トランプ 不都合な大統領候補その2 トランプの日韓核武装論とは
ドナルド・トランプという悪い冗談のような男が登場し、しかもただの道化かと思ったら、あれよあれよという間にほんとうに米国大統領に就く可能性が出たことに、世界は驚いています。
ヒラリーはかつて、トランプに多額の政治資金を要求した弱みを握られており、本選になった時にこの時限爆弾を、トランプはようしゃなく使うだろうと見られています。
おそらくヒラリーが勝っても、薄氷の勝利でしょう。
負ければ、このブラックジョークのような自称「ストロングマン」が、世界帝国の玉座に就くことになります。
もちろん、トランプには政策的一貫性はありません。思いついたことを、思いつくままにしゃべり散らしているだけにみえます。
下の風刺画は、「ニューズ・ウィーク」(3月29日号)に載ったものですが、トランプは「自分の能力と、『男らしさ』に自信を持っているが、三権分立のアメリカの政治制度に太刀打ちできるわけがない」と評されています。
東部のインテリが本能的に嫌悪する反エリート主義を原動力にして、大衆を暴力的に煽動しているのですから、まぁそう言うでしょう。
ポピュリストなどと批判しても無駄です。
米国の一般ピープルが何に怒っているのかトランプはよく知っており、誰を叩けば喝采を浴びるのか計算し尽くしてしゃべっています。
その意味で、実に賢い男なのです。ただし「悪」がつきますが。
「ニューズ・ウィーク」(3月29日号)より引用
さて、日本にもやがて何か言うだろうと思っていたところ、やはり日米同盟の廃棄とセットになった日韓核武装容認を言い出したのには、私もさすがに驚きました。
核武装容認うんぬんは、オバマが第4回核安保サミットを開いた時期に合わせたオバマ攻撃だと見られています。
産経新聞4月3日より引用
要するにトランプが言いたいのは、たぶんこうです。
「オバマ、お前は核無き世界を目指すと宣言して、ノーベル平和賞まで貰いやがったが、なんだ北朝鮮はとうとう核保有国になっちまったぜ。ええ、どうしてくれるんだ。このウラナリめ!」
おそらく、そう遠くない時期に北朝鮮は、弾道ミサイルの再突入実験をします。
この瞬間に、北の大陸間弾道ミサイルは、実用段階に達するわけです。ちなみに、日本向けのノドンは、とっくに実用段階ですので、念のため。
北朝鮮は、「ウラニウム型とプルトニウム型と合わせて10~20発の核兵器を保有している」(2月9日、米上院情報特別委員会の公聴会におけるファインスタイン議員の証言)とされています。
このトランプ発言に、「トランプは外交、核政策、朝鮮半島、世界をよく分かっていない」と批判しました。
現職大統領が、候補者の発言に反論するというのはきわめて異例です。
トランプの発言は一見突拍子もなく、脈絡も、知見も欠いていますが、一面真理を突いているリアリズムの部分があります。
それがこの核兵器です。トランプにとって「同盟」とはただの国益を増大させるための装置でしかないように、核兵器もまた同じ文脈でみているのでしょう。
つまり、ちょうど経営者が四半期の経営成果を分析するのと一緒のノリで、「朝鮮が米国に届く核をもっちまったぞ。なら、日韓に核持たせて脅かしてやろうぜ」ということのようです。
茶化して言っているのではなく、実際、彼の大衆集会の演説はこんな調子で台詞がポンポンでてきます。
下の諷刺画には、定番のヒトラーが登場しますが、実際に彼は「党大会で候補者指名獲得が阻止されれば、大衆は黙っていない」(ニューズウィーク前掲)という脅し文句を口にしています。
トランプは、戦後に誕生した国際的な仕組み総体を敵視していますから、NATOや日米同盟などに対しても、トランプ流「国益」の大鉈が振るわれるのは確実です。
まぁこんな男に、世界でもっともうまく機能している、日米同盟という精密なシステムを破壊されたらたまったもんじゃありませんがね。
しかし、こんなブラックジョークの男を米国民が選ぶのなら仕方がない。私たちは万が一、いや万が8千ていどのリスクに備えて、対処方法を考えるだけです。
ただひとつ良いことは、日本人にとっておそらく戦後初めて「日米同盟が消滅したら」、あるいは、「日本が核武装するとはどのような意味なのか」という問いを、自らに発するいい機会になります。
これをTVのコメンテーターのように、「しょせん安保負担の増加要求にすぎない」なんてわかったようなことを言っていると、ほんとうに彼が大統領になった時に、困惑することになりますよ。
いままで空気のように「あってあたりまえ」だった日米安保が、ひとりのトンデモ男の登場ひとつで、空気のごとく消滅する可能性はなしとは言えないのですから。
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コメント
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トランプの言う通りに進んだとして…
日本は防衛費増大し、各地の米軍基地が必然的に自衛隊に置き換わることになりますが、
沖縄の基地はそのままで、しかも核装備となりますがそんなことを日本の誰が望みますかね?
某大手新聞記事で「核装備を望む右翼連中にはトランプ待望論アリ」なんてことが書かれてましたが、ひたすら反米を掲げる一部の沖縄の方々にとってももちろん望ましいことになるはずなんですが(海兵隊は追い出せるでしょうけど)、当然違うはずですよねぇ。
反米反基地を叫ぶ皆さん、国防を真面目に考える良い機会じゃないですか?
先日の琉球新報の石垣島自衛隊配備の記事、電波望遠鏡と近すぎるからVERA計画とレーダーが干渉するとのことでしたが、緩い星空趣味のワタクシとしてもそりゃ問題ですが、国防と「国の『ロマン』とやら」を天秤にかける愚かさ。
んなもん国防が大事に決まってます。国防はロマンでは語れません!
電波望遠鏡を遠くに移設するなり、レーダー基地を離れた所にするなりすればいいだけのこと。沖縄マスコミの底の浅さを露呈しまくった中味の無い記事でした。
対する側の意見としても天文学を軽々しく『ロマン』だとかダシにして言いやがる琉球新報に怒り心頭です。
投稿: 山形 | 2016年4月 6日 (水) 09時07分
米国は女性の人権に関して最も進んだ国の一つというイメージがありましたが、女性蔑視発言が相次ぐトランプ氏が高支持率を維持しているのが不思議です。
エスニックマイノリティに対する差別発言もそうですが、トランプ氏の躍進は、表向きの顔とは別の米国の暗部を見たような気がします。
ウィスコンシン州予備選の結果を見ると、トランプ氏の勢いにも陰りが出たのかなと思いますが、この段階までルビオ氏が残らず、早々に撤退してしまったのが残念です。
投稿: 山口 | 2016年4月 6日 (水) 23時42分
山口さん、暗部の暗いほど目標も切実だったりする国ですねUSA。
元々移民の国で、常に先に来た移民と後から来た移民の攻防は人種差別というより貧富や成功という意味合いで許容範囲です。
肉体的な強弱に依って立ち暴力を加えるアンフェアにはとても敏感なのです。人種や貧富に関係なく誰もが幼老の弱さからは逃れられず、レイプ被害においては男と違い女は妊娠被害がありますから。それを迂闊に突っついたら負けなのが分かってないような奴だ、というのは防衛や政治の知識がない層でも分かるのでウィスコンシン州の結果に表れたのではと考えています。
投稿: ふゆみ | 2016年4月 7日 (木) 11時26分
なるほど。
実際に現地に居住経験のある、ふゆみさんならではの洞察ですね。
それにしても、もしトランプさんが日本の政治家なら、今頃マスコミの大バッシングを受けて支持率急落でしょうね。
投稿: 山口 | 2016年4月 7日 (木) 23時31分
下手に数年住むと、見た気になって逆に俯瞰できない部分もあると自覚しています。
トランプ氏ならロシアが北方領土にミサイル配備を進めるのも自国への脅威とは見ずに、あそこはロシアが取ったんだろう?アメリカも沖縄を還したのは過ちだったね位言いかねないです。
今米中が朝鮮半島でコリアンの頭越しにやってるような事を、日本人の頭越しに米中露でやらせるわけにはいきませんので、本気で国防をというこのブログの主旨には大賛成です。
投稿: ふゆみ | 2016年4月 8日 (金) 22時19分
知り合いが留学していた昔話ではスクールバスに席順があって白人、黒人、ヒスパニック、アジアと分かれて座るルールとか…人種によって食事の席も分けられてたなんて聞きましたが今は改善されてるんでしょうかね。
でも根底の白人社会は変わらない
投稿: 多摩っこ | 2016年4月 9日 (土) 01時45分