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2015年12月24日 (木)

「思いやり予算」という不思議

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今年もまた、「思いやり予算」という珍妙な名前の予算の時期になりました。 

ロイター(12月12日)はこう伝えています。
長いので全文はこちらから。
※http://jp.reuters.com/article/us-japan-military-idJPKCN0S60KF20151012

「(略) 在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」の改定をめぐる日米交渉は、前週に開いた3回目の協議でも溝が埋まらなかった。不均衡とされてきた日米同盟間の軍事負担が、安全保障法制の成立で是正されるとの立場を取る日本は減額を求めているが、「リバランス(再均衡)」でアジアへの戦力集中を目指している米国との見解に距離があり、調整は難航している。   
5年に1度見直しが行われる同予算は、根拠となる特別協定が来年3月に改定期限を迎える。日米は今夏から見直し交渉を開始し、10月5日の週までに3回の協議を開いた。日本が来年度予算案を編成する12月末までに合意する必要があるが、日本の政府関係者は「全く折り合っていない」と話す。
日本が減額を求め、米国が反対する構図は5年前と同じだが、今回は今年4月の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定で自衛隊の役割が拡大。9月の安全保障法制成立でその実効性が担保された点が異なる(以下略)」

3回協議しても妥結しなかったそうですが、結局、例によって日本が泣いて終わったようです。

「日米両政府は16日、在日米軍駐留経費(思いやり予算)の今後5年間の水準を現行水準に比べ実質増とすることで合意した。2016~20年度の総額は9465億円。15年度までの5年間を133億円上回る」(朝日12月17日)

先進国一のビンボーで有名な防衛省としては、「新安保法制で自衛隊の役割を強化する努力をしているんだから、ちっとは減額してくれてもいいじゃないの」と言えば、米国から「ホンならお前ら、オレたちにアジアにリバランスしてほしくねぇのかよ」とすごまれるという構図です。 

Photo_6(写真 ロイター)

年間約1900億というところで、馬鹿にならない額です。 

前回の改定では協定内の負担は減額されましたが、その分が協定外で積み増され、全体として現状維持となっているようです。 

米国は日本の防衛官僚の顔を立て、実は取るというわけです。 

では、そもそも「思いやり予算」というのはなんなんでしょうか。考えてみると何かよーわからんが、分かった気になるという意味で、悪い意味で日本的表現です。 

この定義は

「日米共同防衛の責任分野として米軍駐留経費に対する日本側の財政的支援を一般にこう呼ぶ。在日米軍の駐留を円滑にするため日本は 1978年から日本人従業員 (約2万 2000人) の福利厚生費などを負担し始め,90年度予算で初めて日本人従業員の退職・住居手当など8手当を全額負担する施策を講じてきた」(ブリタニカ国際大百科事典)

なお、Wikiはこう注釈しています。 

「ニュースや討論番組等報道関係でしばしば「日本側負担駐留経費=思いやり予算」のように扱われることがあるが、「思いやり予算」とは在日米軍駐留経費の日本側負担のうちの全部ではなく一部を示すものであり用語の意義としては誤用である」(Wikipedia)

つまり、「思いやり予算」以外にも、日本が拠出している在日米軍関連経費は存在しています。

ですから先にあげた、朝日の「在日米軍駐留経費(思いやり予算)」という書き方は正しくありません。防衛省予算以外にもこれだけあります。

平成26年度・在日米軍関連経費の内訳防衛省HP「在日米軍関係経費(平成26年度予算)」による
・基地周辺対策費・施設の借料など       ・・・ 1,808億円
・沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関係費・・・ 120億円
・米軍再編関係費                   ・・・ 890億円
・提供普通財産上試算(土地の賃料)      ・・・ 1,660億円(防衛省の予算外、H25年度予算)
・基地交付金                      ・・・ 384億円(同上)
・計                            ・・・4862億円

したがって、この「思いやり予算」に在日米軍駐留関連経費を加えると、こうなります。

日本の米軍駐留軍関連予算の総枠
・思いやり予算                       ・・・1848億円(H25年度)
・在日米軍関連経費                    ・・・4862億円(同上)
・計                               ・・・6710億円

日本の防衛費は約5兆円規模ですから、米軍駐留費としてその7分の1程度の規模を日本が負担しているわけです。

ただし、基地交付金や軍用地代は、防衛予算とは別枠ですので、念のため。

それにしても「思いやり予算」とは、なんともかともケッタイな名前をつけたものです。

防衛関係には、9条がらみでこんなあいまい語の宝庫です。そもそも「自衛隊」という名称や「三等陸佐」や「普通科」のような呼称まで、神秘の国ニッポンです。

このような日米地位協定の枠を越える法的根拠がなかった「思いやり」を始めたのは、小沢一郎氏の親分だった金丸信(当時防衛大臣)です。

ちなみにどうでもいいですが、英語表記でも「Omoiyari yosan」でしたが、あまりにみっともないので、公式表記には「Host Nation Support」(駐留国受け入れ支援、接受国支援、HNS)です。

民主党政権時の外相だった前原氏は、「ホストネーション・サポート」一本でいこうと言っていましたが、気持ちは分かります。

というのは、こんなものは同じ米軍の駐留を受けている「ホストネーション」であるドイツ、イタリア、韓国にはないか、あったとしても日本の半分ていどだからです。

Photo_7
2002年の米国の資料による各国米軍駐留経費負担率比較
・日本  ・・・75%
・ドイツ ・・・33%
・韓国 ・・・40%
・イタリア・・・41%

では次に、何に支出されているかを見てみましょう。

「現在は特別協定に基づく従業員の基本給、米軍の訓練移転費、光熱費に加え、協定外の従業員の福利費、施設整備費も日本が払っている」。(ロイター前出)

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上の写真は横須賀軍港の未婚者用unaccompanted住宅地域の看板ですが、詳細は分かりませんが、これも日本側の「思いやり」で作ったようです。

この他に、 日本はレストランやバーなど基地内の娯楽施設で働く従業員約5000人の給与や建設費なども気前よく負担しています。

ゴルフ場や教会まで作っていると騒がれたこともあります。

Photo_4写真 http://blogs.yahoo.co.jp/biwalakesix/26175324.html 共産党系の反安保資料の宝庫です。いつもながら民主と違って、共産党はよく調べていて感心します。ただし結論がいきなりトンデモになるのが惜しい) 

この巨額な負担は得か、損かで意見は分かれますが、日本のみならず、米国でも下の写真のような御仁もいます。

Photo
米国でも無知・野蛮・レイシズムの三冠王に輝く、「歩くヘイトスピーチ男」トランプ大統領候補などは、堂々とこう述べています。

いや述べているなんて、お上品なもんじゃなくて、喚いています。

「トランプ氏は同じ演説で同盟国の日本が自国防衛をアメリカに頼る一方、経済面でアメリカに挑み、勝ちを制しているのは不公正だと強調した。1980年代の日本に対する「防衛ただ乗り」批判に似た粗雑な糾弾のようでもあった」(週刊文春2015年9月3日)
※http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5396

「日本は米国が守ってやってんじゃねぇか。それで浮いた金で米国を輸出で攻めていやがる。ファックだぜぇ!」というわけで、こういう論法を「片務論」と呼びます。

きっとさらにカッカっしてくると、これに韓国に対して向けているような「ただ乗り論」まで加わってくるでしょう。

まぁ、トランプの認識はある意味で米国人の平均値で、だから受けるのだという話もありますので、実際こんなものかもしれません。

では、実際にどうなのでしょうか。もう少し考えてみましょう。

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