「半分軍隊」の自衛隊の現状を直視して下さい
それではもうひとつのタームさんの疑問である、「なぜ辺野古を作る必要があるか。自衛隊に任せられないのか」について考えていきましょう。
コメント欄にいい資料を紹介頂きました。沖縄防衛局の資料です。※http://www.mod.go.jp/j/approach/zaibeigun/saihen/iten_guam/pdf/gaiyo_160330.pdf
一方的に注入されるマスメディア情報ではなく、一般市民がお互いに知識や知見を持ち寄って、少しずつし新しい考え方を作るわけです。
ほんとうにSNSは集合知の宝庫だなと思います。
沖縄防衛局は、なんか自衛隊を指揮する作戦でも練っていそうなネーミングですが、もちろんそんな権限はありません。昔の「那覇防衛施設局」のことです。
2007年に防衛庁が防衛省に昇格した際に廃止されて、北から南まで9ツの防衛局になりました。
※http://www.mod.go.jp/rdb/
この沖縄防衛局の資料を読むと、在沖米軍の再編計画がでてきます。
「現在の(移転)計画
① 2012年(平成24年)4月「2+2」共同発表における再編計画の調整
○ 「グアム移転」及び「嘉手納以南の土地の返還」を「普天間飛行場の移設」から切り離し。
○ アジア太平洋地域の安全保障環境の変化を受けて、海兵隊の部隊構成・配置を見直し。
・ 海兵空地任務部隊(MAGTF)(司令部+航空・陸上・支援部隊)を 沖縄、グアム、ハワイに分散配置、豪州へローテーション展開。
・ 要員約9,000名(司令部+実動部隊)とその家族が沖縄から日本国外に移転。 (沖縄から約4,000名がグアムに移転)
② 2013年(平成25年)10月「2+2」共同発表
○ 沖縄からグアムへの移転は、2020年代の前半に開始。
○ 「グアム協定改正議定書」への署名(2014年(平成26年)5月発効)」
http://www.nippon.com/ja/features/h00008 反基地運動のサイトから頂戴しました。ありがとうございます。
ちょっと脱線しますが、「嘉手納飛行場以南の返還」が、普天間問題と切り離されたことは喜ばしいことです。
おそらく2020年代中盤まで、普天間基地の完全移転は終わらないだろうからです。
ですから、「普天間基地がある限り、嘉手納以南は動かない」と硬直してしまうと中南部の米軍基地群の返還が止まってしまいます。
いうまでもありませんが、翁長さんたち「オール沖縄」が勝利すれば、普天間基地はそのまま半永久的に固定化するわけですが、その場合も「以南」の基地の返還は進むということです。
ちなみに、沖縄米軍基地の中で最大面積の北部訓練場の返還を遅らせているのは、高江ヘリパッド反対運動の皆さんの有効な阻止闘争のおかげです。
ここも共産党系団体ですが、ほんとにこうしてみると反基地運動の皆さんって、実は「基地返還反対運動」、あるいは「基地永久固定化推進運動」のことじゃないかと思えてしまいますね。 ひょっとして米軍からお金もらっているのかな(悪い冗談です)。
グアム移転計画も(形だけは)生きているようで、2020年代頃にはなどと書いています。まぁ、これも情勢次第でしょうな。
それはさておき、本題に戻します。「なぜ政府は辺野古にこだわるのか」についてです。
ひとことで言えば、ここで日本政府がハト氏のような国家間の違約行為をもう一回やったら、日米同盟そのものが崩れるからです。
その場合、なんと米国が言いそうか想像がつきます。
「普天間移転なんぞ、ワシらが言い出したことやないで、あんたたちが言い出したことやで。そいでできひんなんて、アホか。国内の基地移転ひとつ出来へんで、それでも政府か」(←なぜか大阪弁)。
つまり、日本政府の一国の独立国としてのガバナンス(統治)能力まで疑われてしまうからです。
国家間関係は、昨日の「ジャイアン・チャイナ」ではありませんが、人間関係に似た部分があります。
「国家」にも擬似的人格があり、感情もあるのです。
しかも二国間関係のグレードで、もっとも高いレベルは同盟関係です。ただの友好関係ではありません。
お互いに安全保障という、生きるか死ぬかという部分を預け合うのですからですから当然です。
しかも最上グレードの「同盟」のうちでも、米国が世界最大規模の艦隊の母港を構えているのが、日本です。
米国にとってなにも「衝撃的なほど無知」(米紙の評)なトランプのように、日本に米国本土を守って欲しいとは思わないでしょうが、覇権国でいる限り、日米同盟は不可欠なのです。
こういう相互的にきわめて強い結びつきの同盟のことを、外交用語で「機軸同盟」と呼びます。
このようなシビアな同盟関係において、いったん疑念をもたれた場合、ハト氏の所業で明らかなように、日米二国間関係は速やかに冷え込みます。
ハトの後釜のかつての反米活動家であったカン氏が、いかに米国のご機嫌とりに奔走したのか、涙ぐましいほどです。
共産党と国政レベルで手を組んではいけないというのは、共産党は日米安保を全否定している政党だからです。
仮に「いや、認めている」などと言っても、それは政治的マヌーバ(策略)でにすぎません。
外交なんて気取っていても、しょせん人間の集まりがやることです。いつどうなるかわかりません。
ですから,、仮に民進党が共産党と手を組んで政権を取った場合、米国は日本をまったく信用しなくなるでしょう。
その時、相手側のボスにトランプがなりでもして、こんなことを言い出したらドエライことになります。
「どうもジャップはカネ出し渋っているようだ。だからグレートアメリカは貧しい債務国に成り下がったのだ。ボーシット!金ださんのだったら、ソッコーで、安保廃棄して出ていくかんな」(←ほんとにホントに言いそうでこわい)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-4ded.html
衝撃的なことを言うようですが、日本は自主防衛力がありません。
実にバランスの悪い「軍隊のようなもの」なのです。
海上自衛隊は、見た目はスゴイですが、実は米第7艦隊の一部でしかありません。
対潜水艦能力と、掃海能力は世界有数ですが、あくまでもそれだけの単品能力です。
海自は創設当初から、米海軍とワンセットで完全に機能するように作られているのですから、しかたありません。
陸上自衛隊は、専守防衛のドクトリン(教義)に縛られているために、戦力を遠くに運ぶ投入能力(パワープロジェクション)が与えられませんでした。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-42bf.html
社会党と共産党が、「そないなもん自衛隊に持たせると、また中国侵略する悪さするに違いないでぇ」と縛ったからです。
ですから、沖縄の離島防衛のように、波頭を超えて陸自を送る能力はほぼゼロです。
今、鍛練している真っ最中ですが長崎県大村の水陸機動団が、現実に単独で沖縄防衛が可能となるまで、あと短くて10年欲しいところです。
航空自衛隊は、那覇にやっと2個飛行隊が増強されましたが、これも首都東京の守りからイーグルを引っこ抜いてなんとかしたのです。
首都はファントムという中ブルで守るハメになりました。どこの国に首都防空を中ブル戦闘機に任せる国があるんだぁ、と本土人としては思いますね。
このように自衛隊は、法的にも実力の上でも情けない話ですが、「半軍隊」のままでいます。
したがって、日本は現状において、ほんとうに守ってくれるかどうかは別にして、沖縄に米軍に「居てもらわねば困る」のです。
ご質問に答えられたかどうかわかりませんが、このような日本の安全保障の現状をクールに突き放して見たほうかいいようです。
かく言う私も、「米海兵隊の代わりに自衛隊だけで沖縄を守れたら」と書いたことがありますが、それはあくまでもドリームだという冷厳な事実は認めねばならないのです。
■なんとなく同じ名前なんで応援してしまう沖縄吉本の「ありんくりん クリス」のツイッターはこちらからhttps://mobile.twitter.com/chrisly73228915
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コメント
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海兵隊の意義について
仲井真県政の時のものですが
沖縄県と防衛省による質疑書があります。
マスコミの海兵隊の不要論を全て打ち消すかのような内容になっています。
参考までに
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kikaku/kikakubu-info/240131kaiheitainoigikaitou.pdf
投稿: 中城村民 | 2016年4月28日 (木) 06時11分
質疑書、読ませていただきました。参考になりました。
投稿: ueyonabaru | 2016年4月28日 (木) 11時51分
現状では、沖縄に米軍基地は必要です。それは間違いない。
しかし海兵隊がグァム移転しても、抑止力は低下しないという前提で米軍再編計画はあります。
米国は辺野古にこだわっていない。移設先が辺野古以外になれば、日米の信頼関係が崩れるということでもないと思っています。
それでも政府が辺野古にこだわるのは、もはや面子の問題なのでしょうか。
自衛隊増強は、必須だと思っています。
今は日米安保を維持しつつ、着々と自国防衛の準備を整えているところだと思います。
投稿: ターム | 2016年4月28日 (木) 12時40分
在沖海兵隊グァム移転によるグァムの施設整備は着々と進んでいるようです。
「米海軍省のマッギン次官補は3日、在沖縄海兵隊のグアム移転に必要な施設整備に関し、2022年に初期の運用が可能となり、26年には完了するとの見通しを示した。」(産経ニュース)
http://www.sankei.com/smp/world/news/160304/wor1603040005-s.html
在沖海兵隊グァム移転計画は、形だけ、情勢次第というレベルではなさそうです。
またこの問題で疑問なのが、海兵隊の話が、途中から米軍全体の話にすり替わっていることです。
フィリピンの米軍撤退話も、自衛隊の防衛話も。
「米軍にいてもらわなければ困る」と「海兵隊にいてもらわなければ困る」
は、イコールではなく
「米軍基地はなくてはならない」と「辺野古移設しなければならない」も、イコールではないと思います。
投稿: ターム | 2016年4月28日 (木) 21時11分
HNタームさんの疑問に対する解答は、本記事の内容で非常にわかりやすく噛み砕いて成ったと思います。
また、HN中城村民さんの提供してくださった県の質疑書に対する防衛局の回等は、同盟国として公開可能な限り内容を明らかにし、詳細に説明を尽くしたものでしょう。
ただ、移転の技術的な問題でHNタームさんには、まだいくつか誤解があるように感じます。
海兵隊の一部グアム移転は、普天間からの辺野古移転とセットで、元々海兵隊が沖縄から全部移転してゆく、という計画ではありません。
最近あった米側のグアム移転本格化報道は、「いずれにしろ、グアムに移転する」という意味ではありません。
「こっちは計画どおり着々とやっておるのだから、日本側は間違いなく約束(辺野古移転)を違えず履行しろよ!」という、最近の一連の日本の動きをみたうえでの日本政府への警告(恫喝)と読むべき記事です。
また、
>海兵隊の話が、途中から米軍全体の話にすり替わっていることです。
とのことですが、そうではありません。
嘉手納の米空軍であれ那覇軍港の陸軍であれ、ほとんどの場合海兵隊は作戦上、統合運用されるので事実上、(移転という観点からは)海兵隊(一部)とその他在沖米軍の話しは同じと考えてよいでしょう。
また、同じ理由で海兵隊全てをグアム移転し、これを切り離す事は出来ません。
なので、「米軍にいてもらわなければ困る」と考える場合、必然的に海兵隊が必要最低限いなければ成り立たないのです。
また、「セット」という事の概念ですが、必ずしも県民の基地負担軽減の観点からだけのものではありません。
こういうと、ブログ主様の言っている事と違う事を言っているようにお感じになるでしょうが、そうではありません。
時系列的にこれまでの経緯を追っていくと良くわかりますが、きっかけは日本側からの普天間の危険性の除去の要望からだからです。
しかし、軍事面からは、昨今の中共や北朝鮮のミサイルの長距離化や潜水艦技術の進化を受けて、ラインを下げることと、広範囲での展開が必要になったから再編計画が合意されたのです。
この必要性は日に々々高まっていることはご存知のとおりと思います。
まず、普天間の危険性の除去の要望があり、同時に安全保障上の力の変化に基づいた地域の防衛力の見直しがあったワケです。
そして日米両国で丹念に計画を練り上げていきました。
それは朝鮮半島だけでなく、オーストラリアやアジア全体の安全保障を勘案した計画です。
そうした全体の計画の中での「普天間の危険性の除去」や「辺野古移転」なので、日本側から、「やっぱり辺野古はやめ!」なんて言い出す事は出来ません。
基本的に辺野古以外の選択肢もありえません。
これを反故にする場合、地域の安全保障は失われ日本の国際的信用力も地に落ちるでしょう。
それでも日米同盟を維持したい日本は、とんでもない対価を支払う結果になるでしょう。
それでもブログ主様が繁く主張するように、シュワブ陸上案というのはありえなくもない。
これだけ反対の喧しい沖縄が全体となって、陸上案を件から提案する事が出来れば、ありえる話だとは思いますが。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年4月29日 (金) 00時38分
山路様
タームです。私の疑問にコメントいただき、ありがとうございます。
>海兵隊の一部グアム移転は、普天間からの辺野古移転とセット
>最近あった米側のグアム移転本格化報道は、「いずれにしろ、グアムに移転する」という意味ではありません。
資料にある通り
2006年の計画では、グァム移転と普天間移設はセットでしたが
2012年に見直された現行計画では「グアム移転」及び「嘉手納以南の土地の返還」を「普天間飛行場の移設」から切り離し。となっています。
グァム移転と普天間移設はセットではありません。
普天間移設とは切り離され、いずれにせよ、在沖海兵隊は9000人がグァム(とハワイ、オーストラリア)に移転されます。
日米から移転の予算も計上され、施設整備も進んでいます。
>ほとんどの場合海兵隊は作戦上、統合運用されるので事実上、(移転という観点からは)海兵隊(一部)とその他在沖米軍の話しは同じと考えてよいでしょう。
防衛において、どのように統合運用されるか、残る海兵隊部隊がどういう役割を果たすか、具体的にご教示下さい。
また自衛隊プラス在沖空海陸軍では抑止力とならず防衛できない理由もご教示いただけますか。
>基本的に辺野古以外の選択肢もありえません。これを反故にする場合、地域の安全保障は失われ日本の国際的信用力も地に落ちるでしょう。
前述したように、グァム移転と普天間移設はセットではなく、
普天間移設しないと、アジアの安全保障が失われるという話ではないと思います。
投稿: ターム | 2016年4月29日 (金) 04時17分
タームさん。あなたの質問のうちグアム移転部隊は本部と一部の支援部隊だということは、今日の記事に書きましたのでお読みください。
>防衛において、どのように統合運用されるか、残る海兵隊部隊がどういう役割を果たすか、具体的にご教示下さい。
これも今日の記事に書きました。海兵隊が裸で運用されることはありえません。
>また自衛隊プラス在沖空海陸軍では抑止力とならず防衛できない理由もご教示いただけますか。
沖縄には陸軍はいません。海兵隊は陸軍と違って有事即応するために特化した部隊です。
>グァム移転と普天間移設はセットではなく、普天間移設しないと、アジアの安全保障が失われるという話ではない
そのとおりです。セットではありません。
ただし、今の時期に海兵隊が沖縄から全面撤退すれば「面」としてのアジアの安全保障インフラの大きな部分が失われます。
ですから、あくまでも本部のように前線からさげても問題ない部隊だけの部分撤収です。
辺野古にだけ候補を特定するのは、私は反対ですが、ここまで流れができてしまうと選択肢がなくなってしまいました。(私はシュワブ陸上案支持者です)
これについては明日書きます。
投稿: 管理人 | 2016年4月29日 (金) 07時55分