• 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719
  • 20250114-062849
  • 20250112-044948
  • 20250112-050804
  • Dsc_1204
  • Dsc_1204_2
  • Dsc_1206_2

« リスク管理は「事故は必ずまた起きる」が大前提だ | トップページ | トリチウム「汚染水」の処理は、国際条約に則った海洋放出しかない »

2016年3月18日 (金)

福島事故が「収束」していないってホント?

086
今回の大津地裁山本判決のバックグランドになっているのは、東京新聞(2015年9月20日)によれば、この3点セットのようです。

①原発の安全対策、とくに事故時の原発の安全対策、事故時の住民避難などの防災対策が不十分
②原発から出る核のごみの処分方法が決まっていない
③福島第一原発事故が収束していない

この③の「福島第1の事故は収束していない」という人たちのサイトへ行くと、明日にでもハルマゲドンが来ると泣き叫んでいます。 

たとえば、衝撃! 福島原発第一の怖い現状! - NAVER まとめなんかだけ見て生きている方にとって、福島第1の現状は、「もうお手上げ原発汚染水」「再臨界している」ということのようです。

この人たちにとっては再臨界=核爆発を意味していますから、都知事選に出た細川氏が言っていたように、「ロシア軍の情報によれば、福島で事故後に再び核爆発があった事実がある」そうで、おおコワ。

いえ、再び起きた「核爆発」ではなくて、言っている人の脳味噌のほうがですが(笑)。

まぁ、細川さんのいう「核爆発」は論外として、確かに「汚染水」の流出は止まっていません。河北新報(2015年12月19日)です。※河北新報を福島と表記してしまいました。もちろん宮城です。ご指摘に感謝します。

「東京電力福島第1原発で発生する汚染水が1日300トンから600トン程度に増加していることが18日、分かった。汚染地下水の海洋流出を防ぐ海側遮水壁の完成後、岸壁に近くトリチウム濃度が高い井戸「地下水ドレン」の水位が想定を超えて上昇。くみ上げて原子炉建屋に移送する量が増えたのが原因という。」

Photo河北新報前掲

汚染水の出所は3カ所です。

①原子炉の冷却系の循環水
②汚染水貯蔵タンクからの漏水
③流入する地下水

これら3ルートはいずれも汚染の濃度の差があっても放射性物質を含んでいる可能性があるので、浄化装置にかけねばなりません。

やっかいなのは、福島第1が、地層を15メートルほど掘って作られているために、施設近辺に豊富な地下水脈があることです。

1日約1000トンの地下水が流入し、それを井戸を掘って施設に行かないようにバイパスさせても、その8割から9割は施設地下に流入し汚染水となりますから、ALPS(多核種除去装置)を稼働して浄化を続けねばなりません。

施設を囲む凍土壁で止めようとしていますが、私はうまくいくか疑問に思っています。

いずれにしても、原子炉の冷却は止めるわけにはいかないので、完全廃炉の日までALPSを稼働させ続けねばならないことになります。

脱線しますが、山本裁判官などは、再稼働をとめればなんか「安全」だと勘違いしているようですが、運転停止しても原子炉は休みなく冷却し続けねばなりません。

また、使用済み燃料プールもおなじように、稼働せねばなりません。

ですから、再稼働停止で、原発のリスクをなくしたことにはまったくならないのです。念のため。

それはさておき、このALPS浄化装置が除去できない唯一の核種が、トリチウムです。

したがって、汚染水問題は詰まるところ、トリチウムの問題に帰結します。

どうやら反原発派の皆さんに言わせれば、トリチウムは放射能汚染水としてドバァ~と毎日でているので、「事故は収束していない」ということのようです。

では、「反原発の巨人」・小出裕章さんにご登場ねがいましょう。
※小出裕章ジャーナル2014年12月13日http://www.rafjp.org/koidejournal/no101/

「ALPSが動いたとしても、取り除けない放射能というのはありまして、例えばトリチウムという名前の放射性物質はALPSは動こうと、他の浄化装置が動こうと、全く取り除けません。ですから、結局そのトリチウムに関しては、何の対策もとりようがありませんので、いつの時点かであれ「海に流す」と必ず彼らは言い出します。」

その通りです。ALPSでもトリチウムは除去できません。

しかし例によって、運動家的学者特有の、「嘘は言っていないが、隠していることがいっぱいある」という類の言辞です。

小出さんはトリチウムなんか、その気になれば飲めるくらい安全なことを知っているはずです。知らなければ、原子力学者の同業者からバカ扱いを受けます。

しかし、それを言えば、事故は山場をとうに乗り越えて、いまや後始末に入っていることを認めねばなりません。すると反原発運動がしぼんでしまいます。

だから運動をダラダラするためには、「汚染水が止まらない以上、福島第1はまだ危険な状態なんだぁ」と叫びつづけにゃならんのです。

無知なマスコミも同調してくれますしね。(テレビ局や新聞社には科学記者がいないのか)

では検証してみましょう。

ALPSは核種のほぼすべてを除去します。

下図は対策会議のデータです。全部ND(検出されず)です。

006

・γ核種(45核種)・・・検出限界値(ND)未満にまで除去
・β核種(8核種)・・・5核種までが検出限界値(ND)未満にまで除去
・Sr-89(ストロンチウム)、Sr-90、Y-90(イットリウム)については、告示濃度以下

しかし、唯一例外があります。それがトリチウムです。これだけはどうしても除去できないのです。

なぜなら、トリチウムは微量の放射性を帯びた「水」で、水の中の「水」はとりようがないからです。

だから小出さんか鬼の首をとったように言うとおり、汚染水浄化装置では、「対策のとりようがない」ところまではほんとうです。

もちろん、除去する以外の解決方法はあるのですが、もちろん小出さんは知っているくせ巧妙に沈黙しています。このあたりが運動家だなぁ。

その解決方法については後述しますが、その前に、トリチウムとはどんな存在なんでしょうか?

トリチウムとは、三重水素(H3)です。昔は重水と呼ばれていました。水素の同位体ですから、人体の中では水素の化学形である「水」の形をとっています。(※炭素結合形態もあります)

とくに流出した「汚染水」を飲まなくても、既に地上生物の体内の水にはトリチウムが含まれていて、およそ1ベクレル/ℓだといわれています。

2013010919362571d

図  自然放射線による日本人の平均被ばく量2.1mSv/年の内訳

トリチウムは自然界にあるものなので、人体内にもわずかですが存在します。人体内には50ベクレのトリチウムが存在しています。

そして、毎日オシッコで10日間ほどで、体外に排出されています。

このようにトリチウムは、水や大気に取り込まれて存在します。

ただし「存在」していても、セシウムやストロンチウムのように特定の食物や内臓諸器官に残留せずに、水や大気に混ざって存在しているところが、他の放射性物質と大きく異なる点です。

これは大気圏上層で、一次宇宙線という高エネルギーによって生成されて地上に降り注ぎ、その過程で二次放射線に含まれる中性子が窒素(空気)と反応してトリチウムが生成されるからです。

この量はバカバカしく多く、127.5京といわれており、海、湖、川など以外にも水蒸気にも含まれています。

まぁ要するに、人類の生存圏のありとあらゆる「水」に含まれるといっていいでしょう。

さて、ALPS除去設備が除去できなかったのは、凶悪だったからではなく、要するに限りなくただの「水」だったからにすぎません。 

なんでこんなもんを怖がるのでしょうか。ストロンチウムならまだ分かりますが。

確かにトリチウムが「放射能汚染水」というのはウソではありませんが、正確ではありません。

除去できずに出ているのは、限りなくただの「水」ですから。

では、小出さんが批判するように「海に流す」のはまずいのでしょうか。

いや、逆です。小出さんが知らないはずがありませんが、それが正しい解決方法なのであって、むしろ海への放出する方法こそが、世界のルールなのです。

これについては、長くなりましたので、明日に続けます

« リスク管理は「事故は必ずまた起きる」が大前提だ | トップページ | トリチウム「汚染水」の処理は、国際条約に則った海洋放出しかない »

原子力事故」カテゴリの記事

コメント

はじめまして

トリチウムはエネルギーは小さいし(18.6keV)、半減期も大したことない(13年)から、海洋排出か薄めて森林散水が合理的ですね。
長い間、何千トンも一箇所に貯めておくほうがよほどリスクかと。

初めまして。原発問題や沖縄の基地問題などいつも豊富な情報に基づく鋭い切り口の文章に感服しながら記事を読ませていただいております。ところで文中に「福島地元紙河北新報」とありますが、
河北新報は福島のお隣の宮城県の地元紙ではないでしょうか?

トリチウムを流しだしたら他の核種もドサクサに流し出すにちがいない、そのように信頼されていない東電だからトリチウムも流させない。
いつまで?信頼を得直すまで。
どうなったら信頼するの?脱原発したら。
電気使ってるの私達だよ?うん。でも金払って買ってるんだから責任は一切東電でしょ。他所から買えるんなら変えたい位だ。太陽光が高いのは許せるけど東電が原発を理由に値上げするのはムカつく。
それだと廃炉できないよ?それは私の考える事じゃない、東電が考える事だ。
…というような問答をした事があります。
この後は絶対安全って言ったの東電だ、に戻りループします。
改憲と同じ否定方式ですね。ただこれはサヨクだとかでなく普段デモとか一切興味のない一般市民の何割かにすごく共感を得るのだと思い知りました。意識高く言ってるつもりなのが尚更痛いです。

あの貯水タンクの山を見れば、いずれ海洋放出することになるのは目に見えています。
漁業関係から反対があって放出できないでいるようですが、あんなタンクにいれて放っておくほうが、地震などの災害のリスクを考えると、はるかに問題だと思います。

passengerさん。ありがとうございました。修正いたしました。ポカミス、よくやるんですよ(泣く)。こんごともよろしくお願いします。

日刊ゲンダイで高野猛とかいうジャーナリストが「凍土壁が失敗した。安倍の嘘が崩れた。ざまーみろ オリンピック反対」といっていました。そういえば鳥越氏もそういうこと言ってましたね。彼らはトリチウムがどんな物質なのか分かってないんですかね。

失礼します。少し異論を述べさせて下さい。

トリチウム(H3)は水素(H)の同位体で、物理的、科学的にも水素と同じふるまいをします。
1つだけ違うのは、やがてβ崩壊を起こしヘリウム3へと変わる事です。
一方、人の身体を作る元素(水素、酸素、炭素、窒素など)のうち水素が60%を占めます。
トリチウムは水素の同位体であるが故に、身体を構成する元素として、本来Hがあるべき場所にH3が取り込まれてしまいます。
つまり、トリチウムは身体の一部になりうるわけですね。

このH3がある日β崩壊を起こし、ヘリウムに変わってしまいます。
この時発する放射線も問題ですが、水素がヘリウムに変わってしまうと、身体のその部分は変異してしまいます。これが問題なのです。
1つの細胞が傷つくだけなら、大した問題になりませんが、染色体の塩基配列は水素で結合されてます。
ここの水素がトリチウムに置き換わった場合、やがてβ崩壊を起こし、結合が壊れます。
つまりDNAが傷つけられてしまうのです。

なので、トリチウムをただの水だと片付けてしまうのには、非情に違和感を感じます。

もちろんトリチウムは地球上にもとより存在する元素であり、生物はその中で適応して来ました。その中で癌や奇形児なども少ないながら発生してたでしょう。もしかしたら突然変異による生物の進化の原因にもなったかも知れません。
自然界に存在する放射性物質は、私達にはどうしようもないものです。
けれど、自然界に存在するものだから、人間が新たに作って海に流して良いという理屈にはならないと思います。

確かに今はまだ、上記したDNA損傷に至る確率は低いのかもしれませんが、地球上に存在する原子力関連施設が、トリチウムを垂れ流し続けたら、この先どうなるのでしょうか?

これ以上地球上に放射性物質を増やさない事が肝心なのではと思います。

最後に1つ質問です。

「小出さんはトリチウムなんか、その気になれば飲めるくらい安全なことを知っているはずです。知らなければ、原子力学者の同業者からバカ扱いを受けます。」

こう書いてらっしゃいますが、これの根拠があれば教えて下さい。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« リスク管理は「事故は必ずまた起きる」が大前提だ | トップページ | トリチウム「汚染水」の処理は、国際条約に則った海洋放出しかない »