遅れてやって来た中国式帝国主義、
中国が抗日軍事パレードに、「ダルフールの虐殺者」ことオマール・アル・バシルを招待したのは偶然ではありません。
国際社会になんと言われようと、スーダンは中国のアフリカ進出の拠点であり、バシルはその大事なシンボルなのです。
この10数年間で、中国はアフリカ諸国との結びつきを急速に強めました。
やり方は当初の2004年頃には資源外交のかけ声で、アフリカの豊富な天然資源を獲得するのが目的でした。
ちょうどこの時期が、ダルフール紛争の時期に当たっています。
ダルフール紛争は、アラブ系の部族の政府と、ダルフールのブラックアフリカン系スーダン人の対立でした。
これは長年の水と土地をめぐる部族間の争いの素地の上に、天然資源が絡まっていっそう対立が激しくなります。
(地図 JVCより)
スーダンはアフリカ第6位の産油国です。原油の生産量は日産49万バレルです。確認埋蔵量も大きいと見られています。
実はスーダンは、ダルフール紛争の以前の1980年代頃から、南部の分離独立運動による内戦のために、ダルフール紛争と変わらない犠牲を払っていました。
その結果、国土は荒廃し、スーダンは崩壊国家と化していました。これが原因で、欧米石油企業は撤退し、入れ替わるようにして入ってきたのが、90年代中頃からスーダンに進出した中国の国有石油資本(CNPC・ペトロチャイナ)でした。
巨大国有企業であり、国策企業です。彼らは中国共産党常務委員に常に1名枠を持つ最高権力者集団なのです。
つまりペトロチャイナやシンペックは、中国共産党と中国政府そのものです。
中国はスーダン政府に肩入れし、彼らに石油代金の代わりに大量の武器を与えました。
このことにより、欧米の人権団体や政府から、中国がダルフール虐殺を幇助したと告発されました。
「中国政府はスーダン政府に武器を供給しており、一方で同国産油量の半分以上を購入していることから、ダルフール紛争をめぐって欧州各国からの圧力に直面している。
国連の統計によると、ダルフール紛争では過去4年間で20万人以上が死亡、200万人以上が自分の家を離れ避難している」(AFP2007年6月)
このAFPの記事にもあるように、中国は自国の10%もの原油をスーダンから輸入し、それはスーダン産油量の55%を占めています。
石井前スーダン大使はこう述べています。
「スーダンは石油開発、武器、市場の三つとも中国に依存している、アラブ・アフリカ世界でも特異な国だ」
「米国はスーダンとの貿易、金融取引停止制裁を続けている。このためスーダンに進出している日本企業は皆無といわれる。そうした状況下、スーダン国内の銀行ATMで、中国の代表的なクレジットカード・銀聯カードが使えるというから驚く」(東洋経済2010年07月06日)
やがて中国はスーダンで、後にアフリカ全域で見せることになる、中国式権益確保戦略を開始します。
まず、石油・資源企業が投資し、資源を担保に自国製機材を輸出します。これには石油生産資材だけではなく、自動車や衣料、武器まで含まれています。
その代金を原油などの資源で受けるわけですが、その際に自国製製品の価格を安く設定したり、安く資源を輸入します。
次いで中国人労働者を輸出します。 下図は1984年から2012年にかけて労働者の送り出しの推移を示しています。(図 中国人年末海外在留労働者数http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0401.html)
「労働者の送り出しは1990年代から急増しており、2000年代に入りその増加率は一時鈍化していたが、2012年時点で約51万人にも達している。それに対して、2001年に中国がWTOに加盟後、「海外建設請負」も急速に拡大し、2012年に約34万人に上る」(産業労働研究所)
また送り出し先地域は、アジアとアフリカで二分しています。
「1992年の時点では、労働者の約40%がアジア、約30%がアフリカに約20%がヨーロッパに分布していたが、2012年では、アジアとアフリカのシェアは約45%に上昇する一方、ヨーロッパのシェアは3%に低下した。特にアフリカにおける労働者の受け入れが著しく増加していることが分かる。近年、エネルギー資源の確保やアフリカ向けのインフラ・システムの輸出に伴い、労働者の送り出しが増加したと考えられる」(前掲)
日米欧の労働者派遣はエンジニアが中心ですが、中国は現業労働者までも数万人単位で輸出し、そこにチャイナタウンを作ってしまいます。
現地の石油や鉱山を押え、そこに採掘権を確保するやいなや、数万人規模の中国人労働者を送り込んでしまいます。
今やアフリカ各地には、アフリカに渡った中国人労働者は累積で100万人を超えるといわれ、既に中国人労働者のチャイナタウンが各所にあります。
この100万人規模まで膨れ上がった中国人労働者コロニーによって、現地住民との人口比率が逆転した地域も生まれました。
ザンビアやケニアでは、そのことによる現地住民との紛争が、いまや暴力事件にまで発展しています。
もはやこれは名前を替えた移民政策、いや態のいい「棄民」ではないかという強い批判を欧米各国から浴びるようになっています。
その一方、アフリカで事業をしている中国企業には、中国国内とまったく同様に、いやそれ以上に環境や安全のへの配慮が欠落しています。
国際水準からすればまだまだ低い中国人労働者の賃金水準をはるかに下回る給与に留め置いています。
このために、過酷な労働を強いる鉱山労働などで暴動を含む労使紛争が続いています。
また鉱山も中国国内と一緒かそれ以下の環境基準しか持たないために、汚染物質の垂れ流しは日常茶飯事で、中国企業が進出した地域の自然環境は公害で荒れ果てました。
(写真 中国資本による鉱山開発と廃物処理によりカドミウムと鉛汚染が深刻になったザンビアのカブウェ)
このような中国資本の侵入により、アフリカ随一の工業地帯である南アフリカの商工業者の多くは、中国企業とのダンピングまがいの価格競争に破れました。
一方、アフリカ農業もザンビアでは、中国人農業労働者のプランテーションから出荷される安い農産物のために地元農業者が圧迫されていることが問題視されています。
その上に、その国の放送網を支援すると称して、設備と込みで中国中央電子台の番組を放送させけています。
このソフト戦略は、中国が世界各地でとっているもので、開発途上国の放送インンフラを安く請け負って、代わりに中国製の番組やニュースを垂れ流します。
これによって中国のプロパガンダは、発展途上国を中心にして世界くまなく浸透するようになりました。
そして中国が相手かまわず売りつけた大量の武器弾薬によって、アフリカの内戦や部族紛争はいっそう激化しただけではなく、流出した大量の武器はテロ組織の手に渡っていきます。
そしてこの権益を守るために、一部の国には軍隊まで派遣しています。
このように、かつての植民地宗主国は収奪のためとはいえ、それなりに産業と技術を拓殖したのですが、中国のやり口はまさに「遅れて来た帝国主義」そのものでした。
このように中国は国内でとってきた、ないに等しい人権、最低の賃金、最悪の労働条件、荒廃した自然環境、少数民族抑圧、そしてそれを軍事中心主義で押さえつけるといった政策を、そのままアフリカに輸出したわけです。
一事が万事、この国はそうですが、「中華民族の再興」をするには時代が遅すぎたのです。
国境線の引き直しをすることは、世界を相手に軍事侵略国家だと指弾されることであり、人権や環境を無視したアフリカ進出もまた同じように、国際社会で許される時代ではなくなっていました。
この世界が列強の闘技場から、国際協調の時代に転換した後に、タイムスリップしたように登場した19世紀帝国主義、それが中国だったのです。
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コメント
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こんな国々では、日本がいくら進出すると言っても独裁者や価格やテロ組織などの多重の壁に阻まれて到底不可能ですね。
唯一の(?)アルジェリアのプラントはテロ組織にやられてしまいましたし。
中共の崩落まで待つしかないのでしょうか。
投稿: プー | 2015年9月 8日 (火) 07時39分
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投稿: 中井(fx-on.com) | 2015年9月 8日 (火) 17時32分
中井さん
私は管理人ではありませんが、コメント欄にCMは失礼です。
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本気なら、そちらで直接問い合わせるのが筋です。商売人ならそのくらいの常識を持ってください。
投稿: 北海道 | 2015年9月 8日 (火) 18時59分