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2016年4月27日 (水)

HNタームさんにお答えして なぜ在沖海兵隊のグアム一部撤収は延期されたのか?

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HNタームさんから、コメントを頂戴しました。
 

「普天間基地、海兵隊について。
米軍再編計画で、在沖海兵隊は大幅にグアム移転が決まっている、移転の予算も日米で組まれている、と防衛省は発表しています。
海兵隊は日本国防のためではない、というのはここでも管理人さんがおっしゃっています。
そして中国の脅威に対し、沖縄は中国に近すぎる、米軍海兵隊歩兵部隊はグァム移転したほうが戦略的にもよろしいと米国が判断した。
…じゃ移転する海兵隊の基地を、わざわざ辺野古につくるのはなぜ?と思ってしまいます。
尖閣離島に対する中国の脅威に対しては、自衛隊の対応だと思っています。
私は未熟者です、間違ったことを言っているのかもしれません。でも基地周辺で生活している私にとって子供にとって、非常に大事な問題なのです。」

そうですか。基地近隣にお住みなんですね。ご心配でしょう。

私も、ベトナム戦争真っ盛りの厚木基地の真横で育ちました。

先生の声がかき消されて、窓がビリビリと揺れる小学校が、わが母校でした。 

フェンスの向こうはまるで「外国」で、サングラスをかけたMPに守られた広い芝生の上で遊ぶ金髪の子供たち、その外にはゴミゴミした平屋が密集するわが街。

これが私の育った風景でした。 

見かねた母親は爆音防止同盟(共産党系)に入って、いつしかわが家は赤旗を取らされることになってしまったようで、中学校から高校にかけて、私は朝日と赤旗ですくすくと左翼少年に育つことになっていきます(←お袋、恨むぞ)。 

もう35年くらい前になるかな、初めて沖縄を訪れた時に、強い既視感があったのはそのためなのでしょうね。

                        ~~~~

さて、ご質問です。 たいへんに良い質問をありがとうございます。

下に整理してみましたが、いずれも本質的な問題で、こういうことを考えることで、移転問題はもう少し建設的方向にいくのではないかと思います。

タームさんのご意見は三つです。

①米軍のグアム移転という米国の判断について
②辺野古に新たな施設をわざわざ作る意味
③中国の脅威に対応するのは自衛隊ではないか

順番にいきましょう。

まず最初の、「米軍再編計画で、在沖海兵隊は大幅にグアム移転が決まっていて、移転の予算も日米で組まれている」、ということについてです。 

おっしゃるとおり、10年前の2006年にそのような日米合意はありました。合意は以下です。
編実施のための日米のロードマップ : 沖縄防衛局 - 防衛省・自衛隊http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/08boeikyoku/gyomu/02rodo.html

①普天間基地代替施設建設
②在沖海兵隊の8千名、家族9千名のグアム移転
③嘉手納基地以南の相当模の返還・縮小

④嘉手納基地の訓練分散
⑤施設の日米共同使用

もうひとつ、日米合意が審議された2006年第164国会についての外交防衛委員会調査室の資料があります。
自衛隊イラク派遣と在日米軍再編問題をめぐる国会論議(Adobe PDF) 

これを読むと、当時の日米間で何が話されたのかが分かります。 

当時、米国から世界的米軍再編の中で、グアムへの海兵隊の本部と後方支援、そしてその家族を移転したいという申し出がありました。

ただし、本部とロジ(兵站)だけですが、さぞかし当時の額賀防衛庁長官は驚いただろうと思います。

そもそも、当時、沖縄から8千名の事務方といっても海兵隊が撤収するという「意味」です。

沖縄の防衛は、非常に手薄です。今回ようやく与那国に警備隊が配置されましたが、延々と本島までガラ空きでした。

本島にもわずかな陸自しかおらず、空自が主力です。

ですから、沖縄は米軍が「いる」という存在感(プレゼンス)でやっと守っているというのが、本当のところです。

この原因は、復帰後の自衛隊の移駐を「日本軍上陸阻止」とやられたトラウマでしょうね。

沖縄の人はそう思わないようですが、本土は沖縄に力一杯腰が引けている部分があるのですよ。

それはさておき、もうひとつ額賀さんを驚かせたのは、米国が撤収費用を要求したことです。なんと3兆円(!)。

これは日本の防衛予算総額に近い額ですので、当然、大きな議論になっていました。 

この辺の日本側の動揺が、後述する移転延期に際して、「日本側が土下座して米軍にいてもらっているんだろう」という印象を沖縄側に植えつけたようです。

タームさんは、「中国の脅威に対し、沖縄は中国に近すぎる、米軍海兵隊歩兵部隊はグァム移転したほうが戦略的にもよろしいと米国が判断した」ということを書いています。

これ自体は沖縄県内の定説のようですが、米国の有力国際関係学者・ジョセフ・ナイの言っていたことを、地元紙が切り貼りした結果生まれた誤解です。

ナイについてはかつて記事にしたことがありますので、よろしかったらお読みください。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-22d5.html

確かにある一時期まで、先に見たように日米合意どおり海兵隊のグアムへの一部移転と、さらにその先も段階的撤収をする気であったことは事実です。

しかし、グアム撤収案は米国自身によって2010年7月に変更されます。

米国は2010年、06年合意を変更する旨を日本政府に通告したのです。 

「日米両政府が米軍再編実施に向けて2006年5月に合意した「再編実施のための日米ロードマップ(行程表)」のうち、沖縄に駐留する米海兵隊約8000人のグアム移転について、米側が移転部隊の構成を見直す、と日本政府に伝えてきたことが1日、わかった。複数の日米関係筋が明らかにした。」
(読売新聞2010年7月)

「不透明さを増している朝鮮半島情勢や中国の動向への即応性」が低くなり、「司令部機能すべてをグアムに移転すると、運用に支障が生じる恐れがあるとの見方が米政府内で強まった」(読売同上)

では、それはなぜでしょうか?なぜ日米合意が変更されたのでしょうか?

これは日米関係だけ見ていてはわかりません。ましてや本土と沖縄だけ見ていても分かりません。

沖縄の「民意」が時として誤るのは、「本土vs沖縄」という狭い視点に立ってしまうからです。

さてそこで、もうひとりの重要な登場人物の姿を見ねばなりません。

それが中国です。

移転できなかった最大の理由は、日米合意した2006年からわずか数年でアジアの緊張が急激に悪化してしまったのです。

それは、中国軍の冷戦後世界最大規模の軍事膨張かのためです。中国は核兵器の増産と、海軍の傍若無人な海洋進出を開始しました。 

2008年に米国防総省が公表した、「中国の軍事力」年次報告書はこう述べています。
※http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/70/index.html

「▽中国が遠隔地で軍事パワーを保持し、行使する能力はなお限られてはいるが、従来からの米国の軍事的優位をやがては崩し、米国と軍事的に競合する世界でも最大の潜在能力を有している
▽中国の当面の主眼は台湾海峡での米国の介入をも視野に入れた有事への準備だが、台湾を越えての資源や領土紛争への対応のために使う軍事能力をも発展させている。
中国の軍事の変身の速度と規模は東アジアの軍事バランスを変えており、中国の戦略的軍事能力の向上はアジア・太平洋を越える意味あいを持つ。」

この報告書で中国が、「中国の軍事の変身の速度と規模は東アジアの軍事バランスを変えており、中国の戦略的軍事能力の向上はアジア・太平洋を越える意味あいを持つ」と述べている部分にご注意ください。

米国は中国が、「アジア・太平洋を超える」世界規模の軍事覇権国になる意志を持ったと言っています。

中国は、私たち日本人が聞くとマンガ的なのですが、太平洋二分割を非公式に米国に提案しています。

その場合、中国海軍と空軍の「太平洋の扉」こそが、下図で太い黄色の矢印で示された宮古海峡なのです。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/knori.html

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南シナ海での人工島という領土拡張は有名ですが、実はその影で進められているのが、中国軍による東シナ海から太平洋に抜けるルート作りです。

中国艦隊の主な動向が、起きた年を見てください。

2006年に米軍がグアムに一部撤収計画を合意するその翌々年の2008年から、初めは米軍の顔をうかがようにソロソロと、そしてやがて白昼堂々と大艦隊を沖縄県宮古海峡に送り込むようになります。

中国のたび重なる挑発の結果、起きた象徴的事件が2010年9月の尖閣諸島漁船衝突事件でした。
尖閣諸島中国漁船衝突事件 - Wikipedia

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そして、2012年9月に野田政権が国有化に踏み切り、後は堰を切ったような中国公船の領海侵犯が開始されます。

今なお、それは止むことなく執拗に続いていることは、ご承知のとおりです。

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2012年11月には、この宮古海峡を通過して、中国の大艦隊がグアム方向に進出訓練しようとしたことが目撃されています。

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中国空軍も爆撃機を再三に渡って宮古海峡を通過させています。目的は同じくグアム米軍基地攻撃訓練だと見られています。

よく誤解されていますが、アジアの米軍は、沖縄を含む日本にしか駐留していません。

朝鮮半島には駐留していても、これは北朝鮮に備えることに特化していますので、中国の軍事拡大に対応できる部隊は、在日米軍しか存在しません。

こういう状況で在沖米軍を削減したら、中国はどう考えるでしょうか?

つけ込まれます。

中国という国は、ある意味大変に分かりやすい国で、強く押すと引っ込み、一歩退くと一歩前に出てくる習性をもっています。

在沖米軍が1万人近く沖縄からいなくなれば、中国という国は、「おやアメちゃん、もうオレを止める気なくしたな。これはいいや。千載一遇のチャンスだ!」と考えるでしょう。

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おいおい、こんなに国際関係って、ジャイアンとのび太の関係みたいなのかと思いますが、まぁそうなのだから困ったものです。

実際に、1972年に米軍がベトナムから撤収するやいなや、1974年には中国は西沙諸島に軍隊を入れて、ベトナム領の島を強奪します。
西沙諸島の戦い - Wikipedia

1991年に、スービック海軍基地とクラーク空軍基地が返還され、米軍はフィリピンから撤退しました。

するとわずか4年後の1995年、フィリピンが領有権を主張していたミスチーフ礁に中国は建造物を構築し始めます。

そして今や、ミサイルを配備し、軍用滑走路を建設し、軍港まで作るありさまです。

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中国が埋め立てを進める南沙諸島・ジョンソン南礁の写真。左上から時計回りに2012年3月、13年2月、14年2月、同3月撮影(フィリピン外務省提供) 時事より引用

中国には、強烈な縄張り意識のようなものがあり、中国は目の上のたんこぶである米軍がいなくなるやいなや、軍隊を進出させて自国領土を拡張しようとするのです。

というわけで、このような状況が進む以上、おいそれと簡単に米軍は、沖縄から撤退できなくなってしまったというわけです。

もうひとつの辺野古移転問題との関わりについては、長くなりましたので、次回に譲ります。

■大幅に加筆修正しました。いつもごめんね。(午後5時)

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コメント

 むかし海兵隊がグアムへ移転する話がありました。これがどう変わったのかあまり追及をしてまいりませんでしたが、確かにグアムへ海兵隊が撤退するという状況では今はありませんね。中国の台頭があるということなど、時代背景の変化があったわけですね。頭の中が、多少整理できるようになりました。

 海兵隊が沖縄の駐留することとグアムから出撃してきて沖縄、台湾を護るというのではだいぶ意味合いが違います。国防の観点から、海兵隊は沖縄に居て欲しいものです。

管理人さん、丁寧なお答えありがとうございます。
過去のフィリピンの米軍撤退の結果はよく聞きますが、もし在沖米空軍海軍が撤退したら、同様のことが起きるであろうことは理解しております。

在沖海兵隊グァム移転について
防衛省・自衛隊HPでは以下のような資料が出されています(H28.3.30更新)

http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/saihen/iten_guam/pdf/gaiyo_160330.pdf

「在沖米海兵隊のグアム移転の経緯・概要
以前の計画(2006年(平成18年)5月「再編の実施のための日米ロードマップ」)
○ 沖縄の負担軽減を図りつつ、抑止力を維持するため、以下の事項を相互に結びつけて計画。
1普天間飛行場の移設・返還、2在沖米海兵隊のグアム移転、3嘉手納以南の土地の返還
○ 第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)の要員約8,000名(司令部中心)と その家族約9,000名が沖縄からグアムに移転。

以下の要因を踏まえ、日米間で在日米軍再編見直しを協議
1 沖縄の目に見える負担軽減を早期かつ着実に図る必要があること、
2 アジア太平洋地域重視の戦略(リバランス)と米軍再編計画の調整を図る必要があること、 3 米国議会でグアム移転に係る経費を削減することが求められていること

現在の計画
1 2012年(平成24年)4月「2+2」共同発表における再編計画の調整
○ 「グアム移転」及び「嘉手納以南の土地の返還」を「普天間飛行場の移設」から切り離し。 ○ アジア太平洋地域の安全保障環境の変化を受けて、海兵隊の部隊構成・配置を見直し。
・ 海兵空地任務部隊(MAGTF)(司令部+航空・陸上・支援部隊)を 沖縄、グアム、ハワイに分散配置、豪州へローテーション展開。
・ 要員約9,000名(司令部+実動部隊)とその家族が沖縄から日本国外に移転。 (沖縄から約4,000名がグアムに移転)」

米軍再編計画は、アジア情勢の変化を受け海兵隊をグァム、ハワイへ分散配置、豪州にもローテーション展開するようです。

また在沖海兵隊グァム移転は、当初普天間移設とセットだったものが、2012年に海兵隊移転と普天間移設は切り離される、とも書かれています。

米国の思惑は一体何なのでしょうか。

いずれにせよ、国防をいつまでも米軍頼りとはいかないのではと考えていますが、日本政府もまた自国の国防の準備が整うまで、海兵隊移転を引き延ばそうとしているのかとも、考えています。

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