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2015年10月14日 (水)

コメントにお答えして エサ米は市場原理から逸脱している

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今日は、「農経初心者の大学生」さんにお答えする形で、お話していきます。 

頂戴したコメントは、私がエサ米・米粉などの転作について批判した理由を尋ねています。 

「(1)補助金の政策効果に対し、財政負担が大き過ぎるため。
(2)減反の維持こそが補助金の目的であり、減反の維持に反対であるため。
(3)飼料用米・飼料稲への補助金について、仮に財政負担の大きさの問題は棚上げしたとしても、飼料(の一部)を自給しようという考え方に反対であるため。あるいは、飼料(の一部)の自給には反対しないが、それをコメで行うことに反対であるため。
(4)その他
※(1)は費用負担の視点、(2)と(3)は政策の目的の視点です」
 

答えから言っておきましょう。 

(3)の国産自給飼料という理念は、私自身も長く追及してきたものです。ですから、反対なわけはありませんが、それと減反を絡めるなと言っているだけです。

ですから「政策効果に対する費用」という費用対効果の次元ではなく、政策目的そのものが歪んでいるからダメなのです。 

費用と言う点から考えてみましょう。

エサ米は農業経営の合理性に基づいて制度設計されていないために、多額の税金の竹馬を履かせてやっと成り立っています。 

2014年度には、収量10アール(1反)あたりの最大の補助金給額は、10万5000円でした。

ここで質問です。皆さんは、一般的な10アールあたりのコメの収益はどのくらいか、ご存じでしょうか? 

分かるわけないよね(笑)。答えは、「新規就農ガイドブック」によれば、平均的な1反当たりの売り上げは14万2000円ていどです
http://www.pref.okayama.jp/soshiki/detail.html?lif_id=10456 

ここから、生産コストを引くと、おおよそ5万3000円程度となります。もちろん年に1回の収穫ですから、これがコメの10アールあたりの年間所得となります。 

5万3000円しか所得にならないものに、2倍の最大10万5000円くれるというのですから、ウハウハです。 

しかも、補助金は、そこから生産コストを引かねばならない売り上げ額と違って真水です。これが丸々貰えちゃうんだから、豪気なもんだよな、お国は。 

ただし、この法外な補助金が、農水省のお役人さんのポケットマネーから出ているならの話、ですが。 

だから、兼業農家を先頭にこぞってエサ米に転換を開始したのは事実です。 

エサ米がどんなに馬鹿げた制度設計かわかりましたでしょうか。こんなことは一般の民間企業なら絶対にやりません。 

まぁ、考えるまでもないでしょうが、こんな逆ザヤをやったら、一瞬で潰れるからです。 

つまり、エサ米は、農業の市場原理から大きく逸脱した制度なのです。ここが根本問題です。 

私の友人の農家は、数十ヘクタールの水田を耕作している大規模農家ですが、エサ米と聞くとふふん鼻先で笑ってこう言ってのけました。 

「あんなものを作るようになっては、農家は補助金乞食になる。あれは農業とは呼ばない。いかにうまいコメを作るか、日々研究しているオレたちに無礼だろう」 

Photo_3(写真 米国のエサ用トウモロコシ畑)

一方、畜産農家の立場で考えてみましょう。今の日本の飼料の8割以上は輸入に頼っているのがは現実です。
 

その輸入飼料の大部分は、トウモロコシです。 

日本では夏の風物詩ですが、輸出先の米国や南米では家畜のエサです。トウモロコシ自体の品種が、そのまま食べても食えたものじゃない飼料用トウモロコシだからです。 

米国では、トウモロコシを自動車用エタノール(バイオエタノール・略してバイエタ)にして、燃やすというバチあたりなことをしています。 これを「燃料生産農業」と呼びます。

このバイエタが飼料を圧迫する原因にまで成長して、今や米国では社会問題にまでなっています。 

Photo_2
上図を見るとバイエタの価格が上昇すると、連動してレギュラーガソリンの価格も上昇するのがわかります。このように、ガソリン価格とバイエタは比例関係にあります。

そしてトウモロコシの価格動向と、 他の穀物の大豆、小麦、コメなどの相場も連動しています。 

Photo_4(図 九州大学大学院農学研究院伊東正一教授による)

トウモロコシばかりではなく他の飼料用作物も含む国際穀物相場全体が、原油高騰と並行して上昇していくのがわかります。(上図参照)

つまり、ちょうど玉突きのようにして、原油価格高騰⇒バイエタ価格上昇⇒トウモロコシ価格上昇⇒小麦、大豆価格の作付け拡大⇒穀物相場全体の高騰、という負のスパイラルを辿っているわけです。 

そしてこのバイエタは、今や食糧生産を凌ぎつつある勢いです。

Photo_5

http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/05/73945.html

これが世界の食料事情に悪影響を与え、トウモロコシを餌とする先進国の畜産価格、小麦などの高騰をもたらし、そしてもっともそのしわ寄せを喰ったのが貧困国でした。

先進国の燃料生産農業が、発展途上国の人から食糧を取り上げたのです。 

今や多くの難民を出しているチュニジア、エジプトなどの背景には、この穀物相場の上昇があるのです。 

上図のグラフには、飼料用を減らして、バイエタに回されている状況がはっきり現れています。

残念ながら、このバイエタは欧州まで巻き込んだ大きな流れに成長し、肥大化する一方です。しかもブラックジョークのように、そのお題目は「エコ農業」ときています。

飢餓と難民を生み出す原因が、「地球に優しい」ですと! 

「非食料由来の第二世代バイオ燃料が将来は現在の第一世代バイオ燃料にとって代わるとの観測はありますが、米国でもEUでもバイオ燃料の供給目標は第一世代の大幅な生産増に将来第二世代が上乗せされるという前提で設定されていますから、食料由来のバイオ燃料が相当長期にわたって中心になります。「燃料生産農業」は後退しないとみておかなければなりません。世界の農業は新しい局面に入ったのです」(JA総研)
※http://www.jacom.or.jp/archive03/tokusyu/2010/tokusyu100113-7630.html

すいません。バイエタの方角に逸れそうで慌てていますが(笑)、実は日本のエサ米も同じ矛盾を抱えているのです。

日本の畜産は、好むと好まざるとに関わらず、国際的穀物市場の枠組みの中で動いています。
 

ですから、このイビツな国際穀物市場から、一定の自由を勝ち取ろう、という発想自体は間違っていません。 

問題は、それを人間の食糧になるものでやるな、ということです。そんなコトを始めたら、米国のバイエタが辿ったことと同じ道になる、と私は思っています。 

そもそも米国で、トウモロコシからバイエタを取り出すという、クレージーな「燃料生産農業」が始まったきっかけは、トウモロコシの余剰に原因がありました。 

余って泣きっ面のトウモロコシ農家を見て、ブッシュ大統領が農家票の取り込みのために打ち出したのが、「地球にやさしい」(うそこけ)バイエタだったわけです。

Photo

今の日本のエサ米は、ちょうどブッシュ大統領が急に「地球にやさしく」なったのと同じように、「国産飼料自給」という美しい包装紙に包まれていますが、中身は一緒です。

米国ではトウモロコシが余り、日本ではコメが余ったというだけの違いです。

その解決法として、米国は食糧を燃やし、日本は主食のコメを家畜のエサにしようと思いたったというだけの違いがあるだけです。

今から45年前、農水省はこのコメ余りを本質的に解決しようとせずに、作付けを減らす減反政策という彌縫策で解決しようとしました。初めのボタンのかけ違いが始まったのです。

その結果、減反政策によって、40%の水田で稲作が放棄されていきました。

全国の340万ヘクタールの水田のうち、コメの減反政策のためだけで100万ヘクタールを失っています。

実に、全水田の3分の1を、減反政策で潰してしまったことになります。

そのために減反に追い込まれた水源涵養のための谷津田は急速に荒廃し、水害が頻発する原因のひとつになっています。

Photo_6(写真 谷津田)

農水省は、ふた言めには、「コメを守れ。コメの多面的機能に着目しろ」と説教を垂れますが、実際彼らがやってきたのは、日本の水田潰しだったのです。

こうして日本農業を弱くしたツケは、減反にかかる膨大な補助金費用負担として国民が税金で負担しています。

日本のコメ産業は、約2兆円産業といわれていますが、納税者でもある消費者負担は約1兆円にのぼります。

実に半分が減反という名の財政負担で、国民が背負っているわけです。

このような愚かな減反政策は2018年度にはとりあえず終了すると農水省は言っていますが(あたりまえだ)、それに代わる新たな農業政策が見えてこないのが、現状です。

それにしても、こんなエサ米の終わり方を、一体農水はどうするつもりなんでしょうね。

農家以外の国民に対して、日本農業を強くするために財政負担をお願いします、というなら道理が通ります。

しかし、減反を守るためのエサ米などは、農業を弱くするためのお願いにすぎないのです。

※お断り よくやるんですが、改題しました。

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コメント

この分野は疎いので、読んでいて眩暈がしました。

EPRという概念があって。
バイオエタノールの熱量の半分以上は耕作・輸送に使われる石油なんだそうで。
石油が足りないからバイエタ作れと石油を燃やす。一緒に高騰。
世界規模の悲喜劇ですね。

オイル・グレインメジャーやヘッジファンドに貢ぐくらいなら、国内でバラ撒いた方がナンボかマシだったかも知れません。
管理人さんの文章を読む限り、日本はアメリカほど愚かでも強欲でもないように思えます。

原油低迷やチャイナショックとかで相場が落ち着いた今が方針転換のチャンスですね。

油の酒を足して炊いたスペイン米を食べていた我が家でしたが年に数度、全農フェア(日系食品卸で米と野菜を月1販売)で日本米を買ってご馳走としていただきました。
米と蕎麦粉を日本の農家から直接輸入している日系レストランもあり、こういう商売熱心な農家が増えて欲しいです。売り買い双方にリスクがあって大変なのは理解しますけど頑張って欲しい!

エサ米作るなら耕作手間の少なめな蕎麦を作ってソバブームを起こして欲しいと蕎麦好きな私は願うのですが、補償金がそんなに美味しいなら提案自体ナンセンスになってしまいますね。

欧米で寿司以外の和食店が増えています。
ラーメン、居酒屋、焼肉やきとり、ソバ。
この中で欧州現地調達が無理か味が辛い材料は
麺、蕎麦粉、ポン酢や柚子胡椒など特殊スパイス、そして白ネギです。
白ネギは焼き鳥とラーメンに欠かせず中国とも競合せず大量に必要なようでした。日持ちする品種を輸出用に沢山作るとニーズがありそうです。
攻めの農業は品目と輸出先の組み合わせが大事でそのコンサルがJAに出来るなら団体の価値があるのではと思いました。
農水相は海外で食材を開陳してすごいだろー美味しいだろーばかりで外向けにもダメダメな様子です。メッセでタダで配りまくって、すごく美味しいどこで買えますか?日本でしか買えません。って答えて先のフォロー無しですよ。そんなブースは日本だけです。

エサ米って、米粒を濃厚飼料とするってことですか?その時でる稲わらは、稲わらとして利用されるのでしょうか?あるいは、刈り取った稲を藁と米に分けずに飼料として利用(飼料用米)する?
他の地域は分かりませんが、こちらではWCS(ウォ―ルクロップサイロ?)が主流です。反あたり8万くらいの補助金が出ると言うことで、そちらの作付が多くなっています。畜産農家で米も作っている農家なら自家飼料として利用するので何の問題も無い(そうでもないかも)のですが、非畜産農家が作付するには、それを利用する畜産農家との契約が必要らしく、今までは、稲藁として貰っていた部分をWCSとして置き換えて、結果、稲わらが足りずに利用しきれない量のWCSが畜産農家に集まっているところもあります。また、WCSの利用についても、牛に対する影響が今だに不明確な部分が多くて、使い辛いところもあるみたいです。
日本の農業というか農政の根本的な問題は、地理的条件や耕作規模、形態の違う農家(農業)を一つの法律で御すという所ではないでしょう?大消費地に近い関東や広大な土地がある北海道などと、こちらみたいな典型的な中山間地(山間地)の農業が同じはずがないのに、全て同じようにしなければいけないこと、それが全ての間違いのもとではないかと思うのですが。

一宮崎人さん。はい関東におけるエサ米は濃厚飼料として使われています。WCSならまだ精神衛生上いいですよ(笑)。人間の食とバッティングしませんから。

18年度でオシマイだそうで、後、とうするんだと思います。いったん飼料米作った地域のブランド力は落ちますからね。
第一、農家のモチベーションが捨て作りで濡れ手に泡から、元に戻れるかです。

なまじ、TPPが「勝利」してしまったので、私が秘かに期待していた、悪しき豚肉関税制度やコメの高関税が残ってしまいました。やれやれ、喜んでいいものか、なんともかとも。

一宮崎人さんがおっしゃる画一主義は感じます。農地を集積しているやる気のある農家も、兼業も同じ減反率ですから。
水源涵養の谷津田も、平地の改良区も一律です。
ならば、農家はめんどくさい谷津田から捨てます。道理じゃないですか。
農水は農業現場の心理を知りません。農家の心のヒダも知ろうとしません。単なる学歴エリートにすぎません。
そんな連中に「農業政策」をされたら、こちらこそいい迷惑というものです。

ふゆみさん。
そばいいですね。個人的には一日一麺の人間ですので、輸出したらおもしろいかと思います。
ただ、かつて転作奨励でそばをやって、地域JAはそば用の大型コンバインまで勝ったのですが、結局は捨て作りと言って、奨励金目当てで品質が悪くてダメでした。

問われているのは、非常にシンプルなことだと思います。
いいものを作れ、いい金稼げ、知恵絞れです。あと国を信じるなと言いたいところですが、国と鋏は使いようなので、とりあえずはいいことにしましょう。

プーさん。おっしゃるようにバイエタのオフセット効果はインチキ理論です。オフセットって、植物が成長する時のCO2を吸い込むので、燃やしても相殺されるというリクツです。
おっしゃるように嘘っぱちです。耕作・収穫、そして運送にかかる車両やトラクター・コンバインが出す炭酸ガスを意図的に捨象しています。


飼料稲のWCS(Whole Crop Silage)は、和牛繁殖にとっても、あまり歓迎できないとの見方があります。特に、コンバインベーラーなるお高い機械で梱包した奴は、WCSにした際、水分が多く柔らかいためよく食べるんですが、その反面、牛が反芻をしないため、栄養を十分に吸収できず、結果、濃厚飼料代わりに使っていると繁殖障害を引き起こすようです。うちでは、高水分の物は、使ってません。乾燥した藁のような低水分のものであれば、使っています。
基本、牟田に作付された飼料稲の収穫は、困難を極め、泥を含んだ質の悪いWCSも散見されます。第一、カビが、・・・。
現場からは以上です。
因みに、全国で、H27年7月末時点で飼料用米は約42万トン(前年比24万トン増)だそうです。

エサ米は大規模稲作後継までの「つなぎ」という部分と多収米の生産も含めた養鶏などに使うための技術的な研究材料の両方だろうなと感じています。
小規模で養鶏やってるところは今までどおり小米使いますし、経営的には主食米を自力で販路作って売っているところでは補助金入れても割に合わないです。
が、SGSのような籾のままの利用と低コスト多収技術の組み合わせでモチベーション上げてるところもあるようです。もちろん現状は補助金前提での話ですが、将来的には主食用とは違う意味での高品質なエサ米の高効率な生産がまったく不可能とは思えません。

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