「オール大阪」の自爆
自民府連が共産党と「共闘」して、シールズの支援まで受けたあげく、自爆しましたね。
「任期満了に伴う大阪府知事と大阪市長のダブル選が22日投開票され、知事選は地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)公認で現職の松井一郎氏(51)が再選、市長選は同会公認の新人で前衆院議員の吉村洋文氏(40)が初当選を果たした。
いずれも自民党推薦候補を大差で破った」(時事11月22日)
■大阪府知事選挙
松井一郎(大維・現)当選、202万5387票
栗原貴子(無・新)105万1174票
美馬幸則(無・新)8万4762票
■大阪市長選挙
吉村洋文(大維・新)当選、59万6045票
柳本顕(無・新)40万6595票
中川暢三(無・新)3万5019票
高尾英尚(無・新)1万8807票
はっきり言って、大阪府民からすれば、自民と共産の「共闘」なにが「オール大阪」や、馬鹿にするのもいいかげんにしなはれや、というところだったのでしょうね。
マスコミは「自民完敗」と書き立てるでしょうが、違うと思います。
ボロ負けしてのは、自民党そのものではなく、「オール大阪」で野合した自民府連と共産党です。
下のチラシは、反橋下陣営が作ったものです。
こんなチラシをバラ撒き、内閣参与のはずの藤井聡氏までが辞職することなく赤旗に飛び出すようなふるまいが、この「オール大阪」の敗因を物語っています。
理由はシンプルです。
ひとつは、「オール大阪」という、自民党府連と共産党という本来まったく異なる主義主張の政党が、「橋下憎し」の一点でくっついた場合、言えることは「橋下のバカヤロー」ていどでしかないからです。
自民党と共産党は仲良く批判は合唱できても、それしか内容がないのです。
似たような「オール沖縄」の御輿に載った、沖縄県翁長氏をみてみましょう。
先日も引用しましたが、沖縄県前知事公室の吉川由紀枝氏はこう述べています。
※http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20150514/281135/
「翁長知事は2014年11月の県知事選で圧勝したが、その基盤は盤石というわけではない。『オール沖縄』を標榜して当選しただけに、知事自身の可動範囲は、全基地閉鎖から基地容認まで様々ある沖縄の意見の最小公約数に狭められている」
「〇〇反対」という最小公約数(※)で当選した場合、その政治的選択肢は、おのずと最小の幅に狭められます。 ※数学的には最小公約数は意味がないので、比喩的表現です。コメント参照。
そりゃそうでしょう。自民党と共産党の一致点など、「橋下憎し」だけの一点しかないからです。 最終日の訴えです。
な、なんと自民府連推薦の柳本候補の回りには、シールズの坊ちゃん、嬢ちゃんたちが!(絶句)
選挙期間中もこの調子。自民党の街宣車と、共産党の街宣車がともに同じ候補を応援するという異常な風景。
これで気持ちが悪くならなければ、そのほうが異常です。
(写真 大阪選挙風景。自民党と共産党の街宣車が仲良く並ぶ。普通は対立候補だが、なんと今回は「共闘」だそうである)
自民府連は、わけのわからない第3勢力の旧維新如きに、政権をとられたことが憎くてたまらなす、大人になって橋下氏に協力する道もあったのに、オール反対という野党になってしまいました。
この怨念だけが、今回の自民府連の政治的動機です。バッカじゃなかろかと思います。
一方共産党は、沖縄で味をしめた、保守層を切り崩して「オール〇〇」を作れば選挙に勝てるという実証実験を、もう一回大都市大阪で再現テストしたかったのです。
大阪自民は醜態の極で、もうとうぶん浮上はムリでしょう。おそらく府連会長は官邸でこってりと菅氏に叱られて、解体的出直しを命じられるはずです。
自民府連が「橋下憎し」の怨念だけがバネなのに対して、共産党はもっと冷徹な政治的打算から選んだ選挙戦術でした。
先だって、「山本タローと小沢一郎の政治生活を守るための仲間たち」、いや違った「生活なんじゃらの党」の小沢氏と、共産党の志位氏が参院選で選挙協力をすると言い出しました。
共産党は、一説で1選挙区2万票と言われる鉄板の固定票を、「オール反アベ」候補に差し出すと言い出せば、小沢氏も一回枯れた「オリーブの木」構想が蘇ると考えているようです。
もう引退かと思われていた小沢氏は、「オリーブの木」に、民主党の岡田・枝野両氏を乗せさえすれば、憎っくきアベにもう一泡吹かせられると考えているようです。
やれやれ、いつまでたっても生臭い人だと思いますが、小沢氏と志位氏は、議員の同期だったこともあって、安保法制反対で妙に蜜月となりました。
とうとう、国会前で岡田氏、志位氏と手を組んでイチビるところまでなったわけですが、上の写真でどの党首たちも考えたのが、「これって選挙に使えねぇかな」というスケベ心でした。
政治家という生き物にとって、使えるものはなんでも使うのが性なのです。
特に、この構図にピンっときたのが「選挙に勝つ」だけが生きがいの小沢氏でした。
小沢氏は、今まで手つかずでいた共産党1選挙区2万票がゲットできれば、「オール反アベ」が勝利して、自分の「生活」もひとりくらい閣僚に送り込めるのではないかと閃いたのです。
一方、共産党の志位氏も、「連帯を求めて孤立を恐れず」路線が行き詰まっていることはかねてからの悩みの種でした。
いままで選挙区で、死に票の山を築いてきたわけですが、これでは党内が持ちません。
立候補させられる党員は、選挙費用を捻出するためにスッカラカンになって、赤貧生活に転落するというのがお定まりのパターンでした。
ですから、国政選挙のご指名からだけは逃れたいというのが、偽らざる党員諸氏の願いだったわけです。
これが変化したのが、09年の総選挙でした。民主に風が吹いていることを悟った志位氏は、思い切った賭に出ます。
いままでまんべんなく全選挙区に立てていた党員候補を、民主党候補が勝ちそうな選挙区だけは下げたのです。
効果は絶大。
このような、共産党の非公式の選挙協力の結果、民主党にとって公明党のような役割を果たしたのです。
結果はご承知のとおりです。
その時の民主党の選挙の指揮を執ったのが、他ならぬ小沢氏でした。
あの夢よもう一度という思いが、国会前で小沢氏と志位氏の胸に同時にフツフツと湧いたのは、当然すぎるほど当然でした。
安保法制反対で復活した小沢-志位コンビは、さっそく8月の岩手知事選に、この「オール反アベ」戦術を使ってみます。
結果はご承知のように、民主、共産、維新、生活の野党協力が成功して、自民は対立候補すら立てることができず、惨敗しました。
(赤旗9月29日 http://ameblo.jp/takumiuna/entry-12078479492.html
そして、本命の来年、参院選で「オール反アベ」を作ろうとしたのが、この間の共産党が言い出して、岡田氏が前のめりになっている「国民連合政府」構想です。
今回、大阪で「反橋下・オール大阪」勢力が勝利した場合、民主党はこの「国民連合構想」に乗ってきたことでしょう。
しかし、この「国民連合政府」構想は、大阪の敗北で、足踏みとなりました。
もしこの構想が成功した場合、共産党、社民党まで含んだ連合政府になるはずです。
悪夢ですね。
そんな憎悪の対象や、反対する政策が一致するからというだけの理由で政権を作ってみても、政策選択の幅が極端に狭いために、かつての民主党政権のようになることは目に見えているからです。
というわけで、私は特に橋下氏を好きでもキライでもありませんが、このような「オール大阪」が勝たなかったことだけは、心から祝福します。
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コメント
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「最小公約数」って、ありますの?
投稿: 疑問 | 2015年11月23日 (月) 06時13分
NN疑問さん。いちおうあります。
※http://www.tt.rim.or.jp/~rudyard/torii018.html
「最小公約数」とは文字通り解釈すれば、「公約数」の中で一番小さいもののことです。
「8」と「12」の最小公約数は、「1」「2」「4」の中で一番小さいもの、すなわち「1」です。
では、「3」と「7」の最小公約数は?
「1」ですね。
「51246」と「1976842」と「608741053」の最小公約数は、これも「1」です。
したがって、正の整数の世界では「1」は全ての数の約数であり、かつ最小の数ですから、当たり前です。
どんな組み合わせでも、最小公約数は、常に「1」です。
だから「最小公約数」という概念自体、考えるだけ無駄なのです。
記事のテーマでも同じです。
いくら、自民府連が「12345」の独自公約をもっていても、「反橋下」で共産党と組めば、最小公約数は「1」です。
同じく共産党にとっても「12345」という独自公約があっても、自民府連との最小公約数は「1」、つまり「反橋下」だけです。
投稿: 管理人 | 2015年11月23日 (月) 06時55分
沖縄にしろ、大阪にしろ、自民党はもっと統制の取れた政党だと思っていたのですが、なぜ、このようなことになるのでしょうか?
「山本タローと小沢一郎の政治生活を守るための仲間たち」・・・爆笑しました。
投稿: 山口 | 2015年11月23日 (月) 10時15分
昨晩おおさか維新圧勝のニュースに触れ、思わずガッツポーズが出ました。
橋下さんも好きですし、維新も支持はしてますが、
正直、大阪都構想なるものが如何なるものか今ひとつ理解はできていません。
ただ、既得権益にへばりつき、
保身のためならイデオロギーも信念もかなぐり捨てるような輩に
勝って欲しくなかった思いからつい出てしまいました。
安倍さんや管さんは内心ほっとしてるんじゃ無いでしょうか。
最小公倍数という言葉、言い得て妙ですね。
反橋下のタガが外れた瞬感、
あっという間に散り散りバラバラになるんじゃないでしょうか。
しかしそれにしても投票率が低すぎますね。
大阪市民、大阪府民よ、もっとしっかりせんかい!と
元大阪府民としては言いたくなります。
投稿: 右翼も左翼も大嫌い | 2015年11月23日 (月) 12時32分
官邸は大阪維新の勝利で良かったのでしょう。
打倒橋下徹!!
なりふり構わず共産党と組むような府連が選挙民には利権を守ろうとしているだけにしか見えなかったと…投票率も下がりますよ
投稿: 多摩っこ | 2015年11月23日 (月) 15時58分
管理人さま
目の具合はいかがでしょうか?
無理をなさらないように....。
さて、W戦で圧勝した橋下徹氏の最終目的は道州制と伺っています。仮に日本が道州制をとった場合はどの様なメリット・デメリットが考えられますか?おおさか維新は公約で道州制を打ち出してくると思います。来年の国政選挙で議席を増やせば、必ず議論になるかと思います。是非管理人さまの見識を伺いたいです。機会があればよろしくお願いします。
投稿: 美ら海 | 2015年11月24日 (火) 02時17分
美ら海さん。ご心配をおかけしてもうしわけない。ありがとう。
道州制ですか。実にクダラナイと思っています。あんなものは、東京と大阪の知事だった石原氏と橋下氏の勝手な妄想です。
要するに、自分の大都市行政区から、全国に金をバラ撒きたくないというジコチューな真理から始まっています。
あんなものができたしまったら、五大都市がある「州」だけが栄えて、それ以外は落ち込みます。
沖縄みたいな金食い県(失礼)はどうするのでしょうか。
いくつかの区割り案でも難問のようて、鹿児島とひとつにしたり、沖縄だけ特別区にするという案もあるようです。
もし沖縄に特別区などという特例措置を与えれば、県内の糸数のオバーや知念ウシのネェネェみたいな人たちは狂喜するでしょうね。
結局、平成の大合併みたいに、どこの都市を取るのかの争いで決まらないんじゃないでしょうか。
決まらずに、このままフェードしていただきたいもんです。
そのうち書きますね。
投稿: 管理人 | 2015年11月24日 (火) 05時02分
管理人さま
返信ありがとうございます。
確かに沖縄は金食い虫ですね(笑)
そのお金が県民に行き届けば良いのですが....。
今日はお休みですね。でも農業に休みはあるんでしょうか? ゆっくり療養してください。
記事楽しみにしています。
投稿: 美ら海 | 2015年11月25日 (水) 11時09分
共産党は反日政党。それは変わらない。決して日本国民の幸福を願う勢力ではなく、ソ連中国が達成できなかった共産主義社会パラダイスの実現を願う真の目的とする勢力なのです。そのためには武装暴力革命 抵抗勢力抹殺も肯定する人間たちなのです。今は闘争方針をソフトにオブラート化してるだけで本質 党是は変更してはいません。地方政治では身近な生活保全に頑張る議員だけとは思わないように その集大成が人民革命に繋がると信じてるから 鉄の精神性があるのです。騙されてはいけません。実態は恐ろしい極左集団なのですから。
投稿: おかしな時代 | 2015年11月25日 (水) 11時57分
反維新側の敗因は、ズバリ言うと、
「大阪市民と大阪府民に飴を用意できなかったこと」
これに尽きるでしょう。
ああみえて、実は大阪維新は私立高校無償化や中学校給食促進などの教育予算ばらまき政策を展開しているのですよ。
これが公務員の給与削減なんかじゃ到底補えない額でして。
おかげで大阪府は累積赤字が増えて起債許可団体落ちしてしまいましたが。
対立候補は教育政策の見直しを掲げていましたので、ばらまきを期待している側はそりゃ維新に一票するでしょうよ。
こういう事情、皆様はご存知でしたか?
反維新の選挙戦略もまずいけど、沖縄の翁長のケースとは状況はかなり違うかと思いますよ。
投稿: 元大阪府民からの伝言 | 2015年11月25日 (水) 22時37分