠し通せる筈もありません。

ことほどさように異常なほど体面を重んじる彼の国。
先日行われた軍事パレードにおいて披露された数々の兵器の中にも、
張り子の虎と呼べるような代物が少なからずあったのではと思えてなりません。
門外漢なもので真実は知り得ませんが。

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