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フィリピンの近過去・沖縄の近未来

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昨日の記事は、米軍が日本から撤収していき、南西方向に大きな「力の真空」が生じるかもしれないという最悪シナリオでした。 

簡単に「力の真空」について、かみ砕いてご説明します。

「力の真空」(power vacuum )は、れっきとした国際関係論の用語です。 

戦争は地域のパワーバランスが崩れた時に、発生するという特徴があります。 

これは歴史的な経験則で、ひとつの地域の中にいままで存在していた軍事力がなくなった場合、その地域は「軍事力がない」状態、つまり「真空」状態になったわけです。 

ちょうど気象学でいう急激な気圧の変化と一緒です。

真空状態が発生した場合、そこに向けて気圧が高い方から強風が吹き込みますね。

あれと似たことが、ひとつの地域で起きると考えて下さい。 

たとえば、そうですね、典型とされるのは、1991年にフィリピンが反米病という持病の発作を起こし、スービック海軍基地と、クラーク空軍基地の返還を迫った時に起きました。

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折からの米軍は、ピナツボ火山の大噴火の再建問題もあって、こんな前方展開基地なんぞ受託国からうるさく言われるくらいなら、さっさと撤収してやるとばかりに、実にあっさりと撤収してしまいました。 

結果はどうなったでしょうか?

南シナ海全域をいままでパトロールしていた米海軍の拠点が、なくなってしまったわけです。 

ここに南シナ海全域に、「力の真空」状態が生まれてしまいました。 

これを虎視眈々と観察していたのが中国です。 

米海軍という世界最強の海軍力が南シナ海から消滅したことを、指をくわえて見ているような中国ではありません。 

フィリピンは海軍がありません。海保すらないというスッポンポンの状態でした。 

だって、世界に冠たる米海軍様がスービックにいるんだから大丈夫、という気の弛みです。

フィリピンはかつての米国植民地で、苦い経験をしています。

ですから、常に「反米の気分」は社会の底流にあるあるわけです。

米軍の事故や米兵犯罪など多く発生していましたから、反米病にボンっと火がついてしまったわけです。

それをフィリピンの政治家は狡猾に利用し、もっと基地の使用料を寄越せ、支援をくれとやったわけです。

しかし、米国は先程述べたように、「そこまで言われたら、もう居る意味がありません」とばかりに、さっさと撤収してしまいます。

撤収時に、艦船修繕のための浮きドックくらいは残してくれ、とフィリピンは泣いて頼んだのですが、「馬鹿言え、全部引き上げるわ。残すものは火山灰だけだ」とばかりに、にべもなくそれも引きずって撤収してしまいます。

これが「前方展開基地」、つまり主張所の哀しさです。

あくまで、基地を置く国にとっての安全保障上は重要でも、あんがい米国の「都合」上はたいしたことはないということもあるのです。

ハッキリ言って、この在フィリピン米軍と、在沖縄米軍の性格は驚くほど酷似しています。

絶対に撤収できない横須賀軍港などと違って、実にあっけなく撤収が可能なのです。

反基地運動家の皆さんが深い誤解をしているのは、昨日も書きましたが、沖縄基地など米国にとってさほど重要性がないということです。

ですから、米国にすれば、「お望みどおりいつでも沖縄から撤収します」という素地は常にあります。

しかし今、出て行かれると、東シナ海に大きなパワー・パキュームができるので、泣いて「止めてくれぇ。要求、聞くからさぁ」と言っているのが、わが国政府です。

なぜなら日本の防衛力では、東シナ海の安定を維持するのは不可能だからです。

情けないですが、これが現実です。

さて、フィリピンからいなくなった後の、南シナ海の話は皆さんもご承知のとおりです。

中国はたちまち、その「力の真空」に、軍を派遣しフィリピンが領有権を主張していたミスチーフ礁に中国が建造物を作り始めます。

途中経過は省きますが、それが今や南シナ海全域にガン細胞のように広がる、中国人工島が作られる発端です。

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近況はご存じのとおりで、2012年4月からは、南シナ海・中沙諸島のスカボロー礁の領有権をめぐって、フィリピンは中国と小競り合いを続けています。

なんとスカボロー礁は、首都マニラがあるルソン島からわずか230kmで、ちなみに中国のもっとも近い領土の海南島からは約1200kmのところにあります。

スカボロー礁では中国が駐屯施設の基礎工事を始め、今やミサイルの搬入や軍港建設が進んでいます。

さて、私は東シナ海から米軍の軍事力が消滅した場合、似た現象が起きる可能性があると考えています。

私は今ただちの在沖米軍の撤退は、中国に対して間違った外交シグナルを送ってしまうので、ないと思っています。 (ただし、トランプがなった場合、予測不可能ですが)

ですから、今まではそのように書いてきました。 

しかし、それが10年後、15年後の中期的将来に今のままかと言えば、おそらく違うでしょう。 

米国には、そのうちに詳述しますが、財政的に前方展開基地を維持できる力の余裕がありません。 

特に、反基地運動家たちは、ヘイトされる海兵隊員の立場など気にしたこともないでしょうが、日常的に憎悪の対象とされることに対する、彼らの心理的ストレスは頂点に達しつつあります。 

Photo沖縄タイムス6月19日より引用

地元紙は、「沖縄と一緒に悲しんでいます」というボードをかかげて、共に哀悼の意思を捧げた米兵やその家族についてただの一行も報道しませんでした。

いや、米軍人たちに、同じ温かい血が流れているとさえ、反基地運動家は思っていないのです。

Photo_6http://curazy.com/archives/138414

フィリピンの近過去から、沖縄も学んだほうがいいのではないかと思いますが、そうとうにキツそうですね。

いいニュースがひとつ来ました。国際司法裁判所の裁定がでて、中国の主張は完全に退けられました。

ひさしぶりに、わ、ははと祝杯を上げましたが、長くなりましたので、それは次回ということに。 

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沖縄問題」カテゴリの記事

コメント

沖縄にいる頃、何度か海兵隊の若い子たちとお話しする機会がありました。みなさんほんと、明るくていい子たちばかりでしたよ。

>特に、反基地運動家たちは、ヘイトされる海兵隊員の立場など気にしたこともないでしょうが、日常的に憎悪の対象とされることに対する、彼らの心理的ストレスは頂点に達しつつあります。

ヘイトされる海兵隊員だけではなく、本国にいるご家族や親御さんたちの心痛もかなりなものだと思います。

投稿: やもり | 2016年7月13日 (水) 07時47分

管理人さん、いつもわかりやすい記事をありがとうございます。

>地元紙は、「沖縄と一緒に悲しんでいます」というボードをかかげて、共に哀悼の意思を捧げた米兵やその家族についてただの一行も報道しませんでした。

琉球新報が5月29日に報じています。これは意外だったので覚えています。
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-287997.html

国際司法裁判所の裁定に中国は強く反発しているようですが、これからどうなっていくのか・・・

投稿: ある沖縄人 | 2016年7月13日 (水) 07時50分

連投失礼します。すみません休暇中です。

そんなことは書いていないと言われるでしょうが、
記事を読んでいると、基地反対の県民が、海兵隊にヘイトスピーチを浴びせる反基地運動家と同じような印象を持ってしまいます。
安全保障を理解していない愚かな人たちなのかもしれませんが。

また、参院選の結果を、県外から転居した運動家や、若者の投票率の低さを挙げていた方がいました。
一部はあるかもしれませんが苦しい理由付けです。

県知事選で、あんなに「民意」という言葉に否定的だったであろう方々が、今回の参院選の結果を、あっさりと「民意」と認めてしまうことに違和感を感じます。
島尻氏に投票した方は25万人もいるのです。

投稿: ある沖縄人 | 2016年7月13日 (水) 09時11分

フィリピンとの米軍との経緯は、あらゆる面で重要な参考になると思います。

スービック海軍基地、クラーク空軍基地の返還時の大統領はラモスでしたが、ラモス自身は国防の重要性は良く認識していました。
ただ、上院で駐留期限の延長が否決された時にもさほど慌てなかったのは、以後に自国の軍を大幅に整備拡張する事で米軍に頼らない国防体制を作れると過信していたんですね。

次の大統領が最も悪く、ポピュリズムの権化のような元俳優のエストラーダでした。
人気取りのリベラル寄りの政策を施す一方、富裕層減税もやったから、国防を手当する金もなかった。
だから今でもフィリピン軍は「アジア最弱」なんです。

上院が米軍の駐留期限延長を否決したのも一応の理由があって、その背景には今の沖縄とは全く比較にならないほどの、国家の病=女性への犯罪・性的搾取がありました。
しかし、その背景がすべて米軍と結びつけられてしまった事が政治的でした。

あの頃のフィリピンは、例えば5階建てビルの全館にゴーゴークラブやショーパブ、置屋系、サウナ系など、女性のテイクアウト可能な売春施設が各々テナントで入っており、そういうビルが無数に並んでました。
同じ地球上の事とは思えず、さながら「地獄絵図」でした。
私なんぞ、最初はえらいショッキングで吐きそうでした。
その後も十年に渡りつぶさにディープな部分を見てまわりましたが、西洋系に換わり中華系が増えただけで今でも全く変わりません。

しかし当時確かに米兵の行為も褒められたものじゃないが、店で働く女性達に一番嫌われ忌避されていたのは第一にドイツ人、次にコリアン、三番目は店の経営者・使用者たる華人です。
80年代後半には既に米兵の客は少なく、日本人の方がよほど多かった。
金離れ良く淡白で騙されやすい日本人がそうした境遇の女性に好かれるのは当然ですが、陽気で気さくな米兵ファンも多く、「米兵のみ可」としている店や女性も多かった。

私の実感として、沖縄同様、当時のフィリピンの「社会悪」全てが米兵や米軍の存在に収斂される傾向が顕著で、それが政治的に上院での否決につながったのだと言えると思います。

スービックの跡地は、経済特区として健全に再生されたかに報道される事がありますが、実体はかなり違います。
当初一部の財閥系に利権は生みましたが、外国資本が太るのみで、国民には「国防」という最大の福祉を手放した見返りは全くありません。
MICEの将来、普天間跡地の未来を暗示しているように思えます。


投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年7月13日 (水) 09時33分

>今ただちの在沖米軍の撤退は、中国に対して間違った外交シグナルを送ってしまう
これは、グアムなどの後方で軍の再編を行う=開戦に備えた再編だと判断される、ということですかね。

>財政的に前方展開基地を維持できる力の余裕がありません
「航行の自由」作戦の継続を、という声が米議会でも根強いらしいですし、その分の予算が……と思うと、どんどん厳しくなるのでしょう。艦隊を動かすだけでどれだけ金が必要になるのか。
いや、勿論作戦なんて無くても、訓練などで艦隊を動かしているんですが。

>国際司法裁判所の裁定
そういえば、以前にもスカボロー礁のお話をしていましたよね。
ネット上では、今回の判決は将来的に沖ノ鳥島にも影響がある、と言う意見が出ています。
よく比較として出される、沖ノ鳥島とロッコール島。
……そもそも紛争を避ける為の手段として、それぞれ個別の案件として判断しているのでしょうから、あちらが良くてこちらは駄目なのは何故かと言われても、困ってしまいますよね。

ネタ潰しはよくないので(笑)、次回の記事を待ってからにします。

投稿: 青竹ふみ | 2016年7月13日 (水) 10時02分

参院選沖縄選挙区の最終投票率は54・46%有権者数は1,150,806人(男性560,368人、女性590,438人)投票率54.46%(626,729人)が投票しました。

そのうちの40.6%(249,955人)が島尻氏に。1.6%(9,937人)が金城氏に。両氏合わせて42.2%(259,892人)。

上記を除く57.8%(356,355人)が伊波氏に。
それと、投票に行かないという意思票、県全体有権者の45.54%(524,077人)合わせて880,432人。
圧倒的民意ですね。

私は島尻氏の当選を信じ、左翼新聞と活動家にうんざりした良識ある県民(サイレントマジョリティ)が勝利に導くことを期待していましたが、結果がこれです。左派に県民の総意だ!と言われても返す言葉がみつかりません。むしろ逆を唱えると苦し紛れと言えます。

そういうことを無視すれば、今日の記事の内容に進むことができませんね。

沖縄県民は安全保障関連や国が進めていることをもっと理解しなければいけません。

投稿: ナビー@沖縄市 | 2016年7月13日 (水) 12時44分

ある沖縄人さん

>県知事選で、あんなに「民意」という言葉に否定的だったであろう方々が、今回の参院選の結果を、あっさりと「民意」と認めてしまうことに違和感を感じます。

あっさり認めた一人です。
翁長さんの場合は、なんだかんだ言って元保守なので、最終的には現実的な着地点を見つけるのではという期待感がありました(少なくとも知事選の段階では)。
しかし、バリバリの左派である伊波さんを沖縄県民の皆さんが選んだということは、それが「民意」なのかなと感じずにはいられません。

あくまで私個人の印象ですが。

投稿: 山口 | 2016年7月13日 (水) 17時45分

山口さん

私は県外に居ますが、
基地反対=反島尻氏というイメージで投票した人が多かったと想像します。

県民所得最下位で(東京の半分)、高失業率、自殺者数も多く、県民の格差も大きい。

県民の多くは伊波氏の公約の現実性など理解していませんし、島尻大臣が振興費を確保してきても、自分たちへは降りてこないという不満(自分たちの甘え、努力不足は棚に上げて)もあると思います。
隠れ振興費について、昨年12月に詳しい記事がありましたが、経済的自立への道はさらに遠のくでしょうね。

それにしてもです。
今回の選挙結果や、ことさら運動家の活動を強調して、沖縄が左翼に支配された島のように書かれると、私は悲しくなるのです。

投稿: ある沖縄人 | 2016年7月13日 (水) 19時54分

もちろん、このブログを訪れる沖縄の人たちのように良識的な人もたくさんいらっしゃると思いますし、左翼の島などとは思っていません。

しかし、伊波さんのような人を当選させてまでノーを突きつけられると、「辺野古移設で少しでも沖縄の負担軽減を」と考えていた本土人は失望感を感じずにはいられません。

十数年前、上司から2年間の名護行きを打診されたとき、妻と小躍りして喜びましたが(結局、立ち消えになりましたが)、今、行けと言われたら微妙です。

投稿: 山口 | 2016年7月13日 (水) 22時18分

最近の国政選挙の沖縄のねじれ現象は、米軍基地撤去とは言いながら、基地からの収入に依存せざるを得ない沖縄県の現実を垣間見ることができる。
保守革新問わず、軍用地地主、基地従業員にとって収入を失うことは死活問題だから、基地は固定の方が良い。選挙では辺野古移設反対に票が流れるは必然的なことだ。

東日本大震災時のトモダチ作戦は、中国にとって衝撃的だったようだ。日本中が感謝する作戦を、沖縄のマスコミはあれは米軍のパフォーマンスだと書いて、国民の顰蹙を買ったが。
日本と一戦を交えたら、アメリカが出てくるとの中国への強烈なメッセージになったようだ。米軍が駐留しているだけで強力な抑止力にはなる。
一つ心配なのが、中国に進出した企業の従業員だ。
太平洋戦争当時、日本の敗戦で命からがら引き上げた人たちがたくさんいた。
企業も、いざというときどうするか。よく考えるべきだ。


投稿: karakuchi | 2016年7月13日 (水) 22時42分

山口さん

> しかし、伊波さんのような人を当選させてまでノーを突きつけられると、「辺野古移設で少しでも沖縄の負担軽減を」と考えていた本土人は失望感を感じずにはいられません。

 お気持ち分かります。これは私のような保守人でも失望感を感じるのですよ。常識的な感覚ではありませんね。ですから、左翼とそれに同調する新聞社に敵意を感じるのです。

 敵意を感じるからと言って、暴力で対抗することはあり得ませんので、言論戦で戦っていこうと思っているわけです。チャンネル桜のキャスタ-であるボギ-手登根氏は、今度の参院選で「日本のこころ」から出馬いたしました。彼は、国防問題も真正面から取り扱うでしょう。彼は青山繁晴氏と同様の思想と意気込みがあります。若い彼らへの期待感が私にはあります。

 多くの日本の国内外の問題点は若い彼らによって解決されるものと思っております。

投稿: ueyonabaru | 2016年7月13日 (水) 22時57分

世界にはヤクザの親分のような、強力なリーダーシップが必要だ。
その役割を担ってきた、アメリカの力が弱まった途端に、ロシアがクリミアを併合し、中国は南シナ海でやりたい放題、中東は混沌として、EUもおかしくなった。
日本とていつまでも安泰ではない。
もう世界中でパワーバランスが崩れ始めた。二つの世界大戦もパワーバランスの崩れから発生している。嫌な時代になって来た。

投稿: karakuchi | 2016年7月13日 (水) 22時59分

 アメリカが撤退するのは、その前に日本側の防衛力整備などが十分に行われて後からのことにしてもらいたいものです。防衛費は少なくとも現在の2倍にはしなければならないし、核兵器をちらつかせての脅迫などにも対応できる状況は必要です。当然に、自衛隊を軍隊として位置づけねばなりませんね。

 安倍さんたくさんの課題がありますね。一つ一つを丁寧に粘り強く実行していってもらいたいですね。どんな困難があっても、これを乗り越え、日本国の独立不羈の立場を確保してもらいたい。

投稿: ueyonabaru | 2016年7月13日 (水) 23時15分

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