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2016年4月

日本は米国とともにアジアに安全保障の大屋根をかけています

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タームさんの昨日のコメントについて、考えてみましょう。

「フィリピンは駐留していた米空海軍が全撤退したから、中国がきた、という話では?
逆に米空海軍がいた時期は、中国は手を出せなかったということですよね。
その話と在沖海兵隊のグァム移転を同列とするのは、例として不適切では?ということです。
それとも管理人さんは、海兵隊9000人の移転が行われた場合、中国が手を出してくるとお考えでしょうか?」

タームさんの立論の致命的な見落としが、なんだかわかりますか? 

この方は日本がアジア地域の「安全保障インフラ」において果たしている役割や立場を、まったく理解していないことです。 

ですから、フィリピンの場合がこうだったから、日本はこうなるだろう、というふうに無意識に並列させてしまっています。 

ここから、こういう思考に入ります。

・フィリピンのケース・・・クラーク空軍基地・スービック海軍基地の撤収・陸軍は元々いない⇒中国の侵略開始
・沖縄のケース・・・海兵隊だけの撤収・海軍と空軍はそのまま駐屯
⇒中国はほんとうに来るの?

日本は米国によるアジアの安全保障インフラをフィリピンに対して「提供する立場」であって、それを「与えられている立場」のフィリピンと、同列に扱うこと自体がそもそも間違いです。

タームさんは、中国の脅威があること自体は認めています。しかし、そこから1対1の狭い見方に陥ります。 

<日本vs中国>、あるいは、<日米vs中国>という構図ですね。 

さらに「オール沖縄」の人たちはこれをさらにこれを切り縮めて、<本土政府vs沖縄>にまで縮小してしまいます。 

ちなみに「先住民族論」は、この本土を悪玉に仕立て上げるためのレトリック(修辞)にすぎません。

ここまで狭くすると、もう視野狭窄と言われても仕方がありません。 

アジア方向に視野を広げてみませんか。 

さきほど<アジアの安全保障インフラ>と書きました。そうです、アジア地域には安全保障のためのインフラストラクチャー、つまり下部構造や基盤が存在しています。 

アジア地域には、一見ヨーロッパのNATOのような集団安保体制はないと思われていますが、そういうわけではありません。 

ヨーロッパは共通の宗教、ほぼ同格の経済規模、そしてそれを基盤にした共通通貨(ユーロ)が支える共通経済圏(EU)を作っています。 

実際はもう少し複雑ですが、大ざっぱにいえば、EUのいわば安全保障部門がNATOです。 

では、アジア地域はどうでしょうか。一見なにもていようにに見えますが、実は違います。

米国は各国と個別に安保条約を結んでいます。このようなやり方を、自転車の車輪にたとえて<ハブ&スポーク>と呼びます。

<ハブ>が機軸となる覇権国家となる米国で、<スポーク>が各安全保障条約、そしてその先のドットがアジア各国です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-bb7e.html

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右下が<ハブ&スポーク>のモデルです。

ちなみに、左のドットが分散しているのが、個別的自衛権モデルです。

日本の左翼の皆さんが、これがいちばん「平和憲法」に則って平和だと言っているものですが、世界の認識では真逆でもっとも危険な思想です。

ドイツでは個別的自衛権は否定されています。なぜでしょうか。一国で勝手に戦争を起こしてしまえるからです。

他国からみれば「オレの国は平和憲法がある。専守防衛だ」なんて言っても、しょせん日本国内で通用するだけの話です。

日本がかつてのように戦争を勝手に一国だけで起こさないということについて、保証人というか、<担保>がないのです。

いや、「護憲・平和運動があるさ」と言う人もいるでしょうか、そういうドメスティック(国内的)なものは担保たりえません。

戦争が国際関係の軋轢から生じる以上、<担保>は国際的に信用されている国でなければなりません。

世界を見渡す限り、それは米国しかいないでしょう。

ちなみに、「いや国連があるさ」という人がひと頃は大量にいましたが、パンギムン氏が事務総長になってよくわかったことは、国連はただのお話し合いの、ないよりましていどの飾り物の組織にすぎないということです。

なにせ、世界平和の守護者であるべき常任理事国(P5)の中露が、率先して紛争を起こしまくっていても、それを誰も止められないのですから、話になりません。

さて、アジア地域においては、米国を機軸とした安全保障インフラが出来ています。

これは、米国がハブ(車軸)となって、地域全体に対して安全保障の基盤を提供し、各国はそれぞれこのハブとなる国との同盟によって自分の国の安全を支えているという仕組みです。

このようなハブになる責任を引き受けている国のことを、「覇権国家」(ヘゲモニック・ステート)と呼びます。 

語感が「帝国主義」か、「横暴な強国」のように聞こえますし、実際に反米主義の人たちはそういうニュアンスで使っています。

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実際に共産党志位委員長は、2012年5月12日の講演で、「日米安保をなくしたらどのような展望が開けるのか」と題して、こう述べています。
※http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/05/post-453.html

「まず強調したいのは、発効から60年を経て、この異常な対米従属の体制が、どの分野でも行き詰まりをいよいよ深刻なものとし、「こんなアメリカいいなりの国でいいのか」という声が、保守の人びとも含めて、広範な国民から噴き出しているということです。」

これが典型的な「対米従属論」です。日本は米国に従属して、米国のいいなりになっているんだ、というわけです。

共産党は安保を廃棄して、自衛隊も「解消」してしまって丸腰の平和国家になり、中国と対話で平和を維持しろ、と言っています。

そしてその結果、「日本は米軍基地の重圧から解放される」と説きます。

ここで志位委員長が力説しているのは、沖縄の米軍基地反対運動です。

「今年の5月3日の憲法記念日に行われた集会で、伊波洋一元宜野湾市長が、「日米安保を乗り越える時期に来ている」、「日米安保を見直すスタートの年にしよう」と訴えたことを、私は、たいへん印象深く聞きました。
 普天間基地、嘉手納基地という危険きわまりない米軍基地の重圧に苦しめられてきた自治体の首長をつとめてこられたお二人が、いまこそ安保の是非を考えなければいけないと提起していることは重いものがあると思います。
すみやかな基地撤去を求めながら、日米安保をなくせばすべての基地をなくすことができるという展望を、大いに示していこうではありませんか。」(同上)

つまり、「オール沖縄」の本音は、単に「辺野古の海を汚すな」という素朴なものではなく、そのものズバリ、辺野古に名を借りた安保廃棄・自衛隊解体が目的だということです。

一方、極右の人も一緒で、「米国のいいなりだから安保を廃棄しろ」、というところまでは共産党と一緒で、そこから一気に「自主防衛を強めろ」と叫んで核武装だと吹っ飛んでいきます。

困った人たちです。極左と極右の意見が奇妙な一致をする場合、それは100%危険きわまる道です。

それはさておき、米国が世界の「覇権国家」であるのは、機軸通貨ドルを維持するためです。

機軸通貨国=覇権国なのです。かつては、イギリスがその位置にいました。

米国は機軸通貨を持つことによって栄えています。米国の繁栄の源泉はドルなのです。これについては別稿でお話します。

話を戻します。

ではアジア地域の<ハブ&スポーク型安全保障モデル>において、日本はどのような役割を果たしているのでしょうか。

それは、この安全保障インフラの軍事的根拠地となっていることです。
※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-e371.html

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(横須賀基地で修理を受けるジョージワシントン。このような8万トンの巨大空母が接岸し、修理できるような軍港は世界で4ツしかなく、そのうち2ツが日本にある)

横須賀に米国は、世界最大の艦隊であり、ほぼ地球半分を守備範囲する第7艦隊の母港を構えています。

そして沖縄には、アジア有事に直ちに対応できる機動力を持った、海兵隊を配置しているのはご承知のとおりです。

日本はこのアジアの安全保障インフラの基層にあたる最重要国家です。

日本は、米軍のプラットフォームを提供することで、フィリピンなどの東南アジア諸国、朝鮮半島、さらにはオージーなどのオセアニアに至るまでの大きな安全保障の大屋根をかけている国で、一方、フィリピンは屋根をかけてもらっている国なのです。

このような国を、「パワープロジェクション・プラットフォーム」(戦力投射根拠地)と呼びます。

世界でも日本しかそれに当たる国はありません。

仮にアジアの安全保障インフラを大きなドームにたとえれば、そのドームの大黒柱が横須賀に立っていて、沖縄はその重要な支柱のひとつです。

アジア各国はその大屋根の下で、脅威から身を守っているのです。

ですから、日米安保をなくせと叫ぶ人たちは、アジアの安全保障なんて他人ごとだからどうでもいいと言っていることに等しいと、私は思っています。

共産党は日本の社会主義革命を目指す極左ですからそれでかまわないでしょうが、安直に反基地を唱える人は、ほんとうにそれでいいのでしょうか。

あ、そうそう、「極左」と呼ぶと共産党は怒るようですが、常々左翼業界の中では、「自分より左はいない」、「自分以外はニセ左翼だ」と公言しているのですからやっぱり極左と呼ぶしかないでしょうね。

それはさておき、米軍は、空軍、海軍、海兵隊(陸軍)の統合作戦を前提にして作られています。

平時には別々に行動していても、いったん有事となると統合して立体的作戦を展開します。

ですから、このひとつだけを撤去してしまうと、有事の際に機能不全になりかねません。

たとえば、グアムにまで海兵隊を全部引き上げた場合、有事にアジアに展開するまでに時間単位ではなく、日単位かかってしまい、本隊が米本土から来援するまでにはさらに1週間程度を要してしまいます。

タームさんは「沖縄にも陸軍がいる」といっていましたが、あれはグリーンベレーの分遣隊にすぎず、大隊規模(500~600人)しかいません。抑止力の勘定には入れないようにしてください。

さて、ここまで書くと、フィリピンと日本のビヘイビア(比重)に大きな格差があるのがお分かりいただけると思います。

日本は米国にとって、安全保障上の心臓部(最重要部)ですが、フィリピンは米軍にとって:せいぜい守らねばならない出先のひとつでしかありません。 

タームさんは海兵隊のフィリピン配備にも言及されていましたが、オージーも含めて新たな拠点を作って、その中でローテーションするということだけの話で、あくまでもそれは沖縄がベースにあっての話です。

ところで、フィリピン撤収当時の状況ですが、当時、フィリピンには米陸軍はいませんでしたが、強力な空軍基地と海軍基地がありました。

この二つの基地によって、南シナ海の「航海の自由」が守られてきました。 

しかし、ベトナム戦争後の傷が癒えない米国にとって、たかられるばかりで「守られている」という被保護者意識がなく勝手放題な反米的要求をつきつけたために、米国がキレたのです。 

立ち退き要求を突きつけられ、しかも火山の噴火によって施設に打撃を食った米国にとって、そこまでしてフィリピンにいなければならない意味がなかったのです。

今になってフィリピンは大反省しています。

「だって、日本があるじゃないか」、それが当時の米国の気分です。

このように、日本は米国にとってバイタルパート(最重要防御部分)です。

米軍が日本を去る時とは、即ち米国が世界の警官の職務を完全に放棄する時なのです。

そんなバイタルパートの重要な一部の海兵隊を、米国が簡単に撤収するわけはないし、また去らしてはならないのではないかと私は思います。

かつてグアム一部撤収案が日米合意されたとき、中国は最重要拠点からの米国の一部撤収がどのていどのものなのか「瀬踏み」しようとしました。

そして2010年に、宮古海峡に大艦隊を送り込み、グアムの手前まで「進撃」してみせるパーフォーマンスをしてみたわけです。

それに対する、米国の答えが、10年の一部撤退の延期です。現在もなお、海兵隊が沖縄にいる意味は強まりこそすれ、弱まる気配はありません。

私も徐々に自衛隊に代替すべきだとはおもいますが、海兵隊の駐屯する意味がアジア全域の有事即応である以上、専守防衛の枠からでられない自衛隊が肩代わりするには限界があるのです。

ああ、辺野古移転までたどり着けなかった(泣く)。

■改題して、加筆しました(午前10時45分)

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在沖海兵隊のグアム移動は本部だけです

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国連の「先住民勧告」に対して書こうと思ったのですが、HNタームさんとの討論を続けることを優先します。 

というのは、こういう敵対的でないディスカッションは、いいものだからです。 

さて、タームさんの2回目のコメント要旨は、このようなものです。

①在沖海兵隊グァム移転によるグァムの施設整備は着々と進んでおり、情勢次第ではない。
②海兵隊の話が、途中から米軍全体の話にすり替わっている。
③「米軍基地はなくてはならない」と「辺野古移設しなければならない」も、イコールではない。

なるほど。この方は大変に勉強家で、よく調べておられます。引用ソースもよくある地元紙の引写しではなく、防衛局という大元なのも、この方の柔軟な思考がわかります。 

さてタームさんは、残念ながらいくつか勘違いをなさっています。 

まず、2006年合意でグアムに移転する予定だった部隊は、キャンプバトラーの「第1海兵航空団司令部」と、管制・通信等を任務とする司令部要素(MAOG-18)が主です. 

かんじんの通称「沖縄海兵隊」、本名「第3海兵遠征軍」の地上戦部隊の移駐計画ではありません。
※http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Units/Maw.html

Photo在日海兵隊サイトより引用「第一海兵航空団は、第三海兵遠征軍の航空戦闘部隊です」

タームさんは、ひょっとして「在沖海兵隊の全部が移動する計画」だと思ってはいませんか。
 

このグアム移転計画は、正確には、「一部移転計画」にすぎません。米国は、航空部隊の本部などの一部だけはグアムの線に下げるといっているだけです。 

そしてそれすらも前回書いたように、2010年には「2020年代前半」まで延期されました。 

また同様の移動部隊に関する勘違いは、宜野湾市長だった頃の伊波洋一氏が吹聴して、当時の民主党政権内部までに浸透した「普天間ヘリ部隊のグアム撤収」論などにも見られます。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-cfc3-1.html 

伊波氏は、グアムに米軍が航空機の施設を増設したことを、「普天間のヘリ部隊が移駐するための施設だ」と言い出しました。 

しかもそれを宜野湾市の公式文書でやったために、その影響は広範に及びました。
※「普天間基地のグァム移転の可能性について」_平成21年11月26日 http://www.city.ginowan.okinawa.jp/pageRedirect.php?url=/2556/2581/2582/37840/37844.html 

伊波さんが米国の「環境影響評価書ドラフト」などという、もっともらしい横文字文献を引っ張りだして「米軍資料を読み解いた」な~んてやってしまったので、岩上安身氏のようなデマッターのみならず、民主党議員まで引っかかりました。 

民主党議員の一部やミズホ女史などは、「日米密約を暴け!」と力んだのですが、幸いにも当時の岡田外務大臣や北沢防衛相が引っかからなかったのは幸いでした。 

この伊波氏の電波は、グアム空軍基地が大規模合同演習を年中やる飛行場のために、飛来する大量の空軍機や海軍機などを収容するための施設を、普天間移駐のための施設に勘違いした妄想でした。 

また、有事の際に、どれだけの航空機をグアム基地で収容できるかを調べたことを、「すわ、普天間のへり部隊の移駐のための用意だ」と早とちりしたのです。 

先日も書きましたが、2010年前後の東アジア情勢は、海兵隊をグアムにまで下げるようなのどかなものではありませんでした。 

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上図は、新華社が公表した2010年11月28日に宮古海峡を通過した、中国の大艦隊の陣容です。 

中国海軍はこの時、潜水艦2隻を含む合計10隻という数の艦隊を、宮古島海峡を通過させ、フィリピン海に入れました。 

下のGoogle Earthを見るとお分かりになるでしょうが、宮古海峡から出れば、おそらく米中戦争になった場合の想定戦場とされるだろう、フィリピン海が広がっています。 

Photo_2Google Earth

もちろん中国は「戦争するぞ」と言っているわけではありませんが、中国はこう言いたかったのです。
 

「アメ公、なめんなよ。いつでも、オレたちはお前らの大拠点・グアムを攻撃してぶっ潰せるだけのネイビーパワーがあるんだぜ」 

米国がこのグアム基地の「環境評価書」を出したのが、この直後でした。 

米国はグアムに有事に飛来するたくさんの航空機を収容する施設を作ることで、その挑発の答えとしました。

国と国は、軍隊を大規模に演習という名目で動かしたり、あるいはその準備をすることでボディランゲージをし合っています。 

国際関係論では、これを「外交シグナル」と言っています。

つい先日までやっていた米韓軍事演習などは、まさにこの外交的シグナルそのものです。

米国は北朝鮮に、「正恩、これ以上調子に乗ると、お前を徹底的にやっつけてやるからな」、といういうシグナル(信号)を北朝鮮に送っているわけです。

グアムの航空機施設の増築計画はこのような有事にグアムに集結する空軍、海軍、海兵隊の航空機、へリを収容するためのものでした。

また同時期に発表された米軍「沖縄からグアムおよび北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外環境影響評価書ドラフト」には、有事においてのグアムから台湾まで移動時間が掲載されています。 

これは、米国が台湾有事に介入する意志を持っており、その拠点に沖縄の米軍基地を前提にして考えていることを表しています。

米軍の有事来援の航空機は、沖縄においては実に5倍近くに膨れ上がるのです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-f0e0-1.html

・普天間・・・平時71機 戦時最大230機
・嘉手納・・・平時108~113機 戦時最大390機 

ですから、中国がこのまま軍事膨張路線を突っ走り、かつ、米国が評価不能のバカ・トランプに乗っ取られない限り、沖縄の米軍基地は維持され続けることになります。

ですから、こういう全体状況と無関係に有事即応部隊である海兵隊が、今の時点でグアムまで後退することはありえません。

防衛局の行程表に2020年代前半と書いてあっても、「今から4、5年先に状況が好転すればいいなァ。頼むよ」という願いが込められている期待値なのです。

世界的な米軍再編成計画も、一部が始まった段階で、中国の脅威が現実化したことで、再考が迫られたのです。

一般の役所の計画と違って、米軍は常に世界情勢と対応しながら計画を作っては直し、直してはまた練るという作業を繰り返しています。

ですから、一定の時期で輪切りにして、「ほらこのように米軍は政変計画どおりグアムにいくぞ」と言っても、それかそのまま実現すると限らないのです。

それに繰り返しますが、仮にグアムに海兵隊が移動できたとしても、航空部隊の本部だけです。

私が、「形だけ」「情勢次第」と言ったのはその意味です。米軍の計画は水物なんですよ。

長くなったので、早足でいきますが、「米軍と海兵隊を混同している」ということですが、沖縄の基地問題とは海兵隊問題に集約されるのです。

そりゃ、嘉手納もありますよ。しかし空軍と海兵隊は、原則として合同して作戦を行います。

海兵隊だけがオスプレイに乗って裸で出撃することは、小規模の特殊作戦でもない限りほぼ絶対にありえません。

空軍、あるいは海軍航空部隊が、航空優勢を確保し、AWACS(空中警戒管制機)が統括する中を、給油機と電子妨害機が随伴し、対空ミサイル陣地をひとつひとつ破壊し、攻撃機部隊が陣地を爆撃して地ならしした後に、海兵隊が出て行くのです。

この種々の航空機の組み合わせグループのことを、「ストライク・パッケージ」と呼びます。

その広い意味では、普天間、嘉手納、シュワブ・ハンセンは一体のものとして計画されているといっていいのです。 

したがって、「沖縄に米軍がいる」という意味は、このどれかが「いる」ということではなく、この全部がパッケージで「いる」ということなのです。

「辺野古でなければならない理由」については、長くなりましたので、別稿にします。

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「半分軍隊」の自衛隊の現状を直視して下さい

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それではもうひとつのタームさんの疑問である、「なぜ辺野古を作る必要があるか。自衛隊に任せられないのか」について考えていきましょう。 

コメント欄にいい資料を紹介頂きました。沖縄防衛局の資料です。※http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/saihen/iten_guam/pdf/gaiyo_160330.pdf 

一方的に注入されるマスメディア情報ではなく、一般市民がお互いに知識や知見を持ち寄って、少しずつし新しい考え方を作るわけです。 

ほんとうにSNSは集合知の宝庫だなと思います。 

沖縄防衛局は、なんか自衛隊を指揮する作戦でも練っていそうなネーミングですが、もちろんそんな権限はありません。昔の「那覇防衛施設局」のことです。 

2007年に防衛庁が防衛省に昇格した際に廃止されて、北から南まで9ツの防衛局になりました。
※http://www.mod.go.jp/rdb/ 

この沖縄防衛局の資料を読むと、在沖米軍の再編計画がでてきます。 

「現在の(移転)計画
① 2012年(平成24年)4月「2+2」共同発表における再編計画の調整
○ 「グアム移転」及び「嘉手納以南の土地の返還」を「普天間飛行場の移設」から切り離し
○ アジア太平洋地域の安全保障環境の変化を受けて、海兵隊の部隊構成・配置を見直し。
・ 海兵空地任務部隊(MAGTF)(司令部+航空・陸上・支援部隊)を 沖縄、グアム、ハワイに分散配置、豪州へローテーション展開
・ 要員約9,000名(司令部+実動部隊)とその家族が沖縄から日本国外に移転。 (沖縄から約4,000名がグアムに移転)

② 2013年(平成25年)10月「2+2」共同発表
沖縄からグアムへの移転は、2020年代の前半に開始
○ 「グアム協定改正議定書」への署名(2014年(平成26年)5月発効)」

 Photohttp://www.nippon.com/ja/features/h00008 反基地運動のサイトから頂戴しました。ありがとうございます。

ちょっと脱線しますが、「嘉手納飛行場以南の返還」が、普天間問題と切り離されたことは喜ばしいことです。 

おそらく2020年代中盤まで、普天間基地の完全移転は終わらないだろうからです。 

ですから、「普天間基地がある限り、嘉手納以南は動かない」と硬直してしまうと中南部の米軍基地群の返還が止まってしまいます。 

いうまでもありませんが、翁長さんたち「オール沖縄」が勝利すれば、普天間基地はそのまま半永久的に固定化するわけですが、その場合も「以南」の基地の返還は進むということです。 

ちなみに、沖縄米軍基地の中で最大面積の北部訓練場の返還を遅らせているのは、高江ヘリパッド反対運動の皆さんの有効な阻止闘争のおかげです。 

ここも共産党系団体ですが、ほんとにこうしてみると反基地運動の皆さんって、実は「基地返還反対運動」、あるいは「基地永久固定化推進運動」のことじゃないかと思えてしまいますね。 ひょっとして米軍からお金もらっているのかな(悪い冗談です)。

グアム移転計画も(形だけは)生きているようで、2020年代頃にはなどと書いています。まぁ、これも情勢次第でしょうな。

それはさておき、本題に戻します。「なぜ政府は辺野古にこだわるのか」についてです。

ひとことで言えば、ここで日本政府がハト氏のような国家間の違約行為をもう一回やったら、日米同盟そのものが崩れるからです。

その場合、なんと米国が言いそうか想像がつきます。

「普天間移転なんぞ、ワシらが言い出したことやないで、あんたたちが言い出したことやで。そいでできひんなんて、アホか。国内の基地移転ひとつ出来へんで、それでも政府か」(←なぜか大阪弁)。

つまり、日本政府の一国の独立国としてのガバナンス(統治)能力まで疑われてしまうからです。

国家間関係は、昨日の「ジャイアン・チャイナ」ではありませんが、人間関係に似た部分があります。

「国家」にも擬似的人格があり、感情もあるのです。

しかも二国間関係のグレードで、もっとも高いレベルは同盟関係です。ただの友好関係ではありません。

お互いに安全保障という、生きるか死ぬかという部分を預け合うのですからですから当然です。

しかも最上グレードの「同盟」のうちでも、米国が世界最大規模の艦隊の母港を構えているのが、日本です。

米国にとってなにも「衝撃的なほど無知」(米紙の評)なトランプのように、日本に米国本土を守って欲しいとは思わないでしょうが、覇権国でいる限り、日米同盟は不可欠なのです。

こういう相互的にきわめて強い結びつきの同盟のことを、外交用語で「機軸同盟」と呼びます。

このようなシビアな同盟関係において、いったん疑念をもたれた場合、ハト氏の所業で明らかなように、日米二国間関係は速やかに冷え込みます。

ハトの後釜のかつての反米活動家であったカン氏が、いかに米国のご機嫌とりに奔走したのか、涙ぐましいほどです。

共産党と国政レベルで手を組んではいけないというのは、共産党は日米安保を全否定している政党だからです。

仮に「いや、認めている」などと言っても、それは政治的マヌーバ(策略)でにすぎません。

外交なんて気取っていても、しょせん人間の集まりがやることです。いつどうなるかわかりません。

ですから,、仮に民進党が共産党と手を組んで政権を取った場合、米国は日本をまったく信用しなくなるでしょう。

その時、相手側のボスにトランプがなりでもして、こんなことを言い出したらドエライことになります。

「どうもジャップはカネ出し渋っているようだ。だからグレートアメリカは貧しい債務国に成り下がったのだ。ボーシット!金ださんのだったら、ソッコーで、安保廃棄して出ていくかんな」(←ほんとにホントに言いそうでこわい)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-4ded.html

衝撃的なことを言うようですが、日本は自主防衛力がありません。

実にバランスの悪い「軍隊のようなもの」なのです。

海上自衛隊は、見た目はスゴイですが、実は米第7艦隊の一部でしかありません。

対潜水艦能力と、掃海能力は世界有数ですが、あくまでもそれだけの単品能力です。

海自は創設当初から、米海軍とワンセットで完全に機能するように作られているのですから、しかたありません。

陸上自衛隊は、専守防衛のドクトリン(教義)に縛られているために、戦力を遠くに運ぶ投入能力(パワープロジェクション)が与えられませんでした。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-42bf.html

社会党と共産党が、「そないなもん自衛隊に持たせると、また中国侵略する悪さするに違いないでぇ」と縛ったからです。

ですから、沖縄の離島防衛のように、波頭を超えて陸自を送る能力はほぼゼロです。

今、鍛練している真っ最中ですが長崎県大村の水陸機動団が、現実に単独で沖縄防衛が可能となるまで、あと短くて10年欲しいところです。

航空自衛隊は、那覇にやっと2個飛行隊が増強されましたが、これも首都東京の守りからイーグルを引っこ抜いてなんとかしたのです。

首都はファントムという中ブルで守るハメになりました。どこの国に首都防空を中ブル戦闘機に任せる国があるんだぁ、と本土人としては思いますね。

このように自衛隊は、法的にも実力の上でも情けない話ですが、「半軍隊」のままでいます。

したがって、日本は現状において、ほんとうに守ってくれるかどうかは別にして、沖縄に米軍に「居てもらわねば困る」のです。

ご質問に答えられたかどうかわかりませんが、このような日本の安全保障の現状をクールに突き放して見たほうかいいようです。

かく言う私も、「米海兵隊の代わりに自衛隊だけで沖縄を守れたら」と書いたことがありますが、それはあくまでもドリームだという冷厳な事実は認めねばならないのです。

■なんとなく同じ名前なんで応援してしまう沖縄吉本の「ありんくりん クリス」のツイッターはこちらからhttps://mobile.twitter.com/chrisly73228915

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HNタームさんにお答えして なぜ在沖海兵隊のグアム一部撤収は延期されたのか?

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HNタームさんから、コメントを頂戴しました。
 

「普天間基地、海兵隊について。
米軍再編計画で、在沖海兵隊は大幅にグアム移転が決まっている、移転の予算も日米で組まれている、と防衛省は発表しています。
海兵隊は日本国防のためではない、というのはここでも管理人さんがおっしゃっています。
そして中国の脅威に対し、沖縄は中国に近すぎる、米軍海兵隊歩兵部隊はグァム移転したほうが戦略的にもよろしいと米国が判断した。
…じゃ移転する海兵隊の基地を、わざわざ辺野古につくるのはなぜ?と思ってしまいます。
尖閣離島に対する中国の脅威に対しては、自衛隊の対応だと思っています。
私は未熟者です、間違ったことを言っているのかもしれません。でも基地周辺で生活している私にとって子供にとって、非常に大事な問題なのです。」

そうですか。基地近隣にお住みなんですね。ご心配でしょう。

私も、ベトナム戦争真っ盛りの厚木基地の真横で育ちました。

先生の声がかき消されて、窓がビリビリと揺れる小学校が、わが母校でした。 

フェンスの向こうはまるで「外国」で、サングラスをかけたMPに守られた広い芝生の上で遊ぶ金髪の子供たち、その外にはゴミゴミした平屋が密集するわが街。

これが私の育った風景でした。 

見かねた母親は爆音防止同盟(共産党系)に入って、いつしかわが家は赤旗を取らされることになってしまったようで、中学校から高校にかけて、私は朝日と赤旗ですくすくと左翼少年に育つことになっていきます(←お袋、恨むぞ)。 

もう35年くらい前になるかな、初めて沖縄を訪れた時に、強い既視感があったのはそのためなのでしょうね。

                        ~~~~

さて、ご質問です。 たいへんに良い質問をありがとうございます。

下に整理してみましたが、いずれも本質的な問題で、こういうことを考えることで、移転問題はもう少し建設的方向にいくのではないかと思います。

タームさんのご意見は三つです。

①米軍のグアム移転という米国の判断について
②辺野古に新たな施設をわざわざ作る意味
③中国の脅威に対応するのは自衛隊ではないか

順番にいきましょう。

まず最初の、「米軍再編計画で、在沖海兵隊は大幅にグアム移転が決まっていて、移転の予算も日米で組まれている」、ということについてです。 

おっしゃるとおり、10年前の2006年にそのような日米合意はありました。合意は以下です。
編実施のための日米のロードマップ : 沖縄防衛局 - 防衛省・自衛隊http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/08boeikyoku/gyomu/02rodo.html

①普天間基地代替施設建設
②在沖海兵隊の8千名、家族9千名のグアム移転
③嘉手納基地以南の相当模の返還・縮小

④嘉手納基地の訓練分散
⑤施設の日米共同使用

もうひとつ、日米合意が審議された2006年第164国会についての外交防衛委員会調査室の資料があります。
自衛隊イラク派遣と在日米軍再編問題をめぐる国会論議(Adobe PDF) 

これを読むと、当時の日米間で何が話されたのかが分かります。 

当時、米国から世界的米軍再編の中で、グアムへの海兵隊の本部と後方支援、そしてその家族を移転したいという申し出がありました。

ただし、本部とロジ(兵站)だけですが、さぞかし当時の額賀防衛庁長官は驚いただろうと思います。

そもそも、当時、沖縄から8千名の事務方といっても海兵隊が撤収するという「意味」です。

沖縄の防衛は、非常に手薄です。今回ようやく与那国に警備隊が配置されましたが、延々と本島までガラ空きでした。

本島にもわずかな陸自しかおらず、空自が主力です。

ですから、沖縄は米軍が「いる」という存在感(プレゼンス)でやっと守っているというのが、本当のところです。

この原因は、復帰後の自衛隊の移駐を「日本軍上陸阻止」とやられたトラウマでしょうね。

沖縄の人はそう思わないようですが、本土は沖縄に力一杯腰が引けている部分があるのですよ。

それはさておき、もうひとつ額賀さんを驚かせたのは、米国が撤収費用を要求したことです。なんと3兆円(!)。

これは日本の防衛予算総額に近い額ですので、当然、大きな議論になっていました。 

この辺の日本側の動揺が、後述する移転延期に際して、「日本側が土下座して米軍にいてもらっているんだろう」という印象を沖縄側に植えつけたようです。

タームさんは、「中国の脅威に対し、沖縄は中国に近すぎる、米軍海兵隊歩兵部隊はグァム移転したほうが戦略的にもよろしいと米国が判断した」ということを書いています。

これ自体は沖縄県内の定説のようですが、米国の有力国際関係学者・ジョセフ・ナイの言っていたことを、地元紙が切り貼りした結果生まれた誤解です。

ナイについてはかつて記事にしたことがありますので、よろしかったらお読みください。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-22d5.html

確かにある一時期まで、先に見たように日米合意どおり海兵隊のグアムへの一部移転と、さらにその先も段階的撤収をする気であったことは事実です。

しかし、グアム撤収案は米国自身によって2010年7月に変更されます。

米国は2010年、06年合意を変更する旨を日本政府に通告したのです。 

「日米両政府が米軍再編実施に向けて2006年5月に合意した「再編実施のための日米ロードマップ(行程表)」のうち、沖縄に駐留する米海兵隊約8000人のグアム移転について、米側が移転部隊の構成を見直す、と日本政府に伝えてきたことが1日、わかった。複数の日米関係筋が明らかにした。」
(読売新聞2010年7月)

「不透明さを増している朝鮮半島情勢や中国の動向への即応性」が低くなり、「司令部機能すべてをグアムに移転すると、運用に支障が生じる恐れがあるとの見方が米政府内で強まった」(読売同上)

では、それはなぜでしょうか?なぜ日米合意が変更されたのでしょうか?

これは日米関係だけ見ていてはわかりません。ましてや本土と沖縄だけ見ていても分かりません。

沖縄の「民意」が時として誤るのは、「本土vs沖縄」という狭い視点に立ってしまうからです。

さてそこで、もうひとりの重要な登場人物の姿を見ねばなりません。

それが中国です。

移転できなかった最大の理由は、日米合意した2006年からわずか数年でアジアの緊張が急激に悪化してしまったのです。

それは、中国軍の冷戦後世界最大規模の軍事膨張かのためです。中国は核兵器の増産と、海軍の傍若無人な海洋進出を開始しました。 

2008年に米国防総省が公表した、「中国の軍事力」年次報告書はこう述べています。
※http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/70/index.html

「▽中国が遠隔地で軍事パワーを保持し、行使する能力はなお限られてはいるが、従来からの米国の軍事的優位をやがては崩し、米国と軍事的に競合する世界でも最大の潜在能力を有している
▽中国の当面の主眼は台湾海峡での米国の介入をも視野に入れた有事への準備だが、台湾を越えての資源や領土紛争への対応のために使う軍事能力をも発展させている。
中国の軍事の変身の速度と規模は東アジアの軍事バランスを変えており、中国の戦略的軍事能力の向上はアジア・太平洋を越える意味あいを持つ。」

この報告書で中国が、「中国の軍事の変身の速度と規模は東アジアの軍事バランスを変えており、中国の戦略的軍事能力の向上はアジア・太平洋を越える意味あいを持つ」と述べている部分にご注意ください。

米国は中国が、「アジア・太平洋を超える」世界規模の軍事覇権国になる意志を持ったと言っています。

中国は、私たち日本人が聞くとマンガ的なのですが、太平洋二分割を非公式に米国に提案しています。

その場合、中国海軍と空軍の「太平洋の扉」こそが、下図で太い黄色の矢印で示された宮古海峡なのです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/knori.html

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南シナ海での人工島という領土拡張は有名ですが、実はその影で進められているのが、中国軍による東シナ海から太平洋に抜けるルート作りです。

中国艦隊の主な動向が、起きた年を見てください。

2006年に米軍がグアムに一部撤収計画を合意するその翌々年の2008年から、初めは米軍の顔をうかがようにソロソロと、そしてやがて白昼堂々と大艦隊を沖縄県宮古海峡に送り込むようになります。

中国のたび重なる挑発の結果、起きた象徴的事件が2010年9月の尖閣諸島漁船衝突事件でした。
尖閣諸島中国漁船衝突事件 - Wikipedia

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そして、2012年9月に野田政権が国有化に踏み切り、後は堰を切ったような中国公船の領海侵犯が開始されます。

今なお、それは止むことなく執拗に続いていることは、ご承知のとおりです。

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2012年11月には、この宮古海峡を通過して、中国の大艦隊がグアム方向に進出訓練しようとしたことが目撃されています。

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中国空軍も爆撃機を再三に渡って宮古海峡を通過させています。目的は同じくグアム米軍基地攻撃訓練だと見られています。

よく誤解されていますが、アジアの米軍は、沖縄を含む日本にしか駐留していません。

朝鮮半島には駐留していても、これは北朝鮮に備えることに特化していますので、中国の軍事拡大に対応できる部隊は、在日米軍しか存在しません。

こういう状況で在沖米軍を削減したら、中国はどう考えるでしょうか?

つけ込まれます。

中国という国は、ある意味大変に分かりやすい国で、強く押すと引っ込み、一歩退くと一歩前に出てくる習性をもっています。

在沖米軍が1万人近く沖縄からいなくなれば、中国という国は、「おやアメちゃん、もうオレを止める気なくしたな。これはいいや。千載一遇のチャンスだ!」と考えるでしょう。

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おいおい、こんなに国際関係って、ジャイアンとのび太の関係みたいなのかと思いますが、まぁそうなのだから困ったものです。

実際に、1972年に米軍がベトナムから撤収するやいなや、1974年には中国は西沙諸島に軍隊を入れて、ベトナム領の島を強奪します。
西沙諸島の戦い - Wikipedia

1991年に、スービック海軍基地とクラーク空軍基地が返還され、米軍はフィリピンから撤退しました。

するとわずか4年後の1995年、フィリピンが領有権を主張していたミスチーフ礁に中国は建造物を構築し始めます。

そして今や、ミサイルを配備し、軍用滑走路を建設し、軍港まで作るありさまです。

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中国が埋め立てを進める南沙諸島・ジョンソン南礁の写真。左上から時計回りに2012年3月、13年2月、14年2月、同3月撮影(フィリピン外務省提供) 時事より引用

中国には、強烈な縄張り意識のようなものがあり、中国は目の上のたんこぶである米軍がいなくなるやいなや、軍隊を進出させて自国領土を拡張しようとするのです。

というわけで、このような状況が進む以上、おいそれと簡単に米軍は、沖縄から撤退できなくなってしまったというわけです。

もうひとつの辺野古移転問題との関わりについては、長くなりましたので、次回に譲ります。

■大幅に加筆修正しました。いつもごめんね。(午後5時)

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鈴木宗男さんのことなど

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今日は気楽な雑談モードでいきます。 

山路さん。コメントありがとう。あいからわず長くて、第2紙面みたいですが、あなただけは特例です。 

記事とかみ合っているし、第一、内容がありますもんね。 

さて、あなたが指摘しているように、たしかに今回の北海道5区補選で、もっとも政治的利益を得たのは鈴木宗男さんだろうというのは衆目の一致するところですね。

私は、鈴木宗男さんと新党大地には、かなり前から関心がありました。

日本において保守2党体制が不可能なのは、今回の民進のていたらくでよくわかったはずです。

保守第2党を作ろうとすると、差別化を図るためにどうしても抵抗政党化してしまうようです。

すると限りなく、かつての55年体制下の社会党・共産党と同じモードになってしまいます。

つまらないですねぇ。

日本で可能な政治体制は、おそらく保守党とローカル保守政党との連合です。

そのモデルケースは、日本では大阪維新と新党大地のふたつしか存在しません。 

沖縄にも社会大衆党というローカル・パーティがありますが、あれはただの共産党別館です。

Photohttp://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010...

新党大地は、2011年衆院選において、共産党の26万票を上回る28万票を集めて、北海道の選挙で新党大地を無視して選挙はできないという存在感を見せました。 

まぁふつーなら、ここで新党大地を売り出すところですが、なぜかその後の動静は妙に静かなものでした。

あの佐藤優氏と食らった政治裁判で、公民権停止処分を受けていたからでしょう。 

すると、突然、民主に娘の貴子さんを入れてしまいました。ホーと思いましたね。民主の軍門に、娘の人質を出したのかと思ったからです。

ところが、もちろん北海道の真田パパである宗男さんはそんな単純なタマではありませんでした。

宗男さんは北海道特産の男爵イモみたいな顔ですから、草刈さんとは顔はまるで違いますが、キャラ的には似た部分がそうとうにあるんです。

いわゆる「バルカン政治家」という奴です。いつもの癖で、押さえておきます。
バルカン政治家 - Wikipedia

「その時々の状況変化に応じ、敵味方を 目まぐるしく変えていく政治家、もしくは他国との関係を国際関係の変化に応じて 目まぐるしく敵対・同盟に変化させる外交政策を推し進めようと図る傾向の強い政治家の事」

こういうタイプの政治家は口が回って、抜け目がなく、頭の回転が速く、しかしどこか愛嬌があって憎めないキャラでなければなりません。

そして裏切りの常習犯でありながら、芯になる部分にはきわめつけにガンコでなければなりません。

真田パパが、裏切りの常習犯であっても、自分の小県の土地と民を守るということにおいては、ストイックなまでに忠実なようにです。

そうでなければ、裏切り者にまとわりつく暗いイメージから自由になれません。実は、沖縄には「宗男になりそこなった男」がひとりいます。

いうまでもありませんが、沖縄県知事の翁長さんです。

彼は、体質的には宗男さんに似たバルカン政治家的部分があります。

しかし、彼が決定的に宗男さんになれないのは、安全保障問題という保守の原理原則に属するテーマで、共産党と手を組んでしまったことです。

これは保守政治家としての自殺行為です。

その結果、翁長氏はすべての腹芸を共産党によって禁じられ、共産党を利用するつもりが、今やミイラ取りがミイラになってしまっています。

これではひからびたタヌキのミイラです。

まぁ、こういう宗男さんのようなバルカン・タヌキは、好き嫌いが分かれるキャラでしょうが、私は自分にない素質なので、けっこう好きなんです。

ですから、翁長知事の誕生には徹底して批判の論陣を張りましたが、どこかで彼がきわめつけの政治的曲芸をやって、うまく移転問題を解決するんじゃないか、という淡い期待もあったのです。

しかし、「いかなる新基地も許さない」なんて言うに至っては、もはや稲嶺名護市長といささかも変わりません。

まぁ、残されたワンチャンスは「和解」ですが、いかがなりますか。

それはさておき、一般的には、娘さんは宗男さんの後継者ですから、新党大地の看板娘に育てるのが当然ですが、なんと彼女は2014年に民主に入ってしまいます。

既に野田さんがボロボロになって、民主党政権が潰れた後の時期です。

まぁ、パパが動けない以上、小選挙区で勝てる道理がないので、緊急避難で民主の比例救命ボートに乗ったということでしょうか。

しかし、ただそれだけではない気がしてしまうのが、この当代一の食えないタヌキのムスメだからでしょうね。

そして、ことしの貴子さんのやらかしたのが離党事件です。

Maxresdefaulthttps://www.youtube.com/watch?v=7Y5bBG8TvVY

この貴子さんの離党と、5区の選挙協力は、明らかに来年のパパの公民権停止をにらんだ布石です。 

朝日新聞の報道(2016年1月30日)です。朝日の行間にイライラ感が見えます。

自民党民主党の鈴木貴子衆院議員(比例北海道)を自民に引き抜き、次の衆院選で候補として擁立することを検討している。鈴木氏の父で、地域政党新党大地」の鈴木宗男代表との連携を強める狙いがある。自民幹部と北海道連幹部らが今週にも協議する。
 宗男氏は
安倍晋三首相と昨年末に会談。自民関係者によると、宗男氏は「貴子を民主から離党させる用意はできている」と伝え、首相は「自民で育てたい」と応じたという。
 こうした動きを警戒する民主は30日の党大会で、貴子氏を大会運営の議長に指名。関係者は「自民に行かせないためだ」と語る。
 
新党大地は4月の衆院北海道5区補選で、自民公認候補の推薦を決めている。」

宗男さんは、「娘はじゃじゃ馬で、オレの言うことなんか聞かない」とのたまうていますが、そんなことをまともに信じる政界関係者はいないでしょう。 

やはり、宗男さんは民主から自民へと同盟関係を乗り換えたのです。

正確に言えば、自民とというより安倍さん個人と政治的ケミストリー(相性)が合ったのでしょう。

ちなみに、宗男さんは、岡田さんとはケミストリー最悪でしょうね。ああいう融通の効かないくせに、共産党に揺れるような原理・原則が緩い男は大嫌いなはずです。

一方安倍さんは、プーチンと強力なパイプを持っています。おそらくメルケルより、敵対関係が日露の間に存在しないだけ、強いはずです。

このG7唯一のプーチンの理解者である安倍氏と、なんらかの利害関係を共有できると、宗男さんは思ったのでしょうね。

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もっともありえるのは、プーチンが売りたがっているサハリンの天然ガスでしょう。ロシアは日本と直接にパイプラインを通したがっています。

日本にとっても、かつてのドイツのように過半をロシアに依存するのは危険であっても、20%ていどをロシアから直接にパイプラインで呼び込むことは、悪くない話です。

しかも、言い方は悪いですが、原油安で悶え苦しんでいるロシアの足元を買い叩けます。

これの詳細な計画は既に経済産業省は作っていますが、ロシア孤立化路線を取るオバマの反対で止まっています。 

なんかいっそう、真田のオヤジ殿のようですなぁ。

北海道の地と民を守るためには、裏切りすらためらわない食えないタヌキ。それが宗男氏のようです。 

面白い男です。

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北海道5区補選 「オール北海道」の敗北

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意外にもといってはナンですが、衆院北海道5区補選で自民党が勝利しました。 

NHKニュース(4月25日)です。

「与野党が全面対決する構図となった衆議院北海道5区の補欠選挙は24日に投票が行われ、自民党の新人で公明党などが推薦する和田義明氏が初めての当選を果たしました。
衆議院北海道5区の補欠選挙の開票結果です。
▽和田義明(自民・新)当選、13万5842票。
▽池田真紀(無・新)、12万3517票。
自民党の新人で公明党などが推薦する和田氏が、民進党や共産党など野党4党が推薦する無所属の池田氏を破り、初めての当選を果たしました。」

   ・和田義明(自民・新)当選・・・13万5842票
   ・池田真紀(無・新)     ・・・12万3517票
   ・票差                1万2千325票・・・① 
 

 イケマキ女史は「1万票以上は差をつけたい」と鼻息も荒かったのですが、逆に1万票差をつけられてしまいした。

最後まで接戦といわれていましたが、 予想以上に開いたな、という感じです。

ちなみに前回の衆院選は町村氏が健在でしたが、このような結果でした。

●2014年前回衆院選北海道5区
・町村信孝(自民党)         ・・・13万1千395票
・民主・勝部賢志+共産・鈴木龍次・・・12万6千498票
・票差4千896票                 ・・・②

●前回と今回の野党獲得票差   ・・・①-②=△7429票

前回から野党連合は7千票近く票を減らしているのがわかります。

民主党票に共産党が上乗せになるどころか、かえって票を減らしてしまっています。

しかも、不動票は7割が野党に流れたと言われ、マスコミは揃って池田氏に好意的でした。

確かに候補者として見た場合、イケマキ女史ははるかに和田氏を凌いでいました。

キャラ的には、彼女のほうが圧倒的にチャーミングだったことは否めません。

横文字の職業で、歯切れがいい美人です。選挙期間中も不遇の人生を語り続けたようで、語りかけることによる共感力をもっています。

不動票は人気投票的要素が強いので、イケマキ女史に流れたのでしょう。

一方和田氏は、三菱商事中堅幹部からの落下傘候補です。ただ嫁さんが故町村氏の娘であっただけの話で、北海道とはなんの縁も縁もない人です。 

自民党道連内部でも、すっきりと町村氏の娘を立てて弔い合戦とすべきだという意見も強かったようです。 

「町村票を固めないと勝負にならない」(選挙ブレーン)。古くからの支援者は「なぜ町村さんの奥さんを前に出さないのか」と首をかしげた。いまだに「町村姓に変えるべきだ」との声がある。国会議員や知事を輩出してきた「町村ブランド」の重みだった。」
(北海道新聞4月3日)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160403-00010000-doshin-pol

この県連の弔い合戦方針を拒否して、和田氏は中央エリートにありがちな自信からか、「町村色を消す」とまで主張していたようです。

正直、馬鹿かこいつ、と思います。腕まくりして「北海道を売る」だって?やめてくれよって感じです。

私が5区の有権者だったらカチンときて、思わずイケマキに入れちゃいますね(笑)。

和田氏は地方を知らなさすぎます。ここは東京ではないのです。

しかも北海道は、古くは社会党時代から連綿と続く、道教組、自治労という巨大選挙マシーンがあり、その遺産相続に預かった民主党(現民進党)の金城湯池とまで呼ばれていました。 

また地元紙も、「南の沖タイ・琉新、北の道新」とよばれるくらい、左翼偏差値70の地元紙が大きな力を持っている地域です。 

自民党が政権奪還した、2014年の衆院選比例代表の北海道ブロックの党派別得票率を見てみます。

・自民党得票率・・・29・79%
・民主党得票率・・・27・56%。
・ポイント差  ・・・2ポイント
 

・全国比例における自民党得票率・・・33・11%
・民主                  ・・・18・33%
・ポイント差              ・・・14ポイント超

これを見ると、イケマキ女史が強気なのもよく分かります。

沖縄と北海道という北と南の両端においては、大変によく似た政治構造があるようです。

Photo_2池田候補応援サイトから引用http://xn--nyqy26a13k.jp/archives/16026

それはさておき、私は今回の補選の争点は三つだと思っていました。 

ひとつは上の写真にあるような、民主・共産の政治同盟を中軸にして社民・生活などで作る「オール北海道」勢力が、国政選挙でホンモノになるかどうかの試金石でした。 

共産党の抱きつき戦術にハムレットよろしく迷っていた岡田氏は、結局、目をつぶって清水の舞台から飛び下りてしまったようで、下の写真のような選挙ポスターまで作っていました。 

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共産党トヨタ自動車委員会サイトより引用http://toyotaroudousya.blog135.fc2.com/blog-entry-2111.html

う~、不気味だ。これを作った人の顔を見たい。

私は、こういうまったく同じポスターで党名だけ違うというものを初めて見ました。 

こうして実際に見ると、これを不気味だと思わない政党の感性が、どこか激しくズレている気がします。 

議会制民主主義の基礎は政党です。政党は政策集団でなければ、本来意味がありません。

その綱領の基本は、国民の生命・財産を守る安全保障と、国民と企業を直撃する「税」のあり方でなければなりません。

それが、民主と共産は水と油ほどにも違うのです。

違って当然。いちおう「ソフトな保守党」が売り物の民主が、革命党と一緒だったら困ります。

百歩譲って、もし、この補選が自治体選挙なら目をつぶってもいいでしょう。

ローカルなテーマで、保革が手を結ぶことはありえるからです。

しかし、北海道5区補選はれっきとした国政選挙です。

単なる政局で、それを棚上げにして、こんなグロテスクなポスターを作るくらいなら初めから「民主共産党」としてひとつの党に合流してしまえばよかったのです。

そこで徹底した綱領のすり合わせをしてから、国民の信を問うべきでした。

「市民がつながれば政治は変えられる」と言いますが、なにをいいたいのやら。要は、「ファシスト安倍を倒せ」ということでしょうか、それは政策ですか?

岡田さんに忠告しますが、シールズたちの支援を補選に要請したこと自体が間違いです。

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彼らが何か時代のヒーローだと勘違いしているようですが、もはやそんな神通力はありません。

シールズがただの共産党別動隊であることは、国民の相当数が知ってしまっていました。ただ、マスコミが見て見ぬふりをしているだけです。

下の写真は大阪市長選時の最終日のものです。

自民府連推薦の柳本候補の回りには、シールズが取り囲み、テレビの映像を独占していました。

これがどんな政治的効果をもたらしたのかは、柳本候補の惨敗ぶりをみればわかるはずです。市民はドン引きしました。

シールズは今回もまた、30万回電話大作戦をしたあげく、かえって反発を招いたようです。

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同じ宣伝カーに民主党大幹部と共産党小池副委員長が乗るという風景に、小池氏は感動のあまり、こうツィートしています。 

「札幌野党共同街宣。私は「これは事件だ。前原さんと私が一緒の街宣車に乗っている。立憲主義を否定する安倍政治を倒さなければならないからだ」 前原誠司さんは「共産党の方と一緒に演説するのは初めてだ。独裁政治を倒すためには、野党が力をあわせるのは当たり前ではないか」 池田まきさん勝利へ!」https://mobile.twitter.com/koike_akira/status/723736448352944128?ref_src=twsrc%5Etfw

 そりゃあ共産党にとっては、民主保守派の前原氏と、宣伝カーで握手したのですから、感激もひとしおでしょう。

しかしそれは、ただの「共産党の利益」であって、民主はこれによってはかりしれない打撃をこうむったことに、すぐに気がつくはずです。

一説、1選挙区3万票を共産党との選挙協力で上積みできても、それに倍する保守票を彼らは逃がしたはずだからです。

さてこの北海道5区補選の原型はいうまでもなく、翁長知事を生み出した「オール沖縄」です。

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日本共産党赤嶺候補サイトより引用
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-11/2014121101_01_1.html 

この共産党と保守寝返り組連合によって、実質的に県政を支配下におくことができた共産党は、続く第2弾を、反橋下でまとめ上げた「オール大阪」市長選にぶつけます。

これが当時の「オール大阪」の配布したチラシです。

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上のチラシは党名が記されていませんが、共産党の公式チラシです。

ここでも共産党は[全野党共闘+保守の一部]という構図を実現させています。
※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-f389.html

大阪の場合、橋下氏という「共通の敵」を設定することで、保守の一部まで切り崩して「国民連合政権」構想のひな型を作り出したわけです。

そしてこの政治連合を、初めて国政に応用したのが、去年の「戦争法案反対」運動でした。

ここで「共通の敵」に指名されたのは、もちろん安倍氏です。

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上の写真は去年8月30日に撮られたものですが、ひときわ志位さんの高揚した顔が印象的です。

この「戦争法案反対」運動で、共産党は「全野党共闘」の主導権を握れると確信したはずです。

続いて 「戦争法案反対」と同時期に行われた岩手県知事選挙おいては、この勢いを借りて安保以外で全野党党首が共同記者会見する「歴史的快挙」をなし遂げています。

このような流れを背景に争われたのが、この北海道5区の補選でした。

さて、北海道補選のもうひとつの争点は、消費増税問題でした。 

実は、民主党と共産党の「幸せな結婚」には大きな障害がありました。 

それは、消費増税についてまったく意見が違うとこです。

民主党は、本質的に財政規律派です。一貫して3党合意遵守・増税推進、緊縮財政派であって、共産の増税反対・緊縮財政路線とは水と油です。.

また、民主党は組織基盤が連合ですが、共産党は全労連です。

この両労働組織が、地域や職場で犬猿の仲なのは有名ですし、共産党がこの民・共合作に乗じて、連合系労組に浸透したいという思惑は当然あるでしょう。

しかし今回の敗北で、連合は今まで以上に民主党が共産と手組むことに対して強く反対を主張するはずです。

「税」については詳述したいので、別稿に譲ります。

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そして元来、日米安保を前提としているはずの民主党が、日米同盟否定派の共産党と、「結婚」できたのは、「戦争法案反対」という接着剤があったからです。

こうしてみてくると、共産党の一世一代の戦略であった「国民連合政府構想」=「オール○○」路線は、国政に登場するやいなやいきなり黄色信号が明滅したといえます。

次の焦点は、そう、オリジナル「オール○○」を作り出した沖縄県議選です。

これについても、長くなりましたので、次回にまわします。

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日曜写真館 チューリップは春の花

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熊本地震の原因メカニズムについて

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今日は、地震の原因について、現時点で分かっていることを整理しておくことにします。やや硬いテーマですが、できるだけ図版を用いて平明にお話します。 

図版だけ眺めるだけでも、なんとなく分かるようになっています(笑)。

1週間たって、まだ余震は続いています。まずそれから見ていきましょう。 

1気象庁HPhttp://www.jma.go.jp/jma/menu/h28_kumamoto_jishin_menu.html

さすがに震度7、6強はなくなりましたが、4月18日以降も震度5弱が3回、それ以下のものはご覧のとおり多発しています。

Photo(同)

 余震がきわめて多いのは、九州最長の101㎞に及ぶ、布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久(ひなぐ)断層帯が交わるという複雑な地層に原因があるようです。 

下図を見ると確かに、布田川断層帯と日奈久断層帯が震源地の益城町の地点で交差しているのがわかります。 

Photo_2Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/布田川・日奈久断層帯 

今回の熊本地震の原因について、政府の地震調査意委員会はこう述べています。

「政府の地震調査委員会は17日、熊本県で16日未明に起きたマグニチュード(M)7.3の地震は活断層の「布田川断層帯」が活動して起きたとの評価結果を発表した。
動いたのは同断層帯北東端の「布田川区間」を含む約27キロで、断層の東側は調査委が想定していなかった阿蘇山のカルデラ(くぼ地)に達していたと明らかにした。
調査委は布田川区間(長さ約19キロ)で起きる地震をM7.0程度と想定していた。今回の断層は同区間の長さと比べ東西に数キロずつ長く、地震の規模が大きくなった。」

(産経4月17日)
http://www.sankei.com/affairs/news/160417/afr1604170063-n1.html

調査委が指摘する、布田川断層帯北東端が動いた断層のズレが写真に撮影されています。 

Photo_5朝日4月21日より引用 http://www.asahi.com/articles/ASJ4M6DZPJ4MULBJ022.

近くに寄ってみましょう。 益城町陳(かみじん)の現場では、麦畑を横切るように2mほどの断層のズレが肉眼で確認できます。 

Photo_6産経4月18日より引用http://www.sankei.com/photo/story/news/160418/sty1604180016-n1.html

 これが九州を縦に走る「右横ズレ断層」です。断層が左右に水平にずれ、そこで力が発生し、それが地震になったといわれています。 

横ずれ断層には、右横ずれ断層と左横ずれ断層があります。 

Photo_9図 正断層、逆断層、横ずれ断層(右横ずれ、左横ずれ) 正断層は、上盤(傾いた断層の上側の部分)が相対的に下がる縦ずれ断層。 逆断層は、上盤が相対的に上がる縦ずれ断層。http://www.jishin.go.jp/main/yogo/d.htm

 つまり、断層面に向かって立った時に、断層面の奥の側が手前の側に対し、右にずれたときは右横ずれ断層、左側にずれたときは左横ずれ断層となります。 

ご存じのように、日本列島は地質学的に、糸魚川-静岡構造線と中央構造線という大構造によって区分されています。 

Photo_12図 赤線が中央構造線、青線に囲まれたオレンジ色の部分はフォッサマグナ Wikipedia
 

地質図中央を九州熊本から四国、近畿、中部、関東に伸び、霞ヶ浦の北浦で止まっているのが、中央構造線です。 

この九州部分を拡大したのがこの図です。 

Photo_10
出典不明

今回の大地震の震央で震度7を記録した益城町が、画像中央に見えますね。

この益城町の地層は複雑で、さきほど述べた布田川断層帯と日奈久断層帯がクロスしている地点です。

この2つの断層帯が連動するようにして、地震を引き起きたために、断層に沿って地震が発生しています。

下図は、熊本地震の防災科学技術研究所(NIED)が発表している4月14日のM6強の地震時のマップです。

赤点の強震地点が、中央構造線の断層に沿って分布しているのが分かります。

Photo_13平成28年(2016年)熊本地震 - Hi-net - 防災科学技術研究所

典型的な断層型地震で、東日本大震災のようなプレート型ではありません。

実は、米国地質研究所(USGS)は、熊本地震直後からセントロイド、モーメント・テンソル解(CMT)を公表しています。

CMTというのは聞き慣れない言葉ですので、押さえておきます。

「CMT解は長周期の地震波を解析して求めるため、規模がある程度大きな地震でしか用いられないが、セントロイド(地震で最もずれが大きかった部分のこと)での発震機構を算出するため、より実態に近い結果を算出することができ、また断層運動の規模も算出することができる。」発震機構 - Wikipedia

Photo_15

http://www.usgs.gov/blogs/features/usgs_top_story/magnitude-7-0-earthquake-in-japan/?from=title

上図右のplane(平面)NP1、NP2と書かれたのが、布田川断層帯と日奈久断層帯のことです。principal axesは主応力のことです。

DIP(沈降)の角度がNP1で76°、NP2で82°です。これをモデル化するとこうなります。

Photo_16

KAZU氏による。今回、USGSCMT解について、ご教示いただきました。感謝します。

このふたつの断層の南北方向の引っ張り応力と東西方向の圧縮応力によって地震が引き起こされ、さらに中央構造線の断層の方向に余震がぴったりとより沿うように伸びていったわけです。

このように、日本列島の大構造の中央構造線というマクロ・フレームの中で、益城町の下にいた眠っていた二つの断層というミクロの要素が相互に影響し合って、さらにそこに火山灰が堆積した南阿蘇が大雨で地滑りを起こして被害を広げたのが、今回熊本地震のようです。

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熊本地震 「激甚災害指定」のよくある誤解について

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熊本市が、制限的だったボランティアの受け入れを始めました。大きな進展です。

今日のテーマである「激甚指定」についてお読みになりたい方は、波線下からどうぞ。

「熊本市は19日、市災害ボランティアセンターを22日に設置し、ボランティアの受け入れを始めると発表した。余震が続いて安全確保など受け入れ態勢が整っていなかったが、市民生活の再建にボランティアの支援が必要と判断した。災害ボランティアの作業内容は被災した家屋内の片付け。全半壊した危険な住宅では作業しない。」(毎日新聞4月20日)
http://mainichi.jp/articles/20160420/k00/00m/040/085000c

災害ボランティアについて
・宿泊先や食事は各自で用意する。
・問い合わせ先・ボランティアセンター096・288・2748
・ボランティア派遣を希望する被災者については19日から受け付ける。
・派遣要請の問い合わせは同センター 090・6653・1592

一方、いままで地震によって止まっていた九州の大動脈の鹿児島本線が、運転を再開しました。

「熊本地震の影響で九州新幹線博多~新水俣間と熊本地区の在来線で運転見合わせが続くJR九州は21日、列車運行情報にて鹿児島本線熊本~八代間の運転再開に関する情報を出した。「13時頃から運転再開予定」としている。」(日経4月21日)http://news.nifty.com/cs/entame/showbizddetail/mycom-20160421066/1.htm

いよいよ、初動の救援期から、復興に向けて一歩を踏み出したような気がします。 

未だ余震は続いていますが、救援を求めてただひたすら耐える時期から、立ち上がってあたりを見渡し、注意しながら足元をみつめて前に進む時期に入ったと考えたいと思います。

私の東日本大震災時の経験でも、4日までは電気、ガス、水道のすべてが止まっていましたが、ちょうど人間でいえば、頭を守ってしゃがみこんでいる状態です。 

1週間目を境に、温かい支援が目に見える形でたくさん頂戴しました。 

もちろん家屋や生産設備は大きく傷ついていたのですが、とりあえずの処置だけして、本格的復旧は考えないことにしました。その時点で、考えても無駄だからです。 

被災者は生活物資を求めて自動車を使いたいと思うこともあるかもしれませんが、私は勧めません。 

おそらく今回も、自動車燃料の不足が深刻となっているはずだからです。 

これほどの地震の場合、ガソリンスタンドの地下燃料タンクは浮き上がってしまっていて、危険な状態にあるものも少なくないはずです。 

しっかりと消防署に点検してもらってからの再開となるでしょう。 

また、中継基地のオイルターミナルも破損しているはずですから、自由にガソリンを入れるまでは、そうとうな期間を要します。私の場合は、1カ月以上でした。 

その間、自動車のガスは徹底的に節約して下さい。 

がんばれ、熊本!

                       ~~~~~~ 

さて、「激甚災害指定」について、おかしなことを言う人が増えています。

ゴリゴリの反原発派弁護士のサイトから引用します。なかなかすごいサイトで、全編これ、濃厚な安倍さんへの呪詛に溢れかえっています。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/9dbdf4ac370659019859dca8a6fd8f2a

「熊本県知事は最初の地震翌朝の4月15日朝にはすでに早期の激甚災害指定を求めていました。
熊本県の財政から見て国庫補助が必要なのは明らかだったからです。
ところが、安倍政権は地震から10日以上経ってしまう来週!激甚災害指定をすると言っています。
被災者や被災自治体を財政面で早く安心させるという配慮が全くないことは明らかです。」

川内原発についてもこう書いています。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/dc01b9a3a9c5e9d16e8e1903c87f6352

「安倍政権は今ここで川内原発の運転停止を認めてしまえば、全国の原発再稼働計画に支障が出ると痩せ我慢をしているのでしょう。
 しかし、万万が一にも原発事故が起こったら、安倍首相以下政府には責任はとれないし、被害をこうむるのは九州だけでなく、全国民なのです。
 官僚たちにとって邪魔で散々悪口とデマを言いふらされた菅首相ですが、安倍首相の何万倍も優れた内閣総理大臣だったことは明らかです。」

どひゃー!初めて聞いた。 カン、カンバック!ですか。

わが被災地で、カンをブンなぐってやりたいという人は佃煮にするくらいいますが、「今の政権より何万倍も優れていた」という人は、ホントにホント、初めて聞きました。 

下の画像はこの方のサイトにあったものを拝借しました。私の学生時代にキャンパスの景観を汚していた過激派のタテ看みたいなセンスですね。 

なお、この人に似た主張は左翼の皆さんの定番らしく、あの売れない左翼フリーライターのたまり場「リテラ」でも似た主張をしています。
http://news.infoseek.co.jp/article/litera_4209/

Photohttp://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/9dbdf4ac370659019859dca8a6fd8f2a

では、この人が「けしからんアベは激甚指定を怠っているぞ!」と叫んでいる激甚災害指定について考えてみましょう。 

まずは激甚災害について押さえておきます。やや長いですが、ごかんべんを。しかしどうして官僚は、こう分かりづらく書くかね。
内閣府: 防災情報のページ 

役人の作文を読むとジンマシンが出る方(←実は私もそう)は引用文の下からどうぞ。 

「激甚災害指定をめぐって地震や風雨などによる著しい災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とするもの。激甚災害法(1962年成立)に基づいて政令で指定される。
全国規模で災害そのものを指定する「激甚災害指定基準による指定(本激)」と市町村単位で指定する「局地激甚災害指定基準による指定(局激)」の2種があり、中央防災会議が定めた「激甚災害指定基準」「局地激甚災害指定基準」に基づいて判断される。激甚災害に指定されると、国により災害復旧事業の補助金の上積みがなされる。
90年、激甚災害法が改正されて基準の大幅な引き下げが行われ、以降毎年激甚災害指定がなされている。
これまで激甚災害(本激)に指定された主な災害に、94年の三陸はるか沖地震、95年の阪神・淡路大震災、98年の台風5~9号による暴風雨災害、2004年の新潟県中越地震、07年の台風5号による暴風雨災害、11年の東日本大震災などがある。」

Photo_3http://www.huffingtonpost.jp/2015/10/07/taro-kono_...

昨日、欄外にアップした河野太郎防災大臣の説明と合わせて要約します。河野さん、さすがブロガーだけあって、実に分かりやすい文章です。 

どーでもいいけど、河野太郎さんという政界随一の反原発派が、今このポジションに居るというのも、天の巡り合わせですなぁ。 

閣僚でなければ、山本太郎と二太郎コンピで、「川内原発を止めろォ」と叫んでいたでしょうからね。 

Photo_2http://www.asahi.com/special/typhoon/SEB2012071200...写真は救難活動をする自衛隊へり。しかし、朝日、こんなに接近して上空を飛ぶな。ダウンウォシュで自衛隊ヘリも救助者も危険だろうが。)

閑話休題。まず、今、適用されているのは「災害救助法」です。地震翌日には適用されています。 

「災害救助法の指定を受けると避難所、応急仮設住宅の設置、食品、飲料水の給与、医療、被災者の救出などにかかる費用について市町村の負担がなくなります。」(河野大臣) 

そして、今話題となっている「激甚災害指定」は、まったく性格が違います。

「激甚災害制度は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害から復旧するにあたり、自治体の財政負担を軽減するために、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用に関して国庫補助の嵩上げを行うものです。」(同)

つまり、「激甚災害指定」とは、今のような救援が目的ではなく、災害復旧・復興が対象なのです。 

したがって、今のような地震災害が収束したとはいえない時期に、政府が適用する性格ではありません。 

今はあくまでも救助を第一とした緊急対応期であって、そもそもこんな地震がまだ来ている救援時期に、「激甚災害指定」する意味がありません。 

河野氏もこうはっきりと言っています。 

「被災したり、避難所に避難したりしている人には今すぐ直接、関係はありません。」 

そうです、被災者に「激甚災害指定」が関係してくるのは、もう少し後の復興期なのです。 

逆に、東日本大震災で、すぐに激甚災害指定をした民主党政権のほうがヘンなのです。 

多摩っこさんが、この経過をうまくまとめておられるので使わせて頂きます。

「菅政権は東日本大震災の翌日の12日夜に激甚災害指定の「閣議決定」、13日に「公布」。
その後動きなく(得意の放置プレイ)、自民党の指摘を受け4/27に「中央防災会議」第1回を開催…例の如く議事録など無し。
調査による災害実態の認定作業が始まったのはいつ頃が不明、序盤はこんな流れのようですね。」

わ、はは。なんだ、「今の政権より何万倍も優れている民主党政権」は、震災翌日に交付してカッコつけたのはいいが、そのまま忘れて1カ月以上棚ざらししていたようです。 

まぁ、当時カン氏は、福島事故以外眼中になかったので、むべなるかなです。 

あの人は、仕事を分けて任せることができないのです。閣僚も官僚も信用していませんから、大学時代のゲバ仲間を官邸に集めて、狂乱したあげくチュドーンです。 

こんなことをいまさら民主党(失礼、ブランド・ロンダリングしていましたっけね)、いや民進党が自慢されてもねぇ。 

激甚災害は、要は復興期の当該自治体の支援を嵩上げするためにあります。 

ですから、災害規模が確定しないと、指定しようがないじゃないですか。 

「激甚災害の指定は、復旧費用がその自治体の財政力の一定割合を超えるかどうかで、機械的に決まります。
その為、指定にあたっては、災害復旧に必要な金額の査定がまず必要です。」(同)
 

ここからややめんどくさいのですが、査定も2種類あります。 

・全国規模の災害   ・・・「本激」
・局地的な規模の災害・・・「局激」
 

さらに、「本激」にもA基準とB基準がありますが、自治体財政の規模との相談です。細かくは昨日の記事欄外をお読み下さい。

この「本激」(すごい、ネーミング)に指定された場合は

「全国的に指定された上で、各自治体が国庫補助の上積みを受けるためには、1年間の激甚災害に係る災害復旧事業費等の自治体の自己負担額がその都道府県の標準税収入の10%、市町村ならば5%を超えることが必要になります。」(同)

一方「局激」ですが、これも、自治体の財政規模とのご相談となります。

「その市町村の標準税収入に対する公共土木施設等の災害復旧の査定事業費の割合が1/2を超えた場合に可能になります。」(同)

ですから、大きな被害を受けても、その自治体の財政規模が大きい場合は指定されていケースもあるということです。東京都などのケースですね。

このように、「激甚災害指定」というのは、まずは被害の規模が判明せず、被害を受けた自治体がどれだけに登るか判明しない、現時点では指定したくとも指定できないのです。

むしろ、大震災翌日にわけもわからずに激甚指定をやっちゃった、民主党政権のほうの脳味噌がどうかしていたのです。

そんな無茶な「政治主導」をされた官僚も困って、被害が確定するまで「聞き置いた」ままで放っておくしかなかったのですしょうね。

というわけで、熊本県知事と安倍氏との「激甚指定、よろしくお願いします」「はい、前向きで」という会話は、実は「もうちょっと後の復興期には、ひとつ国の支援を」という意味にすぎないのです。

■追記
「安倍晋三首相が21日にも熊本地震の被災地を視察する方向で調整に入ったことが分かった。政府関係者が19日、明らかにした。被災自治体への財政支援を手厚くする「激甚災害」の指定に向け、首相自ら被害の実態を把握するためで、22日以降にずれる可能性もある。」(産経4月20日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160420-00000063-san-pol

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政府は水や食料と共に、「情報」を被災現地に送らねばならない [付録]激甚災害指定についての河野大臣の解説

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今回、私は政府の対応は、初動における救援リソースの集中投入、支援物資の搬送など、いちおうの合格点だと評価しますが、大きく欠落している点があります。 

それは、リスクコミュニケーションの不足です。 

東日本大震災・福島事故において、救援と復興をもっとも遅らせた最大原因のひとつは「風聞」です。 つまり「デマ」の拡散です。

風聞は形がなく、誰が発したのかさえ判らないまま、いかにももっともらしい顔をしてSNS経由で瞬く間に拡散していきます。 

いわく、「東日本はもう住めない」。
いわく、「外国のエライ学者が40万人ガンで死ぬって言ってたよ」。
いわく、「東日本の食品を食べたら死にます」。
いわく、「奇形が出たそうだ」。

被災者は先が見えない状況に置かれています。

自宅から、職場に勤めに出て、子供を学校や保育施設に送り出し、スーパーに夕餉の買い物に行く、そういう「日常生活」が根こそぎ奪われた状況に、突如放り出されたわけです。

そして避難生活で、もっとも飢えているのは「情報」です。

この「情報」を政府がしっかりと発信しないと、今後、政府情報を一切信じない、まだなにか隠しているに違いない、という国民の不信が生まれます。

水や食料と同じくらい重要なものは、「情報」なのです。

この緊急時情報発信とそれを共有するシステムのことを、リスクコミュニケーションと呼んでいるわけです。

今の熊本地震のような大規模災害に対して、特にその初動期に、政府が分かりやすく、ありえるリスクを明らかにして、それに対して政府がどのような対応をとっているか、被災者はどのようにしたらいいのかについて、明確な情報を伝えねばなりません。

政府は水や食料と共に、「情報」を被災現地に送らねばならないのです。

福島事故後は、民主党政府がこれに失敗したために、なにを言おうと政府の言うことは一切信じない層が生まれてしまいました。

リスクコミュニケーションを、押さえておきましょう。

「リスクコミュニケーション (Risk Communication) とは社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、市民などのステークホルダーである関係主体間で共有し、相互に意思疎通を図ることをいう。合意形成のひとつ。
リスクコミュニケーションが必要とされる場面とは、主に
災害環境問題原子力施設に対する住民理解の醸成などといった一定のリスクが伴い、なおかつ関係者間での意識共有が必要とされる問題につき、安全対策に対する認識や協力関係の共有を図ることが必要とされる場合である。」(Wikipedia)

今回の熊本地震においては、以下の3つが重要なリスクコミュニケーションの指標だと思われます。

①現在の被害状況はどの程度か。どこまで被害が拡がっているのか。
②避難所はどこにあるのか。どこに行ったら支援物資が受けられるのか。
③誘発されるかもしれない周辺の危険情報。

いずれも現在の初動時期のみのもので、この先状況が安定すれば、当然、復旧・復興についての展望も示さねばなりません。

激甚災害指定については、熊本県知事からは要請があったようです。

左翼は、「激甚に指定しないのはオスプレイを活躍させたいからだ」という定番的タコ発言をしていますが、それは無視するとしても、未だ群発的状況が続き、被害規模が確定できない以上算定が難しく、政府も出したくても出せないようです。

現在集計されている被害状況は、朝日新聞(4月21日)によれば、20日午後6時現在:このような規模です。

熊本地震被害被害状況(4月20日現在)
建物の被害・・・全壊1454棟、半壊1324棟
・益城町役場、、宇土(うと)、八代(やつしろ)両市役所は崩壊の恐れがあり使用不能
死亡者数・・・59名(関連死を含む)
避難者数・・・前震後は約4万4千人、本震後急増
・17日午前9時半時点で、熊本県内で18万人超→20日午後1時半現在、約9万2千人
・車中泊を続ける避難者も多い。
・20日午後7時までに震度1以上を観測した地震は707回。うち震度4以上が90回
ライフライン状況
断水・・・9万戸以上
電気・・・16日の本震後、熊本県内だけで一時、18万戸以上が停電
・阿蘇市などへの送電線が土砂崩れで使用不可能となるが、20日までに九州電力は阿蘇市と南阿蘇村の計約2700戸の復旧作業を行い、全て復旧
水道・・・配水管の破損、地下水の汚濁で飲料水に適さなくなったりする水道が増えて、最大で39万戸が断水
・九州各県の自治体、自衛隊、海上保安部などが給水車で、給水支援中
・20日午後3時現在、被害の激しい熊本市や宇城(うき)市、益城町などで約9万8400戸が断水中
ガス・・・西部ガスは本震後、火災などの二次被害を防止のため、熊本市や益城町など2市5町の計約10万5千戸への供給を停止。
・20日正午までに東京ガスや大阪ガスなど全国から1200人が応援に入って復旧作業を始め、計488戸のガス栓が回復。完全復旧の見通しは立ず

以上が被害の概括的状況ですが、いまだに状況は進行中です。

このような中で予算規模のフレームを作れば後に、またここでもあそこでも地震がとなった場合、先走ったことになってしまいます。

現時点では首相が「前向き」ということで知事には言質を与えて安心してもらい、地震の収束を待っているようです。
※追記 欄外に河野太郎防災大臣の見解を添付しました。bdp様に感謝します。

補正予算枠ではどうにもならないのは分かっていますので、思い切った復興国債などを出して財源を確保するのも選択肢でしょう。今は、マスナス金利ですから。

それはさておき、簡単に①から③をまで見ていきます。

①ですが、地震がいっかな収束せずに、600回におよぶ群発地震によっていっそう拡大する状況が、避難者の不安を煽っています。

これについては、行政やNHKから出されていると思います。

むしろ、一部のメディアやネット情報のように、「南海トラフ地震になるおそれ」「活断層がある場所、すべて地震予定地」のような根拠のない流言蜚語こそ慎むべきです。

正直、今の初動期に彼らメディアにやって欲しいのは、くだらない報道ではなくむしろ「沈黙」です。

②は、行政は想定をはるかに超える避難者に対応が遅れており、避難所の数が足りていません。

未だ自動車の中で生活する人が大勢いるように、決定的に対策が不十分です。

支援物資も、行政職員の不足とボランティアが限定的なために、集積場所で放置されて被災者の手に渡らないケースが多発しています。

これも早晩解消されることを期待しますが、現状が長引けば避難者にストレスが蓄積し、健康被害が多発することは経験が教えています。

「東日本大震災・福島事故においては、避難先で体調を崩して亡くなる「震災関連死」は増え続け、県のまとめによると11日現在 、2016人に上っている。」
(福島民報2016年4月21日)
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/02/post_13207.html

最大の犠牲者は、直接の被害よりむしろ避難後に出るのです。

②において、行政のリスクコミュニケーションが万全だとはとうてい思えません。

とはいえ、これも一部メディアのように、「被災者に怒りと失望」のようなことばかり一面的に報じてみても無意味です。

むしろ、被災者の不安を煽るのは止めていただきたいものです。

では、③の周辺の危険情報はどうでしょうか。

これはどうしたことか、まったく手つかずに等しい状況です。

最大の「周辺の脅威」は川内原発です。

政府は原子力規制委員会が、以下のような無味乾燥な情報をピラっと一枚出したきりです。
https://www.nsr.go.jp/news/20160415_01.html

■熊本県で発生した地震による原子力施設への影響について
16日 16時2分頃に熊本県で発生した地震(余震)による原子力施設への影響について、お知らせします。(16時23分現在)(現在、各施設ともに異常情報は入っていません。)
原子力発電所
<九州電・川内(PWR)>

鹿児島県:最大震度3
薩摩川内市:震度3
1・2号機:運転継続中
プラントの状態に異常なし。
排気筒モニタ、モニタリングポストに異常なし。
地震計の指示値(1号機で代表)
広報用地震計の指示値(下記設定値の参考値。)
(補助建屋最下階 1.2gal
(補助建屋1階)   2.2gal

原子炉自動停止設定値
(補助建屋最下階)水平方向160gal、鉛直方向80gal
(補助建屋1階) 水平方向260gal

はい、これだけです。いくらなんでも、これはひどい。あまりに官僚的にすぎます。

読む人が読めば、1.2~2.2ガルですから、まったく問題にならないのことは理解できますが、被災者、いや国民の多くはなんのこっちゃとなるはずです。

この隙間に、歪曲情報が忍び込む余地が生まれます。

内閣府原子力防災に至っては、未だ一行の情報もアップれされていない状況です。http://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/index.html

丸川珠代さん、あなたの「1ミリシーベルトは科学的根拠がない」発言を私は支持しましたが、今回はいただけません。ちゃんと自分の仕事をしなさい。

今、環境相としてするべきは、川内原発の安全性に対しての情報発信です。

あなたの所轄である原子力規制庁に、もっとしっかりとした広報活動をするように命じなさい。

いや、あなた自身がメディアの前で説明してもいい。テレ朝の女子アナだった経験を活かすのは、今だと心得なさい。

こういう初動時に、デマや風評を的確に潰しておかないから、デマは地下で繁茂し、増殖し、やがて手に負えなくなるのです。

情報の世界においては、悪貨が良貨を駆逐するのが真実です。悪貨が制圧してからでは遅いのですよ。

面白半分のデマは、常識の天秤を破壊し、歪ませます。

歪んだ天秤を国民が信じるようになれば、それに便乗した政治家が点数稼ぎのポピュリズムに走ります。

「1ミリシーベルト」は不必要な除染と避難を強いて、復興をおそらく5、6年単位で遅らせました。

そしてデマの発信者は顔がないためにいつの間にか消え失せ、結局、代償を払ったのは被災者でした。

この東日本大震災・福島事故の苦い経験を思い出して下さい。

私たちブロガーもデマ退治をしていますが、本来このような仕事は、政府の仕事です。

               ~~~~~~

災害救助法と激甚災害熊本地震に関して
河野太郎

「激甚災害指定」と「災害救助法の指定」が話題になっています。

「災害救助法の指定」を受けると避難所、応急仮設住宅の設置、食品、飲料水の給与、医療、被災者の救出などにかかる費用について市町村の負担がなくなります。

熊本地震では、地震の翌朝に指定されました。

一方、「激甚災害制度」は、国民経済に著しい影響を与えるような激甚な災害から復旧するにあたり、自治体の財政負担を軽減するために、公共土木施設や農地等の災害復旧に必要な費用に関して国庫補助の嵩上げを行うものです。

被災したり、避難所に避難したりしている人には今すぐ直接、関係はありません。

激甚災害の指定は、復旧費用がその自治体の財政力の一定割合を超えるかどうかで、機械的に決まります。

その為、指定にあたっては、災害復旧に必要な金額の査定がまず必要です。

激甚災害の指定には、全国的に大きな被害をもたらした災害を指定するいわゆる「本激」と呼ばれるものと、局地的な災害によって大きな復旧費用が必要になった市町村を指定する、「局激」の二つがあります。

全国的に大規模な災害が生じた場合は、例えば公共土木施設等による全国の災害復旧の査定見込額が約1785億円を超えれば本激の指定(本激A基準)が可能になります。

また、全国の災害復旧の査定見込額が約714億円を超える被害があり、都道府県の標準税収入に対する査定見込額の割合が25%を超える都道府県が一つ以上あるか、 一つの都道府県内の市町村の標準税収入総額に対する査定見込額総額の割合が5%を超える都道府県があるとB基準による指定が可能になります。

こうしてまず全国的に指定された上で、各自治体が国庫補助の上積みを受けるためには、1年間の激甚災害に係る災害復旧事業費等の自治体の自己負担額がその都道府県の標準税収入の10%、市町村ならば5%を超えることが必要になります。

「局激」とは、市町村単位で激甚災害の指定を行う場合の基準です。その市町村の標準税収入に対する公共土木施設等の災害復旧の査定事業費の割合が1/2を超えた場合に可能になります。

激甚災害に指定されるかどうかは、その災害からの復旧にいくらぐらい必要になるのか、そしてその金額がその自治体の財政力と比べてどの程度になるかによります。

大きな災害であっても被害を受けた自治体の財政力が非常に大きければ指定されないこともあります。

災害復旧の金額の査定に時間がかかることもありますが、今回の熊本地震では、激甚災害指定に必要な被害額の把握を特にスピードアップするよう総理から指示が出されていますので、自治体の皆さんに安心して復興に取り組んでいただけるよう、手続きを速やかに進めていきます。

 

 

 

 

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熊本地震 こんな時に言い出すな、オスプレイデマ

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熊本地震の現時点の時期を、ひとことで言えば「有事」です。「平時」でもなければ、復興期でもありません。 

未だ倒壊した家屋の下敷きになった人の捜索が行われている、「救援期」です。 

こんな時にも、「平時」の政治的主張を拡声器でガナる者が出ます。 

野党には出番がないために、政治主張をすることで、「オレもいるから。今、政府を追及しているから」というわけです。 

お約束の共産党は、定番のオスプレイ反対を、この時とばかりにボルテージをあげています。 

朝日新聞(4月18日)は、「米軍オスプレイ、初の災害対応 実績づくりに疑問の声も」と題して、このように報じています。

「だが、自衛隊にも約60人乗りの大型輸送ヘリCH47が約70機ある。約30人乗りの米軍オスプレイがさらに必要なのか。疑問の声が上がる。
『オスプレイに対する国民の恐怖感をなくすために慣れてもらおうということで、こういう機会を利用しているとすれば、けしからんことだ』。
共産党の小池晃書記局長は18日、朝日新聞の取材に語った。同日の参院決算委員会で同党議員に質問された中谷元・防衛相は『安全性を保証している。自衛隊のヘリ能力だけでは十分に現地に物資が届けられていない』とオスプレイの必要性を強調した。」

翌日19日にもこんどは民進党の原口一博常任幹事会議長(←まるで共産党みたいな肩書)のこんな発言を報じています。

「阿蘇山の)南阿蘇は小規模だが、噴火が続いている。オスプレイはハワイの事故で、砂を吸い込んで落ちている。
防衛省の資料を見ると、我が国の航空機がヘリコプターを含めたくさん活躍している。わざわざオスプレイをもってきて、避難している皆さんも非常に不安に思われている。砂を吸い込んで落ちるものが、噴煙に対して大丈夫なのだろうか。米軍の協力はありがたいが、ぜひやめてほしい。(19日、党災害対策本部懐疑議で)」

共産党・小池副委員長や民進党・原口氏の発言に事寄せていますが、ご存じのとおりメディアでオスプレイ危険報道を執拗に繰り返していたのは、この朝日と毎日、そしてTBSと沖縄2紙なことは有名です。

ちなみに毎日も同じような記事を出しています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160418-00000082-mai-soci

 

Photo読売新聞4月18日 救援物資を南阿蘇村に輸送した米海兵隊のオスプレイ(18日午後6時16分、熊本県南阿蘇村で)=近藤誠撮影

上の写真は読売新聞ですが、淡々と事実だけを伝えています。
 

災害時報道に「平時」の政治主張を絡めて色を付けるという行為は、いうまでもなくジャーナリズムの自殺です。 

朝日はあいからわらず「角度をつける」(朝日新聞第三者検証委員会の提言)悪習が止められないようです。 

彼らにとって去年の謝罪事件はなんだったのでしょう。

要はこのひとことが言いたかったようです。

「防衛省関係者は「米軍オスプレイの支援は必ずしも必要ではないが、政治的な効果が期待できるからだ」と説明する。(略)
自衛隊と米軍は18日、陸自西部方面総監部(熊本市)に、物資輸送の割り振りをする「日米共同調整所」を設置した。昨年改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、日米が災害で協力することも盛り込まれた。今回のオスプレイの活動は「日米同盟が深まっている」(別の防衛省関係者)ことを示す場でもある。(朝日4月18日)

つまり、安保法案の実体化を進めている政府は、必要もない危険なオスプレイをわざわざ米軍に使用させて、政治ショーをしたいのだ、ということのようです。 

Photo_2出典:twitter.com

ホント困った人たちだ。災害を政治ショー化しているのは、あなた方のほうでしょうに(ため息)。 

ではまず事実関係から洗っていきます。
現在、被災地に投入されているヘリは以下です。

・自衛隊     ・・・65機
・消防庁     ・・・18機
・警察庁     ・・・11機
・海保       ・・・9機
・厚生労働省  ・・・7機(ドクターヘリ)
・米軍       ・・・8機(オスプレイ)

※http://flyteam.jp/news/article/62369

自衛隊は通常の防衛任務から、可能な限り現地に引き抜いているのが分かります。 

長丁場ですから、おそらく今後も増援していき、機体や航空部隊も交替することでしょうが、わずか数日の初動でよくこれだけ集めたな、というのが私の実感です。

自衛隊が持てる限りの力を振り絞って、災害に対応しているのがわかります。 

では、なぜ「オスプレイなのか」ですが、それしか米軍は大型ヘリを持っていないんだからしょうがないでしょう。

理由はこれだけです(笑)。

厳密にいえば、オスプレイはヘリではありませんが、在日米軍はかつて保有していたCH-46シーナイトと、完全に交替が終了しています。

共産党の小池さんは「CH-47が70機もあるだろう」なんて言っていますが、どうしてこういうマヌケなことを言うのでしょうか。

いいですか、ある限りのヘリを全部投入したら、全国の自衛隊はマヒ状態になってしまいます。

よく誤解されていますが、東日本大震災時ですら、自衛隊のすべてのリソース(資源)を投入してしまったわけではありません。

そのようなことをすれば、自衛隊は半身不随となって、本来任務である防衛ががら空きになってしまうからです。

そんなに大型ツインローター機がお好きなら、かつて普天間基地で海兵隊が使っていたCH-46シーナイトがありましたが、今はスクラップにされてしまってこの世にいません。

かつての東日本大震災時の「トモダチ作戦」には、このCH-46が投入されています。

そんなにオスプレイがお嫌いなら、大至急スクラップ場で再生しますか(苦笑)。

小池さん、「オスプレイである理由」は、米軍が支援に入る以上オスプレイしかないからです。勘繰らなくても、それだけなんですよ。

米軍は普天間基地に2個飛行隊24機を保有していますが、そこから実に3分の1も引き抜いたことになります。

自衛隊は現時点ではCH-47を5機程度しか投入できていませんから、オスプレイ8機の援軍はうれしいはずです。

おそらく米軍にとっても、ギリギリの数です。感謝こそすれ、恨む筋合いじゃないのではないですか。

オスプレイは飛行機のように速く、遠くまで飛べて、ヘリのように離発着できるのが特徴です。

ですから、このような緊急災害時にはまさにあつらえたような機体です。

今回も普天間基地のオスプレイは、フィリピンで訓練していましたが、瞬く間に日本に還ってきてくれました。

これが大型へりなら、航続距離が短いので何カ所か給油したりして、パタパタとのんびり到着したことになったでしょう。

初動段階でオスプレイを投入できること自体、オスプレイの能力の高さが分かります。

また、米軍の支援拠点は岩国基地です。ここに米軍は日本全国のみならず、外国からの支援物資を集中し、そこからオスプレイで運ぶことになります。

おおよそ熊本まで200㎞ですから、オスプレイの速度(最大速度565㎞/h)ならば30分もかからずに支援物資をダイレクトに被災現場まで届けられます。

これが、トラックなど陸上輸送だと、道路が寸断されているために到着しても、そこからまたヘリに乗せ換えねばなりません。

その乗せ換えに乏しい救援要員を、大量に投入せねばなりません。

現在、UH-60Jのような比較的小さいヘリと、オスプレイや自衛隊のCH-47は任務の棲み分けをしています。

ある程度広い面積の確保できる学校や駐車場、あるいは空き地には、オスプレイが飛び、狭い着陸場所にはUH-60Jを用いています。

最後に安全性ですが、これについては過去記事をお読みください。今までたっぷりと危険神話を論破してきました。
※過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-043c.html

オスプレイ危険神話をいまでも言っている航空専門家がいれば、そいつはもぐりです。

簡単に説明しておきます。

1376321535

 出典 防衛省 下も同じ

上のグラフは米軍機全体で見た飛行10万時間あたりの事故率です。最少から二番目です。

グラフ中程にCH-46とありますが、これが小池さんが希望するオスプレイに代わってスクラップになった大型ヘリです。 1376321536_2

上図は米軍全機種の中でのオスプレイの事故率ですが、平均より下です。

散々流布された片方に沈んで壊れるオスプレイの画像は、試験機のものです。しかも配線を逆につないだという凡ミスです。

原口さんが一知半解に言い出したハワイ事故の原因ですが、あれはパイロットの操縦ミスで、エンジンがストップした原因となった砂も、既に改善が終了しています。
※http://www.sankei.com/world/news/151124/wor1511240023-n1.html

それにしても、こういう鉄火場に、阿蘇の噴火の砂とオスプレイを結びつける想像力のたくましさに感嘆します。

この人これでも民主党政権で閣僚だった人ですから、オスプレイのことをいいたいのなら、同じ閣僚だった森本敏元防衛相に聞いてからにしなさいよ。

また、何度か墜落事故を起こしているのは、空軍型のCV-22で、海兵隊のMV-22ではありません。

空軍は、このCV-22を特殊部隊を運用するために使用しているために、アクロバティックな飛行を要求されて事故を起こしたのです。

ただの輸送機である海兵隊型は、こんな無茶をしません。

続いて沖縄地元紙がよく騒ぐ静粛性です。 

V22sound4_2

  (図 Final Environmental Impact Statement for the West Coast Basing of the MV-22※リンク切れ

飛行中は全ての高度でオスプレイはCH-46より5~9dB(デシベル)静かなことがわかります。

これは ヘリコプターがローターから出る特有のバラバラという空気を叩くような音(スラップ音)がないからです。

一説で、6倍静かだと言われています。沖縄左翼は「オスプレイで騒音被害拡大」とやりたくて手ぐすね引いていましたが、気の毒にも空振りで、とうとう「低周波でノグチゲラが死んだ」という電波系説を言い出しました。

気の毒に、もはやオスプレイ・デマも種切れのようです。

次に、オートローターができないからどうたらいうことですが、これはローターが停止した場合に、ふわりと降りる能力ですが、なんのことはない大型ヘリも同じくできません。

無理にやれば自分の重さで壊れます。

次にダウンウオッシュという、ローターから地上に吹き下ろす強い風のことですが、これも大型ヘリも一緒で、これも特にオスプレイだけの特有の現象ではありません。

オスプレイは、世界唯一日本だけで左翼陣営の政治シンボル化したために、ことさらネパール地震で小屋を吹き飛ばしたことが喧伝されてしまいましたが、CH-47でも同じことが起きます。

そういう小屋があるような場所に、降りらねばいいだけの話です。

というわけで、オスプレイを使用することについては、なんの問題もありません。

とまれ、このような救援期に日本で投入できるリソースは可能な限り投入するのが常識であって、くだらない政治の「角度をつける」ことは止めるべきです。

  

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がんばれ熊本!被災経験者からのアドバイス

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熊本地震は発生してから今日で4日目です。 

今回の地震で特徴的なことは、14日の震度7の地震より、16日のM7.3の地震の後の方が、地震が多発していることです。 

熊本地震の場合、熊本、阿蘇、大分で同志に地震活動が起きています。 

このために、地震発生数が急増し、被害地域が拡大しています。いったん18日には地震回数が低調になり、収束に向かうかと思われましたが、20時42分にM5.8の地震が阿蘇で発生しました。

Photo_2ウェザーニュースより引用させていただきました。http://weathernews.jp/s/topics/201604/140105/ 

これは私が経験した東日本大震災とは異なるパターンです。 

東日本大震災の場合は、3月11日に震度6強から7の大きな地震が2回襲い、その後は、震度4ていどの地震か数カ月後まで延々と続きました。 

Photo_3本震から1年間の余震回数の推移と緊急地震速報発表回数(日本国内全体)、気象庁 Wikipedia 

同じ内陸が震源地でありながら、これまで既に発生回数において阪神淡路大震災や新潟県中越地震を上回っています。 

被害マップを見ます。黄色のドットがライフライン寸断された地域です。熊本市、阿蘇地方を中心にして広範に拡がっています。 

土砂崩れ被害が大きかった南阿蘇周辺の被害状況は、判定がつかないほど深刻だと推察されます。 

青ドットが家屋の倒壊です。これも、ライフラインが途絶した地域と重なっているのがわかります。 

緑ドットが通行止め・道路崩壊(※)が起きた地点です。日曜の大水によって、地震地域のみならず熊本全域にひろがっています。 (修正しました)

Photo同上

私の東日本大震災からの経験的注意点を、思いつくままに述べておきます。 

①度重なる強震によって家屋が一見しっかりしているように見えても、大きな損傷を受けている可能性があります。 

震度5強から6弱の地震は、まだ続く可能性があると考えたほうがいいと思います。 

最悪の場合、それが引き金となって家屋が倒壊することもありえます。

家屋の中に入る場合は、かならずひとりで行動せずに、ひとりは家屋の外にいて監視し、ひとりだけで入って下さい。

2人が同時に家屋に入って倒壊した場合、助けを呼ぶ人がいなくなり、救助に時間がかかってしまいます。

家屋に戻る場合には、隣近所や町内会の役員、あるいは警察、消防の人に声をかけてからにして下さい。

あたり前ですが、子供は行きたいといっても、ぜったいに連れていってはいけません。

②家屋内にいる時間は最低限にして、塀、壁、棚など倒壊の可能性があるもののそばに近づかないで下さい。万が一余震が襲った場合、下敷きになる可能性があります。

③家屋に入る場合、身支度をしっかりしてください。今までのあなたの住んでいたマイホームではなく危険地帯だと認識してください。

靴は動きやすく、底が釘やガラスを踏み抜いても貫通しないようものを履いて下さい。

ヘルメットは借りてでも装着してください。万が一なにか落ちてきても、頭部だけは保護せねばなりません。

④持ち出すものは
・保険証類、現金などの貴重品
・単1電池(懐中電灯の電池はすぐに切れて、品不足になります。支援品もなかなか来ません)
・水(ペットボトル。重いので最低限に)
・食料(常温で保存できるものにかぎる。欲張らないで)
・衣類(下着を中心にして最低限にしてください。必ず衣類は支援があるはずです)
・衛生用品(これも支援はくるでしょうが、絶望的に不足しています)
・アイマスク、耳栓は避難所の睡眠で大変に有効です。(たぶん支給されません)
・文庫本(避難生活は退屈との戦いです)

残念ですが、思い出の品などは最低限にしてください。

食料、水だけでそうとうな重量になるはずです。避難所の状況によっては、食料、水は止めて下さい。 

⑤屋内に入って、まず最初にやってほしいことは、電気のブレーカーを落とし、ガスの元栓を締めて下さい。

電気は必ずそう遠くない時期に通電します。損傷を受けた家屋の配線は各所で痛んでいたり、寸断されている可能性があります。 

阪神淡路大震災でも、通電したときに通電火災が多発しました。

幸い、熊本地震では阪神淡路と違って火災が起きていないのが不幸中の幸いですが、電気が戻った時に火災が起きる可能性があります。

すぐにでも自宅に戻りたいでしょうが、非常に残念ですが、この状況では長期戦になる可能性が出てきました。むしろ落ち着いて対応して下さい。

避難所が少なく、収容できずに路上の自動車に寝泊まりする人も多数いるようです。

エコノミークラス症候群が2名でました。政府は、直ちに避難所にすべての避難民を収容できる手筈を整えて下さい。

今はまだ、全国からの支援品やボランティアは現地に入れない状況です。

しかし、全国民は熊本を助けたくて助けたくてもだえているほどです。

東北から現地に向かった陸自部隊の合い言葉は、「恩返しをする」でした。私の気持ちもまったく同じです。

全国は、熊本を声のかぎり応援していることを忘れないでください。

私たちの時もそうでしたが、現在は出口がないトンネルに入ったような気分だと思います。しかし、かならず出口は待っています。

それを信じて、あまり先を見ないで、一歩一歩、一日一日を進んでいって下さい。

がんばれ、熊本、大分!

Photo_6現在はまだpray(祈る)だけですが、募金くらいできます。
http://ichiokuen-wo.jp/saving/9457 

  • 熊本県:平成28年熊本地震義援金
  • ・肥後銀行県庁支店普通預金1639261
    熊本地震義援金 熊本県知事 蒲島 郁夫
    (クマモトジシンギエンキン クマモトケンチジ カバシマ イクオ)

    ・熊本銀行県庁支店普通預金3012170
    熊本県知事 蒲島 郁夫
    (クマモトジシンギエンキン クマモトケンチジ カバシマ イクオ)

    ※私的団体より、熊本県に直接送るのがもっともたしかです。東日本大震災時には多くのエセ募金団体がでました。
    また日赤は長い期間被災者に手渡さずにいたこともあります。

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    熊本地震 孤立した被災者千名を救え!

    Dsc_0752
    当初は震度7という巨大地震のわりに、被害は少ないと思われていた熊本地震が拡大しています。

    よもや28時間後に、2度目の震度6強という地震が到来するとは思いもしませんでした。

    まずは、筆舌を尽くしがたい困難と戦っている熊本県民の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

    さて私の2011年3月11日の東日本大震災時の経験をからめて、お話していきたいと思います。

    忘れられていますが、東日本大震災も2回強震が襲っています。

    1回目は日本人の記憶に焼き付けられている2時46分に発生した宮城県沖の第1波で、その後茨城沖で3時15分に震度6強が襲っています。

    いわば被災地は、往復ビンタを食ったことになります。

    とくに第1波から30分後の2度目の強震は、倒れた家具や、崩れた塀などを直そうとしていた矢先を襲ったために、言葉にならない衝撃を与えました。

    人というものは、一回強烈に殴りたおされると、なぜか2回目は来ないだろうと無意識に思ってしまうもののようです。

    ですから、復旧にたちあがったその鼻先を叩かれると、心理的なショックは計り知れないものがあります。

    今回、熊本の皆様がわずか1日後に、強震に襲われたと聞き、その恐れはいかばかりかとお察しします。

    次に、震災以降に起きた最大の問題は、「生活ができない」ことでした。
    ※当時の様子はこちらから
    ・2011年3月16日記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-efb7.html

    ライフラインが各所で寸断されたために、電気、ガス、水道、電話、携帯などの一切が使い物にならなくなったのです。

    また、ガソリンスタンドが相当数破壊された上に、油を搬送するオイル・ターミナルまで破壊されたために、自動車燃料が2週間近く途絶しました。

    その結果、自動車による移動が、きわめて制限され、震災後1週間目にはほとんど身動きがとれない状況でした。

    いうまでもなく、宅急便、郵便なども途絶したために、外部からの支援も頂戴したのは1週間ほど後のことになります。

    その時頂戴した恩義は、終生忘れません。あらためてありがとうございました。地獄で仏という表現がありますが、まさにその気持ちです。

    さて私の場合、その上に畜舎に水が給水できないという特殊性も加わりました。

    結局、村に流れる川の水を汲みに行くという、前代未聞の苦行をするはめになりました。

    傾斜のきつい川岸をバケツふたつ持って何回も這い上がるのは、もう二度とやりたくありませんね(苦笑)。

    あと数日断水していたら、家畜が渇き死にするところでした。

    また、停電が4日間続いたために、いかなる情報も入らなくなったことです。

    幸い手回式ラジオがあったために、かすかに地元放送局の情報だけはキャッチできましたが、よもや外部社会で、あのような未曾有の津波と原発事故が起きているとは思いもかけませんでした。

    ですから、突然復旧したテレビに映し出される津波の映像をみたときのショックは、今でも鮮明に覚えています。

    それにつけても、放送局のダメさよ。彼らは何も3.11に学んでいないようです。

    NHK以外のすべての民放は、まったく被災者の役にたっていません。今、被災地に直ちに必要な情報は、食料・給水場所の情報です。

    別にバラエティをやるなとは言いませんが、一定枠の中で熊本現地の被災者のためだけの支援情報を流すべきです。地震の原因なんか、あとで考えろって。

    役にたたないだけならまだしも、避難所でカメラの放列を作って支援物資の搬入を妨げたり、低空をヘリで飛んで救援隊の活動を妨害している様子を見ると、こちらまで気分が悪くなります。

    Photo共同通信より引用

    それはさておき、このような私の被災体験から、熊本被災地で起きていることを考えてみます。

    最大の被災地の問題は、生活必需品が欠乏していることです。

    政府の対応は迅速でしたが、寸断されたライフラインのために、県の中心部、あるいは周辺県には届いていても、かんじんの避難所には届いていていないというケースです。

    「政府は、多くの避難者に食料が行き渡っていない状況に危機感を募らせており、食料や物資の供給をはじめとする被災者の生活支援に全力を挙げている。
    「熊本県や周辺の県に物資を届けているが、そこからどこまで届けるかの詰めが混乱している」
    菅官房長官は17日の記者会見で、支援物資が避難者に届いていない現状を明らかにした。輸送網は至る所で寸断され、物資が避難所まで到達しない例も少なくない。」(読売4月16日)

    このような状況には、自衛隊、米軍のヘリ輸送に頼るしかありません。オスプレイのような大量の荷を一度に運べて、しかもヘリのように垂直離発着できる機体はうってつけてす。

    政府が米軍の支援を求めたことは、まことに賢明な措置です。在日米軍の兵站(ロジスティック)能力のすごさは頼りになります。

    熊本空港がマヒしていますが、ここは早急にロジスティック拠点として復旧させねばなりません。

    かつての3.11時には、山形空港などの東北の地方空港が、ロジ拠点としてフル稼働しました。

    東日本大震災時の「トモダチ作戦」について、琉球新報(11年6月24日)はこんなイヤミを言っているようです。
    ※http://ryukyushimpo.jp/editorial/prentry-178539.html

    「東日本大震災に伴う米軍の災害支援「トモダチ作戦」は、放射能に汚染された戦場を想定した訓練だった。」

    絶句ですね。どういう脳味噌しているのか!

    イデオロギーに曇った目で見ると、大災害時に多大の支援を受けた在日米軍すらこのように見えるもののようです。

    今回もこの熊本地震を、便乗商法よろしく、自分の特定イデオロギーを流布する絶好の機会と思った者が大量に出ました。

    大災害と戦っている真っ最中の首相に対する、状況と無関係な安倍政権批判。

    あるいは、川内原発が稼働していることに対する批判。

    はたまた、安保法制への批判などなど、言いたい放題です。節操というものがないのですか。

    で、結局は、北海道補選への支持とりつけですから、開いた口が塞がりません。今、こういう愚かなことを言う人間、とくに議員はよく覚えておいて、落選させましょう。 

    それはさておき、首相がこの被災地に支援物資が届かないという状況を早期に把握したことは評価できます。

    「17日昼の非常災害対策本部会議で、「食料や水が近くの倉庫に届くだけでは役に立たない。被災者一人一人の手元に届かなければ意味がない」と述べ、全省庁で構成する「被災者生活支援チーム」の発足を発表した。
     政府は今回、支援物資を自治体の要請を待たずに輸送する「プッシュ型支援」を実施しており、国の判断で90万食を現地に送ることを決めた。自治体の要請を待っていては対応が遅れる懸念があるためだ。政府は「市町村拠点搬入先連絡リスト」を作成し、支援物資が途中で滞らず、被災者の手元に届くための取り組みにも着手した。」(同)

    バリバリの反原発派の河野太郎防災担当大臣も、余計な反原発的発言を封じているようで、けっこうなことです。

    とまれ、時間との勝負です。現在1000人以上が孤立して救いを求めています。

    日本全国のあらゆる力を投入して、救わねばなりません。

                    ~~~

                           ■ご注意

    ①現時点で、現地はボランティアを受け入れていません。
    全社協 災害ボランティア情報http://www.saigaivc.com/

    ②現時点で、被災地への個人的支援物資は送れません。

    ③現時点では、募金だけが支援できることです。熊本ふるさと納税をお勧めします。
    http://www.furusato-tax.jp/japan/prefecture/43000

    ③デマ、風評は犯罪です。被災者が迷惑します。政治主張はあとでやれ。

    ■経験的災害時必需品

    1 ポリバケツ。ボリタンク。できたら灯油用とあわせて4個ていど。
    ●2 携帯ラジオ。必需品。これがないと情報が来ない。
    ●3 単一電池。できるだけ多数。単一は直ちに売り切れる。
    ●4 飲料水。ないしは緑茶など。水がないと料理もできない。
    ●5 カセットコンロとボンベ。これがないと何も食べられない。
    ●6 ランプ。裸火のローソクは危険。
    ●7 簡易トイレ。都市部では必須。水洗トイレが使えない。
    ●8 ウエットテイシュ。これがないと貴重な飲料水で顔を洗うことになる。
    ●9 食料。インスタントラーメンはただちに売り切れる。
    ●10 衛生用品。子供用紙オムツ。これもすぐに品切れになる。病院は閉鎖されているので、簡易救急セットくらいは用意すること。

     

     

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    日曜雑感 熊本地震に便乗する馬鹿たち

    Dsc_0985

    こういう緊急事態が起きると、バカがあぶり出されます。

    「安倍首相の熊本視察中止は冷酷だからだ」ということを言っている人がいます。バカじゃないか。

    むしろこういう非常事態に、もし首相が現場に視察に行ったら、私は猛烈に批判します。

    政治家で既に何人か行っているそうですが、どうせテレビで目立ちたいためにいくのでしょう。なんの役にも立ちません。ジャマなだけです。

    その間、貴重な救援のためのリソースが失われます。警察は要人警護のために、道路を開け、警護をつけねばならない。

    そんな気を、1分1秒惜しい今、救援隊につかわせるなつうの!

    今、政治に必要なことは、救援隊に目一杯権限を与えること、充分な装備、食料、簡易トイレ、寝る場所などを調達すること。

    福島事故の時に、消防、自衛隊、警察の救援隊はタイベックスを着たまま、階段で倒れるように寝ていたことをもう忘れたのですか。食べるものは缶詰だった。

    そしてなんといっても財政。最後には失敗した場合の、責任を取る覚悟。

    政治家にできることなんか、現場にはなにもない!

    現場指揮に、政府はクチバシを突っ込むな!

    政治家が目だってどうするんだ。あの吉田所長から「おっさん」と呼ばれたカンが、いかに事故処理の足をひっぱったのか総括していないのでしょうか。

    「原発があぶない。被災地の皆さんご心配でしょう」という、信じがたいことをツイートした増山れなという社民党候補がいたようですが、論外。この心根の卑しさには反吐が出ます。
    ※このバカ女のツィートはこちらからhttps://mobile.twitter.com/renaart/status/720600109302489089?p=v

    ちなみに、川内原発をなぜ止めないという人がいますが、今回の熊本地震における川内の観測値は12ガルにすぎません。

    川内原発は南海トラフか動いたことを想定して630ガル+安全率で作られていますので、ケタが違いすぎます。

    とまれ、政治家はこの非常事態を低い志で「政治利用」するな!

    そして、まだ家屋の下敷きになっている人がいるかもしれないこの時期に、低空でヘリを飛ばすバカ民放。

    救援隊は、わずかな音を頼りにして探索しているのです。ヘリのラップ音がいかにうるさいか地上で経験しなさい。

    こういう時の非常時航空管制権が、自衛隊、あるいは警察にないというのは大きな法的問題です。

    最後に、ボランティアはまだ行ってはいけない。状況が危険です。2次災害を誘発する危険があります。
    全社協 災害ボランティア情報http://www.saigaivc.com/

                     ~~~~~~~~~~

    山路さん。おっしゃるとおり、両候補の政策は矛盾だらけで、トランプなとは脳味噌のピンが飛んでいますし、サンダースも財政の裏付けなきポピュリズムの側面もあります。

    ただし、私は昔の尻尾が残っているのかなぁ、サンダースのほうがはるかに好きですが(苦笑)。

    次回から、なぜ、このような超・格差社会が誕生したのか、米国の財政の衰退、米国の覇権国家からの没落などをできるだけ書いていこうと思っています。

    ただ、いろいろな人が既に多数論じていることなので、さらっといくかもしれません。

    この両候補は、おっしゃるように、オバマに対する失望から生まれています。

    第1期の輝かしい登場は、(今思うと信じられん)、まさにOWSに集まった不定形の人々、とくに青年層の大きな期待を背負ったものでした。

    しかしなにも「change」しなかったわけです。
    同時期に生まれたティーパーティもまた、なにも変えられませんでした。

    この左右双方の失望からトランプが生まれ、民主党側からは、さらにオバマのさらに左のサンダースが生まれたのでしょう。

    思えば、第1次大戦の後のドイツが、中間層の没落と財政の疲弊を、一方では共産党が革命によって、いっぽうの右翼はヒトラーによるナチズムによって解決しようとして、結局は世界を巻きぞいにして破滅していった歴史と大変に似た部分があります。

    同じことがくりかえされないことを祈るばかりです。

    とまれ、米国のこのような左右両極端が現れる政治状況は、大変に危険です。

    いずれにせよ、仮にヒラリーが当選しても、このバイアスは変わりません。

    次期大統領は、この濃厚な「内向きの空気」に支配されざるをえません。

    そして米国のこの「うなだれた内向き」の姿勢は、相当長期に及ぶでしょう。このままGゼロの「戦前」期に突入してしまう可能性すらあります。

    世界大戦型戦争はあり得ませんが、地域紛争の複雑な組み合わせの混沌の渦に世界が没していくこともなしとは言えません。

    今、中東、ヨーロッパ、アジア・・・、既にその兆候は明らかです。

    だとすれば、1991年の「第3次世界大戦」の静かなる終結から、現在までは第4次世界大戦までの「戦間期」として後世の歴史書に記されるのでしょうか。

    その中で、あいかわらずわが国だけが昼寝をしています。

    去年の安保法制の議論はひどかったですね。あそこまでひどいとは思わなかった。

    日本の左翼の人たちが「米国につき従って中東に派兵」なんていうのを聞くと、一体いつの話だいって腹を抱えて笑ってしまいました。

    この人たちは1960年からずっと同じことを言い続けていますが、あの当時の米国と、今の米国とは看板は一緒でも、なかみはまるで別物です。

    左翼は「絶対的に強力な米軍」がいて、それに対して「健気に抵抗する日本人民」というナショナリズムを喚起する図式の中でしか生きてこれなかったのですから、仕方がない。

    米国が覇権国止めたら、いちばん困るのはあの人たちだろうな(笑)。

    沖縄左翼が、「米軍は沖縄から出て行け」なんて言うのを聞くと、言わなくても出て行くでしょうよと、その楽天ぶりが、むしろうらやましいほどです。

    私は正直言って、2023年頃といわれる(もっと遅れるか?)辺野古滑走路ができる頃には、米軍は在沖米軍の大幅縮小を開始していると思っているほどです。

    似たようなことは篠原章さんも書いていましたね。

    私は、そのへんもあって、あんな中途半端なくせに恒久的なものを海に作らないでもいいんじゃないか、という考えです。

    それはともかく、従来の「日米同盟を大前提にした安全保障」から、「日米同盟が崩壊した衝撃に耐えられる安全保障」に徐々に切り換えて行く必要があると思っています。

    先日貴兄に反対された在沖海兵隊の段階的撤収は、日本側からもそれに見合った陸自の段階的増強を準備する検討期に入ったと考えるからです。

    沖縄に対して、今までの本土政府のどこか腰が引けた対応ではなく、「沖縄県民は自衛隊が守る」という明確な理念を政府は県民に発信すべき時です。

    その中で、宮古警備隊や、大村にいる水陸機動団の分遣隊派遣、あるいは下地空港の空自使用など、現時点でもいくらでもできることはあります。

    それを今の海兵隊にオンするのではなく、それと入れ代わる形にならないかと思っているわけです。

    とは言っても、貴兄もよくお分かりのように、米軍が果たしている「面」的安全保障インフラそのものの代替はできないわけで、一定数の海兵隊にはいていただくことになるでしょう。

    交渉には必ず相手国の内部事情がからむものです。これからの米国は急速に「うつむいた内向き」になっていくはずです。

    そのような時に、いままでのように日本国内の事情ばかりを言い立てる時期は、そろそろ終わりではないかと思います。

    米国にはそんな日本のわがままに、耳を傾ける余裕はなくなりつつありますから。

    その時、左右のナショナリズムはノイズでしかありません。反米になっても、なんの意味もありません。

    必要なことは、気分ではなく、パースペクティブ(展望)に基づいたロジックと意志です。

    私個人はたいしたことはありませんが、皆様の集合知をお借りしたいと思っています。

     

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    日曜写真館 大相撲つくば場所

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    ↑の写真は大砂嵐にカメラを取り上げられて、彼が撮ったものです。びっくらこいた。オチャメな奴です。


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    米国の超格差社会が生んだ「トランプ・サンダース現象」

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    「トランプ現象」には、大きな背景があります。いや、正確には「トランプ・サンダース現象」と呼ぶのが公平でしょう。 

    この10年以上続いている、米国国内の中間層の没落です。 

    たとえば大統領候補を見てみましょう。「トランプ現象」はただの馬鹿が暴れているわけではないことが分かります。 

    PhotoCNNより引用http://www.cnn.co.jp/usa/35077668.html

    民主党第2位の大統領候補であるバーニー・サンダースと、ドナルド・トランプは、言い方こそ違いますが、ある部分でほとんど同じことを言っています。

    それは1%の富を独占する富者への糾弾と、中間層の貧困からの解放です。 

    ただし、サンダースは「自由・社会主義者」らしく、ヒスパニックやムスリムへのトランプの攻撃を、強く批判している点だけが大きく違います。 

    逆に、トランプはオバマによって進んだ米国の弱体化を「リベラルのクズ共のせいだ」としているのは、ライトウイングだからです。 

    しかし、支持層は非常に近いと言われています。

    強いていえば、サンダースは都市のインテリ青年層であることに対して、トランプは地方の脂の乗った中高年層です。

    サンダースの支持層を1月27日に発表されたキニピアッグ大学の調査で見てみましょう。 

    サンダース候補の支持者をめぐって、以下のポイントが浮かび上がってきます。

    ①18~44歳層がメイン
    ②高所得者層の支持は低い
    ③大卒者は比較的少ない

    一方トランプは、急激に富裕層にも支持を延ばしてはいますが、元来の基盤は没落した中産階級、いわゆるプア・ホワイト層です。

    「いち早くトランプ氏の「勝利確実」が出たジョージア州では、高卒以下の半数近くを固めたほか、大卒以上でも首位を獲得。年収10万ドル(約1100万円)以上の富裕層はマルコ・ルビオ上院議員(44)とほぼ同率だったものの、それ以下の中低所得層は約半数の圧倒的な支持を得た。
     トランプ氏の支援者は高卒以下で低所得層の白人男性が中心とされてきたが、ジョージア州では幅広く票を得た。トランプ氏が従来よりも支持層を広げている様子がうかがえる。」(日経3月2日)

    つまり、左右の主張の違いはあっても、トランプとバーニーは共に没落した中間層を基盤としていることにおいて、好一対というわけです。 

    トランプにとってサンダースは視野の外のようですが、サンダースは、「トランプに勝てるのは私だけだ」と言っています。 

    このような背景には、「アメリカの夢」を支えていた幅の広い中間層の没落かあります。彼らは、米国の人口の6割を占め、地域社会の中核を担い、米国経済の基盤を作り、最も多くの戦死者を出して来た階層です。 

    この米国中間階層が、どれほど没落したのかがわかるデータがあります。

    01_4図 藤井巌喜氏による 下も同じ

    これは2011年10月に、米国議会予算局(CBO)が作成したもので、1979年と2007年の28年間の米国所帯別所得分布を比較したグラフです。

    左端はもっとも所得が低い層で、順に高くなっていき、もっとも右端がもっとも所得が高い層です。 

    これを見ると、米国所帯がどのように推移しているのかわかります。

    ・最富裕層(人口の1%)                 ・・・1979年43%⇒2007年53%
    ・中間層(人口の60%)                   ・・・同     17%⇒           14%

    人口の1%しかいない最富裕層は10%も伸び、一方中間層は3%減りました。

    最も所得の高い右端の2本の棒グラフをご注目ください。「トップ1%」と示されたグレイの部分です。 

    ・最富裕層トップ1%の全所得に対する比率推移 ・・・1979年8%⇒2007年17%
    ・トップ20%の残り19%の同                             ・・・         35%⇒         36%

     つまり、最富裕層1%のトップ・オブ・ザ・トップス、フォーブスの長者番付に出てくるような階層は2倍に増えたが、全体の所帯の所得は、中間層は落ち込み、富裕層内部ですら停滞が続いているということです。

    中間層だけではなく、富裕層内部でも分裂が起きていたのです。 

    次に、実質所得の伸びを見てみましょう。 

    01_3

    このグラフは、わかりやすく米国の格差社会ぶりを現しています。

    ・最富裕層1%の1979年から2007年までの伸び率・・・275%
    ・上位20%のうち残り19%                                 ・・・65%
    ・中間層 (人口の60%)                                     ・・・40%
    ・最貧困層                                                     ・・・18%

    同じCBOのソースを、折れ線グラフにしたのが下図です。

    Photo_3この30年から40年のうちに、人口の1%が富を独占し、彼らはその富をさらに倍まで膨らませているのに対して、中間層は没落するか、停滞したままで、その格差は天文学的に開いているのがわかります。

    これについて米国で准教授をした経験のある日本人研究者は、こう述べています。※http://kbooks.hatenablog.com/entry/2016/02/08/上の図も同じ



    「トップ1%は、1979年から2007年まで、富を急上昇させましたが、残り99%の人はほぼ変わらない生活を過ごしています。
    またアメリカは「自由と平等の国」で、自身を「中流階級」と考える国民が大多数を占めていましたが、現在は、アメリカのトップ1%の裕福層が、アメリカ全土の富の40%を独占し、残りの80%の人が全体の富の7%を分け合う状況になっています。
    トップ1%や9%のお金持ちが大部分を独占する一方で、貧困層の40%で、赤の小さな点の部分を奪い合っています。」

    Photo_2http://www.mdsweb.jp/doc/1203/1203_03u.html

    上の写真は、「私たちは99%だ」というプラカードを掲げたオキュパイド・ウォールストリート(OWS)運動のひとこまです。

    彼らが言う「99%」とは、上図でもわかるように1%の最富裕層のみが富の9割を独占する米国社会の分裂を強く批判しています。

    やや誇張されていますが、そのとおりの実態のようです。

    同時期に米国に現れたのが、保守層のティパーティ運動でした。

    このように見てくると、トランプやサンダースが偶然に生まれたわけではなく、米国社会の分裂の狭間から噴出した中間層の怒りがエネルギー源となっているのがわかります。

    したがって、抜本的改革がなされない限り、米国はこの超絶格差を修復するために、いっそう内向きになっていくことでしょう。

    このような中長期トレンドが背景にあって、でてきたのがトランプだったということを、私たちは念頭において見ていく必要があります。

    これは来週じっくりやりたいテーマですので、続けます。

     

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    日本の安全保障の根本的欠陥とは

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    まずは熊本地震に心からお見舞い申し上げます。かつての被災地として地震の恐ろしさは身に沁みてわかります。 

    少しでも被害が少ないことをお祈りいいたします。 

    この被害が大きかった震源地の益城町は断層だらけの場所にあります。

    Photo_5国土地理院、都市部断層地図

    さて残念なことに、このような大規模災害が発生すると、かならずデマを流して流布する馬鹿者が登場します。 

    熊本は、今回再稼働している鹿児島川内の隣県ですので、絶対になにかやるトンデモ野郎が出ると思っていました。 

    残念ですが、今回も出ました。 

    Photo_2

    これは映画のワンシーンをカットして、川内原発が炎上しているという許しがたいデマを拡散しています。

    既に2cにはスレッドが立っているようで、「メルトダウンくるでー」などということを書き込む、これまた馬鹿者もでたようです。 

    川内原発は正常に稼働しています。玄海原発は稼働していません。

    日本テレビ系(NNN) 4月15日(金)3時6分配信によれば
    「■原発
    一方、九州電力によると、鹿児島県にある現在稼働中の川内原発について、原子炉が緊急停止するなどの異常は確認されていないという。また、現在停止している佐賀県の玄海原発についても、異常は確認されていないという。」

    さすがにこんな品性下劣な人物を反原発派だとは思いたくありませんが、震災時に意図的にデマを拡散する行為は、もはや犯罪です。

    東日本大震災・福島事故の時は、星の数ほどの噂、デマが流布され、職業的テマッターである武田邦彦、上杉隆、岩上安身、早川由紀夫、バズビーなどの職業的デマッターすら誕生しました。 

    これは現場の救助を遅らせるばかりか、被災者を苦しめ、復興の大きな妨げになります。 

                        ~~~~~~~~

    さて、今日は「名無し」という人物からのコメントにお答えしながら、「対等な同盟関係」が可能か考えていきます。 

    彼の文章はひっ散らかっているために、元文はコメント欄で読んで下さい。

    「(略)日本は、他国を侵略するような大規模な軍事力は不要と言っているのだ。
    とにかく、日本を侵略しようと考える国が痛手をくらい、攻める気にならない程度の戦力を充実させるだけでよい。
    具体的にどの程度の戦力を持つべきか議論の余地があると思う。
    もちろん、この手の自主防衛は、国民の理解あってこそだがな。
    国民無視、国が守るべきルール憲法も無視、大義の為などという方便があっても自民党の暴走は認めない。(略)」

    Photo_3https://www.youtube.com/watch?v=txLGG46kAnk

     初めは、「国が守るべきルール憲法も無視・・・自民党の暴走は認めない」」という言い方からして、よくある護憲派の主張そのものに思えました。

    しかし2本目のコメントで、「国民の理解を得て改憲したのち、正式な軍隊を持つ事を前提にしている」と書いてきましたので、ガンコ派護憲論者ではないようです。

    ガンコ派は、改憲など口にするのも汚らわしいというスタンスですからね。 

    Photo_4http://saigaijyouhou.com/blog-entry-6714.html

    去年、結局、最後には憲法学者の皆さんが揃って憲法違反だとのたまうたことが決め手になって、国民の空気を作ってしまったことはたしかです。

    では、護憲派はほんとうに「護憲」しているのでしょうか?そこから行きましょう。

    私は違うと思います。彼らは、自衛隊や日米安保を前提にして、その存在に目をつぶって「護憲」を語ろうとしてきました。

    一種の歌舞伎みたいなものです。 

    もし本気で「違憲」を叫ぶなら、すっきりと安保条約と自衛隊そのものまで否定せねばならなくなるからです。 

    この名無し氏が、「国が守るべきルール」といっている憲法第9条です。

    1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 
    2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

    これには原文があります。

    下がGHQが提示した原文です。憲法9条はこれをそのまま直訳しているのが分かります。

    ■THE CONSTITUTION OF JAPAN - CHAPTER II RENUNCIATION OF WAR - Article 9
    2) In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.

    「陸海空軍」を否認した後に、ご丁寧にも「その他」までつけて準軍隊すら否定しています。 

    準軍隊とは,有事においては正規軍に組み込まれる武器を保有する国家機関ですから、国際常識上は、国境警備隊、沿岸警備隊がそれにあたります。 

    つまり、この2項をそのまま読めば、自衛隊はおろか海上保安庁すら否定せねばなりません。 

    しかも国の「交戦権」(The right of belligerency )すら否定してしまっているという悪意に満ちた三重否定です。 

    交戦権とは、実のところこの日本国憲法の中でしか登場しない奇妙な概念で、世界の国々は例外なくすでに「あって当然」としているから、とくに言わないという国家が生存するための自然権です。

    日本は、米国によって正式な軍隊の保持と「交戦権」のいずれも否定されてしまったために、自衛すらできなくなりました。

    これは、当時のGHQが日本を一種の保護領として見ていたために、国家として徹底して骨抜きをする必要があったからです。

    そのために、主権回復後日本政府は、お巡りさんのピストルで国を守るはめになりました。

    そこで苦し紛れに思いついたのは、警察予備隊を自衛隊にすることでしたが、そこで困ったのは、「軍隊」にしてしまう9条2項に抵触することです。

    では、自衛隊は「軍隊ではない」ということにしよう、「交戦権」が持てないんだから「自衛権」としたらどうだろうか、と知恵を絞ったわけです。

    これが自衛隊が、それから60年もたって未だに抱えもっている「軍隊もどき」という特殊な性格です。

    そして以後、なんどか国際状況に合わせて憲法を「改憲」していくことになります。これが「自衛権の限定」です。  

    たとえば、なにか新しい状況が起きるたびに新法を作って、政府が命令を出さねばならないようなポジティブリストがそうです。

    日本以外のすべての国々では、これこれはしてはいけないという事項が、国際法によって定められていて、それ以外はできるネガティブ方式です。

    これらは警察官職務執行法という、「警察の概念で軍隊を縛る」必要から生まれたわけです。  

    また、国際社会で生き残るために、米国との同盟関係を結びましたが、これも軍事同盟である以上、その中に「相互防衛」という責務が盛り込まれていました。  

    それが日米安保条約前文及び第5条、第6条です。

    日米安全保障条約 前文
    (略)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次のとおり協定する。(略)
    第五条 
    各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
    ■第六条
     日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリ力合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。(略)

    かつて安保条約文を一行も読まなかった安保反対派の私としては、既に日本は米国と「集団的自衛権を固有の権利として有していることを確認」していることに驚かされました。

    いかがでしょうか。読み違えようもありませんね。この前文と5条、6条は秘密条項でもなんでもないのに、ほとんどの日本国民が知りません。

    というのは、護憲陣営も政府側も、「言挙げしないが、お互いに守ろうね」みたいな暗黙の了解事項があったからです。

    それは、日本が軽武装国家でずっといつづけることです。

    護憲派も9条2項をまるごと適用すると、日本が立ち行かないくらいわかっていましたし、政府側はさらによく分かっていました。

    ですから、自衛隊を「警察の権能しか持たない軍隊のようなもの」であることを前提として、日米安保によって「米国に守ってもらう」ことで外征型軍隊に成長することを封じ込めようとしたわけです。

    ですから、今さら安保法制を「違憲」と呼ぶのなら、日米安保も、いや自衛隊すらいらない、GHQ原文のどおりの占領下の日本に戻ろう、ということになりかねません。

    皮肉なことに、憲法は、「違憲」であるはずの自衛隊と日米安保によって「守られていた」のです。

    違憲の鉢の中でしか咲けない護憲の花といったところでしょうか。間違いなく世界でひとつの花でしょうな。

    この自衛隊という奇妙な花は、現場力がケタ違いだったために60年たってもがんばって国民の信頼を勝ち得ていますが、一般の国ならとうに枯れてしまうか、クーデターでも起こしていたでしょう。

    憲法を変えないためには軽武装国家である必要があり、それができるのは日米同盟があるからだ、という根本的矛盾を持っていたのが護憲論だったのです。

    それに眼をつぶって、「憲政」を国民に説教を垂れるのが、憲法学者たちのツラの皮が厚,いところです(苦笑)。

    このような根本矛盾は憲法学者だけのものではなく、安全保障そのものの根本的欠陥なのです。

    これでどうしていきなりどこどうしたら米国と「対等な同盟」になれますか。コメント氏は「卑屈」といっていましたが、そういう気分の問題じゃないんだよ。

    私は改憲などは後回しでいいから、まずはこういう欠陥を修正し、いざという時に機能し得る安全保障体制を作るのが先だと思っています。

    ところで、このところ世界情勢に大きな変動が観測されるようになってきました。

    それが米国の国力の衰退と、それに伴う「世界の警官卒業宣言」です。

    詳しくは、先週からのトランプ・シリーズを読んでいただきたいのですが、明らか米国はトランプに象徴されるような、「息揚々と撤退する」構えのようです。

    仮に彼でなくとも、この流れを帰るのにはそうとうな抗力が必要です。

    このような時に、このコメント氏がいうような「対等な同盟」とはなんでしょうか?

    「対等」というのは、この人を支配しているらしい「卑屈にならない」というような「気分」ではありません。

    「対等」な軍事同盟には、明確な概念規定が存在します。よく集団的自衛権を「対等な同盟」だという人がいますが、まったく違います。

    集団的自衛権は、そんなご大層なものではありません。

    国際常識上では「対等な同盟」とは、即ち「双務的」な同盟関係を指します。それにもレベルがあります。

    ①トランプがいうように「米国防衛義務」を日本も負うこと。
    ②米国の覇権国家負担を分担すること。
    ③「米国防衛義務」はないが、「日本に関わる状況においては」米国など外国も防衛する場合があること。(オージーなど外国も含む)
    ④日米軍の地位を定めた日米地位協定第17条5Cの不平等性を改定すること。

    ①政治的、軍事的、財政的、いかなる意味でも不可能です。
    ②不可能です。強いて言えば、アジア地域の安定に寄与できるていど。政府は、これについてもいくつかの類型を細かく指定しています。私はこんな例示は手の内をバラすので良くないとおもいますが、仕方がない。
    ③今回の安保法制で決まったことです。
    ④手つかずですが、避けて通れません。

    というわけで、トランプは日本を双務的な同盟にしたいと口では言っていますが、よほどの馬鹿でないかぎり、それは不可能なことは分かっているはずです。

    日本としても②をやりつつ、信頼関係を深めて双務性を高めていき、③④などを改定していくなかから、ゆくゆくは憲法も変えていくていどの地道なことです。

    それにしても、どうしてこの安全保障論議という分野は、「気分」が支配するのでしょうか。

    日本にはできることとできないことがあり、できないことは拒否する、できることから始めていく、それがもっとも有効な「対等な同盟」関係なはずです。

    このように日本の安全保障は、60年もの時間をかけて複雑骨折しているために、「改憲サプリ」を一回呑んだていどでは治癒しないでしょう。

    仮に国民投票という断崖絶壁をよじ登ったとしても、その先には個別の自衛隊法の改正において再び積年の矛盾と対面せねばなりません。

    普通の国になるのは、なんと気が遠くなるほどの道のりでしょうか・・・。

    そんなわが国は、逆立ちしても米国と「対等な同盟」などになれる道理がないではないですか。常識で考えなさい。

    だから私は、右も左も妙に元気のいい米国からの自立を叫ぶ人には、老人めいたことを言いたくなるのです。

    ※改題して、最終部分を書き加えました。(11時)

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    日本人は「日米安保が永遠だ」と錯覚している

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    昨日もらった「共産党に一票入れる」という人も、その前に来た自主防衛派の人も、無意識のうちに「日米安保は永遠にそこにある」と無意識に思っているはずです。 

    自主防衛派は口では「自主防衛力があれば、米国なんかいらないさ」と一見元気ですが、ではその時期が3、4年先だったらどうします。 

    撤収時期まで日本は選べませんよ。ひょっとしたら来年かもしれないし、10年先かもしれない。 

    いずれにしても、日米安保条約は、片方の一方的通告で終了できますからね、選べないんです。

    どうします、トランプがいきなり「どうもジャップはカネ出し渋っているようだから、来年、安保廃棄して、出ていくかんね。後はよろしく」と言ったら。

    昨日書いた戦力投射のための①から⑦までの「自主防衛」軍備をもつためには、短く見積もっても、20年から30年はかかります。その間、日本はスッポンポンです。 

    護憲派に至っては、日本が軽武装国家でおっとり構えていられる根拠が、実は日米安保にあったことに気がついたでしょうか。

    いや、気がついても気がつかないふりするでしょうね。だって彼らの政治主張の一丁目一番地だもんね。

    しかしお気の毒にも、この「安保反対」「防衛力強化反対」という左翼スローガンは、実は分裂しているのです。

    だって、日本の防衛力を強化しないために、日米安保はあるのに、日米安保を取ってしまったら、日本は独自に中規模軍事大国の道しか選択できなくなるじゃないですか。

    どうしてこんな簡単なことが、この人たちにわかんないのだろう。左翼が護憲9条していられるのは、実は日米安保があるからなんですよ。

    日本は、前回見たように軍事大国になる条件の、①から⑦までの他国への侵攻用の武装を一切わが国は持っていないし、持つ意志はないと国際社会に明言してきたわけです。 

    それは他ならぬ、日米安保によって、米国が「面」的に安全保障の基盤を作っていてくれたからです。

    日本は「点」である日本列島の基地を米国に提供する代償として、いちおう「米軍に守ってもらっていることにしようね」という暗黙の了解がありました。

    福島瑞穂さんがよく「在日米軍は日本を守るためにいるわけじゃない」なんていかにも秘密の暴露のように言っていますが、そんなことはわかりきった話。なにを今さら。

    福島オバさん(もう、おばぁさんかな)の言うとおり、横須賀を「母港」とする第7艦隊は日本防衛のためにいるわけではないし、三沢は朝鮮半島や沿海州有事のための空軍基地です。

    普天間やシュワブは、台湾と朝鮮半島有事に備えた出張所です。 

    沖縄が出張場(硬い表現で「前方展開基地」と呼びますが)ならば、本店は神奈川県の横須賀にあります。

    横須賀については、実家が近くにあったこともあって、何本か記事にしています。
    ※関連記事
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-a93c.html
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-9963.html

    Photo_5http://sumi76.exblog.jp/21027782/

    写真で入港して修理をしているのが、CVN-73ジョージ・ワシントンです。CVは空母のことで、Nはニュークリア(原子力)を現しています。

    これを入渠させて整備できる海軍基地は、米本土にノーフォークとニューポートの2カ所と、海外ではここ横須賀と佐世保にしかありません。

    こんな大きなドックは、日本にしかないからです。これには巨大な工廠が付属していますが、働いているのはほぼ全員が日本人技術者です。米軍は原子炉だけのメンテです。

    ちなみに腕は日本のほうがいいそうで、米国の他の艦隊の船は、整備時期になるとわざわざ第7艦隊に配置換えするという話もあるそうです。

    それはさておき、米国はこの横須賀本店がある日本の基地を戦力投射根拠地(パワー・プロジェクション・プラットフォーム)として、インド洋、南シナ海、東アジア全域というアジア全域と太平洋の半分を守備範囲としています。 

    これは米海軍最大の範囲で、地球のほぼ半分をカバーしていることになります。 

    この主力が米海軍第7艦隊です。下図で7F(フリート・艦隊)と書かれたのがそれです。 

    PhotoWikipedia

    この図に、いわゆる「不安定の弧」(arc of opportunity)がスッポリ入っているのがわかりますか。
     

    Photo_2

     では例によって、この「不安定の弧」を概念規定しておきましょう。

    アメリカ国防総省2001年に発表した四年ごとの国防計画見直し(QDR2001) では、不安定の弧について次のような見解が示された。

    1. 大規模な軍事衝突が起こりやすい 
    2. 力を伸ばす大国と衰退する大国が混在する 
    3. 豊富な資源をもつ軍事的な競争相手が出現する可能性がある 
    4. アメリカの基地や中継施設の密度が他の地域とくらべ低い地帯」
      Wikipedia

     上図に世界の紛争図を乗せたものが、下図です。

    Photo_42007年 小学館 SAPIO(サピオ)より引用 クリックすると大きくなります。今見ると9年前はのどかだった。

    まさに紛争地オンパレードで、米国が横須賀から撤収すればこの地域全体の安全保障の基盤が破壊されてしまいます。

    しかし実はこの図ができた2007年は、まだ平和なものでした。

    の後オバマの「世界の警官卒業宣言」で、一気にウクライナ、南シナ海、シリア、ISテロが火を吹いて、いまや世界は修羅の巷になってしまったのはご承知の通りです。

    この米国が提供している安全保障基盤のことを、別の言い方で「安全保障インフラ」という場合があります。 

    そう、日米安保は、道路や通信、港湾なんかと一緒の一種のインフラストラクチャー、「下支えする構造」なのです。

    ですから日米安保とは、国際的広がりを持つ安全保障の「公共財」なのです。

    この安全保障インフラがあるから、去年からの安保法制の審議も、日本人は賛成反対を問わず大部分が、「安保はこのまま未来永劫続く」という大前提で議論していました。 

    普天間の移設の時もそうです。賛成反対も共に「このまま在沖米軍はいる」というのが前提で議論しています。

    沖縄左翼の人たちは、口では「全基地撤去」なんて言っていても、実は「よもやそんなことはできまい。できないからどんどん言ってやって、政府を困らせてやる」と思っていました。

    この人たちは、沖縄から基地かなくなることはない、と心から信じています。

    そうでしょうか。私は懐疑的です。違うと思います。

    彼らの本心ははしなくも今回共和、民主両党の候補が揃って内向きなことでわかりました。 

    いきなりということはないでしょうが、このまま日本が彼らの重荷を代わって引き受けない限り、そう遠くない時期に米軍は、日本から足抜きを開始します。

    ちょっとペシミスティックかな、とも思いますが、その可能性がいよいよ高くなってきました。

    すからこの文脈で言えば、集団的自衛権も辺野古移転も、米国にそうはさせないための日本側の努力を見せるためともいえるわけです。 

    沖縄だけ見ていると、米軍は世界の嫌われ者のように見えますが、そんなことはありません。

    アジア・オセアニア諸国は、米国の密かにアジアから逃げようとする空気を敏感に察知して引き止めにやっきです。

    かつての宿敵ベトナムは「カムラン湾なんかいかが」と言い、華僑都市国家のシンガポールまでが「いい軍港ありまっせ」と言いだしたほどです。

    フィリピンは、かつてクラークとスービックに大基地があったのを、反米運動の高まりで追い出してしまったために、今、大ピンチになっています。

    もちろん米軍カムバックですが、今は米国のほうが渋っているようです。

    このようにアジア地域で米軍を追い出す運動が盛んなのは、唯一沖縄県だけです。ちなみにオスプレイ反対運動も世界唯一でした。

    ふゆみさんはオージーを例に出していましたが、この国は、今まで海に囲まれて孤立した大陸だということで超然としていた部分があります。

    もちろんベトナム戦争や中東の戦争にも小部隊を出して、「米国の戦争」にはぬかりなくつきあっているのですが、しょせん自分の問題ではないという部分がありました。

    なんせ、具体的にオージーを小規模ですが攻めたのは日本だけですからね。

    ま、だから戦後長い期間、わが国はオージーの仮想敵国でした。

    この海に囲まれているという安心感は格別です。うちの国もそうですから、わかるでしょう。

    Photo_6Google Earth 

    ですからオージーはインドネシアとの陸上でのこぜりあいていどを心配すればよかったのです。

    ところが、この間顔色が変わりました。中国の海洋膨張が、オージーの前庭の南シナ海で展開されるようになったからです。 

    これがこのまま推移すれば、オージーの海のルートはほぼすべて中国海軍の支配下に入ります。

    中国海軍は、「航海の自由」という近代の概念そのものが欠落した国ですから、さぁ大変。

    そうなった場合、オージーは文字通り空路しかない「孤立した大陸」になってしまいます。 

    オージーはご承知のように大量の鉱物資源を中国に買ってもらっていましたから、秋波を送っていたのですが、保守党に代わって変化しました。 

    「海洋の自由」を守らないと、大変なことになるとやっと気がついたのです。日本から潜水艦を買うというのも、この流れです。

    また、「そんなに沖縄が海兵隊がキライなら、うちの国にどうぞ」とまで言い出しています。

    米国にとって日本が追い出したものをオージーが引き受けるとなると、そうとうに日本への感情が悪化することは間違いありません。

    このように世界が不安定化するちょうどその時期を狙いすましたようにトランプが「米国さ、ビンボーになったから、世界の警官なんかさっさとやめんべぇ」(←茨城弁)と言い出したのですから、世界がどよめいたのです。 

    長くなりましたので、今日はここまでとします。

     

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    トランプ現象が進めば、日本は日米安保を廃棄して、中規模軍事大国になっていくだろう

    046
    (昨日からの続きです)

    当時想定された、G2路線の最悪シナリオはこうでした。 

    このG2にはいくつもの段階がありますが、おそらくその最終的な形態は、在日米軍は沖縄はおろか日本全土から撤収し、グアムの線まで後退します。 

    このラインを中国は「第2列島線」と呼び、伊豆諸島を起点として小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアへ至る線まで中国海軍を進出させることを目標にしています

    Photo

    (図 右側の赤い線が第2列島線、左赤線が第1列島線 Wikipediaより) 

    その場合、日本が置かれた条件を思いつくままに上げれば、このようなものです。

    ①人口1億2千万人、世界屈指の技術力をもつGDP世界3位規模の工業国である
    ②日米同盟崩壊によって、集団的防衛体制(日米安保、NATOなど)を持たない孤立した国家となる
    ③エネルギー自給率、食糧自給率共に低く、シーレーンによって輸入されている
    ④防衛力は中規模であり優秀であるが、専守防衛のみに偏っている
    ⑤MD(ミサイル防衛)はすでに持ち、潜在的核兵器開発能力を持つ
    ⑥憲法問題など多くの防衛関係の法整備が不十分である

    以上のようなわが国が、ハワイ以東までを「約束された海」として海洋進出する中国の矢面に孤立して立たされた場合、いかなることになるでしょうか。 

    しかも、その時、わが国は唯一の外国との軍事同盟である日米安保を廃棄されてしまっていたとします。 

    あまり考えたくない最悪シナリオですが、あえて考えるなら、日本が取りうる選択肢はたぶんきわめて限られたものになるはずです。

    現在の自衛隊には他国への侵攻能力はありません。それは、戦力を外国に投入する能力がないからです。

    その能力のことを専門用語で、戦力投射能力といいますが、戦力投射能力(パワープロジェクション)とは、俗に言う他国への「攻撃能力」、あるいは外征能力のことです。

    侵攻する国に、多数の兵員と武器弾薬を送り込む能力、あるいは、核ミサイルを撃ち込む能力です。

    ●戦力投射能力として、国際常識上分類される兵器
    ①大陸間弾道ミサイル(ICBM)
    ②大型空母(原子力推進であることが望ましい)とイージス艦、攻撃型原潜による空母打撃群
    ③水中発射型核ミサイル(SLBM)登載戦略ミサイル原潜、長距離核ミサイル搭載大型爆撃機
    ④他国に橋頭堡を築くための海兵隊
    ⑤大量に兵員装備を送り込めるC-17やC-5など戦略大型輸送機
    ⑥大量の兵員・装備を送り込める強襲揚陸艦
    ⑦空軍の攻撃機、戦闘機、電子戦機、空中警戒管制機などで作る打撃群(ストライクパッケージ)

    ●以上を保有している国
    ①米国、仏、英国、中国、ロシア
    ②米国、仏、英(中露は能力不足)
    ③米国、ロシア、中国、英国、仏
    ④多くの国で持つが、本格的な海兵遠征打撃群は、米国のみ。近いものはロシア、中国、海兵隊の元祖英国。
    ⑤米国、ロシア、中国、英国、仏
    ⑥米国、英国、仏、NATO。他の国も個別には保有するが能力不足
    ⑦米国、NATO、ロシア(中国は能力不足)

    これらすべてを共通して保有するのはP5(常任理事5ヶ国)で、いずれも外征型軍隊です。

    わが国は日米安保が存在するために、この①~⑦までの軍備を持つ必要がありませんでした。

    その結果、海自は対潜水艦作戦と対空防御のみ、空自は迎撃のみ、陸自は守備専門に特化しています。

    世界の専門家から見れば、自衛隊がアスリートだとするなら、水泳なら平泳ぎだけ、陸上なら高飛びだけ、球技ならバトミントンだけが得意といった、すこぶるバランスの悪い「軍隊」なのです。

    そもそも憲法上は「軍隊」ではなく、「軍隊のようなもの」でなどという奇妙な武装集団は、世界にひとつしかありません。

    わが国が、やがてそのいずれかひとつを少数持つことはありえますが、一定数揃わないと外征型軍隊とは見なされません。

    戦力はあくまで一定数なければ、現実に機能しないし、質だけではなく「量」の問題です。

    さらには、それを支える大枠の哲学、あるいはドクトリン(※)がなければ、装備は意味をなしません。※ドクトリンとは政治、外交、軍事などにおける基本原則のこと。

    これが国際関係論でいう、脅威=能力+意志という法則です。

    たとえば、わが国で強襲揚陸艦や長距離輸送機を装備することはありえますが、それはあくまで離島防衛のためやPKO派遣のためです。

    ですから、装備数もあくまでも少数であって、これでは外征など絶対に不可能です。

    それは日本には外征する必要がなく、したがって外国に侵攻するためのドクトリンそのものが不在だからです。

    Bandx7xceaatxrb

    (写真 米海軍空母打撃群。こういうのを言葉の正確な意味で「空母」と呼ぶ。いかに多くの艦船群によってなりたつのかわかる。人員も約7000人に登る。米国はこれをなんと12セット持っているのだから、むしろ呆れる。ただし予算不足で、稼働しているのは3セット)

    日本の場合、①から⑦まで、その全部に欠けていますし、その意志も能力もありません。

    ただし、幸か不幸か、日本はこれらすべてを10~20年後には実現可能な技術力と経済力を有しています。

    もし本気で外征型軍隊を作る気なら、改憲して、国防予算を今の5倍ていどにするしかありませんが、やってやれないことはありません。だから困るのです。

    日本は初めから無理な小国ではないのです。

    当然、そのための財政的手当てのために、増税を図らねばなりませんから、消費税を20%、30%にして、またデフレに戻りたい人だけが夢想してください。

    なお、この場合も徴兵制は不要です。米国すら志願制なのに、わが国が徴兵制などというメンドーなことをする意味がありません。

    かつての帝国海軍は、実に国家予算の6割をつぎ込んでいました。予算を独り占めにしたために、国民は貧しく、陸軍は常に海軍を憎悪していました。

    いかに身の丈にあっていない一点豪華主義の海軍だったかわかります。

    現代において、そのような「攻撃力」を持つ意味はまったくありませんし、そもそもこんな状況にならないために、日米同盟という集団的自衛権があるのです。

    戦前は集団的安全保障という、概念そのものがありませんでした。

    Photo_6

    (写真 ロイター)

    しかし不幸にも、米国の裏切りによって日米同盟という日本やアジア全域の安全保障のインフラそのものが消滅した場合、わが国は、①から⑦を保有するフランスのような中規模軍事大国になるしか生き残れないでしょう。

    ですから、「戦争法制撤回」などという野党連合の主張は、平和の衣をまとった戦争待望論にすぎません。

    今、米国がトランプに象徴されるように、米国国内に回帰しようとするこの不安定な時期に、このような主張をすればどうなるのか、火を見るより明らかです。

    この人たちは、米国が4、50年前の世界の警察官に固執していると考えています。

    いつまでも米国は大軍を率いて懲罰に世界を駆け回る気だと考えて、それを大前提にしています。

    とんでもない。これまで何度も書いてきているように、一体それはいつの話ですか。

    彼らがひと世代前の中東戦争やイラク戦争を念頭に置いて、「自衛隊を米軍に従って中東に派遣させる気だ」と去年言い出した時には、思わず吹き出しました。

    この人たちはまったく世界を知らないし、知ろうとする気もないくせに、時代錯誤の恐怖を煽り立てているのですから、たまらない。

    本音の米国は覇権国の荷を降ろしたがっています。

    左翼が言うような中東に介入する気などさらさらありませんし、アフガンからも遠からず撤退するはずです。

    ましてや尖閣などという「岩礁」などで中国と戦争になることなど論外です。

    オバマは、ギリギリ覇権国から転落する崖っぷちで、どうしようかと逡巡しているといった状況にすぎません。

    共和党のトランプと民主党のサンダースが、立場は左右両極ながら、一致しているのは覇権国からの撤退です。これはきわめて象徴的です。

    次の大統領が、トランプであろうとなかろうと、この流れは支配的です。

    このような時期に、集団的自衛権を強化するための安保法制を撤廃したらどうなるのでしょうか。

    それは、日本からも「日米安保などいらない。もう日本はアジアの安定には協力しないよ」という外交的シグナルだと100%、そう受け取られます。

    これがトランプ現象を加速することだけは間違いありません。

    トランプは、「戦争法案廃止」ともなれば、ほら見たことかと口を歪めて、「言ったとおりだぜ。ジャップは1ドルも出さない。汗もかかない。こんなチキンな奴らのために、米国の青年の命を捧げるわけにはいかないぜぇ」と叫ぶことでしょう。

    国際政治学者・三浦瑠麗氏がいみじくも名付けたようににトランプ現象とは、「意気揚々たる撤退」なのです。

    トランプ現象を彼らの国内事情にだけに狭くみるのではなく、米国は確実にトランプが言うような方向に舵を切りつつあることを、日本人はいいかげん理解したほうがいいと思います。

    私は「平和国家」を叫ぶ人たちには抜きがたい不信感を持っていますが、「平和国家」であることの遺産はしっかりと継承すべきだと思っています。

    おそらく今起きている世界の覇権国シフトには、大規模な戦争がなければ半世紀以上の時間かかることでしょう。

    その間に、米国はどんどんと外国に展開する軍隊を引き上げていき、内向きの「普通の大国」に戻る可能性もあります。

    この過渡期に対応して、私たちも「平和国家2・0」を作る時期なのです。

    戦争をしないために、何に備えるべきなのかを真剣に議論する時期に、このトランプが現れたことに感謝せねばなりません。

    トランプはただのバカですが、真実の一面を言い当てるバカなのです。

    ※大幅に書き換えて、写真も入れ換えました。ほんとすいません。気になるといじり回す性分なんです、私。私の記事が「熟成」するのは12時くらいです(涙)。

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    ブレジンスキーという逆神の祟りとは

    009
    先日の「真の日本人」氏とやらの、言説を聞いていると、自分の民族的自尊心と1億3千万人の安全を同一視している危うさを感じました。 

    彼はこう書いています。 

    「アメリカが日本を守る必要はない。日本が自国を守ろうとして軍事力が不足しているのだとすれば、自分で軍事力を増強すればよい。アメリカの知ったことではない。」

    要は、自分の国の安全保障を嵩上げしていければ、日米安保なんかいらないんだ、という考えです。
     

    浅いなぁ、というのが、私の初めに読んだ時の感想です。小林よしのりの読みすぎじゃないのかな。

    賭けてもいいが、この人は、自国の安全保障なんかまじめに考えたことは一度もないはずです。勢いで言っているだけ。

    この考え方は、実はよくあります。とくに必ず「接受国支援」、俗にいう「おもいやり予算」の時期になるたびに左右両方から飛び出します。 

    そもそも、この「思いやり予算」なんてネーミング自体が、あちらを向いてまぁまぁ、こちらを向いてなぁなぁといった村内政治のような言い方ですから誤解を招きます。 

    ああ、いやだ。言霊民族の日本人特有の耳当たりのいい言葉で、本質をすり替えるてしまう方法そのものです。 

    きちんと「接受国の義務だ」と言い切ればいいのに、それをしません。 

    だから「おもいやり」というわけの分からない言葉を温床にして、誤解の蔓が各方向に伸びていくことになります。 

    ある元新聞記者は、こう「おもいやり予算」について書いています。 

    「日本はおもいやり予算の大盤振る舞いだ。かつてカーター政権時の大統領補佐官を務めた米政治学者のブレジンスキーが日本を「protectorate(保護領)」と呼んだ根拠の1つとされる。
    要するに、属国なのである。日本は幕末に列強から治外法権、不平等条約を呑まされたが、現在もそれと同等、あるいはそれ以下の扱いを米国から受けていると考えていいだろう。
    この30年間に日本政府が在日アメリカ軍にかけた「思いやり」は総額5兆1000億円にも達しているのである。この金は事実上日本の軍事的支配者である在日アメリカ軍に対する上納金なのである。なぜ上納金なのかと言うと、この金は米軍地位協定にも支払い義務のない、属国ゆえの売国的予算支出であるからだ」

    ※全文はこちらからhttp://plaza.rakuten.co.jp/kmrkan55/diary/201512170000/

    この人は、常日頃は実に練達の政局ウォッチャーなのですが、なぜかこと米国絡みになると、血圧が上がってしまうのが不思議です。 

    彼は幕末の不平等条約や、大戦後の占領下まで遡って怒っていますが、そういう歴史主義は不健康です。 

    必ず怨念史観になるからです。怨念史観とは、別名「やられた史観」といって、常に自分は被害者の立場で歴史を裁断しようとします。 

    なぜ、すっぱりとドライに「同盟」関係をみられないのでしょうか。

    脱線するようですが、少しこのカーター政権時代に大統領補佐官として、外交政策のブレーンだったスビクネフ・ブレジンスキーという人物を見て見ましょう。

    他ならぬこの人物が、米国凋落の原因を作った人物であることがわかるはずです。 

    Photo_2上の写真で、ブレジンスキーは銃を持つアラブ人とスナップを撮られています。この男の名はなんとウサーマ・ビン・ラディンだということが、後に判明します。

    説明は不要ですね。9.11同時多発テロを引き起し、米国を対テロ戦争の地獄に叩きこんだ人物です。

    米国は威信をかけて、ラディンを追跡し、2011年にオバマがようやく特殊部隊を使って仕留めました。

    下の写真はホワイトハウスのシチュエーションルームで撮影されたもので、突入部隊からの直接の画像が送られているのを、政府要人のすべてが固唾をのんで見ているのがわかります。

    国務長官時代のヒラリーもいますね。

    Photo_6http://longtailworld.blogspot.jp/2011/05/inside-situation-room-time.html

    こんなモンスターを作ったのが、カーター時代のブレジンスキーです。彼はソ連にアフガン侵攻の泥沼にに引き込む罠を仕掛け、ソ連を疲弊させて、帝国の崩壊にまで持ち込んだとされています。

    当人もそれが自慢で、各所で「冷戦を終わらせたのはオレだ」と吹聴しています。

    その「冷戦終結」の道具に使われたのが、このビン・ラディンなどのアフガンゲリラでした。

    このアフガン戦争のとき、ブレジンスキーは、CIA、モサドと共謀しアルカイダの原型とビン・ラディンを育成しました。

    つまりブレジンスキーは、「冷戦終結」によって、米ソのG2体制を壊して米国一極支配(G1)をつくりだしたように見えて、実は、次の時代である「テロと内戦の時代」を引き起こす原因そのものを作ってしまったわけです。

    このブレジンスキーは、2013年にこう述べています。
    ※http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/40945

    「ブレジンスキー氏は、世界覇権という概念は色あせていると強調し、「覇権は、もはや手に入れることができないものだ」と述べました。
    ジョンズ・ホプキンス大学で演説を行ったブレジンスキー氏は、「冷戦終了後の13年にわたるアメリカの世界覇権は終結した」としました。
    また、「アメリカはかつての影響力の大部分を失っており、アメリカ政府が少なくとも、今この演説を聴いている人々が生きている間に、世界の覇権大国として、権力を取り戻すことがないだろう」としました。
    さらに、「アメリカは、いつにもまして、複雑化している現代世界に歩み寄り、アメリカが例外的な存在であるという考え方を改める必要がある」と強調しました。」

    面白いことに、この出典はイラン国営放送の日本語サイトです。

    イランが、米国が中東において、今までのようなサウジとイスラエルを拠点にした覇権国家としてふるまうことが不可能になりつつあるのを、イランがじっと冷静に観察していたのがわかります。

    同じくオバマ-安倍の初会談が行われようとしていた2013年2月を前にして、ブレジンスキーは、2月13日ニューヨーク・タイムズ紙に、「大国、しかし覇権国でない(Giants, but Not Hegemons)」という論説を載せています。

    「今日、多くの人が、米中という2大大国化は紛争に進むのを避けられないのでないかと懸念している。しかし、ポスト・覇権国時代(米国)で、世界の支配をめぐり戦争が 起こるとは信じていない。
    危険は(米中)両国関係ではなく、アジア諸国が20世紀の欧州諸国の紛
    争のような状況に引き込まれることである。
    アジアには、韓国・北朝鮮、日
    中、中印、印パ等で、資源、領土、権力をめぐり潜在的発火点がある。これらの地がナショナリスチックな熱情を刺激したりしつづければ、制御が不可能な事態になりかねない。
    アジアにおける米国の建設的、戦略的介入は既存の日本、米国の同盟だ
    けに依存するのでなく、米中協力を制度化する必要がある。」
    (NTタイムス 2013年2月23日)

    ブレジンスキーはここで当時日本にとって焦眉の課題だった尖閣などを「ナショナリスティクな情熱」のひとことで切り捨てて、「米中協力を制度化しろ」と言っています。

    市民語翻訳すれば、「米国はもはや覇権国ではないんだから、中国とよろしくやっていくんだ。日本、センカク、センカクって属国のくせにうるさせぇんだよ。こんどのお前の主人は中国なんだからな」ということです。

    どこかトランプの言いぐさに似た、自国第一主義のトーンを感じませんか。

    これが、後に米国自らが否定するはめになる悪名高いG2論です。ある時はビンラディン、ある時は対テロ、ある時はG2、というわけです。

    ため息が出るほど、どんな相手にでもそのつど要領よく乗り換えられる、とんだ曲者ぶりがわかります。

    しかも逆神で、言ったことはかならず後から裏目に出るか、米国政府自身によって否定されてしまいます。

    こんな無節操な男に「日本など保護領にすぎん」と言われても、かえって名誉なくらいじゃありませんかね。

    なにせ言ったことの反対が真実ですから。こんな男が、いまだワシントンで賢人顔をしていられるのか、かえって不思議なくらいです。

    同じワシントンでも、スミソニアン博物館に、「前世紀の逆神様」「世界秩序を破壊した国際政治学者」として展示しておいたほうがいいと思います。

    当時、オバマはこのブレジンスキーの強い影響下にありました。彼を国際政治の師と崇めて、「最も卓越した思想家の一人」とまで称賛しています。

    その結果、当時の米国外交は急速に、「もっとも重要な2カ国関係」(バイデン副大統領)、すなわちG2体制に向けて舵を切りつつありました。

    下の写真は2014年3月26日に撮影された、オバマ一家の訪中のひとこまです。

    中国において妻子を中国宮廷に単独で差し出すというのは、私めは膝下に入らせていただきます、というジェスチャーだと伝統的に解釈されます。

    知ってか知らずか、オバマはそんなことを仕出かしていたのです。

    Photo_4http://j.people.com.cn/94474/8579229.html

    こういうまねをすれば、中国が、米国が覇権国家として衰退しているので、世界を統治する相棒に自分を選んだのだと考えてあたりまえです。

    しかもオバマの後ろ楯が、「米中2カ国体制を制度化しろ」とまで言うブレジンスキーなんですから。

    当時バブルに浮かれていた中国が、かつてのソ連の位置に自らが入って、世界を二分割できると確信してしまったのも無理ないことです。

    事実、キーティング太平洋軍司令官が中国軍の幹部と会談した際にこう言われています。

    「空母を開発するから、ハワイから東を米国、西を中国で管理しないか」。これは公式記録に残っている発言です。

    米国が望んだG2路線は、テロや地球環境などで、二大国が国際的な協力関係を作っていかないか、ていどのニュアンスでした。

    ところが、これを中国は、あまりにも中国的に解釈します。すなわち、縄張り分割です。

    「オレはここまで、あっちはお前」・・・、これはスペインとポルトガルの世界分割のような前近代的というのも愚かなアナクロ思想そのものです。

    しかし、この種を蒔いたのは米国のオバマであり、さらには「軍師」のブレジンスキーだったのです。

    かくてここから、中国の南シナ海、あるいは東シナ海への止まることがない海洋軍事膨張の号砲が鳴り響くわけです。

    実はここまでで原稿の半分なのですが、長すぎるので、以下は次回ということで。明日読んでね。

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    トランプ 不都合な大統領候補その5 日米同盟の本質を知らない男

    009
    私はトランプの「暴言」は、米国内部にある「気分」の現れだと思っています。 

    それは、なんというのか、「オレらは世界の警官やってきてくたびれたんだ。勝手なことばかりほざきやがって、だから自分の国のことだけに専念させてもらうぜ」という感じでしょうか。 

    先日のトランプ・インタビューの日本に対する部分だけを要約すれば、この3点です。

    1、日米安保条約は、米国が攻撃されても、日本は米国を守る義務がない片務的な取り決めである。
    2、日本が米軍駐留費用を大幅に増やさなければ、米軍を撤退させる。
    3、日本が北朝鮮などの脅威から自国を守るために、核保有を容認する。

    これに対して、候補者の発言に対して異例の反論がホワイトハウスからなされています。

    「【3月31日 時事通信社】アーネスト米大統領報道官は30日の記者会見で、大統領選の共和党候補指名争いの首位に立つ不動産王ドナルド・トランプ氏(69)が日韓両国の核武装容認を主張していることについて、「信じられないほど(地域情勢が)不安定化する」と批判した。その上で「自分の言葉と政策決定から生じる結果を理解できる最高司令官」を選出するよう、国民に訴えた。
     アーネスト氏は「トランプ氏の主張は、米国が長い間追求し、国際社会が支持してきた政策と正反対だ」と指摘。「核兵器計画を加速させる言い訳と動機を北朝鮮に与えるのが、なぜいい考えなのか、想像しがたい」と語った。」

    まぁ、ホワイトハウスが言うのは正論ですね。 

    北朝鮮がおそくら早ければ4月中に行うとされる大陸間弾道ミサイルの再突入実験の前に、こんなことを言えば正恩坊やは、手を打って喜ぶでしょう。 

    なぜなら、トランプが言うように、日米安保を消滅させ、仮に日韓が「核保有」しようとしても、それは10年以上先のことです。 

    では、この10年間の「空白」はどうするのでしょうか。もちろん、東アジアで2カ国しかない核保有国の北朝鮮が圧倒的に主導権を握ることになります。 

    つまり、トランプ「放言」は、事実上、米国が北朝鮮の核保有を認めて、北朝鮮の支配下に入れというに等しいことなのです。 

    その上、トランプがただの損得勘定でしゃべっている日米同盟が、このアジア地域でどのような働きをしているのか、彼はまったく知りません。 

    アジアにおける安全保障システムは、「ハブ&スポーク」と呼ばれてきました。今日はこれを考えていきましょう。 

    Photo上図は国際宅配便のフェデックスの物流モデルです。 

    左に見えるバラバラな配送拠点を、現状のような右上のようなネットワーク型にするか、右下のように一カ所の発送拠点からバーっと放射状に延びる路線に変えていこうかということを考えたモデルです。

    3種類あります。

    ・Ⅰ型・・・分散ドット型
    ・Ⅱ型・・・ネットワーク型
    ・Ⅲ型・・・ハブ&スポーク型

    これを安全保障に置き換えてみましょう。

    左のⅠ型分散ドット型が個別的自衛権による「専守防衛」タイプです。日本の野党が「平和国家」の礎くらいに思って、称賛しているものです。 

    このモデルの最大の欠陥は、「自分の平和は自分で守る」というと聞こえはいいのですが、結局、自分の国の内部だけで戦争が決意して準備できてしまうということです。

    ヤバくありませんか、これって。 

    専守防衛という世界にない表現でなんとなく9条していますが、これは他国から見れば、いつ何どき気が変わるかわかったもんじゃない、という不安がつきまといます。 

    つまり、戦争についての意思決定の透明性が担保されていないのです。 

    これに対して右上のⅡ型ネットワーク型モデルは、NATO型です。

    個別的自衛権なんて危ないものは完全に放棄してしまい、条約で結ばれた地域の安全保障システムに供託してしまいます。 

    そして一国への侵略は、システム内すべての国に対する侵略と見なすと宣言します。

    逆に、一国が隣国を侵略しようとすると、全体から制裁に合います。

    非常によく出来た安全保障システムで、これなら偶発戦争や二国間戦争などは起こりようがありません。

    最後に右下が、Ⅲ型ハブ&スポークと呼ばれるアジアの安全保障のモデルです。

    ハブとスポークとは自転車の車輪に模しています。ハブとなる中心国がいて、その国が地域全体に対して安全保障の基盤を提供し、各国はそれぞれこのハブとなる国との同盟によって自分の国の安全を支えています。

    いうまでもなく、このハブ(車軸)に当たる国は米国です。これを覇権国家(ヘゲモニック・ステート)と呼びます。

    一見「帝国主義」みたいな、「横暴な強国」のように見えますし、実際に反米の人たちはそういうニュアンスで言いますが、国際関係論でよく使われる概念です。

    例によって、概念規定をしておきましょう。

    「他からの挑戦を退けるほどの、もしくは挑戦しようという気を起こさせないほどの圧倒的な力を持つスーパーパワーを持つ国のこと」

    ハブ&スポーク型安全保障モデルは、かつて冷戦期におけるソ連の軍事侵攻に対処するためにできましたが、冷戦後は別の進化をとげてきました。

    ①地域紛争の抑止・対処の機能を提供する
    ②それによって、各国は不安定要因に対する米国の関与を想定できる
    ③ある程度の軍事ドクトリン・軍事力に対する透明性が増す
    ④その前提の下で、地域的安全保障対話が強化される

    そしてこのハブの車軸を支えているのが、トランプが「金がかかるからいらねぇ」と言っている日米安保条約です。

    日米安保は単にトランプがいうような「オレ様はお前を守っているが、ジャップ、お前らはオレがヤバくても助ける義務はねぇ。とんでもねぇこった」でというほど単純なものではないのです。

    たしかに片務的なことはたしかですが、それは、米国が覇権国家である以上、何をいまさらです。

    日米安保は、トランプが言うような「オレとお前」といった狭い意味では語ることのできない、アジア全域の安全保障インフラそのものに成長しています。

    1996年の日米安全保障共同宣言が、「アジア太平洋の安定に資する同盟」という表現を用いたのは、こうしたアジア地域全体の安定化機能に着目したからだといえるでしょう。

    そしてさらに、アジア太平洋の多国間安全保障は、ひと昔前のような話すだけで終わる段階から、だんだんと制度化された予防外交・紛争解決にむけたメカニズムとして進化しつつあります。

    その最大の成果が、ASEAN地域フォーラム(ARF)です。

    神保謙・慶応大学准教授『アジア太平洋の安全保障アーキテクチャ・地域安全保障の三層構造』によれば、ARFは3ツの段階を想定して作られています。

    ①第1段階・信頼醸成
    ②)第2段階・予防外交
    ③第3段階・紛争解決へのメカニズムづくり

    このARFの母体となったASEANは、NATOのようにキリスト教を共通の宗教としておらず、イスラム教から仏教、ヒンドゥまで抱えており、国力にも大きな差があります。

    哨戒艇が数隻のフィリピンから、軽空母まで持つタイまで千差万別です。

    対中脅威度にも温度差があります。フィリピンやベトナムにとって、中国は直接的脅威ですが、領土問題を抱えないタイやインドネシアは日和見、ラオスなどは親中です。

    ですから、ARFはまずは信頼醸成から初めて、予防外交に進化する初期段階だと見られています。

    そしてこのARFが依拠しているのが、米国という覇権国家であり、それにパワープロジェクション・プラットフォーム(戦略投射)する基地群を提供しているのが、他ならぬ日米同盟なのです。

    トランプにしても、日本の自主防衛派にしても同じですが、日米安保をなくすということは、このようなアジア全域の安全保障の背骨をへし折ってしまうことと同義なのです。

    このような人たちは、現実のアジア全域に拡がる日米同盟の進化を知らないで、ただ「オレとお前」の狭い二カ国関係だけで見ようとする視野狭窄です。

    長くなりましたので、今日はこのくらいに。 

     

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    日曜雑感 トランプさん、これがお望みですか?

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    ふゆみさん。皆さんの弱気なトーンが心配になって追加しました(笑)。まぁ冗談だったそうで、よかった。

    追加した「あなたがたはそんなに強い日本軍をもう一回見たいのか」という台詞は、独仏が反対に回った派兵に対して、(たしか英国だったとおもいますが)ドイツを臆病者呼ばわりした時に、ドイツの外相が言った言葉のパロディです。

    米国が、世界の同盟国に対する責任を放棄するということは、米国は覇権国から転落し、中露に並んで、「強いドイツ」や「強い日本」が登場するということだということを、トランプは忘れています。

    トランプが言っているのは、覇権国家を止めて、自国第一主義になるということです。

    金も出さない、軍隊も出さない米国に価値などない、と世界は見ています。

    そうなった場合、トランプがお望みのように米国の軍事支出は減るでしょうか?

    たぶん、そうはならないでしょう。むしろ逆になると思います。

    なぜなら、米国が担ってきた安全保障インフラはどこの国も代替できませんから、各国とも自国の軍備を増強するしか方法がないからです。

    これはサウジもイスラエルも同じです。米国はすでにシェールガスが出たことによって、中東に介入する動機が希薄になりました。

    サウジが今国家財政破綻ギリギリまで原油価格の暴落チキンレースをしている目的は、このシェールガス潰しだと言われています。

    オバマに裏切られたサウジやイスラエルは、米国の「善き友」であることを止め、既にイランとの戦争寸前のサバイバルゲームに突入しようとしています。

    脱線しますが、去年「戦争法案ハンタイ」を叫んでいた人たちは、なにかといえば「集団的自衛権を認めれば、日本は中東に派兵を求められる」と言っていましたが、一体いつの話をしているんでしょうかね。

    米国自身が中東に介入する気などさらさらないというのに(苦笑)。もうかつての米国ではないのです。

    一方、太平洋に目を移せば、もっともよくできた同盟といわれる日米安保が機能しているかぎり安定しているでしょう。

    皮肉にも、この時期からオバマが言い始めた「アジア回帰」は、この中東と疎遠になった反作用にすぎません。

    日本やアジア諸国ににとっては有利なことのはずでしたが、オバマは例によって口だけで、実行を伴いませんでした。

    その上に、次がトランプという「不動産屋の眼で世界を見る」という男です。

    ブッシュが傷つけ、オバマが半壊にし、トランプが全壊にする、というわけです。

    アジア太平洋地域にも、中東に似た政治現象が起きるでしょう。

    それは米国にとっては、今まで中国の海洋進出だけを心配すればよかった太平洋に、再び旭日旗が翻るのを見ることです。

    そしてそれは今と違って、同盟国の海軍旗ではなく、「ただの隣国」となったわが国のそれです。

    今日明日のことでありませんが、そうなって欲しいのですか、トランプさん。

    では、もしう少し短い時間尺で考えてみましょう。

    ueyonabaruさんは、「少し強い日本軍は望んでいる」と書いておられました。まぁ、そのとおりではあります。

    いずれにしても、トランプが大統領になれば、駐留経費の上乗せを要求することだけはたしかです。

    その場合、トランプはたぶん在日米軍の縮小、あるいは移転を取引材料に使うでしょう。

    横須賀軍港を動かすなどと言えば、米海軍は怒り狂いますから、もっとも動かしやすい沖縄米軍を駒に使うでしょう。

    その場合、沖縄の海兵隊や普天間はまとめてどこかにということもありえます。たぶんフィリピンかオージーでしょうね。グアムもありえます。

    米国にそうさせないために、政府は移転を急いでいるという側面もあるのです。

    「オール沖縄」の人は欣喜雀躍するでしょうが、今、この時期に移転された場合、南西諸島方向に大きな軍事的真空が生じてしまいます。

    その場合、待ってましたとばかりに、経済が沈みかかっている中国が、外に敵を求めることは大いにありえるでしょう。

    しかし現況では、残念ながらわが国だけで、アジアの軍事的真空を埋めるだけの実力はありません。

    となると、そのトランプの要求を一時的には飲まざるをえないでしょう。

    そして要求を聞きつつ、わが国独自の安全保障の次の段階を真剣に考える必要がでてきます。

    それは従来の「安保があっての防衛」ではなく、「安保がなくなった場合に備える防衛」戦略です。

    つまり、トランプの無理無体を聞くふりをしながら、「次」に備えるのが今後の十数年となります。

    この結果生まれるのがueyonabaruさんがいう、「少し強い日本軍」です。

    自主防衛派の人はすぐに核武装と言いたがりますが、世界の孤児になりたければ、自主核武装に走ればよろしい。

    ただし、それでは、「二度目の戦前」となるだけです。私は絶対に反対です。ただし、議論はするべきですが。

    とまれ、日米安保の消滅を念頭に置いた、自国防衛の強化は必ず必要となります。

    こういう言い方はナンですが、いつか必ず考えねばならないと思っていたことが、思いがけず早く来ただけとも言えるのです。

    正直言って、誰がなろうとも20年ていどのスパンの間には、この道を選択することになるでしょう。

    実に憂鬱です。

    逆にいかに日米安保がよくできていたのかわかります。これを潰すというのは発狂したとしか思えません。

    トランプが登場する時期に、「戦争法案撤回」と叫ぶのが野党第一党ですから、イヤになります。

    こういうズレきった諸君らはさておき、最後にひとつ付け加えると、日本対米国という既成の図式で見ないで、アジア・オセアニアというもっと縮尺の大きい図式に切り換えることです。

    つまり、今あるASEAN+米国、日本、オージー・AZという構図を、NATOに近い集団安全保障体制に成長させていくことです。

    そしてここにNATO第5条のようなものを与えます。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-2d24.html

    ●NATO条約第5条
    NATO締結国(1カ国でも複数国でも)に対する武力攻撃は全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃に対して全締結国は、北大西洋地域の安全保障を回復し維持するために必要と認められる、軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する

    ですから、日本は個別的自衛権を放棄し、このアジア版NATOに供託することで、戦前のような危険な道に突入する可能性は激減します。

    これがうまくいけば、米国の負担も減り、かつ、地域の包括的安全保障体制になるので大変に面白いと思います。

    長くなりそうなので、今日はこれまでとしますが、トランプがでても、いろいろ揺さぶっているうちにいい知恵がでるもんですよ。

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    日曜写真館 桜堤

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    トランプ 不都合な大統領候補 その4 トランプ「核容認発言」の原文に当たる

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    「トランプが日韓に核兵器を容認した」という言い方をする前に、もう少し彼の発言を押さえておきましょう。 

    これはニーヨークタイムス(2016年3月27日)の、トランプへのインタビューです。
    Highlights From Our Interview With Donald Trump on Foreign Policy  

    PhotoNYタイムス3月26日より引用

    トランプは、北朝鮮の脅威に対して、日韓に核兵器を容認するのか、という問いに対してこう答えています。
     

    TRUMP: Well, you know, at some point,there is going to be a point at which we just can’t do this anymore. 

    どこかの時点で、要するに我々(米国)が現状をもはや続けられなくなる時が来る。 

    この部分は非常に大きい意味を持っています。もう少し後の方でトランプは同じことを別の言い方でこう述べています。 

    at some point, we cannot be the policeman of the world. And unfortunately, we have a nuclear world now. 

    どこかの時点で、我々は世界の警察官を続けられなくなる。そして不運なことに、いまや核の世界だ。」

      「the policeman of the worldを続けられなくなる」、このトランプの認識は、実はすでにオバマが、シリア問題で2015年9月10日に口にした言葉とまったく同じ文脈です。

    このオバマの言葉がどのような結果を引き起こしたのか、トランプは知って言っているはずです。

    この時オバマは、シリア内戦に関するテレビ演説で、退役軍人などから、「米国は世界の警察官でなければいけないのか」という書簡を受け取ったことを引きながら、こう述べました。

    「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する。」

    このオバマ発言の背景には、深刻な不況により、国際的な危機が起こっても、ただちに米軍を投入することはできないという財政の問題があります。

    そしてもうひとつは、2001年から2010年にかけてのアフガニスタンやイラクへの「対テロ戦争」て、巨額な財政出血だけではなく実に4千名以上の米兵が戦死し、それを数倍する兵士が深刻な後遺症を抱える傷病兵になってしまいました。

    米国内には、このように多数の米兵が犠牲になったにもかかわらず、脅威が根絶できないという厭戦気分が蔓延しています。

    そうであったとしても、第2次世界大戦後、このオバマのひと言ほどおそろしいほどの破壊力をもって国際社会を混乱に叩き込んだものはなかったでしょう。

    米国は世界の安全保障を担ってきました。いうまでもなく、それが「世界のポリスマン」という意味です。

    冷戦期においては米ソ両陣営は、核の均衡の刃の下で、世界秩序を統制してきました。

    そして冷戦終結以後は、従来の米ソの統制の効かなくなった民族紛争や宗教紛争が続発します。

    それだけでも十分なのに、このオバマの 「世界の警官卒業宣言」は、警官がバッジと拳銃を捨てて家に引きこもることにした、と国際社会は理解しました。

    そして始まったのが、もはや無秩序といっていいような世界秩序の混沌の幕開けと、さらなる米国の権威と衰退です。

    この発言自体は直接にはシリア内戦に介入しないといういかにもオバマらしい優柔不断な消極姿勢でしたが、もちろん事態はシリア介入だけにはとどまりませんでした。

    この後に世界を襲った玉突き的悪夢を、思い出すだけでうんざりましす。

    たとえば、ロシアはそれまで考えられもしなかったクリミア併合に走り、さらには東部ウクライナも時事実情の占領下に置いています。

    この行動は、仮にウクライナが当時ソ連領であったとしても、冷戦期ならば第3次世界大戦を招きかねないものでしたし、ポスト冷戦期ならば、米海軍はトルコの支持を受けて黒海まで進出したでしょう。

    それが「警官卒業宣言」をしてしまったオバマには,なんの打つ手もなしです。

    Photo_2http://twinavi.jp/topics/news/532ec6ae-dc80-46c7-9...

    中国は公然と南シナ海での積極的な領土拡大主義を開始し、いまや人工島に軍事滑走路やミサイルまで配備する無法ぶりなことはご承知のとおりです。

    米国がしっかりしてさえいれば、このような中国の増長はありえないことでした。

    Photo_32016年2月24日Newsweek 2016年2月23日、米FOXニュースは、米政府高官2人の発言として、中国が南シナ海に戦闘機を派遣したと伝えた。イメージサット・インターナショナル社提供のウッディー島(永興島)の衛星写真。14日撮影http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4573.php

     
    事態はそれだけでは済まず、シリア内戦は手がつけられない状況となり、崩壊国家の内部にISという悪魔のようなテロ集団を生み出しました。

    ISはいまや史上かつてない狂信的テロリスト集団と化して、パリ連続テロやブリュセルテロなどを連続して引き起こしています。

    1

    また、全土を焦土とかすシリア内戦から逃れるシリア難民は、いまやUNHCRの発表でも400万人に昇っています。
    【UNHCR Japan】シリア難民、400万人を突破

    Photo_4mamanoko.jp

    この大量の難民の流入を防ぐためにEU各国は入管制限を厳しくし、EU理念の大前提であるはずのシェンゲン協定で定めた国境の廃止の無効化につながる可能性すらでてきました。

    シェンゲン協定はEUの核心的理念ですから、この崩壊はすなわちEU崩壊の導火線となるかもしれないとすら考える識者が増えています。

    「アラブの春」移行の混乱は、ほぼすべてのアラブ諸国に及び、とうとうスンニ派の盟主サウジとシーア派の盟主イランの戦争すらありえる状況になってきています。

    このように大雑把に見ただけでも、いかにオバマの「世界の警察官ではない」というひとことが、それ以後の国際秩序の雪崩的崩壊現象を引き起こした引き金となったのかお分かりいただけたかと思います。

    すなわち、このオバマ発言は国際社会の問題に米国は関わりたくない、軍事介入などとんでもないとする世界の警官の職務放棄宣言だったわけです。

    そして彼が開いてしまったのが、世界規模の地獄の釜の蓋だったわけです。

    では、この状況をトランプはどう見ているのでしょうか。

    because I don’t think they feel very secure in what’s going onwith our country, David. You know,  if you look at how we backed our enemies, ithasn’t – how we backed our allies – it hasn’t exactly been strong.
    When youlook at various places throughout the world, it hasn’t been very strong. And Ijust don’t think we’re viewed the same way that we were 20 or 25 years ago, or30 years ago. And, you know, I think it’s a problem. You know, something likethat, unless we get very strong, very powerful and very rich, quickly, I’m surethose things are being discussed over there anyway without our discussion

    .「なぜなら、我が国との間で起きていることに関して、彼らが強い安心感を持っているとは思えないからだ。同盟諸国に対する我々の支援に関していえば、文字通り強力とは言えなかった。
    世界中の様々な場所を見れば、非常に強力ではなかった。そして私は、我々が20年か25年前、あるいは30
    年前と同じ目で見られているとは、まったく思っていない。そう、それが問題だ。例えば我々が、急速に、非常に強く、非常に強力に、非常に豊かにならない限り、我々の議論を抜きにして、この問題が向こうで論議されているのは確かだ。」

    トランプが言っていることは、非常にシンプルです。

    この先、米国は’we’re viewed the same way’ではないよ、ということです。

    だからどうするのか、米国か豊かにならない限り同盟国に対する責任は果たせなくなるだろうと述べているのです。

    その文脈でトランプは核拡散が止まらずに、アジア全域に拡がろうとしていることを指摘しています 

    And youhave, Pakistan has them. You have, probably, North Korea has them. I mean, theydon’t have delivery yet, but you know, probably, I mean to me, that’s a bigproblem.

    パキスタンが持っている。たぶん、北朝鮮も持っている。まだ運搬手段は持っていないが、核を持っている。私にとって、これは大問題だ。

    この北朝鮮の「(核の)運搬手段」という部分が微妙で、おそらく早晩、北朝鮮は再突入実験を強行して、完全な核抑止力を保有したと宣言するはずです。

    しかしそれは、むしろ米国に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦前段に達したという米国の側の問題で、日本にとってはとっくにノドンという中距離弾道ミサイル(IRBM)は実戦段階に入っています。

    こういう「わがこと」を、「ひとごと」のように微妙に問題をすり替えるのが、この人らしいテクニックです。

    それはさておき、そうなった場合、トランプは米国がどうするべきだというのでしょうか。 

    何もできない、とトランプはあっさり言います。各国が自分の能力でやるのが一番だというのが、トランプです。

    But right now we’re protecting, we’rebasically protecting Japan, and we are, every time North Korea raises its head,you know, we get calls from Japan and we get calls from everybody else, and “Dosomething.” And there’ll be a point at which we’re just not going to be able todo it anymore.

    そして北朝鮮が鎌首をもたげるたびに、我々には日本から声がかかる。他の大勢からも声がかかる。そして、我々は「何か」をする。要するに、もはや我々にはそれができなくなる時点が訪れるだろう。

    これはさきほどから述べているように、トランプに限らず米国の本音です。米国には、もはやそんな能力がないのだ、とトランプは言っています。

    ただその言い方が、ひ弱な優等生タイプのオバマが言うのと違って、トランプは真正面から怒鳴るように言うので、ニュアンスが違って聞こえるだけです。 

    そして日米同盟の片務性をこう言っています。

    You know, one of the things with the, with our Japanese relationship, and I’m a big fan of Japan, by the way. I have many, many friends there. I do business with Japan. But, that, if we are attacked, they don’t have to do anything. If they’re attacked, we have to go out with full force. You understand. That’s a pretty one-sided agreement, right there. In other words, if we’re attacked, they do not have to come to our defense, if they’re attacked, we have to come totally to their defense. And that is a, that’s a real problem.

    (意訳)私は日本のファンだ。私たちが攻撃されても、日本が何かをしてくれるわけではない。だが日本が攻撃されたら、米国は全力で救援に駆けつける。これはまったく一方的な取り決めだ。これこそが真の問題なのだ。

    これについての解説は不要でしょう。徹底した「自国第1主義」です。

    もしこの男が大統領になった場合、日本がせねばならないのは、米国の利害と日本の利害が合致して日米同盟が存在しているという事実です。

    そして既に充分にわが国は接受国支援(俗にいう思いやり予算)をしているし、広大な基地群の提供とメンテナンスの支援も引き受けているのだと言い切りましょう。

    それでダメなら、じっくりと話合いながら、その間に自主防衛ということが、米国にとって如何なる意味を持つのか、わからせてやらねばなりません。

    「あなた方米国人は、また再び強い日本軍を見たいのでしょうか?」、と。

    長くなりましたので、分析は次回に回しますが、いずれにしてもこのオバマの「世界の警官卒業宣言」のさらに純化したものが、トランプのようです。

     

    ※私設翻訳館様の和訳を参考にさせていただきました。分かりにくい俗語まじりの口語英語を、ありがとうございます。http://blogs.yahoo.co.jp/ookkmickey/20799927.html

    ※本日は翻訳で手をとられて、文章はメチャクチャ、そこかしこで舌たらずでした。(汗)すいません。できるだけ修正しました。ああ、のんびり記事書きたい。(午前10時3分)

    ※最終部分「もしこの男が」以降を追加しました。(午後5時)

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    トランプ 不都合な大統領候補その3 トランプの勢いは止まらないだろう

    Dsc_0607
    山口さん、ふゆみさん。私は既にトランプは、好きキライで判断していいような対象ではなくなっていると思います。

    ウィスコンシンで止まってくれるならいいのですが、たぶんこのまま全国大会まで止まらない気がします。

    全国大会で、主流派の工作で落ちても、今度はこの男は第3党を作って出てくるでしょう。

    もはやこの男にとって、共和党という沈みかけた舟など不要なのです。

    もう充分に看板は使った。だからうるさい小姑ばかりの共和党なんかとはおさらばだぜ、と内心思っていると思います。

    Photo_5blogimg.goo.ne.jp いちばん美人に写っている写真を選びました。

    そして残念ながら、相当な確率で、ヒラリーに競り勝つかもしれません。こんな予測が当たらないことを切に祈ります。 

    ヒラリーはメールゲートという大統領の適格性を疑われる大失態をしています。
    ヒラリー・クリントン氏の電子メール問題、知っておくべき5項目 - WSJ

    「2012年9月11日にベンガジの米領事館とCIAの活動拠点がテロリストに襲撃された数日後にホワイトハウスが発信した電子メールで、新たな事実が発覚した。
    これらのメールは昨年、事件への対応と事後処理に関するすべての文書だとオバマ政権が主張した資料はふくまれていなかった。
    保守系の監視団体ジュディシャル・ウォッチによる情報公開請求を受けて4月29日に公開されたメールを見ると、オバマかなぜこのメールを隠そうとしたのかわかる。」(ウォールストリートジャーナル2014年5月2日)

    その上に、ヒラリーには、ホワイトウォーター事件、中国系からの巨額献金、クリントン財団事件などうんざりするほど多くの多くの金銭疑惑があります。

    げんなりするので、引用は省略しますが、下の記事をご覧ください。
    ヒラリー氏に次々と立ちはだかる予定外の挑戦者 - JBpress - isMedia

    そしてそれらすべてを、トランプは知り尽くしています。

    なにせ、彼にも資金の拠出を求めた文書を送っているくらいですから(苦笑)。

    トランプにとって、超一流大学卒で弁護士、そして長年ワシントンの権力中枢にいたヒラリーなどは、まさにおあつらい向きの「打倒対象」なはずです。

    山口さんもおっしゃるように、あのようなレイシズム丸出し、宗教差別丸出しの米国の「暗部」ですから、逆にもはや怖いもの無しなのです。  

    いやかえってそのほうが小気味がいい、と思って喝采を送る層が国の半分はいるということです。 

    ふゆみさんが言われるのもわかりますが、反フェミニズムはマチズモ(男性優位主義)の現れですから、オバマのような弱々しいインテリに飽き飽きしていたプア・ホワイト層の男たちに大いに受けるでしょう。 

    トランプの集会を見た渡辺将人氏はこう書いています。

    Photo_4アイオワ州の党員集会前日、トランプ候補の選挙キャンペーンに参加する支持者たち(2016年1月31日)〔photo〕gettyimages

    「彼らは必ずしも熱心な共和党支持者ではない。多くはこれまで党員集会にも参加したことのない層だ。民主党支持の労働組合員ではないが、白人ブルーカラー層で圧倒的に男性が多い。「共和党右派」というカテゴリーにも単純におさまらない。」

    渡辺将人 現代ビジネス2月1日http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47699

    ワシントンエリートに対する嫉み、富者に対する怒り、異教徒に対する差別、女性に対する蔑視、これらの今まで米国が抱えもってきたネガティブパワーを存分に吸って肥大したのが、このドナルド・トランプという怪物です。 

    ですから、ふゆみさんには申し訳ありませんが、女性差別をいくら言おうと、彼にだけは致命傷にはならないと思いますよ。

    NYタイムスとかCNNが叩けば叩くほど、「オレはあのエスタブリッシュメントのヤローからこんなに嫌われているんだぜ」とばかりに、かえって元気になるくらいです。

    私は安易なヒトラーとの比較は好きではないのですが、このトランプに関してだけは、ある種の相似形を感じます。

    Photo_3産経新聞2月20日より引用

    それは両者の思考法が似ているのです。比較してみましょう。

    まずはトランプです。

    ①自分たちの国は本来グレートな世界に冠たる国である。
    ②しかし、現状は世界最大の債務国に転落している。
    ③国民は9割が貧民となり、わずか1割の富者によって支配されている。
    ④その原因は無能な支配層が、ワシントンの政府を独占しているからだ。
    ⑤外国は甘ったれて、わが国に膨大なツケを回して来る。
    ⑥こいつらを根こそぎにしろ!

    ヒトラーが第1次大戦で、膨大な賠償金をかけられたワイマール共和国の廃墟から煽動したのは、この①から⑥と酷似した文脈でした。

    Photo_2

    ヒトラーの場合はこうです。

    ①大ドイツは世界に冠たる大帝国である。
    ②しかし今は、大戦に破れて膨大な賠償金を背負わされて苦しんでいる。
    ③国民の9割は貧困層に転落し、一握りのユダヤ金融資本だけが富む。
    ④その原因は、腐ったワイマール共和国政府が無能だからだ。
    ⑤ドイツ人大衆は働らけど働らけど、それは外国への賠償に消えていく。
    ⑥こいつらを根こそぎにしろ!

    このようにヒトラーは、大衆に見える「敵」を設定します

    ヒトラーの場合ユダヤ人でした。しかもドイツに生まれ、ドイツ国籍を持つユダヤ系ドイツ人でした。

    つまり、ドイツの犯した第2次大戦の犯罪は、一般的な戦争犯罪ではなく、「自国民殺し」です。

    ここが同列で裁かれたわが国と、ドイツが決定的に違う部分です。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-f5df.html

    ヒトラーは、外国と戦う偉大な帝国の背中をユダヤ人がナイフでひと突きしたために、ドイツは負けたのだと叫びました。

    このように国内に「敵」を作ることで、貧困層の怒りをここに集中させていきます。彼らは帝国の寄生虫であり、脅威だと主張します。

    そして返す刃で、これを許した支配階層をやっつけろと絶叫するわけです。

    ヒトラーの場合、それがユダヤ人であり、トランプの場合はイスラム教徒やメキシコ移民が「敵」として選ばれたということです。

    Rt_nt_http://sakurajadehouse.com/?p=40414

    何からなにまでそっくりというわけではないにせよ、極右が政権をとろうとすればイヤでも政治手法が似てくるということのようです。

    ただし、かつてのドイツと現在の米国は状況がまったく違います。

    今の米国は、かつての疲弊し尽くしたドイツと違い、格差は修復不可能に見えるほど拡がりつつあるものの、好景気を享受しています。

    政府-議会-司法の三権分立は確固としていて、大統領の独裁をはばむことでしょう。

    また、かつてのドイツにあった、左右両翼の暴力的激突もありません。

    したがって、仮にトランプが政権を握ったとしても、彼に自由にさせないだけの政治的な担保は健在なわけです。

    O0480045613507445755

    ただし、外交はその限りではありません。様々な抵抗勢力がいる国内に対して、外交上の大統領権限はより幅が広いのです。

    戦争すら60日間は議会の承諾なしにできてしまうほどです。

    今回トランプは、米国の衰退の原因のひとつに日米同盟を上げました。

    もちろん、日本に対する攻撃にしても、自国の衰退を外国に転化しているだけにすぎませんが、実際の話、上院議員の大部分すら在日米軍基地のある米国側の利害の意味を知らないのです。

    ましておやプアホワイトは誰一人として、日米同盟の意義を知るわけかありません。残念ながら米国では、知日派のマイケル・グリーンみたいな人物は圧倒的極少派なのです。

    彼らにすれば、「米国の青年の血と巨額な費用を代償にして、一方的に守ってやっている」にすぎないのです。 

    鏡の反対側にいるうちの国で、気楽に「米国の戦争に巻き込まれるから、安保ハンタイ」なんて国会前で叫んでいたような人たちと好一対です。

    トランプは米国の極右ですが、皮肉にも日本の左翼と主張がシンクロしてしまいました。 

    日米同盟の本質を知らないから、方や「属国」になったと言い、方やトランプは「日本はオレたちが守ってやっているのに,金ださねぇ。だから米国は、債務国に転落しちまったんだぜぇ」という煽動ができるのです。

    次回、日米同盟とは何かを考えてみましょう。 

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    福岡高裁宮崎支部判決 政府は原子力規制のルールを確立しろ

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    川内原発の仮処分についての福岡高裁宮崎支部の判決がでました。

    「九州電力川内(せんだい)原発の運転を容認した6日の福岡高裁宮崎支部(西川知一郎裁判長)決定は、原発運転に伴う事故の可能性について、社会では「ゼロリスク」を求めていないと認定し、関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁決定(今年3月)などとは異なる判断を出した。
     東京電力福島第1原発事故以降、各地の裁判所であった原発の運転差し止めを巡る判決や決定は今回で9件目。うち3件は運転停止を認める内容で、司法サイドの判断は揺れている。」(毎日新聞4月6日)

    いちおう、ドミノ倒し的に大津地裁現象が進むことは、止まったわけです。 

    Photo(西日本新聞4月6日より引用 川内原発の運転差し止めが認められず、「不当決定」などと書かれた垂れ幕を掲げる住民側弁護士ら=6日午前10時34分、宮崎市の福岡高裁宮崎支部前)

    いままで出た3本の判決を比較します。毎日新聞4月6日が、便利な一覧を作ってくれたので引用させていただきます。

    Photo_2毎日新聞4月6日より参考のため引用。ありがとうございました。

    注目すべきは、再稼働を容認したかしないか、ではありません。 

    ここに論点を絞ること自体が間違いだと、かねてから私は主張してきました。 

    あくまでも司法は、「判断をする権限を持たない」のであって、その結果は別次元のことにすぎません。 

    なぜなら、福島事故以前と以後における原子力行政が明確に異なるのは、原子力規制委員会が誕生したことです。 

    これは委員長の任命権こそ政府にあれ、その指揮下にはない完全に独立した政府機関です。 

    つまり政治には左右されない、さらには田中委員長が常日頃いうように「経済性は配慮しない」機関です。

    「経済は考慮しない」というのは、いくらなんでも無理筋で、これではリスクの大きさと社会的ベネフィット(利益)を天秤にかけるリスク評価ができなくなります。

    規制委員会の委員には中西準子先生(産総研フェロー)のようなリスク評価の専門家がいないので、どうしてもこういう極端な方向に行ってしまいがちです。 

    それはさておき、とりあえず「オレたちの判断には政治や経済にクチバシをいれさせないんだ」、という心意気のようなものは伝わってきます。 

    では、一体誰がこの再稼働を決定する権限を持つのでしょうか? 

    政府です。え、なんだ~と脱力される方も多いでしょうが、規制委員会が今やっているのはあくまでも、再稼働に関する「設置許可」を審査しているだけです。

    言い換えれば、規制委員会は「設置許可」まではするが、再稼働そのものについての許認可は政府が判断するということです。 

    「設置許可」の審査の法的根拠は、原子炉等規制法43条の3の14です。http://www.houko.com/00/01/S32/166.HTM

    「発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない」

    法律文なので分かりにくいですが、要は、すべての原子炉も常に最新の技術基準に対応しないとダメですよ、その審査は規制委員会の専管事項ですよ、と書いてあるわけです。 

    これがバックフィト制度です。
    バックフィット制度とは - 日本原子力文化財団 

    「政府は、今回の事故の教訓を踏まえて法律を改正し、世界最高水準の規制を導入するとしています。そのひとつが「バックフィット制度」といわれるもので、発電所の電源の多重、多様化や原子炉格納容器の排気システムの改善など、最新の技術的知見を技術基準に取り入れて、すでに運転をしている原子力発電所にも、この最新基準への適合を義務づけます。最新基準を満たさない場合には、運転停止(廃炉)を命じることができるとしています。」 

    これは原子力施設が老朽化したりして、新たな科学的知見にあわない場合、昔の基準には適合していても遡及して(バック)適合(フィット)させるという仕組みです。

    適合していなければ規制委員会は、先の原子炉等規制法43条の3の14を根拠にして廃炉にすることも可能です。

    国際的にもバックフィト制度はありますが、努力義務であって、「適合しなければ廃炉」という強い指導方針を持つのはわが国だけです。

    このように司法が仮処分というサラ金が追い込みに使ったような法律を武器にして、安全基準が「不合理であるか否か」などを審理する権限自体がないのです。

    もし司法にそんな権限があるなら、二重審査になってしまいます。しかも2回目の「審査」ははズブの素人の裁判官ときています(苦笑)。

    百歩譲って司法が裁く余地が残されているとすれば、それは規制委員会での審査が正当になされなかった場合です。

    たとえば安全基準に誰の眼にも明らかな瑕疵があるのに、それを規制委員会が故意に無視した場合などです。

    現状は、何を、どのように、どこまで司法が裁けるのかのルールなどない、恣意的な「正義」が横行している状況です。

    今回の福岡高裁宮崎支部の判決を、ひとつの節目にしませんか。

    今後も脱原発弁護団は、際限なくすべての原発の再稼働に仮処分をぶつけるつもりのようです。
    脱原発弁護団全国連絡会 - 脱原発法制定全国ネットワーク

    彼らがやっているのは、法の名を借りた「実力闘争」だということは、先日、大津地裁判決の時に指摘しました。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-3595.html

    彼らは法の下の「正義」をはき違えています。

    一般的なデモ、集会という言論の自由の枠内での行動ではなく、実社会の経済をマヒさせ、多大な社会的損失を招く行為です。

    こういう行動を左翼の業界用語では、「実力闘争」と呼びます。かつてのゲバ棒の代わりに、六法全書をふりかざしているだけの違いです。ちょっと言い過ぎかな(笑い)。

    あくまでも「設置基準」が安全基準に則っているかどうかの合否を判断するのは規制委員会の専管事項であって、それを受けて判断するのは政府です。

    規制委員会がノーと言えば再稼働は見送りになる、あるいは最悪の場合廃炉にする、これがルールです。

    そして再稼働のルールを明確にすべき責任は、あげて政府にあります。

    毎日新聞は「揺れる司法判断」などと書いていますが、何を言っているのか。司法が揺れようとどうしようと関係ありません。

    そもそもおかど違いの司法を引っ張りだす弁護団や原告団のほうが異常なので、判断権者の規制委員会と政府がしっかりしていればいいだけです。

    一部住民と過激な脱原発弁護団によって引き起こされるモグラ叩きみたいなことを、いつまで続けるつもりなのでしょうか。

    さもないと、規制委員会の判断は空洞化し、その権威は失墜するでしょう。

    いったんこうなってしまえば、原子力規制に対する「政治」の支配が復活することになります。

    安倍政権は、こと原子力政策において腰が引けすぎています。

    私は再稼働に邁進しろ、といっているのではありません。原子力規制のルールをしっかり確認しろ、と言っているだけです。

    今この時期は、エネルギーの過渡期です。私は原子力自体は、やがて消滅に向かうべきエネルギーだと考えています。

    残るにしても、今のような形ではないはずです。

    しかし、今、完全に消滅したら社会的ダメージが大きすぎます。電気料金の高騰と高止まりは既に現実になり、日本社会を苦しめています。

    30%のエネルギー源が消滅するというのが、いかに巨大か、です。

    従来型の原発がふるいにかけられて、危険度が高いダメなものから順次廃炉に追い込まれていく時期です。

    短期のスパンの原子力の廃絶はありえません。おおよそ50年ほどかけて、この選別と廃炉の過程は進行するでしょう。

    その間に様々な代替エネルギーが登場し、試練にかけられて、あるものは消え、あるものは残って次世代の主流の一角となっていくでしょう。

    その過渡期のつなぎとして、残していい原発もあれば、残してはいけない原発もあります。

    それを選別するのは、ただひとり、規制委員会だけの仕事です。政府でもなく、ましてや素人同然の裁判官ではありません。

    この原則を打ち立てないと、大変な社会的混乱を招きます。いや、既に招いています。

    政府がしっかりしないならば、電力会社はあらかじめ損害賠償の積み立て担保を要求して自衛するしかないでしょう。

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    トランプ 不都合な大統領候補その2 トランプの日韓核武装論とは

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    ドナルド・トランプという悪い冗談のような男が登場し、しかもただの道化かと思ったら、あれよあれよという間にほんとうに米国大統領に就く可能性が出たことに、世界は驚いています。 

    ヒラリーはかつて、トランプに多額の政治資金を要求した弱みを握られており、本選になった時にこの時限爆弾を、トランプはようしゃなく使うだろうと見られています。 

    おそらくヒラリーが勝っても、薄氷の勝利でしょう。 

    負ければ、このブラックジョークのような自称「ストロングマン」が、世界帝国の玉座に就くことになります。 

    もちろん、トランプには政策的一貫性はありません。思いついたことを、思いつくままにしゃべり散らしているだけにみえます。 

    下の風刺画は、「ニューズ・ウィーク」(3月29日号)に載ったものですが、トランプは「自分の能力と、『男らしさ』に自信を持っているが、三権分立のアメリカの政治制度に太刀打ちできるわけがない」と評されています。 

    東部のインテリが本能的に嫌悪する反エリート主義を原動力にして、大衆を暴力的に煽動しているのですから、まぁそう言うでしょう。

    ポピュリストなどと批判しても無駄です。

    米国の一般ピープルが何に怒っているのかトランプはよく知っており、誰を叩けば喝采を浴びるのか計算し尽くしてしゃべっています。

    その意味で、実に賢い男なのです。ただし「悪」がつきますが。

    01「ニューズ・ウィーク」(3月29日号)より引用

    さて、日本にもやがて何か言うだろうと思っていたところ、やはり日米同盟の廃棄とセットになった日韓核武装容認を言い出したのには、私もさすがに驚きました。

    核武装容認うんぬんは、オバマが第4回核安保サミットを開いた時期に合わせたオバマ攻撃だと見られています。

    Photo産経新聞4月3日より引用

    要するにトランプが言いたいのは、たぶんこうです。

    「オバマ、お前は核無き世界を目指すと宣言して、ノーベル平和賞まで貰いやがったが、なんだ北朝鮮はとうとう核保有国になっちまったぜ。ええ、どうしてくれるんだ。このウラナリめ!」

    おそらく、そう遠くない時期に北朝鮮は、弾道ミサイルの再突入実験をします。

    この瞬間に、北の大陸間弾道ミサイルは、実用段階に達するわけです。ちなみに、日本向けのノドンは、とっくに実用段階ですので、念のため。

    北朝鮮は、「ウラニウム型とプルトニウム型と合わせて10~20発の核兵器を保有している」(2月9日、米上院情報特別委員会の公聴会におけるファインスタイン議員の証言)とされています。

    このトランプ発言に、「トランプは外交、核政策、朝鮮半島、世界をよく分かっていない」と批判しました。

    現職大統領が、候補者の発言に反論するというのはきわめて異例です。

    トランプの発言は一見突拍子もなく、脈絡も、知見も欠いていますが、一面真理を突いているリアリズムの部分があります。

    それがこの核兵器です。トランプにとって「同盟」とはただの国益を増大させるための装置でしかないように、核兵器もまた同じ文脈でみているのでしょう。  

    つまり、ちょうど経営者が四半期の経営成果を分析するのと一緒のノリで、「朝鮮が米国に届く核をもっちまったぞ。なら、日韓に核持たせて脅かしてやろうぜ」ということのようです。 

    茶化して言っているのではなく、実際、彼の大衆集会の演説はこんな調子で台詞がポンポンでてきます。 

    下の諷刺画には、定番のヒトラーが登場しますが、実際に彼は「党大会で候補者指名獲得が阻止されれば、大衆は黙っていない」(ニューズウィーク前掲)という脅し文句を口にしています。 

    01_3ニューズウィーク 前掲

    トランプは、戦後に誕生した国際的な仕組み総体を敵視していますから、NATOや日米同盟などに対しても、トランプ流「国益」の大鉈が振るわれるのは確実です。 

    まぁこんな男に、世界でもっともうまく機能している、日米同盟という精密なシステムを破壊されたらたまったもんじゃありませんがね。 

    しかし、こんなブラックジョークの男を米国民が選ぶのなら仕方がない。私たちは万が一、いや万が8千ていどのリスクに備えて、対処方法を考えるだけです。  

    ただひとつ良いことは、日本人にとっておそらく戦後初めて「日米同盟が消滅したら」、あるいは、「日本が核武装するとはどのような意味なのか」という問いを、自らに発するいい機会になります。

    これをTVのコメンテーターのように、「しょせん安保負担の増加要求にすぎない」なんてわかったようなことを言っていると、ほんとうに彼が大統領になった時に、困惑することになりますよ。

    いままで空気のように「あってあたりまえ」だった日米安保が、ひとりのトンデモ男の登場ひとつで、空気のごとく消滅する可能性はなしとは言えないのですから。

     

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    HNさうざーさんにお答えして 安保問題で共産党と組めば必ず翁長氏のようになる

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    シリーズの途中ですが、HNさうざーさんのコメントに一緒に考えていきましょう。 

    既にお読みの方には、下からどうぞ。

    「>彼は共産党という極左政党の力を借りて知事になりさえすれば、なんとかなると思っていたのでしょう。
    私は、そうは思いませんね。
    沖縄自民党は、かつて県外移設を掲げて、自民党本部と対立していましたが、選挙で当選するやいなや、県外移設の公約を翻して辺野古容認。
    以後、県民の信頼を失い、衆議院選挙、参議院選挙、自民党はボロ負けです。
    共産党が小選挙区で異例の当選を果たしたのも、そんな事が背景にある。
    翁長知事は、辺野古移設阻止する為には、左翼と組む以外ないと思います、保革の垣根を超えた共闘に県民は共感したからこそ、翁長知事の高い支持につながっている。
    宜野湾市長選挙の結果は、翁長知事の掲げる『辺野古新基地反対』よりも、より強い米軍基地拒否の意思の表れです。

    現に佐喜真氏は、辺野古の争点を避けたこと、普天間基地の早期返還への強い思いは、宜野湾市民の支持につながった
    目の前にある厄介者の普天間基地が無くなる事を優先するのは当然の心情でしょう
    最近は、米大統領選挙でトランプ氏が話題になっているようですが、私は、個人的にあまり好きではありませんが。
    県外移設には、よもやトランプ氏に望みをかけるしかないのかとも私は、思い始めています
    トランプの発言をそのまま額面どおりに信じるのもどうかとは思いますけどね。」

    う~ん、あなたの頭の中には、まず「辺野古移転阻止」という大命題があるんですよね。 

    ここから演繹的に、「左翼と組む以外ない」みたいな選択が生まれるようです。  

    しんどくないかな。だってこれって、政治選択でやっちゃいけないといわれる、二項対立ですよ。 

    二項対立というのは、左翼の皆さんが大好きな構図です。 

    本来選べるオプションを全部切ってしまって、ギューギューと煮詰めて、自分と相手を追い込んでいくわけです。

    イエスかノーか、0か1です。「勝利か、死を!」みたいにヒロイックだしね。

    もちろんこんな過激な交渉はうまくいきっこないから、最後には「悪玉政府を打倒せよ!」と叫ぶわけですが、実はそれをしたいからこういう手法を取る人たちがいます。

    それが共産党です。

    さうざー氏は「自民党が県外移設の公約を翻して辺野古容認したために県民の信頼を失った」と言います。まぁそのとおりです。

    しかし、元々自民党は容認でした。条件闘争を延々と17年間積み重ねてきたので、この問題で本土政府が妥協できないことを知っていたからです。

    しかし、ミスタールーピーが作ったあとの島の「気分」に逆らえませんでした。

    なぜなら、当時の自民県連は容認の筋をたてるどころか、自分の足元が崩壊しかけていました。

    那覇自民市議団「新風会」を手足に使った翁長氏のクーデターで、ガタガタだったからです。

    だからできないことを承知で、「反対」を言わざるを得なかったのです。そして石破幹事長に東京に呼び出されて、ど叱られたわけです。まことに惨めです。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-2dd2.html

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    出所不明

    それがさうざー氏の言う、「県外移設の公約を翻して辺野古容認。以後、県民の信頼を失い、衆議院選挙、参議院選挙、自民党はボロ負け」の背景です。

    さうざーさん、表象を追うだけじゃなくて背景を考えてみましょうね。そうじゃないと、上面になります。

    で、ここまではまるでNHKの大河ドラマばりに、翁長氏の裏切り劇がピタッと決まったのです。

    翁長氏が側近に、「オレは自民を裏切って、共産党につく」と言った時に、周りは一瞬凍ったでしょうな(←たんなる想像)。

    Photo_3出所不明

    上の写真がさうざー氏の言う「保革の垣根を超えた共闘」だそうですが、「垣根を超えた」ですって、美化するのもいいかげんにしなさい。

    あれは島の利権保守が、その政治的野心で共産党と野合しただけの図です。

    先日来た翁長氏支持の人は、彼が「安保を認めているんだから、ただ移転を県外にしてくれればいいだけなのに」みたいなこと言っていました。

    そこで、共産党と「島ぐるみ」だから組んだってわけですか。

    甘いですね。共産党という政党だけは、他のいかなる政党とも違うことをご存じないようです。

    あのね、安保問題で共産党と組んだら最後、「絶対反対」「すべての米軍基地撤去」、果ては「自衛隊解体」まで言い出しかねないのは常識でしょうに。

    ぜなら共産党はただのリベラル政党ではなくて、れっきとした革命党なんですから。これは誹謗中傷ではなく、自分でそう言っていますから。

    これが離島に橋をかけろ、託児所を増やせみたいな要求だったら別ですが、共産党と安全保障問題で組めば必然的にこうなるのはわかりきったはずでした。 

    知事になった後の翁長さんは、「いかなる新基地にも反対」みたいな絶対反対主義者に変化していきました。

    前知事公室の吉川由紀枝氏はこう述べています。
    ※http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20150514/281135/

    「翁長知事は2014年11月の県知事選で圧勝したが、その基盤は盤石というわけではない。『オール沖縄』を標榜して当選しただけに、知事自身の可動範囲は、全基地閉鎖から基地容認まで様々ある沖縄の意見の最小公約数に狭められている。即ち、「辺野古反対」「オスプレイ反対」くらいしか、発言できる範囲がないのだ。特に現実的な妥協ラインはどこか?という話になると、「オール沖縄」では一切の合意はない。この可動範囲をちょっとでも越えれば、知事の支持基盤は分裂する
     とどのつまり、「沖縄県のいうことをすべて呑むか」「それとも、呑まないか」という、オール・オア・ナッシング以外の交渉ができないということだ。これでは、日米政府とのまともな交渉相手たりえない」
     (太字引用者)

    翁長氏はかつてのいい悪いは別にして、基地を条件闘争の場にして、本土政府からなにかしらの譲歩を引き出すという伝統的手法を止めてしまい、極端に政治選択の幅の狭い隘路に自ら入っていったのです。

    その瞬間、現実政治家としての翁長氏は死んだのです。

    そして「いかなる新基地反対」から、やがて「全基地撤去」に少しずつ軸足を変化させていきます。 

    Photohttp://kunimasa28.ti-da.net/e7251862.html 読谷村議クニヨシ氏のサイトより引用

    この「全基地撤去」というスローガンは、「ただ移転先だけが問題じゃない。沖縄の米軍基地総体を許さない。米軍は出て行け」という主張です。 

    確認したいのですが、これは日米同盟なんかいらない、潰せということと同義ですよね。 

    移転先が問題だ、というだけならまだ分かります。

    私もその「気分」は実現可能性は別にして、そのとおりだと思っていますから。

    しかし「全基地撤去」は明確に共産党のスローガンそのものです。 

    なぜなら、これではわが国の機軸的同盟そのものを全否定してしまうからで、この日米安保そのものを打倒することが共産党の長年の路線でした。

    これも誹謗中傷ではなく、共産党か長年言ってきたことにすぎません。

    もちろん「保守政治家」の翁長さんは、さすがにここまでは言っていません。 

    しかし、逆にさうざー氏にお聞きしたいのですが、あなたが言うように、この「オール沖縄」が「保革の垣根を超えた共闘に県民は共感して」できたのならば、このような過激な立場は非常にまずいんじゃありませんか。 

    だってそうでしょう。あなた方は日米同盟そのものをターゲットにして、それを全部をぶっ壊したいんですか? 

    そうではなく、「また新しい基地を作るのかよ」という素朴な県民感情から始まったんじゃないですか。 

    しかし今、この移転問題は日本の安全保障体制そのものを揺るがしかねないかところまで来ています。 

    なぜなら、政府としては今またこれを許したら、ミスタールーピーがしでかしたように米国の日本への信頼が雲散霧消することを知っているからです。 

    米国からすれば、はっきり言って、どこに行こうがどうでもいい部分はあります。あくまでも穏便に抵抗なくスムーズに移動したいだけです。 

    それがうまくいかないなら、普天間にいてもまったくかまわないよ、というのが、米国の本音です。

    しかし、これを反米闘争のシンボルにしないでほしい、というのが米国の要求です。 

    しかし、そうなってしまいましたね。いまや全国どころか、世界中から反米主義者が辺野古に押しかけるありさまです。

    Photo_2http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/52067/グリーンピースのサイトより引用

    こんな状態をそのままにしていたら、日本政府の威信というか、国家としての信頼性は地に堕ちてしまいます。 

    いわば「面子」です。 

    なに、古くさいことを言ってるんだ、と思われるでしょうが、国家間の外交関係では「面子」は未だ強く生きています。 

    一「地方政府」(※)の反対で、国家間の取り決めが実行できないような政府はただのヘタレだと、外国政府に侮られます。 
    ※日本は連邦制ではないので、単なる地方自治体ですが、いまや翁長県政は独立志向がおありなようなので、あえてこう呼びます。

    かったるい表現を使えば、国内統治のハンドリングに対するクレディビリティ(信頼性)が揺らぐわけです。

    ですから一回、国際関係で侮られたら最後、あとは外国から何を無理無体言われてもヘイヘイと追従するしかありません。 

    それは日本国民総体の利益に反します。

    だから、国にとって、このまま移転をなしにするというオプションはありません。

    さて今回、首相は大胆な賭に出ました。圧倒的に国に不利な裁判所の暫定案を呑んだのです
    ※関連記事
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-08d4.html

    そしておそらくこの夏までの期間を、「和解」期間としました。言い換えれば、落とし所を相互に探ろう、ということです。

    意外に思われるかもしれませんが、これは翁長氏に対する助け舟です。

    翁長氏は政府に実現不可能な要求をつきつけて、「絶対反対」をしたために、ニッチもサッチもいかなくなっていました。

    乱訴するしか戦術が残っていないんですから、どうにもならない。 そして一回でも県敗訴となったら、お終いです。

    県は負けても、県民にはしこりが残るでしょう。

    Photo_4http://nonukeschi.exblog.jp/i8/反原発ちがさきより引用 一坪反戦地主会で講演する伊波氏

    そして「翁長氏はダメだ。ほんとうの戦うリーダーは伊波洋一さんだ」、ということになりかねません。これで次の県知事は決まったようなものです。

    首相は「和解」提案をすることで、その期間あえて工事を止めてみせるという大技を繰り出しました。工事を半年以上止めることができるのは、保守の長期政権の時だけです。

    こんな妥協は、日韓合意もそうでしたが、安倍氏以外がやったなら、自民の支持基盤の保守層が怒り狂います。

    つまり、翁長氏の「面子」を立てることで、こう言ったのです。

    「ねぇ、翁長さん、ここまで政府は妥協してあなたの面子を立てたんだから、なにか妥協点を探ってもいいんじゃないの。このまま行くと、あんたら伊波さんに主導権奪われるよ」

    老獪そのものですね。ほんとうに、だんだん安倍氏は岸氏に似てきました。

    私は、落とし所はあると思っています。落とし所なんていうとまた「軽い」といわれそうですが、カッコよくいえば出口戦略です。

    私はそれをかみ砕いて「揉んでみたら」と言う表現を使いました。  

    揉みようは狭い範囲ですが、あると思っています。 

    何が問題なのか、煮詰めたらいいと思います。整理するために、箇条書きにします。

    なお「全基地撤去」とかいうような、絶対反対要求は入れませんでした。具体案を揉む時に、話にならないからです。

    ①美しい海が埋め立てられるのがいやだ。
    ②米軍基地が増えるのがいやだ。
    ③以上の「民意」が踏みにじられたからいやだ。
    ④日米地位協定をなんとかしろ。
     

    ①を止めるには、地上部に作ることです。埋め立て予定地の後背地であるシュワブ基地内には広大な土地があります。 

    ②は、「新基地はいやだ」という考え方ですが、分からないではありませんが、ならば既存基地の「フェンスの内側」ならいかがでしょうか。 

    ③は、いろいろと揉めば新たな「民意」が生まれるんじゃありませんか。「民意」は流動的です。 

    ④は、私は断固やるべきだと思っています。
    ※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-43d0.html

    移転問題そのものには関係ありませんが、個別に交渉しないでパッケーシ化すれば、様々なしこりか溶けやすくなるでしょう。

    というわけで、私の言いたいことは、せっかくの「和解」期間なんですから、いままでの立場はあっても、角突き合わさないで、一回じっくり話あったらどうなんでしょうかに尽きます。

    あ、そうそう。トランプについてですが、さうざーさんはテレビのコメンテーターみたいなこと言っていますが 、あれは米国の本音の一部ですよ。

    もし共産党が願うように安保がなくなるということは、ムキ出しで中国や北朝鮮の核の脅威にさらされるわけですから、必然的に「核武装」路線も選択肢の一つになりえてしまうのです。(私は懐疑的ですがね)

    そこまで考えて「全基地撤去」「安保粉砕」と言っているなら、いい度胸です。

    私は極左と極右の両極端はいわばロープの端で、くるりと回すとくっつくと思っていますもんで。

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    トランプ 不都合な大統領候補その1

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    休み開けとなりました。あらためまして、おはようございます。 

    まぁ、ご承知のようにビンボー症は治らないもので、休暇中もアレコレやってしまいましたけどね(苦笑)。 

    「沖縄のおばぁ」様のような心を打つコメントを頂戴すると、どうしたらこのような方たちのお気持ちに答えられるのかと、自答しながらの1週間でした。 

    さて、今日はトランプについてお話していきたいと思います。 

    ひょっとしたら、この男が大統領になれば、「オール沖縄」の夢がいきなり解決するかもしれません。 というか、:安保反対派が夢にまで見た「米軍のいない日本」が実現するかもしれません。

    なにせトランプは、明確に日米安保を否定して、「在日米軍の撤退」を主張したおそらく初めての大統領候補だからです。

    ただし、下の記事でもわかるように、トランプが日米安保を否定する前提は、日本の核武装が前提ですが。

    Photo_3AFP2015年12月15日より http://www.afpbb.com/articles/-/3070334

    「【ワシントン時事】米大統領選の共和党候補指名争いで首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は、大統領に就任した場合、日本が駐留経費の負担を大幅に増額しなければ、在日米軍を撤退させる考えを明らかにした。
    日本による核兵器の保有を容認する意向も示した。
     米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が26日に掲載したインタビューで語った。トランプ氏は、これまでも「日米安全保障条約は不公平だ」などと日本側の負担増を求める方針を示していたが、米軍撤退の可能性に言及したのは初めて。
     トランプ氏はインタビューで、日米安保条約について「片務的な取り決めだ。私たちが攻撃されても、日本は防衛に来る必要がない」と説明。「米国には、巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はもうない」とも述べ、撤退の背景として米国の財政力衰退を挙げた。
     その上で、インタビュアーが「日本は世界中のどの国よりも駐留経費を負担している」とただしたのに対し、「実際のコストより、はるかに少ない」と強調。「負担を大幅に増やさなければ、日本や韓国から米軍を撤退させるか」と畳み掛けられると、「喜んでではないが、そうすることをいとわない」と語った。
     トランプ氏は、日本政府と再交渉して安保条約を改定したい考えも表明。日韓両国が北朝鮮などから自国を防衛できるようにするため、「核武装もあり得る」と述べ、両国の核兵器保有を否定しないという見解も示した。」(時事通信3月27日)

    トランプはほぼ共和党候補の地位を獲得することが確実になったわけですが、メキシコ移民やイスラム教徒叩きの種が出尽くしたとみえて、いきなり標的をわが国に向けてきました。 

    日米安保廃棄の理由が奮っていて、「米国が貧しくなったのは、日本や韓国に軍隊を出して一方的に守ってやっているからだ」ということのようです。 

    なんともレトロな発言です。これが前世紀のジャパン・バッシング華やかなりし80年代頃だったら、それなりに迫力があったのでしょうが、何をいまさら、です。 

    この人物の特徴は、徹底して企業の経営者、それもグローバルではなく国内の不動産屋の視点から、世界を見ようとしていることです。 

    このような国内限定仕様のビジネスマンにとって、利益はゼニカネで計量できるものでなくてはなりません。 

    たとえば、隣国のメキシコに対してこう言っています。

    「メキシコが送り込んでくる人々は、ベストな人材ではない…問題だらけで、米国に麻薬や犯罪を持ち込んでいる。」(6月16日、ニューヨークでの出馬表明)

    ここでは、不法移民によって職を奪われているプアホワイトを代弁しているようですが、ほんとうのところはNAFTA(北米自由貿易協定)を攻撃しているのです。 

    「メキシコは米国を赤字にさせてやがる。とんでもねぇ野郎共だ。国境に壁を作れ」などと言っています。 

    おいおい、その「壁」を自分の利益で破壊したのは、ほかならぬ米国自身でしょうが。 

    では、そんな単純なものか考えていきましょう。米国の対メキシコ貿易が赤字になるのは、NAFTA(北米自由貿易協定)が出来て、米国企業が人件費が安いメキシコに大挙して脱出したからです。 

    NAFTAが米国、カナダ、メキシコの3カ国で締結されて20年以上になりますが、メキシコは米国の輸入シェアの第2位に躍り上がりました。 

    これがトランプが言う、「メキシコにやられた」という根拠のようです。

    しかし、額面だけを追わずに輸出品目で何が伸びたのかをみれば、この数字トリックが分かります。

    対米輸出で伸びたのは、電機機械、自動車部品などで、しかも米国ブランドです。

    な~んだ、対米輸出を増やしているのは、米国のメキシコの出先法人なんだ。 

    一方、一見米国との市場統合で繁栄に向かうかに見えたメキシコのGDPはといえば、ほとんど増加をしていないのです。雇用すら伸びていません。 

    下図の濃い緑線がメキシコのGDP推移ですが、横ばいなのが分かります。

    Photo_5http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2010/2010honbun/html/i1250000.html

    ではメキシコの輸入のほうに目を転ずれば、想像どおり米国産農産物の輸入量が2倍となりました。 

    これにはトリックがあるのです。

    米国産は輸出に際して過大な輸出補助金をつけることで悪名が高い国です。メキシコの実に30倍(!)もの輸出補助金の竹馬を履かせて国際穀物市場を征しようとしています。

    その上、2003年から、米国産農産物の大部分の関税が撤廃されてしまいました。 

    これはNAFTAの「移行措置」(例外措置)の終了に伴って、重要でない農産物から徐々に関税を撤廃していくという取り決めが実施段階に入ったからです。 

    それによって米国産の豚肉、ジャガイモ、コメなどが雪崩を売ってメキシコ国内に流入し、市場のシェアを制圧してしまいました。豚肉生産はこれにより5%減少しました。 

    いまやメキシコは豚肉の純輸入国で、2000年には276万tを輸入しています。米国が圧倒的に多く87%を占めます。 

    こんな米国産農産物と競争を強要されているメキシコ農民が哀れです。 

    実際、この米国資本の洪水に流されるようにして、1991年から2000年までの約10年間の間に、実に農業人口は160万人も減少してしまいました。 

    また土にしがみつくようにして生きるメキシコ農民の、実に27%にあたる220万人の農民は、無収入の生活に突き落とされています。 

    当然のこととして、メキシコの穀物自給率は急落しました。Photo_4

     

    その原因は簡単です。米国からの輸入量が激増したからです。

    NAFTA締結前の1985年にはわずか8万トンだったアメリカ産輸入小麦は、2004年には372万トンと実に41倍もの増加をしています。

    つまり、メキシコにおいてのピーク時の小麦生産にほぼ匹敵する量が、米国から洪水のように流入してしまったことになります。

    これで、メキシコが穀物自給を達成出来たら、そちらのほうが奇跡です。

    一方NAFTA移行、メキシコは豚肉の輸出もしており、この輸出先のトップはなんとわが国で95%を占めています。 

    ただしこれにも例によって裏があって、対日輸出をする会社の90%はメキシコにある米国資本の会社で、積み出し港もロスアンジェルスです。 

    これは米国と日本の制限枠に引っかからないための、メキシコを利用した迂回輸出です。

    ちなみに日本におけるメキシコ産の豚肉のシェアは第4位です。1位米国、2位デンマーク、3位カナダとなります。 

    この対日豚肉輸出上位の第1位、第3位、第4位はいずれもNAFTA域内なことに注目してください。

    なんのことはない、NAFTAは米国産農産物輸出の堰を切って落とし、メキシコ産のタグを付けた米国資本の農産物輸出のみを増やしたにすぎなかったわけです。 

    ですからねもそも、NAFTでメキシコが念願の繁栄を獲得していたならば、大量の不法移民が国境フェンスを乗り越えて、米国内に流入する必要もなかったのです。

    この貧困農民層が、米国への不法移民となっているわけです。

    Photo_6図 下引用と同じ

    「米国に住む外国生まれの移民のうち、約30%がメキシコで生まれている。次に多い中国系(台湾、香港を含む)は、全体の5%に過ぎない。
     米国で増加が言われる「ヒスパニック」についても、メキシコ系の比重は大きい。米国に住む約4800万人のヒスパニックのうち、66%がメキシコに起源をもつ。その人数は、次に多いプエルトリコ系の7.2倍に相当する
    。」
    (安井明彦 みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長)
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20120518/232294/?rt=nocnt

    このように、トランプが言う「米国が貧乏になる原因である対米輸出激増」の正体とは、その国に進出している米国企業の対米輸出にすぎず、言い換えれば、米国グローバル企業の競争力の現れにすぎないのです。

    これとまったく同じ構造は、米韓FTAを結んだ韓国にもいえます。あるいは対中国にもいえることです。

    日本の論調に、トランプは対中姿勢だけはまともだという人がいますが、それは単にメキシコと一緒で、米国向け中国輸出品の大部分は、米国ブランドにすぎないことを見ないで、中国の脅威を叫んでいるにすぎないのです。

    このようにトランプは、目先の利害を追う商人の発想で、幼児的に「悪いのは全部外国。犠牲者は米国。だから外国をやっつければ、米国は再び強くなる」という男のようです。

    長くなりましたので、次回に続けます。 

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    日曜雑感 名無しさんにお答えして

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    予定より一日早く始めることにします。 

    その気になったのは、名無しさんの以下の書き込みがあったからです。コメント欄でお読みの方は、その下からどうぞ。

    「すべて繋がっている。
    現状の基地の過剰負担、被害への不満の声。
    それは、過去の戦争から積もり積もった不満からくるものだと解している。
    本土決戦の為の時間稼ぎの捨て石として沖縄を住民ごと特攻させた不満。
    戦後沖縄を切り離し、米軍統治下におかれた不満。
    本土の反米運動を鎮静化させ、米軍基地を不可視化させる為に米軍基地を沖縄に移設させた不満。
    今もなお、日米の安全保障の為に沖縄に犠牲を強いている不満。
    それら沖縄の不満に対して異論はあるかもしれないが、そんな異論で沖縄の現状の不満を解消する事はできないでしょう。
    沖縄は、たしかに日本の1地方自治体だが、理不尽な差別に声を上げる権利がある。
    1地方自治体が国に一切主張するなというならば、極端な話、米軍基地はおろか核廃棄物処理場等の迷惑施設を1地方自治体に集中させるような差別を国家権力がやっても文句を言うなという事になる。
    最近の沖縄県調査による県民の意識調査では辺野古移設反対58%であり、賛成の2倍を超えています。
    翁長知事は、移設賛成派から攻撃の的となっていますが、意識調査の結果からも、翁長知事は、沖縄県民の希望を背負っていることがわかる。
    翁長知事は、極左とは違い、日本にとって日米安保の重要性に理解を示しているが普天間基地の県外移設以外認められない。
    そこは県民を含めて譲れない線なのです。

    日米両政府が、重い腰を動かし米海兵隊基地の県外移設へとすすむことを願う。」

    教科書どおりというか、ステレオタイプの内容で、正直、放っておこうかと思いましたが、答えておきます。 

    まず、これが、金曜日にアップしたHN「沖縄のおばぁ」様のものに対してだとすれば、とんだ的外れです。 

    彼女は、自分の苦難の人生の中から沖縄を「一地方」として相対視しようとされています。

    相対視というのは、自分の苦しみを自分で終わりにさせることなく、他人の苦悩の中に溶かし込んでいく作業です。

    彼女は疎開した先の本土では空襲に合いたくさんの知り合いを失いながら、沖縄に戻れば今度は「微々たる悲惨」といわれ、そして「留学」した先の本土ではまるで異邦人のように扱われました。 

    そして、復帰後の沖縄左翼がした自衛隊に対しての、ありとあらゆる陰湿な差別を目の当たりにします。 

    その中で彼女は、「沖縄には日本は本土と沖縄の2つしかない。 他府県は全てひっくるめの一つの本土だ」という見方に疑問を持つようになります。

    それは本土と沖縄を、対立的にではなく、沖縄は「同じ日本のひとつの地方自治体なのだ」という、他県から聞けば、あまりにもあたりまえの認識です。 

    戦争による災禍は、沖縄も本土も被っています。私の義理の祖母は東京大空襲で生きながら焼き殺され、骨も残りませんでした。

    戦後の米軍支配は沖縄と本土の、共通の苦い経験でした。私が育った神奈川県大和は、米軍基地の町でした。 

    すぐ近隣に米軍ジェットが墜落し、一家全員が死ぬ事件もありました。米兵犯罪も私が子供だった時までは、日常茶飯事でした。 

    小学校は二重窓で、深夜までジェット音が町を揺さぶっていたものです。 

    私が、沖縄に対して皮膚感覚で分かる部分があると何度か書いているのは、そういった育ち方をしたからです。 

    「なにが皮膚感覚だ。オレたちのほうがよほどひどい眼にあった」と、この名無し氏は言うかもしれません。 

    もしこの人が、復帰後に生まれた人なら、「先祖、先輩の労苦を知るのは大事だが、まるで自分自身が受けたような顔をするな」と言いますが、歳が分からないのでなんとも言えません。 

    ですから、私は一般論としてはそれを否定しません。そのとおりです。沖縄のほうが本土よりはるかに大変でした。 

    本来、本土決戦としてあるはずだった地上戦は、沖縄でしか起こりませんでした。 

    地上戦は、大戦中のソ連やドイツでもそうですが、一般住民を巻き添えにします。この両国も計画的な避難ができなかったために、一般市民が大量に亡くなられています。 

    沖縄戦の悲劇は、起こり得たかもしれない本土決戦の姿そのものでした。

    私が沖縄へ行く時かならず訪れたのは白梅の塔です。県立第2高女49柱の鎮魂の塔です。

    Photo
    今でも忘れられたように、ぽつねんと建っています。彼女たちについて書かねばと思う内に、日々起きることに眼を奪われてしまっていた自分を恥ずかしいと思います。
    白梅学徒隊 - Wikipedia

    彼女たちの死は、この名無し氏が言うように「住民ごと特攻」のためだったのでしょうか。

    違うと思います。

    彼女たちは、郷土を守ることが日本全体を守ることになると決意して戦ったのです。

    特攻作戦が、その作戦自体の愚かさと非合理性によって強く糾弾されねばならないとしても、そこで散った約3千名といわれる若者たちを同一視できません。

    白梅学徒たちと、ほぼ同世代の特攻隊の青年たちは、怒濤のように祖国を蹂躙しようとする「戦争」に身を挺して戦ったのです。

    それは失敗に終わりました。沖縄は戦争機械によって耕されたように蹂躙されました。

    しかし、沖縄県民の戦いは私たちの国に、貴重な和平交渉を準備する「時間」を与えてくれました。

    東條の下で軟禁状態にあった和平派は、密かに連絡を取り合い、本土決戦に突き進もうとする軍部との見えない熾烈な戦いをすることになります。

    まさにこの時期の一日は、平時の1年にも相当するものだったのです。

    私は、この貴重極まる和平への「時間」を祖国に捧げた沖縄県民に心から感謝します。

    そしてこれを「県ぐるみの特攻」とか、ましてや「犬死」と呼ぶ人間を私は深く軽蔑します。

    沖縄は日本人として、日本のために、まさに日本人の手本となる戦いの結果、一般市民戦没者約20万人とも呼ばれる多大な犠牲を払ったのです。

    名無し氏に聞きたい。ここから「日本」という二文字をとってしまったら、一体何が残るでしょうか?

    彼らの死の意味は空中に泡のように消え散って、後世の人にはなんの意味も持たなくなるでしょう。

    名前のない死、顔のない死者。私はそのようなものに耐えられない。

    死者には物語があります。

    沖縄のそれは、おそらく多くの人が編み上げる民族の叙情詩として後世に語り継れるべき崇高ななにかです。 

    それを「捨て石」と唾を吐きかける行為は許せません。彼らが本当に汚しているのは国家ではなく、白梅学徒や鉄血勤皇隊の青年たちなのですから。

    この物語を忘れた一部の戦後沖縄人たちは、自分が絶対的な被害者だと勘違いするようになります。

    それは冒頭の名無し氏のコメントにある通りです。

    この人たちの中では、「本土が反米闘争を忌避して、沖縄に米軍基地全部をおしつけた。そして米軍基地は核廃棄物処理場と一緒だ」というような説がまかり通っているようです。

    反論する気にもなりません。デタラメです。本土から米軍基地を不可視化するためというなら、どうぞ神奈川県の横須賀軍港においでください。

    那覇軍港などほんの桟橋にしか見えない、巨大軍港が拡がっているでしょう。

    そもそも米軍基地は、安全保障上に必要なので置いているのであって、核廃棄物処理場と同一視すること自体、話になりません。

    しかし、この人の言うことにも一理あります。日本は沖縄に、あまりに多大な犠牲を払わせすぎた、そして今もそうであるというのは事実です。

    では、どうしたらいいのか、恨みつらみだけではなく、具体的に考えてみてはいかがでしょうか。

    私としては春休みをとることになったきっかけの3本の記事で、考えはじめたところです。

    Photoしんぶん赤旗2014年12月11日よりhttp://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-11/2014121101_01_1.html

    この人はおそらく、翁長氏が「オール沖縄」として出るまでは、保守系に入れていたかもしれません。

    そしてそのような人が陥りがちな「翁長は安保賛成でしっかりした保守だから、今回の移転反対も、ただ県外にもっていってくれとお願いしているだけだ」と思っているはずです。

    残念ですが、翁長氏はそのような信念あるタイプではありません。

    もし、そうなら、日米安保を、いや日本の安全保障そのものを否定する共産党と手をつなぐはずがないじゃないですか。

    彼は共産党という極左政党の力を借りて知事になりさえすれば、なんとかなると思っていたのでしょう。

    しかし、結局は、ミイラ取りがミイラになり、いまや本来の「保守政治家」の面影もありません。

    共産党と野合するいかなる政治家も必ず辿る道を、この翁長氏も忠実に辿ったにすぎないのです。

    そして最後に「民意」ですが、潮目は宜野湾市長選挙で大きく変わりました。

    「オール沖縄」という共産党主導の疑似「島ぐるみ闘争」は、大きく崩壊の方向に突き進んでいます。

    元々、相いれない主張を持って、支持基盤も敵対していた同士が欲得で癒着しただけの寄り合い所帯ですから、当然です。

    私は「沖縄の負担を減らせ」という訴え自体は、何度も書いているように正当な要求だと思っています。

    ならば、どうしたらほんとうにそれが実現可能か、「民意」だとか「オール沖縄」だとかいう耳障りのいい言葉に逃げないで、ひとりひとりが考えていくしかないのではないと思っています。

    ■関連記事
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-ae80.html
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-4cd3.html
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-e2f6.html 

    翁長氏については大量に書いていますが、これがまとまっているかな
    http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-e327.html

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    日曜写真館 太陽が目覚める

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    HN「沖縄のおばぁ」さまからのコメントを、転載させていただきます

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    本日は、HN「沖縄のおばぁ」さまからのコメントを、転載させていただきます。

    ほんとうに、ありがとうございます。心打たれるお手紙として拝読しました。

    沖縄の人たちの長くつらい戦後の歩みが折り込まれています。

    一日も早いご退院をお祈りしております。

                                                                                              ブログ主拝

                   .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

    毎日何回も何回もこのブログを読んでおりました。

    年寄りにはちょっとハイレベルな管理人様の記事や、皆様のコメントにたっぷりの時間を(只今入院中)使い、ネットを使いながら勉強させて頂いております。

    沖縄の自衛隊は本当に可哀想なで言い表せない程に差別されておりました。

    25年程前迄沖縄の行事はおろか、お祭りにも参加ならず、ハーリーも大綱引きも米軍の参加、高官の招待はしても自衛隊は認めないのですから。

    自衛隊員の家族も大変でした。特にお子様は学校ぐるみで虐めておりましたね。連絡のお手紙無し、体育祭や発表会等にもどこにも参加場所を与えていませんでしたから。

    ここ20年位でしょうか?あまり気にならなくなりましたね。

    私は戦時中は山口に疎開しており、昭和26年に戻ってまいりました。

    小学4年の時です。沖縄の人間でありながら内地人扱いでかなり苛められた思い出があります。

    首里の石嶺の実家は何にもなくなっていて父も戦死しており、母は、私達子供3人を必死で育て上げてくれました。

    首里高時代に甲子園ですよ。嬉しくて嬉しくて…やっと本土並みになる、と子供心に思ったものです。

    その帰りの船の上で甲子園の砂を流した時、未々日本は遠い、と感じました。あの頃は検疫事情など理解出来ませんでしたから。

    国費留学という有難い制度で私達兄弟は東京の国立大学に通う事が出来ましたが、学力の差に愕然としたものです。

    アルバイト先では「日本語はどこで覚えたの」「英語学習を受けていたの?」等と今では笑い話の様な思い出が一杯です。しかし苛められたり、差別されたりの経験はありません。

    よく子供の頃は「戦争体験がないから同胞ではない」と言われたものです。母はもっと辛かったと思います。しかし私達は空襲の怖さ恐ろしさを知っています。

    近所のおじさんやおばさん、友達と沢山の知り合いを亡くしました。毎晩のように空襲警報に怯え逃げまといましたから。

    沖縄戦に比べれば微々たる悲惨差と言われたこともあります。防空壕の中で、ある人が「これが戦争なのだ」と「自分の子供も戦地で親の為子の為故郷の為頑張っている」今でもはっきり覚えております。

    戦争は悲惨です。あっては成らぬ物です。しかし世の中には利害や思想や宗教等の違いだけではなく、自然も違う環境がありますものね。

    永久に無くならないものだと思っております。大小の違いはあっても。

    それを如何に最小限に食い止めるか、自国の国民を如何に守るか、なのでしょう。
    沖縄には日本は本土と沖縄の2つしかありません。 他府県は全てひっくるめの一つの本土です。

    本土で生活している時転勤先で近所の方に聞かれる「どちらから?」は前に住んでいた所、「お里はどちら?」も産まれた土地。沖縄は「内地ねぇ?」ですものね。

    確かに此所と内地の環境は違いますが、同じ日本の1地方自治体なのだという自覚が薄い人が未々多いようです。

    それなのに沖縄らしさが日々薄れ、おもろまちの様な何の特徴も無い街がどんどん広がり、観光用の沖縄の施設と方言が蔓延している様な気がします。

    治療の合間に途切れ途切れに書いたものですから、かなり支離滅裂です。ごめんなさい。

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