沖縄の政治が秋冬に動くわけ
沖縄の政治は秋冬に動くと言われます。なぜなら、その時期が予算編成期に当たっておりで、翌年の振興予算が決定される時期だからです。
2013年1月8日、仲井真前知事は東京を訪れ、安倍首相と面会しています。
ついその前の月の12月26日に、安倍氏は劇的復活を遂げていますから、まだ戦塵さめやらぬといった時期でした。
表敬訪問の表向きのメニューは、那覇空港第2滑走路増設のテンポを7年から5年へと早めてほしいということと、そして振興予算3045億の満額要求でした。
政府はただちに対応し、わずか4日後に、山本一太沖縄担当相が沖縄を訪沖して、仲井真氏の申し出を受ける意志を表明しています。
(写真 東京銀座デモ。歳末の街に「沖縄差別をするな」が響く異様なものとなった。左から4人目のクリーム色のジャンパー姿が翁長氏)
一方、翁長氏はまったく同時期に、反仲井真クーデター計画の準備にとりかかっていました。
1月27日。翁長氏は県内41市町村の首長と議員、そして後にかれの支持母体になっていく自治労、沖教組たちを従えて、東京銀座でオスプレイ配備反対デモをします。
この時、東京のど真ん中で翁長氏が大見得を切ったセリフが、「沖縄差別をやめろ!」でした。
オスプレイ配備を、強引に「沖縄差別」に接着することで、根本的に考えが異なる左翼陣営を取り込んだ「オール沖縄」の構図がこの時に完成したのです。
この翁長デモに対しての官邸の答えは、わずか2日後の29日に出されます。
これが、沖縄振興予算案を3001億円、那覇第2滑走路事業の工期を5年10か月に短縮し、事業費を80億円増額し1980億円とする、という閣議決定でした。
受けた仲井真氏は「大変に厳しい財政状況の中で、本県の要望に配慮がなされたものと感謝する」と謝意を表明しています。
そして1週間も立たぬ2月2日。今度は訪沖した安倍首相との会談で、仲井真氏は首相に「米国との合意の中で進めたい」と表明します。
地元2紙が、激烈な反仲井真キャンペーンを開始したのがこの時期からです。
仲井真氏の容認以降のバッシングに動揺していた党県連の国会議員もまた、間近に迫った総選挙に、激しく動揺していました。
彼らの多くは保守としての矜持も投げ捨てて、自分の首の心配をしたのです。
離党もせずに、党の方針と違うことを平然と主張するのですから、自民党県連の信用は地に落ちたというべきです。
この時期、沖縄は既に翌2014年1月の名護市長選に向けて走り出していました。
那覇市議自民党団を中心とする「新風会」、別名翁長党は、現地名護に飛んで保守票を切り崩しに奔走します。
ようやく危機感をもった石破幹事長が、東京に県の国会議員たちを呼んで、タガを締めたのが11月23日のことです。
(写真 11月25日。自民党本部に呼び出された県国会議員団)
そして、その年のクリスマス。仲井真氏と会談した首相は、沖縄県の要求を上回る3000億円台の振興予算を確保することを伝えます。
この時、慎重な仲井真氏らしくもなくつい口にした、「いい正月を迎えられる」という言葉が起爆剤になり、「島を金で売った男」という嵐のような怒号が、知事を包むことになります。
そして、仲井真知事は12月27日、正式に埋め立てを承認することを表明しました。
(https://www.youtube.com/watch?v=V2QdbWG1JcA)
そして、朝日新聞アエラが「琉球王」と讃えた翁長王にも、またこの予算編成期が回ってきました。
宜野湾市と、名護市が同時に動き始めました。
まずは宜野湾市です。
「【宜野湾】宜野湾市議会(大城政利議長)は13日午前、臨時議会を開き、米軍普天間飛行場の早期返還とオスプレイ移駐、夜間や住宅地上空旋回などの訓練中止を求める決議を全会一致で可決した」(沖タイ11月13日)
普天間基地がある宜野湾が、早期返還要求をしていることに対して、受ける名護市からはこのような動きが出ました。
「沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、同市議会の保守系2会派(計11人)は11日、沖縄を除く全国779市議会と東京23区議会の全議長あてに、辺野古移設の早期実現などを求める意見書を採択するよう陳情する書面を送付した。
陳情書では「辺野古移設は、市街地にある普天間飛行場の危険性除去が原点」「移設工事を着実に進めていくことが重要」と説明。同封した意見書案には「翁長雄志知事は対案もなく普天間飛行場の撤去を求めており、現実的ではない」などと記載されている。
11人の代表で、辺野古区を地盤とする宮城安秀議員は「(地域振興などの)条件付きで容認している辺野古区の実情を全国の人に知ってほしい」と話した」(沖タイ11月12日)
振興予算をめぐる秋冬の陣は、今始まったばかりです。
辺野古区選出の宮城安秀議員などが、どこでまで真の「地元の声」を翁長知事に叩きつけられるか、来年1月に控える宜野湾市長選に向けて、宜野湾市が「基地撤去促進」をどこまで貫けるか、しっかりと注目していかねばなりません。
■お断り 長かったので後半を日曜日に分割掲載しました。すいません、足したり引いたり(汗)。
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毎日の更新、御苦労さまです。
那覇市と名護市を除く保守系市長の会も立ち上がっていますし、名護市議会の保守会派の動きなどからも、移設容認派がもの言う雰囲気が出てきているように感じます。明日15日(日)13時に宜野湾市民会館前で「琉球新報・沖縄タイムス宛 公平な報道を求めるデモ」が開催されるとのことです。いよいよ潮目が変わってきたのでしょうか。
保守系議員の方々には振興策は基地とリンクしない等と奥歯に物がはさまったようなことではなく、堂々と普天間の危険性除去のための現在のプロセスの正当性、それに伴う振興費の必要性を主張してもらいたいです。
こんな本が出版されています。
「県民目線 「沖縄」告発 「翁長知事と沖縄メディア」30日発売」
http://www.yaeyama-nippo.com/2015/11/13/県民目線-沖縄-告発-翁長知事と沖縄メディア-30日発売/
八重山日報の記者ですね。沖縄二紙が絶対に書かないような内容が満載されていそうです。
投稿: クラッシャー | 2015年11月14日 (土) 15時56分
宜野湾市長選挙は来年の1月、ピークに行われる訳ですね。
この保守派の巻き返しが市民に支持される事を願います。
投稿: ふゆみ | 2015年11月14日 (土) 20時48分
こうして翁長氏の行動の歩みを振り返って見ますと、長い年月をかけて知事の座を得る機会をねらい、飽く事なく漸進的に仕込んで来た事が理解できますね。
有能な官僚政治家である仲井眞さんと違い、ある種の「強さ」すら感じます。
翁長という人は自民党的寝技師のように言われますが、少し違うように思います。
また、沖縄の政治家は伝統的に自己の判断を右顧左眄させるクセみたいなものがありますが、その内実や動機は案外に素直なものでした。
しかし、それらより翁長氏の政治(政争)のセンスは中国の伝統的なそれに非常に近いと思いますね。
知事戦に打って出るまで完全な「木鶏」たり得たわけではありませんが、それまでは仲井眞氏を強く押すことで自己の野望を美しく隠しました。「養光韜晦」ですね。
さらに「欺き」や「裏切り」は天の意思であって、その天をも「満天過海」(天を欺きて海を渡る)とするのが英雄とされています。
日本国には二階俊博さんのように、中国の為政者に心酔し中国の故事を大事に矜持として政治をする人は多くいますが、ここまで骨がらみな政治家は翁長だけでしょう。
なぜならば、知事として日本の統治機構を認めていないのではないか、あるいは法治というものを軽んじているのではないか、と思えるからです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2015年11月14日 (土) 20時49分