またもや鼻血 朝日新聞がまき散らす脳内放射能ディストピア
また朝日新聞は「鼻血」を放射能と結びつけてキャンペーンを始めたようです。
※核の神話:20福島から避難ママたちの悲痛な叫び 2016年3月19日
ゾンビーが、わしわしと土かきわけて、墓から手を出してくるのを眺めているような気分。いえ、もちろん、この母親ではなく、朝日新聞のほうです。
「福島から母子避難した人たちが日本社会の中で見捨てられている」という思い入れたっぷりな書き出しで、ある自主避難の母親(記事実名)の声を紹介しています。
やや長文ですが、引用します。
「2011年3月11日の原発事故のあと、福島県大玉村の自宅から、主人と当時4歳だった娘を連れて神奈川県相模原市の私の実家に避難しました。(略)
家族が離れてまで避難する理由があるのか、決定的な証拠を出せるような知識はありませんでした。結局、最も放射能汚染の強かった夏休みまでの3カ月を福島で生活してしまいました。
娘が幼稚園に行くときは、なるべく肌を出さない服を着せて、マスクをさせました。バスを待っているときに、土とか葉っぱとかを触ると、子ども同士で「放射能がついてるから、触っちゃいけないんだよー」って注意しあっていたんですね。事故前はお友達のように土や葉っぱで遊んでいたのに、それを触らないようにと子ども同士で注意しあっているのは、見ていてつらかったです。
そうこうしているうちに、娘が大量の鼻血を出すようになりました。噴出するような鼻血だったり、30分ぐらい止まらなかったり、固まりが出たり。風邪の症状はないのに発熱が続いたり、それまでにはなかった皮膚疾患が出たり。
うちの娘だけだったら気のせいかなと思うんですけど、まわりのお母さんたちの子どもたちにも、同じような症状があるって言うんですね。だんだん私は福島で子育てをする自信がなくなりました。」(前掲)
まずは、この女性が自主避難したという、福島県大玉村の場所を確認しておきましょう。
Google Earth
画像右上に南相馬や双葉が見えますね。この女性のお子さんが鼻血を出して避難したという大玉村は、福島第1の西側にあり、約80キロ離れています。
ご承知のとおり、事故当時は東に風が吹いており、放射性物質の大部分は海の方向に吹き流されています。
ですから、内陸部の被曝はほとんどありませんでした。
大玉村の拡散図です。こ覧のように、0.1マイクロシーベルト以下です。 問題にならない放射線量です。
セシウムが検出された大豆が少し出たようですが、何度も書いてきているように、農産物のリスクはその地形によって決定される要素が強いので、そのままその土地のリスクを現しません。
ところがこの田井中雅人記者は、子供に鼻血が出たと言う女性を、まるで福島事故と関連がある「社会に見捨てられた」被害者として描いています。
この鼻血については、私が答えるより専門家に回答してもらったほうがいいでしょう。
日本保健物理学会の『専門家が答える 暮らしの放射線Q&A』は、鼻血について一節設けて、こう答えています。
「まずお子さんの鼻血と下痢について説明します。
放射線被曝によって鼻血が出るとすれば骨髄が障害されたことによる血小板の減少か、皮膚粘膜の障害によって出血しやすくなっていたかのいずれかです。
骨髄の障害による血球数の減少は500ミリシーベルトくらいから起きますが、それによる症状が出るのは1000ミリシーベルト以上です。
また皮膚粘膜の障害は数千ミリシーベルト以上の被曝がないと生じません。
下痢がおきるのも数千ミリシーベルト以上で、それも1万ミリシーベルトに近い線量を被曝しないかぎり生じません。
これらの情報は、放射線治療をはじめとする医療被曝や、過去の原子力・放射線事故の経験など、多くのデータの積み重ねによって得られたものです。
福島第1原発事故による被曝の実態が明らかになりつつありますが、どんなに過大に見積もっても、お子さんにこれほど高い被曝を受けたとはかんがえられません。
(略)
今回の事故による被曝は、身体の一部に限定したものではなく、全身被曝です。
放射能の影響だとすれば症状が鼻血だけに限定されることはなく、そもそも、全身が数千ミリシーベルトの被曝を受けています。
その場合、生死に関わる様々な症状が現れます。そしてお子さんだけではなく、大人にも症状が出るはずです。」
整理しておきましょう。
①放射線被曝による鼻血の発症は、1000ミリシーベルト以上の放射線を、一度に浴びたことによる骨髄障害による血小板減少
②数千ミリシーベルト以上の被曝による皮膚粘膜障害
③もしこれたけの放射線をあびたのなら、症状は鼻血などの局所にとどまらず生死に関わる全身被曝になり、他の深刻な症状を伴う。
④子供だけではなく、大人も同様の症状を発症する
⑤今回の福島事故の放射線量では、どんなに過大に見積もってもありえない
つまり、この母親のお子さんの鼻血の原因が放射能であったのなら、生命に関わるほどの放射線を一時に浴びた以外考えられず、その場合この母親にも同様の症状がでているはずです。
しかも子供のみならず、この地域で大人も含めて、多数の急性被曝を訴える症状が多発したはずです。
寡聞にして大玉村でそのような事例があったという話は聞きませんし、この女性自身もこう言っています。
「当時は放射能がどれだけ体に影響があるのかなんて分かりませんでしたし、そういう村の空気を感じて、私は言い出せなくなってしまいました。」(朝日前掲)
「そういった村の空気」とは、私も分かる気がしますが、騒がずに行政の指示を待つべきだという考えです。
残念ながら事故当時、民主党政権の遅れに遅れたリスクコミュニケーションの失敗によって、行政機関への信頼感は崩壊していました。
この女性をもし「被害者」と呼ぶのなら、まさにこのリスクコミュニケーションの失敗の犠牲者です。
パニックになったこの女性は、夫の制止を振り切って、家族が解体することを覚悟で、神奈川県まで自主避難してしまったわけです。
「外で遊べないストレスも強かったんで、車を2~3時間運転して山形県米沢市までわざわざ行って、娘に外遊びをさせました。福島から山形に入って、やっと車の窓を開けて深呼吸をするような状態でした。山形に入って私が車の窓を開けたら、寝ていた娘が起きてパニック状態になったんです。「ママ、なんで窓あけるの! 放射能あるのに!」って泣き叫ぶ。」(朝日前掲)
ここまで、子供を脅かしたのは、親の責任です。親の動揺が、常に親を見ている年頃の子供に増幅されて伝わったのです。
そして子供までも、どんな安全な場所でも「放射能がある。窓を開けないで」と泣き叫ぶ脳内放射能地獄に導いてしまった責任は、親にあります。
そしてこの子供の恐慌を見て、さらに親は恐怖にかられます。果てることがない、恐怖のキャチボールです。
気の毒にと思うと同時に、親として踏みとどまるべき時期を逸してしまった母親の責任も問われるべきです。
そしていまや、今の朝日が言う「社会から見捨てられた」境涯に置かれたわけです。
この女性に対しては、冷静さを失ったことによる行動とはいえ、気の毒な側面があります。
むしろ問題は、朝日新聞です。
私は事故後5年もたって医学的には完全否定されて鼻血を、ことさらに騒ぎ立てる負のエネルギーに、ある種の狂気を感じてしまいます。
かつて私は鼻血問題でこう書きました。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-dda8.html
「ここに二種類の人間のグループあります。恐怖に脅えたところまでは一緒でした。
それからが違いました。
ひとつは自分の恐怖を他人で伝染させ声高にパニックを拡げることが「天命」たと思う人間たちであり、一方は黙々と目の前の脅威と正面から戦った人たちです。
どちらが人間としてまっとうな生き方なのかは言うまでもないでしょう。」
この私の思いは、今もまったく変わりません。
この母子が脳内放射能ディストピアから自由になり、早く自らの村に還って再び家族と一緒に住む道を選ばれることを祈ります。
一回解体しかかった家族の修復は、それを作った以上に大変でしょうが、それがお子さんにとってももっともいいことだと思います。
そして、朝日新聞、いいかげんにしろよ!
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-f2f9.html
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ほんとにもう、いい加減にして欲しいものだ。
事実を捻じ曲げ、科学的根拠をあげつらう事をも放棄したこの種の記事は人類における「害毒」という他ない。
目的のためには「嘘」を記事に放り込むことを厭わない新聞社、自らの信条に合致するゆえにその「嘘」を無批判に受け入れ、むしろ欲しさえする読者。
まったくどうなっているのか。
多様な意見、少数派の意見に耳を傾けるべきべきは当然ですが、そうした主張が尊重されるべきものかどうかの基準はただひとつ、簡単な事。
「嘘」をつかない事でしょう。「嘘」が盛り込まれた主張は、意見でも主張でも無い。
「嘘」は「知」とは共存できません。
「知」は「嘘」の天敵です。
タバコを吸っている人よりは、原発のほうが遥かにリスクが少ないのが事実。
しかし、確率は極小だがハザードは大きい。
この確率をさらに極小化してハザードを起こさせない事は可能であり、よってリスクそのものを低減させる事は十分成しえる。
私自身、原発再稼動に懐疑的だったが、十分な安全性の確保が見込める目処がついた現在、再稼動はやむを得ないと考える。
嘘とまやかしのはびこる馬鹿馬鹿しいマスコミ報道は、本当の議論を阻害するものでしかない。
結果、馬鹿は馬鹿のままで再稼動して、あわれな反原発派の「正義」は温存され、それがまた別の問題に転嫁する悪循環を生むだろう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年3月22日 (火) 07時43分
このデマ記事はデジタル版限定でしょうか、うちにある19日付の朝夕刊にはなく、デジタル版は登録しないと最後まで読めないです。18日の新聞は捨ててしまったので確認できないのですが。
紙ウェブどちらにしても、こういうデマ伝聞をコツコツと積み重ねて虚像を熟成させる手法は朝日のお家芸であり、慰安婦強制連行の轍を踏まないためにも見つけ次第私達がプチプチを潰すようにダメ出しする必要があります。
今後更に5年もたてば、鼻血を出していた子どもが育ち、その社会的逆境にスポットを当てて東電や国が彼等を放置したという記事が出そうです。
鼻血親子に必要なのはまともな知識とカウンセラーであり、朝日の記者や講演会の主催者は彼女らに生き甲斐を与えて救ってるつもりか知りませんがカルトに追い込んでるんですよ。罪重いです。
投稿: ふゆみ | 2016年3月22日 (火) 09時03分
本記事「核の神話」はデジタル限定版でのシリーズものですね。無料登録で全文読むことができました。私も昨日(3/21)に朝日新聞のトップからリンクを張ってあったので本記事を知りました。なぜか今日(3/22)はリンクが消えています。
本記事の主婦は実名、写真入りです。また中段にはBさんの話として「・・・私も自殺を考えました。今も精神科に通って、治療を続けています。」との記事も出ています。”精神疾患者”の話としてと受け取ればいいのでしょうが、「その原因をつくったのは原発だ」とでも言いたのでしょうか?
朝日新聞は最近おかしな記事が増えています。3/20読者投稿欄「声」に出ていたものです。「古い冷蔵庫を手放ししたものの」の題で75才福岡県の主婦の方です。
電気代が高いのは古い冷蔵庫だから、と娘に言われて買い替えたそうです。
「・・・購入して20年目の冷蔵庫は、長年の開け閉めで扉のパッキンが緩み、冷気が抜け出てしまう。とはいえ、しっかり動いているのに買い替えるのは気が引けた・・・古い冷蔵庫は庭に無造作に置かれていた。慣れ親しんだ我が冷蔵庫を見ていると、胸が締め付けられる・・・物を満杯に詰め込まれても黙って耐えていた。おざなりの掃除だけして手放した自分の不人情に涙が出る。・・・電気代は5千円安くなった。でも古きを捨て新しきを取るのは切ない。」
ようするに、無理な使い方をして、壊れた冷蔵庫を使い続けたことにより、むだな電気代だけでなく、火災の危険すらあった。そして有料で専門業者に引き取ってもらべきものをケチり庭にほおっている。という無知で哀れ、かつ迷惑な老人の告白話です。
問題なのは、朝日新聞がどのような意図で、このような話を実名で掲載しているかです。客観的に見れば、哀れな老人を実名でさらした人権侵害の記事です。
鼻血の話の主婦も自ら告白しているように、精神疾患の可能性が高い人達でしょう。”弱者に寄り添う朝日新聞”は、このままいけば、またまた自爆しそうですね。朝日新聞から目が離せません。
投稿: 九州M | 2016年3月22日 (火) 11時19分
九州Mさん、デジタル版限定シリーズ(まじかーシリーズなんだ…)との事ありがとうございます。
あの年は夏暑く、農家の方々がマスクをして農地の手入れや測定をされる苦労を案じていた記憶があります。幼児は体温が高く本来冬でも半袖裸足で外遊びできるので夏場は放熱への気配りが重要です。着膨れてストレスをかけ癇癪を我慢すれば…鼻血がでると思います。のぼせると幼児は噴き出すような鼻血を出して発熱します。鼻血はクセになりますししょっちゅう泣いてれば鼻水とまじって固まりで出たりするのです。うちの息子が幼児期にそうでした。もちろん震災前にです。
避難じゃなくて涼しくしてあげれば、と助言した方もいたはずです。鼻血母も暑かろうと感じていたはずです。防備服を脱がせない煽り記事の罪は重いのです。
精神科へはおそらくPTSDで通っているのでしょうが、サリン事件や実際に津波にあった被災者などと違いこのカルト民達は癒しの過程で自己の思い込みの崩壊を越えないと復帰への一歩を出せないはずです。街が復旧し空気が澄んでも。
デジタル版のプリントアウトを自然食の店に貼ってアピールしたり、手紡ぎ糸のヒーリングの会とかやっていても、彼女達の向き合うべき問題からは遠ざかるばかりです。ホント、知人がこれのサポートに熱を上げていて顔が浮かぶ分やりきれないです。
投稿: ふゆみ | 2016年3月22日 (火) 13時31分
震災から、五年 いまだに藤岡真という作家が
福島の農家攻撃していますらね。管理人さんのブログ読んだら、少し世界が変わるのにと思いましたよ。
投稿: 元本部町 | 2016年3月23日 (水) 04時15分
ふゆみさん
>のぼせると幼児は噴き出すような鼻血を出して発熱します。鼻血はクセになりますししょっちゅう泣いてれば鼻水とまじって固まりで出たりするのです。
なるほど、そういえば私自身がそうでした。
ちょっと鼻に物が当たっただけで鼻血ブーでしたね。
鼻くそ(汚くて失礼ですが)ほじっただけでも、そりもう毎日のごとく。
小学校高学年になってからは全然出なくなりました。
(いかに子育てに参画してこなかったか反省)
しかし、鼻血が原発によるものならほとんど末期的症状でしょうにね。まったく、あほらし。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年3月23日 (水) 04時47分
鼻血出したくて出してるわけじゃなし、実際311前は鼻血なんて1度も出たことなかった私。福島から西日本に19日に避難してから、鼻血かよく出るようになった。鼻をさわってもないのに、鼻水かなと思うようなサラサラの血がすーっと垂れてくる。
年長の子供も同じだった。5年たちだいぶ、回数は減ってきてはいるが、そんな簡単に放射脳で済ませてほしくない。当事者の苦しみなんて所詮他人事の人達に。
投稿: | 2016年3月27日 (日) 15時13分
名無しさん、好きで出してない位誰でもわかりますよ。みんな忘れてるんですよ、あの年から列島は数年間埃っぽくなってたんです。そのほこりの中の放射線障害以外の何かが原因だと思いますよ。何かって何だよそれ!って言うんでしょうが、微量の放射線自体が鼻の粘膜だけをを破壊し続けたりできないんです。
血小板減少のお子さんを知っていましたが、鼻血じゃなくてぱっと見分からないくらいの微量の血便や体内の普段ならすぐ止血出来るはずの皮膚からは見えない内側の内出血で、貧血になってだるくなります。辛そうですよ。泣く気力も出ないです。
鼻血でもくらっとするとかでもなく、数値でわかる貧血が出ます。貧血で日常を送れない程の鼻血が出ていたのに入院も治療もしなかったならばそれを隠蔽した日本の医師達を朝日新聞やメディアがとっくに暴いていそうですが、どうでしょう。
めっちゃ鼻洗いとか、まさかしてないですよね。粘膜傷つきますよ。
投稿: ふゆみ | 2016年3月27日 (日) 21時37分
近々、九州最南端から福島県に赴任することになって、母親から心配されている者です。いわゆる放射脳な方々にとっては正気の沙汰とは思えないでしょうが笑
天職と心得た仕事を福島県で得ることができ望んで赴任するのですから快く送り出して欲しいと思うのですが、母が息子を想う気持ちを無下にするほど親不孝ではありたくないし、なかなか困っています。で、ネットを徘徊していてこちらを拝見しました。
そうですね、あの年から数年は、桜島が噴煙を上げていないはずなのに妙に霞というか靄っぽくて、城山公園から錦江湾越しにお山がよく見えないということがよくありました。そういえばPM2.5って最近聞かなくなりましたね。まあ、環境問題というのは流行り廃りがありますからね。私が学生時代の頃の環境問題の最先端は酸性雨とオゾンホールでした。今は温暖化商売がお盛んなようですが。
投稿: 魚弱 | 2016年9月27日 (火) 21時02分
放射線による病気は確率的な事象なので、同様な症状が同じ環境ですべての人に出現するわけではありません。したがって低被曝でも特定の部位に内部被曝している場合はその部位を破壊されるため、ガン以外の症状が出ることはあります。福島出身者を差別することではなく、放射線の影響によるリスクを認識した方がよいと思います。
投稿: | 2017年6月27日 (火) 06時18分