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2016年3月 5日 (土)

国はなぜ沖縄県と「和解」したのか

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昨日の国と沖縄県との「和解」は、一気に翁長氏との官邸での会談で内容が固まりました。

「工事中止、国と県の再協議焦点に安倍晋三首相は4日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部が示した工事の中止を含む和解案を受け入れる方針を表明した。県側も受け入れ、和解が成立した。国、県双方の対立が続けば、移設計画も危うくなるとして受け入れを決断した。今後は沖縄県との再協議が焦点となる。
 首相は官邸で記者団に「辺野古移設が唯一の選択肢であるという国の考え方に変わりはない」としながら「国と沖縄県が訴訟合戦を繰り広げている関係が続けば、結果として(普天間飛行場が)固定化されかねない」と強調。工事中止を関係閣僚に指示したと明らかにした。」(共同3月4日)

内容的には、私がよもや受け入れることはないと踏んでいた「暫定和解案」に、少々の修正を加えたものです。 

Photo_2時事3月4日 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる代執行訴訟で、国と県の和解が4日、成立した。写真は、沖縄県の翁長雄志知事(左)と握手する安倍晋三首相=同日午後、首相官邸) 

かねてからささやかれていたことですが、福岡高裁那覇支部は、国の代執行という強権発動にも似た手法に批判的であったようです。 

一方、県に勝たせるのは法理論上、無理筋なのはわかりきったことでした。 

裁判官としては、行政法上は国が勝つのは動かせないとしても、県民感情を逆撫でしたくはないという気持ちにはさまれてしまったわけです。 

これが地元の空気を反映しやすく、トンデモ裁判官が多い地裁レベルだと、あんがい県の勝訴だったりしたかもしれません。 

この裁判官の苦慮から生まれたのが、いわゆる「暫定案」と呼ばれる和解案でした。 

簡単に言えば、「双方とも自分の主張を引っ込めて、仕切り直ししてくれませんか。県は訴訟を引っ込めて、国もその間工事は中止して下さいね。そしてなおも協議がまとまらないなら、県が訴訟を提起して、その判決に双方従って下さい」、というものです。 

お分かりのように文字どおり「暫定的」で、司法の判断を避けて、当事者同士でもっと話あえという内容です。

しかし、かならずしも中立的ではなく、むしろ工事差し止めを求めている県に有利な内容です。

これを呑むと、おそらく最長で1年間ていど工事が中断されるために、国にとって不利な和解だと思われていました。

もうひとつ「根本案」も双方に提示されていましたが、これは事実上建設を容認する内容ですので、県が受け入れる可能性はゼロでした。 

Photo(琉球新報2月29日 沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認をめぐる代執行訴訟の弁論が開かれた福岡高裁那覇支部の法廷) 

ところがこの私が呑むまいと思っていた暫定案をすんなり呑んでしまったのが、今回の首相の決断です。いや、たまげましたね。

ここで問題となるのは、この一見妥協に見える「和解」を選んだ首相の意図です。

翁長氏との官邸での会談を終えて、首相はこう述べています。

「国と沖縄県が訴訟合戦を繰り広げている関係が続けば、結果として(普天間飛行場が)固定化されかねない」と強調。」(共同前掲)

一言で言えば、首相はこの移設反対闘争を泥沼化はさせる気はないということです。

実はこの言葉には、「オール沖縄」の意図を分断する意志が込められたものです。

「オール沖縄」、とくに共産党は参院選に向けての戦闘モードに入っています。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-ff38.html

共産党の戦略は「国民連合政府」です。「戦争法案反対」・反安倍で、野党をまとめきろうとしています。Photo_9

日本共産党赤嶺候補サイトより引用
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-11/2014121101_01_1.html
 

この共産党にとって全国最大の拠点が沖縄であり、そこで成立させたミニュチア版「国民連合政府」が、この翁長県政だったのです。

上の写真を見ると「オール沖縄」の中心にいて、その指揮をとっているのが翁長氏ではなく、共産党だと分かってしまいます。

翁長氏はただ担がれて神輿に乗っている、使い捨ての裸の王様にすぎません。

これは前回の宜野湾市長選の時の選挙運動員の大部分が、共産党員によって占められていたことでも分かります。

共産党の好物は闘争です。これなくしては共産党は存在理由をなくしてしまいます。

したがってこの「沖縄県版国民連合政府」を維持するためのエネルギーも、ひとえに政府と戦うことから生み出されています。

Photo_6http://genron-cafe.jp/event/20150819/

そのためには共産党にとって、上の写真のように、常に沖縄は「怒号の島」であり、「差別に泣く島」であり続ける必要があります。

常識的に考えれば、観光で食っている沖縄が「怒号と差別の島」では、ブランドイメージが下がる一方なのですが、共産党にはかまわないのです。(かりゆしの平良さん。いいんですか?)

今回の「和解」に対して、間違いなく共産党は、「オール沖縄」の会議の席上で翁長氏サイドに対して強い批判をしたはずです。

その理由はもはや県民の利害ではなく、共産党の都合です。

というのは、この合意によれば、とりあえず協議は続きますが、.;双方とも立場にまったく変化がない以上、一定時期をもってこれを切り上げて、違法確認訴訟に移らざるをえません。

あるいは、その間に別の訴訟の結果が出てしまうこともあり得ます。

その場合翁長氏は、「これに従う」と明言してしまいました。

この結果が、県に厳しく、国に有利なものになる可能性はきわめて高く、その場合、ここで移転阻止闘争はジ・エンドになってしまいます。

少なくとも、「オール沖縄」=「沖縄版国民連合政府」にとっては、もはや為す術がありません。

なにせ、翁長氏は「判決には従う」と国民の前で言ってしまったのですから。

この判決が、参院選前に出されるかどうか分かりませんが、いずれにしてもこの「合意」でケツが切られたことになります。

いずれにしても、共産党としては、「新基地」が完成する10年先くらいまでグチグチネチネチとやりたかった辺野古闘争は、この「和解」でお気の毒にも年内で幕となります。

こうして、今でもそうとうにグラつきが出ている「オール沖縄」の内部分解が本格化します。

すなわち、この「和解」合意を、「一時的にでも工事を止めた。成果は出た」、として評価する翁長側や経済人たち保守くずれ層と、あくまで完全勝利まで戦うべきだとする共産党などの左翼陣営との温度差が顕在化するでしょう。

前者にとって、反対闘争はしょせん県内の政界・経済界の主導権争いの産物でしかありませんでしたが、後者にとっては確固たる「生きがい」です。

本来、相いれない立場の二つが、たまたま利害が一致したのでかついでいるのがこの「沖縄版国民連合政府」なのです。

この両者は元来の価値観がまったく違う呉越同舟だった以上、利害対立が起きれば自ずと自然崩壊へと向かっていきます。

おそらくは、次の参院選にゴリゴリの左翼の伊波洋一氏を立てるか、宜野湾市長選の志村氏のような保守くずれの候補を立てるかで、熾烈な争いになるでしょう。

Photo_7ウォールストリートジャーナル2014年7月18日より

一方、首相としては、無理に眼の前の勝利にこだわる必要はない、今、勝ちを急げば遺恨が残る、そう考えたはずです。

孫子が面白いことを、述べています。第三篇謀攻で、孫子はただ勝つのは下策だと言っています。

敵軍を物理的に負かしてみても恨みが残ります。国は荒れ、多くの人が死にます。

もっとも良い勝ち方は、相手が負けたと思わないが、実は負けてしまっている状況を作ることです。

今回の沖縄においては、国が県を「秒殺」をしてしまえば、県民にどうしても「司法まで裏切ったのか」という恨みやしこりが残ります。

この恨みから、闘争は激化するかもしれないし、政治日程的には県議会選や参院選にも影響が出るでしょう。 

恨みを持たせないために、いったん「和解」して話あいを続け、その結果、司法の判断を仰ぐなら、まったく状況は違ってくるはずです。

そしてもうひとつは、これを国の主導権で行うことです。

同じことでも、県や裁判所にイニシャチブを握られてすることでは、まったく力関係の持つ意味が違ってきます。

今の状況は、いかにも県が押しているようにみえても、そうではありません。

客観的に見れば、県は乱訴という無茶苦茶な手段しか残されていない手詰まりの状況なのです。

ここで、不利な判決がひとつでも出ればそれで投了です。本来、リアリスト政治家だっだ翁長氏にとって勝利の展望などまったくないはずです。

方や国のほうは、今後いかようにでも工事を行えますが、県はそれを阻む手段は事実上なきに等しいのです。

いってみれば、いかに「カッコよく負けるか」ということが頭をよぎっていると思います。

こういう絶対的に強い力関係を背景にして、今回の「和解」の手が国から差し伸べられたということを知るべきでしょう。

つまり国にとってもはや勝つ負けるという次元ではなく、その「勝ち方」が問われ、一方県はその「負け方」が問われているというのが、あからさまな力関係なのです。

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このように見てくると、もはや首相にとっては、沖縄県に対する対応は内政と外交のグレイゾーンに位置しているようです。

今回安倍氏がとった手段は、韓国に対してとった慰安婦「和解」と似た手法でした。

一見相手の言い分を呑んで譲歩したようにみせ、今後二度と同じことを言わせない言質を取る、という姿勢です。いわば肉を切らして骨を断つ政治手法です。

そして、グレイゾーンにいる沖縄を、これ以上中国の方向へと押しやらず母国の方にと引き戻すための「和解」だったと思います。

そのために1年ほど工事が伸びたとしても、それは想定内なはずです。

米軍はもともと普天間にいたいのですから異議がないはずですし、政府は既に米国のNSCに日本NSCの谷内氏を派遣してまで完成の延期を打診していました。

この周到な米国への根回しに基づいて、今回の県との「和解」がなされたわけです。

私としては、ぜひこの協議において日米地位協定第17条5項Cの改定と、シュアブ陸上案の復活を望みたいものですが、今日はこのくらいに。 

※大幅に加筆しました。とほほ。

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コメント

本記事は、当を得た見立てと思います。

和解の成立を誰が一番嫌がのるかを考えれば、安倍総理の和解受け入れの目的の概要がわかりますね。
伏線はあった、というべきかどうかわかりませんが、国会において総理みずから最低賃金の見直し等、本来民主党や共産党が声高に言うべき事柄を機先を制して議論の遡上にのせているのも関連深いといえます。
あらかじめ主張を裸にする戦略があるのでしょう。
ここまでやって「参院選のみ」ということはないのではないか、あるいは参院選の結果を受けた直後に衆院解散をやる目途は必ずある、と思えます。

ところで、和解はオール沖縄勢力の分断をじわじわと誘う事になるでしょう。
ご指摘のように、参院選候補から伊波洋一氏を下ろしたい知事派の動きが顕在化してきました。
伊波氏が宜野湾選のさい「県外移設」という主張をすべきところ選挙戦後半では「無条件撤去」という主張にすりかえた、というのが知事派の理由です。
ですが、宜野湾市長選挙前から伊波に対する参院選下ろしの動きはありました。

そしてこれが重要な事実なのですが、昨日のNHK13:00からのニュースで和解案について安慶田副知事が先月から極秘で官邸に赴いて交渉していた旨報道がありました。
2/29の結審日、裁判が終了した時点での県側弁護団の記者会見で松永弁護士は「国と県で直接、裁判所を抜きにした交渉は存在しない。そのルートも一切無い。」と言明しました。(3/1琉球新報)
弁護士が嘘をついているとは考えずらく、非常に意味深い事柄です。

また、安慶田副知事は宮古島の出身で、昨年秋ごろ帰島されたおり、記者の質問に対し「落としどころを模索するのが私の仕事」と話しております。
私が「それなら辺野古移設を受け入れるのも条件次第か」と問いましたが、それには残念ながら答えてもらっていません。
(なお、前段は宮古毎日新聞の記事にもなりました。)

辺野古問題に関しては安慶田副知事がキーマンのようで、翁長知事の本心は安慶田氏が熟知しています。
そして安慶田氏の話ぶりから、菅官房長官とはケミストリーが合うようです。
こうした事実は、革新の間で今後どのように咀嚼されていくのか興味がつきません。


山路さん。いつも有益な情報をありがとうございます。私も、安慶田副知事と菅氏との隠密の話し合いで、そうとう決まると思っています。

今回、官邸は産経によれば「翁長氏にいい土産もたせてやれよ」といったそうですが、「今回は貸し一だ、次は返せよ」と言ったような気がします。
政治は案外貸し借りですから、ここで翁長氏のメンツを立てて一時の「勝利」を譲り、後に落とし所を安慶田副知事と探るのかもしれません。

私はもうひとつふたつ官邸は隠し玉を用意している気がします。それが日米地位協定交渉となってほしいものです。
もしこれが実現すれば、一気に妥結コースに入ります。
国の考えについて、大幅に加筆したのでよろしかったらお読み下さい。

いつも読み逃げをさせていただいてます。
碌な者ではありませんが、報道から読み取れない折は、お世話になることに勝手にしていますm(__)m
そんなわけで、過半は読ませていただいておりますが、コメントは初。

余談ですが、先日、新潟まで出向かせていただいて、とある新聞社の支局長に馳走になって参りました。
むろん、彼の書いた本を読ませていただいた上で、お逢いしたいと申し出。美味しい魚と美味しい日本酒をたのしく呑ませていただきました。
帰沖後に彼からのメール。
「農と島のありんくりん」は是非読んでくださいまし・・と。
読んでますよ~では失礼なので、ありがとうございますm(__)mとだけ。
彼の描きおろしと貴殿のBLOGとその他一冊が小生の沖縄バイブルです。
いつもありがとうございます。と一言御礼のつもりがダラダラと書いてしまいましたm(__)m

喜屋武さん。コメントありがとうございます。汗顔の至りです。
毎日ひーひーいいながら書いております。今後ともおつきあい下さい。

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