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2015年12月 4日 (金)

ロシア国防相のエルドアンIS疑惑は眉唾だ

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プーチンのいわゆる「エルドアンIS疑惑」について、ロシアサイト「スプートニク」(12月2日)はこう伝えています。
※http://jp.sputniknews.com/russia/20151202/1263601.html

「ブリーフィングでは露国防省の証拠資料として衛星写真が公開された。写真にはISの掌握地域からトルコへと向かう石油タンクローリーの車列が映し出されている。
『11月16日に撮られた写真には、最高で360台の石油輸送車と大型トラックがシリアの国境のすぐ近くを移動する様子が分かる。B地区には最多で160台の石油輸送車があるが、これはたった今国境を通過したばかりのものだ。A地区の通過チェックポイントではシリアの国境に接近する100台からなる車列が認められる。』
ルツコイ中将は、『宇宙諜報手段で、国境を越えた後、石油を積んだタンクローリー、大型トラックがタンカー用の特殊港に向かって進んでいる信憑性のある証拠が示された。」と指摘し、「石油の一部は船に積み替えられ、加工のためにトルコの外へ運びされている』と補足している」

これは1週間前のエルドアンの対応に対する、答えです。

「一方、エルドアン大統領は大統領公邸で演説し、過激派組織『イスラム国』からトルコが石油を密輸しているとのプーチン大統領の発言を念頭に、『恥を知れ。その事実を証明しろ』と憤慨。シリアのアサド政権およびロシアなどの支援国こそが『イスラム国』に資金と武器を供給していると反論した。」(時事11月26日)

まぁ、要するに、怒ったプーチンが「エルドアン、お前はISから石油を買ってワイロをもらったろう」と叫び、エルドアンも負けずにどなり返して「ふざけるな!タコ!証拠持って来い!」と言い返したわけです。 

Photo_5(写真 トルコのIS石油密輸疑惑を発表するルツコイ国防相ロイター12月3日) 

失礼ながら、まるで子供のケンカのようですが、場所が場所だけに佐藤優さんなど、早くも「ドミノゲームのように大規模な戦争に発展する可能性が出た」などと仰せです。 

私はありえないと思います。 ときどき佐藤さんは、これでも外務省主任分析官だったのか、ということを平気で言うから困ります。

佐藤氏は、このロシアの「新証拠」なるものを発表したのが、ロシア国防相でしたので、情報ソースがあの悪名高きGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)からの情報だから、確度が高いというわけです。 

では、その新証拠なるものを見てみましょう。 

Photo
ロシアはISが3ルートで盗んだ石油を密輸している、と言っています。

下のCNN(12月3日)が出したロシア発表の地図には、確かにそのルートが、トルコに越境しています。 

地図左上の端部分が、トルコ-シリア国境です。ここに360台のタンクローリーがいたということのようです。

Photo_4

次にロシアがISの原油密輸コンボイ(トラックの車列)だと言っているものです。「宇宙的諜報手段」という味わい深い訳がついていますが、要するに軍事偵察衛星写真のことです。

Photo_10
これについて池内恵氏はいたって冷静にこう述べています。(フォーサイトフェースブック12月3日)
※https://www.facebook.com/

「シリアの石油なんてたいした量ではない。『イスラーム国』が直接トルコまで売りに来るはずがない。シリアの社会がちびちびとこれまでどおりに密輸して、これまでどおり使っているだけです。末端でトルコに売りに行くのも通常営業」

ところがこれらが、ロシアの主張にかかるとこのように加工されてしまいます。 

<ISのタンクローリーの車列⇒トルコ領に越境⇒トルコ政府が関与⇒エルドアンがワイロをもらっている> 

おいおい、前2ツまではともかく、いきなり後2ツのトルコ政府関与とか、ましてやエルドアン一族がISの賄賂漬けというのは、短絡と飛躍です。

まりは、俗に言うヤクザのいいがかりのようなものです。 

ロシア国防相が提出したものは、ただの衛星写真にすぎません。確かに、ロシアは軍事衛星を使ってISを監視していますから、こんな映像は、それこそ山のようにあるでしょう。 

ロシアのGRU情報だとゲッとなりますが、落ち着いて眺めてみれば、どうということのないトラックコンボイを写した衛星写真にすぎません。 

このISの密輸ルートについても、特に新しい情報ではなく、既に国際社会では知られていたことばかりです。 

中東には、ノーマルな原油輸送ルート以外に、多くの密輸ルートが存在します。いわゆるグレイゾーン販売です。 

その大手はイラク・クルド自治政府のキルクーク油田からのものです。このキルクークはクルド自治政府の最大の経済基盤ですが、ISはこれに対して今年1月に猛烈な攻撃をしかけて激戦になっています。
※http://jp.wsj.com/articles/SB12431244049710433766304580432403340442066 

このキルクーク原油も、トルコを通じて運ばれています。この密輸を行っているのは、アラブ系イスラエル人だと言われています。 

このようなグレイゾーン原油は、いくつもルートを辿ってロンダリングされていきます。 

その間に多くの密輸業者がからんでいて、それを一括りにして「トルコ政府が関与している」などと決めつけるのは粗雑です。

下の写真はロシア国防相が発表したタンクローリーの車列ですが、これがトルコ領に越境したからといって、それがトルコ政府の黙認や、ましてや賄賂の証拠になるはずがありません。 

もちろん、密輸業者はIS原油を買っているだけで、ISそのものではありません。ただの仲介業者にすぎません。

また彼らは国境のイミグレに袖の下を渡したりはしているでしょうが、そんなことは中東では日常茶飯事です。 

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ロシアは、現在、ISのタンクローリーや、原油精製施設を執拗に爆撃しています。 

これは、ISが不法占拠している油井や精製施設が、西側石油会社の所有だからです。もしこれがロシアのガスプロムあたりの所有ならば、絶対手を出しません。 

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ロシアのシリア政策はブレがありません。見事なくらいアサド様命です。

プーチンの認識によれば、アサド以外に統治能力を持つ政権はない。アサド政権が揺らいだからISが生れたのだ。だからアサドを国際社会が認知しないほうがおかしいというものです。 

まことに片手落ちな言い分で、シリア難民は、ISの迫害から逃れてきただけではなく、自らの国民の頭上にナパーム弾を落したり、平気で毒ガス攻撃を仕掛けるような非道なアサド政権から逃れてきたのです。

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プーチンは、民族絶滅政策まがいだとまで非難されたチェチェン侵攻を指揮した人物ですから、アサドていどの非道にはなんにも感じないのでしょうね。 

ロシアは、このアサド政権支援に立って、ISを掃討するという大義名分で、実際やってきたことは、反アサド政権の自由シリア軍とトルクメンゲリラを爆撃することでした。 

ロシア航空機テロで、遅まきながら本格的なIS攻撃を開始したのですが、それにしても西側石油会社の原油施設を爆撃して成果を誇ってみたりするというところに、プーチンらしいエグサが滲んでいます。 

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今回のロシア機撃墜事件も、当然トルコ空軍パイロットの一存による偶発的なものではなく、おそらくはトルコ軍中枢、さらにはエルドアン自身の承認なくして起き得ないものだと思われます。

トルコはシリアの隣国として、多くのシリア難民の引き受けてきましたし、彼らから、シリア領内で起きている事態を熟知していたはずです。

そして、ロシアが介入することによっていっそうシリア国内が悲惨な状況に陥り、やがては無人の国になることすらありえると見ていました。

また隣国としても、旧宗主国(※)としても、陰ひなたに介入してきたと思われます。※シリアは19世紀まではオスマントルコ領土。だからトルコ系トルクメン人が多数居住している。

したがって、この撃墜事件は偶発的なものではなく、エルドアンのプーチンに対する警告ともいえます。

また、トルコがNATOの加盟国である以上、今回の撃墜指令についてもNATOは何らかの了解を与えていたとみるほうが素直でしょう。

トルコ空軍は上層部からの指令で、この地域を厳重に警戒していたはずで、ロシア軍機はその警戒網を知らずに、いつもどおりにトルクメンゲリラ攻撃に向っていて、この警戒網に引っかかったのです。

逆のロシア側からすれば、「おのれ、待ち伏せていたな」ということになります。

どうロシアが思おうと自由ですが、領空侵犯は事実ですが(わずか17秒ですが)、したのは確かなので、この部分でロシアは争う余地がないはずです。

むしろロシア人が激怒しているのは、脱出したパイロットの運命です。

トルコの誤算は、脱出したロシア空軍パイロットが、地元のトルクメンゲリラによって惨殺されてしまったことです。

パイロットがトルコ領土に落下して、トルコ軍によって保護されていたのなら、この事態は起きなかったでしょう。

しかし、彼らのパラシュートは流されて、シリア領内トルクメン人居住区へと落ちていったのでした。

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コメント

BBCのウェブサイトにプーチン大統領の人物像、経歴について解説した記事がありました。
(私のpoorな日本語訳なので間違っていたらごめんなさい。)

・「50年前にレニングラードのストリートが私にルールを教えてくれた。すなわち闘いが避けられないなら先制パンチをしかけろ、と」

・彼は、チェチェンの分離独立主義者に対する自身の激しい軍事攻撃を弁護する際に、しばしばストリートファイターの粗野な言葉を用いる。奴らを一掃してトイレにでも流してしまえと。

国際社会は平和ボケした我々日本人の想像を超えて遥かにダークですね。

ロシア側はトルコの覇権願望への疑りまで持ち出してますね。
首都のトルコ人が前に「昔は東も南ももっと広くトルコ、オスマントルコでしたがとられちゃって今はこんな国境線です。だから中東アジアのあちこちに今でもトルコ人と同じ民族がくらしています」と自国の地図を差して説明してくれました。
でも彼らにもう一度広いオスマン帝国領土を展開する野望は、政府にも一般国民にもないです。ロシアはうだうだ言っていますが欧州で真に受けて聞く者はいないでしょう。
パイロットがトルコ側に着地して捕獲されていれば、ほんと全然展開がちがったでしょうね。

HN山口さん。チェチェン・テロの時なんか、「便所に隠れていても探し出して殺してやる」なんて言っていましたね。
これはマフィアの常套句なんで、いくらなんでも国家首脳が口にする言葉じゃないとは言われましたが、これがロシアでは異常に受けるんですな。

私は個人的にはプーチンというキャラは、マンガみたいでキライではないのですが(陰気臭いオバマよりはるかに「好き」です)、こういうストリートファイトみたいな言い方は、国内ならまだしも、他国に対して用いるというのは、なんともかとも、ですね。

別にそう感じるのは「平和ボケ」した私たちだけじゃなくて、国際社会もそうみたいですよ。
きょうも「トマトだけで終わると思うなよ」と、さらなるエスカレーションを予言していました。

こちらがビビるから、受けていると錯覚してつけあがるので、6掛で聞いて、「ほー、今日の罵倒のネタはなんだい」くらいに構えていたほうがいいような気がします。

ごめんなさい、誤訳でした!
トイレに向けてwipe them outするんじゃなくて、トイレの中まで追いつめてでもwipe outしてやるぞ、ということですね。
失礼しました。

いずれにしても恐ろしいですね。
国家元首がこんなセリフを吐いて、支持率80%の国って一体どうなってんのと思いますね。

まあ、今後は6掛けで聞くことにします。

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