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2016年5月13日 (金)

ドイツ帝国の復活その3 「ドイツ帝国」と「中華帝国」の同盟、そして覇権国米国の退場

Dsc_2030
またもやシリーズの危機に陥りそうなので、あわてて「ドイツ帝国」に戻ります。 

大東亜戦争、そしてその前段だった日中戦争は、本気でやりだすと2週間で納まるかどうか、というほど巨大なテーマなのです。 

これを1回でやろうとした、私が馬鹿だった(反省)。通説とそうとうに違うかもしれませんが、そのうち腰を据えてやります。 

さてエマニュエル・トッドは、<EUという装置>を使って、ドイツ人が自分の「生存圏」と無意識に信じている東方への拡大をしていると述べています。 

トッドは歴史人口学という、国や地域ごとの家族の作り方の違いを比較して、どのような人口動態が生じているのかを調べるのが専門です。 

たとえばロシアについて、フランス知識人は一般的風潮として、強烈な反プーチンですが、トッドはそうではありません。 

「ロシアは立ち直り始めている国なのであって、主成立の上昇や乳児死亡率の低下にもそれは現れている。失業率も低い水準である。」(『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』)

これはソ連で1976年頃に起きた現象と逆です。 

1976年当時ソ連は、コスイギン政権が終了し、82年まで続くことになる、あの重厚、かつ尊大にして退屈なソ連帝国末期のブレジネフ政権が始まろうとしていました。

当時、ソ連帝国は永久に続くと思われ、冷戦という形で国際社会の秩序を作っていました。 

ソ連国民の誰ひとり、いや世界の誰ひとりとして「ソ連帝国」に終わりが来るなどとは夢想すらしていなかった時代です。

私の恩師はマル経の研究者でしたが、ソ連崩壊の時に、「生涯であれだけ驚いたことはない」と漏らしておられました。 

Photo_2

上が馬鹿げて巨大な「ソ連帝国」の版図です。 

いまのバルト3国や、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(グルジア)までが、「ソ連帝国」の本国部分です。 

これに「ソ連帝国」の属国(衛星国)の地図を重ねてみます。

Photo_3Wikipedia

東ドイツ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、ポーランド、チェコスロバキア、アルバニアなどが、「帝国」の外周をズラリと取り囲みます。

この磐石に見えた「ソ連帝国」の崩壊の予兆を、トッドはこう捉えていました。

「1976年に、私はソ連で乳児死亡率が再上昇しつつあることを発見しました。
その減少はソ連の当局者たちを相当面食らわせたらしく、当時彼らは最新の統計を発表するのをやめました。
というのも、乳児死亡率(1歳未満での死亡率)の再上昇は社会システムの一般的劣化の証拠なのです。私はそこから、ソビエト体制の崩壊が間近だという結論を引き出したのです。」(前掲書)

かつての重厚長大なソ連型社会主義の社会で、国民の保健・衛生・福祉・雇用といった社会生活のインフラが崩壊していたことを、トッドは人口動態から見破ったのです。

さて、さらにこの「ソ連帝国」版図に、トッドが作った現在のヨーロッパの勢力圏地図を重ねてみます。

Photoトッド前掲書 

「ソ連帝国」の崩壊を受けて、ロシアがほとんどポツネンと丸裸になったことがわかるでしょう。 

かつての「本国」だったウクライナとジョージアすら、茶色に塗られた「ドイツ帝国」への併合途中です。 

プーチンはかねてから、旧「ソ連帝国」本国には手を出すなと、NATOに警告してきましたが、メルケルとオバマは聞く耳を持ちませんでした。 

そこで起きたのが、あのいかがわしいウクライナ騒乱と、その後に始まるロシアのカウンターとしてのクリミア簒奪でした。

Photo_4http://qnanwho.blog.so-net.ne.jp/2014-02-19

私は案外プーチンに同情的です。

ウクライナ紛争のきっかけは、EU加盟問題でした。EUに加盟すれば、ほぼ自動的にその軍事部門のNATOに属することになります。

ウクライナは、「ソ連帝国」の軍事産業を中心とする重化学工業の拠点でした。

ソ連はロシア人中心主義と単純に言うわけにはいかない部分があって、「帝国」内部での水平分業に力を注いでいました。

ですから、ウクライナにはスホーイや、チャイナのバッチモン空母の「遼寧」を作った造船所などがあります。

それはさておき、かつての「帝国本国」部分であったウクライナまで、ネオナチまで使って暴力的に親露政権が倒されると、プーチンが冗談じゃねぇや、と言いたくなる気分だけは分かります。

このウクライナ紛争についてトッドはこう述べています。

「ドイツの外政を歴史的に特徴づける精神的不安定と、ロシアとの関係における精神分析的な意味での二極性を知る者にとって、これはかなり心配なことだ。
目下私は容赦のない語り方をしていると自覚しているけれども、今、ヨーロッパはロシアとの戦争の瀬戸際にいるのであって、われわれはもはや礼儀正しく穏やかでいるだけの時間に恵まれていない。
言語と文化とアイデンティティにおいてロシア系である人びとがウクライナ東部で攻撃されており、その攻撃はEUの是認と支持と、そしてすでにおそらくは武器でもって実行されている。」(前掲)

Photo_6元米国家安全保障顧問ズビグネフ・ブレジンスキーhttp://www.presstv.ir/Detail/2015/10/06/432288/US-Syria-assets-

と、同時にトッドはロシアの敗北は、ドイツ帝国の台頭を許し、それは西欧社会の従来のシフトチェンジにつながり、結果として米国システムそのものの崩壊に連鎖するだろう、と述べています。

「ウクライナ危機がどのように決着するかは分かっていない。しかし、ウクライナ危機以後に身を置いてみる努力が必要だ。最も興味深いのは「西側」の勝利が生みだすものを想像してみることである。
そうすると、われわれは驚くべき事態に立ち到る。

もしロシアが崩れたら、あるいは譲歩をしただけでも、ウクライナまで拡がるドイツシステムとアメリカとの間の人口と産業の上での力の不均衡が拡大して、おそらく西洋世界の重心の大きな変更に、そしてアメリカシステムの崩壊に行き着くだろう。
アメリカが最も恐れなければいけないのは今日、ロシアの崩壊なのである。」(前掲)

またこのNATOの東方拡大の図面を書いたのは、ズビグネフ・ブレジンスキーだと、トッドは指摘します。

トッドはこう述べています。

「彼(ブレジンスキー)はロシアのことで頭がいっぱいでドイツの台頭を見落とした。
彼が見落としたのは、アメリカの軍事力がNATOをバルト海沿岸諸国やポーランドや、かつての共産圏諸国にまで拡大していることにより、ドイツにまるまるひとつの帝国を用意したことということだ。
その「ドイツ帝国」は最初のうちはもっぱら経済的だったが、今日では既に政治的なものになっている。」(前掲)

「NATOの東ヨーロッパへの拡大は結局、ブレジンスキーの悪夢のバージョンBを実現する可能性がある。
つまり、アメリカに依存しない形でのユーラシア大陸の再統一である。」(前掲)

私達日本人は、ドイツとよく比較される立場にいます。

しかし、この日独は違った大戦の結果により、違った戦後を歩み始め、その「戦後」、即ち冷戦が終焉するに従って別ルートを歩むことになります。

ドイツの歴史を研究する野田宣雄氏は、『二十世紀をどう見るか』の中でこう書いています。

「だが、実際には、冷戦の終結を境として、日独両国は決定的に異なる道を歩みはじめるようになったと考えた方がよい。(略)
統一後のドイツが明らかに『中欧帝国』形成の道を歩もうとしているのにたいして、日本には、東アジアで『帝国』を形成しようとする意志もなければ、そのための地政学的あるいは歴史的な条件も乏しいからである。
結論を先にいえば、ヨーロッパにおけるドイツと同様に東アジアにおいて『帝国』を志向しているのは、中国であって日本ではない。(略)
もちろん、ドイツのめざす『中欧帝国』と中国が志向する『中華帝国』とでは、その内容も性格も大いに違う。
しかし、重要なのは、地域の中心部における『帝国』の建設にともなって、周辺の諸国家が深刻な影響を受けるという点では、ヨーロッパも東アジアも同じだということである。(略)
その意味では、現在の日本がおかれている国際的な位置は、ヨーロッパにおけるドイツのそれよりも英、仏、伊といった諸国のそれと比定すべきであろう。」(前掲)

トッドもまた、こう書いています。

「ドイツはもうひとつの世界的な輸出大国手ある中国と意思を通じ合わせ始めている。
果たしてワシントンの連中は覚えているだろうか。
1930年代のドイツが長い間、中国との同盟か日本との同盟かで迷い、ヒトラーは蒋介石に軍備を与えて彼の軍隊を育成し始めたことがあったことを。」

そして致命的なことに、この時期、米国は覇権国から退場しようとしています。

再びトッドです。

「今日まで、この危機におけるアメリカの戦略はドイツに追随することだった。
そうしていれば、アメリカはもはやヨーロッパの状況をコントロールしていない、ということが露見しないからだ。
こんな体たらくのアメリカ配下の国々がそれぞれの壊でおこなう冒険的行動をもはやコントロールできず、むし是認しなけれぱならない立場のこのアメリカは、それ自体として一つの問題となっている。」(前掲)

ヨーロッパにおける「ドイツ帝国」の復活、そしてアジア大陸における「中華帝国」の復活、そしてこのふたつの新たな帝国圏の同盟が現実になろうとし、米国は退場しつつあるように見えます。

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コメント

トッドの「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」はギリシャ問題華やかなりし頃に読んだけれど、読んだ当時はトッドの本が初めてだった私には「注」も少なくインタビュー形式だったりして、この本の真価をはかりかねてました。
ふゆみさんは他書も読まれたそうですが、トッドの人口学が指し示す先は重要なんですね。(「人口~」というと、マルサスしか読んでないし(汗))

ソ連崩壊後の世界がどうなるかを予言したものは、爆発的に売れたフクヤマの「歴史の終わり」でしたが、アメリカの民主党を中心とするリベラルたちのバイブルになりました。
あの本のような誤謬が、アメリカの中共に対する警戒感を緩めさせ危険察知を遅らせた一因と思います。

保守系の雑誌に「中共とロシアを結びつけたのはメルケルだ」なんて根拠不明の論が出てたけど、どうなんですかね。
「アメリカに依存しない形でのユーラシア大陸の再統一」を目指すにしても、核もないドイツは結局のところ、隠れ蓑をつくってドイツお得意の隠密的裏方陰謀戦術をめぐらせるんでしょう。
しかし、その前に英国の離脱を発端としてEUは崩壊するかも知れません。
その場合の担保としてメルケルは親中(あるいは隠れ親露も)を維持しているようにも見え、トッドの説をさらに裏付けてしまうかも知れない。
問題は、そうなればNATOの存在は宙に浮く事になります。
NATOのクビキを離れたドイツはどこへ向かうか、新しい世界の誕生となるかもしれない。

それにしても、中共は抜かりがない。
何も、ドイツと中共の同盟が実現までしないでもいいんでしょう。あるいは一時的なものでも。
アジアの覇権国としての地位を現実のものとするために、NATOの影響力を排除した新しい欧州の誕生に最大限手を貸し、影響力を行使出来る位置に居座るんでしょう。
それとも二正面作戦か、欧州こそが本丸なのか。


>私は案外プーチンに同情的です。

これはそうでしょう。私もそう思います。
そもそもEUは、ウクライナは穏健であれば親ロ政権は問題ではない、という立場だったはず。
ウクライナ騒動の原因や発端を良く見れば、プーチンが最終手段として武力に訴えた事にも一分の理はある。
しかし情報が少ないゆえか、ロシアというものがどうも良くわからない。
馬渕睦夫さんなんかは、「ロシア人と日本人は気質的に良く似ていて、手をたずさえられる」としきりに言ってますが、歴史は「ロシアにだけは近づくな」と言っている。
ドイツ特集が終わったあとは、ロシア特集をお願いしたいです。
ブログ主様、すいませんね。
無料読みなのに、口うるさいだけでなくて要望まで出してしまって。


ドイツ帝国は遠いヨーロッパのできごとで日本人から見れば対岸の火事にしか見えませんが、宿敵イギリスやフランスがこれに飲み込まれるとは考え難いでしょう。

ロシアは長い間、ヨーロッパの敵でありながら、フランスもドイツもここを攻略することができなかったのは、地政学的な理由からだと思います。

一方、中国ですが、毛沢東によって統一されたのはたかだか数10年前であり、それ以前の統一国家と言えば秦の始皇帝やかろうじて唐の時代であり、広い国土がバラバラの状態で続いてきたのも地政学的な理由によります。

この地は、現在に至るまで度重なる戦争や侵略によって人種が入れ替わっており、これが中国人だと特定するのは難しそうです。

今の北京政府は中国本土の北方にいた匈奴にロシアが軍事教練を施してできた山賊に毛の生えたような八路軍が起源です。何故、蒋介石軍を追い出すことができたかと言えば、日本との戦争に疲弊したところを背後から襲ったからです。

生まれが生まれですから、現在の北京政府を中心とした存在が今後アジア地区に覇権を拡大できるかどうかは未知数です。

日本は何千年もこの大陸と接してきながら、中国文化の影響はゼロではないものの、政治的な影響力は全く受けていません。これも地政学的な理由によると考えられます。

現在、西側で中国重視の姿勢を強めている国は、いずれも輸出入拡大と言う純粋な経済的な理由であり、政治体制の異なる国どうしの同盟など考えられません。

昨日、今日のごく短期間のできごとだけを見て、ドイツと中国が手を取り合って世界の覇権を握る時代が来るとは考え難いことでは無いでしょうか。もちろん油断は大敵ですが。

愛国命さん、手を取り合うには距離があるので
ユーラシアの西がドイツ帝国、東が中華帝国、北がロシア帝国、アメリカ大陸が合衆国支配、
プラス属州のような国々、のような状態でブロック化する事はあり得ると思います。
中身はアメリカ組地区的には東アジアの日本にはうれしくない範図ですね。
上記したリストから漏れているアフリカと中東に、ドイツは力を持たない(私の情報不足?)のでこの荒れた地域と英仏の動きがやはり今回もドイツ帝国の前に立ちふさがるのではないかと思っています。同様に南アジアではインドネシアに注目しています。どれもイスラム教徒の多い地域です。

私は個人主義者なもんで、「帝国」なんてコトバにゾゾッ
としてしまいます。大日本帝国から日本人が開放されて
約70年。こうして好き勝手にカキコしても、憲兵にしょっ
引かれて拷問されずにすむ国はイイものですわ。

ドコの「帝国」が繁栄しようが、「帝国」は真っ平ごめん
です。国家がその国民を囲わないと「帝国」を維持でき
ないので、中共や北共はインターネットすら検閲して外国
からの情報を遮断しているのです。自由な人間の交流が
何よりコワイのです。良き「帝国」なんぞクソ未満だとバレ
ますからね。

その意味では米国やドイツ(前科一犯ですけど)の場合と、
ロシアやさらに共産党独裁の中華とは一緒くたに「帝国」
とするのは、学者様のナンタラ過ぎる気もしますねぇ。
たしかに経済圏の観点からは、そう区別すれば判り良い
のですけど・・

私の理想は、「帝国」どころか国家自体が小さくなって
国境を超えた個人の結びつき(私信・商売)が強くなる
ことです。それには「帝国」の既得権を奪う自由な個人
活動が必要ですわ。こちらのブログは素晴らしい。

「帝国」の推移より、「帝国」の完全滅亡を望みます。
東京都の「禿帝国」は生き残れるのかなぁ?

ドイツ帝国と中国連携かもウイークが終わってしまいそうなので追記します。
トッド氏の中国評価はとても低く、低評価の根拠は人口動態です。彼は自分は予言者ではないと語っていますがその予測が実現するときにこそ、日本がASEANと友好的に手を携える輪を作る好機で、その時までに「9条あるからできなくてさあ」みたいな組む気しなくなるような内情を整理すべきだと考えています。

「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」を、さらっと見返してみたけど、やっぱりインドについての言及はほとんどない。
トッドが中共を低評価しているそのままの要因で、インドは最高評価のハズ。
しかも、ロシアとの関係も悪くない。
アジアに興味がないのか、非同盟国主義のインドはプレイヤーから除外しているのか。
いずれにしろ、中共は絶対にインドを陥落できない。
たとえ新しいブロック化が進んでも、インドだけは孤立を恐れないでしょう。

やはり、チャンドラー・ボーズ大学を日本の手で実現させておくべき。


山路さん、トッドのインド評は確かに知らないです。彼のアジアへの読みは抜けがある感をわたしも感じています。中国に対しても。東洋への理解が浅いのだと思います。
インドはここ2年位でぐっと国際競争力がまた高まった国なので、そのうち論に組み込まれてくるやもしれません。
彼がユダヤ系である事も加味して読むべき書です。

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