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2015年11月30日 (月)

ロシア機撃墜事件を読む

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トルコ空軍のF-16が11月24日、シリア北部のトルコ国境で、ロシア軍の戦闘爆撃機Su-24を撃墜する事件が発生しました。 

これで、一旦はできかかったIS包囲網の行方がまったく見えなくなりました。 

ISという共通の敵を相手にして、新冷戦が緩和するという見方が出た直後のことです。 

メディアのなかには再びかつてのような露土戦争が勃発するのではないか、とすら言い出す所も出る始末です。

もちろん、ありえません。

それは、このブログでも再三論じてきたように、トルコが有力なNATO加盟国だからです。

NATOは集団安保体制ですので、トルコが単独でロシアと戦端を開く権限を与えられていません。

今回の撃墜事件は、あくまでも国境侵犯事例だから、トルコの独自判断ができただけであって、全面戦争にエスカレーションするには、NATO理事会での判断を待たねばなりません。

あたりまえですが、NATOがそんなことを許すはずもない以上、露土戦争などは起こりようがありません。

今、こんな馬鹿を言って煽る人がいたら、その人は安保法制審議の時に真面目に集団的自衛権を勉強しなかった人だと思って下さい。 

「戦争法案ハンタ~イ」などといっていた人たちは、集団的自衛権を「日本が自由に戦争することができる権利を与えられた」などとバカを言っていますが、違います。

正反対に、今回のトルコのように、日本が単独で戦端を開く権限がなくなったのです。

NATOは加盟国に対して、個別的自衛権を認めていません。

ですから、トルコがNATOに加盟していなければ、あるいは戦争に拡大する可能性もなしといえませんが、集団安全保障体制下では、トルコ側からの戦争などは起こり得ないのです。

また逆もまた真なりです。

ロシア側からすれば、プーチンがブチ切れてトルコを攻撃した場合、これはトルコに対する侵略行為としてみなされて、NATO全加盟国軍を相手にすることになりますから、血迷ってもそんなヤバイ橋は渡らないでしょう。

シールズの皆さん、こういう具体的事例に即して、安全保障問題を考えましょうね。集団的自衛権=戦争、個別的自衛権=平和なんてほど、世の中は単純じゃないんですよ。

安全保障問題はクソリアリズムの世界ですから、きみらのように観念的に考えていてはダメなんです。

さて、先行きですが、正直言って、私にもよくわかりません。今の状況で、「見通しはスッキリ」と言うほうが不誠実ではないでしょうか。 

状況が複雑であればあるほど、事実の断片をパズルのようにつなぎ合わせていくしかありません。 

まずは、撃墜された場所を確認しておきましょう。非常に微妙な場所にあることがわかるはずです。 

Photo上の地図はBBCのものですが、シリア領内に突き出した地点で、このような地形を地峡と呼びます。 

トルコ軍機が攻撃した地点は、トルコ領内で、落ちた場所はシリア領ラタキアです。パイロットは脱出しましたが、1名が死亡しました。 

「ロシア国防省などによると、24日に撃墜されたロシア軍機の乗員1人は緊急脱出後にパラシュートで降下中、反体制派の銃撃を受け死亡。もう1人は25日未明、アサド政権側に救出された」(時事11月24日)

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 下図はトルコ側が発表したレーダー航跡図です。赤線がロシア軍機ですが、この地峡を横断しているのがわかります。 

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 ただし、高速のジェット機ですから、侵犯は瞬時だったはずで、ロシア側パイロットには侵犯した自覚は乏しかったと思われます。 

「ロシアのプーチン大統領は同日、トルコのF16戦闘機に撃墜されたことを認めた上で領空侵犯を否定し、「テロの共犯者による背後からの攻撃で(ロシア兵の命が)失われた」とトルコを強く批判した」(朝日新聞11月24日)

プーチンが好きな柔道と違って、航空戦はレスリングよろしく後ろを取り合うのが古今東西の常道です。空対空ミサイルも後ろから発射するものです。 

プーチンは「トルコ側が卑怯にも落した」と言いたいようですが、こんなデリケートな時期にこういう煽ったような言い方はしないほうがいいでしょう。 

このプーチンの悔しそうな言い方の裏には、認めたくはないがトルコ領を侵犯したことが逃げられない事実だからのようです。 

私は、ロシア側は否定しているようですが、ロシア機が領土侵犯したのはほぼ確実だと思っています。 

ただし一瞬です。おそらくは数分の合間の出来事だったことでしょう。 

ロイター(11月24日)はこう伝えています。

「英国が拠点のシリア人権監視団によると、軍用機が撃墜されたのはシリア北部ラタキアに近いトルコとの国境地帯。トルコ側の説明によると、同国軍のF16戦闘機が、国境に接近した軍用機に対し、5分間で10回の警告を行った後、撃墜した。この軍用機が領空侵犯をしていたかどうかについては言及していない」 

トルコは、再三にわたる国際無線チャンネルによる警告を発したとして、その録音も提出しています。 

ロシア側は、この撃墜されたSu-24から脱出したパイロットのうちもう一名が、トルクメン系のゲリラに殺害されたとされたと発表し、ゲリラ側もそれを認めています。 

Photo_8(写真 救出された救難ヘリの乗員とされる映像。後ろ向きであるのは、ゲリラの報復を恐れるためだとされている)

また、この撃墜事件には続きがあって、乗員の捜索にあたっていたロシア軍のヘリコプターまでもがシリア反体制派によるとみられる攻撃を受けて損傷し、アサド政府軍支配地域に不時着し、乗員1人が死亡したと言われています。 

ただし、こちらの救難ヘリのパイロットは救助されています。

その救助に当たって、ロシア軍の航空機と情報支援の下、イランのスレイマニ将軍に率いられたシリア特殊部隊とヒズボラが共同作戦をしたという情報を、ロシアのサイト『スプートニク』が伝えています。 

これはあまり日本では注目されていないようなので、原文を掲載しておきます。
※http://sputniknews.com/middleeast/20151128/1030912844/qasem-soleimani-IRGC-syria-su-24-pilot.html#ixzz3snAUygYB 

The pilot of the downed Russian Su-24 bomber was saved in a joint rescue operation supervised by the commander of Iran's elite Quds Force of the Guardians of the Islamic Revolution, Major General Qasem Soleimani.
The joint team was receiving extremely detailed intelligence information on everything surrounding them, even the movement of ants located hundreds of meters away, Emad Abshenas noted, citing the Syrian officer. In addition to saving Konstantin Murahtin, they also eliminated all terrorists in the area.
The timing of the operation was perfect but luck played a certain part in its success.

の情報を紹介した佐藤正久氏は、「日頃の連携無しには無理 」と評して、日常的にシリア領内のイラン軍と、ロシア軍が共同していることを示唆しています。 

改めて露呈したのは、シリア内戦にイランのヒズボラや、革命防衛隊が大量に参戦しており、それらがロシア軍の公然たる支援の下に、アサド政権と一体となって軍事活動をしていることです。

今までも噂されていましたが、軍事作戦まで共同していることがわかったのは初めてのことです。 

Photo_5
上の写真は、同じ『スプートニク』(11月27日)に掲載された、プーチンのイラン訪問の模様です。
※http://jp.sputniknews.com/politics/20151127/1234822.html 

「第三点として指摘したいのは、イランとロシアが、シリア危機調整の枠内での協同行動継続について、その意志を確認した事だ。ロシアもイランも、この問題を平和的手段によって解決し、国際テロ組織との戦いにおける努力を調整する考えである」(スプートニク) 

ところでロシア軍機の爆撃は、対ISではなく、アサド政権に抵抗する自由シリア軍や、トルクメン人ゲリラだったことは知られていました。 

このロシア軍パイロットを殺害したとされるのは、「スルタン・アブドゥル・ハミド旅団」という名の2012年に結成されたトルクメン・ゲリラ集団の中の一派だと見られています。
※http://blog.goo.ne.jp/aya-fs710/e/56cb16c0a92c375139ce8a74780dc81cよる。

Photo_3(写真 トルコ系トルクメン人ゲリラのスルタン・アブドゥル・ハミド旅団だと言われている画像)

トルクメン人は、名前のとおりトルコ人種ですから、トルコは公然と彼らを支援してきました。 

Photo_6(写真 トルコ・エルドアン大統領)

 実は、トルコにとってシリアにおける主敵は、長年に渡ってアサド政権でした。 

トルコは、アサドの横暴な統治や、シリア国民に対する毒ガス攻撃などを最も強く批判した国です。 

トルコが、ISに対して融和的だと国際社会から批判されたのも、裏を返せば、ISよりアサドのほうがより大きな敵だと判断していて、ISがアサド政権の力を削いでくれることに期待していたからです。 

トルコは、IS「領土」への国境管理を甘くして物資の補給を認めたり、石油の不正密売などを黙認した結果、いまやISは手に負えないモンスターにまで成長してしまいました。 

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一方ロシアは真逆に、アサド政権断固支持派でした。ソ連時代からのよしみである上に、中東の親ロシア勢力は、いまやアサド政権ていどしか残っていないからです。 

ロシアは、アサド政権に大量の武器弾薬を与え、それを使ってアサド政権は、米国の息のかかった自由シリア軍や、トルコが応援するトルクメンゲリラに容赦ない攻撃を続けてきたわけです。

これに対して、トルコは再三に渡ってロシア大使を呼んで抗議していましたが、カエルの面になんとやらで、ロシア軍は平然とISではなく、トルコ系住民の爆撃を継続していたようです。

このへんが、ロシアという国の嫌らしさというか、コヅラ憎いところです。

ちなみにトルコも、IS掃討と称して、クルド族を攻撃していましたので、他人のことは言える義理ではありませんが。

またトルコには、16世紀から17世紀にかけて戦争を繰り返し、クリミア半島や黒海周辺を根こそぎロシアに奪われた歴史的遺恨があります。

たぶん、トルコ人がもっとも嫌いな国はまちがいなくロシアでしょう。(逆にいちばん好きな国は日本ですが)

しかし、エルドアン氏の公正発展党(AKP)は、歴史的な遺恨よりも経済的実利を優先させる外交政策をとって、ロシア人観光客招致や貿易に力を注いできました。

そのような中でのこの事件です。いかに実利優先のエルドアンにしても、今回のロシア軍機撃墜は、堪忍袋の緒が切れたというところでしょう。 

それはさておき、このロシアのシリア方針もまた、ISの拡大に大きく手を貸しました。 

したがって、トルコとロシアは立場こそ反対ながら、ISを成長させた陰の主役である点はどっちもどっちもという側面があります。

この状況に異変があったのは、10月31日に起きたシナイ半島上空のロシア旅客機爆破テロでした。

「ロシア連邦保安局(FSB)のボルトニコフ長官は17日、10月31日にエジプト東部のシナイ半島で起きたロシア機の墜落について「間違いなくテロだった」と断定した。残骸の調査の結果、最大でTNT火薬1キロ相当の手製の爆発物が機体に積まれていたことが分かったという。
 ボルトニコフ氏から報告を受けた
プーチン大統領は、「地球のどこにいようと彼らを見つけ、処罰する」と容疑者の逮捕に強い決意を表明」(朝日11月17日)

ロシアは、パリ同時爆破テロを受けて、方針を変更して、今までまったくやる気のなかったIS攻撃を開始します。

オランド仏大統領の仲介もあって、米主導の有志連合+ロシアとの共闘関係ができかかったそのとたんを狙ったように、このロシア軍機の撃墜事件が起きてしまったというわけです。

えてして起きてはならない事件は、起きてはならない時期に起きてしまうもののようです。

ISの哄笑が聞こえてくるようです

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コメント

アメリカも反アサドで実質はISに流れる武器を意図的に流していたとか、
アサド政権側のブローカーがISから石油買っていたとかという情報も流れていますね。
なんとももうカオスです。
一昨年あたりにはシリア軍も弾薬尽きて「樽爆弾」を手で投下していたのに、未だに継戦能力があるようですし…。

露土戦争、勃発したら、えーっとこれでラウンド13になるのか。何百年やってんだよ!なんて私みたいなのが冗談で言ってるならともかく、学者やマスコミの方が言ってるのなら余りにも浅はかですね。

トルコが、国境を南に5マイル、勝手にい、中立地帯にして移動しました。ロシアSU-24は、あくまで、従来の、国境内を飛行しており、領空侵犯ではないと言っています。エルドガンは、ISISの「盗掘原油」を売りさばき、莫大な利益を上げてきました。毎日、何万台もの、タンクローリの車列が、ロシアの軍事衛星から、撮影されています。

名無し氏へ。HNは必須です。よろしくお願いします。
返事は記事のほうでします。

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