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2016年2月22日 (月)

1ミリシーベルトに根拠があるのか? その4 パニックは原発事故直後の情報発信の失敗により起きる

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「1ミリシーベルト」問題を進めます。 

当時政権にいた民主党は、あらゆる局面で失敗を繰り返していました。 

ズブの素人である菅氏が、原子力事故の現場指揮に介入し、海水の注入を止めるように「命じた」たかと思えば、避難指示は猫の目のように変わり、逃げた先のほうがより線量が高かったりする悲劇が頻発しました。

一方、女房役の枝野官房長官は、伝えるべきSPEEDIによる放射性物質拡散情報を隠蔽したうえに、「直ちに健康被害を及ぼすものではない」という言い方を再三にわたってテレビで繰り返しました。 

「直ちに健康被害を及ぼすものではない」・・・。絶句する表現です。 

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このように政府から言われれば、国民は「そうか、時間が立つと放射能の毒が拡がって、病気になるのだな」と、晩発性障害の可能性があると政府が言ったと受け取ります。 

実際に、多くの国民がそう理解して、ミネラルウォーターや西日本の農産品に走りました。 

そして、終わることのない数年間に及ぶ当時「風評被害」と名付けられた、「被曝」地差別が引き起こされることになります。

もっとも重度の放射能恐怖症に罹った人たちの中からは、自主避難者がでます。

・県外自主避難者数・・・23,000名(約半数)
・県内自主避難者数・・・18,000名(避難区域でない市町村からの避難者数)
・計          ・・・約41,000名

ちなみにわが農場も潰れかかり、以後3年間もの間、無明地獄をさまよい続けるはめになります。 

それはさておき、これは放射能の規制値だけの問題ではなく、事故後のリスクコミュニケーションの問題としてとらえ返されるべきです。 

1ミリシーベルト問題もその文脈で考えてみましょう。

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ここにひとつの原発事故を総括した、優れた報告書があります。 

スウェーデン政府はチェルノブイリ事故発生直後の1年間の社会的混乱を総括して、一冊の報告書にまとめました。  

これは、スウエーデンの防衛研究所、農業庁、スウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁が1997年から2000年までに行った合同プロジェクトで、「どのように放射能汚染から食料を守るか」という報告書にまとめ上げられています。  

『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』(合同出版)という邦訳もあります。  

この報告書の完成は、事故後10年まで待たねばなりませんでしたが、その報告の範囲は食料だけにとどまらず実に広範で、事故対応、放射能規制、広報のあり方、食品規制、農業対応、そして防衛研究にまで及ぶものです。 

わが国の事故調が技術的解明に終始し、一部においては「だから日本人は」というような安直な文明批評に陥ったことと較べると、その徹底した態度に感銘すら覚えます。 

これを手にしてみると、スウェーデンでも事故直後、多くの問題が発生していたことがわかります。

チェルノブイリ事故以後、北欧は深刻な放射能汚染にさらされました。  

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 チェルノブイリ事故だのヨーロッパのセシウム137分布図
(ネーチャー誌2011)
 

スウェーデンは、事故後の風向きの下流に位置したために、スウェーデンの一部は、福島における40㎞地帯に相当する被曝を受けました。  

また、放射性物質を吸着しやすいキノコ類や、またトナカイやヘラジカを好んで食べる食習慣があったことも、より問題を複雑にしました。 

スウェーデン政府は率直に、この社会的混乱の原因を分析しようと試みています。 

スウェーデンの原発事故処理の教訓 
バニックは事故直後の情報発信の失敗により起きる
 

報告書冒頭でスウェーデン当局は、このようにみずからを省みています。

「チェルノブイリ原発事故によって被災した直後のスウェーデンにおける行政当局の対応は、『情報をめぐる大混乱』として後々まで揶揄されるものでした。」
「行政当局は、ときに、国民に不安をあたえることを危惧して、情報発信を躊躇する場合があります。
しかし、各種の研究報告によれば、通常、情報発信によってパニックの発生を恐れる根拠は無く、むしろ、多くの場合、十分に情報が得られないことが大きな不安を呼び起こすのです。とりわけ、情報の意図的な隠蔽は、行政当局に対する信頼を致命的に低下させかねません。」
「行政当局が十分な理由を説明することなく新しい通達を出したり、基準値を変更したりすれば、人々は混乱してしまいます」

このようにスウェーデン政府は、情報の隠蔽と二転三転する説明こそが、国民に混乱を与える最大の原因だとしています。  

これがリスク・コミュニケーションの失敗です。 

スウエーデン政府が自戒を込めてここで「行政当局は、ときに、国民に不安を与えることを危惧して、情報発信を躊躇する場合がある」と述べていることに注目してください。 

このような大事故の場合、政府の危機管理能力を簡単に超えてしまうことが往々にあります。 

まさに、チェルノブイリがそうであったし、わが国の福島事故や東日本大震災がそれにあたります。 

この時に、政府は国民や民間企業の協力なくして収拾することは不可能です。そしてこの協力を得る近道は正しい情報の発信です。 

いかなる事態が起きて、今どのような状況なのかについて、隠し立てすることなく、明解に意思疎通すべきです。

何をあたりまえなことを、と思われるかもしれませんが、現実に多くの企業や行政が、大規模な事故においてやりがちなことは、この「情報隠し」なのです。 

今起きている事故の状況でイッパイイッパイなのに、正しい情報なんか与えればいっそうこの混乱が広がてしまうと、腰が引け、いつしか出しそびれてしまう内に、週刊誌などにスッパ抜かれるはめになります。 

当時、わが国の政府が最初に国民に伝えるべきは、いうまでもなく危険情報の基本中の基本である放射性物質拡散図でした。 

これはSPEEDI情報として、官邸は持っていたにも関わらず、なぜか握りつぶしてしいまいます。

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結局、日本においては火山学者の早川由紀夫氏が、上図の拡散シミュレーション図を週刊現代に暴露することで、いっそうパニックに輪をかけていくことになります。

後にこの早川氏は度し難いデマッターになっていきますが、当初このようなセンセーショナルな登場をしたために、信奉者が多く出ました。

上の画像は事故から既に2年以上たった時期に出た「美味しんぼ」ですが、政府の詳細な拡散図がでているにもかかわらず、根拠はこの早川マップです。

いかに早川氏が、反原発運動に強い影響をあたえたのかわかるでしょう。

当然ただの想定図ですから、間違いだらけで、事態は鎮静化するどころか、いっそう拡がっていくことになります。

そもそもこんな基本的情報は政府が直ちに発表するのかあたりまえで、週刊誌に先にでてしまうということ自体が、度し難い政府の無能ぶりと国民に対する愚民視を表しています。 

スウェデン政府は三つの情報は正確に直ちに伝達すべきだとしています。

①汚染の拡大状況
②事故状況
③食品規制

政府が、この三つのリスク・コミュニケーションに失敗すると、国民は「政府情報を一切信じない」、「まだなにか隠しているに違いない」という根深い不信感に直結していくことになります。 

そして以後、政府がなにを言おうと信じようとせずに、ネット空間の情報や週刊誌、テレビからのバイアスのかかった情報だけを信じる層が生まれてしまうことになります。

ああ、今日も1ミリシーベルトにたどり着けなかった(涙)。

 

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コメント

まさしく管理人さんが書いてくれた通り、一部の方々は「政府の発表は一切信じない」と言い、提示した調査結果は政府ではなく大学のものだと説明すれば「御用学者だ。信用できない」と言い出す始末です。

民主党は人々の心に、とんでもない傷を残してくれました。
そんな民主党が、重箱の隅をつつくような揚げ足とりを繰り返す様を見ていると、腹立たしさしか浮かんできません。

先日は愚痴っぽい書き込み失礼いたしましたf^_^;)
五穀豊穣、子孫繁栄を目指して前向きに考えたいですね。
震災後に渡独した駐在員は荷物を放射能付きのエンガチョ扱いされて苦労したのですが、ドイツ人はチェルノブイリの分とどう折り合いつけているんだ?と健康志向な幾人かに質問する機会がありました。
彼等はベリー類キノコ類ルッコラ等の青い野菜も大好き。半野生動物も食べます。セシウム等随分と半減していても嫌な人は嫌なんですが、永劫それを諦める気にはやはりなれなくて、意識しながら食べているのだそうです。一般的に含まれるとされる量をメモしておいて今週は何ベクレル食べたとか概算して安心すると。「ストレスこそが最も私達を蝕む」という点で意見は一致しました。

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