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2016年3月19日 (土)

トリチウム「汚染水」の処理は、国際条約に則った海洋放出しかない

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福島第1原発の現状について、どこをもって「事故を収束」とするか、ということですが、最長で廃炉まで40年です。 

しかし、それまでなにもしないわけではありません。 

今、とくに問題とされているのは、昨日取り上げました「汚染水」です。 

NHK(2016年3月16日)が整理してくれています。

東電の最新の現状報告書「福島第原子力発電所の最近の状況」(2015年12月11日)と共に見ていきます。 

「1号機から3号機では溶け落ちた核燃料を冷やすため原子炉に水を注ぐ必要があり、これが高濃度の汚染水となって建屋の地下にたまっています。
さらに地下水が建屋に流れ込んでいるため、当初、建屋内の汚染水は毎日400トンずつ増え続け、東京電力はこの汚染水をくみ上げて1000基に上るタンクで保管しています。」(NHK前掲)
 

この福島第1が立つ場所は、そもそも安達太良山系の湧水を集めて、大変に地下水が豊富な地点なのです。 

もちろん、建屋の下にたまっている汚染水もありますが、どちらかといえばこの毎日400トンも流入するハンパでない量の地下水に手を焼いています。 

Img_3781図 東電前掲 クリックすると大きくなります

施設を上図の左手から、崖を掘って作ってしまったために地下水に悩まされているわけですが、事故後に崖の上に地下水を汲むポンプ(青い太線)を設置しました。 

それでもなお、崖下に流れる地下水は、3カ所の「くみ上げ」と書いてある井戸からくみ上げていきます。 

とくに重要なのが崖下の井戸で、ここで止めないと、原子炉に流入して「汚染水」となってしまいます。ですから、ここでくみ上げて、なおその先に凍土壁を作っています。

「東京電力はこれまで、建屋への地下水の流入を抑える対策に取り組んできました。おととしには建屋の上流側で地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」と呼ばれる対策を始めたほか、去年9月からは「サブドレン」と呼ばれる建屋周辺の井戸で地下水をくみ上げ、浄化したうえで海に放出する対策も始めました。東京電力の試算では、こうした対策によって建屋に流れ込む地下水の量は1日およそ200トンまで減ったとしています。」(NHK前掲)
ところが、やはり問題は起きています。
ひとつは、東電は原子炉に接触しないようにした上で、浄水装置にかけて放射性物質を除去して海に放出するつもりだったのですが、せき止めた地下水の濃度が想定を上回ったため、放出が見送られたことです。

Img_3785図 東電前掲 クリックすると大きくなります
また、事故時の緊急対策として設置したタンク群の劣化も進んでいます。
福島民友新聞(2016年3月3日)によれば
「現在の汚染水発生量は1日当たり約500トン。内訳は地下水流入分が約150トン、護岸から移送した地下水分が約350トンとなっている。
 また2月25日現在、1~4号機などの建屋内には計約8万1000トンの高濃度汚染水がたまっている。」
NHKによれば、トリチウム問題が足かせになって、1日に新たに500トンの汚染水が発生し、60万トンもの「汚染水」がたまったままになっています。

「 東京電力福島第一原発では、1日におよそ500トンの汚染水が発生し、浄化設備で放射性物質を取り除いて いますが、トリチウムという放射性物質は取り除くことができないため、およそ60万トンが敷地内のタンクにためられたままになっています。 」(NHK前掲)

こうして、足止めを食っているうちに、「汚染水」は日に日に増加して、溢れんばかりになっています。
もはや、福島第1の復旧作業は、タンクのお守りではないかという自嘲すら生まれている昨今です。
Photo写真 朝日新聞2013年8月1日

そして貯めているタンクや、ホース、ポンプの劣化も進んでいます。
「東電は4年前の事故時に急増したフランジ型の貯蔵タンクが耐用年数を迎えて相次いで劣化しつつあることから、貯蔵汚染水の入れ替え作業を進めているが、設備の劣化はタンクだけではなく、今回のホースやポンプなど多くの応急的に投入された部材の劣化が随所で顕在化しつつあることがうかがえる。」F(inance GreenWatch 2015年5月19日 )

つまり、貯めておくという方法は、あくまで事故直後の浄水装置もなく、遮蔽壁もない状態でやむを得ず取った緊急措置だったにもかかわらず、事故後5年たってその限界を迎えつつあるということです。

「 こうした汚染水の処理方法について、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏代表はNHKの取材に対し、 「国の議論では希釈しての排水や、濃縮しての管理など、いろいろ案が出ている。4月以降、地元の方々と話し合い、  どういった形がいいのか決めていきたい」と話し、薄めて海に排水することを含め、どのように処理を進めるべきか、 来月以降、福島県など地元と議論を進めていく考えを明らかにしました。
トリチウムを含む汚染水の処理については、国の専門家チームで検討が進められ、薄めて海に排水する案や 地下に注入する案などが候補とされていて、地元の理解を得ながら、どのように汚染水の処理を進めるかが大きな課題となっています。 」(NHK前掲)

ここで上げられている地下注入などは、別の地下水脈に流入してしまい汚染を拡大しかねない下策です。

これ以上貯めておけない、そしてトリチウムだけに問題が絞られてきて、しかもトリチウムはそもそも非力なエネルギーしかもたない放射性物質である上に、検出量も微量です(下図参照)

ならば解決法は、世界にひとつしか存在しません。海に放出することです。これ以外にありえません。

Img_3788図 東電前掲 クリックすると大きくなります

下図は、世界の原子力施設で液体廃棄物として海に放出した、トリチウム量のグラフです。

 

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 図 海産生物と放射性物質(海洋生物環境研究所 この論文はトリチウムと海洋との関係で教示されるものをたくさん含んでいますので、必読です。

上図のトリチウムは、原子炉の運転・整備、核燃料再処理時などで発生したものが、施設外に排出されたものが大気圏や海洋へ残留したものです。

英国が最大放出国で、実に2500兆(2.5×1015)Bq/年程度、日本は6分の1の400兆(4×1014)Bq/年程度です。

このグラフには再処理施設からの放出量は含まれていないために、英仏はさらに多くなります。 

このように現在でも各国の原子力施設からは、日常的に海にトリチウムが放出されています。 

●各国のトリチウム海洋放出量
・英国(セラフィールド再処理施設)・・・年間1390兆ベクレル(2010年値)
・フランス(ラ・アーグ再処理施設) ・・・年間9950兆(2010年値)
・カナダ(ブルース原発)       ・・・年間1180兆(2012年値)

 これはロンドン条約で認められた、唯一のトリチウム解決法です。ロンドン条約を押さえておきます

「ロンドン条約 1972年は、海洋の汚染を防止することを目的として、陸上発生廃棄物海洋投棄や、洋上での焼却処分などを規制するための国際条約。」
ロンドン条約 (1972年) - Wikipedia

なお、放射性物質の放出は同条約で禁止されているという反原発派の説がありますが、正確ではありません。(欄外参照)

ロンドン条約は、船舶からの海洋へ処分する行為等を禁じていますが、原発施設からの放射性排水の海洋への計画放出は対象に なっていません。

ロンドン条約で許されたトリチウム濃度は6万ベクレル/ℓで、これ以下ならば放出することが国際的に認められいます。

よくある勘違いに、福島第1で事故処理に失敗したから漏れだしているのだろうという誤解がありますが、まったく違います。 

他の国内原発でも、以下の放出がなされています。
 

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図 各原発からのトリチウム海洋放出の年平均値(2002年度~2011年度)平成23年度  原子力施設における放射性廃棄物の管理状況(2012年8月) 

沸騰水型の最大放出施設は、大飯です。全原発の合計では年間で380兆(3.8×1014)Bq/年で、世界では少ない方に属します。  

放射線の専門家である海洋生物環境研究所の御園生淳氏、富山大学水素同位体科学研究センター長松山政夫教授の意見を紹介しておきます。

①水として摂取しても10日くらいで半量が排泄されてしまうので内部被曝の可能性は低い。
②トリチウムの出す放射線量のエネルギーが低いので、外部被曝はありえない。
③毎日100ベクレル/㎏のトリチウムを含む食物を1年間食べた場合の摂取量は、0.0015ミリシーベルトで、,セシウム137の約千分の1ていどで比較にならない。
④トリチウムは何かに濃縮することがないために生物濃縮は考えられない。

もし、今後、福島第1から、トリチウムを含んだ「汚染水」を放出するなると、以下のルールに則って行われことになります。  

原子力施設のトリチウムを告示濃度限界の6万ベクレルまで希釈してから、海に計画放出し、拡散させます。  

これは先の述べたロンドン条約の国際ルールに則っていますから、文句を言ってくる国は韓国以外にないでしょう。

いや韓国も重水炉を持っているために、アジア最大のトリチウム放出国でしたっけ(笑)。 

漁業関係者は風評被害に痛めつけられて来ましたから、粘り強い説明が必要でしょう。  

外国の専門家は、このわが国の汚染水対策に同意しています。  

訪日したスリーマイル島事故を経験したNRC元専門家も、「直ちに海へ放出すべきだ」と助言しています。  

いずれにせよ、完全廃炉になり、使用済み燃料棒の処分が終了する時まで、冷却水は止められませんから汚染水は出続けます。

私はかねがね常に言ってきたことですが、事故処理に原発賛成も反対もまったく関係ありません。

もはや反原発はイデオロギーになってしまったようですが、願わくばイデオロギーの眼鏡で事故処理を見てほしくはありません。

広く世界でどのようなトリチウムの処理がなされているのかを知ってから判断すべきなのに、原発反対だから汚染水処理を止めろと言っているようにすら聞こえます。

というか、実際そう言っています。 近視眼も極まれりです。

どうも、彼らの声を聞いていると、凍土壁が失敗しそうだと手を打って喜び 、タンクが漏れると万才を叫んでいるようにすら見えます。 破滅願望なのでしょうか。 

反原発主義者にしても、このままタンクが溜まるだけ溜まって処理不能になり、炉の冷却水の循環もできなくなることが望みではないと思うのですが。

 

福島第一原子力発電所における汚染水の放出措置をめぐる国際法(西本健太郎 東大特任講師)
「海洋と放出とロンドン条約ロンドン条約は1975年に発効し、高レベル放射性廃棄物の海洋投棄が禁止された。以後この条約の下で実施されていたが、1982年の第6回の会議で、海洋投棄に関する科学技術問題を再調査し、その結論が出るまで投棄を一時停止するという提案が行われたことから海洋投棄は一時中止することになり、この年以降は実施されていない。その後、1993年の第16回会議で、放射性廃棄物の【船からの】海洋投棄は全面的に禁止となり、1996年には海洋投棄規制を強化するための議定書(1996年の議定書)が採択され、2006年3月に発効、日本は2007年10月に批准している。」

※参考文献 
ポストさんてん日記 トリチウムとは?危険性は?海洋放出量の基準値は?
海産生物と放射性物質(海洋生物環境研究所
トリチウム流出の影響  福島第一の地下水(安井至教授の市民のための環境学ガイド2013/8/10)
・原子力資料室
http://www.cnic.jp/knowledge/2116?cat_id=1
・医療での自然放射線安全にお答えします
http://trustrad.sixcore.jp/tritium-2.html

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コメント

最近すっかり報道が沈静化しちゃってますが、現実には今も海洋に垂れ流し続けているんですよね?私たちは毎日放射能を帯びた海産物を食べさせられているのでは?これは大変深刻な問題では?何故マスコミは報道しないのでしょう?


その答えは上の記事に書いてる。それを読め。

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