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日米地位協定第17条5項Cを改定せよ

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もう遠い過去のような気がするので不思議ですが、本土政府との話し合いで移設承認を決めて、島に戻った仲井真知事は、すさまじいバッシングに遭遇します。 

その時に地元を差し置いて、知事に向かって「あんた日本語ができるのか」とやったのがTBSの金平茂紀キャスターだったことをよく覚えています。 

クールな知事が珍しく色をなして怒っていました。この後、地元2紙を先頭にして、「金で島を売った」というリンチが始まります。 

さて、その時も(今もなおですが)とりあげられなかったのは、仲井真氏の背中を押したのが何だったのかということです。 

たぶん、地元紙がいうように振興予算の上積みではなかったはずです。

そんなものは、この切羽詰まった状況で本土政府が上積みするのは見えています。タフネゴシエーターの仲井真氏がそれだけでこの重い決断に踏み切るはずがありません。 

私は、その大きな理由のひとつに日米地位協定改定に向けて努力するという言質を、首相から引き出したからだと思っています。 

しかし、それから翁長氏に変わって、もはや日米地位協定改定は進まず、まるで辺野古に移設することこそが、最大の問題であるかのような別の流れが作られてしまいました。 

私は日米地位協定をきちんと改定しないで、沖縄県民の基地に対する理解を得るのは難しいと思っています。 

今まで現行協定では、米軍人の「柵の外」、つまり日本の主権内で起きた犯罪に対しても、米兵に限ってわが国の司法がこれを裁くことが出来ませんでした。

いや、正確に言えば、裁判自体はできますが、まず最初に裁判する権利は、米兵に限ってまず米軍が裁く権利を有します。  

これを「1次裁判権」といいますが、これを日本はこと米兵に対してだけは例外として持ちません。

同様に、被疑者の身柄の確保も、現行犯で日本警察が米軍より先に身柄を押さえない限り出来ません。 

ですから、いったん「柵の中」に逃げ込まれたら最後、身柄の返還は米軍が裁いた後に「返してもらえるかもしれない」ことになります。 

この地位協定によってどれだけ沖縄が悔しい思いをしてきたことか。この日米地位協定の改定は、いわば沖縄の悲願だったといっていいでしょう。 

単なる基地移設だけではなく、このような踏み込んだ政府の取り組みに、仲井真氏は心打たれたようです。 

日米地位協定第17条5項Cにはこのように述べています。
※外務省HPhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_keiji_01.html

日米地位協定第17条5項C
「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。」

(c) The custody of an accused member of the United States armed forces or the civilian component over whom Japan is to exercise jurisdiction shall, if he is in the hands of the United States, remain with the United States until he is charged by Japan.

1995年9月に沖縄での少女暴行事件が起きています。12歳の少女に対する小児性愛者による暴行事件でした。

思い出すだけで、歯ぎしりしたいような、日本人として絶対に許してはならない事件でした。
※事件についてはhttp://blog.livedoor.jp/jimennoana/archives/1039079022.html

ここでその詳細には触れませんが、この時の県民の怒りは保革の別なく大きなものでした。

9月13日には県議会米軍基地対策関係特別委が地位協定改定意見書と抗議決議を全会一致で可決したのを始め、10月までには県下53すべての議会で抗議決議が可決しました。

Photo
私は、未成年の政治活動に対しては冷やかですが、ことこの事件に関してはこの壇上の少女と怒りを共有します。

この世代の女性たち、もっとも保護されねばならない子供が、故無き性的暴行を受けたことに対して、怒りをぶつけ抗議する権利はあなたたちにあります。

しかし、本土政府の対応は鈍く、9月18日に衛藤征士郎防衛庁長官が地位協定見直しを示唆する発言をしたところ、それを20日には当時外相だった河野洋平氏が、「日米協定があって地位協定がある。この問題で見直しうんぬんを言うのは議論が走りすぎている」と拒否しています。

河野氏の鈍さには度し難いものを感じます。

言うまでもなくこの河野氏は1993年に官房長官時に、あの悪名高き河野談話を出した人と同じ人物です。

彼は朝鮮人慰安婦に対してはこう述べています。脱線しますが、引用しておきます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」

どうして朝鮮人の職業的娼婦に対してはかくも優しい河野氏が、自国民の少女にはこんなにも冷淡でいられるのでしょうか。

この犯人3名に対して、米国高官すら「ビースト」(野獣)と吐き捨てるように呼んでいるのにかからわず、当の日本の外務大臣がこれではどうしようもありません。

私が河野という人物を信じられないのは、こういう二面性があるからです。

まさに沖縄の少女は、「その意志に反して」暴行を受け、「名誉と尊厳を傷つけられた」のではなかったのですか。

ならば、外相として真っ先にやるべきは、犯人の身柄引き渡しだったはずです。

また、政府高官として、沖縄の少女に「お詫びと反省」を言わねばならない立場でした。

ところがこの事件を受けた外務省は、10月の「刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意」で、こんな合意でお茶を濁そうとします。

刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意
「一 合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う。
合衆国は、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。

二 日本国は、同国が一にいう特定の場合に重大な関心を有するときは、拘禁の移転についての要請を合同委員会において提起する。」

まさに官僚の作文です。
このような条文解釈で終始すれば、結局は問題の所在を条文解釈に限定してしまい、かえって温存することになります。
まず、このような許しがたい犯罪が行われた場合、日本政府が求めるべきはひとつです。
可及的速やかに日本側に被疑者の身柄を引き渡せ、と米国に要求することしかありません。

上記の日米合同委員会合意では「被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う」で止まってしまっています。

基地内に逃げ込んで身柄を押さえられた被疑者を、日本側の強い「要請」があったからといって、米国側がその場で日本警察に引き渡す「好意」を示してくれるものかどうか、少し考えてみればわかるはずです。

米軍司令官の立場に立って考えてみましょう。

米軍司令官は、自国民を保護することが義務です。それは犯罪を犯したとしても同じで、自国の法によって裁くのが「自国民保護」です。

もし、この時司令官が当該国に対して「好意」を示したりすれば、彼は米国民から見れば自国民の保護をせずに外国に引き渡したということになってしまい、非難を受けるでしょう。

だから、米国側が先に取り調べて事実を知りたいと思うのは、彼らの立場とすれば当然なのです。

この「好意」は、文書原文ではsympathetic consideration で、直訳すれば「同情的細やかな配慮」です。

なに言ってんだか。どうしてこういうあいまいな言葉で、かくも重い罪を犯した被疑者の引き渡しを取り決めたのでしょうか。

明確に、日本国内で基地の「柵の外」で行われた米兵の犯罪に関しては、いかなる理由があれ例外なしに日本警察に司法権がなければなりません。

したがって、仮に被疑者が基地内に逃げ込み、米軍に取り押さえられて「好意」によって引き渡された場合においても、日本警察は基地から連行し、日本警察の中で取り調べを受けさすべきです。

これが対等の同盟関係というものであって、それを相手側の「好意」にすがらねば凶悪犯の身柄ひとつ押さえられないという不平等性こそが、問題なのです。

 

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コメント

>日米地位協定第17条5項Cを改定せよ

管理人様のこの提言に呼応したかのように「政府辺野古和解案受け入れへ」のニュースが飛び込んできました。びっくりしました。
「普天間返還・辺野古移設」「日米地位協定改定」は包括的に解決されるべきとの本筋に則り、安倍首相が仲井間氏との約束を果たす意思表明とも受け取れます。

投稿: 比嘉典助 | 2016年3月 4日 (金) 16時04分

仲井眞氏は常々、「政府は米国に拠り過ぎている事が心配だ」と言っていましたね。
(この意味は間違っても、中共にも目を向けろという事ではありません)
これはまさしく、日米地位協定第17条5項Cを早くなんとかしてくれ、というメッセージでした。

ブログ主様が疑義されるように、日米は対等な同盟関係ではないのです。
まず、ここからはっきりと認識し直すべきです。
そのうえで、どうしたら対等の関係になるのかを考えるべきでしょう。
その第一歩が集団的自衛権の一部容認ですが、それだけでは焼け石に水でしかありません。

マイケル・ピルズベリーは著書の中で、米国(米軍)が中共を重要視するようになった理由として、数多くの共同の「秘密作戦」の存在をあげています。
そうした事は日本には今後も不可能でしょうが、日本は日本なりに世界平和に貢献するみちを積極的にさぐるべきです。
それしか方法がないような切迫した気分でもありますが、米国が自信を無くし相対的パワーが落ちつつある現在こそ道は開けるものとも言えます。


投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年3月 4日 (金) 23時47分

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