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2015年12月16日 (水)

中国大気汚染黙示録 その2

018
中国のアネクドート(政治的小話)をふたつばかりご紹介しましょう。 

習近平政権は、PM2.5の社会階層別予防策を発表した。
貧困層・大根とキクラゲを食べろ
中間層・空気清浄機を買え
富裕層・田舎に所有する別荘に逃げ込め
超富裕層・国を捨ててさっさと移民せよ
政府要人・14億の人民に「一斉に吸い込んでなくしてしまえ」と命じろ。

Photo_2こんなものもあります。 

かつて毛沢東主席は、こう唱えた。
「為人民服務、厚徳載物、自強不息、埋頭苦干、再創輝煌!」
(人民に奉仕せよ、厚い徳は万物を覆う、弛まぬ努力によってのみ自己を強くできる、苦労する仕事に没頭せよ、創造を重ね栄光を掴め!)

現在、習近平主席は、こう唱えている。
「喂人民服霧、厚徳載霧、自強不吸、霾頭苦干、再創灰黄!」
(人民に霧を喰わせろ、厚い徳は霧で覆え、自己を強くするために息を吸うな頭を塵だらけにして苦労せよ、灰や砂塵を次々に創れ!

 わ、はは。このアネクドートの紹介者の近藤大介氏によれば、このツボは、上と下の各21文字の発音が同じことだそうです。普通に発音すると一緒なんですってね。 

Photo_3
北京のPM2.5は、上海にも波及していっそう深刻化していますが、なぜ減らないのでしょうか。

北京市環境保護局の発表によれば、PM2.5の原因はこのようになっています。

・自動車の排気ガス    ・・・31.1%
・暖房用石炭        ・・・22.4%
・工場煤煙          ・・・18.1%
・粉塵             ・・・14.3%
・その他(食堂の排気など)・・・14.1%

Photo_4
自動車は抗日軍事パレードやオリンピックなどのハレの日には、車両ナンバーの末尾が偶数か奇数かで、入市できるとかやっているようですが、皮肉にもこの間のPM2.5騒ぎで自動車を買う人が増えてしまいました。

「2015年12月9日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、米ブルームバーグは、中国で深刻な大気汚染が、皮肉にも消費者の自動車購買意欲を刺激していると報じた。
中国乗用車協会(CPCA)が8日発表した中国国内の11月の自動車販売台数は、前年比約18%増の202万台となり、2月以来最高の伸びを見せた。
CPCAは、販売好調の理由について「11月は近年まれな寒さとなったことに加えて、大気汚染も悪化した。内気循環の自動車内の方が屋外よりも空気が良いからと、子どもがいる世帯を中心に購買意欲が高まっている」と分析している」 (レコードチャイナ2015年12月11日)

北京市民に言わせれば、「歩いて通勤?死ぬ気か。車内がいちばんキレイだ」、というわけです。

そしてまた車は増加し続けるというわけで、もはやお手上げです。

それに中国の自動車購買力こそが、国際市場にとって中国市場の最大の魅力でしたから、外資を呼び込む上でも、そうそう簡単に購買を規制できるはずもありません。

それに、相当部分を占める外車は排ガス対策が施してあります。ま、VWみたいな例外もありますが、中国製とは比較になりません。

問題は車両ではなく、燃料なのです。

中国は改革開放経済を軌道に乗せるために、石油価格を抑制する政策を取りました。

このあたりはやはり輸出依存国の韓国も、ウォン安とエネルギー安誘導という似た国家方針 を持っています。

それが出来るのも、石油企業が国営企業集団だったからです。石油精製製品は、わずか2つの企業集団によって握られている超寡占体制下に置かれています。

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中国天然ガス集団(CNPC・子会社にペトロチャイナ)と、中国石油化工集団(シノペック)のふたつです。

3大石油企業という場合、他に中国海洋石油総公司(CNOOC)もありますが、国内の販売網は上記2社が押えています。

この巨大国営企業集団は、実は政府そのものでもあります。常に、中国政府には「石油閥」と呼ばれるこの2つの国営企業出身の政治家がいます。

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産経中国特派員の矢板明夫氏によれば、石油国有企業はまさに伏魔殿です。

「石油業界は中国の国有部門の大黒柱だ。3大国有石油会社のCNPC、中国石油化工集団公司(シノペックグループ)、中国海洋石油総公司(CNOOCグループ)は、融資を受けやすいことを追い風に、世界最強の多国籍企業と競争できる国内大手の創出と対外投資を目指す中国の取り組みの先頭にいる。
市場調査会社ディールロジックの試算では、中国石油会社は02年以降、海外で約1300億ドルの投資をしている。
ペトロチャイナは07年に一事、時価総額で世界最大の企業となり、12年には米エクソンモービルを抜いて世界最大の原油会社になった。
だが、一部のアナリストによると、中国の石油業界は同国で透明性がもっとも低く、説明責任も果たしていない業界のひとつとみされている。
このために石油会社の幹部らは、大半の多国籍企業には商業的に受け入れられない条件で海外資産を取得できるほか、正体のはっきりしない代理店やサービス会社に発注した契約を通じて、私腹を肥やすことが多い」

事実、新華社報道によると、CNPCの総総理だった周永康は、巨額の汚職をしたとして逮捕されています。

「収賄は職務を利用した一連の事件で周永康は石油政策で直接蒋潔敏から73万1100元(約1千458万円)の金品を受け取る一方、呉兵、丁雪峰、温青山、周灝とそれぞれの関係と立場で便宜を図りこちらの謝礼は夫人の賈暁曄と子息周濱は4人から別々に計約1億2904万元(約25億7千万円)相当を受け取ったとされた」Wikipedia

こんなもんじゃ効かないだろうというのがおおよその見立てで、石油閥が懐に入れた賄賂は、中小国家の予算を軽く越えるといわれています。 

現在、石油閥は、チャイナ・セブンと呼ばれる党中央政治局常務委員7人の一角に、シノペック出身の張高麗氏を送り込んでいます。

ですから、硫黄分の少ない「国4」ガソリン」んてバカ高いコストがつくものを全国販売してたまるか、という石油企業の利害がまかり通ってしまうわけです。

「大気汚染の深刻化に伴い、北京市内各病院の呼吸器科を訪れた患者は20~30%増加。小児病院で内科を受診した患者の50~60%が呼吸器系の疾患によるものだった。

おいおい、国民の健康はどうでもいいのか、と私たちは思いますが、たぶんどうでもいいのでしょうね。

超富裕層は、アネクドートの言うとおり「国を捨ててさっさと移民」していますから。

北京市当局は2020年までに解決すると言っていますが、この巨大独裁国家が構造的に抱え込んだ汚染構造は、政体が変わらない限り永久に解決することは不可能でしょう。

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コメント

それこそ、先日の山形さんの言うように路線バスを充実させれば良いのに。値上げしています。
自動車やガソリンが売れなくなっては儲からぬ、ということですね。
資本主義の悪いところ、というか官民癒着が重大な病根。

石油閥の粛清が進めば改革も進むのか?
それとも北京が砂漠に埋もれるのか?

対岸の火事ではありませんね。

私はかねてより
「中国よ、かつての高度成長時代の日本を『反面教師』として学べ!」
と、言い続けてます!

残念ながらそうはなっていません。歯痒いことです。

東京オリンピックの猛暑は工夫さえすれば何とかなりそうですが北京オリンピックの大気汚染は何とかなるのかどうかってところですね

中国の学習は、「人権や環境に配慮したら経済成長が頓挫する」なんてことになっていそうで怖いです。
古今東西で考えれば内憂外患や砂漠化とか他に大事なこともあると思うのですが。

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