中国経済を自由主義国の常識で見てもわからない
日本のメディアが中国報道でミスリードするのは、中国を自由主義国家と同じ仕組みだと思っていることです。
たとえば政治では全国人民代表大会(全人代)を「国会」と説明してみたり、人民解放軍を一般の国の軍隊(国軍)と解説してしまったりしています。
もちろん、このブログにいらっしゃる人はお分かりになっているでしょうが、中国には「国会」と呼べるものも、「国の軍隊」と呼べるものもありません。
あるのは、共産党が指名した代表者の集まりであって普通選挙すらなく、軍隊といえば、共産党中央軍事委員会によって指揮される「私兵」にすぎません。
ちなみになにかというと出てくる武装警察(武警)は、警察組織ではなく、人民解放軍の傘下にある治安用準軍隊です。
これが「中国式民主主義」だそうです。
万事この調子ですから、経済も例外なわけがありません。
日本のメディアでは、中国を西側の市場経済国家同然に見立てて、中国当局が金利を下げれば景気が上向くだろうと言ってみたり、為替レートを下げれば元安に振れて、輸出が増えるだろう、中国は早い時期に回復するだろうというエコノミストすらいます。
気の毒ですが、たぶんそうはなりません。
だって、中国という国の経済は、党が株式や外国為替など金融市場を支配する体制てのですよ。忘れたのですか。
人民解放軍が党の私兵なら、経済は党の私物なのです。
日本なら為替相場が円安になれば、国内製品は自動的に割引セール状態になりますから、メイドインジャパンは有利になります。
中国の場合、元とドルが固定レートでペグされているドル・ペグ制(ドル連動制)です。
ですから、ドル相場に連れて自分の為替レートも動いてしまうために、いくら政府当局が小手先で為替レートをいじっても、再び元に戻ってしまうのです。
また、米国FRB(連邦準備委員会)は、2014年10月から常々いつかやらねばならないと言ってきた金融緩和策からの出口プロセスに入り始めました。
米国がとうとう金利を上げる時が来たのです。これに泡を食ったのは中国を含む新興諸国です。
彼らにとって、米国の金利上昇は、米国への資金の逆流を意味しますから、やると言われただけで、一気に景気が冷え込みました。
中国はリーマンショック以降、米国がジャブジャブ輪転機を回してドルを大増刷してくれたおかげで(実際は電子マネーですが)のおかげで、大量のドルを国内市場に呼び込むことができました。
ところが、2012年から13年にかけて中国の不動産市場は、行くところまで行ってしまってとうとうバブルが弾け、そこに14年からは米国の金融引き締めが重なって、ドルはどんどんと流出していくことになります。
そうなるとドルの裏付けがあって、初めてできた元の大増刷もできなくなります。
慌てた習政権は、不動産を見切って、上海株式市場に目を向け、今度は株式バブルを人工的に作り出して、ドルを呼び込もうと考えました。
結果はご存じの通りです。株式バブルもあえなく弾け飛び、歴史的大暴落が始まりました。
(写真 中国のネットジョーク。「ストレスで心臓がおかしくなった投資家のみなさん、ご自分の心電図を株価のチャートと混同しないように」。中国では個人投資家が2億人を超える。日本に爆買いにきていたのは、この株式長者たち)
習は再び膨大な政府資金をつぎ込んで株を買い支える、という自由主義市場ではありえない禁じ手を使ってでもなんとか戻そうとしていますが、少し上がってはドドッと落ちることを繰り返しています。
これは、上海株が、既に国際投機筋の標的になってしまっているからで、彼らハゲタカたちは下がれば買い、少し上がればただちに売り払うことを繰り返して濡れ手に粟のようです。
ちなみに、東京市場の相場の不安定も同じ理由です。しかし中国が実態経済の落ち込みを反映しているのに対して、東京はそれとは無関係の投機筋の利食いによるものです。
朝日さん、2万円を切った、もうアベノミックスは失敗だと喜ばないようにね(苦笑)。
ロイター( はこう述べています。
「人民元相場が純粋に市場で決められるとすれば、おそらく下落するだろう。しかし中国人民銀行は外貨準備に手を付けて元の安定を保とうとしている。
これは永遠に続けられるものではなく、米金利が上昇してドルの魅力が高まればなおさらだ」
その結果起きるのが、中国国民の恐怖感情だ、とロイターは見ています。
恐怖は恐怖を呼び、そして起きるのが、手持ちの財産を外国に逃がすことです。これが資本逃避(キャピタルフライト)です。
「まず心配なのは、中国市民が国外に資金を移動させようとする可能性だ。マカオの質屋など、闇の両替商に対して最近取り締まりが実施されたことは、当局が資本逃避に神経を尖らせていることを示している」
というわけで、中国政府が躍起となって株式市場を支えようとすれば、虎の子の外貨流出が止まらず、FRBの金融緩和が開始されれば、完全に中国経済の息の根は止まりまることになります。
ですから、この9月に習がオバマに会いに行くという予想もあるようですが、それはFRBが利上げを決定する前に、なんとしてでもそれを止めてもらう懇願のために行くのです。
太平洋の二分割をぶち上げたG2論が遠い昔のようです。
AIIB?なんかそんな話がありましたね(遠い目)。外貨準備のない開発銀行ですか。ご冗談でしょう。
乗り遅れるな、参加しないのは安倍の大失敗と騒いでいたマスコミも沢山あったような。
諸行無常の鐘が鳴る。フェアウェル・チャイナ・ドリーム。
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それでも日本の経団連は中国に依存し、政府は血税を大陸に吸わせるんでしょうね。
私設軍隊のパレードで誇示した軍備の維持管理は金を喰い、財政は逼迫する。
大雨ですが管理人さんのところは大丈夫ですか?
投稿: 多摩っこ | 2015年9月10日 (木) 10時53分