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EUという「金の檻」

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英国がEUから離脱したら、風邪を引きそうなのでパニックになっています。

だまされたァって、あんた遅いよ。今頃になって、「EUってなに?」って検索すんじゃないよ。 

沖縄県民の皆さん、独立の住民投票に勝ってから、「独立ってこんな厳しいことだったのね」、と思わないようにしましょう。 

スコットランドが独立を射程に入れているのは、EU直接加盟という奥の手があるからなのを忘れないようにしましょう。

沖縄には経済共同体としてのEU、あるいは集団安保としてのNATOに匹敵する受け皿がない以上、こんなきな臭い地域で「独立」するということは、必然的に中国に吸収されることになっちゃいますよ。

本土と一国でいるいることのメリットは、「先住民自決派」がくさす100倍はあるんですから。

それはさておき、自分のエモーションだけを信じて動くとああなるという見本を見せてもらいました。

これで大英帝国は分解過程に突入しました。遠からずあの国は四分五裂します。 

さて、ギリシャ危機の頃を思い出して下さい。 

ギリシャも今の英国よろしく、国民投票という「危ない武器」を使って、「金?返せねぇもんは、返せねぇ。うちにはセンベイ布団しかねぇぞ」とタンカを切っていました。 

ユーロ・システムは、生ぬるい風呂みたいなもので、出ると今の英国のように風邪を引きますが、漬かっている分にはそこそこの安心感と利便性があるという生ぬるい仕組みです。

これが加盟各国にヤバイと思われだしたのは、メルケルが引き金を引いた難民問題とギリシャ危機でした。 

しかしなにぶん湯船が、「欧州永遠の理想」みたいに金ピカコーティングしてあるので、なにかスゴイ風呂桶だと世界中が錯覚していました。 

エマニュエル・トッドはこれを、「金の檻」と皮肉ぽく表現しています。 

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上の写真は、歳とった理系女子が、アテネのホストクラブに初めて行った時の写真のようですが、違います。

しかし、ツィプラス、濃ゆすぎるぞ。

できん坊を叱りに行ったメルケルさんです。 

ECは財政赤字のお湯が熱くなりすぎて、デフォールトしそうになるとなれば死なない程度の支援を与えて冷ましてやり、調子こいて放漫財政をすると緊縮財政要求でまたボンボンとお湯を沸かしてやる、という繰り返しをしています。 

こういう 風呂の火加減は、欧州中央銀行(ECB)が握っていて、各国中央銀行には、独自の金融政策をとる権限が与えられていません。 

つまり、各国中央銀行には、独自に金融緩和をすることが不可能ですから独自の景気回復政策をとることが不可能になります。 

これが、根本的なEUの欠陥のひとつです。 

ちょっとギリシャ危機を思い出してみましょう。 

ギリシャは別名「エーゲ海の与太郎」と呼ばれ(私が言っているだけですが)ていました。 

なんせ、あーた、一頃は、働かないことが美徳、公務員はアルバイトが本職、税金は払わないのがモラル、社会保障は目一杯もらうという「理想国家」を作っていました。 

ハッキリ言って愚者の天国ですが、どうしてそんな離れ業ができたかといえば、それはもちろんEUに入っていたからです。

なぜ「働かない」のに、どこから食料や工業製品が来るのでしょうか? 

もちろん、ギリシャ与太郎共和国の北方の大国・ドイツからです。

ドイツの貿易のプラスは、そのままギリシャのマイナスという、誰にでも分かる貿易の凸凹構造が成立していました。  

下図はドイツの貿易依存度を表すグラフです。 

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 図 2007年のGDPに対する貿易依存度 

ドイツは対GDP比率40%という異常に高い貿易依存度です。輸出依存症といってもいいでしょう。 

このドイツの輸出依存症のはけ口が、EU域内、特にギリシャなどの南欧諸国です。 

つまりヨーロッパでは、「ボク作る国・キミ買う国」と、きれいに二分解してしまったわけです。 

当然、「ボク、買う国」には経常赤字が積み上がっていきます。 (下図参照)

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財政赤字が年度ベースで4%程度と公表していたのが、実際には約13%もあり、累積赤字も110%超であったことが発覚しました。 

国の場合、支出が収入を超えているので、支払いは海外から借り入れるなどして資金を調達する必要があります。  

日本国債と違って紙切れに等しいギリシャ国債など誰が買うんだと思いますが、どっこいいるのですよ。 

EC各国の銀行です。 ギリシャ国債の所有者は、独仏などのEU諸国が金融機関が70%を占めています。  

なぜ買うのかといえば、ユーロという共通通貨である以上破綻は考えられないので、ギリシャ国債の高利率に目がくらんだのです。 

ユーロ離脱も取り沙汰された2012年3月には、最大38.5%にまで上昇しました。

Photo

日本なんか自慢じゃないが、今やマイナス金利ですぜ。市中銀行が国債買うと金払うんですぜ。でも、買われていますが。

なぜ、ギリシャが輸入超過になっていても平気だったのかといえば、ギリシャ国民がEUという金の湯船に浸っていたからです。

ユーロ域内の外国が国債を買い続けてくれる限り、貿易赤字がどんなに膨らもうと「大丈
夫」という、キリギリス的カラクリがあったからです。

ギリシャはユーロ各国の銀行などから借りた金で、就業人口の6割もいる公務員の賃金を払ったり、ドイツより高いと言われる年金の55歳支給などしていたわけてす。

とほほですが、かくしてギリシャは、ヨーロッパ「最後のソ連型社会主義国家」という
称号を手にしています(私が言っているだけですが)。

とうぜん、こんなマネはEU域内でしかできません。

通常の2国間貿易では為替レートという、国際金融経済の自動調整メカニズムが
作動するからです。 

一方の国の経常収支の黒字がひたすら積み上がって行く場合、その国の通貨の価値
はどんどん上がっていきます。

つまり、日本で言えば円高です。

それは経済危機に関しても一緒で、今世界でもっとも安定している通貨とされるドルと
円が買
われて高くなるのと同じメカニズムです。

かつて、EUがない前には、ヨーロッパでもこのような健全てな為替メカニズムが働いていました。

貿易黒字が積み上がると、その国の通貨が買われて、為替が高くなりました。

かつてのマルクなどは、典型的にこういう「信用できる通貨」の筆頭でした。

するとどうなるかといえば、はい、そのとおり、マルク高になると製品価格に転化されますから、ドイツ製品は競争力を失ってしまいました。

ですから、ドイツが独自通貨を維持していた頃には、マルク高は常態化して、ドイツの悩み
の種でした。

逆の現象は、ドイツの輸出の受信装置と化していたギリシャで起きました。

ギリシャはドラクマだった時代には、貿易収支・経常収支赤字が積み上がっていくために、
通貨の価値が下がっていってき、ドラクマ安になりました。

しかし、ドラクマ安になれば輸出には有利ですから、ドラクマは国際競争力を次第に回復し
て、黒字化することも可能だったわけです。 

ところがユーロという「みんなの通貨」(共通通貨)ができてから、様相が一変しました。

通貨のレートは、ギリシャ、ドイツの区別なく、域内すべてのユーロに漬かっている国の貿易収支を加えて、鍋に入れて「みんなのユーロ・スープ」にしてしまったのです。

すると、圧倒的に貿易赤字が積み上がっている南欧与太郎諸国の奮闘努力の甲斐あって
、ユーロの為替は安く押さえられます。

これで一番得をしたのは、マルク高という慢性リウマチを抱えていたドイツでした。

メルケルが大嫌いな金融緩和と財政出動をする必要がなくなったのです。

ユーロにより、各国の自主関税という障壁がなくなりましたから、ドイツは嬉し涙にかき暮れたことでしょう。

その上、EUは域内無関税ですから、なんとドイツはユーロ安、無関税という夢のよう
な特典を得て、南欧圏、特にギリシャへの怒濤の輸出ができたというわけです。

このようなことが続けば、ドイツの周辺国家群にとって、実体経済が空洞化し、財政赤
字が
膨らみ、優秀な労働力も先進国に移動していくことになります。

これがメルケルの周辺国家窮乏化政策とも言われている、EUのひとつの顔です。

混乱の真っ只中にある英国ですが、気を確かに。悪いことばかりではありません。

ポンド安という絶好の機会に気合いを入れて、輸出攻勢をかけるべきでしょう。

あ、ウィスキーくらいしか売るもんがないか(苦笑)。

移民問題にもこの際、はっきりとカタを付けましょう。

あ、社会に定着しているからダメか。絶対子供ができた移民家族は母国に帰らないもんね。

ならば、難民のほうくらいは流入を阻止しましょう。

あ、海から必死に上がって来るから難しいか。

スコットランドが独立したら、核搭載原潜基地持っていかれますから、常任理事国からも
すべり落ちるかもしれないし・・・。

ま、世界に迷惑をかけずに次の首相にまともな反緊縮財政論者を選んで自助努力するし
かないですね。

※写真 いまが旬のブルーべりーです。

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コメント

投票のやり直しも叫ばれてますがどうなりますか。
イギリスは1日も早く出ていけと言われてますね。
中国はドイツとの繋がりを強化。

投票結果を受け各通貨が安くドルと円高い、さらにアメリカ経済発表が不況となればドルも下落し日本通貨のみが高くなります。
政策や金融対策の舵取りを慎重にしないと大変な状況に。

トップ画はブルーベリーですね、夏だなぁ

投稿: 多摩っこ | 2016年6月29日 (水) 12時34分

なんだか今日は講談調の文体で。(笑)

なぜにドイツがEUを支配する事が可能になったか、元々陽気で怠け者の南欧諸国をいかにたらし込み抜き差しならない状態に落とし込んだか、簡潔明瞭にわかります。
明日の欧州を考える場合、この記事内容を押さえておかなくては目途も立ちませんね。

これから英国はEUと対立こそ表面化しないでしょうが、経済競争、あるいは不和は顕在化するでしょう。
その場合、緊縮財政を旨とせざるを得ないEUに対抗して英国が生きていくためには、ご指摘のようにドラスティックにガンガン財政出動をして行くしか方途はないものと思います。
ですが、勝ったはずの離脱派は確固たるビジョンを明らかにするどころか、早くも日和っているように見受けられます。

しかし、何だってメルケルのような社会主義に関与した経験のある政治家は「金融緩和と財政出動」が嫌いなんですかね。
きっと、国民よりも「国家」が大事だからなんでしょう。

中共の報道も笑えます。
なぜに「英国の離脱」という結果を喜べるのか、どう考えても理解に苦しみます。
英国は助けの手を求める事も考えるでしょうが、今の中共にはそんな余裕は全然ない。
ワーゲンやアウディをもっともっと買わなくちゃならないし、ニカラグア運河も工事再開したい。
中共好みの規制の緩いシティも、今後は資金供給力を失う事だろうに、原発はじめ約束の7兆円投資なんてさらに実現しやしません。
世界はどんどん壊れていき、中共の歯止めが利かず東シナ海あたりで「人民解放軍が暴走」なんていう絵図だけは御免蒙りたいところです。

投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年6月29日 (水) 12時45分

> 混乱の真っ只中にある英国ですが、気を確かに。悪いことばかりではありません。

> ポンド安という絶好の機会に気合いを入れて、輸出攻勢をかけるべきでしょう。

 それしかないでしょう。イギリス頑張って!
 ギリシャもEUから脱退しろ、苦しめ、そしてたちあがれ。


投稿: ueyonabaru | 2016年6月29日 (水) 16時31分

ロンドンシティが生み出す金が、果たしてイングランドを潤し牽引し国家貢献していたならば、イングランドでのあの途方もない投票結果(真っ赤な島の南半分に青いお池のようなロンドンの青)にはならなかったのでしょう。
因みにイングランド内でダントツに移民が多いのかロンドンです。一時は東欧出稼ぎが増えたそうですが、池内恵氏がフェイスブックに揚げていたようにその出身地は元英連邦領域。
あの国は今のところそれ程メルケル難民ヴィルコーメンの実害を被ってはいないのです。
どっぷり浸かってないからこそ有利に距離を取りたかったのでしょうが、ホント国民投票怖っ!

10年以上前にドイツに移り住んだ知人からの話では、ここ10年かけてドイツ国内にフレッシュな青果が満ち溢れ食が彩り豊富になったと。
日が差さなくて変な雨がジトジト降る国なので国内でトマトやレタスが採れる期間は本当に少ない。彼らはキャベツとジャガイモと数種の根菜ばっかり食べていたのですが域内自由移動の恩恵と、記事中の売る人一人勝ち状態のお陰でイタリア・オランダ・スペイン産の安い青果がスーパーに溢れ、一年中グリーンサラダやフルーツを食べられるようになりました。
所謂外人の私から見るとその光景は、ローマ人が属州から集めた良き物を堪能するのと重なって見えました。

離婚するんなら早く出てってよと言われ、パパ僕はこの家が良いよパパだけ出てってよと息子達にまで言われ、パパ自身もホントは離婚するつもりじゃなかったのになぁ、は、格好つかなすぎですねf^_^;)念願の脱退では決してないという!

投稿: ふゆみ | 2016年6月29日 (水) 17時43分

EUの恩恵を受けつつポンド維持という絶妙なポジションを取ってシティ金融で経済成長してたんだから、止めときゃいいものを。
国民投票はキャメロンが言い出したんだから今更どうにもなりませんね。食品とか値上がりしまくるでしょうねえ。ただでも死に体の軍事費なんかもうどうなるやら。今や英単独で作れる兵器なんて録にありませんし。
目先の不満がこれだけ広がったのはやはり「富の分配」の問題でしょう(日本もそういう傾向になりそうなのがちょっとね…)。そこに難民流入というブースター効果。
キャメロン政権はスコットランド国民投票で譲歩しまくったあげくにEU離脱国民投票でも失敗した歴史に残る愚か者と呼ばれるかもしれません。
年齢別の投票結果も興味深かったですね。
地域別だとジブラルタルは95.9%残留でした。当然か。

一方の離脱派も投票終わった途端に揃って「EU拠出金?あれはウッソ~!オレは言ってないも~ん」って、ブリテン伝統の二枚舌を自国民に使ってどうすんだよ!あ、食事用に味を感じない舌も別に持っておりましたな。ボリス、お前らいい加減にしろ。

オランドは身動き取れなくて困った。本当は英仏連合でドイツと経済対決したいのに、右派が強くなって強硬にならざるを得ない。
メルケルさんとこはゼニがあるから余裕ですな。

ブリテンの輸出品かあ。スコッチと自動車・機械類?クルマなんか既に外資傘下ばっかしじゃねーか!マクラーランとかジネッタにモーガンあたりのマニアック過ぎるのは残ってるか。
エンスー車でもケータハムすらマレーシア資本だし。これで金融(あれも相当に無茶してたけど)まで失ったら何で食っていくんだろう?ロンドン市国作る?
スコッチも、モルトの有名ブランドマッカランやボウモア蒸留所なんか元代理店のサントリー傘下だし。

えっ、スコットランド独立?
スコットランドって日本でいうと東北・北海道みたいなもんでGDPも人口も少ないけれども、戦略的に無視できないとこでしょう。無いだろうけど、これがロシアと安保で手を組んだりしたら…悪夢だ!ノルウェイも巻き込まれますな。

そんな仮定だと愛すべきユニオンジャックはどんな旗になるのやら。ついでに去年大騒ぎしたあげくに現状維持になったニュージーランドの国旗は?などと妄想。
スコットランド・ヤードは名前残るのかなぁ。
ふゆみ。さんが仰っていたように、プレミアリーグはどうさるのか。

英国が孤立するのではない!
大陸が大英帝国から孤立するのだぁ!オール・ハイル・ブリターニアー!

いかん、眠すぎてフォースの英国面に落ちそうだ…とりあえずスパムでも食って寝るか。失礼m(_ _)m

投稿: 山形 | 2016年6月29日 (水) 18時51分

>英国の輸出品

武器がありますね。
天安門事件による、EUの対中武器禁輸からも外れることになるから、ミサイルやら戦闘機エンジンを中国へ大手をふって売りつけるかもしれません(フランスなんかは今でも売ってるのか?)。
緊縮財政で維持しきれなくなった空母も売り払ったりして。

投稿: やす | 2016年6月29日 (水) 22時38分

英国生まれのトップブランド、地味ですが掃除機のダイソン!
可哀相な事に沢山の人がドイツブランドだと感違いしているのですがf^_^;)
掃除機と空気清浄機だけで国力維持は不可能ですね〜がんばれユナイテットキンダム!

投稿: ふゆみ | 2016年6月29日 (水) 23時25分

やすさん。

国際共同開発ではないブリテン内製で売れそうな武器なんてありましたっけ?
BAEでさえシステムの一部ですし。
ロールスロイスのジェットエンジンならそれなりに需要がありますが、民生用ではもはやGEとの共同がメインですし。旧いけど現役のスペイ艦船用の補用部品なんかIHIが委託生産しています。
銃器や装甲車両なんか売れそうなもの無いし。
戦車なんか論外。定数50!まで減らされたチャレンジャー改の後はもうノウハウも失われつつあるのでドイツからレオ2輸入が最有力とされていたほど。輸入となるとポンド安は悪条件なだけですね。


ふゆみさん。

ダイソン製品は無駄に高いからなあ。
まだブームになる前にたまたま当時最新のダイソン掃除機(食品関係だったので、サイクロン式で排気がキレイだと業者に言われるままに入れたらしい)が職場に入ったので使ってたけど、とにかく日本人の手には合わない使い難さでした。パイプやヘッドに加えてスイッチの配置や大きさ・取り回しなど…。ついでに超ウルサイ!工場でこんなだから家庭で使ったらどうなるやらと。
最近はだいぶ改良されているようですけど、最近買ったという知り合いに聞くとやはり煩さはスゴいみたいですね。
あの価格なら国産家電の方が遥かにマシってのが実感。オシャレ感やブランディングとは別次元の話です。
家電なんてとにかく実用性第一ですからね。

ダイソンでも扇風機(羽根の無いってヤツ)は、まあ赤ちゃんやネコが指突っ込む心配が無いということと、オシャレだけが取り柄。
煩いわ。高いわ。

投稿: 山形 | 2016年6月30日 (木) 08時45分

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