• 20250123-031626
  • 20250123-033832
  • 20250123-045507
  • 20250122-034332
  • 20250122-034624
  • 20250121-022941
  • 20250121-025750
  • 20250119-145554
  • 20250119-142345
  • 20250119-142345_20250119150101

« 「思いやり予算」という不思議 | トップページ | 「思いやり予算」という不思議その3 「逆さ地図」でみる東アジア »

2015年12月25日 (金)

「おもいやり予算」という不思議その2 日本の「トランプ」な人たち

089
まずは、翁長氏の申し立てに対して、総務省の第三者委員会が門前払いにしてしまったようです。

「総務省所管の第三者機関・国地方係争処理委員会(委員長・小早川光郎成蹊大法科大学院客員教授)は24日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に関する政府の対応を是正させるよう求めた同県の翁長雄志知事の申し出を却下することを多数決で決めた。『(政府側の対応は)一見、明白に不合理だとはいえない』と結論づけた。(略)
同委員会は24日の3回目の会合を約7時間にわたって開催。政府の対応が合法か違法かの審査は行わずに、翁長氏の申し出を退けることとした。
 同委員会が地方自治体の申し出を処理したのは3例目。審査要件を満たさないとして却下したのは、新幹線建設工事を巡る新潟県知事の申し出に続き2例目となる」(毎日 12月25日)

県はこう述べています。

「こうした争いを審査しないならば、係争処理委は何のために存在しているのか。まさに結論ありきだ」と語気を強めた。県は同委員会の判断を不服として高裁に提訴することを検討している」(同上)

まぁ、なんていうかなぁ、あんまり好きな言葉じゃないがこういうのを「想定内」とでも呼ぶのでしょうか。

代執行訴訟にもほとんど影響が出ないでしょう。双方、折り込み済みなはずです。 

翁長氏陣営は、ここで大見得を切って、「怒り」を表明しないと「民意」の手前、サマになりません。 

こういうあらかじめ決まった所作で、決まったとおりに「怒って」見せるというのを、俗に「歌舞伎」と呼びます。 

イヨッ、オナガ屋!ってなもんです。 

Photo_2
地方行政法の枠内で争えば、代行訴訟もまったく同じ結果が出ることはわかりきっています。

そうなれば、翁長氏の勝ち目はゼロなのですから、法律の枠組みの「外」に出て争うわねば勝機はありません。 

要するに、場外乱闘です。

たぶん、さらに現地でハネ上がった行動をとらせて、老人か女性に流血の「悲劇」を招くことを戦術化していくと思われます。

しかし、このような手段は一時的には反対派に有利に働いても、後に大きな禍根を残します。

                 ~~~~~~~~~

さて、本題に入ります。「Omoiyari yosan」について考えています。 

面白いことには、保守の自主防衛派と、左翼陣営がほぼ同一の調子で批判しています。 

ある保守論客は、こう「おもいやり予算」について書いています。 

「日本はおもいやり予算の大盤振る舞いだ。かつてカーター政権時の大統領補佐官を務めた米政治学者のブレジンスキーが日本を「protectorate(保護領)」と呼んだ根拠の1つとされる。
要するに、属国なのである。日本は幕末に列強から治外法権、不平等条約を呑まされたが、現在もそれと同等、あるいはそれ以下の扱いを米国から受けていると考えていいだろう。
この30年間に日本政府が在日アメリカ軍にかけた「思いやり」は総額5兆1000億円にも達しているのである。この金は事実上日本の軍事的支配者である在日アメリカ軍に対する上納金なのである。なぜ上納金なのかと言うと、この金は米軍地位協定にも支払い義務のない、属国ゆえの売国的予算支出であるからだ」

※全文はこちらからhttp://plaza.rakuten.co.jp/kmrkan55/diary/201512170000/

 日本は「属国」なのだ、だからこの人はそう言っていませんが、軍事的に自立して空母のひとつも持てということのようです。 

一方、正反対の立場の共産党系の運動家はこう叫びます。 

「在日アメリカ軍は、日本を出撃基地としており、日本の防衛のために駐留しているのではない。
 アメリカという国は産軍複合体の国家であり、常に侵略戦争を続けなければ経済が機能しない国家ゆえに、日本が米軍を支えることは、やがては海外派兵の「恒久法」を制定して、アメリカと共に侵略戦争を闘う道なのである。
 こうした侵略への道を正すためにも、この際思い切って「思いやり予算」を全額カットすべき事を提起したい。日本政府がたとえ米軍の駐留費用を全額支出したとしても、在日アメリカ軍を傭兵化することはできない事を知るべきである」

※全文はこちらからhttp://www.21c-journal.net/news/842omoi.html#top

 とまぁ、ほぼ同じ口調で、ほぼ同じ内容を左右が言うというのも面白い現象ではあります。

ただ、立場が違う連中が同じことを言い出したら、眉に唾をつけて下さいね。だいたい間違っていますから(笑)。

Photo_8(写真 在日米軍横須賀基地の米空母)

彼らの共通点はふたつです。

まず第1に、こんなに駐留米軍に金を出すことは、日本は米国の属国の現れである。他国はしていないぞ。

第2に、こんなに健気に日本が貢いだところで、米軍は日本を守るためにいるわけじゃないんだぞ、ということのようです。

ここまでは左右の認識は気味が悪いほど一緒ですが、そこから先は自説に引きつけます。

右派は、だから従属国を返上して「独立国たれ」となり、日米安保の片務性を脱しろとつながり、そして自主防衛を強化しろ、となっていきます。

これが、田母神さんたちが好きな自主防衛論です。

逆に、左派は、「従属国を返上しろ」までは一緒ですが、米軍は世界侵略のための悪辣な奴らなのですから、おもいやり予算ゼロは当然、日米安保も廃棄しろ、となっていきます。

これが日本リベラル陣営伝統の丸腰非武装中立論です。

う~ん、どうしてこう「従属」にこだわるんでしょうかね。

Photo_3http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2012/2012/html/n3213000.html

なるほど、日本列島は米国の国際戦略の重要な、おそらく世界最大の拠点です。

また、安全保障に感心ある人なら誰でも知っているように、日本に展開する米空軍、海軍、海兵隊の航空機は、別に日本防空のために存在しているわけではありません。

三沢の米空軍はアジア地域で紛争が起きた場合に、真っ先に乗り込んでレーダーやミサイル施設を破壊するためにいます。

横田の輸送機部隊もまた同様に、アジア地域の戦術輸送を担っています。

厚木は横須賀軍港の航空機のための基地で、米空母の運用のために作られています。

そして、横須賀軍港こそが、日米安保の心臓部です。ここにいる空母打撃群は、アジア地域のみならずアフリカ東海岸までエリアにした「動く航空基地」です。

沖縄はこれらの出先であって、いわば出張所としての役割を果たしています。

では、日本の空や海は誰が守っているのでしょうか?

はい、そのとおり。自衛隊です。

今述べたように米空軍、海軍、海兵隊の航空機のうち日本の防空任務についているものは1機もありませんし、艦艇で日本の領海を守っている船は一隻もありません。

逆に、在日米軍基地の防空をしているのは空自ですし、陸からの破壊活動に備えているのは陸自や警察です。

また、米海軍の空母打撃群を広い意味で守っているのも、海自の護衛艦隊です。

「なんだ日本は金だけじゃなくて、自衛隊で米国を守ってやっている」のか、と言われれば、ある意味そうだとも言えます。

ここが、たぶんトランプなどに分かっていない部分です。トランプなどは、米国が直接、日本を「守る」ために駐留していると考えています。

Photo_6(写真 日米共同訓練)

しかしそれは、事実ではありません。正確に言えば、「日本を守るためにもいる」ていどです。

あるいは、米軍がいてくれる存在感(プレゼンス)が、日本防衛のために実に効いているのです。

「存在感」とは、微妙な言い回しですが、一般の語義どおり、「その独特の持ち味によって、その人が紛れもなくそこにいると思わせる感じ」のことです。

米軍は別に日本防衛のためにいるわけではないが、「いる」だけで、他国は世界最強の米軍が敵になるかもしれないとビビるわけです。

沖縄に米軍が「いる」というのも、このプレゼンスを日本が認識しているからです。

仮に米軍が、沖縄防衛のためにいるわけでなくても、沖縄に軍事攻撃を仕掛ければ、米軍を相手にせねばならないというのは、大変にイヤなことのはずです。

しかも、実際やってくれるかどうかはやってみないと分かりませんが、日米安保条約5条によって、米軍は建前上日本に対する防衛義務を負っているのですから、尚更です。

このように考えてくると、「米軍は日本を守るためにいない」という日本の左右の主張は、その意味で半分はあたっているのです。

Photo_4
しかし、半分は間違いです。

なぜなら、日本は一国で存在しているわけではないからです。

安定した国際秩序の下で貿易を行い、シーレーン(海上交通路)でエネルギーや鉱物資源を輸入し、あるいは作った製品を外国に運んでいます。

日本が自給自足している江戸時代なら、在日米軍はいりませんでした。

大戦末期を思い出して下さい。日本はどうして降伏したのでしょうか。原因は多々ありますが、最大の理由はシーレーンを破壊されて干上がったからです。

米海軍による無制限潜水艦作戦によって、日本の商船隊は壊滅し、軍のみならず国民すべてがたちまち干上がりました。

軍は松から松根油を取って戦闘機を飛ばし、国民は芋がご馳走になりました。日本が自給自足で養える人口はわずか3千万人なのです。

ですから、このシーレーン海域の公海の安全と自由を確保することは、日本にとっての最大の国益だと断言してもよいのです。

Photo_7(写真 グアムにおける日米共同訓練)

では、このシーレーンの航海の自由を守っているのは、自衛隊でしょうか。

違います。我が国の自衛隊は、憲法上の制約のために、シーレーン防衛を直接の任務とすることはできませんでした。

これを防衛してきたのは、その広い海域に展開可能な能力を持ち、日本と友好関係にある米海軍と空軍、海兵隊しかいませんでした。

今後も、彼らが主力になることは変わりありません。

だから、日本はその出撃拠点を提供しているのです。

え、米国だけに頼まなくっていいだろう、ですって。

残念ですが、日本が信頼できる国際秩序の守り手は、米国以外存在しません。他にいますか?いたら教えて下さい。

ロシアですか?まさか中国だなんて言いませんよね(オナガさんなら言いそう)。

みんなで話合いで決めるって?ご冗談を。どこで?よもや国連だなんて夢見ているんじゃありませんよね。

今の国連は、事務総長閣下の史上空前の無能ぶりも手伝って、無力をとおり越して学級委員会ていどの軽い集まりにすぎなくなりました。

そしてオバマの定まらない腰つきと、あまりにも遅く鈍い対応が、ウクライナ紛争を引き起し、シリア内戦を発生させ、その中からISを生み出してしまいました。

アジアでは、中国に軍事膨張を許し、南シナ海を要塞化されてしまったのです。その原因は米国のパワーの凋落にあります。

このように、好むと好まざるとに関わらず、米国が、国際秩序の担い手から降りようとすると、世界はテンデンバラバラに自らの利害のままに分解し、争うようになっていくのです。

日本は米国の戦略インフラの一部に自らを組み込むことで、米国とギブ&テイクの相互補完関係にあります。

Photo_10


(図 米軍の駐留国。青色1000名以上。薄い青100名。オレンジ゙色施設使用 日本が米軍の世界最大の基地群を擁しているのがわかる。ウィキより)

それはNATOのヨーロッパ諸国も一緒で、本来「同盟」とは従属関係ではなく、相互の利害によって結ばれる関係のことにすぎません。

ただ機軸同盟国として米国があるというだけです。

国と国の同盟関係に、まるで人間関係のような過剰な思い入れをして、「従属」だとか「属国」だとか言い出すほうがおかしいのです。

もし、日本を「属国」と呼ぶなら、ドイツも英国も、すべてのNATO諸国は皆揃って「属国」になってしまいます。

日本が「思いやり予算」(接受国支援費用)がヨーロッパ諸国より多いのが「属国」の証拠だとこの人たちは言います。はて、そうですかね。

これも日本が置かれている立場を、安直にヨーロッパと比較するからおかしくなるのです。

ヨーロッパは既にNATOという地域集団安保体制を作って、沢山の国々で共同防衛体制を作っています。

それに対して、アジアは発展途上国が大部分で集団安全保障体制を持ちません。

また、米国にインフラを提供できるだけの技術的、財政的能力も持ちませんでした。

だから、日本のみが突出して、米軍を引き受ざるを得なかったのです。

Photo_9

つまり、この「思いやり予算」を含む同盟関係予算全体の6700億円は、日米安保体制を維持するインフラコストなのです。

トランプは無知丸出しで、「日本を米国が守ってやっているのにけしからん」と言いますが、太平洋のこちら側の人たちも負けずに日米同盟の本質をまったく理解していないようです。

その意味で左右の「属国」派は、日本のトランプのようなものです。

私たち日本人は「思いやり予算」というあいまいな言葉でごまかすのではなく、しっかりと安全保障の対価として認識すべきではないでしょうか。

そのへんの損得勘定については次回に。

※お断り 改題して、おかしな文章を修正しました。いつもごめんね。(午後4時)

« 「思いやり予算」という不思議 | トップページ | 「思いやり予算」という不思議その3 「逆さ地図」でみる東アジア »

コメント

相変わらずの適格な解説有難うございます。この微妙なネーミングのせいで、米軍基地負担の代償として沖縄に落とされているのが「思いやり予算」と勘違いしてる人がいる有様です。

HNクラッシャーさんが言われるとおり、「沖縄振興予算=思いやり予算」と思っている人が結構います。
県内経済に少なからず貢献していますが、それはあまりにも無知です。

ちょっと話がそれるかもしれませんが・・・・管理人さんもたまに「3000億円」というのを書かれていますが沖縄への配慮(優遇)を説明するのには、この数字は邪魔になるのです。

実際、新聞で「優遇されていない」を言うときにこれが利用されています。

実際に行った県内の事業を一つ一つ検証して、合計してみる。「他の都道府県で行ったなら、総事業費に対する県(市町村)の負担はどのくらいになるのか」

他の都道府県では最初から諦めるような事業が沖縄ではできるのです。(事業費1000億円で95%補助なら50億負担ですが7割負担なら300億負担です)

新聞には、あっさり書いてある「高率補助」と書かれない直轄事業。(特措法105条~)

実際行われた事業を全部対比検証して優遇されていないと言えればたいしたものです。

ガソリン税(揮発油税)は7円優遇されていますが、国内唯一、地方税として沖縄県が2円の税を課しているので、県民個人としては5円の優遇にとどまっています。

言い方をかえれば、リッター2円分国税を県が「かすめとっている」のです。

嘉手納ロータリー(市街地)の再整備事業の費用がどこから(何から)出されているのか、沖縄防衛局がなぜ那覇から嘉手納に移ったのか、そしてその建物のからくりは・・

3000億円が・・・ではなく、一つ一つの事業や他の都道府県にない特別な制度やその制度の使われ方、税等の軽減措置を全部検証しましょう。その上で「優遇されていない」という方がいれば、かかってきなさい!

※ただし、私は優遇されて当然と思っていますけどね。

すいません。直前のコメント中に誤記が。。
誤)7割負担なら
正)7割補助なら
・・・さんみんできないわけではありません。

ファンの一人としてw 擁護すると、トランプさんはかなり
頭の良い人ですので、もちろん彼も歌舞伎の二枚目を演
じているのだと思われます。見得の切り方は歌舞伎役者
そのもののプロです。まあ、三枚目に見えるのはご愛嬌
ですわ。

本題の「思いやり」については、霞が関の低能児の外務
省官僚のモンダイだと思います。政治家の先生方は選挙
区への日頃の奉仕が忙しいので、立法や外交の実務など
は、役人に丸投げするのが日本の慣習のようです。

大使と言えど、実際にはコームインです。事なかれで楽
な仕事をしていても、収入はたいして変わらないのです
から、コレが彼等のインセンティブになります。ハード
でタフなネゴシエイターである理由などありません。

諸外国とガチンコの折衝など出来る訳ありません。先生
は地元の雑務で忙しくて外交どころじゃない、大使など
はハードネゴをするヤル気も胆力もないのですから・・

国内なら霞が関は、行政立法や行政指導とか縮れ麺状の
法と膨大な先例を持ちだして、逆らう民間業者をギャフン
と言わせるのは簡単ですが、独立した国家が相手では、
その手は全然役に立たず、右往左往するだけです。で、
ヘタな妥協を許して譲歩してしまうのです。国内向けに
はテキトーに、「思いやり」だ!日本が世話をしてやっ
てるんだぞー、と誤魔化す。

そらバレると、「まるで属国」になるし「完全独立せよ」
になりますわ。私達が選んだ先生方は悪くありません。
彼等が悪いと言うと、じゃ選んだのは誰?とブーメラン
になる。そう、内弁慶の霞が関が悪いのです、特に外務
省。外務省のヤクニンは大勢首切って、民間人を大量に
(少ないとイビられる)入れたらいい、管理人さんとか。

年末の韓国とのカケヒキも大丈夫なんでしょうか?
「我々の主張を受け入れれば、日本側にコレ以後はもう
解決済みとして、一切の要求をしないよ」とか言われて
ホイホイ調印しそうでコワイです。


コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 「思いやり予算」という不思議 | トップページ | 「思いやり予算」という不思議その3 「逆さ地図」でみる東アジア »