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2015年11月19日 (木)

フランス同時多発テロ その4 池内恵氏 テロに対する過剰反応が「効果」となる

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池内恵氏の論考を、一切の私の改変を加えずに、無編集で転載させて頂きます。本文はベタ打ちなので、読みやすくするために改行してあります。

昨日の私の「ジハード」とテロリストについての説明は、間違いとまではいえませんが、ズレていたことを認めます。HN山口氏のご指摘に感謝します。

なお、私は池内氏の以下の部分に影響を受けています。

「こうした全体構造を理解し、テロが起きても騒ぎすぎないのが最も重要な対応だろう。動揺して過剰に反応し、各国の社会に不満を持つ勢力がテロを利用すれば、社会的な対立が生じていく。それがテロの効果であり、狙いであるからだ」(毎日新聞11月15日)

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ここで池内氏が「過剰な反応」というのが、なにを指すのかは明確になっていませんが、おそらくは、フランス極右・国民戦線のような、移民追放運動のようなことだと考えられます。

彼らは、今、すさまじいはかりの勢力拡大をしていて、IS(※)とは別の意味で社会の脅威になりつつあります。
池内氏は「イスラーム国」と表記することを述べていますが、私は承服できないので、このまま当座はISあるいは、「ダーイシュ」と呼ぶことにします。

このような排外主義勢力が、「IS戦争」を口実にして、移民排斥に走り社会的緊張を高めることがありえます。

現に、ドイツではネオナチと見られる者たちが、難民宿泊所を襲撃しています。これは、絶対に避けねばなりません。

日本でもネット界に、類似の主張が発生しています。

私は移民政策を日本がとるべきではないと思っていますが、それと既にある移民社会を攻撃することとは本質的に別次元の問題です。

それはISを喜ばせるだけの利敵行為です。なぜなら、移民社会に巣くうISにとって、迫害と圧迫こそが何よりもの好餌だからです。

ですから、私はその警告も込めて、「イスラームとテロリストは関係がない」と書きました。この表現はイスラーム学的には誤りですので、修正いたします。

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池内氏によれば、ジハード主義に走るテロリストは、イスラーム教そのものと無関係ではなく、イスラームの教義の内部、それも重要な本質的部分から生じています。

つまり、軍事的勝利の後に「平和」が来ると考える教義に由来しているようです。この解釈は、テロを合理化しかねない危うさを孕んでいます。

そして池内氏は、短期的にISを軍事的に追い詰めることに意味があるのか、と問うています。

中東で軍事的に敗北すると、それを欧米社会へのジハード「理念の拡散」で巻き返そうとするために、テロを欧米でさらに拡大することもありえます。

今回の事件は、彼らの作戦能力とネットワークが「拡大と拡散」し、進化した結果だと、池内氏はみています。

その上で、このテロの拡散による動揺こそが、ジハーディストの「狙い」だとしています。

この部分は私の意見とまったく同じです。

私もシリアにおける対IS軍事作戦は意味があるのか、懐疑的です。フランスは、マリやサヘルの軍事介入で手一杯であり、新たな戦線拡大は、国力的に不可能です。

陸上兵力の投入なきシリア領内への空爆は効果も限られている、いわば国民向けのパーフォーマンスです。 

そしてシリアをめぐる周辺各国の利害は、まさに迷路のように錯綜しており、統一した戦線を形成することは不可能に近いでしょう。

これについて池内氏は、フォーサイト(11月17日)において、フランス人研究者オリヴィエ・ロワの論考に対する批評の形を借りてこう述べています。

「同時に、「イスラーム国」もテロの衝撃とは裏腹に領域支配の拡大や維持に限界が明らかであり、アル=カーイダと同様にメディア受けするテロをやるしかなくなっている、という。「イスラーム国」はグローバルなテロを「やる以外になくなっている」というのがロワの視点である。
ロワはフランスの限界を、「イスラーム国」の根絶には不可欠な現地への地上軍の派遣をできないことだという」
 

「イスラエルもアラブ世界の仲間割れやイランとの闘争による諸勢力の疲弊を好都合と見ている。
ロシアもアメリカも「イスラーム国」掃討作戦で犠牲を払うことに気乗り薄だ。こうなると、フランスはいくら拳を振り上げても、実際に「イスラーム国」を掃討する力も同盟者もいないのだ、と突き放す」
 

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念のために申し添えますが、私は報ステの古舘氏の意見には与しません。古舘氏はこう言います。(報ステ11月16日)

「本当にこの残忍なテロで、許すまじきテロを行った。これは、とんでもないことは当然ですけども、一方でですね、有志連合のアメリカの、ロシアの、あるいは、ヨーロッパの一部の、フランスも含まれますが、誤爆によって、無辜の民が殺される。結婚式の車列にドローンによって無人機から爆弾が投下されて、皆殺しの目に遭う。これも、反対側から見ると、テロですよね」

まったく間違っています。これと似た言い方を日本のリベラル派は好みます。 

そしてこの延長上には、「テロリストと話しあえ」という脳味噌が腐ったようなことを言い出す者まで現れる始末です。 

こんな愚かな提案は、フランス政府とIS双方から一顧だにされないでしょう。なぜなら、これはオランドが言うように、まさに「戦争」だからです。 

空爆の限定的性格や、その結果生じた民間人への被害を(これはこれで強く批判されるべきですが)、テロリストと同列に並べること自体が、根本的に錯乱しています。 

今、フランスに必要なことは、残虐なテロを受けた主権国家として、毅然とこれと戦う姿勢と覚悟を明確にすることです。 

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さもなければ、フランスはテロリストの思惑どおり、テロに屈したことになります。 

言い換えれば、フランスが、テロを容認したと同義だと、テロリストには受けとられるメッセージを発したことになります。 

その結果、さらにISのテロネットワークを拡大させ、フランスのみならず、ヨーロッパ全土に無差別テロを飛散させていくでしょう。 

ここで食い止めねばダメなのです。非常事態宣言は、そのフランス国家の覚悟の宣言です。 

しかし、その手段は、見てきたように限定されており、効果のほども定かではありません。 

しかしそうであったとしても、当座、空爆の増強と国内のテロリスト網の掃討しかないというのが、厳しい状況下でのオランドの苦渋に満ちた選択なのです。 

こういった情勢も踏まえて、今後、彼らとの戦いをどう構築するのか考えていくべきでしょう。

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池内恵「個人が連携、『聖戦』拡散」『毎日新聞』朝刊、2015年11月15日

自爆を多用する手法や同時に多くの場所で作戦を実行する能力から、過激派組織「イスラム国」(IS)などグローバルなジハード(聖戦)のイデオロギーに感化された集団によるものである可能性が高い。

ジハードはイスラム教への挑戦者を制圧する戦いとして尊ばれる理念である。イスラム教徒の全員が行っているわけではないが、否定することの難しい重要な教義だ。

ジハードを掲げる勢力はイスラム教の支配に挑戦する「西洋」を敵と捉えるが、政教分離を明確にするフランスは、宗教への挑戦のシンボルと認識されやすい。

また、フランスにはアラブ系のイスラム教徒が多いうえ、シリアやイラクへの空爆にも参加している。彼らが過激化する可能性があり、そのためフランスが標的になりやすくなる。

米軍がISへの攻勢を強める中で、現地に義勇兵として行くよりも、欧米社会を攻撃して対抗する方が有効と考える者が出てきてもおかしくない。

今回の犯行は少なくとも六つの場所でほぼ同時に行われており、作戦能力の高まりが危惧される。

グローバル・ジハードの広がりには二つのメカニズムがある。地理的な拡大と理念への感化による拡散だ。

イラクやシリアでは、ISなどが中央政府と特定の地域や宗派コミュニティーとの関係悪化につけ込む形で組織的に領域支配を拡大した。

しかし、領域支配ができない西欧諸国や比較的安定した中東諸国では、イデオロギーに感化された個人や小集団によるテロを拡散させて、社会に恐怖を与え、存在感を示そうとする。

地理的な拡大がうまくいかなくなると、理念を拡散させて広く支援者を募り状況を打開しようとするため、イラクやシリアの組織が軍事的に劣勢に立たされると、欧米などでテロによる支援の動きが出てきやすい。

拡大と拡散をいわば振り子のように繰り返しながら広がっていく。

信仰心に基づいて個人が自発的に参加することが基本であるため、ISに共鳴する者たちは臨機応変にネットワークを作って作戦を実行する。組織的なつながりを事前に捉え、取り締まるのは難しい。

中東やアフリカから西欧への難民・移民が急増しているが、その中にISへの同調者などがテロを起こすことを目的に紛れ込んでいる可能性がある。

もしそのような人物が犯人に含まれていた場合、西欧の難民・移民政策に決定的な影響を及ぼすかもしれない。

                          ~~~~

」『産経新聞』2015年11月17日朝刊

テロをめぐって今、「拡大」と「拡散」が起きている。

中東では政治的な無秩序状態がいくつも生じ、「イスラム国」をはじめ、ジハード(聖戦)勢力が領域支配を拡大している。そして、そこを拠点にして世界に発信されるイデオロギーに感化され、テロを起こす人々が拡散していくメカニズムができてしまった。

自発的なテロに加わる人物の戦闘能力も上がっている。勧誘されるわけではなく、勝手に中東に赴き、実戦の中で学ぶ者が増えている。中東地域はその軍事訓練の場を提供している。(国際社会は)この混乱を治めなければならない。

ただ、軍事的に対処したり、政治的に追い詰めたりすると、短期的には、ジハード勢力が、自らを圧迫してくる勢力の社会を狙ってテロを起こす方向にいく。テロは基本的には防げないし、特に個人や小組織が自発的に行う分散型のテロは、摘発や予測が難しい。

こうした全体構造を理解し、テロが起きても騒ぎすぎないのが最も重要な対応だろう。動揺して過剰に反応し、各国の社会に不満を持つ勢力がテロを利用すれば、社会的な対立が生じていく。それがテロの効果であり、狙いであるからだ。

日本もテロの対象となり得るが、歴史的に欧米のキリスト教徒、ユダヤ教徒を敵だと認識しているジハード勢力にとって、優先順位は低い。しかし、欧米を中心としたサミットやオリンピックが開かれる際は、一時的に日本も危険になると考えた方がよい。(談)

                     ~~~~~~~~~

上の産経記事に対するフェースブックの補足(※HN山口氏の引用はこれです)

■11月19日フェースブック
https://www.facebook.com/
 

こちらはコメントなので、記者による構成です。私が承認したので私の発言ですが、論理展開や表現はかならずしも全て私のやり方ではありません。

過剰反応が「狙い」というのは、通俗的によく用いられますが、ほぼ当たっているがちょっと違う。

テロにより結果的に過剰反応が「効果」となる。

また、スーリーのような思想家は明示的に「狙って」いますが、大部分のテロリストは過剰反応を意識して狙うというよりは、「そのような大きな戦いであると認識している」といったほうが近いでしょう。

つまり「過剰反応が当然」と考えているということ。そこに乗っかってしまうと彼らの世界観を裏打ちしてしまう。

ただし、ジハードの思想はイスラーム法の基本的な理念として定式化されており、その中では軍事的な勝利、支配の確立が規定されているため、力の問題を抜きにして平和が成り立たないのも事実です。

イスラーム教は非軍事・非暴力による平和主義の宗教ではなく、正しい軍事的な勝利の後に絶対的な平和が訪れるという意味で平和を志向します。...

コーランもハディースもイスラーム法学の権威的書物も読まずに、欧米のキリスト教徒や世俗主義者が自分の価値観に合わせて「イスラーム教はこうあってほしい」「イスラーム教が正しい宗教ならこうあるはずだ」と議論してきた特殊な近代的な解釈(その一部は、欧米化したイスラーム教徒が欧米で議論するときに用いますが、中東の社会では支持者をほとんど持っていません)を用いて、「イスラーム国はイスラームではない」といくら議論しても、欧米側にしか説得力がありません。

                       ~~~~~~~~~ 

■フェースブック11月16日

明日の朝刊に掲載のコメントがもうウェブに出ていた。ジハードの思想と組織論の理論からはいつか起きて当然のことが起きた。

ジハードなんてないとか、起きないはずだとか、テロはフランス社会の世俗主義が原因だといったこれまでの議論は、実際にテロをやる人たちを見れば見当はずれとわかるだろう。 

女性がヒジャーブを学校にかぶってきていけないと言われたからテロをやるわけではない。そのような論争があることと、ジハードによるテロの思想と組織があって実際にフランスを標的として実行することは、かけ離れた別の問題。それを一緒に議論し、原因と結果として意味付けるから認識が歪む。 

フランス社会の問題として世俗主義への反発が一部にあることを研究している人がいるからといって、そういう人はジハードの思想も組織も何も知らないのだから、テロの解明にはほとんど役に立たない。 

極めて限られた学識からの、見当はずれのフランス批判論が少数の学者から流され続け、判断・思考能力の乏しい多数の追随者たち(これも学者先生がたであり、メディアの実力者である)があたかも事実のように伝言ゲームを行うことで、日本の...フランス認識も、イスラーム認識も10年は遅れた。 

しかし潜在的なものが現実化していくことで、世界は見えやすくなる。言いたい人は言い続ければいい。取り上げたいメディアも。 

本当の理念やメカニズムや理解した上で、騒ぎすぎないことを推奨。理念の対立はある。そこから動員できるテロリストは、限られている。

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コメント

年の始めと比べて池内氏の論説がネット上で大拡散される速度も範囲も増したようですね。
氏の言う過剰反応について、
>テロにより結果的に過剰反応が「効果」となる。
私はテロによって聖戦のパワーゲームに巻き込みどちらかにつかなくてはいけないと思わされる、情報収集も全てどっちサイドなのか決める為の行為に変えてしまう効果なのだと考えています。
極右の台頭はOne of themで逆に振れれば古館氏のような発言になり、ムスリム達にも個人の人生の不遇さを悲しむ時に携えたコーランをフィルターのようにして暴力か服従かの対立概念へと導こうと繰り返します。
立ち位置を決めずに日常を楽しんでいる者から順に打ち殺すぞ、という今回のテロで在仏ムスリムが「このテロで殺されたムスリムだっているのよ」とTVで悲しむ姿、「それでも私たちはこれからもコンサートや美術館にいくわ」と語った姿に私は心を動かされました。

池内恵も大忙しでいろんなところで色んなことを言ってる中での表現なんだろうが、氏のこの言い方だと
「今のやり方では効果がない/逆効果」
→だから今後の軍事行動は抑制的であるべきだ
→だから今は汚い握手をしてでも有効な攻撃を加えられる布陣を敷くべきだ
と、正反対の意見に立つ両者が両者ともにウンウンと頷きかねない観はある。

移民n世の被抑圧感情に訴えるファナティックで抽象的なジハーディズムは、それ自体は幽霊のようなものであり直接押さえつけることは不可能だが、
米露の足の引っ張りあいの隙間に存立するIS支配地域が実体として存続していなければ、幽霊もまた存続できない。

かつての赤軍テロも、労働者の祖国だの地上の楽園だのというモノが「現にある」と思えばこそ、彼らは空疎なイデオロギーにリアリティを持って没入できた。
また、サティアンが取り壊されてのち、オウム信者が個々に先鋭化の度を増して社会のあちこちに潜みハルマゲドン完遂を目指す などという動きは起きなかったし起き得なかった。

力をもって元栓を閉めなきゃダメなのは間違いなく、しかし問題はその締め方の技術論なので、具体的なそれはイスラーム学者の任ではない。

難波さん、同意します。
あと、池内氏は学界でない一般向けの記述を模索中だと感じます。素人に意味が分かるようになってきた分、読み手が引っ張られすぎないように意識が必要です。彼の意図でなく、自分の無意識の思い込みにです。読み手がそれに気付き、また現状を鑑みるのもリテラシーです。

>ふゆみ
仰る通り、受けとる側の問題なのは確かですね。
めいめい勝手な思い入れを付託する対象として、この夏、憲法学者がアツい視線を浴びたのを思い出します(w

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