国有政党になった民主党
民主党は先日の両院議員総会でも、あいからわず選挙しか眼がいかないようで、解党議論にしても、その政策内容を作っていくより、「看板をどう付け替えるか」ていどの低調なレベルなようです。
解党するにしても統一会派をつくるにしても、エイヤっで志位さんの甘いささやきに乗って「民主連合政府」を作るにしても、彼らが懐に抱え込んだ金がかえってジャマしています。
民主党の政治資金の性格が、他党と大きく異なるのは、民主党は過去の大勝した時に得た巨額の政党助成金を、繰り延べして蓄財していることです。
まず例によって、政党交付金について押えておきましょう。
「政党交付金(せいとうこうふきん)とは、政党の活動を助成する目的で国庫から交付される資金。日本においては政党助成法に基づいて一定の要件を満たした政党に交付される。なお、政党が政党要件を満たさなくなっても政治団体として存続する場合には、政党であった期間に応じて特定交付金が交付される。政党助成金とも呼ばれる」Wikipedia
また、算出基準は、所属する議員数と得票数です。
ですから、一回選挙に勝利すると、大きなパイを得ることが可能で、しかも繰り越しが可能です。
たとえば野田政権末期の、2012年を見てみましょう。大勝した民主党が自民を抜いて一位に躍り出しています
では、この内の繰越金をみてみましょう。
●総務省HPによる2012年の各党本部の政治資金収支報告書の概要
・民主党(収入379億円、支出160億円、翌年への繰越 218億円)
・共産党(収入245億円、支出235億円、翌年への繰越10億円)
・公明党(収入191億円、支出136億円、翌年への繰越55億円)
・自民党(収入182億円、支出168億円、翌年への繰越13億円)
上の収支を見ると、自民党に奪還された総選挙があった年にもかかわらず、民主党は収入379億円のうち160億円しか使っておらず、そのまま翌年に218億円も繰り越しています。
他の政党の繰り越しは、比較的多い公明ですら55億円で、あとは10億円台ですから、いかに民主の蓄財体質が際立っているかお分かりになるでしょう。
なお、公明党は共産党に並んで機関紙販売や党員費などの自主財源が強固なところだからこそ、繰り越しできたと推測されます。
その点、自主財源は労組しかない民主党が、これだけ繰り越しているのは不可解です。
(http://asao.dosugoi.net/e707964.html 共産党のちらし。まったく同感だ)
ちなみに、この379億円の内訳も、政党交付金が165億円、前年度からの繰越額が183億円で合わせると、国からの補助だけで実に9割を越えます。
な~んだ、最大野党は「国有政党」なのかぁ(苦笑)。
この巨額の繰越金が発生し始めたのは、政権交替期からです。
では2010年と2011年までの、民主党の政治資金収支も見ておきましょう。
・10年(収入255億円、支出167億円、翌年への繰越87億円)
・11年(収入289億円、支出105億円、翌年への繰越183億円)
2009年9月に、鳩山政権が誕生していますから、10~12年は、民主党政権時代に当たります。
この時期に得た巨富を、繰越金として今も抱え込んでいるわけで、税金による蓄財行為だと批判されてもいたしかたがないことです。
これは、政党助成法の盲点を狙った行為です。
本来の政党交付金は、地方議員の政務活動費と同じような性格を持っています。
政務活動費は、あの号泣議員のように、目的が政務に沿わないものは許されませんし、また年度ごとに余れば返却する性格のものです。
しかし、国政における政党交付金は、なんと使用目的があいまいでも済んでしまうという欠点があります。
また、政務活動費のように、年度ごとに余った額を国庫に返納する必要もないので、蓄財が可能です。
民主党は、「やがて使う時が来る」(民主党経理部)という言い訳で、せっせと溜め込み今や政党収入の5割弱が蓄財した政治資金といういびつな形なっています。
ところで、禍福はあざなえる縄の如しで、この200億円を越える蓄財がジャマして民主党は、簡単に看板をはずすことができなくなってしまいました。
今、民主党両院議員総会で、看板をはずして新党を作るのか、それともしないのかでもめていましたが、その理由は、この政治資金に関わっています。
民主党の看板を外した場合、「解党」か「分党」しか選択肢はありません。
「解党」は、政党助成法に基づき政党を解散すること。解党の翌日から15日以内に総務相に解散届を提出します。
「分党」は、ひとつの政党を解散して分割し、複数の政党に分けることです。
また、分党は元の党名が残りますが、解党は企業倒産みたいなものですから、党名は残りません。
民主党という看板をはずして「解党」した場合、今まで党が受け取った政党交付金のうち、余った分、つまり蓄財分も含めて国庫に返納せねばなりません。
一方、「分党」の場合は既に支払われた分は分割し、未交付分は分党後の各党所属議員数に応じて配分します。
ですから、民主党から一部の議員が出て、維新と合体して新党を作った場合は分派ですから、残りの交付金はすべて元の民主党が押えることが可能です。
民主党の七不思議のひとつに、どう見てもまったく意見の違う議員がいつまでもダラダラと同居し続けるというのは、そのためです。
いずれにしても、今の民主党は、政治活動費の9割が国庫から助成金で支出されており、しかもその半分は税金の蓄財だということです。
まぁ、この政党ほど「国有化」が進んだ党はないことだけは確かです。
「乱暴狼藉を続ける安倍政権を引きずり下ろさねばならない。そのためには野党が一つにならなきゃいけない。来年夏の参議院選挙は野党一丸となって戦わなければならない。 前々回(2012年)、前回(2014年)の総選挙で野党の票をすべて足すと、自公を上回るのだ。野党が一つになっていれば、「特定秘密保護法」も「戦争法案」もなかっただろう」
「野党一丸」になる方法は、ふたつあります。選挙互助会としての日本版オリーブの木を作るか、それとも、文字通りひとつの「新党」をつくるかです。
オリーブの木方式については、こちらの過去記事をお読みください。
※ http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-1e0e.html
しかし、タロー君には残念ですが、新党になることは、今まで見てきたように民主党の財政構造上むりです。
どうみてもシワそうな岡田氏が、そんなことをするはずがありません。
前原氏や篠原氏が要求するような「解党」などしたら、今までシコシコと溜め込んだ約300億円がパーになるじゃないですか。
岡田氏は内心「前原の中2病がまた始まった」と苦々しく思ったことでしょう。
せいぜいが今回の執行部提案の新会派ですが、そんなものは屁の突っ張りにもならないのは素人でも分かります。
岡田氏が考えているのは、既に「負けた後」のこのはずです。
自民党は、来年夏、確率9割で衆参同時選挙をしかけてきます。大義は「増税しない、これにイエスと言ってくれ」です。これほど強力無比なテーマはないでしょう。
今回自民は、軽減税率の公明党案を丸呑みしましたが、前回増税分で5.2兆円税収が増加し、うち1兆円を軽減してどうするのです。
おまけに、増税すれば、再び景気は急降下して、法人税増収はとても期待できません。
軽減税率の議論自体が、増税を前提にしていてナンセンスなのですが、自民としては軽減税率を公約化した公明の顔を立てただけなのです。
この自民党の軽減税率の丸呑みぶりをみていると、ほぼ確実に増税は延期となりそうな気がします。
それはさておき、気の毒なのは民主党です。民主は財政規律派で、おまけにガリガリの緊縮財政主義者ですから、「増税こそ日本を救う」です。
アベノミックスによる格差是正といっても、それも増税頼みです。民主には、その大前提となる経済成長を作る政策自体が欠落しているのです。
これでは衆参同時選挙を戦うこと自体がムリです。
もちろん、民主党と橋下なき維新の党が4月か5月頃に一緒になってもブームなんぞ起きるはずもありません。
共産党の志位さんが提唱する「国民連合政権」は、わずかに勝機がある戦術ですが、共産党が提唱している選挙協力や野党統一候補も、ダブル選挙となれば、選挙区がねじれて調整が困難を極めるでしょう。
となれば、大敗は眼に見えています。その時に、出直すにはなによりカネです。山本氏や志位氏にそそのかされて「一丸となった野党」など作ってしまった場合、最悪、議席なし、カネなしになりかねません。
鉄板の労組議員だけても温存して、蓄財したカネで選挙後につなげて再起を図る、とまぁこんなことろが、岡田氏の本心ではないでしょうか。
それにしても、イタリアもおなじような政党助成金をもっていましたが、10数年前に廃止しています。腐敗の温床になるからです。
日本も、政治家個人がカレンダーやウチワを配ったからどうのというような、どうでもいいような枝葉末節に走らないで、政党助成金制度の廃止を含めた全体の見直しの時期ではないでしょうか。
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民主党でも左派の方々なんか、政権奪取以前は交付金制度をあげつらって自民を批判してた人が沢山いたはずですがねえ…と、言いつつちゃっかり自分達も受け取っていながら。
民主党、溜め込め過ぎ!地方選出議員は金が無くて困ってるとはよく聞きますが、どうなんですかねえ?
共産党はある意味潔いです。最近は赤旗が売れなくて大変だとも報じられていますが、あんなに立派な本部ビル建てちゃうくらいですから大した集金力です。
それにしてもたった3年前の表なのに、野党がグチャグチャに入れ替わったり合体したりしたことが良く分かります。
投稿: 山形 | 2015年12月11日 (金) 06時37分
山本太郎、相変わらずですね。
オール野党と言うけれど、次世代や維新・無所属の保守系まで一緒にするのは無理がありすぎです。
オール~~なんてそんなもんだと皆が気付いてくれれば良いのですが。
うちの院長が彼の受け売りを真顔で演説していたことが一番のショックです。
実は使っちゃってもう無かった、なんてオチでありませんように。
投稿: プー | 2015年12月11日 (金) 07時44分
太郎はただのアホでしょう。
中核(共産)から持ち上げられて出馬当選したはずなのに、小沢一郎に抱き付かれて政党要件の確保に利用されて助成金確保に加担しただけ。
今更グダグダ言うなら何故に共産党から出馬しなかったのやら。
小沢ともども政党助成金制度を最も悪用した張本人なのに、何をカッコ良さそうなポジションを気取っているのやら。
投稿: 山形 | 2015年12月11日 (金) 08時47分
政党助成金の過剰支給です、繰り越し分が無くなるまで支給を止めて福祉に回してもらいたいです。
投稿: 多摩っこ | 2015年12月12日 (土) 23時25分