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2015年12月

2015年12月30日 (水)

慰安婦問題は朝日の構造的体質から生れている

Img_0600
とうとうこの年も終わりです。なんなんだ、というくらい一年が短いのに驚かされます。 

ガキの頃には、夏休みが延々とあって、クタクタになるほど遊べて、学校が始まるとヘロヘロになるまで遊んで、子供にとって年間最大のイベントであるクリスマスとお年玉をもらって、また春休みまで精一杯遊んで(おいおい)、ありゃちっとも勉強をしていた記憶がないのはなぜなんだぁ(苦笑)。 

しかし、「象の時間、ネズミの時間」といいますが、実感するなぁ。 

内的時間は歳によって違うのですなぁ。しみじみ。この調子でいくと、たちまちあの世に行っちゃいそうです(笑)。

などと思っていたら、私より先にPCが壊れました。前々からヘンだったのですが、とうとう起動しなくなりました。 

生意気にも、「システム復旧はムリっす」などとほざいています。こんな時期ですからお手上げです。 

いま、なだめすかしながらサブ機で打っています。ああ、調子がヘンだ。 

PCは実に便利で、田舎暮らしをする必需品ですが、ないとなるとそれはまたスッキリして、いいかもなどと思っています。 

年末年始の予定は、元旦の祝賀を除いて4日までお休みします。ただし、パリ同時テロのような事態が起きた場合は別ですが、お願い、起きないでね。 

というわけで、本年は大変にお世話になりました。よき年をお迎えください。

                ~~~~~~~~~~~ 

これにて、と思いましたが、せっかくPCの機嫌がいいので、少しだけ。 

Photo_5
昨日の続きです。 

おおむね、国内の反応は予想どおりでした。右方向の方々は怒り狂っておられるようですが、大方の国民はとまどいながらも平静に受け入れたようです。

朝日がなにを言うのかと思っていたら、一面トップ大活字で「政府責任を認める」ときたもんだ。 

朝日は社説で、こんなことを言っています。
http://shasetsu.seesaa.net/article/431697346.html

「戦時中、日本軍の将兵たちの性の相手を強いられた女性たちをいかに救済するか。政治的な立場を超えて、両政府がともに対処すべき人権問題である。
元慰安婦の1人が初めて韓国で名乗り出て、24年の歳月が流れた。今年だけでも多くの元慰安婦が遺恨を胸に抱いたまま、亡くなった。韓国政府が把握する存命中の元慰安婦は50人を切り、平均年齢は90歳近い。
両政府に残された時間はわずかしかない。両国関係にとっても長く刺さってきたトゲを自らの手で抜くべき時だ」

はいはい、そのトゲを人為的に植え込んだのはあんたたちでしょう。ここまで人間、厚顔無恥になれれば、人生はバラ色です。 

朝日は慰安婦問題において、火付けした当事者です。しかも植村記者ひとりのうっかりミスなどではなく、朝日の構造的体質から生じています。 

過去記事をベースにして、いい機会ですから、加筆してもう一回振り返ってみましょう。
※過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-b7c3.html

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朝日は日本において、発端を作り上げた当事者だっただけではなく、そのプロパガンダ拡声器の役割を演じてきました。 

朝日と韓国の慰安婦団体、マスコミ、そして政府に至るまで、まるで呼応するようにして、この「従軍慰安婦」問題を国際問題に仕立て上げていきました。

それを国家の外交方針にまでしたのがパククネ大統領でした。

朝日がしたことはただの誤報というレベルではなく、まさに火のないところを大火事にした所業だったのです。

未だ慰安婦問題について書かれた膨大な量の慰安婦記事は、「間違っていましたから取り消します」といったたった16本などという生易しい量ではありません。 

朝日のデーターベースを検索するだけで、実に7419本、「慰安婦 強制連行」でも1046本もあるのです 

これ全部とり消すのですかぁぁぁ・・・、ボク、気が遠くなりますぅぅぅ。(←エコーかけてね)  

だから、吉田清治と植村隆にだけ救出不可能として生贄に捧げて、誤報事件で第三者委員会まで作ったにも関わらず、以後、まったくどこ吹く風とばかりの姿勢を貫いています。 

まことに見事なブレのない不動の精神で、逆にいかに慰安婦報道がこの新聞社の根っこの部分から来たものなのかがわかります。 

気の毒にもバッシングされまくった植村隆記者などは、しょせんは慰安婦告訴団体幹部の娘婿だったことを会社に利用されて、韓国に送られただけの小者にすぎません。  

朝日が本気で守りたかったのは、死んだ吉田清治でもなく、ましてやザコの植村記者でもありません。この慰安婦問題には、社の中枢が関わっているのです。 

時系列でみていきましょう。 

植村記者が果たした役割は、極めて悪質でありながらも微々たるものです。 

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上の写真でいかにも詐欺師然とした顔をさらしているのが、かの有名な吉田です。こういう顔した男の「証言」を丸飲みすること自体ナンです。

1980年代初期まで吉田は、慰安婦問題の火付け役のひとりでしたが、まだ日本では左翼出版社から本を出したていどの、無名のヘンな奴にすぎませんでした。 

彼を一躍「時の人」にしたのが、北畠清泰大阪本社論説委員(故人)です。  

この北畠という人物こそが、この慰安婦問題の日本における伝道師の元締めであり、説教師でした。 

北畠は、1992年1月23日付け夕刊コラム「窓・論説委員室から」に、このように吉田を取り上げて、一躍「時の人」に仕立て上げます。 

一読すればお分かりのように「吉田証言を」一切の裏取りをしないまま、丸のまま紹介して、それをあたかも事実のように報じています。 

おそらく北畠は、「日本の過去を断罪する」という朝日の社是にドンピシャではまった男が出てきたことに狂喜したのでしょう、こう書いています。

「記憶のなかで、時に心が痛むのは従軍慰安婦の強制連行だ。吉田さんと部下、10人か15人が朝鮮半島に出張する。総督府の50人、あるいは100人の警官といっしょになって村を包囲し、女性を道路に追い出す。
木剣を振るって若い女性を殴り、けり、トラックに詰め込む。一つの村から3人、10人と連行して警察の留置所に入れておき、予定の100人、200人になれば、下関に運ぶ。
女性たちは陸軍の営庭で軍属の手に渡り、前線へ送られて行った。吉田さんらが連行した女性は少なく見ても950人はいた。
 「 国家権力が警察を使い、植民地の女性を絶対に逃げられない状態で誘拐し、戦場に運び、1年2年と監禁し、集団強姦し、そして日本軍が退却する時には戦場に放置した。私が強制連行した朝鮮人のうち、男性の半分、女性の全部が死んだと思います」(1992年1月23日朝日新聞)

これが日本における、吉田清治のマスコミデビューです。 

実は、吉田は自分のファンタジー原稿を扱ってくれるメディアを探して、そこここのマスコミにあたっていました。

北畠が記事にする10年も前の82年に、朝日東京本社支局に勤務していた前川恵司記者にも接触しています

また、後述しますが、同時期に吉田は大阪本社の清田社会部長にも接触しています。

前川の「慰安婦虚報の真実」によれば、前川は、吉田の証言が整合性がなく虚言であることを見破り、記事にすることを拒否しています。 

ですから、北畠が慎重にウラ取り取材すれば、社内情報だけで吉田などといったペテン師に引っかからなかったはずてす。 

ところが北畠は、この慰安婦問題が一貫してそうであったように、裏を取ると虚構だと分かってしまうために、あえて目をつぶっています。 

後に朝日は、それを意図的に公然と行うようになり、「軍が悪事を働いていたことはほんとうなんだから、多少の間違いも大義のまえの小事にすぎない」という歪んだ社風を作っていきます。

その先鞭をつけたのが、この北畠でした。言うまでもなく、この最初の段階で、既に北畠はジャーナリスト失格です。 

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北畠について、朝日新聞元記者であった長谷川煕(ひろし・上写真)記者の証言が、最近出ました。 

長谷川のことは、「松岡利勝と美しい日本」という優れたノンフィクションの作者として知っていましたが、今回は渾身の内部告発となっています。 

その名も「崩壊-朝日新聞」です。私もさっそく取り寄せて、いま読んでいるところです。 

長谷川は、この本が出る前に週刊文春(2014年9月18日号)のインタビューに答えてこのように述べています。 

「私(長谷川)は北畠がヒソヒソ電話で語り合っている場面を度々目撃しました。その相手こそ(略)吉田清治氏だったのです。
 北畠は、「(吉田氏のような人は)世間の圧力が強くなると日和ってしまう」とか、「違うことを言い出す」とか、概ねそのようなことを言っていました。
「取材するこちらが常に手綱を強く持っていないといけない」という趣旨のことも話していた
」(※記事中は北畠はXと表記されている)。

 つまり、吉田の「手綱を強く持っていた」のは、朝日新聞大阪本社幹部の北畠だったのです。 

また、この北畠が共産党員だったことも、長谷川は証言しています。

この北畠のみならず、大阪本社内部が、「共産党員にあらずんば記者にあらず」といった空気に支配されていたとも述べています。 

私は共産党員が職場にいたとしてもそれ自体は問題ないと思いますが、しかし党の方針とマスコミ報道を混同することがあったとしたならば、それは強く批判されるべきです。

当時創刊されたばかりのAERAの立ち上げ編集部にいた長谷川は、本社とは違った自由な言論空間を作るつもりで、この慰安婦問題にも取り組んだそうですが、それらはすべて握りつぶされました。

「北畠は『AERA』の職場に来た時、「朝日新聞に左翼でない人間なんているのかなあ」と話したり、ある記事が原因でモスクワから追放された経験がある木村明生のことを、「ああいうとんでもない奴がいるんだ。ひでえ野郎だよ。けしらからん」と罵倒していた」

さてもうひとりの重要人物に、北畠と同じ大阪本社社会部幹部だった清田治史がいます。植村はこの清田の社命で慰安婦証言を取るべく韓国に渡っています。 

実は、注目を浴びませんでしたが、北畠記事のはるか以前の82年9月の時点で「吉田証言」を書いたのが、この清田です。 

元朝日新聞記者で、当時清田氏の部下だった長岡昇は、自身のブログでこう証言しています。  

「1982年9月2日の大阪本社発行の朝日新聞朝刊社会面に最初の記事が掲載されました。大阪市内で講演する彼の写真とともに「済州島で200人の朝鮮人女性を狩り出した」「当時、朝鮮民族に対する罪の意識を持っていなかった」といった講演内容が紹介されています。
この記事の筆者は、今回8月5日の朝日新聞の検証記事では「大阪社会部の記者(66)」とされています。
その後も、大阪発行の朝日新聞には慰安婦の強制連行を語る吉田清治についての記事がたびたび掲載され、翌年(1983年)11月10日には、ついに全国の朝日新聞3面「ひと」欄に「でもね、美談なんかではないんです」という言葉とともに吉田が登場したのです。
「ひと」欄は署名記事で、その筆者が清田治史記者でした。朝日の関係者に聞くと、なんのことはない、上記の第一報を書いた「大阪社会部の記者(66
)」もまた清田記者だったと言うのです」(2014年9月「慰安婦報道、一番の責任者は誰か」)
http://www.johoyatai.com/?m=pc&a=page_fh_diary&target_c_diary_id=1136

後に清田は、植村記事が誤りだと分かった時に既に東京本社外報部長にまで出世しており、秦郁彦の済州島調査で慰安婦報道が根も葉もない誤報だとわかった後も、この誤報をもみ消しつづけた張本人のひとりです。 

長岡は、こう述べています。 

「清田記者は「大阪社会部のエース」として遇され、その後、東京本社の外報部記者、マニラ支局長、外報部次長、ソウル支局長、外報部長、東京本社編集局次長と順調に出世の階段を上っていきました。1997年、慰安婦報道への批判の高まりを受けて、朝日新聞が1回目の検証に乗り出したその時、彼は外報部長として「過ちを率直に認めて謝罪する道」を自ら閉ざした、と今にして思うのです」(同上) 

そしてもうひとり。ソウル支局長として慰安婦誤報を拡散した人物が、市川速水東京本社編集局長です。  

市川は2006年に、既にこう述べています。

「僕の取材でも、腕を引っ張られて、猿ぐつわはめられて、連行されたという人は一人も現れていません。だから、強制的ではなかった、さらに慰安婦問題はなかったとさえ言う人がいるわけです。でも、そうじゃなくて、証言の共通項を見ていくと、あの人たちは貧乏な家で、女衒にだまされて気がついたら戦地に行かされて、中国などで慰安婦をさせられた。僕は10人くらいかなあ、実際に細かく証言を聞いたけど、もちろん好きで行った人はいない」(『朝日vs産経lソウル発』) 

これを読むと市川は、吉田偽証が間違っていることをよく知っています。  

そして慰安婦の多くが貧困により慰安婦になるか、女衒にだまされたこともわかっています。今、朝日が取り消したような誤報は、ことごとくウソだととっくに知っていたのです。

つまり、なんの裏付け証言も証拠も存在しなかったが、「好きで行った」わけではないから強制連行だというのですから、たいしたもんです。

この拡大解釈が、強制連行を論破された後の「性奴隷」プロパガンダの基本ロジックとなっています。 

その市川が8年後にしたことが、池上彰の原稿を抹殺することでした。

当時、東京本社編集局長という要職にいた市川は、自分がソウル特派員時代に、吉田証言が偽証だと知っており、もちろん挺身隊との混同が誤りだと知る立場にいながら、池上氏の記事を削除するという報道管制を敷いたわけです。 

まさに言い訳の効かないジャナーリズムの自殺そのもので、この池上事件が朝日の墓穴を掘る直接のきっかけとなってしまいました。 

そして4番目に登場するのが、ジャーナリストというよりもはや左翼運動家として有名な松井やより東京本社社会部記者です。

松井は、朝日の現職記者のまま、1992年8月に開かれたメウルYMCA会館での慰安婦集会(アジア女性連帯会議)を福島瑞穂と主催した人物です。 

彼女が果たした役割は、社会部時代に、それまで大阪本社が主に扱っていた慰安婦問題を東京本社に持ち込み、大々的に取り上げ、さらに運動にしたことです。 

当時、朝日は慰安婦報道を逃げも隠れもできない「生存者のいる旧日本軍が犯した犯罪」として大々的に報じており、その運動家だった松井は編集委員になります。

ちょっと入り組んでいるので、登場人物を整理しておきましょう。 

朝日新聞「慰安婦」問題を作った人物たち
北畠清泰(故人)・・・大阪本社論説委員・1992年1月に吉田清治を大阪版「窓・論説室より」で紹介し、世に送り出す立役者となる。
清田治史・・・1982年に大阪版社会面で紹介し、1992年に植村記者をソウルに派遣する。後に東京本社外報部長時の1997年に誤報と知っていながら握りつぶす。取締役へと出世。もっとも深く慰安婦問題にかかわった人物。
市川速水・・・2003年~06年、ソウル特派員として慰安婦誤報を拡散。後に東京本社編集局長。池上事件の張本人のひとり。
植村隆・・・1991年8月、大阪本社社会部時代に清田の命令でソウルに派遣され、義母のコネで慰安婦の歴史的大誤報を書き、慰安婦誤報の象徴的人物とされてしまう。
松井やより(故人)・・・1992年慰安婦のソウル集会を福島瑞穂と主宰し、東京本社社会部時代に大々的に拡散する。後に編集委員。

このように見ると、慰安婦問題は植村のようなただの平記者が起こしたものではなく、大阪本社中枢、そして東京本社中枢まで絡んだ構造的なものだったことがわかるでしょう。 

前出の元朝日記者長岡は、このように書いています。  

「慰安婦をめぐる虚報・誤報の一番の責任者が取締役会に名を連ねるグロテスクさ。歴代の朝日新聞社長、重役たちの責任もまた重いと言わなければなりません」(前出)

これらの、論説委員、外報部長、編集局長、編集委員といった錚々たる朝日新聞のまさに中枢に位置する人物たちが絡んでいるのが、この慰安婦問題の特徴なのです。

このような、「過去の日本を断罪するためなら虚報も許される」という朝日の体質と、韓国の「反日なら何をしても許される」という反日無罪の韓国の異様な体質が増幅し合って、この慰安婦問題を作り上げたのです。

いろいろの人も言っていますが、10億のうち9億9千万円くらいは朝日が払ってバチがあたらないでしょうね。

朝日さん、築地の社屋売りなさい。

                                         ※文中敬称略 

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-772b.html

朝日が10億円払えに清き一票を!
Petition · 慰安婦見舞金は朝日新聞が払え · Change.org

2015年12月29日 (火)

慰安婦問題の日韓合意について

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イヤー、たまげましたね。よもや妥結するなんて、まったく思いませんでした。

もちろん日韓外相会議のことです。 

年内妥結するというのは聞いていましたが、私は無理なほうに1万ウォン賭けていました。 

これを伝えるNHKニュース(12月28日)です。やや長いですが、省略できる場所がないのでそのまま掲載します。読みとばして下さってもかまいません。 

「安倍総理大臣は、韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領と電話で会談し、慰安婦問題について、おわびと反省の気持ちを表明したうえで、日韓外相会談での合意を歓迎する考えを伝え、日韓関係の改善を確かなものとしていくことを確認しました。
安倍総理大臣は、日韓外相会談を受けて、韓国のパク・クネ大統領と28日夕方、およそ15分間、電話で会談しました。
この中で、安倍総理大臣は「元慰安婦の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみを思うと心が痛む。日本国の内閣総理大臣として、改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やし難い傷を負われたすべての方々に、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権協定で最終的かつ完全に解決済みであるとの、わが国の立場に変わりはないが、今回の合意により、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを歓迎したい」と述べました。
これに対し、パク大統領は「両国の最終合意がなされてよかった。日韓50周年のことし中に合意ができたことには大きな意味がある。慰安婦被害者たちの名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やす機会にしていかなければならない」と述べました。
そのうえで、パク大統領は「すでに合意したように、慰安婦被害者の名誉と尊厳と心の傷を癒やす事業が実施されれば、この問題が再び議論されることはない。この合意が日韓関係を安定的に発展させるための歴史的契機にしたい。来年からは、より未来志向の関係としたい」と述べ、今回の合意を歴史的契機として日韓関係の改善を確かなものとしていくことを確認しました」
 

Photo

 骨子は以下です。 

まず、日本国内でもっとももめそうな点は、日本政府は慰安婦問題について「軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」ことを認め、「心からのおわびと反省の気持ちを表明」した、という部分です。 

まず、ここですが、朝日が歴史的誤報を認めた後なので、「なんだ認めちゃったの」というイヤーな気分にさせられます。 

おそらく今日あたりの右方向のサイトは、「アベ死ね」一色になると思われます(苦笑)。 

しかし、実は既定の線から出ていません。既定の線とは、安倍政権が継承すると言った河野談話です。 

河野談話からその部分を抜粋します。
慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話 

「いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」

 下線部分が、今まで大いに論争となった部分ですが、これに関しては官憲の直接関与はなく、あくまで間接的な関与だったことで、ほぼ決着しています。 

ただし、政権としては、談話が一回国際社会に日本政府の公式見解として出てしまった以上、これを継承するとしています。 

翁長氏のような革命政権や、かの宇宙人政権でない以上、それは当然のことです。

もし、政権が変わるごとに外国との条約や公式見解をヒックリ返してしまったら、日本政府の継続性と正統性が失われてしまうからです。 

ですから河野談話のやり直しではなく、その作られた経緯を調査するという手段で外堀を埋めました。 

これについては、検証報告書を8回に渡って丹念に読み込みましたのでそちらをご覧ください。ブログ界広しといえど、こんな暇をことをやったのはこの私くらいです(えへん)。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-60e7.html 

今回もこの流れに沿っています。つまり、「継承するが、核心部分では妥協しない」ということです。 

注意していただきたいのは今回も「関与していた」とは言っていますが、それは慰安所の「運営」に軍が関与していただけだとしています。 

これは韓国側にとっては、強制性を認めさせたと解釈して、一見ポイントをゲットという気分になるでしょうが、よく読めば日本側は河野談話を薄めただけの線を追認しているにすぎません。 

次に、「韓国政府が元慰安婦の方々に支援を目的とする財団を設立し、これに日本政府の予算10億円を資金として一括拠出し、日韓両政府が協力し、すべての慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷を癒すための事業をします」、としています。

これも、新しい線ではありません。

かつてアジア女性基金という方法で、すでに一回実施しており、頓挫しています。その経過についてはこの過去記事をご覧下さい。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-09c8.html

前回は実施主体はあくまでも日本政府でしたが、今回は財源は日本、実施主体は韓国政府にしたわけですが、これがどのように出るかです。

三番目として、たぶんこれが最大の日本政府の眼目だったと思われますが、「慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決することを確認した」、「国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える」という公式の言質です。

これを日本側は文書化することを提起し、今の段階ではそこまでに至っていません。

ただし、ここまで国際的に報道されてしまった以上、最終的には文書化で落ち着くと思われます。

四番目として、日本大使館前の慰安婦象です。これを作った挺対協の人たちこそが、韓国国内でこの問題の主導権を握って、頑として問題解決をさせなかった最大の勢力でした。

ちなみにこの団体は、隠れもない親北勢力です。

この人たちが作った慰安婦像、彼女たちの自称では「平和の碑」は日韓関係の喉に刺さったトゲになっていました。(なにが「平和の碑」だつうの)

このトゲを世界中に拡げるのが、このオバさんたちの願いだそうです(迷惑な)。 

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なんせ、これだもんねぇ~。宗教的法悦しちゃっています。

ですから、これを見る日本人は、「イっちゃってるよね。これじゃあ話し合いもムダだよ」、というのがおおかたの意見だったと思います。

このオバさんたちにとって、超絶的思い入れのある慰安婦像が立っている場所が、自分たちの庭なら問題ないのですが、場所もあろうに施設として日本国を象徴するソウル大使館前です。

いうまでもなく、日本を攻撃対象とする象を外交使節前に建てることは、1961年に締結されたウィーン条約第22条2項が定める接受国義務違反です。

外交関係に関するウィーン条約
  第二十二条 1 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
  2 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
 

とまぁ、こういう常識が通らないのがかの国なわけですが、今回も韓国は明言を避けています。

日本側としては、何も妥協していないという韓国政府の国内向け言い分を立てた形にして、ボールを韓国側に投げて静観していることになります。

挺対協をどれだけ黙らせることができるのか、韓国側の「移転に対する努力」のお手並み拝見というわけです。

つまり、慰安婦像撤去とは、挺対協問題でもあるわけで、「挺対協をなんとかしろ」とは内政干渉ですから、わが国はこれについて何も言うことはできないのです。

右の人たちは、これについてもワーワー言うでしょうか、私は仕方がないと思います。

何の進展もなければ、話は振り出しに戻ることになるだけです。それもまたよし。

というわけで、いかにも安倍氏らしい微妙なコースを狙った外交ボールということでしょうか。

外交的懸案は強い長期政権の時にのみ解決するといいますが、本当ですね。

私は政治とは次善をいかに探るかという妥協の技だと思っていますが、左右の原理主義者の皆さんはそう思わないようです。

今回、この妥結にもっとも強い反対をするであろうのは保守派でしょうから、彼らを黙らせるには安倍氏しかいないということになります。

まぁ、不満もありますが、契約とか、約束という概念自体が欠落している国相手に、今後なにかまた起きたら黙らせることのできる外交的武器が手に入ったことは収穫だったとはいえるでしょう。

さてこのクセ弾、吉と出るか、凶と出るでしょうか。

2015年12月28日 (月)

「振興予算」の分かりにくさ

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多摩っこさんのコメントにお答えしておきます。質問はこのようなものです。

「沖縄の振興予算が分からない、公共事業の国庫拠出金(高率補助金)と地方交付税(使途が自由な一括交付金)の総称という理解でいいのでしょうか?」

鋭い質問ですね。日本の右派の方もよく勘違いして使っていて、まるで「振興予算」が別枠であるような錯覚をしているとしか思えないことを、平気で言っています。 

別枠なわけないっしょ。別枠だったら約3千億円+平均の地方交付金約2千億で、5千億円超になっちゃいます。県庁がふたつ建ちます。 

逆にこの予算編成時期になると、地元紙も身構えているとみえて、かならずこういう予防線を張りたがります。 

琉球新報(2015年7月7日)の予算特集記事です。
http://ryukyushimpo.jp/news/prentry-245389.html 

タイトルからして「財政移転突出せず」です。

「財政移転」とは、これまた小難しい官僚用語を持ち出したものですが、要するに地方交付金とか、国庫補助金のことです。 

「予算面で国から「厚遇」を受けているとの見方もされる沖縄県だが、全国の自治体と比較すると、突出しているとは言えない。
 2013年度ベースで他の都道府県と比較すると、人口1人当たりの国庫支出金は26万4千円で全国4位、総額3737億円は14位につけている。1人当たりの地方交付税は25万3千円で19位、総額3593億円は18位だった。
 さらに国庫支出金と地方交付税を合計した国からの財政移転は、1人当たりで9位(51万8千円)、総額で17位(7330億円)となっている。国からの財政移転の金額は1人当たりでも、総額でも一度も全国1位になったことはない。沖縄だけが「特別扱い」をされているわけではないことが数字から裏付けられる」

この数字は、沖縄県の「沖縄だけが特別に国から予算をもらい過ぎているという状況にはない」、という説明と照応しています。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/kikaku/yokuaru-yosan.html 

まぁ琉新は、「オレたちはよくネトウヨから国の金もらいすぎって言われているが、たいしたこたぁねぇぜ。たかだか予算枠で14位だ」と言いたいようです。 

これは、反本土政府の翁長県政になって縮小が予想されたために、あらかじめ「減らすな、いや増やせ」ということのようです。 

結果、おめでとうございます。15年度当初比10億円増の3350億円となりました。翁長氏が心配していた「報復」はなされなかったわけです。 

そりゃそうでしょう。そんな子供っぽいことをするくらいなら、初めから沖縄担当大臣に自民県連会長の島尻さんを据えたりしませんよ。減らしたら、島尻さんが恥をかきます。 

今の安倍政権の対沖縄県政策(こういう言い方自体、外交問題みたいでヘンですが)は、基本的に太陽政策です。 

USJ沖縄や南北鉄道、あるいは普天間基地跡地ディズニーランドの誘致といった経済浮揚策を全面に押し出して、「県経済をよくする中で移転問題の理解を得る」という方向です。 

脱線しますが、反対派は今のディズニーランドの誘致先候補が返還されたインダストリーコリドーだけにすぎないから、狭くってどうにもならない、オリエンタルランドも消極的だと批判しています。 

宜野湾市長選がらみですから、どうしてもそういう政治的思惑で見ますが(実際にそういう側面は否定できませんが)、菅さんが普天間基地がなくなった後の跡地問題も考えずに、目先だけの人気取りで、こんな提案をしたと思っていますか。 

わきゃありません。菅さんは絶対に普天間基地を移すつもりでいるし、それを考えたら今から動いて構想を練っても遅いくらいなのです。 

インダストリアル・コリドーうんぬんなどという部分に引っかかって、大きく見れないのも情けない。 

それはさておき、「振興予算」と言った時には、基本的には山形さんの言い方でまちがっていません。別途交付ではありません。 

復帰後の遅れた経済状況を建て直すために、「振興」と名付けられています。

私は、本土復帰から40年もたっているのですから、いいかげんこんな言い方は止めたほうがいいと思います。 

多摩っこさんのご質問に狭い意味で答えると、振興予算に各種の補助金優遇政策は入りません。ですから総称ではありません。 

予算は見えやすいのですが、琉新や沖縄県のようにそこにだけスポットを当てるとかえって分かりにくくなります。 

地元紙の言う「優遇などされていない」というのは、単に1位でないというだけです。 

彼らの算出でも、国庫支出金は全国4位、地方交付税は19位、国からの財政移転は、1人当たりで9位ですべて上位に位置しています。 

一方、沖縄県の税収は、失礼ながら下から数えたほうがよい36位で、下から11番目です。
※http://grading.jpn.org/y0512g02.html

下図は沖縄県の収入をみたものです。(※クリックすると大きくなります)
平成24年度 歳入歳出決算の概要 - 沖縄県 

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沖縄県の歳入に占める国からの比率
.収入総額        ・・・6815億円
・地方交付税       ・・・2159億
・国庫支出        ・・・1896億
・計             ・・・4055億
・比率            ・・・59.5%
 

一方自主財源と呼ばれる県税は 

沖縄県の自主財源(県税)
・県税             ・・・944億
・歳入に占める県税の比率・・・13.8%
 

これに県債が県税とほぼ同額の626億が加わります。 

沖縄県の県債を加えた自主財源の歳入に対して占める比率
・県税・・・944億
・県債・・・626億
・計 ・・・1570億
・比率・・・23%
 

お分かりのように、沖縄県は俗にいう3割自治以下の2割自治です。しかも県債と税収が同額というバランスの悪さが目立っています。 

県債は、利子をつけて償還せねばなりません。 

え、なんですって?国だって歳入の半分以上も国債を刷っているだろうって。国と地方自治体を一緒にしちゃいけませんよ。

国は貨幣を自分で刷ることが可能な上に、債権を自分で刷ることが可能で、しかも中央銀行がそれを買い取ることができますから、不安は少ないのですが、県はあたりまえですが、自分でカネを刷ったら偽札作りだぁ(笑)。

翁長さんなんかは「沖縄円」などを刷りたいたいでしょうが、沖縄県紙幣など刷っても誰も欲しくないだけの話です(あたりまえだつうの)。 

つまり県の財政は、「借金」(※正確にはこの表現は間違いですが)と税収が一緒で、しかも自主財源の倍以上の2485億も多い金が国の方から来ています。 

いかに沖縄県が脆弱な財政基盤しか持っていないのか、お分かりいただけると思います。

ここが問題なので、予算が全国第何位であるかなどはどーでもいいのです。 

Photo

上の写真は昔の石川闘牛場です。私も数回行ったことがあります。

巨大な黒牛が真正面からぶつかりあって、飛び散る汗、大歓声。ああ、島好きにはたまらないワンダーランドでした。

それが復帰後このような石川ドームになってしいました。

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このような社会インフラの整備拡充は、ただ予算枠を見てもわかりません。「隠れ振興予算」があるからです。それが、異常に高い補助金率です。

●[隠れ振興予算その1] 沖縄県と他県の補助金比率比較
・道路保全      ・・・沖縄95%
                他県70%
・学校建設整備    ・・・沖縄85%
                他県50%
・漁港整備       ・・・沖縄90%
                他県66%
・公営住宅建設    ・・・沖縄75%
                他県50%
・水道施設       ・・・沖縄75%
                他県33%
・空港整備       ・・・沖縄95%
                他県33%
・河川改修整備    ・・・沖縄90%
                他県50%
・農業関連基盤整備  ・・・沖縄95%
                 他県50~70%

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上図は離島への本島からの架橋ですが、非常に充実していて、おそらく同じ離島を持つ他県とは比較にならないでしょう。(図はクリックすると大きくなります)

別に悪いことではありませんが、このような学校施設、漁港、空港、あるいは道路、橋などの社会インフラは、ほとんど自腹を切らずに国が作ってくれていたわけです。

他県もびっくりの沖縄県の特出した社会インフラの整備ぶりは、ここに秘密があります。これが「隠れ振興予算」の第1弾です。 

もうひとつ「隠れ振興予算」第2弾があります。 

●[隠れ振興予算その2] 軽減税などによる各種優遇措置
・ガソリン税・・・本土より1リットル当たり7円軽減
・有料道路税・・・沖縄自動車道の通行料金は本土より約4割軽減
・航空着陸税・・・航空機燃料税の50%減免。県外の同一距離路線より5千円安い
・酒税・・・ 本土の標準課税額に対して、ビールが20%、泡盛が35%の軽減
・各種輸入食料品・・・輸入豚肉、泡盛用のコメの減税
・本土-沖縄間の航空燃料税の軽減
・観光業、情報通信業、電力会社に対する法人税の軽減

他に、既に終了していますが、沖縄県だけを対象としたまさに狭い意味での「振興予算」として沖縄懇談会事業(沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業)もありました。
 

沖縄懇談会事業
・平成9年度から平成21年度まで
・38事業47事案のプロジェクト実施
・総事業費 約 1千億円
・うち国費の比率約 9割

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おかげで、オリオンビールは20%、泡盛は35%安くなっています。私個人の意見としては、これだけは廃止しないで頂きたいものです(笑)。 

揮発油税が減免されていいるので、沖縄県のガソリンはリッター7円も安くなっています。これが沖縄のタクシーやレンタカーの安さの秘密です。 

ちなみに隣県の鹿児島も種子島などの南西諸島も離島を沢山抱えていますが、この減免措置がないために逆にリッター40円高くなっています。 

これ以外にも経済特区あり、大学や研究機関の誘致などありと至れり尽くせりですが、残念ながらこの優遇策は、本土の人はともかくとして沖縄県民すら知らない有り様です。

もちろんその他に、先日お話したような同盟維持のための関連予算と「思いやり予算」もあります。 

もう出している国もグチャグチャでなにがなんだかわからないので、那覇に統合事務所を作って整理しているほどです。

このような優遇策をとっても、沖縄県の製造業は強くならず、県民所得も高いとはいえない水準で推移してしまいました。

社会インフラばかり充実しても、かんじんな沖縄経済を自立させるグランドデザインが欠落していたからです。

これを反省して、「沖縄21世紀ビジョン」を作っていったのが、仲井真さんでした。第2期仲井真県政ははっきりと沖縄経済の自立化を目指していました。

しかし、また翁長氏に替わって元の木阿弥で、「基地負担があるからもっと寄こせ」路線に逆戻りしてしまいました。

あ、これは言ってはならないお約束らしいですが、かつて国民新党幹事長時代の下地幹郎氏はこう言っていました。

「基地というムチに対する振興策というアメを主体的に受け入れてきたのは沖縄県当局であり、名護市当局だ。アメをもらったということは、辺野古移設実現に向けて努力するというメッセージを日米両政府に送っていることになる」

分かりやすくて大変に結構。ま、要するに、身も蓋もなく言えば、そういうことです。

しかし、だからといって私は沖縄県に対して、右派の言うように「あいつらは甘えているから」という発想に立ってはダメだと思います。

逆に、「もっと自立できるプランを作って、どこにどう投資したらいいのか明確にしろ」と本土納税者は要求すべきなのです。

その上に立って、翁長氏が「戦う」ことばかりに忙しくて、県経済の自立のためのビジョンを持たないことをこそ、厳しく批判すべきなのではないかと思っています。

2015年12月27日 (日)

日曜写真館 雪の日のワンコのお出かけ

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いよいよ年の瀬も押し迫りましね。今年最後の写真館になります。

最後はもうかなり前に撮った、うちのワンコたちの雪の日のお出かけをご紹介します。

まだ、コンデジで撮っていましたので、画質は期待しないでね。ただ、コンデジのほうが犬は驚きませんね。

一眼レフで、ジッと撮っていると、「何してんですかぁ」というビビる顔になるから面白い。

ここにいる3匹も、今は3枚目にいるタローだけ残って、それぞれもらわれて行きました。

タローだけは我が世の春で、毎日腹を出して甘えています。

2015年12月26日 (土)

「思いやり予算」という不思議その3 「逆さ地図」でみる東アジア

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この「おもいやり予算」もそうですが、日本人の悪い癖は、「言葉」でその場しのぎしようとすることてす。 

初めから金丸信氏が、こう言っていればよかったのです。 

「ありゃ接受国支援予算つうもんで、米軍さんを側面から支えるために出しているんだよ。何?基地のレストランの従業員の制服にも使っているって。細かいなぁ。そりゃ裸で働いてたら風俗になっちゃうでしょうが」 

ところが、このオっサン、北朝鮮行って金塊もらってきただけあって、(ちなみにそのツアーの事務局長は小沢一郎さんですが)金のこととなるとすぐに後ろめたくなると見えて、すぐにグニョグニョと口先だけでゴマかし始めるから困るのです。 

というか、冷戦期の自民党にありがちな勉強不足だったんでしょうね。

日米安保の真の重要性を理解していなくて、なんとなく「そこにソ連があるから米軍にいてもらっている」って感覚です。 

米ソ冷戦構造があまりにガチっと出来上がってしまって、永久凍土のように当時は感じられたために、保革が打ち揃って天然ボケでいられた時代でした。 

自民は「ソ連が攻めてくるぞ」といえば証明終了で、左翼陣営に至っては非武装中立なんていうぬる~いファンタジーに浸っていれば済んだわけです。(←今でも漬かっていますが)

さてこれが冷戦が終わって、世界情勢が複雑になると、「米軍になんとなくいてもらう」というのどかな話では済まなくなりました。特に近年はそうです。 

ではここで、アジアの地図を見てみましょう。 

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 まぁよく見慣れた普通の地図ですが、これをヨイショとひっくり返すとこうなります。 

Photo_2http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1510/kj00000275.htmlより転載)

 俗に「逆さ地図」と呼ばれていますが、正式には「環日本海・東アジア諸国図」といって、れっきとした国土地理院が作っているもので、ちゃんと市販しています。 

一般の地図だと、なんとなく日本側からだけ見てしまいますが、中国から見ると日本列島はこう見えるというのを知るにはうってつけの一枚です。 

画面中央やや右の、朝鮮半島と山東半島に囲まれた大きな内海が渤海です。 

ここの旅順は良港なので、ロシアが軍港を作り、日露戦争の激戦地になったので地名くらい聞いたことがおありでしょう。 

今は、中国北海艦隊の軍港があります。司令部は海を隔てた青島です。 

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旅順軍港は遼寧省にあって、どこか聞いたなという方は鋭い。中国の初の空母の「遼寧」の名はここから取られているんです。 

それはともかく中国にすれば、大陸に面した海が意外に狭く、目の前にわが日本列島が封をしているように立ちふさがって見えるのが分かりますか。 

日本列島は、まるでそのためにあつらえたかのように、ロシアの太平洋の出口を塞ぎ、本州全体で沿海州に面した日本海を内海化してしまい、さらに南に下れば、九州から奄美諸島、沖縄、八重山と南西諸島が連なって、中国の前にのびのびズド~ンと連なっています。 

そして、沖縄から先はさらに台湾につながり、台湾からはバシー海峡を挟んでフィリピンへと続き、その端はベトナムに連結しています。 

こうして見ると、中国にとって自由に動ける海はごく限られているのが分かります。 

え、中国は南部がズっと海に面しているだろうって。 

残念。この沿岸部は、一部を除き浅い大陸棚が続いているために軍港に適していないのです。 

となると中国からすれば、広い海へ出て行こうとしても、先に挙げた日本列島の島々の間を縫って行かざるをえなくなります。 

こんな感じです。 

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上図は近年の中国海軍の動向を見たものです。 

西に東に四方八方に、中国海軍が近隣諸国をドツき回しながら、膨張している様子がお分かりになるだろうと思います。 

しかし、太平洋方向に出ようとすると、どうしても沖縄諸島の間を縫って通過していかねばなりません。 

こういう狭い地点のことをチョークポイントと呼びます。チョークとはプロレスの反則技でもありますが、締めつけて窒息させることもできる急所のことです。 

世界的には、海上交通の多い狭隘な海峡のような場所のことで、有名な地点としては、マラッカ海峡、ホルムズ海峡、スエズ運河、パナマ運河、マゼラン海峡、ジブラルタル海峡、ダーダネルス海峡などがあります。 

わが国は、幸か不幸か、地理上たくさんのチョークポイントを持っている国です。

しかも相手国が、東側の主要国の中露二ヶ国ときています。

トルコやギリシャは黒海の入り口を塞いでいてロシアにとって障壁となるために、NATO諸国で重要な位置を与えられていました。

同じような働きをアジア地域でしていたのが、わが日本だったのです。 

Photo_6(図 海防ジャーナル様より転載いたしました。ありがとうございました) 

日本のチョークポイントは北から宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡があり、これらの3地点だけで、太平洋に出たいロシア艦隊にとって、ヒジョーにイヤな急所になります。 

さらに大隅海峡、宮古海峡というチョークポイントは、中国艦隊にとって、不愉快極まりない地点になっています。 

中国からすれば、そもそもそこにあるだけで目障りな上に、日本は経済的にも巨大で、最先端のハイテク兵器を国産して、兵員数や武器の数は少ないながらも高度な訓練が行き届いた自衛隊が存在します。 

何がなんでも海洋膨張したい中国にとって、日本ほどうっとおしく邪魔な存在はないでしょう。 

事実、中国は毎年のように、宮古海峡に原潜を通過させたり、こともあろうに陣形を組んだまま10隻もの大艦隊を通過させたりしています。 

2012年12月には、尖閣諸島近くまで大規模な艦隊で接近しています。 

Photo_8(図 2012年12月11日サーチナ)

「中国海軍の艦隊は10日、西太平洋での遠洋訓練を完了して帰還する途中、尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺海域を航行した。中国国際放送局が報じた」(同)

領土紛争が起きている海域に大艦隊を接近させて、これみよがしに通過させるということ自体非常識な危険極まる挑発行動です。
 

おとなしい日本ですから、黙っていますが、これが一般の国ならここで火蓋が切られてもちっともおかしくありません。 

また2014年には、宮古海峡を大艦隊で通過して見せました。 

Photo_7(この写真は2014年の宮古海峡通過時のものではありませんが、艦隊規模は同じです)

 冷戦期のソ連ですらしなかったイチビリです。 

これらの中国海軍の活動は、自衛隊の中国海軍艦艇の動向についてというPDFでご覧いただけます。 

もちろん、沖縄と宮古島はいずれも日本領ですが、その間の海域は公海ですから軍艦の通行は自由です。 

これは無害通航権が保障されているからですが、毎回毎回、このような挑発行動をくり返せば、何が起きても不思議ではないでしょう。 

逆に、中国は南シナ海の「領土」と自称しているスプラトリー諸島周辺の公海を、米海軍がたった1隻で通過しただけで怒り狂って、報復すると息巻いていましたっけね。

もしこれが、大艦隊だったら習さん失神せんばかりに怒り狂うでしょうね。まったくダブスタですね。 

Photo_9
このように日本の地理的位置を知れば知るほど、なぜ米国が日本列島に基地を置きたがるのかご理解いただけると思います。

もし仮に日本が財政的に逼迫して「思いやり」などできなくなっても、米国は日本列島に基地を置き続けることでしょう。

小川和久氏は、米国要人にこう尋ねたそうです。

「私は、機会を見つけてはアメリカ側の要人達に次のように確認を求めてきたわけです。
『安上がりなのは、確かにアメリカにとって望ましいことでしょう。しかし,単に財政的に助かるから日本に基地を置いているのか、それとも戦略上の要請から根拠地を維持したいのか,その点をはっきりさせてほしい。
仮に日本がびた一文出せないような貧乏国であっても、アメリカは軍事基地を維持し続けるつもりですか。
それともカネの切れ目が縁の切れ目で、そそくさと撤退するのですか』
専門知識を備えた要人であるほどに、アメリカ側の姿勢は明快なものでした。
『アメリカが日本に基地を置くのは、日本の地政学的条件を踏まえた戦略的な選択の結果です。日本の財政面の支援はありがたいが、二義的な問題です。
仮に日本経済が悪化して、アメリカが逆に基地の使用料を払わなければならなくなったとしても、アメリカの国益のために在日米軍基地は確保しておく価値があるのです。」(『日本の戦争力』)

2015年12月25日 (金)

「おもいやり予算」という不思議その2 日本の「トランプ」な人たち

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まずは、翁長氏の申し立てに対して、総務省の第三者委員会が門前払いにしてしまったようです。

「総務省所管の第三者機関・国地方係争処理委員会(委員長・小早川光郎成蹊大法科大学院客員教授)は24日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に関する政府の対応を是正させるよう求めた同県の翁長雄志知事の申し出を却下することを多数決で決めた。『(政府側の対応は)一見、明白に不合理だとはいえない』と結論づけた。(略)
同委員会は24日の3回目の会合を約7時間にわたって開催。政府の対応が合法か違法かの審査は行わずに、翁長氏の申し出を退けることとした。
 同委員会が地方自治体の申し出を処理したのは3例目。審査要件を満たさないとして却下したのは、新幹線建設工事を巡る新潟県知事の申し出に続き2例目となる」(毎日 12月25日)

県はこう述べています。

「こうした争いを審査しないならば、係争処理委は何のために存在しているのか。まさに結論ありきだ」と語気を強めた。県は同委員会の判断を不服として高裁に提訴することを検討している」(同上)

まぁ、なんていうかなぁ、あんまり好きな言葉じゃないがこういうのを「想定内」とでも呼ぶのでしょうか。

代執行訴訟にもほとんど影響が出ないでしょう。双方、折り込み済みなはずです。 

翁長氏陣営は、ここで大見得を切って、「怒り」を表明しないと「民意」の手前、サマになりません。 

こういうあらかじめ決まった所作で、決まったとおりに「怒って」見せるというのを、俗に「歌舞伎」と呼びます。 

イヨッ、オナガ屋!ってなもんです。 

Photo_2
地方行政法の枠内で争えば、代行訴訟もまったく同じ結果が出ることはわかりきっています。

そうなれば、翁長氏の勝ち目はゼロなのですから、法律の枠組みの「外」に出て争うわねば勝機はありません。 

要するに、場外乱闘です。

たぶん、さらに現地でハネ上がった行動をとらせて、老人か女性に流血の「悲劇」を招くことを戦術化していくと思われます。

しかし、このような手段は一時的には反対派に有利に働いても、後に大きな禍根を残します。

                 ~~~~~~~~~

さて、本題に入ります。「Omoiyari yosan」について考えています。 

面白いことには、保守の自主防衛派と、左翼陣営がほぼ同一の調子で批判しています。 

ある保守論客は、こう「おもいやり予算」について書いています。 

「日本はおもいやり予算の大盤振る舞いだ。かつてカーター政権時の大統領補佐官を務めた米政治学者のブレジンスキーが日本を「protectorate(保護領)」と呼んだ根拠の1つとされる。
要するに、属国なのである。日本は幕末に列強から治外法権、不平等条約を呑まされたが、現在もそれと同等、あるいはそれ以下の扱いを米国から受けていると考えていいだろう。
この30年間に日本政府が在日アメリカ軍にかけた「思いやり」は総額5兆1000億円にも達しているのである。この金は事実上日本の軍事的支配者である在日アメリカ軍に対する上納金なのである。なぜ上納金なのかと言うと、この金は米軍地位協定にも支払い義務のない、属国ゆえの売国的予算支出であるからだ」

※全文はこちらからhttp://plaza.rakuten.co.jp/kmrkan55/diary/201512170000/

 日本は「属国」なのだ、だからこの人はそう言っていませんが、軍事的に自立して空母のひとつも持てということのようです。 

一方、正反対の立場の共産党系の運動家はこう叫びます。 

「在日アメリカ軍は、日本を出撃基地としており、日本の防衛のために駐留しているのではない。
 アメリカという国は産軍複合体の国家であり、常に侵略戦争を続けなければ経済が機能しない国家ゆえに、日本が米軍を支えることは、やがては海外派兵の「恒久法」を制定して、アメリカと共に侵略戦争を闘う道なのである。
 こうした侵略への道を正すためにも、この際思い切って「思いやり予算」を全額カットすべき事を提起したい。日本政府がたとえ米軍の駐留費用を全額支出したとしても、在日アメリカ軍を傭兵化することはできない事を知るべきである」

※全文はこちらからhttp://www.21c-journal.net/news/842omoi.html#top

 とまぁ、ほぼ同じ口調で、ほぼ同じ内容を左右が言うというのも面白い現象ではあります。

ただ、立場が違う連中が同じことを言い出したら、眉に唾をつけて下さいね。だいたい間違っていますから(笑)。

Photo_8(写真 在日米軍横須賀基地の米空母)

彼らの共通点はふたつです。

まず第1に、こんなに駐留米軍に金を出すことは、日本は米国の属国の現れである。他国はしていないぞ。

第2に、こんなに健気に日本が貢いだところで、米軍は日本を守るためにいるわけじゃないんだぞ、ということのようです。

ここまでは左右の認識は気味が悪いほど一緒ですが、そこから先は自説に引きつけます。

右派は、だから従属国を返上して「独立国たれ」となり、日米安保の片務性を脱しろとつながり、そして自主防衛を強化しろ、となっていきます。

これが、田母神さんたちが好きな自主防衛論です。

逆に、左派は、「従属国を返上しろ」までは一緒ですが、米軍は世界侵略のための悪辣な奴らなのですから、おもいやり予算ゼロは当然、日米安保も廃棄しろ、となっていきます。

これが日本リベラル陣営伝統の丸腰非武装中立論です。

う~ん、どうしてこう「従属」にこだわるんでしょうかね。

Photo_3http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2012/2012/html/n3213000.html

なるほど、日本列島は米国の国際戦略の重要な、おそらく世界最大の拠点です。

また、安全保障に感心ある人なら誰でも知っているように、日本に展開する米空軍、海軍、海兵隊の航空機は、別に日本防空のために存在しているわけではありません。

三沢の米空軍はアジア地域で紛争が起きた場合に、真っ先に乗り込んでレーダーやミサイル施設を破壊するためにいます。

横田の輸送機部隊もまた同様に、アジア地域の戦術輸送を担っています。

厚木は横須賀軍港の航空機のための基地で、米空母の運用のために作られています。

そして、横須賀軍港こそが、日米安保の心臓部です。ここにいる空母打撃群は、アジア地域のみならずアフリカ東海岸までエリアにした「動く航空基地」です。

沖縄はこれらの出先であって、いわば出張所としての役割を果たしています。

では、日本の空や海は誰が守っているのでしょうか?

はい、そのとおり。自衛隊です。

今述べたように米空軍、海軍、海兵隊の航空機のうち日本の防空任務についているものは1機もありませんし、艦艇で日本の領海を守っている船は一隻もありません。

逆に、在日米軍基地の防空をしているのは空自ですし、陸からの破壊活動に備えているのは陸自や警察です。

また、米海軍の空母打撃群を広い意味で守っているのも、海自の護衛艦隊です。

「なんだ日本は金だけじゃなくて、自衛隊で米国を守ってやっている」のか、と言われれば、ある意味そうだとも言えます。

ここが、たぶんトランプなどに分かっていない部分です。トランプなどは、米国が直接、日本を「守る」ために駐留していると考えています。

Photo_6(写真 日米共同訓練)

しかしそれは、事実ではありません。正確に言えば、「日本を守るためにもいる」ていどです。

あるいは、米軍がいてくれる存在感(プレゼンス)が、日本防衛のために実に効いているのです。

「存在感」とは、微妙な言い回しですが、一般の語義どおり、「その独特の持ち味によって、その人が紛れもなくそこにいると思わせる感じ」のことです。

米軍は別に日本防衛のためにいるわけではないが、「いる」だけで、他国は世界最強の米軍が敵になるかもしれないとビビるわけです。

沖縄に米軍が「いる」というのも、このプレゼンスを日本が認識しているからです。

仮に米軍が、沖縄防衛のためにいるわけでなくても、沖縄に軍事攻撃を仕掛ければ、米軍を相手にせねばならないというのは、大変にイヤなことのはずです。

しかも、実際やってくれるかどうかはやってみないと分かりませんが、日米安保条約5条によって、米軍は建前上日本に対する防衛義務を負っているのですから、尚更です。

このように考えてくると、「米軍は日本を守るためにいない」という日本の左右の主張は、その意味で半分はあたっているのです。

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しかし、半分は間違いです。

なぜなら、日本は一国で存在しているわけではないからです。

安定した国際秩序の下で貿易を行い、シーレーン(海上交通路)でエネルギーや鉱物資源を輸入し、あるいは作った製品を外国に運んでいます。

日本が自給自足している江戸時代なら、在日米軍はいりませんでした。

大戦末期を思い出して下さい。日本はどうして降伏したのでしょうか。原因は多々ありますが、最大の理由はシーレーンを破壊されて干上がったからです。

米海軍による無制限潜水艦作戦によって、日本の商船隊は壊滅し、軍のみならず国民すべてがたちまち干上がりました。

軍は松から松根油を取って戦闘機を飛ばし、国民は芋がご馳走になりました。日本が自給自足で養える人口はわずか3千万人なのです。

ですから、このシーレーン海域の公海の安全と自由を確保することは、日本にとっての最大の国益だと断言してもよいのです。

Photo_7(写真 グアムにおける日米共同訓練)

では、このシーレーンの航海の自由を守っているのは、自衛隊でしょうか。

違います。我が国の自衛隊は、憲法上の制約のために、シーレーン防衛を直接の任務とすることはできませんでした。

これを防衛してきたのは、その広い海域に展開可能な能力を持ち、日本と友好関係にある米海軍と空軍、海兵隊しかいませんでした。

今後も、彼らが主力になることは変わりありません。

だから、日本はその出撃拠点を提供しているのです。

え、米国だけに頼まなくっていいだろう、ですって。

残念ですが、日本が信頼できる国際秩序の守り手は、米国以外存在しません。他にいますか?いたら教えて下さい。

ロシアですか?まさか中国だなんて言いませんよね(オナガさんなら言いそう)。

みんなで話合いで決めるって?ご冗談を。どこで?よもや国連だなんて夢見ているんじゃありませんよね。

今の国連は、事務総長閣下の史上空前の無能ぶりも手伝って、無力をとおり越して学級委員会ていどの軽い集まりにすぎなくなりました。

そしてオバマの定まらない腰つきと、あまりにも遅く鈍い対応が、ウクライナ紛争を引き起し、シリア内戦を発生させ、その中からISを生み出してしまいました。

アジアでは、中国に軍事膨張を許し、南シナ海を要塞化されてしまったのです。その原因は米国のパワーの凋落にあります。

このように、好むと好まざるとに関わらず、米国が、国際秩序の担い手から降りようとすると、世界はテンデンバラバラに自らの利害のままに分解し、争うようになっていくのです。

日本は米国の戦略インフラの一部に自らを組み込むことで、米国とギブ&テイクの相互補完関係にあります。

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(図 米軍の駐留国。青色1000名以上。薄い青100名。オレンジ゙色施設使用 日本が米軍の世界最大の基地群を擁しているのがわかる。ウィキより)

それはNATOのヨーロッパ諸国も一緒で、本来「同盟」とは従属関係ではなく、相互の利害によって結ばれる関係のことにすぎません。

ただ機軸同盟国として米国があるというだけです。

国と国の同盟関係に、まるで人間関係のような過剰な思い入れをして、「従属」だとか「属国」だとか言い出すほうがおかしいのです。

もし、日本を「属国」と呼ぶなら、ドイツも英国も、すべてのNATO諸国は皆揃って「属国」になってしまいます。

日本が「思いやり予算」(接受国支援費用)がヨーロッパ諸国より多いのが「属国」の証拠だとこの人たちは言います。はて、そうですかね。

これも日本が置かれている立場を、安直にヨーロッパと比較するからおかしくなるのです。

ヨーロッパは既にNATOという地域集団安保体制を作って、沢山の国々で共同防衛体制を作っています。

それに対して、アジアは発展途上国が大部分で集団安全保障体制を持ちません。

また、米国にインフラを提供できるだけの技術的、財政的能力も持ちませんでした。

だから、日本のみが突出して、米軍を引き受ざるを得なかったのです。

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つまり、この「思いやり予算」を含む同盟関係予算全体の6700億円は、日米安保体制を維持するインフラコストなのです。

トランプは無知丸出しで、「日本を米国が守ってやっているのにけしからん」と言いますが、太平洋のこちら側の人たちも負けずに日米同盟の本質をまったく理解していないようです。

その意味で左右の「属国」派は、日本のトランプのようなものです。

私たち日本人は「思いやり予算」というあいまいな言葉でごまかすのではなく、しっかりと安全保障の対価として認識すべきではないでしょうか。

そのへんの損得勘定については次回に。

※お断り 改題して、おかしな文章を修正しました。いつもごめんね。(午後4時)

2015年12月24日 (木)

「思いやり予算」という不思議

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今年もまた、「思いやり予算」という珍妙な名前の予算の時期になりました。 

ロイター(12月12日)はこう伝えています。
長いので全文はこちらから。
※http://jp.reuters.com/article/us-japan-military-idJPKCN0S60KF20151012

「(略) 在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」の改定をめぐる日米交渉は、前週に開いた3回目の協議でも溝が埋まらなかった。不均衡とされてきた日米同盟間の軍事負担が、安全保障法制の成立で是正されるとの立場を取る日本は減額を求めているが、「リバランス(再均衡)」でアジアへの戦力集中を目指している米国との見解に距離があり、調整は難航している。   
5年に1度見直しが行われる同予算は、根拠となる特別協定が来年3月に改定期限を迎える。日米は今夏から見直し交渉を開始し、10月5日の週までに3回の協議を開いた。日本が来年度予算案を編成する12月末までに合意する必要があるが、日本の政府関係者は「全く折り合っていない」と話す。
日本が減額を求め、米国が反対する構図は5年前と同じだが、今回は今年4月の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定で自衛隊の役割が拡大。9月の安全保障法制成立でその実効性が担保された点が異なる(以下略)」

3回協議しても妥結しなかったそうですが、結局、例によって日本が泣いて終わったようです。

「日米両政府は16日、在日米軍駐留経費(思いやり予算)の今後5年間の水準を現行水準に比べ実質増とすることで合意した。2016~20年度の総額は9465億円。15年度までの5年間を133億円上回る」(朝日12月17日)

先進国一のビンボーで有名な防衛省としては、「新安保法制で自衛隊の役割を強化する努力をしているんだから、ちっとは減額してくれてもいいじゃないの」と言えば、米国から「ホンならお前ら、オレたちにアジアにリバランスしてほしくねぇのかよ」とすごまれるという構図です。 

Photo_6(写真 ロイター)

年間約1900億というところで、馬鹿にならない額です。 

前回の改定では協定内の負担は減額されましたが、その分が協定外で積み増され、全体として現状維持となっているようです。 

米国は日本の防衛官僚の顔を立て、実は取るというわけです。 

では、そもそも「思いやり予算」というのはなんなんでしょうか。考えてみると何かよーわからんが、分かった気になるという意味で、悪い意味で日本的表現です。 

この定義は

「日米共同防衛の責任分野として米軍駐留経費に対する日本側の財政的支援を一般にこう呼ぶ。在日米軍の駐留を円滑にするため日本は 1978年から日本人従業員 (約2万 2000人) の福利厚生費などを負担し始め,90年度予算で初めて日本人従業員の退職・住居手当など8手当を全額負担する施策を講じてきた」(ブリタニカ国際大百科事典)

なお、Wikiはこう注釈しています。 

「ニュースや討論番組等報道関係でしばしば「日本側負担駐留経費=思いやり予算」のように扱われることがあるが、「思いやり予算」とは在日米軍駐留経費の日本側負担のうちの全部ではなく一部を示すものであり用語の意義としては誤用である」(Wikipedia)

つまり、「思いやり予算」以外にも、日本が拠出している在日米軍関連経費は存在しています。

ですから先にあげた、朝日の「在日米軍駐留経費(思いやり予算)」という書き方は正しくありません。防衛省予算以外にもこれだけあります。

平成26年度・在日米軍関連経費の内訳防衛省HP「在日米軍関係経費(平成26年度予算)」による
・基地周辺対策費・施設の借料など       ・・・ 1,808億円
・沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関係費・・・ 120億円
・米軍再編関係費                   ・・・ 890億円
・提供普通財産上試算(土地の賃料)      ・・・ 1,660億円(防衛省の予算外、H25年度予算)
・基地交付金                      ・・・ 384億円(同上)
・計                            ・・・4862億円

したがって、この「思いやり予算」に在日米軍駐留関連経費を加えると、こうなります。

日本の米軍駐留軍関連予算の総枠
・思いやり予算                       ・・・1848億円(H25年度)
・在日米軍関連経費                    ・・・4862億円(同上)
・計                               ・・・6710億円

日本の防衛費は約5兆円規模ですから、米軍駐留費としてその7分の1程度の規模を日本が負担しているわけです。

ただし、基地交付金や軍用地代は、防衛予算とは別枠ですので、念のため。

それにしても「思いやり予算」とは、なんともかともケッタイな名前をつけたものです。

防衛関係には、9条がらみでこんなあいまい語の宝庫です。そもそも「自衛隊」という名称や「三等陸佐」や「普通科」のような呼称まで、神秘の国ニッポンです。

このような日米地位協定の枠を越える法的根拠がなかった「思いやり」を始めたのは、小沢一郎氏の親分だった金丸信(当時防衛大臣)です。

ちなみにどうでもいいですが、英語表記でも「Omoiyari yosan」でしたが、あまりにみっともないので、公式表記には「Host Nation Support」(駐留国受け入れ支援、接受国支援、HNS)です。

民主党政権時の外相だった前原氏は、「ホストネーション・サポート」一本でいこうと言っていましたが、気持ちは分かります。

というのは、こんなものは同じ米軍の駐留を受けている「ホストネーション」であるドイツ、イタリア、韓国にはないか、あったとしても日本の半分ていどだからです。

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2002年の米国の資料による各国米軍駐留経費負担率比較
・日本  ・・・75%
・ドイツ ・・・33%
・韓国 ・・・40%
・イタリア・・・41%

では次に、何に支出されているかを見てみましょう。

「現在は特別協定に基づく従業員の基本給、米軍の訓練移転費、光熱費に加え、協定外の従業員の福利費、施設整備費も日本が払っている」。(ロイター前出)

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上の写真は横須賀軍港の未婚者用unaccompanted住宅地域の看板ですが、詳細は分かりませんが、これも日本側の「思いやり」で作ったようです。

この他に、 日本はレストランやバーなど基地内の娯楽施設で働く従業員約5000人の給与や建設費なども気前よく負担しています。

ゴルフ場や教会まで作っていると騒がれたこともあります。

Photo_4写真 http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/26175324.html 共産党系の反安保資料の宝庫です。いつもながら民主と違って、共産党はよく調べていて感心します。ただし結論がいきなりトンデモになるのが惜しい) 

この巨額な負担は得か、損かで意見は分かれますが、日本のみならず、米国でも下の写真のような御仁もいます。

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米国でも無知・野蛮・レイシズムの三冠王に輝く、「歩くヘイトスピーチ男」トランプ大統領候補などは、堂々とこう述べています。

いや述べているなんて、お上品なもんじゃなくて、喚いています。

「トランプ氏は同じ演説で同盟国の日本が自国防衛をアメリカに頼る一方、経済面でアメリカに挑み、勝ちを制しているのは不公正だと強調した。1980年代の日本に対する「防衛ただ乗り」批判に似た粗雑な糾弾のようでもあった」(週刊文春2015年9月3日)
※http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5396

「日本は米国が守ってやってんじゃねぇか。それで浮いた金で米国を輸出で攻めていやがる。ファックだぜぇ!」というわけで、こういう論法を「片務論」と呼びます。

きっとさらにカッカっしてくると、これに韓国に対して向けているような「ただ乗り論」まで加わってくるでしょう。

まぁ、トランプの認識はある意味で米国人の平均値で、だから受けるのだという話もありますので、実際こんなものかもしれません。

では、実際にどうなのでしょうか。もう少し考えてみましょう。

2015年12月23日 (水)

定義なきままにヘイトスピーチ規制始まる

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ハフィントンポスト(2015年12月22日)によれば、在特会の前代表が法務省から違法行為として違法行為としての注意を受けたそうです。

「法務省人権擁護局は12月22日、東京都小平市の朝鮮大学校前でヘイトスピーチを行ったとして、右派団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠(本名:高田誠)前代表に対し、今後同様の行為を行わないよう文書で勧告した。違法なものと認識して反省するよう求めている。
桜井氏は2008年〜2011年にかけて3回にわたり、同大学校前で「朝鮮人を日本からたたき出せ」「殺してやるから出てこいよ」などと、繰り返し怒号を浴びせ、被害者側が東京法務局に申し立てていた。YouTubeに投稿されている当時の動画には、「朝鮮大学校を更地にしろ」「朝鮮人を東京湾に叩きこめ」などと叫ぶ様子が写っていた。
法務省がヘイトスピーチで勧告を行うのは
初めて。勧告は、「在日朝鮮人は犯罪者と決めつけ、憎悪、敵意をあおり、人間としての尊厳を傷つけるものだ」と指摘している。ただし、勧告には法的な強制力はなく、従わなかったとしても罰則はない」

なんか気分が悪いニュースです。モヤモヤします。なぜモヤモヤとするのか、考えてみましょう。 

あ、そうそう念のために先に言っておきますが、私はこの在特会の「デモ」は、ヘイトスピーチの範疇に入ってしまうと思います。

弁護の余地なく、彼らのこの行動は私の眼からみても、立派な人種差別主義者のそれです。 

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彼らが国旗や海軍旗を振り回すのを見ると、寒イボが出ます。お願いだから、こういうところで日章旗を使わんでほしいものです。 

振り回すなら、自分の部屋でやって、電球を壊すていどにしてほしいな。 

ですから私には、彼らの所業を弁護する気はさらさらありません。 

リーダー格のせと氏は「外国人犯罪者は出て行け」と言っていると反論(※)していますが、今は自主規制しているようですが、過去彼らのデモや演説などで「朝鮮人殺せ」といった表現が氾濫したことは多くの証拠があります。
※http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/53066994.html 

もちろん彼らは日本社会をまったく代表していませんし、飛び跳ねた希有な例にすぎません。 

その彼らが「勧告」という名の「摘発」第1号になったということは、非常にいや~な感じがします。 

というのは、これが官僚や法律において、後々、前例として踏襲され、拡大解釈される可能性が高いからです。 

つまり、在日朝鮮人・韓国人に対する人権侵害事例が、「ヘイトスピーチ」のすべてであるかのような拡大解釈が生れるでしょう。 

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というのは、「勧告」をした主体の法務省自身も、よく分からないままに「ヘイトスピーチ」を未定義で使用してしまっているからです。 

「ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動」というパンフレットには、このようにあります。
※http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108.html

「法務省の人権擁護機関では,これまでの「外国人の人権」をテーマにした啓発(「外国人の人権を尊重しましょう」)に加え,下記の手法により,こうしたヘイトスピーチがあってはならないということを,御理解いただきやすい形で表した,より効果的な各種啓発・広報活動等に積極的に取り組んでいます」

う~ん、よく分かりませんね。 

そりゃ分かるはずがないのです。なぜなら、法務省は法秩序の擁護者として最初に、「ヘイトスピーチ」という概念自体をしっかりと定義していないからです。 

この定義があいまいなものを、いきなり現実に適用しようとするからおかしくなります。 

おそらく、この法務省「ヘイトスピーチ勧告」は今後も定義がなされないままに拡大解釈を重ねて、「外国人の人権を尊重する規制」一般として社会に定着することになるでしょう。

法務省は規制するならするで、どのようなことか規制対象になるのかを明らかに明示すべきでした。

今回の法務省のヘイトスピーチ規制の最大の問題点は、「人権」という立場によってどうにでもとれることを普遍化して、しかもそれを在日「外国人」の一部でしかない在日朝鮮人・韓国人を最初の保護対象としてしまったことです。

ヘイトスピーチ規制の対象となるのは、人種なのか、出自なのか、宗教なのか、あるいは粗暴な言動なのか、はたまた差別語なのかを、明確にするべきだったのです。

肝心なその部分があいまいになったまま「規制」だけ先行すると、ある特定の政治勢力にとって気に食わなかったら全部まとめて「規制」だということになりかねません。

今の段階ではただの罰則規定なき「勧告」にすぎませんが、今後、アンチヘイトスピーチ運動の有田芳生議員が主張するような、罰則つき規制法に発展していく可能性があります。

Photo_10(写真 有田議員のしばき隊とのワンショット。有田さん、これも立派なヘイトスピーチだよね)

となると、結局、2011年に民主党政権が作ろうとして失敗した「人権擁護法」(人権救済機関設置法)のリバイバルとなります。 

この民主党案は、人権委員の資格に国籍条項が欠落していたりして、外国人に日本国民の取り締まり権限を与えることが可能なものでした。 

また、「不当な差別的取扱い」も、今回の法務省「勧告」と同じく、いくらでも拡大解釈によってどうとでも解釈可能なものでした。 

ですから、国民が国益を主張する行為をしても、それは「差別助長行為」と認定されて処罰の対象となる危険性もあると、法律家から指摘されてきました。
※「人権侵害救済法案(新法案)の問題点」
百地章 日本大学教授 論文

http://hiranuma.org/files/zhinken_download05.pdf

たとえば、今回、法務省がヘイトスピーチの被害者として「認定」した朝鮮学校は、朝鮮総連によって経営され、北朝鮮の管理下にある学校です。 

これに対しての公的補助金に異議申し立てたり、あるいは朝鮮総連に対して「拉致被害者を返せ」とデモをしただけで、「人種差別的」として逮捕される可能性があるわけです。 

しかもその摘発に当たる人権擁護局の審問官が、朝鮮総連や部落解放同盟だったりする可能性もあるのですから、たまったもんじゃありません。

ちなみに共産党は、この法案に対して解同が関わっているとして強く反対しています。

このように「批判」と「ヘイトスピーチ」は、どこで区別するのか微妙な問題を多く含んでいます。

また、今回のような「摘発」がつづけば、事実上在日朝鮮人・韓国人のみが保護対象となり、他の多くの事例が不問に付されることになります。

たとえば、普天間基地や辺野古ゲート前で毎日行われている米兵や、周辺住民に対する反対運動と称する粗暴な言動は、まさに「ヘイトスピーチ」そのものです。

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あるいは、諸外国のように、「地域の安寧を乱す」や「暴力的脅迫行為」などの基準も盛り込むべきです。

となると、このようなデモはどのように解釈したらいいのでしょうか。

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このような共産党のデモのように、為政者の首をブルで引き潰したりすることは「ヘイトスピーチ」に当たらないのでしょうか。

ですから、このような言論の自由と抵触する可能性がある「法規制」は、一部のノイジーマイノリティの主張に偏ることなく、もっと議論を深めていく必要があるのです。

このような法務省の軽さがたまりません。

 

2015年12月22日 (火)

ロシア情勢あれこれ

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名無し氏からこんなコメントが入っています。この過去記事に対してです。HNは入れてくださいね。
※過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-0756.html

「トルコが、国境を南に5マイル、勝手に中立地帯にして移動しました。ロシアSU-24は、あくまで、従来の、国境内を飛行しており、領空侵犯ではないと言っています。エルドガンは、ISISの「盗掘原油」を売りさばき、莫大な利益を上げてきました。毎日、何万台もの、タンクローリの車列が、ロシアの軍事衛星から、撮影されています。」

この人の主張は、ロシア側の主張をそのままなぞっています。 

在日大使館ツイッター(※1)や、通信社のスプートニク(※2)などは、私もチェックしています。なかなか面白いですよ。
※1 https://twitter.com/RusEmbassyJ
※2 http://jp.sputniknews.com/ 

こんなきれいな写真もあって、私は毎日覗いています。 

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ツイッターはロシア料理や自然なども取り上げていたのに、このところは、トルコ憎しの一色になってしまいました。 

たまに別なのが出ると、これがまた、クリミアとロシア本土のエネルギーが接続されたなんてものだったりします。                      

クリミアの本土はエネルギーブリッジで繋がりました。2本の海底ケーブルは、450メガワット以上の電力を供給しています。その結果、ロシアのクリミアは への依存を免れました」(12月17日)

このことについてはさらに詳細にスプートニクが報じています。
※http://jp.sputniknews.com/russia/20151208/1288276.html

「8日午前7時の段階で、クリミアの全ての消費者に対するエネルギー供給は、完全な形で実行された。ウクライナからの電気の流入量は、104メガワットだった。
クリミアのエネルギー・システムは、一週間以上、絶縁された形で稼働していた。11月21日から22日にかけての深夜、ウクライナ南部の送電塔2基が破壊された後、クリミアへの電気エネルギーの供給は完全にストップしていたからだ。クリミアとセヴァストーポリには、非常事態が導入された。
ウクライナ国内でクリミア封鎖を求める勢力は、損傷を受けた送電塔の修理を許さなかった。
12月2日、プーチン大統領は、クリミアを訪れ、ケルチ海峡を通じてクラスノダール地方からクリミアに至る「エネルギーブリッジ」第一期分のスタートを命じた。これにより、クリミアには230メガワットの電力が追加的に送られた。12月20日までには、さらに230メガワットの送電がなされる。
「エネルギーブリッジ」の第二期分がスタートすれば、送電量を、800から840キロワットに増やすことができる。第二期分建設は、2016年夏までに完了する予定だ」

これには説明がいります。

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ご承知のように、ロシアは侵略的手法でクリミアを併合し、東部ウクライナを事実上の保護領にしました。

上の写真は、クリミア半島を電撃的に軍事占領したロシア軍ですが、所属する部隊表示がありません。

もちろん国際法違反もいいところの覆面部隊ですが、使っている武器や車両からすぐにロシア軍だとバレました。

東部ウクライナも、クリミアと同じ手法の「住民投票」という手段を使って併合を試みましたが、こちらは苛烈な内戦に発展してしまい、多くの犠牲者を出してようやく停戦合意ができところです。 

たぶん、今の停戦ラインが固定化されてしまう可能性が高いと思われます。

それはさておき、自国領を半分奪われた西ウクライナのナショナリストは治まりませんから、クリミアにイヤガラセをします。 

ちなみに、西ウクライナの民族主義者の主流はネオナチです。レッテル貼りではなく、自分でそう名乗っているのですから間違いありません。 

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 この上の写真はスヴォボダ (自由党)の党首オレフ・チャフニボクですが、ウクライナの親ロシア政権を暴力で倒して、今や450議席中36議席を擁するウクライナで四番目の政党にのし上がりました。 

彼らは、イギリス国民党(BNP)や、ヨッビク(ハンガリーの極右政党)等と共に、ヨーロッパ民族主義運動という極右の一員です。 

こういううさんくさい連中が作っているのが現ウクライナ政権で、米国が裏で工作していたことはほぼ間違いない事実です。 

下の写真の中央の女性が米国務次官補ビクトリア・ヌーランドで、左側にいる人物がこのチャフニボクです。

この写真は、ウクライナ政変直前に撮られました。 

なにをヌーランドがなにをしに行ったのか、分かりませんが、ここに写っているメンツが政変後の新政権の中枢となったわけで、プーチンがどのように考えたのかは、想像するまでもありません。

確かに文句なくクリミア侵略は悪行ですが、このような事情が絡んでいるのは、プーチンのために弁明してあげてもいいでしょう。

nuland in ukraine

 ウクライナに関しては10回以上記事にしていますので、よろしかったらご覧ください。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-50bf.html 

つまり、ネオナチvsプーチンという、ウルトラ民族主義同士の戦いなわけで、こういう情念が強い者同士の争いごとに、絶対に解決はありません。 

このように民族主義というシロモノは、扱いを誤ると実に手がつけられないものに成長してしまいます。

気をつけなさいよ、翁長さん。 火の無いところに放火すると、とんでもない悲劇に発展しますよ。

さて、今回、クリミア半島は11月22日から1カ月間闇の中でした。送電鉄塔を破壊されたのです。 

ロシアは無理無体でもぎ取ったのはいいのですが、クリミア半島はロシア本土と繋がっていない飛び地なのです。 

クリミア自体は食糧も電気ガスも自給ができない土地で、ウクライナと切断された場合には、黒海からの補給で生き延びるしかありません。 

ただし、よくしたもので、クリミア近海にはウクライナの数少ない天然ガス田があって、クリミア半島を通過して、ウクライナ本土にパイプライン輸送されています。 

ですから、簡単にロシア領となったクリミアを締めつけるために、ガスのコックをひねることができなかったわけです。 

そんなことをすれば、自分たちの頼りないガス自給率を大幅に落とすことになりますからね。 

ただし、水と電気は別でした。おいおい、水までもかよ、と思いますが、水もパイプラインでウクライナからもらっています。 

プーチンは、かねがねケルチ(クリミア 半島東端)とロシア間にエネルギー架橋を作る計画でした。 

プーチンとしては、このエネルギー架橋ができてから、クリミア強奪をする予定だったようですが、情勢が許しませんでした。 

それは、スボボダのようなネオナチが、強引に親ロシアのヤヌコビッチ政権を倒してしまったからです。

彼ら武装したネオナチは、古都キエフに火を着けて、黒こげにして「革命」を成就してしまいました。

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 というわけで、クリミア半島は非常に維持しにくい場所だったのですが、クリミアを強奪されたウクライナ・ネオナチも黙っていません。

クリミアの命の綱の送電鉄塔をぶっ倒しました。 

「クリミアに近接するウクライナ・ヘルソン州の2カ所で4基の送電塔が爆破されたこと。クリミアの地元政府は非常用のガスタービン発電装置を作動させたが、半島の主要都市では1日数時間しか電力をまかなえず、都市機能がまひ状態に陥った。照明や携帯電話、交通機関など広範な分野に影響が出ている。
 送電塔爆破の実行犯は不明だが、現場付近ではクリミアの先住少数民族、タタール系(クリミア・タタール人)やウクライナ民族派の活動家がピケを張っている。彼らはウクライナへのクリミア返還を要求する立場で、「ロシアがウクライナ人の政治犯を釈放するまで送電塔の修復は認めない」などと主張している」(産経2015.年11月29日)

そこでロシアも、突貫工事でクリミアとのエネルギー架橋を作ったわけです。これが冒頭のロシア大使館ツイッターです。

ああ、いかん、IS-トルコ密輸疑惑までいかないゾ~。

急ぎ足でいきます

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上の写真は、ロシアの軍事衛星からのもので、最新の12月10日付け在日ロシア大使館ツイッターは、こう伝えています。 

「国防省(1)次のルートはユーフラテス川右岸の油田から  につながるルートです。「」が掌握する原油生産と石油精製の中枢のひとつが、デリゾールの町の近郊にあります。ここには数多くの製油所が存在しています」
「国防省 11月14日に撮影された衛星写真では、3220台のタンクローリーとトラックの大群が見てとれます。コメントの必要もないでしょう。相当な規模の違法ビジネスです」

失礼ながら、だからぁなに、という感じです。

ISの密輸うんぬんは、実態はわかりません。トルコ政府が容認したというのは、事実として確定されていないのです。

ロシアが提出した多くの写真は、ただのトルコ領との密輸のコンボイにすぎませんし、このような車列は別な方向、つまりロシアが支援しているシリア・アサド政権側にも伸びています。

ロシアはただ、都合のいい部分だけカットしているだけで、アサド政権もまたIS盗掘原油の消費者であり、そのブローカーであることはほぼ確かです。 

もう一国、軍事偵察衛星で常時監視しているのは米国ですが、米国はトルコは密輸に関与していないと否定しています。

もちろん、意見が分かれた場合、同盟国を擁護するのは仁義ですから、ほんとうのところ真相は分かりません。

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名無し氏はあくまでロシア機はシリア領内で落されたと言いますが、ロシアはただそう「言っている」だけで、ロシアは飛行経路のレーダー航跡を提出していません。

「いや、トルコは自国領を5マイル南に伸ばしたんだ。けしからん」といっても、すいません、これもロシアがそう「言っている」だけです。

つまり、国際社会の政府や報道機関は、気の毒にもロシアの言い分を追認していないのです。

おそらく、ロイターなどの様々な外信によれば、瞬間的(約17秒)にロシア機はトルコ側に入っていたはずです。下のレーダー航跡図はトルコ側が提出したものですが、信憑性が高いと思われます。

一方ロシア軍機のブラックボックス(※)は、破壊されていたそうで、ここでもロシア側は国際社会への証拠提出ができないでいます。※ボイスレコーダーなどの記録装置

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ただし侵入したという自覚すらなかったほど短時間で、「通過した」というほうが正確でしょう。

その近隣空域に、ロシアのシリア爆撃の非道ぶりに怒りを貯めていたトルコ空軍が網を張って待機していたのです。

いつも元気のいいフィフィ姐さんも、ロシアのシリア空爆をこうツィートしています※https://twitter.com/FIFI_Egypt

「シリア イドリブに露が空爆、学校などが崩壊、40人が死亡、150人以上が負傷。露の空爆111か所で583人が死亡、その98%が民間人(子供152人、女性60人)学校16、医療機関10、モスク10、市場5等が崩壊、IS支配地と無関係」(12月20日)

ましてや、ロシア軍にトルコ人と同族のトルクメン人民間人まで無差別に爆撃されて多くの犠牲者を出していますから、トルコが怒り狂っていても当然です。

トルコ空軍はただ漫然と「待って」いたのではなく、たぶんCAP(戦闘空中警戒)状態で待ち構えていたと思われます。

逆にロシア側からすれば、「待ち伏せされた」という感じに受けとられるでしょう。

そしてトルコは、一瞬のトルコ領通過を見逃さずに撃墜し、不運にも脱出した2名のうち1名がトルクメン・ゲリラによって惨殺されてしまいました。

これはトルコにとっても誤算で、あとはご承知のようなパイの投げ合いになっていくわけです。 

このような藪の中状況の場合、国際社会の情報が蓄積されるまで「分からない」という状態に耐えることです。 

こういうのを見ていると、日本人はすぐに「どちらが正しいのか」という価値観を持ち込む発想をしがちですが、どちらもヘンです。

まさに利害とエゴの衝突であって、本来、国際社会はそういうものなのです。

2015年12月21日 (月)

武蔵野市議会・移転反対意見書 市議会意見書をプロパガンダの道具に使うな!

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今日はふたつの東京都の市議会で可決された、辺野古移転に対する意見書を転載します。 

なお、このふたつの地方議会の意見書は、地方自治法99条に根拠を持つと記されていますが、まずそこから押えておきましょう。 

今まで平和問題や原爆・原発について、多くの意見書を決議してきた広島市議会は、こう述べています。
※http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/gikai/contents/1267603337952/index.html

「●意見書
地方公共団体の公益に関することに関して、議会の意思を意見としてまとめた文書のことです。
地方自治法第99条には、「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる」と規定されており、具体的には、議員が発案して本会議にはかり、議長名で関係機関に提出します。
決議について
議会が行う事実上の意思形成行為で、政治的効果をねらい、あるいは議会の意思を対外的に表明するために行われる議会の議決のことです
決議の内容は、当該地方公共団体の公益に関する限り広範な問題も可能で、例としては、平和に関する意思を表明するもののほか、法的効果を伴うものがあります。
具体的には、意見書と同じように議員が発案して本会議にはかりますが、賛成多数で可決されてもどこかに提出するということはありません。また、意見書とちがって法的な根拠はありません。」

このように広島市議会は、「意見書」と「決議」の違いは、決議は政府などに提出するものではない所が違うようです。

ただし、ここで「平和」と例示されていますが、この概念はある意味非常にキケンで、どこまでも拡張することが自由自在な抽象的なものなのです。

これに引っかければなんでも言えてしまいます。

今回の地方自治体の「意見書」もまた、「地方自治」という幅が広い概念について政府に「意見」を述べるという形をとっています。

しかしそれが果たして、地方自治法99条のいう「当該普通公共団体の公益」と関係あるのかどうなのか、というかんじんなことが理解できません。

この武蔵野市議会は、今年「集団的自衛権容認反対」の意見書なども出しているようですが、武蔵野市の「公共団体の公益」と、どうこの辺野古移設が関わりがあるのでしょうか、私にはさっぱりわかりません。
※https://www.facebook.com/kenpou.jp/posts/492138984251431

また、武蔵野市議会意見書については我那覇真子氏以下323名が撤回の請願をしましたが、7対18で否決されています。

ちなみにどーでもいいですが(失礼)、武蔵野市議会の構成は以下のようです。

・自由民主・市民クラブ・・・7名
・民主生活者ネット   ・・・5
・空             ・・・4
・公明            ・・・3
・共産党          ・・・3
・むさしの志民会議   ・・・2
・無会派          ・・・2

自民が撤回陳情賛成で、公明が沖縄よろしく寝返ったようですね。

なおこの意見書を推進した議員のブログを読むと、名護市のパンフレットを丸写しにしています。

ですから、毎度お馴染みの翁長党の主張と、内容も表現もまったく同一です。

えー、願いましては・・・

●武蔵野市議会意見書要旨
・0.6%の土地に74%の米軍基地
・基地公害
・沖縄戦
・民意
・銃剣とブル
・ジュゴン

う~、既視感というより、反対派の主張を一言一句、全部丸写しただけじゃないですか。

ちっとは、他人の自治体の案件に首を突っ込むんですから、ためらいとか配慮がないんですか(ため息)。

これじゃあ、賛成反対という前に、思考停止状態です。

思考停止しているならしているで別にかまわないのですが、地方議会の意見書という手段を使って、他の自治体と国の係争に首を突っ込むのですから、独自に調査するくらいしたらいかがでしょうか。

少なくとも、自分の自治体の事案ではないのですから、現地から賛成反対の両者を呼んで簡単な聞き取りをするべきでした。

しかし初めから結論ありきですから、現地からの300名を越える我那覇さんたちの撤回請願があっても、初めから聞く耳をもたない、といった様子でした。

我那覇さんは夜の10時まで賛成会派に取り囲まれで、うら若い女性ひとりに対して何人もの賛成派議員が多数を頼んでネチネチと揚げ足を取り、まるで糾弾会もどきだったようです。

この人たちには、礼儀という感覚が欠如しているようです。※http://www.sankei.com/politics/news/151210/plt1512100038-n1.html

なにかというと、「国は現地の県民の声を聞け」と言いたがる人たちに限って、このダブスタぶりです。

これでは、地方議会はただの国会のコピペにすぎません。 

なおもうひとつのコピペであるマスコミは、豊島区議会意見書についてまったく報道していませんが、武蔵野市議会のそれについては何紙か報道しています。 

まぁ、いつもの本土マスコミの報道パターンで、驚くことはありませんが、いいかげん両論並記するていどの報道の公平性への配慮が欲しいものです。

なお、豊島市議会の賛成の意見書も掲載しておきます。

これも前提としては、武蔵野市議会に対してと同じく、「おたくの地域と関係ないっしょ」という私の意見は留保しますが、たぶん豊島区議会のほうはそれも分かっていてこう述べています。

「地方自治体は協議会などを通じて、また地方議会は意見書などを通じて、それぞれ政府に対して意見を伝えることはできますが、沖縄の在日米軍の問題は外交や国家の安全保障に関わる問題であり、最終的に責任をもつのは政府の役割です」

たぶん書かれた人が自分の頭脳で格闘した様子が分かる、簡潔ないい文章です。

まぁ、心静かに読み比べてみてください。

地方自治法99条で定める市議会意見書は、あくまでもただの「意見」でしかなく、なんの法的拘束力もありません。

ですから、広島市議会が定義する「決議」と同じく、「政治的効果をねらい、あるいは議会の意思を対外的に表明するために」だけ行われるものにすぎません。

しかも本来、あくまで根拠法の地方自治法は、「当該自治体の公益」に限定しているのであって、特定の政治勢力のための政治プロパガンダの道具ではないのです。

武蔵野市議会は、根本的にそこをはき違えています。

 

 

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●毎日新聞(2015年9月17日

「武蔵野市議会は16日、沖縄県名護市の米軍・辺野古新基地の建設を強行しないよう政府に求める意見書を賛成多数で可決した。議長を除く市議25人のうち18人が賛成した。  意見書は「基地強化は、沖縄県民を再び戦争の惨禍に巻き込む危険性を高める。繰り返し示された沖縄の民意を踏みにじって基地建設を強行することは、地方自治の侵害と言わざるを得ない」と指摘し、地方自治を尊重するよう求めている。
 意見書提出を陳情した市民団体「辺野古アクションむさしの」の高木一彦代表(63)は「『沖縄の気持ちに寄り添わなければならない』という趣旨に賛同してくれたことに感謝する」と話している。
 名護市議会によると、基地建設を巡っては、長野県白馬村議会と愛知県岩倉市議会が地方自治の尊重を求める意見書を可決。大阪府吹田市議会と兵庫県尼崎市議会が名護市議会の建設反対意見書の尊重を決議している」
 


武蔵野市議会意見書
地方自治の尊重を政府に求める意見書 

日本全土の0.6%の面積しかない沖縄に、在日米軍の専用施設の74%が集中しています。先日も起きた米軍機の墜落や繰り返し発生する米兵の女性に対する暴行事件など、沖縄県民はこの米軍基地に苦しめられ続けています。

沖縄が、第二次世界大戦において本土防衛の捨て石とされ、総人口の5分のlにあたる12万・人の民間人が地上戦で犠牲となり、戦争終結後も1972年の本土復帰まで27年間、米軍の軍政下に置かれてきたことを考え合わせれば、これ以上の犠牲を沖縄県民に押しつけることは許されません。
ところが、日本政府は、「世界一危険な基地」である普天間基地の返還のかわりであるとして、辺野古に新基地建設を決め、昨年11月の沖縄県知事選挙や暮れの衆議院議員選挙で、沖縄県民から、はっきりとした基地建設反対の声が示されたにもかかわらず、その建設を強行しようとしています。
普天間基地も、もともと沖縄県民の土地を一方的に取り上げて作られたものです。それを返還するからと言って、どうして、ジュゴンやアオサンゴ、260種以上の絶滅危倶種を含む多様な海洋生物が生息する辺野古・大浦湾を埋め立て、環境を無残にも破壊して、辺野古に新基地を建設しなければならないのでしょう。
沖縄戦の最大の教訓は、「軍隊のいるところで住民は戦争に巻き込まれて死ぬ」というものです。新基地建設による基地強化は、沖縄県民を再び戦争の惨禍に巻き込む危険性を高めます。また、繰り返し示された沖縄の民意を踏みにじって、辺野古基地建設を強行することは、地方自治の侵害と言わざるを得ません。
よって、武蔵野市議会は、貴職に対し、地方自治を尊重し、辺野古新基地の建設を強行しないことを求めます。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

※http://blog.livedoor.jp/go_wild/archives/52436389.html 

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「地方自治の尊重を 政府に求める意見書」の撤回要請に関する請願 

請願者  :我那覇 真子 ほか323名
紹介議員:高野恒一郎  きくち太郎  木崎 剛  堀内まさし

請願の要旨

 先ごろ武蔵野市議会によって「地方自治の尊重を政府に求める意見書」が議決されましたが、その内容の当事者である沖縄県名護市民として、そしてその真実を知る国民としては、この議決が大きな誤りであり、武蔵野市議会の名誉を大きく傷つけるものであると申し上げなければなりません。
沖縄県民にして名護市民である私は、議決の前提となった認識の誤りを以下に指摘したいと思います。
  第一に、問題となっている普天間基地は名護市にある米軍辺野古基地内に移設されるのであって、新基地建設ではありません。危険性除去のための移設であるので移設反対とは言いづらく、そのためあえて新基地建設反対と誤用しているのです。つまり本質は反米反安保闘争なのです。
  第二に米軍辺野古基地は地元が村おこしのために1959年に誘致してできた基地であり、決して強制収用されたものではありません。
  第三に普天間基地返還は、他の米軍基地を含む大幅な基地の整理縮小の一環でありますが、これら反対運動のために大規模基地返還が実現しません。
これは大変大きな矛盾です。そしてその悪影響ははかり知れません。例えば、当該辺野古区の生活インフラの整備は20年以上もおくれたままです。
そもそもこれは国の専権事項であって地方自治の問題ではありません。
  第四に民意について、移設先の辺野古区民は20年前の当初から住民の8割以上の方が移設に賛成です。選挙の民意についても普天間返還が合意されてから反対派は知事選で4連敗、名護市長選で3連敗しています。
民意はもうとっくに移設に賛成だったのです。その後シェア98%を占める地元新聞の偏向捏造報道によって世論が誘導され、ゆがめられているのです。
 上記はマスコミの偏向によって正しく全国に伝えられていません。沖縄の反戦平和運動なるものが、その実態が過激派を含む左翼団体の反日反米反安保闘争ということを知るとすべての平仄が合います。
例えば、左翼過激派が中心となって行う軍用地一坪反戦地主という運動があります。武蔵野市議会の議決を受けてご当地で講演を行った稲嶺進現名護市長自身が、実はかつての一坪反戦地主のメンバーでありました。
また、米軍辺野古基地ゲート前で座り込み抗議をしているのは、プロ活動家であり地元の人間はほとんどいません。これこそが正しい認識の前提となるものです。これを知らされないがため、武蔵野市議会はその議決によって沖縄の反日反米反安保闘争を支援するものとなりました。まことに残念なことです。
 私は、これに関連して去る9月22日にスイス、ジュネーブの国連人権理事会において翁長沖縄県知事に続いてスピーチし、翁長知事の流す反日反米の虚偽情報を是正しました。武蔵野市議会もまた、その名誉を回復しなければならないと私は強く思います。武蔵野市と名護市の正しき友好関係の発展を願うとき、誤りはやはり正されなければなりません。
  以上の趣旨から下記のことを請願いたします。

※我那覇氏についての関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-d7ca.html

                       
豊島区議会意見書

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進めるとともに、正確な情報発信を丁寧に行うことを求める意見書

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設については政府と沖縄県知事の意見が対立しています。普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないという考えは一致しておりますが、移設場所が名護市辺野古なのか、県外移設が可能なのかという点が一致しません。

我が国の安全保障上の問題がない範囲で、在日米軍施設・区域(専用施設)が集中している沖縄の負担軽減は極力図られるべきです。
しかしながら、南西諸島のほぼ中央にあり、我が国のシーレーンにも近いなどの沖縄の地理的特徴を踏まえ、緊迫している東アジア情勢に鑑み、普天間飛行場の名護市辺野古移設が不可避であるという結論に日米政府でいたっております。
これらの検討過程では県外移設を含めて可能性を探っていますが、東アジアの安全保障環境に不安定性・不確実性が残る中、我が国の安全保障上きわめて重要である在日米軍の抑止力を低下させることはできないという判断がありました。

また、普天間飛行場の移設は、沖縄の負担軽減にもつながるものとなっています。これまで同飛行場が担っていた米海兵隊の航空能力の一部の移転にとどまるほか、代替施設建設のために必要な埋立て面積は、普天間飛行場の3分の1以下となり、滑走路も大幅に短縮されます。さらに飛行経路についてですが、代替施設では海上へ変更され、騒音および危険性が軽減されます。
例えば、普天間飛行場では住宅防音が必要となる地域に1万数千世帯の方々が居住しているのに対し、代替施設ではこのような世帯はゼロとなります。

これまでの日米政府間の交渉では、沖縄の負担軽減について何度も議題となり、平成23年6月の日米安全保障協議委員会(通称「2+2」。日本の外務大臣、防衛大臣+米国の国務長官、国防長官)会合などで、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊の要員8,000人とその家族約9,000人が沖縄からグアムに移転すること。
この移転および、その結果として生じる嘉手納以南の土地の返還については、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことも、平成24年4月の日米安全保障協議委員会共同発表で決定しています。現在検討に入っている全ての返還が実現すれば、沖縄本島中南部の人口密集地に所在する米軍基地の約7割が返還されることとなります。

このように、政府としても沖縄の負担軽減に全力で取り組むという基本方針のもとで、日米間の協議は行っております。

地方自治体は協議会などを通じて、また地方議会は意見書などを通じて、それぞれ政府に対して意見を伝えることはできますが、沖縄の在日米軍の問題は外交や国家の安全保障に関わる問題であり、最終的に責任をもつのは政府の役割です。政府には沖縄における負担の軽減には引き続き最大限取り組むとともに、米軍と連携した安全保障の体制構築に万全を期して頂きたいです。

以上を踏まえ、国または政府は、米軍普天間飛行場の辺野古移設を着実に進めるとともに、在日米軍と連携をしつつ沖縄の負担軽減策について最大限取り組んで行くこと、これまでの経緯を含めた辺野古移設や沖縄の在日米軍施設・基地の返還などの他地域を含めた情報の周知活動に取り組んで頂きたいです。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

http://www.city.toshima.lg.jp/367/kuse/gikai/ikensho/h27-04/1512081621.html

※いつもすいません。悪いくせで、また改題して加筆してしまいました。

2015年12月20日 (日)

八重山日報仲新城誠編集長インタビュー全文

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産経新聞12月19日に掲載された、八重山日報仲新城(なかしんじょう)誠編集長のインタビューを全文転載いたします。

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■「沖縄2紙は反権威のようで実は『権威』そのもの」「中国の国営放送そっくり」
八重山日報仲新城誠編集長のインタビーュ

石垣島を拠点とする日刊紙、八重山日報の編集長を務めています。部数は6千部と、琉球新報、沖縄タイムスの沖縄県の2大紙とは比べるべくもありませんが、2紙では報じられない八重山の実情の報道に努めています。

 沖縄では、この2大紙のシェアが圧倒的です。本土であれば産経、読売、朝日、毎日とさまざまな新聞があり、読者にとっては、自分の考えを論理的に裏付け、活字で表現してくれる多様な選択肢がある。しかし、沖縄には2紙が唱える「反米軍基地」「反自衛隊」という一つの論調しか存在しません。

 選択肢が存在しないため、県民はその論調が正しいと信じ込まされている。2大紙は翁長雄志知事とタッグを組み、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する運動の事実上の「核」になっています。反権威のようで、実は「権威」そのものなのです。

 本土でも、2大紙が発信する「県民は基地のない島を望んでいるのに、日米両政府に弾圧されている」という「虚構の沖縄」の姿が流布されているように思います。

先日、東京で武蔵野市議会を取材しました。市議会が9月に辺野古移設に反対する意見書を可決したことに対し、沖縄県民たちから意見書の取り下げを求める請願が提出され、その審査があったのです。

 しかし、請願の採択に反対する市議の意見を聴いていると、「やはり、通り一遍の沖縄への理解しかないのか」と感じずにはいられませんでした。「基地の島で不条理な圧力に苦しんでいる沖縄」という、一種の被害者史観です。中国の脅威にさらされる尖閣諸島(沖縄県石垣市)についても、ほとんど質問がなかったのは残念でした。

 尖閣を抱える石垣、八重山の住民には「自分たちが国防の最前線に立っている」という危機感があります。中国公船の領海侵入が常態化し、漁業者が追跡されたり、威嚇されたりすることも日常茶飯事。八重山日報では毎日、中国公船の動向を1面に掲載しています。

 しかし、2大紙はそうした国境の島の危機感をほとんど報じてくれません。それどころか、漁船が中国公船を挑発していると言わんばかりの記事や、中国が唱える「尖閣棚上げ論」に同調するような社説が掲載されている。中国の国営放送とそっくりです。

翁長知事は9月にジュネーブで開かれた国連人権理事会で演説し、「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えました。自己決定権という言葉は、反基地活動家が「沖縄独立」の文脈で使う言葉です。県民の安全に責任を持つ知事であるにもかかわらず、中国に対して尖閣周辺での挑発をやめるよう訴えることもしませんでした。

 そして演説直前に開かれたシンポジウムでは、琉球新報の編集局長がパネリストとして、翁長知事と並んで辺野古移設反対を訴えていました。取材中だった沖縄タイムスの記者もスピーチを始めました。これでは記者なのか、反基地活動家なのか分かりません。

 私自身、以前はそうした2大紙に疑問を感じつつ、積極的に声を上げることはなかった。「そう感じる自分がおかしいのだ」と思い込まされていたのです。

 転機はやはり、尖閣問題でした。現実に遭遇したことで、反基地、反自衛隊を唱える2大紙の主張は何ら処方箋にならないと分かったからです。

 私と同じような疑問を持つ県民は少なからず存在します。文字通りのサイレントマジョリティー(静かな多数派)です。

石垣市もかつては「革新の牙城」と言われてきた土地柄でしたが、この10年で大きく転換しました。保守系市長の誕生が一つの契機となり、柔軟な考えの若手市議が続々と誕生し、状況は雪崩のように変化しました。

 サイレントマジョリティーは確実に存在し、石垣では声を上げ始めている。かつて「革新の闘士」だった人ですら「自衛隊配備も仕方ない」と話すようになりました。一つのきっかけで変わる。沖縄本島でも同じように声が上がり始めれば、状況は劇的に変わる可能性があります。

 まずは、沖縄県民が毎日読まされている新聞の欺(ぎ)瞞(まん)性に気づくことが重要です。私自身も記者なので、記事の裏に込められている情報操作、県民を特定の方向に誘導しようとする意図が分かる。そういう隠された意図に気付いてほしいと思い、自分なりに情報発信に努めているところです。

日曜写真館 初冬の朝 茜色の湖

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年末になると写真雑誌は、今年出た新型器の総括みたいなことをします。

まぁ、カメラ雑誌自体、書店でパラパラ見るていどで読んだことはあまりないのですが(だってうますぎて参考にならん)、写真って、キカイなんですかね。

いや、腕がどーたらなんておこがましいことは死んでも言いませんが、私に言わせれば、いい写真を撮れるコツみたいなものがもしあるとすれば、「そこに居ること」ですよ。

ともかくその場に居ないと話になりません。どんなに40万もするカメラを持っていても、写真学校で腕を磨いて来ても、いなきゃ話になりません。

私流にいえは、「そこに居ること」9割、キカイ8分、腕2分(当社比)。

私は腕もキカイもさっぱりですが、「そこに居る」ためだけの努力はしてきました(苦笑)。

湖なんか、我ながらよー毎日行くよと思うくらい、同じコースで、同じように、能もなく歩き回っています。

朝散歩のジィ様と挨拶し合う仲となりました。

花も、樹も、空も同じで、毎日あーでもない、こーでもない、ここから撮ったらどーだべ、この光線で透かしたらどーだべ、とシャッターを無為に押しています。

寝たり、起きたり、跪いたり、丘に駆け上がったり、我ながら好きだね。

つくづくデジタルてヨカッタ。昔みたいに銀塩だったら破産してますって。100枚撮って2,3枚いいのがあればめっけもの。

すいませーん。分かったような口を叩かないことを信条としている私としたことが。

「銀塩」って銀塩フィルムのことで、アナログ・フィルムのことです。ほら、昔、24枚撮りとか32枚撮りとかあったでしょう。アレです。

一写入魂なんて、とんでもない。言ってみたい、この台詞。

私が尊敬してやまないユージン・スミスの「入浴する智子と母 」(※)を撮った時に、彼はただ一度シャッターを押して、「これでいい」といったそうです。
※http://www.atgetphotography.com/Japan/PhotographersJ/EugeneSmith.html

私などは、永久に写真は手数です(泣く)。

と、いうわけで、今日の写真も、たまたま行ったらスゴイ空で、私以外誰でも、「そこにいる」ことができれば撮れます。

あ、クリックして大きくして見てね。まるで違うから。

2015年12月19日 (土)

中国大気汚染黙示録 その5 石油派vs環境派 最強・最弱対決

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PM2.5問題は、ただの大気汚染ではなく、現在、中国社会が抱えている諸問題の縮図のようになってしまっています。 

PM2.5の原因は、北京市環境局の発表によれば、3分の2は石炭燃焼と自動車の排気ガスからです。 

北京市は、セントラルヒーティングが供給されています。戸別の暖房が大半を占める日本と違って、中国はかなり初期からソ連式の地域セントラルヒーティング方式を取り入れてきました。 

大げさに言えば、国が供給するセントラルヒーティングは、「国の威信」そのもので、毎年、習近平はセントラルヒーティングの国有企業を視察しては、「諸君らのおかげで冬を乗り切れるのだぁ。諸君は英雄だ」くらいのことは言っているようです。

北京を始め中国の大都市近郊には、1990年代以来の高度成長で続々とベッドタウンが出現していますが、そこにも家庭にはストーブがなく、一括して地域ボイラーセンターがスチームを供給しています。

中国に来たばかりの日本人は、「うわー、なんて進歩しているの」と思う人も多いようです。いかにも「美しく誤解する」のが得意の、日本人らしい誤解です。

「進歩している」というより、都市部ですら安定的に温源を確保できない人が多かったために、国が提供しただけの話が始まりです。

当時、中国はバリバリの社会主義国だったせいもあって、ソ連とか東独をまねたようです。

元祖のソ連では、革命初期に、指導者は「電化と温水供給が社会主義だ」と叫んでいた時期もあるくらいです。

元々、マルクス学説は剰余価値学説に立つために、労働がすべての価値の源泉だと考えますから、半面その労働の廃棄物としての「環境」という概念はどこにも位置づけしようがありませんでした。

それもあってか、マルクス主義の体系には「環境」というが概念そのものが欠落しており、中国のみならずすべての社会主義国は環境問題自体について、「考えたこはもなかった」というのが本音だったのです。

ですから、自由主義に復活したあとの東欧諸国は、社会主義時代の環境汚物の処分に今も祟られています。

それはさておき、こういうボイラーセンターで使用する石炭が問題です。ご想像どおり、質の悪い硫黄分の多い褐炭か、さらには泥炭が大量に使用されています。 

これらは、多くの汚染物質を排出しますが、多くはそのまま無処理で排気しています。 

北京市人口は2012年末現在で2000万人を突破していますから、そこで使用される石炭量はハンパではなく、周辺地域の工場の使用量と並ぶほどだといわれています。

大気汚染を問題視した北京市は、2012年に、市内の2か所のボイラー・センターを天然ガスに切り換えする工事を行いました。 

しかし、その数わずかに1年で20万戸。このペースで言っても100年かかる計算です。しかも天然ガスは料金的に高くなるので、市民に必ずしも好評ではありません。

国としては2018年にロシアとの天然ガスパイプラインが結ばれるので、そこをメドにしたい考えですが、なかなか進まないようです。 

首都でもこの調子ですから、地方都市などは想像するまでもありません。

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というのは、地域ボイラーセンター以外に、北京市3分の1にセントラルヒーティングを供給している企業があります。 

北京市熱力集団といって中国でももっとも古い企業に属し、1958年創業の巨大な国有企業グループです。

当然、言うのもヤボですが、共産党権力との強固なつながりをもっています。 

この北京市熱力集団の供給エリアには、習近平や李克強がのたくっている中南海が含まれていて、軍や各国大使館も、すべて熱力集団から暖房を引いているそうです。

習が激励に来たのも、この熱力集団で、ナンのことはない、自分を温めてくれていたわけです。 

暖房を供給している総面積は2億2300万㎡、送熱管の長さにして1400kmにも及ぶそうです。

東京ガスが総延長約6万㎞ですから、さすがにそれより小さいですが、規模の大きさはお分かりになると思います。 

実はこの熱力集団が、市の天然ガス化の方針に反対し続けています。 

さきほど述べたように2012年に北京市政府は、石炭の燃焼量を当時の年間2300万トンから、5年後の2017年に1000万トンまで減らすと決めました。 

熱力集団も、エネルギー源を安い国産の低品位炭から、高いロシア産天然ガスに替えていかないといけなくなっていました。

当然、コストがグンとアップします。プラントも大幅に変更せねばなりません。料金も高くする必要があるし、いいことはなにひとつありません。 

現実には、政策的に安くされている市民向け料金を値上げできない以上、熱力集団が被ってしまうことになります。 

とんでもない!と熱力集団が叫んだのは言うまでもありません。 

彼らからすれば、国家のエネルギー政策そのものにに関わるような大変革を、いち国有企業のオレたちに押しつけられてたまるもんか、という怒りがあります。

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しかも、そもそもこの背景には、北京市熱力集団と石油国有企業との宿縁の権力闘争があるときていますから、ややっこしい。 

このロシア産天然ガスを導入するという天然ガス化推進政策を作ったのは、もうひとつの汚染源であるはずのシノペックやペトロチャイナなどの石油業界なのです。 

現在中国のガソリン基準は、「国4」、「国5」化という硫黄分の少ない先進国レベルのガソリンを目指していますが、遅々として進んでいません。

それもそのはず。環境基準の改正プロセスに、石油業界や自動車関連業界などの利益団体が大きく関与しているからです。 

事実、「国5」ガソリン規制基準の原案づくりをリードしたのは、石油大手「中国石油化工有限会社」(シノペック)に属するシンクタンクでした。

また、中国『科学日報』(2014年1月3日)によれば、硫黄規制値の厳格化を求める環境系委員の提案も、コスト上昇や燃費性の低下を懸念する石油・自動車業界からの強い意見で握り潰されるか、あらかじめ逃げ場を作ったものに変えられてしまっています。 

環境派は、今回のPM2.5の直接の原因となった発揮性有機物削減のために、より低いリード蒸気圧を主張しましたが、揮発性の低下による着火性への影響を懸念する石油・自動車派に押し切られてしまったようです。

また、原案審査に関わる専門家委員会は、いちおう環境分野の専門家もパラパラと彩りていどに紛れ込んでいますが、頑として主体は石油国有企業と、自動車国有企業のふたつから出されています。

ちなみに中国の官庁に就職する大学卒業生は、いちばん成績のいいものから順にエネギー部門から配置されて、ドンケツが環境部だそうです。

環境部は賄賂もあまり取れず、共産党権力との結びつきもないという、うま味のない職種とされています。

一方、石油エネルギー部門は、チャイナ・セブンに人を送り込むようなエリート中のエリート。

環境部vs石油・自動車業界の戦い、最弱と最強の闘争というわけで、やる前から勝敗は分かりきっていますね。 

このように、環境基準の改正などは、いくら国が決めてもザル。絵に描いた餅というわけです。

 

2015年12月18日 (金)

中国大気汚染黙示録 その4 越境汚染

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越境してくる中国からのPM2.5は、地球の自転が逆にならない限り、防ぐ術はないから困ります。川下国民の哀しさです。

川上でどんちゃん騒ぎをして、その祭のあとのゴミや汚物が流れてくる水を飲み、空気を吸って暮らすのが、私たちです。

おまけに他人様の敷地にまで車を乗り入れて、オレのもんだといってくる。なんともかとも迷惑この上ない・・・。

今回の大気汚染の影響は既にでています。直ちに影響がでるのは、沖縄、奄美、北九州、山陰、北陸地方などです。

下の写真は、沖縄県那覇首里崎山町の情景16日の情景です。うっすらとかすんでいるのがPM2.5です。

Photo_4

(写真 環境基準値を超えるPM2・5が観測され、もやがかかったようにかすむ那覇市内=16日午前9時50分ごろ、那覇市首里崎山町から県庁方面をのぞむ。沖タイ2015年12月16日)

沖縄県では、既に日本の基準値35マイクロ/㎡を上回っています。

●沖縄県大気汚染常時監視テレメーターシステム・12月16日午後9時~10時
・沖縄市・・・37
・宮古市・・・36
・石垣市・・・39

同日の中国からの拡散状況をリアルタイムマップで見てみましょう。
※http://pm25.jp/
Photo_6

沖縄県から奄美にかけて「影響が多い」に分類されているのが分かります。

次に詳細な日時は明らかになっていませんが、NASAの気象衛星が撮影した写真です。

大陸から沖縄方向に向けて、汚染された大気が流れているのが分かります。シミュレーションマップではなく、実際のものを見るとなんとも言えぬ不愉快な気分になります。

Photo_2

次に、環境省の注意喚起のための暫定的な指針の判断方法の改善について(第2次)[500KB]によれば、現在の沖縄県の観測値は基準値35を少し上回った程度なので、特別な制約がかかる状況ではありませんので、ご安心下さい。

ただし、専門家は外出時のマスク着用や、屋外での激しい運動を控えるように呼びかけています。

マスクは、N95と書いてあるもののほうが有効です。

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ちなみに、中国の基準値は75超で、日本ではレベルⅡに相当し、屋外活動に制限がかかる状況ですが、そこが中国の基準値のボトムです。 

まぁ、200、300ていどであたり前、500、600がザラの国ですから、75程度だと「おお、なんてキレイな空気」と思うんでしょうかね。 

ちなみに、訪日中国人旅行者が、東京に来ていちばんタマゲルのは、「首都で深呼吸できるなんて・・・!」ということのようです。 

ハフィントンポスト(2015年08月18日)にはこう報じています。 

「中国の人口約14億人の3分の1以上が、定期的に「健康を害する」大気で呼吸している。新しい研究によると、中国では大気汚染で毎日約4400人が死んでいる。
カリフォルニアを拠点とする気候調査団体「
バークレイ・アース」によると、中国では毎年約160万人死んでいると推定した。死因は地方の大気汚染による健康被害だ。
研究によれば、中国の人口のうち3分の1以上の人が、日常的にアメリカの基準で「健康を害する」と考えられる大気の環境で呼吸しているという。
『これは大きな数値です』と研究グループのリーダー、ロバート・ローデ氏はAP通信の取材に答えた。『ちょっと理解しがたい数字ですね』」

まさにこの研究者の言うように「理解しがたい数値」です。 

グリーンピースが4月に報告したデータによれば、2015年第1四半期で中国が定める環境大気質基準に達した都市は360都市、全国土の10%だけだったといいます。 

またWHOは2014年に、年間700万人が大気汚染にさらされて死んでいると報告しています。 

さて去年5月、米国やスペイン、日本が参加する国際研究チームは、日本の代表的な呼吸器病である川崎病が、中国との関係があると『米国科学アカデミー紀要』に発表しました。 

日本で研究に当たった自治医科大学公衆衛生学教室・中村好一教授らの研究チームは、1970~2010年の日本の川崎病調査のデータにおける、発症日と気流との関係を調べた結果、過去3回の流行期では、中国北東部からの風が強く吹き込んでいたことがわかりました。

「日本で川崎病が大流行した1979年以降、発症者が多かった日の気流を調べたところ、いずれも中国北東部の穀倉地帯付近から流れだしてきたと推測されたという。風の到達から6時間から2.5日以内に発症者がでていたことも判明した。」(産経2014年10月11日)

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《川崎病全国調査からみた川崎病疫学の特徴とその変遷》より)

この流行期の風が運んで きた微粒子を分析したところ、マウスの実験で川崎病との関連が指摘されているカビの一種のカンジダ菌などが含まれていました。

上図の川崎病罹患推移グラフを見ると全国規模の川崎病のピークが3回出ています。1979年、1982年、1986年です。

そこで同年に中国でなにがあったのかを調べてみましょう。いずれも、このカンジタ菌を含む風の震源地である中国穀倉地帯に大きな変化が現れた年です。

●中国農業の変化
・1979年・・・中国政府生産刺激策、農産物買付価格を18年ぶりに大幅に引き上げ
・1982年・・・1月より個別農家への請負制を認める。集団営農だった人民公社制度急速に解体される
・1986年・・・生産の自由化。農産物と副産物の統一買付けと割当買付け制度廃止

このような、中国農業の自由化⇒生産量飛躍的増加の節目節目に、日本の川崎病の全国的ピークが合致することが分かりました。

この後、このような顕著なピークはなくなった代わりに、ご覧のように右肩上がりで小児人口10万人当たり罹患率は上がって行く一方で、1982年のピーク時を凌いで、まだ上がり続けています。

というのは、中国共産党は2004年から2008年にかけて、再び農業刺激策を毎年打ち出すようになったためだと考えられます。

中国環境科学研究院のGao Jixi生態学研究所長はこう述べています。
China's agriculture causing environmental deterioration,xinhua
.net,7.5

「化学肥料と農薬の大量使用は厳しい土壌・水・大気汚染をもたらしてきた。中国農民は毎年、4124万トンの化学肥料を使っており、これは農地1ha当たりでは400kgになる。これは先進国の1ha当たり225kgという安全限界をはるかに上回る。
中国で大量に使われる化学肥料である窒素肥料は、40%が有効に利用されているにすぎない。ほとんど半分が作物に吸収される前に蒸発するか、流れ出し、水・土壌・大気汚染を引き起こしている。」
(2006年7月5日新華報英語版)

化学肥料は土を豊かにしません。単に作物に成長栄養を与えるだけです。

むしろ過剰な窒素は、作物をひ弱にし、植物が利用しきれなかった窒素は硝酸態窒素として、土壌に沈下し、そして水系に流れ込みます。

1985年から2000年の間に、1億4100万トン、1年当たりにして900万トンの窒素肥料が流出し、土壌や水系を汚染しました。

病虫害を抑え、見てくれをよくして商品価値を高める化学肥料を過剰に使用すれば、作物を化学汚染させていくばかりか、天敵生物を滅亡に追い込み生態系を破壊し、畑の外にまで汚染を拡げます。

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また中国の農薬使用量は年間120万トンにのぼり、年々増加する一方です。

これは、日本も経験したことですが、害虫には農薬に対して耐性を持つようになるからです。

仮に100匹の害虫がいたとして、それに農薬散布して、仮に百回に一度農薬耐性を持つ個体が発生した場合、以後農薬の効果は急速に衰えていき、やがてまるで効かなくなります。

農薬耐性を持つ害虫は繁殖力も強いからです。人間は毎年より濃度を上げた農薬を散布するしかなくなり、その無限地獄が始まります。

現在の中国は、農業外からの工場排水に冒される前に、内在的に大きな問題を抱えていたのです。それは化学肥料と化学農薬の過剰投入という問題です。

結果、中国の湖沼の75%、地下水の50%が汚染されています。その原因の一部に農業であることは疑い得ないでしょう。

そして、今や、中国農業は、越境する大気汚染の原因にまでなってしまったようです。

※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-f114.html

2015年12月17日 (木)

中国大気汚染黙示録 その3 驀進する巨大複合汚染体

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コメントでいくつか、「中国に、かつての日本の公害が激甚だった頃を学んでほしい」というご意見を頂きました。お気持ちはよく分かりますが、正確ではありません。 

今回の中国のPM2.5などがあると、よく年配の日本人は、40年ほど前の日本を思い出して、「ああ、昔はうちの国もこうだったよ」などと言いますが、そんな生やさしいものではありません。

現在中国で発生している公害は、かつて日本人が段階的に約120年間かけて経験した様々なタイプの公害が、一挙に絡まり合って数十年のスパンで凝縮して、一挙に大爆発しているのです。

青年期の頃、私は宇井純先生の「公害原論」の講座の聴講生でした。 

ちょうど重慶の視察から帰られた先生の第一声を,今でもはっきり覚えています。 

「君たち、中国で今後、膨大な数の水俣病が生まれるかもしれない。いや、もう多数の患者がいるはずだ。ありとあらゆる化学廃液がなんの処理もされないまま川に捨てられている。有機水銀、カドミウム、六価クロム、鉛・・・。
市当局に忠告したが、まったく聞いてもらえなかった。今、中国は公害を止めないと大変なことになるぞ」

 宇井氏は、中国において、すべての分野の公害が同時に発生し、複雑に絡まりながら相乗していると語りました。 

中国の公害が解決困難なのは、公害がひとつひとつのカテゴリーの中で解決されることなく、放置され続けた結果、積み重なってもつれあ合い、手がつけられなくなっているからです。 

さて公害病はその原因により、いくつかのタイプに分類されます。 

足尾鉱毒型(鉱山産廃型)日本でもっとも古いタイプに属するのは、鉱山の廃液などによる重金属汚染です。 

たとえば日本での代表例は、日本が19世紀に経験した栃木県足尾銅山で発生した鉱毒事件です。 

「精錬時の燃料による排煙や、精製時に発生する鉱毒ガス(主成分は二酸化硫黄)、排水に含まれる鉱毒(主成分はイオンなどの金属イオン)は、付近の環境に多大な被害をもたらすこととなる」(Wikipedia下写真も同じ) 

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 中国においては、たとえば広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮思的村や、広東省大宝山鉱山周辺で発生したガンの多発などは、まさに足尾鉱毒そのものです。 

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  (Google Earth 広西チワン族自治区陽朔県興坪鎮思的村)

 思的村は険しい山あいの村で、流れが急な思的河が流れています。この村の水田は思的河を水源としていますが、村の上流15キロメートルに鉛・亜鉛鉱山と加工工場があり、これが汚染源です。  

同工場の規模は大きなものではないのですが、1950年代に採掘を開始した頃にはほとんど環境浄化施設がなく、カドミウムを含んだ鉱山廃水を思的河に垂れ流しました。  

それを知らずに下流の思的村が灌漑用水としたことで、土壌にカドミウムが蓄積されていきました。 

因果関係は明白です。この村では確実にイタイイタイ病が大量に発生しているはずです。 

中国内部情報紙サーチナ(2011年10月14日)はこう伝えています。 

「湖南省国土資源規画院基礎科研部の張建新主任によると、同省住民7万人の25年間にわたる健康記録を調べたところ、1965年から2005年にかけて、骨癌や骨に関係する病気の発生率が上昇傾向にあった。重金属が深刻な株洲地区住民の血液や尿に含まれるカドミウムは通常の2-5倍に達した。」(同)

水俣病型(工場排水型) 加工工場の排水や産業廃棄物からの重金属汚染です。

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わが国の1950年代から19760年代前半の4大公害病は、すべてこのタイプ゚に属します。

・熊本水俣病(1956年・水質汚染 有機水銀)
・新潟水俣病(1964年・水質汚染 有機水銀〕
・四日市ぜんそく(1960年~1972年 大気汚染 亜硫酸ガス)
・イタイイタイ病(1910年代~1970年代前半 水質汚染 カドミウム)

中国はこのタイプの公害も、現在進行形で多数発生しています。 

沙瑣頴河(さえいが)流域河南省周口市沈丘県の農村部で見られた、消化器系のガン、死産や乳幼児死亡率の急増し、先天性進退障害などは、工場排水による4大公害病の水俣病やイタイイタイ病に酷似しています。 

Photo_3Major rivers and counties with cancer villages, China, 2009 「主な河川に沿ったガン村および郡」) 

上図は、セントラル・ミズーリ大学のリー・リウ(Lee Liu)氏の2010年論文「Made in China: Cancer Villages」が作成した中国のガン村」の地図です。 

右端の凡例には、公式に政府が認めたものであり、下の紫色のグラデーションが、非公認の「ガン村」です。 

中国における7割以上の河川、湖沼などに「ガン村」が発生しているのが分かります。

確認できるだけで459箇所、重工業化が進んだ東部の河北省から湖南省までの地帯だけで396カ所存在します。

患者は行政や企業によって門前払いを受け、沈黙を余儀なくされています。村民や家族も、農産物が売れなくなるので、外部に患者が出たことすら隠蔽しています。 

おそらく中国全土の「ガン村」は、まともな調査をすれば天文学的数に登るはずてす。

化学農業型 化学農薬や化学肥料の過剰投入による土壌・水質汚染です。 

下図は、上海の揚子江河口付近の米の土壌の分析データです。 

Photo

  (「週刊文春」による。データの採取方法、場所などは不明) 

上図の右端が我が国の環境基準値(02年制定)です。我が国の基準値と比較してみます。

●揚子江河口土壌は日本の基準値の何倍か
・水銀 ・・・244倍
・鉛   ・・・3500倍
・ヒ素・・・1495倍
・カドニウム・・・4.2倍
・BHC   ・・・59倍(※DDTと並んで国際的に検出されてはならない使用禁止農薬)

とんでもないケタのDDT、BHCです。これは農業が出所です。日本では1970年代に禁止されています。

さらに農業のみならず、工場由来だと思われる水銀、鉛、カドミウムもすさまじいケタで検出されています。

典型的な工業と農業の複合タイプです。

このような地域で生活したり、農業をすれば、水銀を原因とする水俣病や、カドミウムを原因とするイタイイタイ病が、高率かつ、大量に発生しているはずです。 

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大気汚染型 今、騒がれているPM2.5のケースです。 

日本においては、四日市ぜんそくや川崎病などの形で現れました。

これはディーゼル車などの自動車排気ガス、石炭火力の煤塵が原因である四日市ぜんそくと、都市公害の複合汚染です。

中国との関連でいえばこの川崎病は現在の我が国でも小児を中心に多く発症しています。

ちなみに川崎病の名称は、地名ではなく、この呼吸器病と取り組んだ川崎医師の名です。

Photo_6http://blogs.scientificamerican.com/より)

五本木クリニックの桑満医師(※)は、川崎病についてこう述べています。
※間違って表記していたので訂正します。もうしわけありません。

「この川崎病ですが、原因物質は特定されていませんが、世界中に拡散する経路として日本からアメリカにまで広がっているために風の流れ(対流圏)などの調査をした場合、その流れと川崎病の発症数が強い関連性があることは以前から指摘されていました。
今回の論文は原因となる物質があるのなら、原因物質が発生する場所があるはずであるとう仮定から川崎病の発症データと気流のデータを分析したことによって、ついに発生源を突き止めました。それがやはり以前から噂されていた中国の北東部の穀倉地帯だったのです」

川崎病については別途記事にする予定ですので、 しばらくお待ちを。

それに加えて、近年のダム建設や道路建設による開発公害、リゾート建設公害、14億を越える人口爆発による砂漠化、草原破壊、そして地球規模の気候変動まで加わっています。

誇張でもなんでもなく、日本がこの百数十年で経験した、ありとあらゆる公害のすべてが、一国で爆発的に進行しているのです。 

これが公害専門家をして、「中国は公害のデパート」、あるいは「公害の生きた博物館」といわれるゆえんです。 

このような、足尾などの古典的公害、水俣、イタイタイ病などの工業が原因の公害に加えて、都市公害、気候変動までが同時噴出するのが、「中国の公害」です。

一口で「中国の公害」と一括りにできないことや、日本の公害経験と安直に重ね合わせられないことが、お分かりいただけたでしょうか。

日本においては、公害列島と言われながら、ひとつひとつの公害病を解決をしてきました。

不十分であるにせよ、患者を調査し、救済し、公害工場を操業停止させて、長い時間かけて破壊された環境を再生した歴史があります。 

その積み重ねによって、皮肉にも、日本は世界一の公害処理技術を有しています。

中国では、解決なきままに放置され地下に潜り、積み重なり、絡まりあって更に巨大な複合汚染体を作り出してしまったのです。 

なお、中国政府は、公式には水俣病やイタイイタイ病は「ない」ものとして扱っています。 

2015年12月16日 (水)

中国大気汚染黙示録 その2

018
中国のアネクドート(政治的小話)をふたつばかりご紹介しましょう。 

習近平政権は、PM2.5の社会階層別予防策を発表した。
貧困層・大根とキクラゲを食べろ
中間層・空気清浄機を買え
富裕層・田舎に所有する別荘に逃げ込め
超富裕層・国を捨ててさっさと移民せよ
政府要人・14億の人民に「一斉に吸い込んでなくしてしまえ」と命じろ。

Photo_2こんなものもあります。 

かつて毛沢東主席は、こう唱えた。
「為人民服務、厚徳載物、自強不息、埋頭苦干、再創輝煌!」
(人民に奉仕せよ、厚い徳は万物を覆う、弛まぬ努力によってのみ自己を強くできる、苦労する仕事に没頭せよ、創造を重ね栄光を掴め!)

現在、習近平主席は、こう唱えている。
「喂人民服霧、厚徳載霧、自強不吸、霾頭苦干、再創灰黄!」
(人民に霧を喰わせろ、厚い徳は霧で覆え、自己を強くするために息を吸うな頭を塵だらけにして苦労せよ、灰や砂塵を次々に創れ!

 わ、はは。このアネクドートの紹介者の近藤大介氏によれば、このツボは、上と下の各21文字の発音が同じことだそうです。普通に発音すると一緒なんですってね。 

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北京のPM2.5は、上海にも波及していっそう深刻化していますが、なぜ減らないのでしょうか。

北京市環境保護局の発表によれば、PM2.5の原因はこのようになっています。

・自動車の排気ガス    ・・・31.1%
・暖房用石炭        ・・・22.4%
・工場煤煙          ・・・18.1%
・粉塵             ・・・14.3%
・その他(食堂の排気など)・・・14.1%

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自動車は抗日軍事パレードやオリンピックなどのハレの日には、車両ナンバーの末尾が偶数か奇数かで、入市できるとかやっているようですが、皮肉にもこの間のPM2.5騒ぎで自動車を買う人が増えてしまいました。

「2015年12月9日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、米ブルームバーグは、中国で深刻な大気汚染が、皮肉にも消費者の自動車購買意欲を刺激していると報じた。
中国乗用車協会(CPCA)が8日発表した中国国内の11月の自動車販売台数は、前年比約18%増の202万台となり、2月以来最高の伸びを見せた。
CPCAは、販売好調の理由について「11月は近年まれな寒さとなったことに加えて、大気汚染も悪化した。内気循環の自動車内の方が屋外よりも空気が良いからと、子どもがいる世帯を中心に購買意欲が高まっている」と分析している」 (レコードチャイナ2015年12月11日)

北京市民に言わせれば、「歩いて通勤?死ぬ気か。車内がいちばんキレイだ」、というわけです。

そしてまた車は増加し続けるというわけで、もはやお手上げです。

それに中国の自動車購買力こそが、国際市場にとって中国市場の最大の魅力でしたから、外資を呼び込む上でも、そうそう簡単に購買を規制できるはずもありません。

それに、相当部分を占める外車は排ガス対策が施してあります。ま、VWみたいな例外もありますが、中国製とは比較になりません。

問題は車両ではなく、燃料なのです。

中国は改革開放経済を軌道に乗せるために、石油価格を抑制する政策を取りました。

このあたりはやはり輸出依存国の韓国も、ウォン安とエネルギー安誘導という似た国家方針 を持っています。

それが出来るのも、石油企業が国営企業集団だったからです。石油精製製品は、わずか2つの企業集団によって握られている超寡占体制下に置かれています。

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中国天然ガス集団(CNPC・子会社にペトロチャイナ)と、中国石油化工集団(シノペック)のふたつです。

3大石油企業という場合、他に中国海洋石油総公司(CNOOC)もありますが、国内の販売網は上記2社が押えています。

この巨大国営企業集団は、実は政府そのものでもあります。常に、中国政府には「石油閥」と呼ばれるこの2つの国営企業出身の政治家がいます。

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産経中国特派員の矢板明夫氏によれば、石油国有企業はまさに伏魔殿です。

「石油業界は中国の国有部門の大黒柱だ。3大国有石油会社のCNPC、中国石油化工集団公司(シノペックグループ)、中国海洋石油総公司(CNOOCグループ)は、融資を受けやすいことを追い風に、世界最強の多国籍企業と競争できる国内大手の創出と対外投資を目指す中国の取り組みの先頭にいる。
市場調査会社ディールロジックの試算では、中国石油会社は02年以降、海外で約1300億ドルの投資をしている。
ペトロチャイナは07年に一事、時価総額で世界最大の企業となり、12年には米エクソンモービルを抜いて世界最大の原油会社になった。
だが、一部のアナリストによると、中国の石油業界は同国で透明性がもっとも低く、説明責任も果たしていない業界のひとつとみされている。
このために石油会社の幹部らは、大半の多国籍企業には商業的に受け入れられない条件で海外資産を取得できるほか、正体のはっきりしない代理店やサービス会社に発注した契約を通じて、私腹を肥やすことが多い」

事実、新華社報道によると、CNPCの総総理だった周永康は、巨額の汚職をしたとして逮捕されています。

「収賄は職務を利用した一連の事件で周永康は石油政策で直接蒋潔敏から73万1100元(約1千458万円)の金品を受け取る一方、呉兵、丁雪峰、温青山、周灝とそれぞれの関係と立場で便宜を図りこちらの謝礼は夫人の賈暁曄と子息周濱は4人から別々に計約1億2904万元(約25億7千万円)相当を受け取ったとされた」Wikipedia

こんなもんじゃ効かないだろうというのがおおよその見立てで、石油閥が懐に入れた賄賂は、中小国家の予算を軽く越えるといわれています。 

現在、石油閥は、チャイナ・セブンと呼ばれる党中央政治局常務委員7人の一角に、シノペック出身の張高麗氏を送り込んでいます。

ですから、硫黄分の少ない「国4」ガソリン」んてバカ高いコストがつくものを全国販売してたまるか、という石油企業の利害がまかり通ってしまうわけです。

「大気汚染の深刻化に伴い、北京市内各病院の呼吸器科を訪れた患者は20~30%増加。小児病院で内科を受診した患者の50~60%が呼吸器系の疾患によるものだった。

おいおい、国民の健康はどうでもいいのか、と私たちは思いますが、たぶんどうでもいいのでしょうね。

超富裕層は、アネクドートの言うとおり「国を捨ててさっさと移民」していますから。

北京市当局は2020年までに解決すると言っていますが、この巨大独裁国家が構造的に抱え込んだ汚染構造は、政体が変わらない限り永久に解決することは不可能でしょう。

2015年12月15日 (火)

中国大気汚染黙示録

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中国が猛烈なスピードで金星化していることは、日本で知られるようになってきました。 

共同の特派員はこう伝えています。 

「中国北京市は17日、深刻な大気汚染に見舞われた。在中国米大使館のウェブサイトによると、17日午後4時の微小粒子状物質「PM2・5」を含む汚染指数は、最悪レベルである「危険」を示す345を記録した。
 市内の上空は、もやがかかって真っ白になり、日中も薄暗く感じられた。高層ビル群もかすみ、路上ではマスクを着けて歩く人の姿も目立った。
 当局は車両の通行規制などを行っているが、なかなか効果は表れず、深刻な大気汚染がたびたび起きている」

北京のPM 2.5が、345μg/m3(マイクログラム毎立方メートル) だそうです。

法外ですね。現在の東京は、PM2.5マップによれば1日の平均値は13.89μg/m3です。日本の基準値は35μg/m3超 ですから、日本基準値の約10倍です。

いまや、中国大陸は、人が住むべき場所ではなくなったということです。

2月1日には北京で638μg/m3という中国基準の6倍、日本基準の約18倍という記録も出しています。

中国の基準値自体も、馬鹿げて高く日本の2倍以上の75μg/m3 です。

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東京都の大気環境(PM2.5)の現状と国の暫定指針に対する都の考え方(2014/1/27 池田誠 東京都大気保全課長)

ちなみに、米国の空気質指数(Air Quality Index)では、150μg/m3を超える場合に「すべての人はあらゆる屋外活動を制限するべき」としています。

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冗談か本気か、こんなトピックスもあります。これは、さすがころんでもタダ起きない中国商人と拍手すべきでしょうか。 

そういえば、嘉手納に「爆音の缶詰」なんか売っていたな(笑)。

「すでに国内の実業家がきれいな空気の缶詰を売り出している。貴州省の計画は、日本の富士山で記念品として売られた空気の缶詰がモデル。近くデザインなどを募集して開発チームを立ち上げ、6月中に第1弾を製品化する予定だ。
 習氏が今月の全国人民代表大会(全人代=国会)で同省の空気の質を称賛し貴州は『空気の缶詰』を売ればいい」と発言したことから計画が始動した。省は「特色ある観光商品にしていく」と意気込むが、インターネット上では「習氏へのごますり」といった冷ややかな声も少なくない」(西日本新聞)

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 やや古いのですが、下のNASAの衛星写真が撮った米の写真を比較すると、いかに大気汚染が広範な範囲に拡がっているか分かると思います。 

これが撮られたのが2012年ですから、今はさらに悪化しているはずです。 

Photo_3 (写真 衛星写真で観測された中国北部北京・天津付近の激しい大気汚染、2012年1月10日(上)・11日(下)Wikipedia) 

もう一枚、リアルタイム(12月15日)の日本への飛来状況を見ていただきます。Photo_4

http://pm25.jp/

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PM2.5の健康影響について2014/1/27 兵庫医科大学公衆衛生学 島正之教授)

沖縄、九州、西日本、北陸が、中国の大気汚染の恒常的影響下にあることがお分かりになると思います。

日本が最大の出資国であるアジア開発銀行(AIB)は、中国の大気汚染に3億ドル融資することにしたそうです。 

AIIBの資金は、インドネシアなどの輸出攻勢に使い、その尻ぬぐいはAIBがするという、見事な棲み分けです。

「英紙「フィナンシャル・タイムズ」の10日付記事では、アジア開発銀行は、北京の大気品質改善に3億ドルの貸付を提供する。
北京と天津の大気汚染の主要因になる河北省の石炭消費量の削減に当てられる。アジア開発銀行の専門家によると、中国が全力を尽くしているが、「汚染問題は相変わらずそこにある」。河北省の経済・産業構成が根本的な原因だ。中国で汚染が最も深刻な10都市のうち、7都市は河北省にある。
「フィナンシャル・タイムズ」によると、中国が海外からの融資を環境関連政策策定に盛り込んだあり方は異例だ。大気汚染というこの複雑な議題に対し、中国は政策対話に開放的だ」(新華ニュース12月13日)
 

他国にまで影響の出る大気汚染を出しながら、なにが「大気汚染の政策対話には開放的だ」ですか。傲慢さに、呆れてものが言えない。

中国には、自国民のみならず、地域全体に多大な迷惑をかけ続けている自覚がないのです。

さて、中国の大気汚染の主原因は、硫酸塩エアロゾルですが、その主成分の酸化硫黄は、硫黄を含む質の悪い石炭や自動車の排気ガスなどの燃焼によって発生します。  

自動車の生産台数を見てみましょう。図の黒線が中国です。 

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このような奇妙な線を描く国は他にありません。主要国は半世紀近い時間をかけて増大し、社会もそのモータリゼーションに応じて大気汚染対策を施してきました。 

しかし、中国は1990年頃までゼロ。2000年頃からまさに垂直上昇のように90度の角度で駆け上がり、今や国別生産台数では世界一です。

ただし、無計画に乱造したために、今や滞貨の山ですが。

このような自動車生産台数の伸びをした国は、世界に類例がありません。  

中国はあまりに急速、かつ無計画に工業化しすぎました。 その結果のしわ寄せは、国民が自らの健康で代償を払うことになりますが、製造した富裕層はとうに国外に逃げています。 

気体の二酸化硫黄は、眼と気道と肺に障害を与え、重度の場合は肺ガンの原因にもなります。特に抵抗力の弱い乳児や子供には強烈な刺激で呼吸器系を蝕みます。 

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建前上は、自動車の燃料は硫黄分が50ppm以下の「国4ガソリン」になったはずでした。  

ならばなぜ、今になってこんな「壮大な人体実験」(日本大使館医師)のような状況になるのでしょうか。 

理由はこの「国4ガソリン」が、実は北京や上海などの一部大都市部でしか使用されていないからです。

国営中国網(2012年1月12日)はこう述べています。

「中国環境保護部は10日、自動車に対する「国4」基準を段階的に実施すると発表した。「国4」基準を満たす自動車用ディーゼルオイルの供給体制がまだ整っていないため、順序だてて実施される。また、実施効果を上げるため、自動車用燃料の供給状況に基き、車種・地域別に「国4」基準を設定する」 

つまり、9割の地域ではあいもかわらず、旧来の硫黄分たっぷりのガソリンを使っているわけです。

ガソリンなのはましな方で、安く出回っている「ガソリン」の場合、偽造ガソリンが主流を占めているといわれています。

たとえば、殺虫剤原料のホルマールや、炭酸ジメチルなど有害物質を主原料に使ったもので、こんなものを吸ったら、あの世行きです。  

とりあえずホンモノのガソリンの硫黄分が、日本のガソリンのなんと15倍! 

その上、大気汚染の大きな原因であるディーゼル排気ガスについては、まったく改善がされた様子がありません。

中国環境当局は、「国4」、さらには「国5」にしていくと計画を発表しています。

下図は、2011年5月1日に改訂された自動車排ガス「国5」基準に対応する新基準です。

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しかしこれについて、科学技術振興機構中国総合研究交流センター フェロー金振(JIN Zhen)氏はこのように述べています。

「この基準は、ガソリン生産や販売事業者を拘束するものではなく、指導基準としての性格が強いため、事実上、ガソリン規制基準として役割を果たすには限界がある。(略)
言い換えると、本基準に強制力があったとしてもガソリンの環境品質の向上にどれだけ貢献できるかは疑問が残る
」(「中国の大気汚染防止の法制度および関連政策18)
http://www.spc.jst.go.jp/experiences/chinese_law/14025.html

現実問題として、大都市だけで排ガス規制しても、車は勝手に外部と出入りするのが習性です。

というか、その為に作られたわけで、北京という大消費地には大量のトラックが入ってきます。 

ではなぜ、こんなハンパな規制をしたのでしょうか。そこには、いわゆる産業派と呼ばれる巨大な国営石油会社の意図があります。

それについては次回にします。

2015年12月14日 (月)

翁長-政府密約はないだろう

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このところ、沖縄県内でさまよっている「噂」があります。 

それは翁長氏と政府が、「密約」を交わしているのではないかというものです。 

私のブログにも詳細な情報を頂戴しました。以下やや長いですが、コメントの当該部分だけ再録させて頂きます。 

「彼らのような上層部の筋金入りの左翼は、上の写真のように暴れる専門の下っ端の運動員と違い、翁長知事を全く信頼していません。
それは日米同盟を支持し那覇軍港の移設整備を推進しながら、辺野古反対を言っているので当然でしょう。
それとは別に政府と裏取引をしている証拠を掴んでいる、というのです。
その内容は、(条件付きですが)取り消しの聴聞を行なうかわりに、取り消しによって生じる膨大な賠償金を県に請求しない、というものだそうです。
周知のように聴聞を行なった事は県にとって決定的に不利な要因です。他にとる手段がなかったわけでもないのに全く解せない行動でした。
(なお、彼は証拠というものは有効につかうものだ、と嘯いていましたね。)
こんな話は俄かに信用できませんが、篠原章氏(同様にそのソースを明らかにしていませんが)も、この密約に関して同じ見方をしているんですね。
そのうえで、(県、国双方で)訴訟を長引かせ、その間も工事は進む。既成事実化していく事こそが、国および翁長氏の共通の利益の一致点だ、という見立てです」

 う~ん、と思いましたね。ありえる、これが一読後の偽らざる私の感想でした。

この密約説に立つと、非常にスッキリと翁長氏と県の行動を説明できてしまうのですよね。

というわけで、私も一時、この密約説に傾きかけていました。 

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この間の政府との攻防における最大の「謎」は、県が聴聞会をなぜ開いてしまったのか、ということでした。 

聴聞会を開けば、県は明らかに不利になるのは分かりきっていたはずです。 

というのは、何度か記事でもふれてきましたが、例の「訴えの資格」論が絡まるからです。 

沖タイ(9月14日)は、成蹊大学の武田真一郎教授にこう言わしています。 

「民間業者や私人が海を埋め立て、軍事基地を造ることは考えられない。埋立法では民間には免許、国には承認と言葉を使い分けており、国固有の資格で承認を得たのは間違いなく、行政不服審査法の適用を受けて不服審査を求める資格はない」

 県はその気になれば、この武田氏のアドバイスどおりの抵抗が可能だったのです。 

しかし、県はびっくりするほどあっさりと抵抗せずに、聴聞会を開いてしまいました。 

あまりあっさりと開いたために、私はこれが「罠」であって、のこのこ聴聞会に出てくれば行政手続法第27条2項を使って、「はい、聞き置きました。もう国はこれ以上の異議申し立てはできませんよ」と言うつもりだったのかと勘繰りました。

「●行政手続法第二十七条
  2  聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、行政不服審査法 による異議申立てをすることができない

これが私の「罠」論ですが、実はこれには矛盾がありました(汗)。

国は聴聞会の前から、文書提出だけで行くと明言していたのです。 

「罠」を仕掛けるも何も、国はとっくに知っており、逆に県も聴聞会に出席しなかったのは折り込み済みだったわけです。

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なんだこりゃ歌舞伎か、ということになります。

「聴聞会を開けぇ、開けぇ」と国は叫んで見せ、受ける県は「開けん」と言いながら、結局は「本来はドータラだが、しゃーない開いてやっか」と膝を折る。 

そして出席すればアウトですから、国は開催要求しながら出席せずに文書でチャチャっと済ましてしまう。 

そして予定調和的に、県は「なんということだァ。てめーで要求しくさってからに、顔も出さないのかァ」と、「怒りの声」を出して見せます。 

結局、当然のこととして、訴訟沙汰になります。

しかし、裁判中は建設を継続できて既成事実化できるので国はのん気な顔、同じように裁判中は「戦う民意」(←翁長さんの新刊ですよ)のポーズも決められる翁長氏もニコニコ、同じく闘争が長引けば長引くほどおいしい革新陣営もニコニコという、三方ニコニコ丸く納まる図というわけです。(おいおいですが)

すると、天空から監督の声が響きます。 

「ハーイ、カット!オーケーです。よ~くできました。台本どおりですね」

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今、「台本」と書きましたが、今、書いたような台本が国と県との間にあるのではないか、というのが、「密約」説です。一種の陰謀論です。 

これに立つと、翁長氏は相当前から国と示し合わせて芝居をしていることになります。 

翁長氏は「戦う反戦知事」というポーズを取りながら、実は妥協する約束をしていたのではないか、ということになります。

言うまでもありませんが、この密約説があった場合の「監督」は政府、さらに限定すれば官邸以外にありえません。

なるほど確かに、この密約説が出てくるほど、翁長氏が無能だったことは確かです。 

1年間たって、やったことといえばこんな程度です。 

ジャリがどうした、アンカーがドータラ、訪米や国連演説でイキがって見せ、そしてとどのつまりは、初めから結論がある第三者委員会なるものを作って、承認取消をする・・・、そして訴訟合戦。 

小川和久氏は、翁長氏が「新基地反対」という言外に、シュアブ陸上案を代替案でぶつけて来るのではないかという腹芸に期待していたようですが、それもありませんでした。 

実際、翁長氏がシュアブ陸上案をブツけてきた場合、政府は非常に苦慮したことでしょう。 

県が実現可能な代替案を出した以上、辺野古埋め立て工事を続行することは、少なくとも協議中はできないからです。 

では、陸上案が実現するのかといえば、今、既に予定地の漁業権を買ってしまっているわけですし、既に契約している工事関係者に多大な損害を与えます。 

しかし、翁長氏ときたひにゃ、棒を飲んだハブのように、ひたすら「絶対反対」を繰り返すだけです。 

あまりの無能さに密約説が出たのもむべなるかなです。 

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私は冒頭のコメントを頂戴してから、複数の沖縄在住の知人にこの密約説を質問して回りました。 

結論から言えば、密約はないと思われます。 

というのは、逆説的な言い方になりますが、この密約説が今や公然と県内で語られているからです。 

左翼の皆さんも口にしている、保守の人たちも書いているとなると、そんなものはもう密約でも陰謀でもありません。 

ちなみに陰謀論を押えておきます。 

「強い権力をもつ個人ないし団体が一定の意図を持って一般人の見えないところで事象を操作している、またはしていたとする主張」Wikipedia 

では、この移設問題に関してはどうかといえば、「強い権力を持つ団体」である政府にはそんな密約をコソコソ結ぶ必要はゼロなのです。

さきほどの聴聞会にしても、頑強に県が抵抗すれば、別な手段でやるまでです。

第一、聴聞会ていどのことで密約をして、それが暴露された場合のダメージを考えて下さい。

どちらが大きいのでしょうか。国か、県か?

翁長氏は、「オレはダマされていたんだ。国は暴力的な圧力をかけてきたんだ。よかれと思って県民のために涙を飲んでぇ(号泣)」くらいやれば、なんとかゴマかせます。

地元2紙も、それに沿ったストーリーくらい考えてくれるでしょう。

国はそういうわけにはいきません。こんな謀略まがいの密約を沖縄県に仕掛けたことが発覚した場合、100%アウトです。

安倍政権がふっ飛ぶどころでは済まないでしょう。内閣総辞職、総選挙ということもありえます。そして自民は大敗します。

あの怜悧な管氏が、そんなアブナイ橋を渡るはずがありません。

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おそらく、翁長氏、安慶田副知事と菅氏との間には、様々な公表できないようなやりとりがあるのは確かです。情報交換もしていてあたり前です。

上の写真の右側のタヌキ風オヤジが安慶田氏ですが、彼が東京と行き来しているのは知られた事実で、そのカウンターパートナーが管氏だと言うことも確かです。

11月下旬にも、東京に行ったそうです。表向きは予算折衝ですが、当然政府要人と会っていないと考えるほうが不自然です。

おそらくその場では、「沖縄県は最後まで抵抗するぞ。そうでもしなくては、革新の連中がうるさくて、オナガ政権がもたない。次はホンモノの極左の伊波あたりが知事になるぞ。国はどうするんだ」、くらいの泣き言くらいは言っているでしょう。

国もシャラとして、「どうぞおやりになったら。これは国と国の約束なんです。止めるわけにはいきません。あんたも元自民党なんだからわかりそうなもんだ。翁長さんに伝えてほしいんだが、負けるのが分かっていてやり続けるか」くらいは言うでしょうね。

と、まぁただの空想ですが、このていどはやりとりしているでしょう。その場で、相手の出方を探るということもありえます。

おそらくこの夏にも、同じようなことが聴聞会をめぐってあったはずてす。

ですから、国は早々と「聴聞会を開け、しかしオレたちは出席はしないからな」と明言し、一方、県も県で「本来やる筋じゃないんだが、しつこく言うので開いてやる」ていどの愚痴を言いつつ開いたたのです。

こういう関係を阿吽の呼吸と呼びます。両者にあったのは、密約ではなく、阿吽の呼吸ていどのことだったと思われます。

コメントに、「革新陣営は翁長氏を信じていない」ということが書かれていましたが、逆もまた真なりで゛政府はさらに翁長陣営を信じていません。

密約というのは、よほどの弱みを握っているか、あるいは相手の口が固くなければできないことです。

弱みについてはともかくとして、翁長陣営はつまるところ、極左から利権保守までの烏合の衆の集まりにすぎません。一回密約が漏れれば、たちまちの内にズルズルと流出していきます。

こんな相手に、密約を結ぶほど政府は人がよくないはずです。

私はこの時期に、こういう密約説が四方八方から吹き出してきたのは、左翼陣営による翁長おろしの動きが背景にあると思っています。

そしてウラを取りようもありませんが、翁長与党の一部が、密約説のリーク源だと考えられます。

さらに憶測の域を出ませんが、既に「ポスト翁長」の検討が始まっていると思います。

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先日の普天間基地跡地にディズニーランドを誘致するというのは、巨大な一手でした。

これはいかに翁長氏でも左翼陣営でも、表向き反対できないのです。まさに彼らが長年唱えていた「基地なし繁栄論」そのものてすからね。

宜野湾市からの提案を受けたという形も、インパクトがありました。これで完全に、「県内は全部反対だ」という論拠が崩壊したのです。

政府もまた、真綿で首をしめようにして翁長氏に退場を促しているかのようです。

風聞は風聞であるだけに妙な信憑性があります。しかもこの密約説は、翁長与党筋から出ている気配が濃厚です。

とうてい翁長氏はあと3年も持たないでしょう。最短で、来年辞任、参院選出馬というコースもないわけてはありません。

それを見越して、左翼陣営は次に誰を御輿に担ぐのか、検討を開始しているかもしれません。

そのために、決定的な証拠を出さずに(というか、そんなものはない思いますが)、あくまでも風聞として「翁長は政府と密約を交わしているらしいぞ」という噂を流布させているのではないでしょうか。 

以上、本日の私の見解は憶測が強いものですので、7掛けていどで読んで下さいね。

2015年12月13日 (日)

日曜写真館 紅葉燃ゆ

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2015年12月12日 (土)

普天間基地跡地ディズニーランド構想と南北鉄道構想

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政府と宜野湾市が、普天間跡地にディズニーランドを誘致する構想に対して、民主党の枝野幹事長が噛みついています。

「民主党の枝野幸男幹事長は9日の記者会見で、菅義偉官房長官が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の跡地にディズニーリゾートの施設を誘致する構想への政府支援に言及したことを「選挙対策としかいいようがない話だ。沖縄県民の皆さんををなめている」と批判した。
 さらに、構想の現実味について疑問を示した上で、「(アメとムチの)『アメ』どころか、(落語にある)『ウナギのにおい』じゃないですか? ウナギのにおいをかがせて票を集めよう、でもウナギは出てこない。それに沖縄県民の皆さんがだまされるとは到底思えない」と語った」
(産経 12月9日)

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ダ~っですね。批判するとかなんとかより、「お大事にね。お薬出しておきますから」、の世界です。

こんな人物が政権党の、しかもあの3.11の時の官房長官だったんですからね(寒気)。

沖縄では、上のメンツがそのまま翁長氏を戴く「オール沖縄」の与党となっています。(※「生活」は沖縄には存在しない)

仮にも政権党だったのですから、よもやディズニーランド構想に反対するとは思いませんでした。

まともな野党ならば、ただ反対ではなく自分の沖縄経済成長計画を対峙して、自民と経済論戦をする義務があるのですが、ただ「選挙目当てだろう」といわれても、そんなことあたり前じゃないですか。

逆に来年に迫った選挙のとことも考えずに、お気楽に経済政策を打っていたら、そのほうがバカです。

ただし民主はせいぜい来年の選挙までですが、自民は選挙と同時にその先10年、20年先を見越して、いまから手をうっておく政治的義務があるだけです。

「選挙対策としかいいようがない話だ。沖縄県民の皆さんををなめている」と言われても、なめられているのは枝野さんたちだよ、と思います。

そんなことは百も承知で、どのような経済政策を対置をするのかが「大人の野党」というもので、す。

しかしここまで「野党」根性に染まりきってしまっては、どうしようもありません。

さて、こんな民主さんなどは放っておいて、この普天間基地跡地計画を見ていきましょう。 

この普天間跡地計画は、従来からの沖縄の悲願の南北縦貫の本格鉄道と不可分です。 

この南北縦貫鉄道計画については過去記事にありますので、ご覧になって下さい。もちろん、問題点は多々ありますが、実現性は十分にあります。
※過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-4403.html 

政府と仲井真前知事は、今回のディズニーランド構想が出る前から、「普天間基地跡地駅」を作る計画でした。
鉄軌道を含む新たな公共交通システム導入促進について/沖縄県 

地理的にも、南北鉄道の起点の那覇-名護間の70㎞、1時間の間に位置しているために中部の交通網のハブとしても位置づけられます。 

「政府が沖縄本島を南北に結ぶ鉄道構想に財政支援を検討していることが20日、分かった。沖縄県が計画する構想は、返還される米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)跡地に駅を設置し地域の再開発と一体的に進めるもので、 政府も沖縄の基地負担軽減と経済振興の象徴になると判断。
仲井真弘多知事も支援を要望しており、普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境整備の一環と位置づける」(産経2013年8月21日)
 

Photo_2(沖縄県HPによる)

しかし、今まで普天間基地の跡地の具体的な構想がなく、漠然と「都市開発」とされていたために、この鉄道構想もマイカー社会に馴れ親しんだ県民が果たして利用してくれるかどうかが疑問視されていました。

おもろまちのように(いつも引き合いに出して、すいません)、県立美術館などしか目玉がないと、寒々とした駅にガラガラの電車が走ることになりかねません。 

しかし、ディズニーランドが入った場合、まったくその心配は雲散霧消します。 

ビジネスコンサルタントの馬場正博氏は、自身のツイッターでこう述べています。

「普天間基地後にディズニーランドというのは具体的に何か動いているかは別にして、荒唐無稽ではない。ハワイのオアフ島のはずれに最近できたディズニーランドはそれなりに成功しているし、何より周辺の別荘地の価値を上げている。沖縄もそれなりには成功するだろう」(12月9日)

私が今まで聞いた限りで、エコノミストで否定的な見解を言う人は聞いたことがありません。 

Photo_3

 普天間基地は小さいのに、あんなデカイディズニランドが入るのか、という素朴な疑問もありましたが、楽勝です。 

普天間基地はディズニーランドの敷地の約10倍。駐車場や、仮にディズニーシーまで入れても、たっぷりお釣りがきます。

Photo_4(写真 航空写真。意外とこじんまりしている。Wikipedia)

●東京ディズニーランドの大きさ
・面積              ・・・510,000㎡
・東京ドーム(46,755㎡)   ・・・・約10.9個分
・東京ディズニーシーの面積・・・490,000㎡
東京ドーム           ・・・約10.5個分
※ttp://tdl-web.blogspot.jp/2011/02/tdl_18.html  

●普天間基地の大きさ
面積            ・・・4,800,000㎡・約480ヘクタール(約480ha)
東京ドーム        ・・・約103個分

※http://www.futenma.info/size.html

問題は、「飛行場跡地が空くかどうか」です。 

もちろん、この普天間跡地構想や、南北縦貫鉄道には、前提となる普天間飛行場の返還がなされていなければなりません。

日米合意では、34年度(2022年)以降に予定されています。

ということは、そこまでに辺野古への機能移設が不可欠だということになります。

宜野湾市長は跡地利用計画を政府と構想し始めましたが、今の翁長氏は、普天間基地に残ってほしいようです。

「蒲焼の匂い」もなにも、枝野氏が仕えていたカン氏や、その前任のハト氏ならともかく、今の政権は言ったことはやりますよ。

おそらく国が全面的にバックアップして誘地することでしょう。東京ディズニーランドの経済波及効果は年間約1兆4千億円です。(※1983年4月から1984年3月までの東京ディズニーランド関連支出の生産誘発額・オリエンタルランドによる)

もちろん、首都に近い東京ディズニーランドとは条件が異なりますが、沖縄は成熟したリゾート地として既にブランド化されている島です。国際認知度も高い。

あれほど「米軍基地がなくなれば巨大な経済効果がもたらされる」言っていた翁長さんにとって、まさにうってつけの「米軍基地なしモデル」が立証されるケースなのではないでしょうか。

かくして、ボールは投げ返されました。「基地を選ぶか、平和経済をとるか」です。

2015年12月11日 (金)

国有政党になった民主党

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民主党は先日の両院議員総会でも、あいからわず選挙しか眼がいかないようで、解党議論にしても、その政策内容を作っていくより、「看板をどう付け替えるか」ていどの低調なレベルなようです。 

解党するにしても統一会派をつくるにしても、エイヤっで志位さんの甘いささやきに乗って「民主連合政府」を作るにしても、彼らが懐に抱え込んだ金がかえってジャマしています。

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民主党の政治資金の性格が、他党と大きく異なるのは、民主党は過去の大勝した時に得た巨額の政党助成金を、繰り延べして蓄財していることです。

まず例によって、政党交付金について押えておきましょう。

「政党交付金(せいとうこうふきん)とは、政党の活動を助成する目的で国庫から交付される資金。日本においては政党助成法に基づいて一定の要件を満たした政党に交付される。なお、政党が政党要件を満たさなくなっても政治団体として存続する場合には、政党であった期間に応じて特定交付金が交付される。政党助成金とも呼ばれる」Wikipedia

また、算出基準は、所属する議員数と得票数です。

ですから、一回選挙に勝利すると、大きなパイを得ることが可能で、しかも繰り越しが可能です。

たとえば野田政権末期の、2012年を見てみましょう。大勝した民主党が自民を抜いて一位に躍り出していますPhoto_4
では、この内の繰越金をみてみましょう。

●総務省HPによる2012年の各党本部の政治資金収支報告書の概要
民主党(収入379億円、支出160億円、翌年への繰越 218億円)
・共産党(収入245億円、支出235億円、翌年への繰越10億円)
公明党(収入191億円、支出136億円、翌年への繰越55億円)
・自民党(収入182億円、支出168億円、翌年への繰越13億円)

上の収支を見ると、自民党に奪還された総選挙があった年にもかかわらず、民主党は収入379億円のうち160億円しか使っておらず、そのまま翌年に218億円も繰り越しています。

他の政党の繰り越しは、比較的多い公明ですら55億円で、あとは10億円台ですから、いかに民主の蓄財体質が際立っているかお分かりになるでしょう。 

なお、公明党は共産党に並んで機関紙販売や党員費などの自主財源が強固なところだからこそ、繰り越しできたと推測されます。

その点、自主財源は労組しかない民主党が、これだけ繰り越しているのは不可解です。

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http://asao.dosugoi.net/e707964.html 共産党のちらし。まったく同感だ)

ちなみに、この379億円の内訳も、政党交付金が165億円、前年度からの繰越額が183億円で合わせると、国からの補助だけで実に9割を越えます。

な~んだ、最大野党は「国有政党」なのかぁ(苦笑)。

この巨額の繰越金が発生し始めたのは、政権交替期からです。 

では2010年と2011年までの、民主党の政治資金収支も見ておきましょう。 

・10年(収入255億円、支出167億円、翌年への繰越87億円)
・11年(収入289億円、支出105億円、翌年への繰越183億円)
 

2009年9月に、鳩山政権が誕生していますから、10~12年は、民主党政権時代に当たります。 

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この時期に得た巨富を、繰越金として今も抱え込んでいるわけで、税金による蓄財行為だと批判されてもいたしかたがないことです。 

これは、政党助成法の盲点を狙った行為です。 

本来の政党交付金は、地方議員の政務活動費と同じような性格を持っています。 

政務活動費は、あの号泣議員のように、目的が政務に沿わないものは許されませんし、また年度ごとに余れば返却する性格のものです。 

しかし、国政における政党交付金は、なんと使用目的があいまいでも済んでしまうという欠点があります。 

また、政務活動費のように、年度ごとに余った額を国庫に返納する必要もないので、蓄財が可能です。 

民主党は、「やがて使う時が来る」(民主党経理部)という言い訳で、せっせと溜め込み今や政党収入の5割弱が蓄財した政治資金といういびつな形なっています。 

ところで、禍福はあざなえる縄の如しで、この200億円を越える蓄財がジャマして民主党は、簡単に看板をはずすことができなくなってしまいました。

今、民主党両院議員総会で、看板をはずして新党を作るのか、それともしないのかでもめていましたが、その理由は、この政治資金に関わっています。

民主党の看板を外した場合、「解党」か「分党」しか選択肢はありません。 

「解党」は、政党助成法に基づき政党を解散すること。解党の翌日から15日以内に総務相に解散届を提出します。

「分党」は、ひとつの政党を解散して分割し、複数の政党に分けることです。

また、分党は元の党名が残りますが、解党は企業倒産みたいなものですから、党名は残りません。

民主党という看板をはずして「解党」した場合、今まで党が受け取った政党交付金のうち、余った分、つまり蓄財分も含めて国庫に返納せねばなりません。

一方、「分党」の場合は既に支払われた分は分割し、未交付分は分党後の各党所属議員数に応じて配分します。

ですから、民主党から一部の議員が出て、維新と合体して新党を作った場合は分派ですから、残りの交付金はすべて元の民主党が押えることが可能です。

民主党の七不思議のひとつに、どう見てもまったく意見の違う議員がいつまでもダラダラと同居し続けるというのは、そのためです。

いずれにしても、今の民主党は、政治活動費の9割が国庫から助成金で支出されており、しかもその半分は税金の蓄財だということです。

まぁ、この政党ほど「国有化」が進んだ党はないことだけは確かです。

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「生活」の山本太郎氏はこう言っています。 

「乱暴狼藉を続ける安倍政権を引きずり下ろさねばならない。そのためには野党が一つにならなきゃいけない。来年夏の参議院選挙は野党一丸となって戦わなければならない。 前々回(2012年)、前回(2014年)の総選挙で野党の票をすべて足すと、自公を上回るのだ。野党が一つになっていれば、「特定秘密保護法」も「戦争法案」もなかっただろう」

 「野党一丸」になる方法は、ふたつあります。選挙互助会としての日本版オリーブの木を作るか、それとも、文字通りひとつの「新党」をつくるかです。

オリーブの木方式については、こちらの過去記事をお読みください。
 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-1e0e.html

しかし、タロー君には残念ですが、新党になることは、今まで見てきたように民主党の財政構造上むりです。

どうみてもシワそうな岡田氏が、そんなことをするはずがありません。

前原氏や篠原氏が要求するような「解党」などしたら、今までシコシコと溜め込んだ約300億円がパーになるじゃないですか。

岡田氏は内心「前原の中2病がまた始まった」と苦々しく思ったことでしょう。

せいぜいが今回の執行部提案の新会派ですが、そんなものは屁の突っ張りにもならないのは素人でも分かります。

岡田氏が考えているのは、既に「負けた後」のこのはずです。

自民党は、来年夏、確率9割で衆参同時選挙をしかけてきます。大義は「増税しない、これにイエスと言ってくれ」です。これほど強力無比なテーマはないでしょう。

今回自民は、軽減税率の公明党案を丸呑みしましたが、前回増税分で5.2兆円税収が増加し、うち1兆円を軽減してどうするのです。

おまけに、増税すれば、再び景気は急降下して、法人税増収はとても期待できません。

軽減税率の議論自体が、増税を前提にしていてナンセンスなのですが、自民としては軽減税率を公約化した公明の顔を立てただけなのです。

この自民党の軽減税率の丸呑みぶりをみていると、ほぼ確実に増税は延期となりそうな気がします。

それはさておき、気の毒なのは民主党です。民主は財政規律派で、おまけにガリガリの緊縮財政主義者ですから、「増税こそ日本を救う」です。

アベノミックスによる格差是正といっても、それも増税頼みです。民主には、その大前提となる経済成長を作る政策自体が欠落しているのです。

これでは衆参同時選挙を戦うこと自体がムリです。

もちろん、民主党と橋下なき維新の党が4月か5月頃に一緒になってもブームなんぞ起きるはずもありません。

共産党の志位さんが提唱する「国民連合政権」は、わずかに勝機がある戦術ですが、共産党が提唱している選挙協力や野党統一候補も、ダブル選挙となれば、選挙区がねじれて調整が困難を極めるでしょう。

となれば、大敗は眼に見えています。その時に、出直すにはなによりカネです。山本氏や志位氏にそそのかされて「一丸となった野党」など作ってしまった場合、最悪、議席なし、カネなしになりかねません。

鉄板の労組議員だけても温存して、蓄財したカネで選挙後につなげて再起を図る、とまぁこんなことろが、岡田氏の本心ではないでしょうか。

それにしても、イタリアもおなじような政党助成金をもっていましたが、10数年前に廃止しています。腐敗の温床になるからです。

日本も、政治家個人がカレンダーやウチワを配ったからどうのというような、どうでもいいような枝葉末節に走らないで、政党助成金制度の廃止を含めた全体の見直しの時期ではないでしょうか。

 

2015年12月10日 (木)

中国大気汚染は、根深い構造上の問題だ

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毎年恒例の中国の大気汚染について、NHKニュース(12月9日)はこう伝えています。

「国営メディアは、3億人以上が影響を受けていると伝えているほか、「大気汚染の主な原因は、冬の暖房のために石炭が各地の農村で燃やされているためだ」と指摘し、根本的な解決には時間がかかるという見通しを示しています」

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では、どうしてこの初冬という時期になると、かならず極度の大気汚染が始まるのでしょうか。 

日本で冬になると、特に大気汚染がひどくなることはありません。しかし、中国の場合、季節の便りよろしく大気汚染が到来するわけです。 

原因は、たぶん、お考えになっているとおりです。寒くなって、家庭がガンガンとストーブを燃やすからです。 

それが、通年ある自動車の排気ガス、工場の煤煙の上にオンされるわけです。 

それを13億だか、14億だか知らないが、政府が自分の国の正確な人口数さえ把握できていない数の国民が吐き出すのですから、たまったものじゃありません。 

しかも北京は、緯度が日本の東北と同じくらいにある上に、冬は乾燥しきった天気が続きます。さぞかし身体に悪いでしょうね。 

実際に、中国では障害児の出生率が2001年以来40%も上昇しています。明らかに開放改革路線による無計画な工業化が背景にあるのは明らかです。

Photo_2http://tekuteku-beijing.seesaa.net/article/409982078.html

 上の写真は、中国の家庭で使っている石炭です。粉にして丸く巣型にすると練炭になります。 

これをボイラーで燃やして、煙突で室内に引き込んで温めるのですが、工事がいいかげんで、よく一酸化炭素中毒を起こすそうです。 

ただし、庶民の家は穴だらけなので、そう簡単に死なないそうでよかってですね。 

価格は粗悪な代わりに安価だから、ガンガン燃やします。

石炭は、中国の主エネルギー源です。理由は簡単。国内で大量に採れるからです。 

石炭は中国にとって、自給可能な貴重なエネルギー源なのです。 

石油は世界の原油をガブ飲みしていますし、今、南シナ海を要塞化しているのも、彼らのオイルレーンがここを通過しているためでもあります。

こんな苦労をしてまで手に入れている原油に較べ、石炭ははるかに容易に入手できるエネルギー源です。

ですから、中国の石炭に対しての強依存体質は半永久的に治癒することはないでしょう。

Photo_6http://www.garbagenews.net/archives/1967000.html

数字を押えておくと、上のグラフの緑色が石炭です。

おわかりのように、各国の中で群を抜いて高い依存度です。中国は石炭に、エネルギー源の66%(2014年現在)を依存しています。

これでもずいぶんと発電や製造業は、石油や天然ガスシフトが進んでいるので、2年前までは石炭の依存度は8割を越えていました。

Photo_5http://www.garbagenews.net/archives/1872203.html 

中国は世界最大の石炭生産国(2011年度)であり、同年の石炭  生産量は35億トンを越えました。

これは世界総生産量の46%あたり、輸入量も世界一ですから世界総消費量のほぼ半分は中国が消費していることになります。 と

はいえ、現在中国は資源枯渇の悩みと、さらなる採掘の深度化という難問に直面しており、輸入を増大させています。

Photo_12http://www.brain-c-jcoal.info/worldcoalreport/S01-01-03.html
「2004年以降輸出抑制策が取られ、輸出量は2003年をピークに減少する一方、輸入はベトナム炭を中心に増加している。輸出石炭の品質については、輸出管理制度問題と共に異物混入などの問題も指摘されている」
(ワールドコールレポートvol11)

Photo_13(ワールドコールレポート)

また中国の工場や火力発電所は、甘い環境基準の上に排ガス対策装置が不十分です。我が国ならば稼働すら許可されない施設ばかりだと言われています。

Photo_10http://www.recordchina.co.jp/a69371.html

その上、仮に装置がついていても経済効率優先で、浄化装置を止めて操業するケースが多く共産党機関紙・人民日報ですらこう書かざるを得ないようです。

「不純物を多く含む石炭を燃やしている。この時に煙を浄化する装置の稼働率が低い。この煙には毒性がある」

また中国国内の主な産地は陝西省、山西省、内蒙古自治区などで、この地域の名物は炭鉱のガス爆発と、石炭成金だといわれているそうです。

あ、もうひとつ大事なものを忘れていました。炭鉱暴動です。 

これは日本のメディアはほとんど伝えないのですが、劣悪な労働環境に怒った炭鉱労働者が暴動を起こすもので、毎日のように国のどこかで起きているとさえいわれています。

Photo_8

上の写真は2015年4月6日に起きた、黒竜江省鶴崗市七台河市の炭鉱企業・龍煤集団の数千人のストライキです。 

デモ行進で市政府を取り囲み、未払い賃金の支払いなどを要求しました。 

武装警察の激しい弾圧にあって多くが逮捕されましたが、翌7日にも再びデモに立ち、市政府を包囲して周辺の交通を遮断する暴動にまで発展しました。 

同じような炭鉱暴動は 同時期の4月8日に、やはり黒龍江省鶴崗市で同じ龍煤集団の1万を超えるクビになった炭鉱労働者が、正規の退職金の支払いなどを求めてデモを行い、これも暴動にまで発展したようです。 

この労働争議の数字は中国は公表していませんが、表面に出ただけで下図のように激増しています。 

もちろん、これは氷山の一角にすぎず、地方人民政府が争議として認定するのはごくわずかでしかありません。

西側マスメディアの無関心によって、世界に報じられることもほとんどありません。中国政府にとって、自由主義諸国に知られさえしなければ「なかった」ことなのです。

Photo_9http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2006/2006honbun/html/i2318000.html

さてここで掘り出された石炭は、良質なものは輸出に、悪いものは国内向けになります。 

中国国内で使われる質の悪い石炭には硫黄分が多く、PM2.5が国産か中国から飛来した物質には、分析すると石炭由来の硫黄分が多く含まれています。

庶民に回って来るのは、この中国でも最低ランクの低品位炭だと思われます。 

この粗悪石炭を、中国東北部の黒竜江省、吉林省、遼寧省、華北の北京や天津などまで一斉に、10月の国慶節前後から使い始めるのですから、どうなるのかはご想像どおりです。

国民は、働きに出ないわけにはいきませんから、防衛方法としてはN95マスクを着ける以外身を守る方法がありません。

しかし、例によって例の如く、中国の乳児用粉ミルクのような品切れと偽造品騒ぎが起きているようです。

日本に爆買いにやって来る中国人観光客は、今頃N95マスクを大量に買い占めていることでしょう。

もちろん転売して儲けるためにですが。

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このように中国の大気汚染は、極めて根深い構造上の問題です。したがって、解決することは、相当に難しいというしかありません。

北京で大気汚染に対する赤色警報が出て、外出が規制され、車での移動も禁止される事態になっています。

大都市周辺の工場などは操業の短縮に入っています。この方法でしか、抗日70周年軍事パレードを挙行することすらできませんでした。

もちろん、こんな対処療法とも言えぬ、供騙しの方法が、長続きするはずがありません。

そうこうしている間に空気のみならず、北京郊外数十キロまでゴビ砂漠の端が迫っています。砂漠化もすさまじい勢いで進展しているのです。

この解決には、抜本的な公害対策が必要です。

そのためには、まずは現状の公害排出工場を操業停止にすることです。そして、厳重な罰則規定つきの環境規制法を実施し、過去に環境汚染をした当該企業に浄化を命じることです。

しかし、中国にはできません。

理由は、金にならないからです。そうでなくても、ダブついた供給能力を持て余し、在庫の山を作っている中国経済に、この抜本策は不可能です。

共産党の唯一の存在理由であった、「経済成長」神話が根底から崩壊してしまうからです。

もし、そのような環境政策をしたら、企業は軒並み倒産し、大量の失業者を吐き出し、流民が巷に溢れ、彼らは政府に牙をむくことでしょう。

かくして、中国の役人たちは、今日もはげ山に緑色のペンキを吹きかけて、それを環境政策と呼ぶのです。

 

2015年12月 9日 (水)

政府主導の「脱米軍基地化」とは

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沖縄国際大学の友知政樹教授が夢のある話題を提供してくれています。「基地がなくなった場合の経済効果」が、なんと3.5兆円だそうです。 

下の写真の暑苦しそうな人が友知氏です。

どこかで聞いた名前だと思ったら、2013年5月に「琉球民族独立総合研究学会」なんてきわものを作っちゃった人物です。 

まぁ、そういうスタンスの人物だというだけで、今日のテーマはこの「基地がなくなった場合の経済効果」なるものについてです。 

友知氏の「経済効果」を、嬉しそうに報じる琉球新報(12月5日)の記事です。http://ryukyushimpo.jp/news/entry-183286.html 

「県内にある全ての米軍基地が返還され、跡地利用が進んだ場合に生み出される「直接経済効果」は2兆7643億円に上るとの試算をまとめた。同様に自衛隊基地が返還された場合の直接経済効果は7843億円に上るとし、全体で3兆5486億円と試算した。県民総所得は2012年度の4兆165億円と比較して、1.8倍の7兆2902億円に上ると試算した」 

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 さて、この「もし基地がなくなったら」という試算は、以前から出ていました。 

ざっと歴代の試算を並べてみましょう。 

・2010年・沖縄県議会・全基地返還の試算・・・9155億円
・2015年2月・沖縄県企画部・返還を予定される嘉手納より南の5基地の跡地利用された場合の試算・・・8900億円
・2015年12月・友知教授試算・・・3.5兆円
 

友知先生の試算で、いきなりドンっと4倍です。オオ、いい正月が迎えられそうだゾ(笑)。 

ただし、この経済効果というのは、よくオリンピックがどうしたというように、どんどんと予想される仮想の売り上げを積み上げていくものです。 

「経済効果」という概念を押えておきましょう。

「ある現象やブームなどが、国・地域の経済に及ぼす好影響の総体。本格的・全体的な好況を引き起こすわけではなく、特定の業種が一時的に潤う利益の合計」

別の言葉で言えば、「経済波及効果」です。俗に言う、とらぬタヌキのなんとやらで、民間エコノミストたちがよくやりますが、当たった試しはありません。 

普天間基地がなくなって、そこにショピングモールができて、パチンコ屋が開店して、居酒屋が・・・、という具合に仮想売り上げを累積させるのですが、実際に返還された大規模跡地がどうなっているかといえば、残念ながらこんな調子です。 

牧港住宅地区返還跡地にできた、おもろまちの現況を覗いてみましょう。 

減歩率(※)が不足しているために、このおもろまちでは、狭い区域に駐車スペースも不足し、北谷のような眼玉になるようなアミューズメント施設が欠落しているために、様々な小規模商店同士のパイの奪い合いが生じているようです。
※減歩率とは、「区画整理などで換地処分が行われた際の、処分前の土地面積に対する処分後の面積の割合」のこと。 

今、現実的なテーマになりつつある普天間基地跡地も、この轍を踏む可能性がありますので、丁寧な跡地計画を国が主導して作る必要があります。 

また友知氏は、意図的に「基地がなくなった場合」の負の効果を忘れてしまっています。 

基地がなくなった場合に解雇されるのは、いうまでもなく日本人従業員です。 

それについては、雇用者側の米軍自身のデータがあります。http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Economy/Economy.html 

平成26年12月末日現在、沖縄県内における米軍施設で雇用されている沖縄県民は総勢8千600人です。 

米軍は沖縄県内において、沖縄県庁に次ぐ2番目に大きな雇用主です。 

沖縄県庁 22,989名 (平24年)
米軍 8,600名 (平26年)
沖縄電力 1,605名 (平26年)
琉球銀行 1,251名 (平26年)

Photo_8上2枚の図 米海兵隊サイトより引用)  

これだけではなく、軍用借地料について、米軍はこう述べています。 

「沖縄県内には3万4千人以上の軍用地の地主がいますが、平成26年度に支払われた借地料は1,000億円近くとなっています」(同) 

そして基地がすべてなくなった場合、米軍人、その家族、軍属などの個人関連消費が消えます。    

「3,000人超の軍人・軍属が民間地域に住んでいますが、平成25年度に支払われた家賃や光熱費などの総額は10億円以上です。
軍人・軍属個人名義の一般車輌(軽を除く)は沖縄県内に28,273台(平成26年)あり、道路税と自賠責保険料で20億円近くが支払われています」(同)
 

また米軍も、友知氏に負けずに経済波及効果を計算しています。

「直接消費がどのように地域経済に貢献しているのか計り知ることはできませんが、日本人基地従業員、軍用地の地主、 水道光熱費、建設業社などによる民間地域での消費は地元経済に大きく貢献しています。
日本交通公社による沖縄県内の観光による経済波及効果は、直接消費に加え約75%の間接消費が計上されています。
沖縄県内における米軍もそれと同じような波及効果を及ぼしていると考えられます。
観光と同様に、米軍人・軍属を通して住宅、工事、水道光熱費などで県内の需要を消費しているからです」
(同)

とまぁ、これは米軍が自分で都合がいい数字を並べていると見ることもできますので、鵜呑みにする必要はありません。 

これに加えて、政府からの年に約3千億円の振興予算が消滅するわけです。 

基地がなくなることによる経済効果は、友知氏の指摘を待たずとも確かに大きいでしょう。 

しかし、同時にそれは、今後このていどのボリーュムのパイが県の経済から消滅するということは押えておいたほうがいいでしょう。 

現実には、基地がなくなることのプラスと、マイナスの綱引きの中で、経済はあるので、友知氏のような、「都合のいいことだけ積み上げました」では分からないのです。 

また、返還による跡地の放出がもたらす、不動産価格の下落も計算に入れていません。

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赤い部分が「今すぐ返還」予定地で、既に不動産市場で供給過剰ですから、これに青い部分の「代替地が見つかったら返還」の大所である普天間基地分が加われば、もう中部地域の地価は暴落してしまいます。

今までチビチビと切り売りしてきた貴重な軍用地が、一挙に何百ヘクタールというまとまった大面積で放出されるために、周辺地域の地価が大暴落するわけです。

ですから、米軍基地はいきなり下の写真の人達の望むように、「全面撤去」などしてしまうと、雇用者、関連業者、土建業、振興予算、あるいは不動産などに様々な負のショックを与えてしまいます。

このようなことが起きないように、基地を段階的に縮小していくのが県経済にストレスかかからないのです。

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そしてなにより、友知試算の最大の問題点は、この経済波及効果算出の大前提となる「基地をなくなすにはどうするのか」というロードマップが完全に欠落していることです。

おそらく友知氏のような基地反対派の脳味噌の中には、「基地反対闘争を盛り上げる」ていどの知恵しかないはずです。 

しかし、「辺野古移転断固反対」は心情的には理解できなくもないのですが、それが勝利した場合、普天間基地はそのまま固定化されてしまいます。 

あたりまえです。このあたりまえがわからないと、「新基地反対」という本土人が首を傾げるようなスローガンになってしまいます。

反対派は「なくなったほうがいい」というのと、「なくなる」とはまったく別次元の話だと理解したくないようです。

こう私が言うと、「いや、そっちはそっち。普天間閉鎖は政府が考えろ」というのが、反対派の主張ですが、まことに無責任ですね。 

ところが政府は、翁長氏たち反対派が、「絶対反対」という思考停止に陥っているのは、政府にとってまさに好機と考えているフシがあります。 

県は「絶対反対」というドツボにはまってしまったために、国との協議そのものが窓口閉鎖状態になってしまいました。 

そのために、国は経済オンチの知事との協議を経ずに、どんどんと県の頭越しに地元首長と返還跡地計画を進めることのできる口実を得たのです。 

Photo_3(写真 共同記者発表を終え、握手を交わす菅官房長官とケネディ米駐日大使。左はドーラン在日米軍司令官)

「日米両政府は4日、沖縄県の嘉手納基地以南の米軍施設・区域のうち、普天間飛行場(宜野湾市)東側や牧港補給地区(浦添市)東側の一部について計画を前倒しして返還することなどで合意した。
当初予定より5~8年早い2017年度中の返還を目指す。来年の宜野湾市長選や参院選を前に、沖縄の負担軽減に向けた取り組みを進め、普天間飛行場の名護市辺野古への移設につなげる狙いがある。
 菅官房長官と米国のケネディ駐日大使が4日夕、首相官邸で共同発表した。菅氏は「合意が着実に実施され、沖縄の皆様に我々の取り組みを実感して頂くことを強く希望する」と述べた。
ケネディ氏も「米国は(返還)計画全体の可能な限り早期の実施に引き続き取り組む」と語った」(読売2015年12月4日)
 

今まで、辺野古移設が停滞した場合、同時にストップするであろうと見られていた返還プロセスを、むしろ政府が加速化させているようです。 

つまり、「さぁ、ここも空いたぞ」という跡地計画をどんどんと作ることで、「脱米軍基地化」を進めようということになります。 

この政府主導の「脱米軍基地化」が具体的になればなるほど、経済センスがゼロなために、左翼と一緒に「絶対反対」を叫ぶだけの翁長氏の空疎さが、県民にも理解されてくるようになるという仕組みです。 

さらに友知氏ほどファンタジーに頼れない政府は、普天間基地跡地になんとディズニーランドを誘致するという構想を、宜野湾市長とブチ上げました。 

これは、本部(もとぶ)の大型客船が停泊できる新港と、それと一体化したUSJ沖縄とを、那覇と南北鉄道で結ぼうという野心的なものです。 

この南北鉄道こそ、仲井真知事が沖縄21世紀ビジョンのキモとして、もっとも力を注いだものですが、 これについても翁長氏は無関心を決め込んでいます。

そして、これは連動するかのように、もうひとつのビッグプロジェクトが浮上しました。なんと普天間跡地のディズニーランド計画です。 

Photo_2(写真 沖縄県宜野湾市の佐喜真淳市長(左)から要請書を受け取る菅義偉官房長官=8日午後、首相官邸)

「宜野湾市長、米軍跡地にディズニー誘致=菅長官「橋渡しする
沖縄県宜野湾市の佐喜真淳市長は8日午後、菅義偉官房長官と首相官邸で会い、返還予定の米軍基地の跡地にディズニーリゾートの誘致を目指す方針を伝え、協力を要請した。菅長官は「非常に夢のある話だ。政府として全力で誘致実現に取り組むことを誓いたい」と応じ、バックアップを約束した。
 関係者によると、キャンプ瑞慶覧(同市など)の「インダストリアル・コリドー」返還後の跡地に、リゾートホテルなどを誘致する計画が浮上しているという。
 これに関し、菅長官は8日午後の記者会見で、「宜野湾市と(事業者と)の橋渡しなどで全面的に協力したい」と強調。政府関係者によると、菅長官は既に、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドに対し、同市の要望を伝達したという。」(時事 2015年12月8日)
 

翁長氏は、マスコミの大応援団をバックにして、「戦う知事」路線を突っ走る気のようですが、翁長氏の経済オンチぶりのひどさは超弩級で、せいぜいが沖縄経済同友会に怒られて東町のMICEの規模拡大するていどに終わっています。

翁長氏には、トータルな島の経済についてのグランドデザインが欠落しており、こんな経済オンチにチョッカイを出されるくらいなら、政府がダイレクトに市町村の首長と計画を進めるほうが早いのです。

このように、政府は今や翁長バッシングなどする気はさらさらなく、翁長パッシングの方針にスイッチしたようです。

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[おまけ]

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普天間の航空機をレーザー照射していた、馬鹿丸出しのテロリストが逮捕されました。宜野湾市大山に住む平岡克朗容疑者のようです。

この男のうさん臭さは、この人物の「赤のブログ」をみれば、容易に知れます。「日本人は死ね、米兵は死ね」と連呼しています。お前は「死ね死ね団」か、つうの。

こういう手合いが武器を持つと、ISのホームグロウン・テロリストになるんでしょう。

ソ連の国旗を自宅に掲揚していたりしていたそうですが、真面目な共産主義者というより共産趣味者のようです。党派の背景はないでしょう。

しかし、やったことは、航空危険罪に相当するものです。強力なレーザーは、夜間飛行しているハイロットの暗視ゴーグル当たれば、眼を焼いて墜落の危険が十分にありえたことです。

平岡容疑者は、こんなことを書き散らしています。

「文化度低い日本人はみんな死ねば良いのに!」とか自分に素直になると、ただの悪者扱いされるので………「沖縄の米兵は死ねば良いのに!」くらいに呪いの言葉を縮小し、世界平和を祈りつつ、今年も反日日本人モード(笑)で生きて行きます。」※http://blog.livedoor.jp/russkoepole


※無関係な人が写っているために写真を差し替えました。

2015年12月 8日 (火)

「中国ルール」を許すCOP21で、なにも決まるはずがない

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時もあろうに、COP21の真っ最中に、北京がまた「核の冬」状況になってしまったようです。
※北京のリアルタイム大気汚染情報はこちらからhttp://aqicn.org/city/beijing/jp/

「【北京時事】中国・北京市政府は7日午後、深刻な大気汚染が続くと予想される際に出す4段階の警報のうち、最高レベルの「赤色警報」を発令した。8日朝から10日昼まで交通規制の強化で車両の通行量を半減させるなど緊急対策措置を実施する。北京市で赤色警報の発令は初めて。
 北京市政府は2013年10月、深刻な汚染が続く予測日数に応じて「青色」「黄色」「オレンジ色」「赤色」の4段階に分け、72時間以上続くと予想される際、赤色警報を発令すると定めた。車のナンバープレート末尾が奇数か偶数かによって1日置きに通行禁止にするほか、工事現場の作業も停止させる。小中学校や幼稚園に対して休校・休園などを求める。
 北京市では7日夜、微小粒子状物質PM2.5の濃度は1立方メートル当たり270マイクログラムを超え、深刻な汚染となっている。7日午前0時に発令した「オレンジ色警報」を7日午後6時半(日本時間同7時半)に赤色警報に引き上げた」(時事2015年11月7日)
 

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これについて中国のCOP21代表団は、こう述べています。 

「【パリ時事】パリ郊外で開催中の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、中国政府代表団の蘇偉副団長が5日、時事通信などの取材に応じた。2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組みに関し、途上国グループに所属する立場から「歴史的責任に基づき、(各国が取り組む対策に)差をつけることが必要だ」と強調。過去に温室効果ガスを大量に排出してきた先進国が、より重い責任を負うべきだと改めて主張した。
 気候変動枠組み条約には、先進国の責任をより重くみる「共通だが差異ある責任」原則が明記されている。
これについて、蘇氏は「根本的な原則だ」と指摘。温室ガス削減や資金支援といった新枠組みの重要な論点で、この原則を反映させる必要があるとの認識を示した」(時事2015年12月5日 太字引用者)
 

わ、はは!いつもながら、中国は痛快なまでの悪い冗談をかましています。

中国が世界最大の大気汚染国、すなわちCO2にとどまらず、ありとあらゆる公害物質の排出国であることは明白です。

「温暖化の最大の原因とされている二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体で2012年は317億トンだった。最も多い中国が26%、2位アメリカ16%、3位インド6・2%だ。この3か国がダントツに多く、京都議定書にもとづき削減が義務づけたれていたEU(15か国)8・9%、ロシア5・2%、日本3・9%、その他4・6%となっている」(J-CAST2015年11月27日)

しかし中国はCOP21を前にして、もうひとつの排出大国米国と個別に交渉を進めて「合意」してしまいます。

「昨年11月には、世界1、2位の経済大国である米国と中国が、新たな目標で合意した。オバマ米大統領と習近平国家主席が首脳会談を行い、米国は「2025年までに2005年比で26~28%削減」。中国は「2030年ごろまでに排出量がピークを迎えるようにし、その後は排出量を減少させる」という内容であった。現時点におけるCO2排出量は米中2か国で世界の4割を占める「排出量大国」であり、両国の目標は大いに注目を集めたが、他の諸国からは「不十分ではないか」との指摘が浮上していた」(日本エネルギー会議3月2日)
※http://enercon.jp/topics/8615/?list=focal

常日頃は世界第2位の経済大国を鼓吹し、南シナ海で覇を唱え、途上国に金と武器をバラ撒き、米国と太平洋を2分割しようという「超大国」中国が、こと環境問題となるといきなり、「オレはいたいけな発展途上国だかんね。悪いのは全部先進国だかんね。日米欧は、金、出せや」、というわけです。 

見事なまでのダブスタぶりで、ある時は世界を二分割する超大国、ある時は可哀相な発展途上国ときたもんだ、です。

まぁこんな空母艦隊など作る金ほど金がダブついているなら、国民の健康と環境に金を出しなさい。

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さて下の衛星写真は、2013年冬にNASAが撮ったものですが、画面中央右の白いスモッグ帯に小さな白字でBeijingとあるのが北京です。スモッグの海底に完全に沈んでいるのが分かります。 

これは金星の地表の衛星写真だと言われても、信じちゃいそうです。 

中国国民にとっては、もはや温暖化うんぬんという50年、100年先の話ではなく、ただ今現在をどう生き抜くのかという類の話になっています。 

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「世界保健機関(WHO)が2014年に発表した報告書では、世界中の大気汚染に関連する死者は年間約700万人。そのうち約23%を中国が占めている計算になる。
 研究チームによると、13億人を超える中国の人口の38%が、米環境保護局(EPA)の基準で「不健康」とされる大気レベルの地域に居住している。状況が最も深刻なのは北京の南西部という。頻繁に基準値を大幅に超える汚染が報告される河北省石家荘市などが該当するとみられる」(産経2015年.8月.14日)

この大気汚染は、昨日今日に始まったものではなく、2013年ころから隠しきれないものとなっていました。

「環境省によると、10日夜から北京市を中心に中国東部で大気汚染が発生、14日まで主要都市で汚染が確認された。同市内の濃度は多い時には大気1立方メートルあたり約500マイクロ・グラムで日本国内の基準(1日平均35マイクロ・グラム以下)の十数倍にあたる。」(読売新聞2013年1月30日)  

この分厚い雲の下はこうなっています。 

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 この写真は2013年冬の真昼に撮影されたものです。もう一回繰り返しますが、夕暮れではなく昼間です。 

撮影した共同の特派員は、10数メートル先も見えないと書いています。 

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この分厚いスモッグが晴れるのは、オリンピックと、抗日70周年なんじゃら軍事パレードの時だけです。北京周辺の工場を止めたり、車の乗り入れ規制をするからです。

私も何回か中国に行きましたが、北京に入るとまず気づかされるのは、空気の妙な匂いです。  

コークスを焼く匂いに、排気ガスを加えたような臭いとでもいうのでしょうか。これが大気汚染の主原因である硫酸塩エアロゾルです。 

エアロゾルとは大気中浮遊物質のことで、工場や自動車などから排出される二酸化硫黄が、大気中で化合・吸着した微小粉塵(エアロゾル)のことです。 

粒子の大きさはPM2.5ですから、粒径25μm以下という超微細なものです。 

おお、放射能問題の時にさんざん登場したμ(マイクロ)という単位が出ました。これは100万分の1を表す単位のことです。 

この硫酸塩エアロゾルは、普通の風邪引きマスクていどは簡単に透過して、気管支、肺にまで達しあらゆる気管支系の病気の原因となります。

「専門家によると、霧には多くの有害物質のほか病原菌も付着。気管支炎やのどの炎症、結膜炎などのほか、お年寄りや疾患を抱えた人だと高血圧や脳疾患を誘発する危険があると指摘した。」(ロイター)

マスクでブロックする気なら、N95仕様のマスクが必要です。 

Photo_3この有害ガスの「濃霧」は、北は長春、瀋陽、珠江デルタ、東は済南、西は西安まで、中国の広域に広がっています。  

この汚染地域は、中国の7分の1に相当する130万平方キロ日本の3倍という途方もない面積に達します。大げさな表現ではなく、まさに空前絶後の汚染規模だと言えます。  

この中国からの硫酸塩エアロゾルは、日本に偏西風で到達しています。 

これは国立環境研究所の環境展望台というサイトで、簡単に見ることができます。
※http://www-gis5.nies.go.jp/eastasia/ConcentrationMap1.php 

最新の2015年12月7日の分布図です。 

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この中国からの硫酸塩エアロゾルの到達は、既に10月頃から観測されています。 

下の分布図は10月4日のものですが、沖縄、九州、四国、東北を除く本州のほぼ全域が入っています。 

このセシウムなどよりはるかに危険な硫酸塩エアロゾルは、沖縄まで包んでいますから、自主避難者の皆さん、今度は北海道に逃げなくてよろしいのでしょうか。

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もう一枚、濃度の予測分布図も掲載しておきましょう。同じく国立環境研究所です。
※http://www-cfors.nies.go.jp/~cfors/index-j.htmlPhoto_9
私はCOP21などで何も決まらないと思います。

その理由は簡単です。世界最大のCO2排出国、公害のデパートのような国を、国際社会が何ひとつ規制できないからです。

他のほんとうの途上国が、この「中国ルール」を手本とするのは言うまでもないことです。

かくて、こんな会議では何ひとつ決まりません。

そしてかの国が、内部から変わっていく可能性が限りなくゼロな以上、手つかずのまま「核の冬」が続き、世界は中国の汚染物質によって金星化していくのでしょうか。

※改題しました。どーしてオレって、こう改題か好きなんだろう。反省しています。

 

2015年12月 7日 (月)

極右から生まれ変わっているフランス国民戦線を報じない日本マスコミ

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昨日少し書いたフランス国民戦線(FN)について、もう少しお話しておきましょう。 

実は、国民戦線は、今や日本のメディアの常套句である「極右」「排外主義政党」と簡単に言えるような存在ではなくなっています。 

12月22日のフランス地方議会選挙は、パリ同時多発テロ後、初めての審判でしたので注目されていました。 

予想では、国民戦線が第1党になるという予測すらあったのですが、なんとか穏健保守野党の国民連合(UMP)が、30%を押えて、第1党になったようです。 

UMPの党首のサルコジ元大統領が、バンザ~イと言っているようで、いかに際どかったかわかります。 

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第2党となった国民戦線は、得票率は約25%ですから、わずか5%ていどの僅差でした。 

※追記 どうやら国民戦線が第1党になってしまったようです。
「フランスの広域自治体である地域圏議会選挙の第1回投票が6日行われ、内務省の開票率82%時点での集計結果によると、移民排斥を掲げる極右政党・国民戦線(FN)が全国で約30%の得票率で首位となった。
 パリ同時テロを受け、治安問題への有権者の関心が高まったことが追い風になったとみられ、ルモンド紙(電子版)は「歴史的な結果」と伝えている。
 最大野党・共和党を含む右派連合が約27%で続き、オランド大統領率いる与党・社会党の左派連合は約23%の3位と劣勢。FNは全13の地域圏のうち少なくとも6地域圏で第1党の地位を確実にした。
 ルペン党首は「素晴らしい結果だ」と評価。社会党のカンバデリス第1書記は「同時テロの影響が大きかった」と敗因を分析した」(時事 12月7日) 

昨年5月の欧州議会選挙でも、同党は約25%の得票率を得て第1党となって、ヨーロッパ政界に衝撃を与えています。 

あながち冗談ではなく、次の国政選挙を経てマリーヌ・ルペン党首が大統領になる可能性すら生れてきました。 

ルパンじゃないよ、「ル・ペン」Le Penですよ。2名いますから、注意してね。 

まずは創設者にして、先代党首のジャン・マリー・ル・ペン氏です。この頑固そうなのがオヤジ・ル・ペンです。おお、ヤニ臭そう。 

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う~ん、いかにも生粋の「ザ右翼」って感じで、実に香ばしいキャラです。 

去年には、国民戦線を批判したフランスのユダヤ人歌手ブリュエルに対して、「今度はこちらが窯に入れてやる」という凄まじい発言をしています。 

「窯」が、アウシュビッツのガス窯であることはヨーロッパ人ならすぐ分かるわけで、こういうことを平気で言う政党だという猛烈な批判を浴びました。当然ですね。 

これに対して直ちに、この反ユダヤ主義の発言の削除と、厳重処分を言い渡したのがこの人、現党首のマリーヌ・ル・ペンです。

オヤジ・ル・ペンの三女です。おッ、シックなセンス。パリ第2大学卒の弁護士やってました。 

別に国民戦線は同族世襲会社をやっているわけではなく、彼女は副党首のカール・ラングや、全国代表のゴルニッシュを押えて党首に選出されています。 

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 このマリーヌがやったのが、オヤジ・ル・ペンの路線の大幅見直しでした。 

おお、いきなり骨肉の対立か、日本の家具屋お家騒動みたいだと思われるでしょうが、日本もそうであったように、この父娘は考え方の基本は一緒なものの、現実的な路線では水と油だったのです。 

この娘ル・ペンこそが、いままでヨーロッパ政界の色物扱いされてきた国民戦線を、まともな保守政党に変身させた人物だと言われています。 

まずはオヤジ・ル・ペンの路線です。まさに日本のマスコミの形容どおりの、「極右」「移民排斥政党」そのものです。 

  • 国民戦線旧路線
    移民排斥
    妊娠中絶反対
    ・治安強化
    ・EUからの脱退
    ・通貨の
    ユーロからフランへの回帰
    国籍取得制限の強化など
    ・移民の入国制限。(ただし、フランスの文化を尊重、保護する移民は拒まない)

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これに対して、マリーヌ党首の新路線はこうです。ジャン親父のヤニ臭さがほぼ完全に一掃されているのに、驚きを感じるほどです。

国民戦線新路線
・フランス文化を尊重する移民は認める。
・フランス国籍を持つ移民や移民二世・三世でも、犯罪を犯した場合は出身国へ強制送還させる。
・伝統的な生活様式を保護する。特に農民を尊重する。
・麻薬の密売人、小児性愛などの性犯罪者、母親による児童虐待、殺人者、テロリストを対象とする死刑の復活(現在、EU圏内では死刑はない)
・EU脱退
・極左系団体に対する公的補助金の廃止。
・道徳の復権
・犯罪者や移民の犯罪者には寛容ゼロ (tolérance zéro) で臨む。
・同性愛・妊娠中絶の容認
・国籍の血統主義
・減税
※Wikipedia

  • まるで、別な政党になってしまったようです。この新路線の国民戦線を「極右」「移民排斥政党」とレッテルを貼るのはそうとうに困難でしょう。
  • もっとも重要な移民政策について国民戦線の新路線は、な、なんと「フランスの文化を尊重、保護する移民は拒まない」としています。
  •  
  • 国外追放するのは、「犯罪を犯した場合に限る」としています。
  •  
  • このあたりは、下の写真のように「在日は韓国に殺せ」などと叫んでいる日本の在特会あたりに聞かせたいほどです。
  • こういう愚かな者たちは、保守でもなんでもなく、ただのレイシスト(民族差別主義者)です。
  • 私はしばき隊には批判的ですし、ヘイトスピーチ規制に関しても懐疑的ですが、彼らが「日本人の恥」という気分だけは分かります。そのとおりです。
  • こんな連中が、移民反対だのと言って国旗を持ってデモをするので、移民問題の議論が深まらずにほんとうに迷惑です。
  • Photo_4
    彼女はこういう在特会的レイシズム体質を持つ党員に対して、党籍剥奪処分で臨んでいます。
  • 父親にして創設者のジャンも、例外ではなかっただけです。

    日本の「愛国勢力」も、いつまでも在特会レベルに止まっているかぎり、まともな国民政党になれる可能性は限りなくゼロです。

    マリーヌ党首の移民についての考えは、朝日新聞(2015年1月27日)がインタビューしていますので、添えておきましょう。
    ※http://www.asahi.com/articles/ASH1P1RBXH1PUSPT002.html

    ――でも、今回のテロ(※シャルリ襲撃テロ)の容疑者たちは、移民とは言い難いのでは。移民家庭出身とはいえ、国内で生まれ育ったフランス人です。
     「いいえ。彼らは
    フランス人になることができた、というだけです。例えば(新聞社を襲撃した)クアシ兄弟。両親はアルジェリア人ですが、フランス領内で生まれたお陰で自動的にフランス国籍を取得しました。
    国籍へのもっと厳しい条件を課さなければなりません。ハードルが低すぎるから、移民も殺到し、
    フランス人から雇用などの権利を奪うようになるのです」
     「
    国籍法の改定も欠かせません。二重国籍を廃止すべきです。祖国は一つしかあり得ない。どちらか選ばなければなりません」
     ――日本では、国内で生まれただけだと国籍を取得できません。二重国籍も違法です。
     「私たちが求めるのは、まさにそのような制度なのです。出生地主義の廃止です。
    フランス人は、フランス人の親から生まれるか、フランスに帰化するかだけ。帰化自体は否定しませんが、そのためには罪を犯さず、規則と価値観を尊重し、フランス文化を共有し、運命を共にする意思を持つ必要があります」

    文化多元主義がお好きな朝日は、嫌悪感をこめてインタビューしているようですが、マリーヌさんの発言には、レイシズムの匂いはありません。

    日本マスコミはいいかげんにオヤジ・ル・ペン時代と、娘ル・ペンをゴッチャにするのはやめたほうがいいと思います。

    2015年12月 6日 (日)

    こういう時代だからこそ、空気に流されず、常識家でいましょう

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    HNumigarsuさん。もっとも悪いコースは、民族対決になることですね。 

    沖縄県民がまるで国内にいる「異民族」であるかのような言い方をして、翁長氏は当選してしました。いわゆる「オール沖縄」です。 

    沖縄県民各層からくまなく票をまとめるには、本土に対する「憎悪」が力を持つと、翁長氏は考えたのでしょう。 

    「憎悪と怨念」は、確かに強力に人々をまとめる力があります。なにか目の前の矛盾が、すべて憎悪の対象である本土政府にあると考えれば、スッキリします。 

    「敵はあいつだ。だから殺せ!」という政治の論理です。

    今回の裁判の陳述で、翁長氏はなんと海保を「銃剣とブル」の現代版だと言いました。 

    海保の警備艇にシーシェパードよろしく激突して、あえて沈んでみせて溺れたと叫び、救助しようとすれば、わざわざしがみついて海保の救助員たちを道連れにしようとします。 

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     それを反対派が用意したマスコミ用ボートに乗っているメディアが、待ってましたとばかりに一面トップで、「海保が暴行!」と書き立てます。 

    沈んだ活動家が救難隊員にしがみつくために、要救助者を一回海に沈めて、手をほどくのが救助手順ですが、その部分だけをとって、「海保が抗議団を沈めて殺そうとした」と報じるわけです。  

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    上の写真についた、地元紙の記事がこうです。  「海上デモを行なう市民のカヌーに海保のボートが体当たりし、カヌーを転覆させ、海保職員が海に落ちた市民の首や顔を押さえつけ繰り返し海中に沈めた」(琉球新報2014年8月27日)

    常識で考えて下さい。ここで「首を締めている」と言われているのは、映画『海猿』で名高い潜水員ですよ。
     

    世界でもっとも優秀だと謳われる、人命救助のプロ中のプロです。彼らが、要救助者の首をどうして締めねばならないのですか。 

    さきほどの写真もよく見れば、「海猿」の手は要救助者のライフジャケットのエリを掴んで、引き上げて救助しようとしているのです。 

    事故を誘発するような違法な立入禁止区域に突入しようとする危険行為を働きながら、救助されれば、感謝するどころか、「オレは海保に首を締められた」というのですから、精神を病んでいるとしかいいようがありまけん。 

     こういう報道は、歪曲報道といって報道の名に値しません。 

    報道の客観性を初めから投げ捨てて、ことあれかしと考える反対派の立場に立って、誇張して報じているのです。 

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     上の絵は、社会学でメディアのバイアスを説明したものです。これらの沖縄メディアの事例は、まさにこの図式のとおり意図的部分の誇張・拡大・歪曲による印象報道です。 

    新聞が主張を持つことは必要ですが、その立場からあらかじめ歪曲して報道してはならない、というのが朝日新聞歴史的大誤報事件の教訓だったはずです。

    しかしいまだ、沖縄のメディアはこういう歪曲報道こそが「主張を持つこと」だ、と勘違いしているようです。  

    こういう言論空間しか存在しないのが沖縄県だというのは、残念ながら事実です。 

    さて、こういう言論風土の中で、「オール沖縄」を叫んで当選したのが翁長氏でした。 

    なんて心地よい言葉でしょう、「オール沖縄」。シマンチューはひとつ、シマンチューは団結する! 

    郷土愛ほど、無条件に人の心を踊らせるものはありません。ただし、これは高校野球か、ケンミンショーていどにしてほしいものです。 

    その「心地よさ」は、敵がすっきりしているから生れているのです。そしてその「敵」とは、本土政府、そしてさらにはそれを選んだ本土人たちです。 

    翁長氏は、本来「敵」でもないものを敵に見立てることで、沖縄人のナショナリズムをくすぐり、その力で強引に接着しようとしています。 

    翁長氏はとうとう、いままでの革新知事すらも成し得なかった禁断の領域に手をつけたのです。 

    いままでの左翼陣営は、とりあえずまだ国内の保革の枠組みの内部にいました。 

    ですが、「少数民族」、あるいは「沖縄差別」などと言い始めたら、その枠外、つまり民族対決に一歩足を踏み入れたことになります。

    「沖縄差別」は、具体的県民に対する差別があったわけでもないのに、基地問題だけでそう言っているわけです。

    県ブランドで4位の県が差別の対象なわけないでしょうに。(←どうせ茨城は3年連続最下位ですよ)

    今、ヨーロッパを見てご覧なさい。EUが何で苦悶しているのでしょうか。 

    国内に抱え込んだ大量の移民、つまり異民族社会が、テロリストの温床となり、今回のパリ同時テロのような事件を引き起したのも一面の事実なのです。ただし、それだけではないので念のため。 

    政治というのは一種の力学のようなものです。 

    ひとつのモーメントが極端に振れれば、そのモーメントを打ち消し中和するために逆のモーメントが発生します。

    今のEUは、移民受け入れというモーメントから、パリ同時テロを経て真逆なモーメントが働こうとしています。

    それが、EUすべての国で爆発寸前の移民反対の動きです。

    現実に、次回のフランスの選挙では、移民阻止を掲げる国民戦線(FN)が大きな飛躍をすると思われています。

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    上の写真はフランス国民戦線のデモですが、美人の党首に率いられて若い人たちに強い支持を得つつあります。

    脱線しますが、国民戦線は日本では「極右」という言葉で一括りにされていますが、いまやフランスの第三勢力ですから、ネトウヨ扱いは正確ではありません。

    彼らの政策で注目すべきは、「フランスの文化を尊重し、保護する移民は拒まない」という点です。

    移民は全部帰れではなく、「移民二世・三世でも、犯罪を行った場合は出身国へ強制送還させる」という政策です。

    嫌韓に凝り固まっている在特会とはえらい違いです。フランス国民戦線は、党内から在特会的な暴力的志向が強い連中を叩き出したために発展したのです。

    それはさておき、話を戻します。

    今やこういう、世界中が民族対立でピリピリしている時代だという認識が、翁長氏たちになさすぎます。

    こんなデリケートな民族問題に安易に火を着けて回る、翁長氏や地元2紙には許し難いものを感じます。

    そして、ヨーロッパと同じように、日本においてもその反対の方向のモーメントも生れました。

    残念ですが、このような沖縄ナショナリズムvs本土ナショナリズムの流れはいっそう強くなるでしょう。 

    このような沖縄ナショナリズムの高揚の中で、安易に「独立」を囃し立てる者が大量に生れました。

    仲井真氏が述懐するように、「ちょっと前までは、そんなものは居酒屋政談だった」のです。

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    ところが今や、現職知事が国連人権委に行ってこともあろうに、「少数民族の民族自決権」を唱えてくるようになってしまいました。

    直ちに我那覇さんが、「私たち沖縄県民は日本人であって少数民族ではない。差別などされていない」と反論したのはグッドジョブでした。
    ※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-d7ca.html

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    国際社会では「民族自決権」とは、「わが地域は本国から独立する」という言い換えとして理解されている概念なのですよ。

    こういう危険なみずからの手も傷つけかねない台詞を、外国に行って、その覚悟も度胸もないくせに、言ってくるというのがたまらなくキライです。

    もちろん、独立など空論です。経済基盤の脆弱な沖縄県が「民族独立」できるはずもないし、したとしても1国2制度の罠にかかって、20数年先には香港のようになっていることでしょう。 

    ああ、いかん、気が滅入ってきたぞ(笑)。

    こういう時代だからこそ、空気に流されず、常識家でいましょう。常識を持つということは、けっこう大変なことなのです。

    若いときは、「角度がついた」意見のほうがカッコよく見えるし、第一深く考える必要も、資料を集める必要もないし、相手の立場などこれっぽっちも理解する必要がないので実にラクチンです。

    ネットには左右のそんな意見が溢れています。

    なんだそんなことかと思わないで、立ち止まって下さい。今、その「常識」が通用しなくなりかかっているのが、沖縄の一部の空気なのですよ。

    解決が複雑で絶望的ならば、ひとつひとつ問題をほぐして、落ち着いて個別に解決に近づくしかないのではありませんか。

    味噌もクソも一緒にして、「全部本土政府が悪い」、逆に「全部沖縄の左翼が悪い」といってもなんの解決にもなりません。 

    ひとつひとつ問題を仕分けして、個別に考えていくことです。

    たとえば、基地だったら基地で、一括して「すべての基地撤去」ではなく、具体的に今なにが基地縮小のネックになっているか、どうしたらいいのかを具体的に調べることです。

    移転問題でも、なんでこんなにもつれたのかを知り、その解決がなにかを具体的に考えることです。

    特効薬はありません。私たちがいくら「常識」で検討してみよう、といっても聞く耳すら持たないのが多くの反対派だからです。いたしかたがないことです。

    あの人たちもここまでこじらせてしまっては、簡単に後戻りは難しいのでしょうし、政府にもいまやメンツがあります。

    だからこそ、立ち止まって考える人が必要なのです。

    具体的なことに絞って、ひとつひとつ具体的対案を考える中で、何か生れるものがあるかもしれません。 

    私はそのためにこのブログがあるとすら思っています。

    だから、反対派に荒らされながら、罵倒されながらも、彼らとの討論を継続しているつもりです。

    最後のほうが長くなったので駆け足になりました。そのうちゆっくり論じます。今日はこのくらいで。

    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-f380.html

     

    日曜写真館 湖に通じる冬の小道

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    2015年12月 5日 (土)

    左翼の皆さんの「反知性主義」とは

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    HNumigarasuさん。個別に見ていく習慣を身につけましょうよ。 

    左翼の人の悪い癖は、なにも調べないうちからエイヤっと「敵」を定めて、一回決めたら命がけ。柔軟な発想も、個別に検証することもしないことです。 

    これこそまさに、左翼の皆さん流に表現すれば「反知性主義」ですね。

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    たとえば、原発問題ならこのブログで山ほど論じてきましたが(カテゴリーの「真面目に原発を終わりにする」「原子力事故」を見てね)、いろいろな原子力からの離脱手段があるわけです。 

    あなたも言っていた、「原発を減らしていく」という段階的縮小は、私も賛成です。

    地震国に向いているエネルギー源とは思えませんからね。

    しかし、ダカラといって3割近くを依存していたエネルギー源を、代替エネルギーを考えないで、スパンっと切ったらどうなります。

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    エネルギーコストの上昇によって社会が打撃を受けちゃいますよ。実際、そうなっています。

    特に関西電力は原子力の依存度が高かったので、電気料金は目もあてられないくらいで、中小製造業は再稼働の要望書を出しているくらいです。

    ドイツはヨーロッパ送電網から電気を買えるし、動かしている原発もまだかなりあります。
    その上で原子力に依存しない社会を目標に定めて努力しています。

    ただし、このドイツすら内情はメタメタで、製造業はどんどんドイツから逃げ出す始末です。このことも連載で10回以上書いているから読んで下さい。 
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-4c56.html

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    ところが日本の反原発主義者の皆さんときたひにゃ、「再稼働反対」が絶対的スローガンですから、段階的にもなにも、即時ゼロです。

    私も心情的には、一刻も早く原子力に消え失せて欲しいと願っていますが、現実的には長い道のりだと思っています。 

    それは原発ゼロの代償に国民生活や、国民経済を傷つけてしまってはなんにもならないからです。 

    ですから私は、反原発主義者のように即時原発ゼロを唱えたり、再生可能エネルギーを徒に主張したりすることはしません。 

    逆に、ただちに全原発の再稼働をせよなどとは口が腐っても言いません。

    何からなすべきか優先順位をつけて、どの原発から、どのような方法によって、いかなる代替手段で行うのか考えていこうと思っています。 

    この優先順位という発想自体が、左の人はないんだよな。

    ものには手順というものがあるのです。再稼働の是非を決定するのは、一義的に科学的知見に基づく原子力規制委員会のものです。その後にそれを受けた政府や国会の判断となります。 

    この規制委員会の安全審査を飛び越えて再稼働したり、廃炉にしたりすることは政治の優越を認めることになって危険です。

    では現況はどうなのでしょうか。日本の原発は大飯と川内を除いてすべて稼働していませんし、再稼働の予定も不透明な状況です。 

    そして今後ですが、規制委員会の安全基準によれば、老朽原発と活断層上の原発には未来はないでしょう。

    これだけで、30年から40年たつ老朽原発の15基と、GE製markⅠ及びⅡの11基が廃炉に追い込まれます。2基重複していますからこれで24基、約半数強の原発が止まります。 

     また、それ以外の原発も、現時点で安全基準に100%合格する原発などは存在しませんから、一定期間かけた再稼働のための補強工事が必要なわけです。 

    下の写真は浜岡の新たに作られた防波壁で、原発敷地の南側に延長約1・6キロにわたり設置されています。

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    その後に規制委員会に申請して審査を受けるのですから、たぶん2年から3年間、時には5年以上再稼働が遅れることが予想されます。 (その間に審査に合格すれば再稼働する原発も現にパラパラあるわけですが)

    つまり、20~30基の原発には未来がなく、残りの原発も多額の補強資金をかけてまで再稼働させるかどうなのか瀬戸際だというのが現状です。

    維持費と改修費ばかりかさんで、5年かかって審査したあげくまた改修だったら電力会社はやってられません。きっとその見極めをする期間にこの数年間はなるはずです。 

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    このような現状のために、上の写真の川崎火力発電所のように火力発電がほとんど独力でエネルギーをまかなっているというのが現状です。 

    現在、9電力会社が3.2兆円と言われる燃料コストの高騰で、沖縄を除くすべての電力各社も電気料金を上げ続けています。

    電力会社の伏魔殿のような子会社体制を整理し、人件費圧力を減らせという声も大きいし、それをやる必要はありますが、人件費はせいぜいが1割程度であり、その圧縮によるコスト削減効果にも自ずと限界があります。 

    このように原発が止まり、再稼働が完全に不透明となった今は、エネルギー戦国時代と呼ばれるようになっています。 

    ところが、反原発主義者の人たちは、原発の代替というと、判で押したように再生可能エネルギーオンリーなんですからイヤになる。

    あれはもっともタチの悪い不安定な自立できないエネルギー源なのです。これも大量に記事を書いていますが、これがまとまっているかな。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-8210.html

    そういう極端なことを言うために、そのネタとして、放射能で40万人がガンになるとか、鼻血がどーたらとか、白血病がなんじゃらとか、やくたいもないデマをまき散らします。 

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    その上に、反原発=反TPP=オスプレイ反対=安保法制反対=特定秘密法反対=辺野古移設反対・・・、どんとんと拡張子で無限に「絶対反対」をつなげていくのですから、そうとうにヘンです。

    なんでエネルギー問題と、安全保障問題や貿易問題が一緒になるんだァァァァ(エコーかけてね)。

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    こう2枚並べてみると、同じ人がおなじように、同じことを言っていますね。

    ひとつひとつ丁寧に見ていったら、これは賛成、これは反対と、これは段階的に条件つきで賛成、あるいは反対とか、分かれて当然でしょう。

    それを一括「絶対反対」なんだから、お前さんたち真面目に考えているのかぁと、いつも思っています。

    これについても一本記事書きましたので、よかったら読んで見てください。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-4e30.html

    放射脳という表現は、事故当初は使いたくなかったのですが、あれから4年たとうというのに、同じデマをまき散らす人は、そうとしか呼びようがないですね。 

    よくこの人たちはアベさんをファシスト呼ばわりしますが、「全体主義」というか、画一主義的体質は左の皆さんの持ち味じゃないですかね。 

    それにしても、この同じプラカードを同じゼッケンとハチマキつけた人達が、ブワッとマスゲームみたいに上げるのって、気味わるくない?

    私はそうとうに気持ちが悪い。

    ひとつひとつ丁寧に見ていきましょうよ。

    ※放射脳関連記事
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-71c3.html
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-0cd8.html
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-2ab6.html

     

    2015年12月 4日 (金)

    ロシア国防相のエルドアンIS疑惑は眉唾だ

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    プーチンのいわゆる「エルドアンIS疑惑」について、ロシアサイト「スプートニク」(12月2日)はこう伝えています。
    ※http://jp.sputniknews.com/russia/20151202/1263601.html

    「ブリーフィングでは露国防省の証拠資料として衛星写真が公開された。写真にはISの掌握地域からトルコへと向かう石油タンクローリーの車列が映し出されている。
    『11月16日に撮られた写真には、最高で360台の石油輸送車と大型トラックがシリアの国境のすぐ近くを移動する様子が分かる。B地区には最多で160台の石油輸送車があるが、これはたった今国境を通過したばかりのものだ。A地区の通過チェックポイントではシリアの国境に接近する100台からなる車列が認められる。』
    ルツコイ中将は、『宇宙諜報手段で、国境を越えた後、石油を積んだタンクローリー、大型トラックがタンカー用の特殊港に向かって進んでいる信憑性のある証拠が示された。」と指摘し、「石油の一部は船に積み替えられ、加工のためにトルコの外へ運びされている』と補足している」

    これは1週間前のエルドアンの対応に対する、答えです。

    「一方、エルドアン大統領は大統領公邸で演説し、過激派組織『イスラム国』からトルコが石油を密輸しているとのプーチン大統領の発言を念頭に、『恥を知れ。その事実を証明しろ』と憤慨。シリアのアサド政権およびロシアなどの支援国こそが『イスラム国』に資金と武器を供給していると反論した。」(時事11月26日)

    まぁ、要するに、怒ったプーチンが「エルドアン、お前はISから石油を買ってワイロをもらったろう」と叫び、エルドアンも負けずにどなり返して「ふざけるな!タコ!証拠持って来い!」と言い返したわけです。 

    Photo_5(写真 トルコのIS石油密輸疑惑を発表するルツコイ国防相ロイター12月3日) 

    失礼ながら、まるで子供のケンカのようですが、場所が場所だけに佐藤優さんなど、早くも「ドミノゲームのように大規模な戦争に発展する可能性が出た」などと仰せです。 

    私はありえないと思います。 ときどき佐藤さんは、これでも外務省主任分析官だったのか、ということを平気で言うから困ります。

    佐藤氏は、このロシアの「新証拠」なるものを発表したのが、ロシア国防相でしたので、情報ソースがあの悪名高きGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)からの情報だから、確度が高いというわけです。 

    では、その新証拠なるものを見てみましょう。 

    Photo
    ロシアはISが3ルートで盗んだ石油を密輸している、と言っています。

    下のCNN(12月3日)が出したロシア発表の地図には、確かにそのルートが、トルコに越境しています。 

    地図左上の端部分が、トルコ-シリア国境です。ここに360台のタンクローリーがいたということのようです。

    Photo_4

    次にロシアがISの原油密輸コンボイ(トラックの車列)だと言っているものです。「宇宙的諜報手段」という味わい深い訳がついていますが、要するに軍事偵察衛星写真のことです。

    Photo_10
    これについて池内恵氏はいたって冷静にこう述べています。(フォーサイトフェースブック12月3日)
    ※https://www.facebook.com/

    「シリアの石油なんてたいした量ではない。『イスラーム国』が直接トルコまで売りに来るはずがない。シリアの社会がちびちびとこれまでどおりに密輸して、これまでどおり使っているだけです。末端でトルコに売りに行くのも通常営業」

    ところがこれらが、ロシアの主張にかかるとこのように加工されてしまいます。 

    <ISのタンクローリーの車列⇒トルコ領に越境⇒トルコ政府が関与⇒エルドアンがワイロをもらっている> 

    おいおい、前2ツまではともかく、いきなり後2ツのトルコ政府関与とか、ましてやエルドアン一族がISの賄賂漬けというのは、短絡と飛躍です。

    まりは、俗に言うヤクザのいいがかりのようなものです。 

    ロシア国防相が提出したものは、ただの衛星写真にすぎません。確かに、ロシアは軍事衛星を使ってISを監視していますから、こんな映像は、それこそ山のようにあるでしょう。 

    ロシアのGRU情報だとゲッとなりますが、落ち着いて眺めてみれば、どうということのないトラックコンボイを写した衛星写真にすぎません。 

    このISの密輸ルートについても、特に新しい情報ではなく、既に国際社会では知られていたことばかりです。 

    中東には、ノーマルな原油輸送ルート以外に、多くの密輸ルートが存在します。いわゆるグレイゾーン販売です。 

    その大手はイラク・クルド自治政府のキルクーク油田からのものです。このキルクークはクルド自治政府の最大の経済基盤ですが、ISはこれに対して今年1月に猛烈な攻撃をしかけて激戦になっています。
    ※http://jp.wsj.com/articles/SB12431244049710433766304580432403340442066 

    このキルクーク原油も、トルコを通じて運ばれています。この密輸を行っているのは、アラブ系イスラエル人だと言われています。 

    このようなグレイゾーン原油は、いくつもルートを辿ってロンダリングされていきます。 

    その間に多くの密輸業者がからんでいて、それを一括りにして「トルコ政府が関与している」などと決めつけるのは粗雑です。

    下の写真はロシア国防相が発表したタンクローリーの車列ですが、これがトルコ領に越境したからといって、それがトルコ政府の黙認や、ましてや賄賂の証拠になるはずがありません。 

    もちろん、密輸業者はIS原油を買っているだけで、ISそのものではありません。ただの仲介業者にすぎません。

    また彼らは国境のイミグレに袖の下を渡したりはしているでしょうが、そんなことは中東では日常茶飯事です。 

    Photo_3
    ロシアは、現在、ISのタンクローリーや、原油精製施設を執拗に爆撃しています。 

    これは、ISが不法占拠している油井や精製施設が、西側石油会社の所有だからです。もしこれがロシアのガスプロムあたりの所有ならば、絶対手を出しません。 

    Photo_6
    ロシアのシリア政策はブレがありません。見事なくらいアサド様命です。

    プーチンの認識によれば、アサド以外に統治能力を持つ政権はない。アサド政権が揺らいだからISが生れたのだ。だからアサドを国際社会が認知しないほうがおかしいというものです。 

    まことに片手落ちな言い分で、シリア難民は、ISの迫害から逃れてきただけではなく、自らの国民の頭上にナパーム弾を落したり、平気で毒ガス攻撃を仕掛けるような非道なアサド政権から逃れてきたのです。

    Photo_8
    プーチンは、民族絶滅政策まがいだとまで非難されたチェチェン侵攻を指揮した人物ですから、アサドていどの非道にはなんにも感じないのでしょうね。 

    ロシアは、このアサド政権支援に立って、ISを掃討するという大義名分で、実際やってきたことは、反アサド政権の自由シリア軍とトルクメンゲリラを爆撃することでした。 

    ロシア航空機テロで、遅まきながら本格的なIS攻撃を開始したのですが、それにしても西側石油会社の原油施設を爆撃して成果を誇ってみたりするというところに、プーチンらしいエグサが滲んでいます。 

    Photo_9
    今回のロシア機撃墜事件も、当然トルコ空軍パイロットの一存による偶発的なものではなく、おそらくはトルコ軍中枢、さらにはエルドアン自身の承認なくして起き得ないものだと思われます。

    トルコはシリアの隣国として、多くのシリア難民の引き受けてきましたし、彼らから、シリア領内で起きている事態を熟知していたはずです。

    そして、ロシアが介入することによっていっそうシリア国内が悲惨な状況に陥り、やがては無人の国になることすらありえると見ていました。

    また隣国としても、旧宗主国(※)としても、陰ひなたに介入してきたと思われます。※シリアは19世紀まではオスマントルコ領土。だからトルコ系トルクメン人が多数居住している。

    したがって、この撃墜事件は偶発的なものではなく、エルドアンのプーチンに対する警告ともいえます。

    また、トルコがNATOの加盟国である以上、今回の撃墜指令についてもNATOは何らかの了解を与えていたとみるほうが素直でしょう。

    トルコ空軍は上層部からの指令で、この地域を厳重に警戒していたはずで、ロシア軍機はその警戒網を知らずに、いつもどおりにトルクメンゲリラ攻撃に向っていて、この警戒網に引っかかったのです。

    逆のロシア側からすれば、「おのれ、待ち伏せていたな」ということになります。

    どうロシアが思おうと自由ですが、領空侵犯は事実ですが(わずか17秒ですが)、したのは確かなので、この部分でロシアは争う余地がないはずです。

    むしろロシア人が激怒しているのは、脱出したパイロットの運命です。

    トルコの誤算は、脱出したロシア空軍パイロットが、地元のトルクメンゲリラによって惨殺されてしまったことです。

    パイロットがトルコ領土に落下して、トルコ軍によって保護されていたのなら、この事態は起きなかったでしょう。

    しかし、彼らのパラシュートは流されて、シリア領内トルクメン人居住区へと落ちていったのでした。

    2015年12月 3日 (木)

    翁長氏が仕掛けた「訴えの資格」の罠

    191
    いよいよ「翁長裁判」が始まりました。

    朝日新聞(12月2日)は興奮を隠せぬ声でこう書いています。

    「翁長氏は陳述で、琉球王国の時代からの歴史をひもとき、沖縄戦後に強制的に土地が奪われて米軍基地が建設された経緯を説明。「問われているのは、埋め立ての承認取り消しの是非だけではない」と指摘。「日本に地方自治や民主主義は存在するのか。沖縄県にのみ負担を強いる日米安保体制は正常と言えるのか。国民すべてに問いかけたい」と訴えた」

    Photo_10(写真 NHKニュー12月2日より引用)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151202/k10010326921000.html

    テンション高いですね。

    予想どおり、沖縄の歴史を絡めてきました。琉球処分、沖縄戦、銃剣とブルドーザーという沖縄恨歌のデパートです。
    Photo_5
    一方、対する原告の国は定塚誠(じょうづか)法務省訴訟局長という、プロ中のプロが登板しました。

    定塚氏の弁論です。ポッポとしている翁長氏が火なら、定塚氏は水のようです。

    「澄み切った法律論を議論すべきで、沖縄の基地のありようを議論すべきではない」などと主張。埋め立て承認などの行政処分は「例外的な場合を除いて取り消せない」とし、公共の福祉に照らして著しく不当である時に限って取り消せる、と述べた」(同)

     国は、余計なことは考えずに、法律論で行こうと言っているわけです。

    「沖縄恨歌」vs「澄みきった法律論」、情緒vs論理の対決と言うわけです。

    Photo_2図 沖タイ12月2日より引用)  

    もし翁長氏が勝てるなどと夢想していてこの裁判に望んでいるとしたら、そうとうな楽天家です。

    翁長氏は、「移転阻止こそ県政の柱」とまで豪語していたはずです。しかし、既にそれから1年。なんの進展もありません。

    やったことといえば、米国や国連に行って「民族自決権」を叫んだパーフォーマンスくらいで、具体的成果は当然ゼロ。

    もたもたしているうちに、カウンターパートの菅氏の方から胸元に飛び込まれて、休戦の1カ月間もフイになりました。

    「絶対反対」では交渉もクソもありません。

    本気で翁長氏が「解決」を望んでいるならば、なにかしらの妥協案があるかのようなそぶりを見せるだけで、政府はそれを押してまで工事再開は難しくなったはずです。

    しかし、翁長さんときたひにゃ、芸も曲もなく「絶対反対」では、ちゃーならんさです。

    これで政府は翁長氏が支持母体の共産、社民、官公労のいいなりになって、解決能力が欠如したと判断したはずです。

    ならば、政府は3本の裁判をガス抜きにして、その間に着実に工事を進めるだけです。

    Photo_9写真 10月29日に工事は再開された。ANNニュースより)

    ではなぜ、翁長氏は県外ジャリがどうしたいう小技ばかりで、さっさと承認撤回に踏み切らなかったのでしょうか?

    その理由はもちろん、承認撤回などしたら最後、100%国との裁判になり、まともにやれば負けるのがわかりきっていたからです。

    今まで、なんどとなく論じてきたように、そもそも論で言えば、基地の移設などは国の専管事項の安全保障案件であって、地方自治体にクチバシを突っ込む余地などまったくありません。

    国が「99.9%勝てる」と読んでいるのには、普天間基地の移設は、最高裁判決が認めているまさに「公共の利益」そのものだからです。

    ならば、県としては「裁判に入らないで、いかにこのまま工事中止の行政執行をするか」に重点がかかるはずです。

    のための決定打がひとつありました。それが行政不服訴訟における「訴えの資格」問題です。 

    少し説明が要ります。

    行政不服訴訟というのは、一般人、つまり「私人」と県や国などの行政機関との係争が対象です。 

    つまり私人が、「行政はこんな不当なことをしているんだ。是正してほしい」と行政機関を訴えるのが一般的なスタイルです。 

    ところが今回、訴えたのが国、訴えられたのも県で、双方とも行政機関です。 

    「ならば、お前ら国は私人じゃないんだから、そもそも訴える資格がないよ」というのが、翁長沖縄県の言い分だったはずてす。 

    国が苦慮したのは、裁判内容そのものではなく、むしろ国が「訴えの資格なし」として門前払いされることだったと思われます。

    国は、「私人」つまり民間業者ではないのはわかりきった話ですから、それを理由に不服審査をしないと言われる可能性が高かったのです。

    事実、9月30日まで、沖縄県は国の不服の聴聞会要求を蹴ってきました。 

    県が「国は私人、つまり民間業者じゃないんだから、行政不服審査法に基づいた聴聞なんかできないよ」と突っぱね続ければ、県の勝機はありました。 

    沖タイ(9月14日)は、こう成蹊大学の武田真一郎教授に言わしています。http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=132782

    「民間業者や私人が海を埋め立て、軍事基地を造ることは考えられない。埋立法では民間には免許、国には承認と言葉を使い分けており、国固有の資格で承認を得たのは間違いなく、行政不服審査法の適用を受けて不服審査を求める資格はない」

    Photo_8朝日新聞12月1日より引用)

    ところが、県は大きな失敗をしてしまいました。 

    国(防衛局)が、淡々と行政不服審査法による聴聞を求めた結果、県は当初の「行政不服審査法の枠内ではしない」という態度を9月30日に変えて、聴聞に応じてしまったのです。 

    これで、県は自らの主張であった「訴えは私人でなければダメだ」という論拠を自分で潰して、国を訴え資格のある「私人」扱いにしてしまったことになります。 

    国はこの瞬間、最大のハードルを超えたはずです。

    もし沖縄県が頑強に不服審査聴聞を拒否し続けた場合、ここがデッドロックになった可能性はありえたからです。 

    この聴聞会には国側の人間は欠席し、陳述書の提出に留めました。 

    なぜでしょうか。国は、これが翁長氏が仕掛けた「罠」だと見破っていたからです。

    「●行政手続法第二十七条
      2  聴聞を経てされた不利益処分については、当事者及び参加人は、行政不服審査法 による異議申立てをすることができない

    つまり、県は聴聞会に国を呼び寄せれば、「これで聞き置いたからオシマイ」と宣告できたわけです。 

    これが、県が国をあえて「私人」扱いにして聴聞会を開いた理由でした。 

    しかし、国のほうが一枚上手でした。これが県が国の言い分を聞いて、折れたように見せかけた罠だと見抜いていたからです。 

    国は、シャラとして人は出さずに文書だけ提出して、県を地団駄踏ませます。 

    この結果、沖縄県は、行政手続法に基づいた「私人」として国を扱ってしまったことになり、「県による行政指導を受ける立場」を国に許すことになったということになります。 

    こうして、翁長沖縄県は初手で躓いてしまったというわけで、本来やれば負けると分かっている裁判闘争に引きずり込まれることになってしまったわけです。 

    いつもは大本営発表もどきの字句が踊る沖タイも、上の記事ではめずらしく、こんな弱気を吐いています。 

    「裁判所で門前払いとなる可能性も大いにある。前例のない事態に暗中模索が続く」

    まったくそのとおりです。

    翁長氏が仕掛けた「訴え資格の罠」は、今度は逆流して安全保障案件は国の専管という「資格の罠」として自分に返ってくることになったのです。

    いずれにせよ、裁判所はどちらも一蹴することはしないはずです。

    一部の方は、裁判所が瞬殺すると読んでいますが、それは国も望まないことです。

    裁判所としては、まともな法律論では国の立場を取るしかないでしょうが、かといって「民意」も無視できるほど小さくないからです。

    ここで県の主張を無下に退ければ、「司法まで国の味方なのか」という世論を翁長氏側につくられてしまいます。

    基地移転工事そのものはそれでいいとしても、今後を考えた場合、それは得策ではありません。 

    ですから、ここはしっかりと県の主張も聞く姿勢をとるはずです。

    かくして、この訴訟はダラダラと続くと思われます。

    ■アップ時から大幅に加筆修正いたしました。毎度すいません。(午前10時)

    2015年12月 2日 (水)

    野田聖子議員が知らない南シナ海の現実と歴史

    113

    野田聖子衆院議員が、11月4日放送のBS日テレ『深層NEWS』で、「(南シナ海問題は)日本に関係ない」発言をして炎上しました。 

    当日の発言です。 

    「そこは直接、日本には関係ありません。あまりコミットすることはないですし、むしろ日本としては人的交流、科学技術の供与など、得意分野で中国との溝を埋めていくことが、いまいちばん最初に求められることだと思います」

     「そこ」というのが南シナ海でしたので、物議を醸したわけです。 

    Photo_3
    野田さんは首相になりたいようで、総裁選に出たりしてイチビっているわりには、なにをお考えなのか、いまひとつよくわからない御方です。

    というより、そうとうに頭が足りない方ではないでしょうか。 

    総裁選も、「出なければ党内民主主義がなくなる」みたいな口ぶりでしたが、安保法制について明瞭な対抗軸があるならともかく、そのへんがハッキリしていない立候補は野党とつるんで審議の遅滞による廃案を狙った、と言われても仕方がないものでした。

    与党の総裁選は、内政や経済で争われるもので、外交・安全保障問題で争うものではありません。 

    そして、今回です。 

    野田氏は、まるで元琉球新報編集委員の前泊博盛氏あたりが言いそうなことを言っていますね。

    そういえば、先月のNHK日曜討論で、元沖タイ論説委員の屋良朝博氏もチャラっと、「遠い地域の問題なので沖縄には関係ない」って言ってましたっけね。

    どうやら、これが地元2紙の公式見解のようです。

    野田さんの場合、いちおう自民党の総務会長までやった人ですから話題になりましたが、特に驚くような内容ではありません。 

    彼女は現実と歴史の両方を知らなすぎます。日本にとって南シナ海とは、フランスにとってのシリア、イギリスにとってのパレスチナのようなものなのです。 

    南シナ海というアジアの火薬庫は、かつて「日本領」でした。「新南群島」というのが、当時の日本の呼称です。 

    今なんという名前でしょう。はい、英語呼称「スプラトリー諸島」、ベトナム呼称「チュオンサ諸島」、中国呼称「南沙諸島」です。しょっちゅう聞くでしょう。 

    このど真ん中を我が国のシーレーンが走っていて、原油を中東から運んでいるわけです。 

    まずは2枚の地図を重ねて見てください。 

    Photo_4
    Photo_6
    日本の大動脈が南シナ海の真ん中を通過しているのがわかります。

    この南シナ海を通過できなくなると、日本はロンボク海峡からマカッサル海峡ルートで台湾の東を通過するという迂回ルート一本に頼ることになります。

    その結果、3日間余分にかかってしまいます。超大型タンカーは時間が単位ですので、この迂回ルートは、日本経済と社会に深刻な打撃を与えることになるでしょう。

    ところで、南シナ海は公海といってどこの国の船も自由航行が許される海域とされています。 

    ところが中国は1992年に、「ここは一切合切全部オレのものだ」と言い始めました。 

    彼らの領海法で領土だと主張している範囲を見てみましょう。なかなかのエグさですよ。

    なにせ、ひとつの島くらいなら可愛げがありますが、この赤い線の内側(九段線といいます)は、全部オレ様のものだと言うのですから強欲にもほどがあります。 

    Photo_8中国の領海法はこう述べています。

    「●中国領海法(1992年2月25日発効)第二条
    中華人民共和国の領海は、中華人民共和国陸地領土と内水(内海)に隣接する一帯の海域である。
    中華人民共和国の陸地領土は、中華人民共和国の大陸およびその沿海島嶼を含み、台湾および釣魚島(※尖閣諸島のこと)を含む附属各島、澎湖列島、東沙群島、西沙群島、中沙群島、南沙群島および中華人民共和国に所属する一切の島嶼を包含するものとする。中華人民共和国の領海基線は陸地に沿った水域をすべからく中華人民共和国の内水(内海)とする」
    (太字引用者)

    この「中国領海」の岩礁に、中国が軍事要塞を建設しているので大問題になりました。

    下の写真は、中国が南沙諸島の珊瑚礁ファイアリー・クロス礁(中国呼称「永暑礁」)を埋め立てて作ってしまった3000m級滑走路です。

    普天間基地が2700mですから、いかに巨大か分かります。

    Photo_5

     彼らからすれば、自分の領海にナニを作ろうと勝手なはずだ、と言いたいのでしょうが、そうは問屋が卸しません。

    国際社会には国際海洋法というものがあるのです。 

    ここは埋め立て以前は満潮時に完全に水没してしまう暗礁なのですよ。残念。

    さて、「島」、「岩礁」、「暗礁」の違いをご存じでしょうか。

    せっかくですから、国際海洋法でどのような区分の定義をしているのか、押えておきましょう。

    ・「」の3条件
    1.自然に形成された陸地
    2.水に囲まれていること
    3.高潮時に水没しない

    岩礁…主に水中に隠れたり、水面上にわずかだけ姿を現している岩。波によって長年岩が削られて出来たものや、海底の岩盤が隆起して出来たものがある。

    暗礁…水面下に隠れる岩礁のこと。岩石や珊瑚礁などでできており、船舶にとっては座礁の恐れがある危険な場所となっている。

    つまり、岩礁は少しでも海面上に岩が出ているのに対して、暗礁は海面下に隠れてしまっているものをいいます。

    下図は韓国の離於島の科学基地と称する施設ですが、これは暗礁の上に施設を乗せているだけなので、領土とは見なされません。

    Photo_9
    ですから、いくら岩礁や暗礁を埋め立てて、自国の領土だと主張しても国際海洋条約上は領土としては認められないのです。

    ちなみに、中国は何かと言うと日本の沖ノ鳥島に文句をつけてきますが、あそこは満潮時でもかろうじて水没しないことから、国際法上の「島」と各国から認められています。

    このように、国際的に領土と認められていわけでもない地域を勝手に領土と称して、あまつさえ「島」でもない暗礁を埋め立てて、その上にあろうことか、軍事基地を作ってしまうというトリプルゴーマンをかましているのが中国なわけです。

    こんな中国を相手にして、野田さんは、「人的交流、科学技術の供与など、得意分野で中国との溝を埋めていくことが大事」だそうです。

    野田さんが大の親中派なことは知られていますが、友人ならばいろいろなプレゼントをする前に、「そんなことするんじゃないよ」と優しく忠告してあげるのが、友情というものじゃないでしょうか。

    もっとも、そんな「忠告」なんか聞くタマじゃありませんけどね。

    まぁ、このていどの南シナ海認識だと、その延長線にある東シナ海に浮かぶ尖閣諸島も「遠い」でしょうから、安保法制の必要性に鈍いのも、むべなるかなです。

    ありゃ、歴史にたどり着かないうちに紙数が尽きてしまいました。続きの歴史的検証は、次回にします。 

    2015年12月 1日 (火)

    プーチンはつらいよ 

    002
    ロシア軍機撃墜事件について、もう少し続けます。

    この間の撃墜事件についての状況については、池内恵氏のまとめがあります。(欄外参照)
    ※BBCアップデートhttp://www.bbc.com/news/world-middle-east-34912581

    プーチンはあいかわらず、口では既に戦争を始めたいような口ぶりです。 

    トルコを「テロの擁護者」と呼んだかと思えば、「テロの共犯者による背後からの攻撃でロシア兵の命が失われた」と、もう言いたい放題のように聞こえます。 

    このへんの言い回しは、計算された罵倒だから、割り引いて6掛くらいで聞いて下さい。

    日本人は思ったことの6掛にして控えめにするのが美徳ですが、ロシア人は4割増していどで叫ぶのが流儀です。 

    ですから、プーチンはパイロットを殺害した、トルクメン・ゲリラと、それを支援するトルコまでも一括して「テロリストとその共犯者」で括ってみせます。 

    もちろん、プーチンはトルクメン人ゲリラが、ISと戦っているのは百も承知ですし、そもそも、彼らの頭上に執拗に爆弾を降らせて虐殺行為を続けてきたのは、他ならぬロシアでした。 

    一方的な加害者でありながら、何か不都合なことか起きれば、直ちに無辜の被害者ヅラができるところが、さすがに元KGBです。 

    トルクメン・ゲリラのロシア軍に対する尋常ならざる憎悪は、降下してきたパイロット2名にぶつけられました。 

    Photo

     上の映像は、撮影された一連の映像から切り取ったものです。 

    ふたつのパラシュートが見えますので、脱出には成功していましたが、待ち構えていたのが、常日頃彼らが爆撃を続けていたトルクメン系住民だったのが、彼らの悲劇でした。 

    Photo_2
    とまれ、結果として、この2名のパイロットは殺害とみられますが、このあたりの任侠映画もどきのセリフを、この顔で言う凄味が、プーチンという人物の真骨頂です。 

    Photo_3
    任侠映画と言いましたが、あながち冗談ではなく、プーチンの政治手法はすべてに芝居がかっています。 

    たとえば、ロシア旅客機テロ事件後に、IS掃討を発表したのはロシア国家防衛指揮センター(NDCC)と呼ばれる、中央作戦室でした。 

    ここは、米国との全面核戦争用に設けられた中央指揮所で、こういう言い方はナンですがIS如きテロリスト相手に持ち出す場所ではありません。 

    中国新華社は、このNDCCについて、さすがはプー大人とばかりに、こう報じています。

    「戦時の政府」と呼ばれるロシア国家防衛指揮センター(NDCC)は12月1日に作戦当番状態に入っている。国家安全への威嚇の対処を担当するNDCCは有事になると、国家を接収管理する。ロシア国防省が昨年5月に、プーチン大統領の設立決定を発表し、今年1月に工事開始し、一年未満で完成して発足した。
    NDCCには、ロシア全国の最優秀の指揮官が集まり、最先端のデータ処理システムを採用され、核爆弾発射命令を下す権力も与えられる」(2014年12月3日)

    Photo_4
    この出来て1年足らずのNDCCのスーパーオーロラビジョンには、海軍のスラブァ旧巡洋艦や戦略爆撃機から発射される巡航ミサイルを映し出しています。 

    ああ、くどい。ウォトカの一気飲みだ(苦笑)。

    使用された爆撃機も、実に芝居がかったものでした。 

    有志連合軍が使うような小型戦闘爆撃機ではなく、すべてが核戦争用の戦略爆撃機だったのですから、世界は唖然としましたが、多くのロシア国民はその凛々しさにかつてのソ連時代を思い出して胸を熱くさせたことでしょう。 

    Photo_5
    上の写真は、核爆発に対応するために白色塗装された「白鳥」ことTu-160から、ISの「首都」ラッカに発射される巡航ミサイルですが、こんな戦略爆撃機はこのような時に使うものではありません。 

    それを百も承知で、オバマだったら無人攻撃機など使ってしまうところを一大政治ショーとしてIS攻撃を開始しました。 

    ちなみに、このカスピ海から発射された巡航ミサイルは、イラン領を通過しています。 

    これは事前にイランの了承なくしてはできないことです。イランは、憎きスンニ派テロリストの根絶を目指しているので、まぁ当然のことだと言えるでしょう。

    また米国にも、大量の戦略爆撃機を動かすことについて、事前通告しています。この辺は国際社会のしきたりを知らない中国と違って、スマートです。 

    さてところが、実はプーチンは内心、ISとこのようなガチンコ勝負をしたくはありませんでした。 

    まず第1に、ロシアにとってISとは、ある意味で大変に都合の良い存在だったからです。 

    ISは、ロシアが目指すアサド政権の安定にとってジャマな反政府ゲリラを叩く絶好の口実を与えてくれていました。 

    ロシアはIS掃討に名を借りて、もっぱら反政府勢力の自由シリア軍や、トルクメンゲリラを集中的に攻撃してきたのです。 

    しかも、その爆撃方法が、西側と違って民間人ごと市街地を吹き飛ばすという粗暴なものでしたから、住民側に強い恨みが生れました。 

    一方、親の心子知らずというか、ISも頭上を飛び交うロシア軍機に恨みを募らせていたらしく、ここで起きたのがロシア旅客機テロ事件でした。

    「ロシア連邦保安局(FSB)のボルトニコフ長官は11月17日、10月31日にエジプト東部のシナイ半島で起きたロシア機の墜落について「間違いなくテロだった」と断定した。残骸の調査の結果、最大でTNT火薬1キロ相当の手製の爆発物が機体に積まれていたことが分かったという」(朝日11月17日)

    ここで注目願いたいのは、ロシア連邦保安局が、テロから17日間もたってから、渋々とテロだと認めていることです。

    プーチンが、「地球のどこにいようと彼らを見つけ、処罰する」と息巻いたのが、事件後17日も後では、224名も自国民を殺された事件にしては、あまりに遅すぎます。

    これは、疾風雷神を好むプーチンらしくありませんね。

    第2の理由として、実はこの同時期に、ロシアは赤恥をかかされていました。例の8月から続いていたロシア陸連ぐるみのドーピング問題が起きていたのです。

    Photo_6(写真 NHKニュースより)

    「11月9日、スイスのジュネーブで行われた記者会見で、第三者委員会の責任者を務めたWADAのリチャード・パウンド元会長は険しい表情で調査を振り返り、ロシアの陸上界での組織的なドーピングを認定しました」(NHKニュース11月11日)※http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2015_1111.html

    日本ではあまり大きく報道されていませんでしたが、このドイツのテレビ局が暴露したロシアのドーピング疑惑の破壊力は、ソ連時代から国際競技大会を国威発揚の場として堅持してきたロシアを直撃しました。

    つまり、ロシアの場合、ひとりの不心得者の仕業ではありえずに、競技者の背後に陸連、すなわち国家そのものが絡んでいたからです。

    この問題で窮地に立たされていたプーチンにとって、旅客機テロはできれば事故であったほうが嬉しかったのです。

    Photo_7(写真 墜落したロシア旅客機の残骸。ハフィントン・ポスト11月4日より)

    そうすれば、この旅客機を作ったフランスのエアバスのせいに出来ますし、変に真相が分かってしまえば、ロシア空港職員が手先だなどとばれて、恥の上塗りになってしまいます。(実際、真相は内部の手引きのようですが)

    ところが、なんとご親切にも、英国が爆弾テロですと明言してしまいます。

    「ハモンド英外相は4日、キャメロン首相が開いた治安対策会合の後、機内の爆発物が墜落の原因になった可能性が「かなり高い」との結論に達したと述べた」(ハフィントンポスト11月4日)
    ※http://www.huffingtonpost.jp/2015/11/04/story_17366_n_8475472.html

    次いで濡れ衣を着せられかかったフランス当局も、同じくテロと断定します。

    まったく余計なお世話を、とプーチンは内心舌打ちしたことでしょうが、ここまで証拠が上がってはもう逃げられません。

    かくして、プーチンは内心は渋々と、しかし見た目には凛々しくISとの「全面戦争」に突入したわけでした。

    そしてその鼻柱を叩き潰すように起きたのが、このトルコ空軍機による撃墜事件だったわけです。

    このようにプーチンの心理を、この間起きた出来事と絡めてみれば、到底彼がトルコと全面戦争などできるわけがないのがわかるでしょう。

    ーチンはつらいよ。

                       ~~~~~~

    ■資料 池内恵フォーサイト 11月22日 

    「ロシアは領空侵犯の期間が9時24分からの17秒であるといった事実について争っていない。
    また、トルコ軍機がシリア領に一瞬たりとも越境せず追尾できたとは信じがたい。
    降下するパラシュートに対してシリアで地上から銃を乱射する様子を撮ったとみられるビデオ映像や、地上でロシアのパイロットらしき遺体を囲む反政府勢力の映像も流通している。シリアのトルクメン人部隊の副司令官とされるアルプアスラン・ジェリク(Alpaslan Celik)という人物がパラシュートの残骸を示し、パイロットは2名とも銃撃で死亡したと言う。
    トルクメン人部隊のジャーヘド・アハマド(Jahed Ahmad)は地上に降りる前にパイロット1人は死亡していたという。しかしトルコ政府からは2名とも生きているという情報が出ており、錯綜している」

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