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原発予備電源高台移転と地震原因説について

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HNふゆみさんのご質問です。

「原発の非常用電源の設置場所は、今はもう日本中どこも皆地上の安全な場所に移されているのでしょうか」

この予備電源問題は、大変に重要なことなので、できるだけ丁寧にご説明します。 

2013年に出した、原子力規制委員会の新安全基準ではそれが最初の項目に入っており、これをクリアしないと再稼働は不可能です。 

すべての原発において、発電所より高い場所への予備電源の設置はなされいます。 

たとえば下図は、中国電力の対策を示したものです。
島根原子力発電所の安全対策について - 中国電力(Adobe PDF) 

Img_3818クリックすると大きくなります

上図の右真ん中て黄色に塗られているのが、非常用ディーゼル発電機のバックアップ電源です。
 

なお、ディーゼルなのは、送電線が倒れたりして外部電源がブラックアウトした場合でも、発電所内で軽油によって非常発電が可能だからです。 

島根の場合、1万2千kW 級ガスタービン発電機×2台を発電所敷地内の40m高台に設置します。 

40m高台まで津波が到達する恐れはありえませんし、万が一それも浸水した場合でも、海水による冷却が可能なように予備の予備の海水ポンプを水密区に設置し、さらにそれもアウトした場合は、予備品を常時保管します。 

ここまでしなくっても、と思いまが、これが規制委員会が命じている新基準の深層防御(多重防御)の考え方です。 

上図を説明しましょう。右から順に

①防波壁の強化。発電所の主要設備への浸水を防止するため、発電所構内の海側全域について防波壁を海ばつ15メートルに強化する。
②建屋の浸水対策強化。建物内の機器を保護するため、水密性を高めた扉への取替などにより、建物内への浸水を防ぐ対策を強化する
③非常用電源の高台への移設
④海水による冷却ポンプの水密化のために、ポンプエリアに防水壁等を設置する

⑤④が浸水した場合の、冷却ポンプの予備部品・代替品の保管

もう一カ所見てみましょう。四国電力伊方原発です。
・原子力発電所を運転したり、停止時に原子炉等を安定的に冷却したり ...(Adobe PDF) 

Img_3811
四国電力は、全電源停止の場合について、こう答えています。 

上図に付けられた説明によれば 

①1号機から3号機まてに各2台の非常用ディーゼル電源を設置(図中○0)
②単独の非常用電源が破壊された場合に備えて、各原子炉間を電源ケーブルで接続し、融通できるようにする(図中④)
③2台の非常用ディーゼル発電機を7日間使用できるだけの燃料を確保(図中⑤)し、必要電力に最小化すれば14日間もつ
④以上が破壊された場合に備えて、海抜32mの高台に大型の空冷式非常用発電装置を4台配備しているほか、電源車も3台配備(図中①)
⑤海抜15mの高台に非常用外部電源受電設備(図中⑧)、海抜32mの高台に非常用ガスタービン発電機(図中⑨)を設置
⑥大規模災害時に比較的短期間での復旧に優れる配電線2ルート(3回線)を至近の亀浦変電所から敷設するなど、電源の多様化を図った(図中⑦)
  

ところで、このように十重二重の多重防御をしていますが、例によって例の如く、反原発主義者の皆さんはこう叫んでいます。
※http://www.mynewsjapan.com/reports/1403 

「近くに中央構造線という巨大活断層があり、 南海地震・大津波の危険が迫っている。
フクシチは地震で破壊されたんだ。
津波で壊れたなんて大嘘だァ!
伊方3号機が事故を起こせば、猛毒のプルトニウムを含む放射性物質で四国が汚染されるぞぉ!」
 

昨日書いたとおりのワンパターンです。

「大地震が来るぅぅぅ!活断層があるからだぁぁぁ!フクシマ(←なぜか、この人たちはカタカナ表記)は地震で壊れたんだゾぉぉぉ(棒)」 

もう事故から5年も立っているのに、まだ言ってんのですかね。あのすいませんが、この福島事故地震原因説はとうに破綻しています。

一時は国会事故調のみが地震説を出していたので、事故調の結論が混乱していましたが、2014年7月に原子力規制委員会が事故原因中間報告書の中で、地震説をバッサリと否定して、既に決着済みです。
東京電力福島第一原子力発電所 事故の分析 中間 ... - 原子力規制委員会(Adobe PDF) 

この反原発原理主義者にかかると、「安倍ヒトラーのポチの規制委員会がなんといおうと信じるもんか」のようですが、私たちも改めて福島事故の原因を押さえておくことは意義があります。

事故報告書は、4種類(独立、国会、政府、東電)ありますが、この中で唯一、「じつは地震で壊れていたんだぜ」と述べているのは国会事故調のみです。

理由は簡単で、国会事故調で主導権を握った田中三彦委員(サイエンスライター)が、ゴリゴリの反原発運動家だったからにすぎません。

Photo田中三彦氏

放射能デマッターの岩上安身のサイトに行くと、仮処分申請の司令塔である反原発弁護団の河合弘之弁護士との記者会見などが大量にでてきます。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E4%B8%89%E5%BD%A6

このようなどう見ても公平性を欠く人物が主導権を握ったのが、この国会事故調だったのです。

それはさておき、この国会事故調こそがいま流布されている、反原発原理主義者の地震破壊原因説のルーツです。 

国会事故調はこう書いています。

「基準地震動に対するバックチェックと耐震補強がほとんど未了であった事実を考え合わせると、本地震の地震動は安全上重要な設備を損傷させるだけの力を持っていたと判断される」(同報告書)

ここで国会事故調がいう「重要施設の破壊」とは、「津波到達前に格納容器から数十tの冷却剤が流出して、これが炉心融解・損傷につながった」というものです。 

この国会事故調の意見について、このように規制委員会は明解に否定しています。

「『基準地震動に対するバックチェックと耐震補強がほとんど未了』であったことは事実である。しかし、そのことをもって、「本地震の地震動は安全上重要な設備を損傷させるだけの力を持っていたと判断」できる訳ではなく、損傷させる可能性があると考えることが妥当」

 ではほんとうに、国会事故調の主張する格納容器からの冷却剤流出はあったのでしょうか。 

下は規制委中間報告書にある、地震の震度と発生時刻です。15時31分~40分にかけて震度2~3です。 

意外に震度が低いのに、驚かされます。 

Img_3832_2

この15時31分~40分にかけて、もし地震で原子炉圧力容器が破壊されていたのなら、国会事故調が言うように、地震発生とほぼ同時に格納容器に亀裂が走り、そこから大量の冷却剤が漏れだしたというシナリオも成り立ちます。 

次のグラフは、原子炉圧力容器の圧力を示すグラフです(前掲)。 

地震発生から津波到達までの45分間は(非常用)電源が生きていたのでメーターの記録があります。

それを見ると配管破断を示すような圧力ロスや、原子炉水位の変化はありません。

即ち、地震によって原子炉に亀裂は入っていなかったのです。 

Img_3823

 これについて規制委員会はこう説明しています。 

「地震発生から津波到達までの原子炉圧力容器の圧力の測定値は、原子炉スクラム
後に一旦約6.0 MPa まで低下した後に上昇し、非常用復水器(IC)起動後に5.0 MPa
以下まで急激に低下した後、IC の起動・停止に応じて約6~7 MPa の間で増減が繰
り返されている。」
「この期間に炉心の露出・損傷に至らしめるような冷却材の漏えいはなかった。」(前掲)

また国会報告書は、風聞を収集した三面記事的報告書なために、格納容器の破損の根拠は、現場にいた作業員が地震発生後、津波が来るまでの間に「ゴーッという音」を聞いたと程度のことです。

ならば既に津波到達前の45分前から放射能漏洩が生じて、所内の放射線モニタリングに記録されているはずです。 

それもないと規制委員会は述べています。

「地震発生から津波到達までは直流電源及び交流電源が利用可能であったことから、地震により原子炉圧力バウンダリから原子炉格納容器外の原子炉建屋内への漏えいが生じれば、プロセス放射線モニタ、エリア放射線モニタ等の警報が発報すると考えられるが、これらの警報は発報していない。」

津波が到達する時刻は、波高計により、第1波襲来15 時27分頃、第2波襲来15時35分頃です。 

この二つの津波が到達したのが、「15 時35 分59 秒~15 時36 分59 秒までの間で、この瞬間に原子炉の電圧は、ほぼ0 V に低下して、その後は電力供給ができない状態に至った」(前掲)わけです。 

Img_3838
上のグラフの右隅の緑色枠内でも明らかのように、津波到達と同時に全交流電源が停止した結果、原子炉が冷却不能となったのです。

この電源停止についても、国会事故調はこう言っています。
 

「国会事故調報告書では、「ディーゼル発電機だけでなく、電源盤にも地震により不具合が生じ、その不具合による熱の発生などによって一定時間経過後に故障停止に至ることも考えられる。」としている。」(前掲)

 規制委員会中間報告書は、これについても完全に否定しています。 

「非常用交流電源系統は、本震が発生してから約50分間は正常に機能しており、これが震度1~2 の揺れの影響により損傷したとは考え難い。したがって、余震によってD/G1A受電遮断器を開放させるような不具合が発生したとは考え難い。」(前掲)

 もういいでしょう。

詳細は、この中間報告書をご覧ください。完璧に地震原因説が否定されているのが分かるはずです。 

それにもかかわらず、おかしな裁判官が、「想定以上の地震が来て、原発がバクハツするぞぉ。仮処分で止めてやる」などと叫ぶのですから困ったものです。

この人たちはきっと受信機が地震によって壊れていて、脳内冷却剤が流出しているのでしょう。 

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コメント

明解な解説ありがとうございます。
各電力会社の原発PDFファイルを鶏達のお世話をしながらピックアップできる管理人さん、驚嘆の情報収集力です。億劫がらずに一次情報を取りに行かないといけないですね、自省m(__)m。

稼働申請の有無に関わらず、止まっている施設の非常用電源も含めて全ての施設で高台に設置が確認されているという情報が電力会社のホームページ以外でバシッと平明に書いてあるのは、今ここだけなのでは。
あんまり言うと、電源さえ高台に置けば100%安全なのかよとまたクソ問答になるからかですかね。
でも車の事故よりどうとか毎日何億円とかより、とにかく見つけた事故原因を全施設克服したよ、って情報は最も私にとって説得力があります。
アホンダラ1号さんの名言、回る地べたにリスク有り、忘れるべからずですね。

投稿: ふゆみ | 2016年5月18日 (水) 08時50分

日本国を見渡せば、いたるところに活断層は存在します。もし活断層のことを徹底的に気にするなら、活断層の上に建物を建てるのを禁止すべきです。もし活断層の上に建っている建物があれば、強制的に撤去すべきです。

人命がかかっているのです。反原発より先にこちらを主張するべきでしょう。反原発の人が活断層を気にするなら、日本に彼らが住む場所はありません。さっさと安全な海外に移住すべきです。

話は変わって、日本の建物や構造物の耐震性は年々高まっています。阪神淡路の時も本四架橋や新しい高層ビルには問題ありませんでした。高速道路が崩落しましたが、鉄筋の数が少なく手抜き工事だったことが判っています。また崩壊した建物も設計や施工が古く、被害が大きくなってしまいました。しかし、今では建物の耐震性は飛躍的に高まっています。

東北の時は地震で倒壊した建物はほとんどありませんでした。東北地方では度重なる地震で住民の防災意識が高まり、耐震基準の見直しと共に建物の強度は飛躍的に高まっているのです。

これだけ地震が多発すると手抜き工事は直ぐにバレてしまうので、建設業界ももう少し真面目に耐震工事を進めることになると思います。

原発は一般的な耐震基準よりもはるかに高い標準に基づいて建設されてます。地下深くまで地盤強度を探査確認し、少々の地震ではビクともしないように設計されているのです。

ところで、先日の裁判で、稼働中の原発が停止させられましたが、この判決に疑問を感じている人は少なくないようです。

洋の東西を問わず法治国家では裁判官は神の次に偉いとされています。それだけ公平性が問われる訳ですが、現実は必ずしもそうではありません。裁判を支配するのはムードであり、世論と言うかマスコミの傾向に影響されます。このような裁判でどれだけの不公正な判決が出され、ある時は人の命さえも失われてしまったことでしょう。

米国の裁判を見て見ると、日本企業がターゲットとなった訴訟では日本企業は多くのケースで敗訴しています。このため、多くの企業が巨額賠償を払わされ、多くの名のある日本企業の社員が刑務所送りになっています。公正と言いながら米国の国益が最初に来るのです。

一方、日本の裁判はどうでしょうか。これも似たり寄ったりではありますが、裁判官の心証が判決に影響します。勿論世論やマスコミも大きく影響します。裁判のプロセスでは裁判官の気分で先ず判決を決めます。それから主文を考えるのです。故に弁護士は裁判官の心証を一番に気にするのです。

下級審の判決が上級審でヒックリ返ることはごく稀です。身内贔屓と言うこともありますが、ほとんど審理せずに判決を出します。これも世論がうるさいケースではその限りではありませんが。

裁判所が真面目に法理に基づいて仕事をしていると考えるのは幻想です。反日裁判官にとってはやりたい放題になってしまうのです。

裁判では、素人同然の判断が平気で示されます。例の青色LEDの裁判で当時の女性判事は企業側に何百億円だかの賠償を支払えと命じました。企業活動を知らずに、単純に企業側はいくら儲けたからその儲けをそっくり発明者に渡せと言うものですから、開いた口が塞がりません。

原発訴訟では一握りの市民の訴えが認められて稼働中の原子炉が停止させられました。原子炉の稼働は規制委員会の許可の下に行われている訳ですから、企業側に違法性はありません。法律や規則に従って原子炉を稼働しているのにも関わらず、これを停止させてしまえば、規則や法律は一体なんだと言うことになってしまいます。裁判官の裁量の範囲を超えています。

当然、企業側は異議申し立てを行いましたが、これを先の判決を出した裁判官に審理させると言うやり方にも疑問を感じます。最初から企業側の異議申し立て却下ありきと言うやり方です。

法律や規則が問題だと感じれば、市民団体や弁護士は原子力規制委員会を訴えるべきです。そして原子炉や地盤工学の専門家を証人として呼び、徹底的に議論させるべきです。いくら神の次に偉いからと言って、専門知識も無いのに他の意見を聞かずに気分で判決を出した裁判官は非難されてしかるべきです。

法治国家と言う仮面の下に、反日勢力がうごめいています。


投稿: 愛国命 | 2016年5月18日 (水) 09時21分

いつも大変興味深い記事をありがとうございます。
本日の記事で島根原子力発電所の非常用電源が紹介されていますが、画像は、震災直後にまとめた自主対策のもののようです。
その後に規制委員会が出した新しい規制基準に対応して対策の内容が変わってきています。
耐震性を備えたガスタービン発電機や、直流を含めた大型の発電機車で非常時の電源を確保することになっていて、より重層的になっています。
http://www.energia.co.jp/anzen_taisaku/taisaku/pdf/h27_09.pdf

また、そのほかの安全対策を含めた全体像も規制基準の審査を受ける中で追加されているようですが、多重の防御、地震津波への対応、非常用電源の確保など安全対策に求められている思想は変わっていないようです。
http://www.energia.co.jp/pr/pamph/pdf/shimane-atom_anzen.pdf

投稿: 島根人 | 2016年5月18日 (水) 12時29分

いずれにしても、これからはコストがかかりすぎて日本で新規の原子力発電所はもう出来ないんでしょう。
現存する原発がすべて廃炉を迎える前に、有用な再生可能エネルギーが出現する可能性もまったくないワケじゃないだろうし、新しい化石エネルギーも可能性はある。
結果として、それはそれでかまわないような気もする。

ただ、デマやイデオロギーに塗れた言説に左右され、正しい情報を取得しないまま判断をしている人々が多すぎる。
そうした人々の意見もまた、政策に反映せざるを得ないのが現実がある。

引っ込みがつかなくなって妙な仮説を連発する科学者と、商売のためにそれを利用するジャーナリストたちがいる。
「それこそ民主主義」だ、と嘯く知能の低い学生集団。
これらにはホント、我慢できない。
たぶんこれは「民主主義の欠陥」というよりも、「日本の民主主義の欠陥」なのだろうと思う。


投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年5月18日 (水) 22時43分

この論説,とても有り難いものです.
福島原発の震度が1から3だったのも知らなかったです.
この程度なのに国会事故調の結論は安易過ぎて
それを起草した人達の願望によるものだと分かります.

よくメディアで
「福島の原発事故が終息していない中」とか
「福島原発事故の原因が究明されていないのに」
を理由として,原発再稼働に反対とするのが
ごくごく「普通な良識」であるかのように
言われていますね.

投稿: ヒデミ | 2016年5月21日 (土) 12時18分

仕方ないですが
そもそも原発には
モニタリング装置が
ついているので当時の詳細なデータが記録されており、地震の影響か津波の影響かは調査するまでもなく
わかるのです。

残念ながら
今回の各種調査に用いられたデータは全く別の
ものです(笑)。

というか原発の耐震性など原子炉以外はゆるゆるかつお粗末ですわ(* ̄∇ ̄*)

アホみたいに増設された
老朽化した小圧力配管の群がぐちゃぐちゃになってた…
これは関係者の共通認識です(笑)
もう辞めましたが

投稿: 無知なのは | 2016年9月22日 (木) 23時21分

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