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2016年8月

核廃絶の提唱は単なるムード的平和主義ではなく、「倫理戦」です

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昨夜、旧友と痛飲したために脳味噌が氷結状態ですので、ご勘弁を。

う~ん、いつもは冷静な常連さんなのに、そんなに私の言っていることが分かりにくいですかねぇ。

ひとことでいえば、核兵器保有というのは、核兵器廃絶を訴えるほうが、保有するよりはるかに政治的・軍事的にメリットが大きいのです。

核兵器はきわめて「政治的兵器」な兵器です。はっきり言ってしまえば、「使えない兵器」の最たるものです。

なぜなら、使えば相互確証破壊が機能してしまうからです。

Madhttp://www.ftense.com/2015/02/game-theory-in-greec...

相互確証破壊とは、政治的に非常に極端な状況を意味します。

自国の破滅を担保にして、相手国をもまた壊滅させるという考え方ですから。

ですから、まともな国は使えませんでした。

かの中国ですら、日本に核攻撃をすればどんな結果になるのか、わかっているふしがあります。

ですから、彼らが対日攻撃として使用するのは通常型の巡航ミサイルや、これもまた通常弾頭の中距離弾道弾による飽和攻撃だと推測されています。

巡航ミサイルの長剣10、東海10、弾道ミサイルの東風21が旧満州地域や、山東省、江蘇省などから一斉に発射されます。

わずか数十分でその数は500発から600発以上に達し、迎撃すべき自衛隊のPAC-3は36基です。

この攻撃を防御できる国は世界にありません。米国ですら不可能です。

ほぼ9割が日本の政治中枢、基地、石油ターミナル、原発などに着弾し、日本は瞬時で壊滅します。

日本を壊滅させるためには、核兵器など持ち出す必要はないのです。

もう一回繰り返します。核兵器は実際には使えない兵器にすぎません。

いまや有体に言えば、その研究・設置・運営、そして劣化する核弾頭の更新のために膨大な出費を迫られているような「もてあます兵器」なのです。

日本に対して使われる可能性がかぎりなくゼロな以上、核兵器を対抗的に持つ必要もまたありません。

2009年にオバマが核兵器廃絶を説いたのは、核保有国が本音では、核兵器の巨額な負担から逃れたいからです。

米国は軍事的には使用できず、かといって今や外交カードとしても使えない核兵器などは、なくてもいいと思っています。

全面核戦争を背景にした冷戦期と異なり、現代は核軍縮の可能性が現実性を帯びた外交テーマとなっているのです。

この世界の潮流を見誤らないで下さい。

世界を導く指針を提起することによって国際政治において、相手国より優位なヘゲモニー(主導権)を取る手段は、昔から使われた外交手法でした。

これを国際関係論では「倫理戦」と呼んでいます。

日本は、かつての大戦においては「民主主義を防衛する戦い」とプロパガンダされ、昨今は「鯨を食う野蛮人」と非難を受けました。

この捕鯨問題が米国の日本バッシング戦略の一環として行われたために、わが国は国際世論の袋叩きにあったのは記憶に新しいことです。

また、中韓からは執拗に「南京大虐殺」、あるいは「従軍慰安婦」などで「倫理戦」を仕掛けられて敗走を重ねてきました。

残念ですが、どうやら日本にはこの「倫理戦」の発想そのものが欠落しているのです。

なぜ、日本がこの「核廃絶」という、被曝国であり、非核保有国の日本だけが大声で主張できるテーマを使わないのか、不思議なほどです。

この「倫理戦」はきれいごとではなく、外交的にアグレッシッブな手法なのです。

同じく私が、わが国を「平和国家」として規定するもまた、戦後左翼のようなムード的平和主義で言っているのではなく、「倫理戦」を強化するブースターとして述べているのです。

核兵器を持つことは、今や政治的にはむろん、軍事的にもメリットではなく、デメリットであり、ウィークポイントと化しています。

Photohttp://www.bbc.com/japanese/36396490

わが国の首相は、ひょっとしてそれをわかっていて米国やロシア、中国に「倫理戦」を仕掛けたのかと、オバマ広島訪問時に感じました。

首相の内心はわかりませんが、そうならば大変に素晴らしい外交です。

米国の「核の傘」に入っている日本が、そんなことを言う倫理的資格があるのかという声もありますが、ならばノルウェーはいかがでしょうか。

ノルウェーはノーベル平和賞を与える資格をもつ国として国際社会で「平和国家」として認識されていますが、かの国はNATOの原加盟国です。

言い換えれば、米国の「核の傘」に入っています。

とまれこんな時期に、核廃絶ではなく、核武装の道を選ぶのは正反対に走っているとしか私には思えません。

お断り 改題しました。

 

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核兵器保有は国家的自殺行為だ


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核兵器について、私の意見を短くまとめておきます。 

私は核武装という手段は、最後の最後、外交的・軍事的オプションがすべて消滅した後にするべきものだと思っています。 

核武装はどこからどう見ても9条の交戦権に抵触しますので、改憲を前提としますが、これについては今回はふれません。

ただ、核武装を視野に入れた改憲を試みるなら、改憲派が国民投票において勝てる見込みは限りなくゼロとなるでしょうが。

また改憲した後に、核武装を政府が提起した場合、国民の多くはだまされたと思うことでしょう。

さて、現状でもわが国は「準核武装国家」だと認識されています。 

先日、技術的に不可能だという理由をゴマンとあげましたが、実は日本が国家プロジェクトとして遂行するなら、ほぼすべてクリアできてしまうからです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-9519.html 

プルトニウムの兵器級への転用も不可能ではありませんし、運搬手段としてふさわしい固形燃料ロケットは既に保有しています。 

再突入技術も不十分ですが、有しています。

核実験場は、無人島の地下実験でやれなくもありません。(やらしてくれる自治体があればの話ですが) 

発射プラットホームの潜水艦も、1、2発搭載するていどなら、セイルの拡張でなんとか凌げます。 

しかし何度も強調しますが、その選択をするのは唯一、日米安保という安全保障の土台そのものを喪失した場合に限ります。 

いったんそれを放棄した以上独立国家として、中国、北朝鮮は当然のこととして、米国、ロシアまで含めた相互確証破壊を構築せねばならないからです。 

これは「平和国家」という、日本人が70数年にわたって築いてきた政治資産を投げ捨てるだけではなく、わが国がどの国とも同盟を結ばない外交的に孤立した立場になることを意味します。

これはとりもなおさず、戦前への回帰です。 

また見逃されがちなのは、この核武装プロセスには大きな落とし穴があることです。 

核戦力を開発するまでの短くて3年、常識的に見れば5年。さらに実戦配備するまでに同じだけの期間の間、わが国は米国の「核の傘」という核抑止力を失ってしまいます。 

つまり長く見て約10年間、日本は中国・北朝鮮の核に対して丸腰状態となるわけです。 

また、米国とは同盟解消した結果、敵性国家と認識されるでしょう。 

その場合、米国の軍事技術に依存しているわが国の通常兵器の維持・運用・調達が破綻します。 

早期警戒管制機、ペトリオット、イージスなど、自衛隊装備の大部分は米国技術に依存しています。

日米関係が悪化した場合、部品の交換すらままならなくなります。

しかもその時期には、日中の軍事バランスは、2020年を境にして逆転すると見られています。 

日中の通常兵器での拮抗関係が逆転し、通常兵器の運用も不安定となり、その上核抑止力まで失ってしまっては、国家としての自殺行為です。 

そしてNPTを脱退することによる国連の非難決議が具体化すれば、経済制裁を覚悟せねばなりません。

ウランの輸入にも待ったがかけられるでしょうから、その場合、原発は稼働できなくなります。

その結果、わが国の経済はとめどなく失速していくことになります。 

核武装がそこまでのリスクをかけてするべきこととは、到底私には思えません。

今の「寸止め核武装」状態で、核武装について様々な意見を出し合っていくことだけで、充分に「核抑止もどき」となります。

日本に対して核攻撃を仕掛けてくる可能性がある国は中国と北朝鮮でしょうが、それについては通常兵器による抑止を考えたほうが現実的です。

それについては稿を改めます。

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日本的「あいまいさ」と日米同盟

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よく冗談半分で思うのですが、このブログは、いわば「ひとり新聞社」です。

社主・編集局長・論説主幹、全部私です。わ、はは。

このところ論説副主幹が多く生まれてきたので、ほんとうに嬉しいかぎりです。

さて、つい先日ある知人からも、「きみのところはいつから防衛ブログになったの」と言われてしまいました。

まったくそのとおりで、その危惧を実は私がいちばん感じています。 

尖閣問題に関心があっても、米国の世界戦略なんてものに関心ある人は、百人のうち1人いるかいないかです。

だだっ広い話をいつまでつづけるんだという声が聞こえて来そうです。

今日はなぜ、私がこのテーマにこだわっているかについて、少しお話することにします。 

日本人で直接中国の脅威に面しているはずの人たちは、沖縄県民です。

毎日のように県の水域に大量の中国海上民兵を乗せた漁船と海警が侵入しています。

下の中国通信社の発信した写真をみると、いつの時期か不明ですが、漁船群は漁が目的ではなく、統率された「軍隊」のようです。

また後方には海警の艦艇が控えて、指揮しているのが誰かよくわかります。

今回海保は、海警の船舶から自称「漁船」に乗り移っている要員を撮影しています。

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間違ってコラージュした画像をアップしてしましたので、差し替えました。ふゆみさん、ありがとう。


これに対して、ヤバイと思う危機感を覚えない人はいないでしょう。 

ここまでは県民の8割は共通だと思います。 

あとの2割は「あるものを見ない」人たちだけです。 

目の前に空飛ぶ円盤が降りてきても、それは「あってはならないから見えない」のです。 

信じがたいことですが、イデオロギーの色眼鏡とはそれほどまでに強力なものなのです。 

この人たちにとって、「敵はあくまでも米軍であって、中国の脅威はない」のです。

沖縄地元2紙がこの希少な類型に属するのが、沖縄県民の不幸ですが、今回は触れません。

さてここからです。

この8割の「あるものはある」のだから見えている人たちも、その内実は多様に分かれます。

ある人は自衛隊を出して海上警備行動で打ち払えと言い、ある人は外交的な厳しい対応が必要だと言い、またある人は核武装しろと言います。 

すべてが正しく、すべてが少しずつ間違っています。 

核武装は現時点では、思考実験の範疇を抜けません。

ただし、独自核武装についての議論は、それ自体が抑止効果を持つので、大いにするべきです。

外交的交渉を厳しくするのは当然ですが、それだけではなんともなりません。

いくど強く抗議しても、カエルの面にションベンだからです。

一番リアリティがあるのは、自衛隊の海上警備行動の発令です。

では、いまの状況で自衛隊は出すべきでしょうか?

自衛隊は中国の不法な公船や武装漁船を排除する能力をもっていますから、「出せ」というのも理解できますが、今はその段階ではありません。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-961f.html 

いま、自衛隊を出せば、それは中国の思う壺だからです。 

日本が「紛争地に先に軍隊を出した」という印象は、国際社会に強く刻印されるからです。 

中国が狙っている絵図は、日本を挑発し、日本自らにエスカレーションの階段を登らせて、彼らの軍事力行使の妥当性に道を拓くことです。 

日本人からすれば、尖閣は固有の領土であって「紛争地」でもなく、さらにいえば自衛隊は専守防衛のための存在なのだ、という思いがあります。 

両方とも国内向けの言い分です。国際社会では通用しません。 

そもそも「専守」などという言葉は英語にもフランス語にもない、日本だけでしか通用しない特殊用語にすぎないからです。

そして残念ですが、尖閣はいまや「紛争地」なのです。 

一点の揺るぎもない固有の領土であって、「紛争地」ではないという公式見解は、もう止めたほうがいいと私は思います。

その原則主義を貫くと、「中国さん、なんなら国際仲介裁判所に出ますか」という外交的選択肢を、自ら奪う結果になってしまっています。 

そして自衛隊は、憲法がどうであろうと、ドメテスィック(国内的)な憲法など知るはずもない諸外国にとって紛うことなき「軍隊」にしか見えません。

それも世界最優秀な。

あいにく国際社会は、自衛隊の偏った能力を知りませんし、彼らが「警察的軍隊」であるとは思いもしないでしょう。

米国民の9割9分すら知らないのです。

いや尖閣は日本が中国から強奪したのだ、というのが米国知識人の一般的な認識なのです。

今や日本人好みの<あいまい>語でごまかし切れる時期ではなくなったことを、他ならぬ日本人自身が、特に沖縄県民は当事者として知るべき時です。

軍隊をこの「紛争地」水域に投入すべきかどうか、そのためにはどのような法的措置が必要か、国際社会にどう説明をするべきか、どのような装備が必要なのかなど明確に考えるべき時なのです。

今はその時期でなくとも、この赤い奔流が止まらなければやがて遅かれ早かれその時期は到来します。

しかし残念ですが、日本人はまたもやわが民族特有の<あいまいさ>に逃げ込もうとしています。 

沖縄県民の一部にいたっては、宮古・石垣が取られるまで気がつかないようです。

尖閣の次は先島なのはわかりきっているのに。

そして当然のこととして、その<あいまいさ>がもたらす結果について、冷厳に見ようとしていません。 

この<あいまいさ>の根幹には、日米同盟があります。 

冷戦期に作られた日米同盟は、明確に敵が設定できるうちは極めて有効な装置でした。 

旧ソ連は共産主義国家群を率いた明確な「敵」の盟主として想定されました。

そしてこの期間は、実に半世紀という長期間に及びました。

この間、わが国民を支配したのが、「なんとなく 米国に守られている」という<あいまい>な意識でした。

「全基地撤去」を叫ぶ反基地運動家ですら、心のどこかでは「基地はこのままずっとある」ということを無意識に前提にしています。

では、冷戦が終わった後に勃興した中国はどうでしょうか? 

敵ですか、友人ですか? 

この答えに簡単に答えられる人は、あんがい少ないはずです。

中国との経済的相互依存関係が、旧ソ連とは比較にならないほど生じたからです。

Photohttp://news.mynavi.jp/articles/2015/09/16/niwachina/

民主党政権が任命した伊藤忠出身の丹羽宇一郎元在中国大使など、「日本は中国経済圏に入るべきだ。属国として生き残ればいい。それが日本が幸福かつ安全に生きる道だ」(※)と公言していたほどです。※ソース 深田祐介のインタビューによる。

ちなみに丹羽氏を任命したのは:鳩山由紀夫首相でした。

それはともかく、おそらく財界のかなりの部分が、同意見だったはずです。 

そしてもうひとつは、米国の目を覆うばかりの弱体化です。 

21世紀初頭、このふたつの現象が同時に起きました。 

そこから生まれたのが、日本国民の日米同盟へのあいまいな不信感と、それと裏腹の中国に対する融和的な空気です。 

米国がほんとうは何を考えているのか分からない、ほんとうにいざとなったら日米安保は発動しされるのだろうか、この疑問は保守、左翼問わずに引っかかっている問いだったはずです。

中国は、こんなに経済関係がしっかり出来上がっているのに攻めてくるはずがない、と無意識に多くの国民が思うようになりました。

Photo_2http://gigazine.net/news/20160208-naha-dragon-pillar/

ある県の知事などに至っては、中国マネー欲しさに3億円も一括交付金をかけて龍柱を作って媚びるあさましさでした。 

ちなみに龍は中国皇帝のシンボルで、宗主国への恋慕の情をあからさまにしています。

マーライオン効果を狙ったようですが、残念ながら中国人観光客にすら相手にされていないようです(苦笑)。

中国という奇妙な国が、政治と経済がまったく別の論理で動いていることを知ろうはもしませんでした。

そしてこの間、日米安保についての議論は、昨年解凍されるまで凍結したままだったのです。

去年の安保法案は、日本人の安全保障意識がいかに国際状況からズレまくっているのかを満天下にさらしました。

保守派の多くはその議論の前提であるはずの日米同盟が、実はあいまいだということに気がついていませんでした。

ほんとうに尖閣や先島に中国が侵攻した場合、第3海兵遠征軍が出動するのかどうかという肝心要なことを、米国相手に詰めきっていなかったことがバレてしまいました。

沖縄海兵隊が、宮古に侵攻されるのを傍観しているようなら、そんな安保条約は紙くずだというのに。

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出典不明

一方、左翼は笑うべきことに、日米同盟があって初めて9条が成立している事実すら知らなかったようです。

彼らのメーンスローガンである「安保粉砕・全基地撤去」を本気で実行すれば、「平和憲法」が成り立たないことをがわかっていなかったようです。

驚くべき幼稚さです。9条は日米安保が作り、維持したというのに。

半世紀も口先で「平和」を唱えさえすれば平和が到来する、という宗教じみた信念でやってきたからです。

私たちは、米国が何を考えて日米同盟という歴史上最長にして堅牢といわれる<同盟>を築いたのか、思いを致すべきでした。

彼ら米国人の意志を知り、米国がどこに向かおうとしているのか、ほんとうに日本の「友人」なのか、あり続ける意志があるのか、知るべき時です。

それがわからないと、米国が尖閣、いや宮古、石垣にまで手を伸ばした時に、在沖海兵隊が私たちの<友人>でありえるのかどうか、予測がつかないのです。

結論めいたことは言いません。

私もわからないからです。一緒に考えていきませんか。 

関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-0178.html

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日曜写真館 嵐のあとの空と水田

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岩代太郎さんのバイオリン組曲『無言歌』をお持ちなら、流してご覧ください。

「無言」とは言葉を必要としないという意味です。

自然と向き合う生活をしていると、台風の脅威と、その後にくる静かな朝、輝く太陽との境目に陶然とすることがあります。

時系列に沿って差し替えました。

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北朝鮮潜水艦発射弾道ミサイル実験を実施 誰にとって一番脅威なのか?

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来週になるとのびたラーメン状態になりそうなので、こちらから先にいきます。 

北朝鮮が潜水艦発射型ミサイル(SLBM)らしきものを実験しました。これを伝える朝鮮日報です。

「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は24日に実施した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験について、「成功中の成功、勝利中の勝利」と述べた。朝鮮中央通信が25日、伝えた。
 金委員長は発射実験を参観し、「きょう発射した弾道弾の実験結果を通じ、われわれが核攻撃能力を完璧に保有した軍事大国入りを果たしたことが証明された」と発言した。
 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は24日午前5時半ごろ、東部の咸鏡南道・新浦付近の海上から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)1発を発射した。東海を500キロ飛行し、日本の防空識別圏を80キロほど入った海上に落下したもようだ。」(連合8月26日)

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上の写真は失敗した7月のものですが、今回は成功したようです。

発射されたミサイルは潜水艦発射弾道ミサイル『北極星』(KN11)で、撃った潜水艦は新浦級(2000トン級)だとみられています。
 

「デイリーNK」によれば、これはロシアから北朝鮮に「くず鉄」名目で輸出されたくず鉄潜水艦をコピーしたものです。
http://dailynk.jp/archives/30868

中国はくず鉄再生空母を作り、昔の舎弟は舎弟で、くず鉄再生潜水艦からミサイルをぶっ放すというのもなかなか渋い光景ではあります。 

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このくず鉄再生潜水艦の元はロシアのゴルフ級潜水艦で、リバースエンジニアリングして、セイルを大きくして日本の発射筒を備えつけました。
北極星1号 - Wikipedia

この輸出に関わったのは、杉並区の東園商事という在日韓国人経営の小さな商社のようです。 

当然ココム違反ですが、経済産業省から差し止めが来る前に出してしまったそうです、司直の捜査が待たれます。 

ちなみに、日本国内にはこのような北朝鮮が絡んだ商社は無数にあって、総連によって北朝鮮へ向けて秘かに核爆弾製造装置が輸出されていたのは公然の秘密です。 

それはさておき、北朝鮮は「相互確証破壊」の最後のステップである、潜水艦発射弾道ミサイルの保有に足をかけたようです。 

もちろん完成してはいませんが、北朝鮮は国際社会がなんと言おうと、このペースで実験を続けるでしょうから、数年後にはコンパクトながらほぼ完全な「相互確証破壊」を手に入れることになります。 

現在の試射では500㎞ですが、今回は角度を高くしたために射程を制限しています。 

本来の角度なら1000㎞以上に射程を延ばすことが可能です。 

いまでも、北朝鮮の核ミサイル実験が、米国を交渉テーブルに引き出すことが目的だという人がいて驚きますが、もちろん間違いです。 

このていどの飛距離では、米本国はおろかグアムすら狙えませんから、米国の脅威にはなりえません。 

飛距離が足りない場合は、目標に接近するために太平洋に出て目標に接近するしかありません。 

かつてのソ連戦略原潜や、今の中国戦略原潜が、なにかといえば太平洋に進出したがるのはミサイルの射程が不足しているからです。 

もちろん、こんなクズ鉄潜水艦から作ったような代物で、宮古海峡を通過することは不可能ですから、北朝鮮はこの虎の子のミサイル発射潜水艦を、常に浅い北朝鮮本土周辺の水域に潜らせておきます。 

となると、このミサイルが狙える目標は、二つしかありません。 

いうまでもなく、日本と中国です。 

日本にとっては、いまさらいうまでもない脅威です。 

発射された咸鏡南道・新浦野市を確認します。新浦は日本の対岸に当たります。 

日本本土の九州、関西、関東圏全域までが射程に入ります。 

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 一方、中国にとっては首筋に刃物を当てられたような気分になったはずです。 

というのは、中国にとってはこれで北京が、北朝鮮の核ミサイルの射程にすっぽり納まってしまったからです。 

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仮に中国が北朝鮮を核で脅迫しようとしても、正恩はニヤリと笑ってこう言うでしょう。 

「習同志、撃ってみたら。けどボク、まじに報復しちゃうからね」 

これが、この間にふれてきた「相互確証破壊」というやつです。 

この関係に入ると、名称どおり「相互」に「確証」をもって相手国を「破壊」できるわけですから、ある種の「対等」な関係になってしまいます。 

「なにが対等だ。100年早い」と、習さんはさぞかし荒れたことでしょう。 

逆にいえば、国際関係においての「対等」とは、核による相互確証破壊をもちあっている関係のことだとも言えるのです。

もちろんまだ潜水艦発射ミサイルの技術は完全ではありませんから、それが完成するまで北朝鮮はミサイルにアホンダラ1号さんのコメントにもありました、核のゴミを詰めたダーティボムを取り付けるだけで、立派な「相互確証破壊」が成立します。 

こんな恥ずかしいものなど先進国は使いませんが、かの国なら別です。 

最初の一発は絶対に阻止できませんから、ミサイル迎撃技術が完成していない中国は、確実に最初の一撃を首都に浴びることになります。 

また、事前に潜水艦を発見して沈めてしまいたいと考えても、中国海軍には対潜水艦作戦の能力が欠落しています。 

かくて、今後中国は北朝鮮のせびられるがままに食料や燃料を供給することになるでしょう。

 

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私たち日本の眼前にある3ツの選択肢

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日本が「独立」してみたらどうか、というのは実に魅力的なテーマです。

もちろん外形的には、日本は立派な主権国家として独立しています。

いや、はずです。

日本に今まで強力なリーダーシップを持った政治家が出ずに、政権党は利権とポストの配分が仕事だと思っていました。

なぜなら、国際戦略などそもそも考えても仕方がなかったからです。

戦後、日本はいかに政治力がなくても、米国の出す方針に付き従っていけば済んだのです。

ですから、日本の政治に求められるのは米国の意図を読むということだけで充分だったと言ってよかったわけです。

したがって、国家を真実統治しているのは、政治家ではなく官僚層でした。

こんな中で外国と正面きって渡り合える政治家が出たら、そのほうが不思議です。

防衛力は西側有数といいながら、単独で動くように設計されていません。

掃海能力、対潜水艦作戦、航空機迎撃能力は、世界でもトップクラスに入りますが、他国攻撃力はないに等しく、長距離戦力投射能力に至っては皆無、長期戦に持ちこたえる継戦能力もゼロです。

トライアスロンでいえば、水泳だけはめちゃくちゃに速いが、ほかはさっぱりという選手のようなものです。

それは米軍がすべて担ってきたから、考えずに済んだのです。

このような偏った形の「軍隊」は、世界でも類例を見ません。

語弊がありますがあえて言えば、自衛隊は「従属国型軍隊」、「従属国」という言葉が勘にさわるのなら、「補完型軍隊」と呼んでもいいかもしれません。

さて、この米国の世界覇権が大きくほころびようとしているのは、敏感な日本人なら誰しも感じているはずです。

米国は今や焼きのまわった大国になってしまいました。

日本は好むと好まざるとにかかわらず、衰退していく米国に頼りきるのではなく、「独立」していかねばならないかもしれません。

では、米国の世界戦略とはどんなものなのでしょうか。そこから知っていきましょう。

4ツの類型があります。

①オフショア・バランシング。

オフショア(沖合)から船にでも乗って地域の様子をうかがいつつ、間接的にコントロールするやり方です。

これが戦前から一貫した米国の理想モデルです。

冷戦期にはヨーロッパではNATO、アジアでは日本がその相方の役割を務めました。

日本の属国根性とでもいうべき体質は、この時代に根を張ったものです。

しかし米国自身も現実には、なかなか意のままにいかずジグザグします。

②完全支配(プライマシー)

これは米国が自分の力が溢れていると、錯覚した時にやらかす戦略です。

直接に紛争地に乗り込み、軍事的・政治的に完全な支配下に置こうとします。

ブッシュ・ジュニアの頃のネオコンが大好きだった政策でしたが、実際に湾岸戦争・イラク戦争、アフガンとやった結果、米国はボロボロになりました。

そこで出てきたのが、選んで介入しようというやり方です。

③選択的関与(セレクティブ、エンゲージメント)

全面的関与ではなく、選んだ地域にピンポイントで介入するという方法です。

いまのイラク、アフガンなどがこれに入りますが、これすら米国にとって大変な負担になっているのは、ご承知のとおりです。

②③の流れの中で、米国は財政的にも重荷を作っただけではなく、「世界の警官」としての威信を喪失しました。

独仏が中東戦争に参戦を拒絶したように、かつてのように米国が「やるぞ」といえば、自由主義陣営がつき従う構図は瓦解してしまいました。

そこでちらつくのが、次のスタンド・アローン志向です。

④孤立主義(アイソレーショニズム)

読んで字のごとしです。すべての地域から米軍を撤退させ、自国が危なくなった時以外海外に米軍を展開することはしません。

太平洋では米国はグアムまで撤退し、陸では南北大陸の中に引きこもろうとします。

この流れを押さえた上で、中国に対しての米国の戦略を照応させてみましょう。

米国にとって、中国が自分で国内に引きこもって、文化大革命という内戦を繰り広げていた1970年代までは、中国に対して深く考える必要はありませんでした。

勝手に内ゲバに興じているのでから、①のオフョア・バランシングで充分だったからです。

熱い戦争になった朝鮮戦争すら、③の選択的関与で充分でした。

そして近年における中国の台頭です。

この時期は悪いことには、米国が中東戦争の傷から立ち直れずにいた時期で、しかも中国の台頭のきっかけは、自らの経済的失敗によるリーマショックに起因しています。

自信を喪失しかけ、しかも三流経済国だと思っていた中国にリーマンショックの尻ぬぐいまでしてもらうというダブルパンチに、米国の自尊心はいたく傷ついたはずです。

この時期に米国は、危うく中国を「盟友」にしかけてしまいました。

それが、第1期オバマ政権で強い影響力をもったズビグネフ・ブレンジンスキーの提唱したG2戦略でした。

G2とはガーバメント2、つまり2大国である米中で太平洋を仕切っていこうとする戦略です。

日本の位置はただ基地を提供している「従属国」にすぎず、すべての国際案件は頭越しに米中によって談合されることになりました。

ブレジンスキーはこう述べています。

「中国を自由主義経済圏に取り込んでしまえば、いずれ内部から民主化に向かうだろう」

この政策に基づいて、米国は中国に対して、積極的に経済的協力関係を結びました。

平たく言えば、13億のマーケット欲しさに甘い顔をし続けたわてです。

ブレジンスキーは経済発展の結果生じた数億人規模の中間層が民主化に向かうと考えていました。

そしてこの民主主義を渇望する中間層によって、中国を民主国家に変えていけると思っていたようです。

結果はご承知の通りです。

中国は、ダイヤつきスマホを操りながらBMWに乗る超富裕層と、ゴミ溜をあさる貧民層に二分解しました。

対外的には、清国版図の奪還を目指した中華帝国再興の熱狂が始まりました。

これがいま、私たちが毎日うんざりするほど見せつけられている「中国がいる風景」です。

米国は、上半身が共産主義、下半身が国家資本主義というキメラ怪獣を作り上げてしまったのです。

ここで出てきた新たな構図を確認しましょう。

それは、中国の台頭、米国の衰退です。

具体的には、中国の海洋軍事進出と米国のアジアからのフェードです。

まさに歴史の分岐点に、いま私たちは立たされています。

冒頭の問いに戻ります。

このような状況で日本はどうするべきなのでしょうか。

選択肢は三つです。

第1に、米国との同盟を継続したままでいけばよいとする考えです。

第2に、今やアジアの新たな覇者となろうとしている中国の経済圏に加わり、政治的にも中国の属国となればいいとする考えです。

第3に、独立を志向する、という考えです。

さて、私たち日本はどう生きていけばよいのでしょうか。

次回に続けます。

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日本の反核運動に「適当な支援を与える」とした中国人民解放軍内部文書

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昨日の中国の学者の見解は、既に中国軍部と政権中枢の共通認識となっているようです。 

昨年10月に、国連総会において中国の軍縮大使が日本の核武装論を強く非難したことは、なぜか日本ではあまり報道されませんでした。 

正直な話、日本人にとっては集団的自衛権という国際常識ですら国論を二分したのに、改憲手続きを踏んですら困難な独自核武装など夢のまた夢だからです。 

ただし、中国はそう思っていないようです。 

ジャーナリスト相馬勝氏は中国人民解放軍の内部文書である「国防参考」に、同様の記載があることを確認しています。

その内部文書には、「日本の核武装に警戒せよ」と題して、楊教授以上に警戒を募らせています。

「日本では原子力発電の稼働によって、核兵器を作る原料のプルトニウムやウランを豊富に保有している。
同時に、核兵器を持たない国のなかでは唯一、ウランの濃縮や使用済み燃料の再処理によるプルトニウムの製造技術といった、核兵器に転用可能な核原料を製造する一連の技術も保有する。」(相馬勝氏「SAPIO」2016年9月 以下同じ)

そして「国防参考」は、こう結論づけます。

「それゆえ、日本は2000発の核爆弾を製造できる。しかも短期間で。」

ならば中国はどう対応するのでしょうか。内部文書はこう述べています。

「ひとつは国連の場などにおいて、日本の核武装に強く反対せねばならない。」

これが、昨年10月の国連総会での中国代表の、日本批判なことは明白です。

次に日本国内の反核運動に着目します。

「日本国内では反核の立場と発言力は一定社会的基盤を築いている。民間の反核組織に適当な支援を与えねばならない。」

これは中国がもっとも嫌っているはずの内政干渉ですが、他国に対してはかまわないようです。

これを読む限り、中国は既に日本の反原発運動・反核運動・反基地運動などに「適当な支援」を与えていると見るべきでしょう。

中国が、沖縄などの反基地運動や、本土の反原発・反核運動に「適当な支援」を与えているであろうという観測はかねがねありましたが、それを認める中国側文書が確認されたのはこれが最初です。

そして最後にこうしめくくっています。

「(日本の核武装に対して)軍内の各部署では訓練を強化し、有効な反撃を加えるられるように日頃から備えておかねばならない。」

これは間接的ながら、中国が軍事的にもさらに強い圧迫を日本に加えるという意思表明だと受け止められています。

勘違いだとしても、これがわが国の「核武装準備」を見る中国の眼だということを、私たち日本人は知っておくべきでしょう。

日本が結果として取ってしまった「寸止め核武装」という状態が、私たちの想像の範囲を越えて、わが国を「準核武装国」に押し上げてしまったということは、皮肉です。 

と、ここまでが起承転結の枕でしたが、体調がさえないために本日はここまでで失礼します。

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日本は核兵器を開発できるか?その技術的難点とは

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核武装テーマについて続けていますが、沢山のご意見ありがとうございました。 

今日は技術的なことを中心にお話します。 

日本は技術先進国だから、核武装は簡単だという俗論がありますが、そう簡単ではありません。 

管直人氏は川内原発の宣伝カーの上で、こんなアジ演説をしていました。

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「原子炉はもともと核兵器製造に使うプルトニウムを作るために開発されたものだ。そして70年前にプルトニウム型原爆が長崎に落とされたのだ。
私はプルトニウムと人類は共存出来ないと考えている。そうしたプルトニウムを新たに生み出すこと自体が人類を危険に晒すことだ。原発がプルトニウムを作ったんです」

 この人の無知蒙昧ぶりにはかねがね驚かされますが、軍事用原子炉と商業用原子炉が炉の構造自体からして違っていることを知らないようです。 

従って作られるプルトニウムも種類が違います。 

核兵器に使用できるプルトニウムは、純度90%台後半の高濃度Pu239だけです。  

一方、民生用原発から出るプルトニウムはPu240で、これはそのままでは軍事転用はできません。  

では、この軍事用プルトニウムを、日本はどれだけ保有しているでしょうか。

世界の核分裂性物質の量 - 核情報によれば、日本はゼロです。 

念のためにお断りしますが、民生用Pu240からまったく核爆弾が製造できないわけではありません。 

2005年5月の国連におけるノーベル賞受賞者らによる声明によればhttp://kakujoho.net/npt/ucs_npt.html 

「テロリストも、民生用のプルトニウムを使って強力な核兵器─少なくともTNT火薬換算で1000トン(1キロトン)の破壊力を持つもの─を作ることができる。」

広島級の約3分の1ていどの破壊力を持つ核爆弾は、民生用プルトニウムからも製造できます。

これをネタ元にして、反原発・反核論者たちは、「日本がプルトニウム備蓄して核爆弾を作る気だ」と主張しています。
http://kawasakiakira.at.webry.info/201507/article_14.html

ナンセンスです。それは「できる」というだけで、軍事的合理性を考えない妄論です。

日本が核武装をする場合、製造するのは戦術核ではなく、戦略核ないしは準戦略核です。

戦略核を作らねば、相手国の核兵器に対しての抑止力にはならないからです。

日本が本気で核抑止力を持つならば、日本に核兵器を照準している中国と北朝鮮の心臓部を一撃で壊滅させねばなりません。

そのためには、たとえば米軍が運用しているMk85核爆弾は約8メガトンですから、その程度の破壊力が必要となります。

メガトンとは核爆弾の爆発力の単位で、TNT火薬換算で100万トンのことです。

ですから1キロトン級原爆などのようなテロリストの凶器をいくら作っても、軍事用には無価値なのです。

またPu240は不純物が多く、不発の確率が非常に高いために、こんなもので軍用核爆弾を製造する国はありません。

反原発・反核論者たちは、日本人がスーツケースに不発かもしれない手製原爆を入れて、平壌や北京に持ち込むとでも思っているのでしょうか(失笑)。 

では次に仮になんとかして核爆弾を作ったとします。

しかしまだ高いハードルがあります。それが核実験です。

核実験をしないと、スペックどおりの性能がでるのか、不具合がないか検証できません。

考えるまでもなく、日本国内に核実験場などができる場所はありませんし、外国が貸してくれるはずもありません。

そこで出てきたのが、コンピータ・シミュレーションで、なんとかできるのではないかという説が他ならぬ中国のメディアから出てきました。

中国城市安全研究所副所長の楊承軍教授の説です。http://news.searchina.net/id/1584694?page=1

コンピュータ・シミュレーション核実験とは、臨界前核実験のことで、実際の核爆発を伴わずにバーチャルにやってしまおうということで、既に核保有国は実用化しています。

楊氏によれば、日本はアブナイ潜在的核保有国で、すぐに中国を抜くぞと脅かしています。

①日本には世界最大のヘリカル型核融合実験装置があるなど、核融合技術で世界一流。
②核爆発実験をしなくても高性能のスーパーコンピュータによるシミュレーションで核兵器を作る能力がある。
③日本はミサイル搭載用の核弾頭を開発する能力もあり、極めて短期間のうちに、「世界第3位の核兵器保有国」になれる。
④日本が核兵器を保有した場合、西太平洋地区、とくにわが国の安全に対する重大な脅威となる。

●核弾頭保有数(2014年現在)
・1位ロシア・・・8000発
・2位米国 ・・・7315発
・3位フランス・・・300発
・4位中国  ・・・250発
・5位英国  ・・・225発

つまり、楊氏は日本は中国を越える核兵器の保有が短期間で可能だと言いたいようです。

①はほんとうです。日本の核融合技術は水爆の技術とダブりますが、後述するように原爆と同じ技術的ネックを抱えています。

④の、日本が核兵器の核兵器の運搬手段を保有しているというのも事実です。

かつてはH2型ロケットしかなく、軍用ミサイルには不適格でした。

ペイロード(搭載量)は大きいのですが、なにぶん液体燃料ですので発射まで時間がかかりすぎるのです。

とろとろと発射台で燃料を詰めていたら、返り討ちにあってしまいます。

軍用の核ミサイルはすべて固体燃料です。

ところが、これが日本には存在します。

2年前、日本独自技術で作り上げた固体燃料ロケット「イプシロン」です。これは素晴らしいロケットです。
イプシロンロケット - JAXA|宇宙航空研究開発機構

Photohttp://www.isas.jaxa.jp/j/column/epsilon/05.shtml

このイプシロンは、人工知能を有しており、自ら数万パーツの部品の不具合をチェックし、LAN(ローカルエリアネットワーク)で自己診断してしまいます。

これは世界最初の技術で、すごいぞ、JAXA!

この自己診断機能により発射人員はわずかで済み、大規模な発射基地は不要となりました。

その結果、打ち上げ費用は30億(目標値)という驚異的な費用圧縮に成功しています。

こんな素晴らしい夢を満載したロケットに、核爆弾を積むと言い出したらJAXAのロケット技術者は号泣するでしょうね。

日本のロケット技術者は世界で唯一、平和目的のみのロケットを作れるので、世界中の同業者からうらやましがられている存在だからです。

しかし、世界でもこれほどまでに潜水艦発射型核ミサイルに適したロケットは存在しないのも、悔しいですが事実です。

問題は、②のコンピュータ・シミュレーションで、実際の核実験に置き換えられるかどうかです。

この楊氏の説は半分がほんとうなので困るのですが、半分はほんとうです。

米国やフランスは既にはスパコンで臨界前核実験をシミュレートする技術が確立しています。

しかし、ではなぜかつてフランスが臨界前核実験の技術を持っていながら、世界の批判を尻目にしてムルロワ環礁で核実験を強行したのでしょうか。

それはコンピュータに入力する実データが必要だったからです。

実データは、現実に核爆弾がどのように作動し、どのような破壊力をもつのかは実験せねば得られません。

日本に実データがあるはずかありません。外国から提供を受けるしかないわけです。

米国がくるれはずもありません。

ですから、日本に世界一のスパコン技術があろうとなかろうと、元種がないのでは手も足もでません。

というわけで、考えにくい想定ですが、米国了承の下に核兵器を製造するならば、わが国は核兵器とその投射手段の基本技術だけは有しているから可能というわけです。

しかし、それだと米国からの自立と独自核抑止力獲得の目標ははかなく消えますね。

というわけで、問題は政治的な課題になっていきます。

それについては次回。

 

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平和国家2・0

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核兵器をめぐって何回か考えてきました。 

すると、結局ひとつのことに突き当たります。 

「日本は<平和国家>であることを止める意志を持てるのか?」という疑問です。 

世界の中で、「核廃絶」を唱える道義的資格を有するのはわが国のみです。 

忘れがちですが、日本は国際社会の中で、国際協調派のアイコンなのです。 

よくイラク復興に従事した自衛隊が、サマーワ・キャンプでオランダ軍によって一方的に守られていた、ということのみが話題になりますが、オランダ軍は自衛隊を驚嘆の眼で眺めていました。 

それは、紛争地において力による抑止だけではなく、地元の人々の要求をよく聞き、危険をおかして民生復興に励む自衛隊に、損害が1名も出なかったことです。 

それは、イラクにおいて軍用犬を連れて宗教施設に乱入するような米軍と対象的でした。 

イラクに派遣された多くの軍隊の中で、地元から帰らないでほしいという声を貰った唯一の外国軍は自衛隊のみです。 

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オランダ軍は自衛隊の地元から信頼されようと努力する姿勢に影響を受け、積極的に取り入れます。 

そして自衛隊から学んだオランダ軍は、多国籍軍においてもっとも少ない人的被害しか出しませんでした。 

これが私たち日本が誇る<平和国家>モデルです。 

先日もコメントで「米国は核を持ているのに、なぜ自分たちはもてないのか」というものがありましたが、現実にそのような核新興国が現れました。 

イランと北朝鮮です。

あるいは既に核を保有している、イスラエル、パキスタン、インドなどの国です。 

その時に、「いやアメリカに核を捨てさせるためには、核をこれ以上拡散してはいけないのだ」と諭すことができるのは、本来わが国だけしかいません。 

私たちの国は米国とは違ったアプローチをします。

それは「私たちはあなた方の国の発展に協力するから、その上で核不拡散を進めていきましょう」というやり方です。

もちろん、<核クラブ>と呼ばれる米露英仏中に対しては、厳しい核軍縮のロードマップを提案せねば片手落ちです。

ある段階で核をゼロにするために、今どうしたらいいのか、具体的に何から始めたらいいのかを計画せねばなりません。

もちろんいきなりゼロにするのは空論ですから、段階を踏まねばなりません。

信頼醸成から始めて、核兵器の情報開示などやるべきことは山積しています。

その時に、私たちにとっての「武器」は核兵器を持つことではなく、<平和国家2・0>を提起することです。

今までの引きこもり型の<平和国家>ではなく、核軍縮、核拡散について平和へのイニシャチブをとれる国になるべきです。

私は<平和国家>ブランドは捨ててはならないと思います。

ただし、それは丸腰で中国・北朝鮮の核に怯えることを意味しません。

と同時に、独自核武装もまた現状において不可能です。

私もいろいろと考えてみましたが、結論としては独自核武装すべきではありません。

その瞬間、日米同盟は瓦解し、悪い意味での「普通の国」に堕するからです。

もし独自核武装の手段を取るなら、それが成立する前提は唯一、日米同盟が崩壊していて、この手段しかないという最悪の状況です。

つまり、独自核武装とは最悪時緊急オプションなのです。

長くなりますので、その理由についての説明は別途にします。

現実の世界は、先日書いたように<核の均衡>で成立しています。

そして彼ら核保有国は、いわば千日手のように拮抗して膠着してしまっています。

これを解きほぐし核廃絶へのロードマップを作ることは、本来わが国が課せられた歴史的使命なのです。

その上で眼前の脅威を直視し、現実的な「適応」をどのようにしたらよいのか考えたいと思います。 

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名無しさんに答えて 「核の傘幻論」の間違い

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名無し氏から、「核の傘幻論」のコメントをもらいましたのでお答えします。

「キッシンジャーや元CIAのターナーは核の傘はないと言っていますがどうでしょう。そもそも自国を危険にさらす核の使用を他国の為に行うか疑問もあります。いずれにしても中国あたりが使うのは現実的ではないですよね、核兵器はある意味やけくそ兵器だと思うので。」

名無し氏のコメントは、もっぱら孫崎享氏が広めている「核の傘ない」論がネタもとです。

ご承知でしょうが、孫先氏は下の写真のように、鳩山氏の導師でした。
「核の傘」はない・キッシンジャーも元CIA長官ターナーも言明:孫崎享 ... 

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孫崎氏によるキシンジャーの要約です。 

「日本は自己の防衛で、米国の「核の傘」があるという幻影に取りつかれている。 そんなものはない。
アメリカが日本にどういっているかの問題ではない。
米国の戦略家が米国国内で如何なる発言をしているか、そもそも現代の核戦略がどうなっているかを学べば米国が日本に与えているという「核の傘」はない。
キッシンジャーは、代表的著書『核兵器と外交政策』の中で、核の傘はないと主張した。
・全面戦争という破局に直面したとき、ヨーロッパといえども、全面戦争に値すると(米国の中で)誰が確信しうるか、米国大統領は西ヨーロッパと米国の都市
五〇と引き替えにするだろうか。
・ 西半球以外の地域は争う価値がないように見えてくる危険がある 。
キッシンジャーは日本に対する「核の傘」はあり得ないと指摘している。」

この「核の傘幻論」を発信しているのは、かつてはキシンジャー、今はサミュエル・ハンティントン、ジョン・ミアシャイマー、スティーブン・ウォルトなどの学者たちです。

孫崎氏は外交官だったという経歴にものをいわせて、彼ら米国の学者たちの言説の一部を切り取っています。 

かみ砕いて説明します。 

この「幻論」の人たちの持論は、「オフショア・バランサー」戦略と呼ばれていています。 

この「オフショア」とは沖合(海)という意味です。直訳すれば、「海を隔ててバランスを取る」戦略です。 

この戦略は米英の国際戦略で一貫している考え方で、ことさら新しいものではありません。 

これは大陸において世界覇権を目指そうとする新興覇権国が勃興した場合、米国が直接に乗り出すのではなく、経済や外交的手段、時には軍事的圧力も交えながら、周辺国によって封じ込めたり、牽制したりすることです。

この成功例が、冷戦期のNATOです。 

同じ冷戦期に、アジアでは米国主導によってASEANと、日米同盟が作られました。

もちろん、今のASEANのように仲良しクラブではなく、その目的は一義的にはソ連、二義的には共産中国の封じ込めでした。 

冷戦期には「敵」の脅威が見えやすかったので、これらの地域安全保障システムはうまく機能しました。 

しかし、ソ連が消滅すると同時に、まるで地獄の釜の蓋を開けたように、世界各地で民族対立、宗教対立が起き、世界テロリズムが台頭します。 

アジアにおいて米国が頼りにできる軍事力・経済力を持つ国は日本しかいなかったのですが、日本はご承知のようにナイーブな少年のようなありさまです。 

なにせつい最近まで、海自と共同行動をとっている米艦が攻撃を受けても守れなかったような国で、それを修正しようとしただけで「戦争法案」「ファシスト」と呼ばわりする人が沢山出た国でしたから。 

そして、ヨーロッパでは復活したロシアがクリミアを奪い、アジアにおいてもまた大きくバランスが崩れ始めようとしていました。 

いうまでもなく、リーマンショック後の国際経済の大混乱を襲って、中国がめざましい台頭をし、覇権主義の意志を隠そうとしなくなったからです。 

アジアにおいて米国は、バランスを回復するために、中国とある時は協調し、ある時は対立しながらバランスを取り戻そうとしてきました。 

よく誤解されますが、米国はオバマの優柔不断な性格もあって、グラついているような印象を受けますが、この「オフショア・バランシング」戦略自体は一貫しています。 

協調している時にはG2(二大国)路線に見え、中国が過度に図に乗ると一転してそれを抑えようとしてアジア・ピボット(アジア回帰)路線に入るというわけです。 

これを日本のような中国の脅威にさらされている前線国家からみれば、グラつきと捉えがちですか、実は一貫しているのです。 

さて、以上の米国の戦略の基本を頭において、核戦略について考えてみましょう。 

ここでもリスク評価に似た考え方が使われています。それが「相互確証破壊」という概念です。 

相互確証なんじゃらと言われてもチンプンカンプンでしょうから、てんびんを想像して下さい。 

Photo片方の皿には「核攻撃によって得られる利益」が、そしてもう片方の皿には「核兵器を使ったことにより生じるリスク」が乗っていると思って下さい。 

前者の利益が後者のリスクを上回らない限り、核攻撃をすると「損」です。 

ですから、この両方のてんびんの皿が同じ重さになるように、核抑止力と反撃可能な核の量はイコールなのです。 

この重さがどんどんと比例して大きくなり、極限を迎えて減少に転じたのが現在です。 

Photo_3ミニットマンⅢ 大陸間弾道弾

では、孫崎氏が言うような「日本が核攻撃を受けても、米国は反撃しない」という論理は正しいのでしょうか。 

間違っています。孫崎氏はこの「相互確証破壊」理論の基本をわかっていません。 

あくまでも、この二つのてんびんのバランスは、相互の国家の破滅を担保にして釣り合っているのです。 

だから、核兵器は別名「使えない兵器」、あるいは「政治的兵器」とまで言われています。

しかし、これが崩れれば、米国あるいは中露もまた核戦争のリスクに直面します。 

なぜなら、核兵器が「使えない兵器」から、一気に「使える兵器」になってしまうからです。 

このバランスが崩れた時がいちばん危ないのです。 

それは安易に使ってみたい衝動にかられる国、あるいは安易に意思決定できる独裁者が登場するからです。 

実は、核拡散が止まらずに、危険な独裁者の手に核兵器が渡った現在がそうです。

たとえば、彼らがこう思ったとします。 

「たとえトーキョーが核攻撃を受けたとしても、米国はロスやワシントンDCを犠牲にしてまで報復はしやしないさ」

そして、核ミサイルのボタンを気楽にポンっと押してしまうかもしれません。 

だから、責任ある核保有国は、こういう手合いが生まれないように、「わが国は先に核兵器を使いませんから、安心して下さい」(核先制不使用論)などという誘い水は言わないのです。

そして建前だといわれようがどうしようが、米国政府は公式に「核の傘は必ず提供している」と言い続けているのです。

つまり、<核の均衡>が取れているかぎり、核抑止力は厳然として「そこにある」のです。

米国は言外に、「核の傘がないというなら、では試して見ますか」と米国は言っているわけです。

ですから、そもそも東京とワシントンを並べるような「核の傘幻論」の前提の比喩自体が、ナンセンスです。

確かに前述したように、現在の米国の国際政治学者の中には、キシンジャーのような「米国の本音は日本なんか守る気がないんだ」と言う者は一定数います。

その発言の多くは、かつての米国の対中政策の協調局面で発せられたものです。

そしてそれは、米国の本音の一部でもあります。

しかし、日本にとっては相互確証破壊に基づいた「核の傘」が、仮に「幻」であっても現に「そこにある」というプレゼンス(存在感)が重要なのです。

このへんのニュアンスは、沖縄の米軍にも通じることです。

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ちなみにヘンリー・キシンジャーは、中国から多額の金を貰って中国の利益につくすチャイナ・ロビイストです。

彼の意図は、日本に米国との同盟に不信感を持たせて、分断を図ることです。

<中国vs日米>ではなく、<中国vs日本>という二国間関係に取り込むことです。

孫崎氏の持論もまた、日米同盟否定・対中融和ですから、こんな時にキシンジャーを引っ張りだしたのです。 

では、もし「核の傘」がほんとうに幻であるならば、日本はどう対応したらよいでしょうか。

これについては長くなりましたので、次回に回します。

 

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日曜写真館 灯台の孤独

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この灯台を見ると、なぜか吉田沙保里さんを連想してしまいます。
ご苦労さま。本当にありがとう。

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核兵器先制不使用問題 理想だが核の重しをとるには早すぎる

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核兵器先制不使用問題について、首相が懸念を米太平洋軍司令官に言った言わない(外務省は否定)でもめています。
 

お約束で、「反骨の元外交官」の天木直人氏などは、「この恥さらしめ」などと叫んでいるようです。
天木直人 核先制不使用に反対していた事を米紙にばらされた安倍首相の恥 |

この人はほんとうに元外交官だったのでしょうか。核先制不使用の意味がわかってしゃべっているのか怪しいものです。

まず核先制不使用の意味を押さえておきます。

よく勘違いされて使われるようですが、そもそも「核先制不使用」という概念は、<核兵器vs核兵器>において使われる概念ではありません。

国際社会をだまし続けてとうとう核保有国になった北朝鮮や、ウクライナのように独立によって核保有国になったような国々に対して、核兵器を撤去させる時に出てくる概念です。

オバマは<核兵器vs核兵器>の範疇で、「核兵器先制不使用」を発言したわけではないのです。

どうやら、今騒いでいる人たちはこの<核兵器vs核兵器>の範疇で考えているんじゃないのかな。

これを理解するには、前提として、好むと好まざるとに関わらず、私たち人類は核の傘の下で生きているという現実を知らねばなりません。

現代社会は、核攻撃をすれば、必ず核兵器による報復を受ける<核の均衡>が成立しています。

仮に敵の大都市、地上発射の弾道ミサイル基地を破壊したとしても、海中深く潜む戦略原潜から発射されるSLBM(海中発射弾道ミサイル)までもは阻止できません。

この核の二枚腰があるために、自国が滅亡することを覚悟せねば、核ミサイルの発射ボタンは押せないわけです。

まことにクレージーな発想で、その名も「相互確証破壊」( Mutual Assured Destruction MAD)と呼びます。
相互確証破壊 - Wikipedia

しかし、このマッドな<核の均衡>がガッチリと出来上がってしまったために、大国間は通常兵器での戦争すら起こすことすらも困難になってしまいました。

なぜなら、通常兵器による戦争がエスカレートして核戦争になるのが怖いからです。

ですから戦後において、米ソの通常兵器による大国間戦争すら起こらなかったのです。

冷戦期に運用されていた米国の大陸間弾道ミサイルは、悪趣味にも「ピースキーパー」と名付けられていました。

本人にとって反吐がでそうなネーミングですが、それがポスト・ヒロシマの現実なのです。

ところが中国は、米国に対する<核の均衡>が未成立です。

Photo晋級弾道ミサイル原潜(SSBN)。JL-2固体燃料中距離弾道ミサイル(SLBN)を12基搭載する。中国海軍戦略原潜艦隊の中核。China Military News

中国の戦略原潜は性能的にも難がある上に、中国大陸周辺は大陸棚が続くために、それが潜む深く広い海域がありません。

ですから、中国が宮古島以南の海をめざしているのは、この戦略原潜を深く広大な太平洋の海底に放ちたいからです。

尖閣問題を中国が石油が欲しいからだ、などと寝ぼけたことを言う人が今でもいますが、トンチンカンです。

尖閣海域の石油資源は貧弱です。

ほんとうの理由は、中国が完成を急いでいる核戦略のためには、絶対に太平洋に核ミサイルを積んだ戦略原潜を自由に潜らせておく必要があるからです。

尖閣はその門柱に当たる位置にあるから、中国は取りに来ているわけです。

それはさておき、現代の「平和」の裏舞台とは、価値観は別にして、このような<核の均衡>によって成り立っていることを忘れてはなりません。これが現実なのです。

話をオバマが言い出した「核兵器先制不使用」に戻しましょう。

この核兵器先制不使用の概念は、逆の「核兵器先制使用」が現在の考え方なことを理解する必要があります。

私たち被爆国の神経を逆撫でされるような気がしますが、こういうことです。

Photo_2RS-12Mトーポリ (大陸間弾道ミサイル)

それは「核兵器先制使用」という考え方が改めてテーマとなったのは、ソ連が崩壊してウクライナが独立したときの頃の話です。

当時ウクライナは、旧ソ連軍の保有する大量の核ミサイルを持っていました。

ソ連という国は、面白いことには、中国の大漢族主義とは違って、大ロシア主義をとっていませんでした。 

鷹揚に他民族の共和国に戦略ミサイル発射基地や、スホーイ戦闘機の工場などを分散させていたのです。

そのために、それらの共和国が一斉に独立すると、思わぬことが起こりました。

ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシなどの小国が核保有国になってしまったからです。

しかもこれらの国々は揃って政情は不安定です。

国際社会は、いつ何どき独裁者が現れて核ミサイルを発射するか、あるいは密売してしまうかを真剣に心配しました。

実際にも、核爆弾の密売事件はあったようです。

ここで、これらの国の危ない核ミサイルの牙を抜くために考えられたのが、「消極的安全保証(negative security assurance  NSA)」といいます。

つまり、「ボク、核ミサイル持っちゃった。ボクの権力を脅かすとホントに撃っちゃうからね」というどこかの独裁者坊やみたいなのが現れる前に、「核兵器を手放しても、核攻撃はしませんから安心してくださいね」と呼びかけたのです。

ウクライナ独立時の、米欧露による「消極的安全保証」を約束した協定文書です。

●ウクライナへの核兵器「消極的安全保証」
The United States of America, the Russian Federation, and the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland, reaffirm, in the case of the Ukraine, their commitment not to use nuclear weapons against any non-nuclear-weapon State Party to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons, except in the case of an attack on themselves, their territories or dependent territories, their armed forces, or their allies, by such a state in association or alliance with a nuclear weapon state.

[大意]
ウクライナが核不拡散条約上の非核兵器国である限り、米英露はウクライナには核兵器を使用しない。
しかし、ウクライナが核兵器国と提携したり同盟して、米英露やその同盟国に攻撃をしてくるような場合には、核兵器を使用する可能性を留保する。

米英露は、ウクライナが核を放棄して非核国になったとしても、核保有国と連携して攻撃を仕掛けて来る場合、容赦しないからね、ということです。

容赦しないとは、「核兵器を使うかも知れないからね」、という含みです。

「含み」というのは、外交的含意というやつで、必ず使う、必ず使わないと自分で外交的手を縛ってしまうのではなく、使用する可能性を保留するという意味です。

これが「消極的安全保証」(NSA)の起源のニュアンスです。

今のウクライナに置き換えてみましょう。

ロシアから見れば、ウクライナは、親米欧勢力がクーデターで政権を握って、それが正当な選挙で選ばれた親露政権を倒し、東ウクライナを攻撃しているわけです。

あくまでもロシアから見ればですが、これは現政権の裏には米国やNATOがいるのですから、「核保有国との連携・同盟」に当たります。

ならばウクライナに対する核攻撃も、この協定上は合法化し得ることになります。

オバマに対してケリー国務長官が反対したのは、直接にはこの事態に対する懸念があったからだと言われています。

現在の複雑に絡まりあった不安定な国際情勢下において、この核兵器先制不使用と米国が言うにはまだ早いと、リベラル派のケリーすらも考えたのだと思います。

東アジアにおいて敷衍すれば、仮に北朝鮮に核兵器の放棄を呼びかける場合には、この核の「消極的安全保証」を交渉で使わざるをえないでしょう。

しかし、北朝鮮がその話に乗ったとしても、中露との連携・同盟の後ろ楯があって、攻撃をしかけて来た場合は、 どうしましょう。

その時には、そんなバカなことをしたら、核兵器による報復がありえるのだと釘を押す必要があります。

そのような押さえがないと、核は果てし無く拡散の連鎖をつづけるでしょう。

残念ながら、ケリーが憂慮するように、人類は核兵器先制不使用という扉をあけるにはまだ早いのです。

米国の同盟国からも、一斉に憂慮の声が上がっています。
NHKニュース8月14日http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160814/k10010635221000.html

「オバマ大統領が核兵器の「先制不使用」を宣言することを検討しているとされていることについて、日本や韓国、それにイギリスなどが懸念を示していて、先月開かれた国家安全保障会議で、ケリー国務長官が、アメリカの核の抑止力に依存している同盟国から懸念が出ていると指摘したということです。
また、会議でカーター国防長官は、「先制不使用」を宣言すればアメリカの抑止力について不安を招き、独自に核兵器を開発する同盟国が出てくる可能性があるとして、反対したとしています。」

このカーターの発言で、名指しこそ避けているように、「不安を抱いて独自に核兵器を開発をする同盟国」とは、どの国でしょうか。

そうです。それはわが日本のことです。

ですから、安倍首相が核兵器先制不使用に反対したのは、「核戦争を肯定するファシスト」だからではなく、正反対にこのような米国の懸念を否定したことになるのです。

■核先制不使用の説明が途中で混乱していたために、修正と補足をしました。いつもすいません。午前8時 

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尖閣中国公船・漁船侵入 何ができて、何ができないのだろうか?

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県の海域に大量の外国漁船の侵入を受けながら、誰を恐れてか無言の業を貫いている翁長知事とは対照的に、宮古市議会が抗議声明を出しました。 

本来県がやらねばならないことを、日常的に中国漁船の大量侵入にさらされている地元自治体にやらせてどうするのですか。
関連記事は欄外 

辺野古移設に反対するのもけっこう。米兵犯罪に抗議するのもけっこうです。ただし、県知事としての責務を果たしてからにして頂きたいものです。 

いつもは米兵の酒酔い運転にまで事細かく抗議する翁長知事が、200隻を越える外国漁船と大量の中国公船の侵入に沈黙するとは、二重規範にもほどがあります。 

もし、侵入した中国漁船に乗り組んでいるといわれる海上民兵が武器を使用して、地元漁船を攻撃でもしたら、その時はまた女性殺害事件の時のように、「私の責任だ」とうなだれてみせるのでしょうか。 

翁長知事よ、知事としての仕事をしろ! 知事は運動家じゃないぞ。

さて、中国漁船の侵入についてもどかしく思うコメントも多く頂いています。 

今、日本が何ができて、何ができないのか考えていきましょう。 

まず、この尖閣諸島水域で、海保の巡視船が侵入した中国漁船を取り締まれるかどうかです。

よく、侵入した中国漁船をなんと58隻も爆破してしまったインドネシアと比較されます。http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160819-00000711-fnn-int

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私も個人的にはあの程度やらないと無法者には通じないと思っていますが、残念ですが不可能です。 

たしかにあの尖閣諸島周辺海域は、日本の領海であることは間違いありません。

「いやあそこは中国領海だ。日清戦争で奪ったんだ」などと言う方は、これ以上読まなくてけっこうです。

では領海に他国の船舶が侵入した場合、直ちに「領海侵犯」事案として実力で排除していいのでしょうか?

できません。できるのは、公船と軍艦だけです。

領海侵犯が成立するためには、以下の条件が必要です。

①侵入した船舶が、政府公船であること。

民間船の侵入は単なる不法入国の範疇ですので、扱いが別枠になります。領海侵犯という概念は、あくまでも政府公船・軍艦が対象なのです。

②侵入した外国公船に対しては、海保は国際海洋法に則って無害通航権の有無の判定を行います。

無害通航に当たらないと領海国が判断した場合、初めて排除宣言が可能となります。

以上二つの手続きを経て、なおも外国公船・軍艦が出て行かない場合、初めて領海侵犯による排除ができます。

実にやっかいですが、日本政府が領海侵犯とした事例すべて、この要件を充たしています。

Photo_3コラージュによるイメージです。

では、民間船が日本のEEZ(排他的経済水域)で違法操業した場合はどうでしょうか。

日本と中国は日中漁業協定を結んでいます。実に細かく水域がゾーニングされているのでご注意ください。
日中漁業協定 - Wikipedia

Photo_4宮古毎日より引用

原則としては、他国のEEZ内で操業する場合には、相手国の許可が必要です

当然、相手国漁船を取り締まることもできます。

ただし、日中漁業協定によって北緯27度以北は「暫定措置水域」として、互いに許可なく操業が可能です。

問題はこの北緯27度線以南です。実はこの27度以南の水域は日中漁業協定第6条(b)によって棚上げとなっているのです。

つまり尖閣諸島周辺水域は、日中漁業協定の枠外であって、海保は領海にまで侵入されない限り、退去勧告すらできないわけです。

ですから、今回の日本政府の中国への抗議はすべて、「中国公船の領海侵犯」に対してのみ行われているはずです。

このような約束を厳守する日本と違って、今回、中国が北緯27度以南の暫定水域にまで大挙して漁船を入れてきたのは、「お互いにもめたくないから棚上げにしておこうね」という大人の対応を、中国が一方的に破ったことになります。

こんな無法な中国公船など、海上警備行動を発令して海自が打ち払ってしまえ、という意見も聞かれます。

気持ちは分かります。今回の現状を見てみましょう。

押し寄せた中国公船は15隻で、海保は1隻につきマンツーマンで挟み込むようにして2隻で対応しています。

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この海域は、海保第11管区海上保安本部が担当しています。

「尖閣警備専従部隊」を整備して、今年2月には大型巡視船「いぜな」「あぐに」を就役させ、大型巡視船12隻相当、ヘリコプター搭載型巡視船2隻の計14隻体制で日夜対応しています。

ちなみに辺野古の海上警備も第11管区の仕事ですから、カヌー部隊の諸君たち、ただでさえ日本一忙しい第11管区の「海猿」たちをこれ以上、下手なカヌー遊びで煩わせないでほしいものです。

こんな時期にそんなことばかりやっていると、「後方攪乱」と言われますよ。

それはさておき、今回のように一斉に15隻もの中国公船によって飽和攻撃された場合、当然のこととして海保は対応不可能になります。

今は他の管区の応援で凌いでいますが、今後もなおこのような公船と漁船の飽和攻撃が続くなら、予算を倍増してでも2倍以上の体制にする必要があるでしょう。

イージス1隻諦めれば可能です。

海自は今ていどの状況で、出動すべきではありません。

何が中国の意図か、よく考えて下さい。

中国の狙いはエスカレーションなのです。

海保を挑発し、海自を引きずり出して小戦闘を交えて、この水域が紛争地域だと宣伝することが目的です。

ここで海自が中国公船を排除すれば、中国の思うつぼです。

それは日本が先に軍隊を投入したことになるからです。

当然、中国は、「日本が中国の領海周辺で軍事挑発を開始した」とプロパガンダするでしょう。

中国軍艦は、先日接続水域にまで侵入しましたが、原則として北緯27度線以北の海域を巡回しています。

この状況で、日本が先に27度線以南の水域で、海自艦艇を出せば、日本が先にエスカレーションの階段を登ったと国際社会は理解します。

まさに昨日の記事にも書いたように、米国からさえ、「このように行動したら、結果はどうなるのか。どのようなメッセージを送ることになるのか」を問わない行動と非難を受けることになります。

とうぶん、イライラする神経戦は続きます。

ぶち切れないように、海保を応援していきましょう。 

                         ~~~~ 

■「中国船の尖閣接続水域への侵入 宮古島市議会が抗議決議
沖縄タイムス2016年8月18日
【宮古島】中国船が尖閣諸島の接続水域に繰り返し侵入しているのを受け、宮古島市議会(棚原芳樹議長)は18日午前、市議会臨時議会を開き、同水域への入域に抗議する決議案を全会一致で可決した。中国国家主席、中国駐日特命全権大使に郵送する。
 抗議決議は、尖閣諸島は「日本政府が国際法上正当な手段で日本の領土に編入し、歴史的にも日本固有の領土であることは明らか」と指摘。尖閣諸島周辺の接続水域や領海への中国船侵入に、「国際法を無視する行為は県民に強い衝撃を与え、漁業者へ大きな不安と恐怖をもたらしている」と訴えている。
市議会は尖閣諸島周辺の警戒監視体制の充実や周辺海域で操業する漁業者の安全確保などを求める意見書案と、県や県議会に領土・領海を守る取り組みを強化するよう政府への働き掛けを求める要請決議案も全会一致で可決した。意見書は内閣総理大臣や外務大臣、国交大臣など6者に、要請決議は県知事、県議会議長に郵送する。」

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センカクをめぐる米政府の現在地

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仮にヒラリーが大統領になった場合、どのような尖閣への対応があるでしょうか。

まずは、2010年ヒラリーが国務長官の初期に日本を訪問した際の、米軍のとある司令官のインタビューです。 

実名、階級、職名などはわかりませんが、おそらく海兵隊の高位の司令官と思われます。 

インタビュアー、「中国が尖閣を侵略した場合、第3海兵遠征軍はなにをするのでしょうか?」 

「わかりません。それは政府が決めることです」

さらにインタビューアーはこう追及します。 

「尖閣は日本の領土ですよ」 

「うーん、それはアメリカ政府にとって議論の余地あるところです。そうとはいわないまでも、すくなくとも明確になっていません」 

「司令官は、自衛隊が尖閣を守るのを、第3海兵遠征軍を支援するかどうか分からないということでしょうか」

「そのように命令されれば、第3海兵遠征軍は必ずそうします」 

軍の司令官に聞くのが間違っているのです。

このインタビューも、実際はもっと長いもので、途中で司令官の苦慮を見かねた国務省のスタッフが助け船を出しています。

とまれこれでわかることは、「センカク」対応はイエスかノーかと簡単に答えられるようなシンプルなことではなく、デリケートな問題だと米政府も軍も考えているということです。

では、尖閣諸島について、米国政府の見解の変遷を追ってみましょう。 

さきほどの米軍司令官のインタビューより10年ほど前の1990年代、クリントン政権時の駐日大使ウォルター・モンデール(元副大統領)の発言です。 

「尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」 

ほぼ同時期の、マイケル・グリーン元大統領補佐官の発言。 

「同盟国間であっても領土紛争には不介入・中立の立場をとる」

 2008年から国務長官を務めた、ヒラリーの側近である、カート・キャンベルの発言。

「日本の施政権下にある領域(=尖閣諸島)で、いずれか一方に対する武力攻撃があった場合、共通の危険に対処するように行動することを宣言する」

2010年9月23日、訪米した前原外務大臣に対する、ヒラリー国務長官の発言。

「(尖閣諸島)は明らかに日米安保条約(第5条)が適用される」

安心してはいけません。

これはあくまでも条約解釈上はそうだと言っているだけで、米政府が想定しているのは「いずれか一方に攻撃があった場合」です。

つまり尖閣周辺で、米国艦艇ないしは自衛隊に対して先制攻撃があった場合の話です。

それがわかるのは2012年9月、野田政権の尖閣国有化後の日中冷戦についてのヒラリー国務長官の2014年6月の発言です。

センカクの自衛のために、なにが必要なのかということについて、検討を進める際には、「もし我々がこのように行動したら、結果はどうなるのか」とか、「どのようなメッセージを送ることになるのか」と絶えず自問してほしい

この発言は野田首相の国有化に対しての、強い不快感の表明と取られています。

これは野田首相が胡錦濤に事前通告した際に強い拒否があったことを無視して国有化を進めたこと、そして米国になんの事前の相談もなかったことに対してです。

米国と中国から見れば、尖閣問題の微妙なバランスを破壊する徴発行為が、日本側からあったと理解したようです。

民進党さん、あなた方の政権が日中関係を冷え込ませ、さらには中国の尖閣海域への進出を合理化したのですからね。お忘れなく。

それはさておき、2012年12月2日。ヒラリーの個人用アドレスから流出したメールにあった、カート・キャンベルとのやりとり。

「日中は摩擦が長引けば、地域の安定を損なうとわかっていながら態度を硬化させている。(日中間の緊張を緩和させるために)双方の顔の立つ繊細な外交が必要だ」

それに対してのヒラリーの返信。

「(日中調停交渉を)前に進めて下さい」

そして2012年10月、現実にリチャード・アミテージ元国務副長官、ヒラリーが駐日大使に推したジョセフ・ナイ元国防次官などで構成される派遣団が、東京と北京を往復するシャトル外交を展開しました。

そしてこの調停は不調に終わります。

その後にヒラリーは、オバマ政権発足当初の中国への楽観的・融和的なものから、慎重かつ、警戒的なものに変化します。

その胸の内をキャンベルはこう代弁しています。

「中国がこの案件(尖閣についての領土主張)から下りないことがはっきりわかってから我々が(この問題に)出ていくべきだと思った。だからヒラリーも不快感を示し、センカク周辺での『力(軍事力)の表現と敵対的な行動』を心配している」

そして近年もっとも明確に、尖閣が日米安保の範囲内であることを言明したのは、2014年4月のオバマ訪日時の発言でした。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-e0a4.html

日本の安全保障に対する米国のコミットメントは絶対的であり、(日米安保条約)第5条は尖閣諸島を含む日本の施政権下にあるすべての領域を対象としている。」

とりあえずこれが、ヒラリーの現在地です。

この文言をそのまま信じるかどうかは、お任せします。

このように米国の「センカク」への対応は、揺れ動いているからです。

尖閣への米政府の発言も、どの時代に誰が言ったのか、その背景を見て判断してください。

よくテレビのコメンテーターで、「アメリカは尖閣について領土紛争には介入しない原則なので、手をだしませんよ」と言っている人を見ます。

確かに、1990年代から2010年前後の第1期オバマ政権までの米政府要人はそう言っていました。

しかし今まだそうか、と問われれは、違うと思います。そんなに単純ではありません。

逆に、絶対的に在日米軍が、自衛隊と肩を並べて戦ってくれるかと言われれば、それほど楽天的になれる日本人は少ないでしょう。

要は米国の尖閣への関与は、状況次第なのです。

米国政府は、中国の出方、日本の対応、南シナ海情勢、アジア諸国、インド、そして米中間の状況などという多くの変数を考慮してセンカク対応を決しています。

日本政府が、「もし我々がこのように行動したら、結果はどうなるのか」「どのようなメッセージを送ることになるのか」を考えず、自国の論理だけで動いた場合は、在日米軍が動いてくれると思わないことです。

ひとことで言えば、米国は揺れ動いているのです。

もし日本が中国の暴虐に対して軍事的反撃を試みようと考えて、なおかつ在日米軍の力を頼りにするなら、米国にとってウムを言えぬ状況を作りだすことです。

それしかありません。米国にとっての尖閣紛争介入の大義が必要です。それがないと、大統領は議会を説得できません。

そのために法整備などやることが山積しているはずです。

ですから、単純に米国は尖閣に介入しない、あるいは必ずオバマ訪日時の「第5条の範囲内」という言葉を信じるのではなく、あくまでも私たち日本次第なのです。

原則に忠実に、ただし慎重に。

■お断り 大幅に加筆しました。午後6時

■参考文献 春原剛
・『ヒラリー・クリントン-その政策・信条・人脈-』
・冒頭の米軍ンインタビューのソース ロバート・D・エルドリッジ
『誰が沖縄を殺すのか』

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在沖米軍撤収・縮小計画を「阻止」している反対運動

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嘉手納高校、残念でした。応援していたんですが。相手が優勝候補の一角でしたからね。

沖縄代表は、いつもほんとうに強いです。

さて昨日は盛んな議論でした。来ていらっしゃる方たちは9割が沖縄県人です。

このような各々の立場は置いて、このような討論の場が提供できることは、主宰者としてもうれしい限りです。

沖縄にはこのような自由な討論の広場がありません。

本来、県民の世論を二分する移設問題などは、容認・賛成の両論を討論する場を、地元紙が作るべきでした。

しかし地元紙自体が初めから容認論などないものとして扱っています。これでは健全な開かれた民主主義は生まれません。

あとの方の名無しさんが、こう書いていました。簡単にお答えしておきます。

「知事は予算を減らされば支持者を失う。
予算を増やした仲井真知事は、なぜ落選したのでしょうか。
宮古八重山に予算を注ぎ込めば、自衛隊配備どころか、米軍誘致するんじゃないですか?。」

仲井真さんについてはさんざん書いてきましたので、カテゴリーの「沖縄問題」を検索してください。十数本あるはずです。

宮古・八重山に米軍が基地を置く可能性はゼロです。

行く気がない米軍を、「誘致」する者はいません。

今、進行している事態は、正反対の在沖米軍撤収フェーズです。

米軍は先島どころか、本島からも段階的撤収する予定です。

それをどうして今後、先島まで展開するのでしょうか。ありえません。

自衛隊は段階的に離島防衛に力を入れていて、宮古には小規模の監視部隊である警備隊を置きますが、本格的な離島防衛が完成するのはそうとうに先の話です。

このような動きは中期的に見て、自衛隊は在沖米軍なしでもなんとかせねばならないからです。

よく沖縄の左翼陣営が「新基地」とプロパガンダするので勘違いされていますが、あれは実体分析としても間違っていますが、一種の催眠術みたいな言葉なのです。

あくまでも普天間移設は、都市部の基地をなくすことと、それに伴う過疎地への移設計画にすぎません。

また、計画そのものもシュワブ駐屯地の増設にすぎません。

ちなみに、私は海上埋め立て計画にはかねてから反対しています。

ハンセン敷地内の旧軍チム飛行場跡を使えばいいのに、名護市や土建業者との交渉のいきさつから、あのような奇怪な2本の短い滑走路というものになってしまいました。

また、高江のヘリパッドは北部訓練場の大規模返還に伴う、代替ヘリパッドの移設に過ぎません。

ヘリパッドがなにか知らないで反対している人がいて驚きましたが、航空基地ではなく、直径75mていどの着陸ゾーンにすぎません。

繰り返しますが、あくまでも現在進んでいる事態は、在沖米軍の段階的撤収と基地の縮小プロセスです。

何回も書いているとおり、前者の海兵隊本部9千名の兵員撤収は、既に日米合意がなされていて、2012年にはその経費の分担まで決まっています。

これが執行されないのは、普天間基地の移転計画も含めた包括的な負担軽減計画が、止まってしまっているからです。

理由は言う必要はありませんね。反対運動が的確に阻止しているからです。

北部訓練場返還計画も、仮にこのままの事態が進めば、同じく返還は的確に阻止されるか、先延ばしになるでしょう。

辺野古は辺野古だけ、高江は高江だけで見て、海を埋め立てた、ヘリパッドを作ろうとしてやんばるの木を切ったウンヌンと、ひとつひとつをブツ切りにするから見えなくなるのです。

「新基地」建設というと、なにかどんどんと基地を増殖させるように聞こえますが、まったく逆で、在沖米軍の段階的撤収・縮小計画プロセスにおける一断面にすぎません。

「新基地」という言葉に酔って実態を見ないと、「全基地撤去・海兵隊撤退」運動をしているつもりで、実は真逆の「基地維持・海兵隊固定化」となってしまいますよ。

日本の国益としては、在沖米軍が今いなくなると沖縄を守りきれませんから、それはそれでもいいのですが。

まぁ、それが政府が国策であるにもかかわらず、17年間もかけた上に、和解案などを出して妙におっとりしている理由なんですが。翁長さん、わかってやっているのかしら。

もしわかってやっているなら、さすが元自民党県連幹事長。大たぬきです。

では少し視野を拡げてみます。

世界の対中スタンスが、大きく変化しようとしていることに気がついていますか。

南シナ海の軍事膨張が、国際仲介裁判所によって厳しい判決が出たことが潮目になりました。

今まで、EU諸国はこぞって中国にいれあげていました。

ところが中国に揉み手をしていた筆頭格だった英国のキャメロン・オズボーン体制は崩壊し、残るはドイツのメルケルばかりとなりました。

オーストラリア、インドなども同様です。

元来が大陸国家である中国が大陸で軍事拡大すれば、他の大陸国家は刺激されます。

中国は陸地における膨張が既に限界に達したために、海洋に進出したのです。

そうなれば、太平洋における海洋国家群と国益が衝突するのは理の当然です。

しかも、中国は急ぎすぎました。短期間で海を埋め立て、人工島を建設し、そこに軍事基地と軍港を設けました。

すでに航空基地には格納庫が作られ、ミサイルが配備されています。

このような軍事膨張を急げば、衝突が起きるのは当然です。

おそらく中国は外国がどう思うかなどということは、まったく眼中になかったでしょう。

中国という国家の行動原理は、外国との関係ではなく、あくまでも国内の権力闘争の外延にすぎないからです。

大国になろうとしなければ、習は権力を失うし、陸上が手詰まりな以上、海洋に進出し、その支配力を上げる必要があったのです。

また、この海洋進出は国際需要の低下によって破綻危機に陥っている中国造船企業と鉄鋼業を救済するためでもありました。

しかし、習は余りに急ぎすぎました。そのために国際関係においてすべて失敗しています。

米国はかつてのようなG2はおろか、南シナ海で日本やインドと共同歩調をとって封じ込めようとしています。

コウモリ国家韓国ですら、THAAD配備に合意しました。

この状況で中国が譲歩すれば、習にその不満が集中し、手ぐすね引いている反対派によって引きずり降ろされます。

習が見つけ出した唯一の突破口が、米-印-日の最弱の環だと認識されている日本でした。

中国海軍に外周を守られて殺到した公船多数、海上民兵を乗せた漁船200隻を越える大軍団は、逃げ場を失った中国の死に物狂いの反撃なのです。

そのような大状況の中で、まるで中国と呼応するような動きをみせて「後方攪乱」に励む人たちの気が知れません。

ただ、当人たちの意志とは別に、このような阻止行動が、米軍基地縮小・撤収計画の最大の妨げになっているために、いまや在沖米軍を引き止める効果すら持ち出したのは、皮肉です。

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HN香川さんにお答えして 振興予算と基地

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HN香川さん。はじめの名無しさんですね。HNありがとう。ルールですから。

この方の質問です。

「工事が遅れるから振興費も減る。その工事とは何か?基地建設の工事でしょ?
沖縄振興予算の中味に基地建設も含まれている、そういうことでしょうか?」

ここに来られる方には常識でも、案外分かっていない人が多いようなので、説明したほうがいいのかと思います。

香川さん、ちょっと考えてみて下さい。よく公共投資と一口で言われますが、国の仕事と地方自治体の仕事は違います。

基地建設は、安全保障ですから国の専管事項です。当然、国の仕事です。

辺野古も、高江のヘリパッドも国が全額出しています。

もし、一緒にしたらどうなるでしょうか。

国が「ここに基地作るのでよろしくお願いします」と言ったら、その地元自治体が作ることになってしまいますね。

わけないです。政治的にはリンクはしていても、予算執行上はあくまでも別次元です。

今後、建設が本格化した場合、辺野古だけで3千億円ていどが予算措置されるでしょう。

さてよく「基地を返せ」と言いますが、所有権はとうに地主に返っていて、国が一回借り上げて、米軍に貸与しています。

また、基地は北部訓練場を除いて、多くが私有地です。

北部訓練場は国有地が大部分ですから、もっとも返還がスムーズにいく施設だったはずなのですが。

それはさておき、この基地に国を通して土地を貸している地主のことを、「軍用地主」と呼びます。

地主にとっては文字通りの「資産」で、年間約900億円もの地代が国から支払われています。

ちなみに、軍用地は有利な投資物件として売買の対象にすらなっていて、沖縄を車で走るとよく電柱に「軍用地売ります」みたいな不動産屋のチラシが貼ってあったりして、しみじみします。

下は不動産屋のCMですが、「10年後の返還予定ではあるが、移転先の辺野古の問題がスムーズに解決しておらず、あと10年~15年は返還は考えにくいので、その間は借地料がもらえる」などと、身も蓋もないことが書いてあります(笑)。

「反戦平和・基地のない沖縄」が沖縄のひとつの顔なら、このような「移転が滞っているから、まだ儲かります」というのも、もう一つの素顔なのです。

Photohttp://www.kamiya-pro.jp/marutoku/marutoku9/maruto...

ちなみに、普天間移設問題で、地元は早く出て行ってほしいという人が多数ですが、ガンとして反対を貫いている一角にはこの軍用地主会があります。

軍用地主以外にも、基地雇用者は県内に1万人弱いて、基地関連の業者まで拡げるとたぶん数万人規模の雇用のすそ野があると言われています。

これらの人の多くは、「基地利権を辺野古に持っていかれてたまるもんか」と思っているはずです。

それは、今まで軍用地代が、国際緊張が高まると上がる:という傾向があったからです。90年代からは右肩あがりです。

下図は海邦総研の資料ですが、国際環境や普天間移設などの事案が起きると、地代が上昇する正の相関関係があることがわかります。

この海邦総研のサイトには、ほかにも興味深いデータが沢山ありますので、覗いてみて下さい。

Photo_2http://www.kaiho-ri.jp/chosashiryo

翁長氏は今回の法廷陳述でも、「銃剣とブルで土地を奪って基地を作った」と発言していました。
http://www.sankei.com/politics/news/151202/plt1512020022-n1.html

ちなみに先ほどから書いているように、「奪った」のではなく、今でも私有地で地代が払われてますし、「銃剣とブル」うんぬんは終戦直後のことです。

それを身をもって知っている県民は1940年から50年代に成人でなければなりませんから、今は80歳すぎになっています。

翁長さん、こういう感情を煽る言い方は、やめたほうがいいのではないでしょうか。

つまり、いい悪いとは別にして、基地は多くの県民にとって、「生まれた時から既にそこにあった存在」なのです。

だから、米軍基地を生活のよすがにするというのは、道義的にうんぬん言われる筋合いではありませんが、軍用地主の所得が県民水準より高いことは事実です。

そのうち約1割が年間所得500万から1000万円以上の、県内富裕層に属しています。
http://media.yucasee.jp/posts/index/14776

さて、この基地関連とは別枠で、沖縄振興予算という摩訶不思議なものがあります。

本土復帰した1972年から始まり、2008年度までの総額は、実に9兆4056億円という途方もない額に達して、今は10兆円を越えました。

先程述べましたが、基地に関する防衛施設庁がらみの軍用地代や地元交付金はまったくこれと別枠で、地代だけで年間900億超となり、この振興予算と合わせて「沖縄関係予算」と呼ぶ場合もあります。

これが、年間4千億超で、県の自主財源の3倍に達します。

2012年度の振興予算総額は2千937億円で、県予算の約半分を占め、県・市町村を合算した予算規模の約4分の1に相当します。

またこの3月には、「改正沖縄振興特別措置法(沖振法)案」が可決されました。

これは、この振興予算をあと10年間続けるということです。

平成34(2022年)年3月までの今後10年間、沖縄県と市町村は、全国一財政的に優遇された自治体としての地位を保証されたということになります。

もうひとつ付け加えると、目に見えない負担軽減措置として「政府補助金率」という代物もあります。

これは地方自治体の公共事業に対して、国が補助を与えるもので、沖縄県のみ他県と違った算定基準に基づいています。

公共事業に対する政府補助金率は、他の県では平均して5割ですが、沖縄県のみは特別の補助金率となっています。

具体的に、本土と沖縄県の補助金率を比較してみます。

本土と沖縄県の補助金率比較
・公立学校の整備                ・・・本土   33~50%
                              沖縄県 75~85%、
・国道、空港、港湾などのインフラ整備    ・・・本土  55~70%
                              沖縄県 95%
・河川改修整備                  ・・・本土   50%
                              沖縄県 90%
・農業関連基盤整備               ・・・本土  50~70%
                              沖縄県 95%
 

ところでこの振興予算の名目はなんなのでしょうか。

建前上は、「沖縄戦による人的・物的被害と長い米軍支配により本土より大幅に遅れた社会経済的基盤を整備する」ということになっています。

これは「社会経済的遅れ」だけでは説明できません。

ほかにも同じような県が多いために、不平等感が出てしまうからです。

たとえば確かに県別ランキングを見ると、沖縄の県民平均所得は全国一低いのは事実です。
都道府県別 平均年収ランキング-年収ラボ

では、下から2番目の宮崎や、3番目の秋田はどうなるのでしょうか。

失業率が全国一だということもよく言われます。
都道府県の完全失業率番付 - 都道府県・市区町村ランキング【日本・地域 ...

確かに沖縄は全国一の失業率ですが、これもまた第2位の青森や第3位の大阪はどうなるのでしょうか。

宮崎や青森に、特に振興予算が組まれている事実はありません。

大阪などに至っては、逆に大都市の哀しさで、他の自治体に国を通して税金を吸い取られ続ける立場です。

ですから、「経済的格差」だけでは、振興予算を与える根拠にはならないのは事実で、基地の負担に対する見返りがこれらの「沖縄関連予算」のほんとうの理由だったわけです。

本来は、こんなことはあうんの呼吸です。

政府だって、「基地があるから振興予算だしている」などと、他の県の手前言いたくありません。

沖縄の政治家や地元紙もまた、「本土から与えられる振興予算と基地とは関係ない」という神話にすがってきました。

そのほうが、「基地を押しつけられて苦吟している」という立場を強調できたからです。

しかしその神話が維持されるためには、基地問題で大騒ぎにならないことが大前提でした。

そのために国は、振興予算や補助金比率を他県と違う基準で出していたのですからね。

しかし、辺野古移転のみならず、北部訓練場という大規模返還まで「実力阻止」するとまで、左翼陣営がヒートアップしたために、やむをえず政府は慎重な言い回しで、「なにかお考え違いじゃありませんか」と言っただけです。

関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-f456.html

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井上康生監督の強靱さとは

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日本柔道が蘇りました。 

後の時代に、井上康生監督は日本柔道の中興の祖といわれることになるでしょう。
井上康生 - Wikipedia

ご承知のように、いままで日本柔道は低迷の泥沼にはまっていました。 

国際大会では負け続け、競技人口は減る一方でした。

もはや柔道ではなく、JUDOだと言われる時代になっていました。 

今回の五輪でも、木村太郎氏のように「銅メダルで謝罪する必要はないですよ。日本は柔道大国ではない」という発言が話題になりました。 

木村氏は負けた日本選手の擁護のつもりだったのでしょうが、カチンっとくることもまた事実です。 

ただし、まぁ、残念ながら木村氏の言うとおりです。 

Photo_2http://www.mizuno.jp/judo/world_mizuno.html

世界の柔道国別競技人口
・ブラジル・・・200万人
・フランス・・・56万
・ドイツ ・・・18万
・日本  ・・・17.5万
・スペイン・・・10.5万
・モンゴル・・・10万
・ロシア ・・・10万
・イタリア・・・10万
・イギリス・・・6万人
・アメリカ・・・2万人

フランスが日本の3倍なのにも驚かされますが、オリンピック開催国のブラジルなんて実に11倍です。

モンゴルもぐんぐん競技人口が伸びてきています。相撲だけにしてくれぇ(悲鳴)。

今や日本はただの発祥の地でしかなく、2007年には国際柔道連盟(IJF)の唯一の日本人理事であった山下泰裕氏が落選の危機にあったほどです。 

ちなみに会長に日本人がついたことは一度もなく、近年では韓国人の朴容晟氏が3期という長期政権を務めています。 

日本はかろうじて2015年8月に朴氏に替わって会長になった、マリウス・ビゼール氏による会長指名枠によって山下氏も含む4名を確保しています。
マリウス・ビゼール - Wikipedia 

このあたりの背景は、ゴチャゴチャしているので省きますが、いかに今や柔道という日本発のスポーツが、国際的に拡大するにつれて、まったく別物に変化していったのか分かります。

さて、今回すべての階級でメダルを獲得した、日本選手団監督の井上康生氏のインタビューが出ています。
真の柔道、ここにあり! 王国復活へ向けた、さらなる高みへの挑戦 ... 

Photohttp://dot.asahi.com/wa/2016072100265.html

実におもしろいので、一読をお勧めします。

井上監督は全体のロンドン五輪の惨敗を反省する中で、まったく新たな強化戦略に切り換えました。

ただ漫然とこれまでの強化方法を取る限り、日本は絶対に世界に勝てないからです。

練習量を増やしていく根性型から、外国選手のような効率と実戦を重んじる方向に転換しました。

この実戦的練習には、外国勢が得意な寝業からの脱出方法なども取り入れられました。

このような部分練習も、今までの日本柔道では軽視されていたことです。

また各方面のプロを招いて、彼らの専門知識を柔道に取り入れています。

「コーチやスタッフといった環境を整える側のレベルアップが必要でした。色々な分野のプロフェッショナルの力を借りて、組織力を高めていきました。
柔道が世界で戦っていく中で、技術だけ持っていけば勝てるわけではありません。
例えば総合的な体力をつけるという意味で、ボディビルの専門家に力を借りるなど、トレーニングメニュー、食事、休養、すべてを見直しました。」(井上監督インタビュー)

そして、あたりまえといえばあたりまえですが、外国勢の徹底分析がなされました。

「海外選手の分析も、これまで感覚的に判断がされてきたものをデータ化し、数値で選手たちに提供していくようにしました。
海外は日本を丸裸にするくらい分析していると言われていましたが、日本は残念ながら細かく行っていませんでした。」(同)

すると浮かび上がってきたのが、外国勢共通の「癖」です。

実は、これは仰天するような、柔道のイロハのイからの逸脱だったのです。

柔道の基本的組み手は「相四つ」です。

Photo_4http://www.judo-ch.jp/dictionary/terms/aiyotu/

「相四つとは柔道の基本的な組み手で、双方の引き手が同じ側の手となります。相手の左前襟を自分の右手で持った場合を右組み、逆に相手の右前襟を自分の左手で持った場合を左組みと言います。」(柔道用語辞典)

今回のオリンピックの試合を見て、素人の私も外人選手っておかしな組み方をするなとは思っていました。

外国人選手は、特に重量級になるに従って組むこと自体を嫌うのです。

たとえば日本選手が、襟を取りに行くと組ましてもらえず、逆に背中の奥襟を取られていきなり体重をかけて押し倒され、有効を取られます。

今回の五輪から禁止されたようですが、かつては組もうとすると片手で払って組ませないという反則もどきの行為すら許されていました。

胴着が乱れると日本人はすぐに帯に裾を入れるのですが、外国人選手はそのままだらしなくはだけたままです。組んでも力が入らないためです。

そして日本選手に襟をとらせないで背中を掴みにくる、時には横腹を掴んで体重をかけて倒しにかかって寝業に持ち込みます。

さらには今回の100㎏超級の金メダル選手のテディ・リネールように、そもそも組まないで指導の回数で勝ちを得る戦法なのですから、まったくよーやるよです。

あれがゴールドメダリストですか。

しかも外国人選手は、投げ技で一本勝ちになど来ません。

引き倒して有効を奪い、その回数で勝負するのです。

爽快感のかけらもなし。重量級などの試合などはただの熊のダンスです。

もうこんなものは柔道ではないと、私たち日本人は思います。

しかしこれがJUDOなのです。

日本の手を離れて、進化したと呼ぶか、退化したと決めつけるかは自由ですが、少なくとも世界柔道は大変化を遂げていたのです。

もはや嘉納治五郎が教える、「柔よく剛を制し、弱よく強を制す」という哲学などかけらもありません。

「剛よく柔を制し、強よく弱を圧する」あるいは、「有効をとったら逃げ回って勝つ」です。

しかし、今やその「逸脱」のほうが常識で、襟を掴んで正対して組むことから始める日本流ほうがただのジャパニーズ・スタイルと化してきていたようです。

別な言い方をすれば、日本が柔道王国から陥落したのは、柔道の発祥の地であることのプライドにあぐらをかいていたために、JUDOに対しての対応策を怠ったからなのです。

Photo_3AFP 柔道男子73キロ級の決勝で金メダルをとった大野将平選手。襟を決めているのがわかる。

井上監督は、外国勢が自国の伝統的格闘技を取り入れてJUDOへと変化していることを見抜きました。

「現在、漢字の「柔道」と英語の「JUDO」は違うものだと言われています。「JUDO」はいろんな国々の格闘技の複合体となっています。
たとえば、ロシアはサンボ、ジョージアはチタオバ、モンゴルはモンゴル相撲と、各地域の格闘技をルーツにして作り上げています。
だからそれぞれのルーツを学ばなければ対応できないので、様々な世界の格闘技を研究していますし、それの対応も全日本の合宿でも取り入れています。
国際大会に行っても、他の国の選手の特殊な技がないか見て研究しています。」(同)

この井上監督の態度こそが、真の保守主義です。

保守主義とは、よく勘違いされているように反動思想ではありません。

たしかにフランス革命やロシア革命に対して、保守思想は対峙しましたが、それは人間が「理性」に基づいて社会を作り替えることができるという革命思想を拒否したからです。

人間の社会には多くの不合理や矛盾がありますが、それを一握りの人たちの「理性」によって、不合理をなくそうと「革命」しても、結局はより大きい矛盾を生み出すことにしかなりません。

仮に革命に勝利しても、そのプロセスで数百万の生命を失うことがあります。

というのは、現実の社会はそういう「理性」をはるかに超えた、複雑で入り組んだなものだからです。

ひとりの天才が考えついた「理性」的設計図よりは、今まで大勢の人々が長い時間をかけて少しずつ手直しながら積み重ねてきた伝統のほうが、はるかに信頼するに足りるのです。

この保守主義の観点は因循姑息を意味しません。

なぜなら、保守主義は「変革」ではなく、新たな現実に「適応」を目指すからです。

「変革」のように外部的力によって修正をかけるのではなく、今、起きている状況に「適応」することが大事だと考えます。

柔道ならば、日本柔道の伝統の積み重ねの上に、井上監督のようにJUDOを分析し、彼らの長所と短所を知り尽くし、それに「対応」するのです。

私は井上監督の姿勢に、久しぶりに日本保守主義の強靱さを見た気がしました。

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日曜写真館 花弁に埋もれたい(水彩タッチ入り)

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あざといばかりに華麗な牡丹です。
蜂のように花弁にダイビングして転げ回りたい。

水彩画タッチも入れてみました。

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共産党が党名を変えないわけ

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昨日のテーマを続けます。 

昨日書いていて、そうか考えてみれば、共産党って党首選挙がないなと思い当たりました。

政界に政党数あれど、党首選挙がない政党は共産党だけです。 

日本共産党の規約によると、何年かに一度開かれる党大会において、中央委員が選出されます。
http://www.jcp.or.jp/jcp/Kiyaku/

その中央委員候補は、前任の中央委員会による推薦制です。 

●日本共産党規約第3章第13条
「指導機関は、次期委員会を構成する候補者を推薦する。」

いちおう建前では全党員の意思が反映されました、という形式にして、この中央委員から、中央委員会幹部会委員長(←長い)が選ばれます。 

これが志位氏の地位ですが、一般的な政党のように党員や国会議員から選挙で選ばれるわけではありません。 

ですから、よく言えば鉄板、悪くいえば独裁型党運営が可能です。 

この党内システムは、共産国家によく似ています。 

というか、むしろ共産党の仕組みを:国家レベルにまで拡大したのが共産国家なのです。 

中央委員会のみが一般党員の意志の反映できる所ですが、なにぶん「推薦」制ですから上が押しつけてきた人物に○をつけるていどしかできません。 

中国の全人代の「選挙」を思い出してもらうといいでしょう。あれと一緒です。

国の政権交代を目指しても、自分の党の政権交代はありえないのです。

ちなみに志位さんは2000年から委員長をしているので、今年で16年目になります。

政界での代表の平均在職期間は長くて3年ていどですから、志位氏がいかに馬鹿げて長い党内政権を持っているのかが分かります。 

さて自由主義陣営の国家で、日本共産党以上に隆盛を誇った共産党にイタリア共産党があります。 

一桁の議席で嬉し泣きしているような日本共産党と違って、もっとも栄えた1950年代の選挙では、イタリア共産党は常に議席数の2割から3割を取っていました。 

しかしそれにもかかわらず、連立政権に参加できませんでした。 

なぜか、理由は簡単。イタリア共産党を通じてのソ連の内政干渉を許さないためです。 

しかし、1989年にベルリンの壁が崩壊し、91年にはなんと「赤いバチカン」そのものが消滅してしまいました。 

すると、共産党を排除する理由そのものがなくなってしまったのですから、ここにイタリア共産党が政権に加わる条件が初めて生まれたのです。 

共産党は政権参加する気はムンムンでしたので、、今まで他党からなにかと言われてきた、「お前なぁ、その共産党っていう看板はソ連みたいで、すっごくイヤ。ほんとうにイヤ。絶対イヤ。共産党と名乗っている限り組めない」という声を受け入れて、看板を塗り替えます。 

新しい看板は、共産党改め「左翼民主党」です。日本流に言えば、「左民党」ですか(笑)。

これは、共産党と名乗っていたらいつまでも、ソ連共産党の血の粛清の歴史を払拭できないからです。

そして、党名変更と同時に今までの党首独裁型も止めて、スッキリと普通の政党と同じように党員投票によって党首を選ぶことにしました。

そして、いままで下級は上級に従い、上級は指導部に従い、指導部は書記長(委員長)に従う、という縦一直線の「民主中央集権制」も廃止してしまいました。

まぁ、別にびっくりするようなことではなく、普通の民主主義政党になっただけの話なんですがね。

ここで初めてイタリア共産党は、「結社」から近代的「政党」に生まれ変わったというわけです。

ところでイタリアは、1993年に選挙制度改革に乗り出します。

採用したのは、日本とほぼ一緒の小選挙区比例代表制でしたので、日本と同じ問題が起きます。

つまり小選挙区制では、2大政党に収斂されるために、野党はいままでのようにバラバラでは勝ち目が薄いということでした。

ならば、野党小政党をかき集めてひとつの集団にしたらどうか、というので生まれたのが、有名な「オリーブの木」でした。

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 オリーブの木の発案者のブローディ氏。首相の後に欧州委員会委員長にまでなった

これについては何本か記事を書いているのでご覧ください。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-1e0e.html

実は、この「オリーブの木」の考案者は、このイタリア共産党改め左民党でしたが、バリバリの元共産党幹部が言い出すと下心が見えすぎて誰もついてこないので、穏健社会主義者のブローディ氏を立てたのです。

この辺が興味深いことで、日本においても日本版オリーブの木は、共産党と小澤氏の脳味噌から生まれています。

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イタリアではこれが大当たりし、旧イタリア共産党は、晴れて念願の政権入りを果たし、党員も増えました。

イタリア共産党は、議会第2党だったことすらある大政党。

しかも、ありとあらゆる階層組織、工業都市にとどまらず田舎にまで伸びる地域組織網、病院、生協、リクレーション施設、多くの共産党系文化人などなど、重厚な蓄積は誰にも魅力だったからです。

ここがパッと開けたために、多くの人が流入しました。

その中には穏健な社会主義者だけではなく、過激派やアナーキストも大勢いたようです。

それは党の鉄の規律をとろかし、党を内部から変えました。

今まで「推薦」制で、代表選挙をしていなかったのが、実施してみると旧共産党系は落選者が相次ぎ、党の要職に座った非共産党員によって、党は見る見るうちに普通の民主主義政党へと変貌してしまったのです。

ひとことで言うと、いろいろな人が流入してきた結果、乗っ取られてしまって、元の共産党ではなくなってしまったのです。

なにより、新規参入者たちは今までタブーだった、自由活発な討論と党内民主主義を持ち込みました。

その結果、今までの共産党的「結社」的秘密主義は完全に払拭されてしまったのです。

つまり、今の日本共産党のように、こんなことができなくなりました。

●日本共産党規約第3章第17条
「全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。」

共産党規約は、さらっとコワイことを言っていますが気がつかれましたか。党の方針と違うことを外部に言ってはいけないのです。

国会だろうと、地方議会だろうと、はたまた、どんな運動の会議でも、共産党員は自由に個人の意見を言うことはできないのです。

私たちが共産党員にときおり感じるクローンじみた印象は、ここから来ています。

かし、イタリア共産党のように、開かれた民主主義をいったん導入すると、共産党は根本から共産党ではなくなってしまうのです。

そして、この左翼民主党も内紛が続いたあげく、98年に「左翼民主主義者」に党名変更し、それもアタらずにあえなく解党してしまいます。

ここにヨーロッパ第1の伝統と勢力を誇ったイタリア共産党は、消滅したのです。

志位氏がなんと言われても党名を変えないのは、このためです。

共産党は「民主」という言葉がたいそう好きで、民青、民医連、民商などという傘下団体につけまくっていますが、最も民主主義不在なのは、他ならぬ自分の党内なのです。

これが共産党が「野党」ではない理由です。

一回党名を変えて、党内独裁制を止めたら最後、共産党は速やかにイタリア共産党の道を歩んでしまいます。

ですから共産党は、政権に参加せずに永久野党でいるしかないのです。

しかし、志位氏は、かつてイタリア共産党が選び、その結果消滅してしまった「オリーブの木」路線を歩き始めました。

それは彼らにとっても、自己解体の危険がある狭い道だと忠告しておきます。

なぜなら、民主主義と共産主義は共存できないからです。

■関連記事 なぜ共産党は「アベ・ヒトラー」と呼びたがるのか?
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-e774.html

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共産党が言うように都知事選はほんとうに「大健闘」だったのか?

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都知事選の総括が各所で行われています。

ある意味で、今回の都知事選の主役のひとりだった共産党の総括を見てみましょう。 

赤旗(8月1日)です。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-08-01/2016080101_01_1.html

記事タイトルがすべてを言い尽くしています。

「東京都知事選 鳥越氏が大健闘 野党と市民の共闘発展」

大健闘って野党の基礎票の200万票もとれない惨敗なのに、などとチャチャを入れないでくださいね。

「小池百合子氏は、「核武装」発言などの改憲タカ派の本質を隠し、自民党都連との“対決”ポーズを演出。増田氏は安倍政権との連携を強調し、自民党主導の組織戦を展開しました。
小池書記局長 「今回の選挙戦を通じて、首都東京で野党と市民の共闘が発展したことは極めて重要な意義があります。協力関係は、市町村段階まで多面的に発展しました。また、国政政策だけでなく都政政策でも政党間の一致点を広げていることは、今後の都民要求実現のたたかいにとっても大きな意味を持つものです。」
 

あくまでも共産党にとって、この都知事選は「野党と市民の協力関係を発展させ」大爆発を勝ち取った「意義あるもの」だったのです。 

要は、共産党候補がダブルスコアをつけられて大敗しようとどうしようと、断固として「勝利」なさったというわけです。

おめでとうございます、としかいいようがありません。 

ちなみに、ここで小池書記局長がいう「野党」とは、直接には共産党自身を指し、「市民」と呼ぶのは、国民一般ではなく、志位委員長が今年の赤旗元日号の新春対談で述べているように、去年の国会デモに参加したような人たちのことです。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-01-01/2016010101_02_0.html 

ですから、「核武装を唱える改憲タカ派の小池氏」に投票するような者は、「市民」ではないのです。

ちなみに小池氏は、「軍事上、外交上の判断において、核武装の選択肢は十分ありうる」(VOICE 2003年3月)と言っただけで、議論の対象からはずしてはいけないという程度の意味にすぎず、核武装論者とするには無理があります。

このテーマについては、そのうち書きます。

そしてさらに、志位氏は今や平時ではない、「日本の歴史でも初めての市民革命的な動きが開始された」、と説きます。 

この「革命」の流れが、都知事選の「大健闘」に結びついたというわけです。 

なんか、頭がボーっとしてパラレルワールドに迷い込んだような気分ですが、これが共産党ワールドなのです。 

昔から読みやすく分かりにくいと言われた赤旗ですが、ホントわからない。

かつて私も70年安保の折に、共産党が「大爆発」「大勝利」と連日呼号していたのを見てきましたが、「革命」と立てて「大勝利」で回収する体質はいささかも変化していないようです。

これが共産党無謬伝説です。 

かつてなら共産党内で、「いや負けたんじゃないの」などと言おうものなら、右翼日和見主義としてリンチまがいの査問をされて、除名処分になったものですが、今はどうなっていますか。 

さて都知事選自体の総括は、そんなに難しくありません。 

日本の政治を代表する3つの流れから候補者が現れたので、都民はすっきりと選択ができたのではないかと思います。

ひとつは村政治のような、利権と地位の分配のための土着保守そのままの自民党の流れ。

もうひとつはそれを変えようとする、都市型保守の小池氏の流れでした。

いままでの日本の政治では、この小池氏に相当する勢力が不在で、土着保守vs日本型左翼という2極構造になっていました。

そして今ひとつは、この小池氏までも改憲極右と決めつける民共合作が推した鳥越氏陣営です。

政治的には護憲、反安保、反原発、反安倍、経済政策的には成長反対・分配重視という伝統的左翼陣営のスタンスでした。 

鳥越陣営の得票データを見ます。 

鳥越俊太郎得票率
・推薦政党・・・民進党・共産党・社民党・生活
・得票数・・・1,346,103票
・得票率・・・20.6%

 ちなみに小池氏は、44%の倍です。 

年齢別投票動向(朝日新聞出口調査による)
1819歳・・・小池35%増田30%鳥越
18%
20歳代・・・小池43% 増田30%鳥越
10%
30歳代・・・小池48% 増田22% 鳥越
15%
40歳代・・・小池49% 増田22% 鳥越
17%
50歳代・・・小池45% 増田28% 鳥越
19%
60歳代・・・小池43% 増田27% 鳥越
25%
70歳代以上・・・小池39% 増田30% 鳥越27%

去年、青年層は志位が手放しで「民主革命」というようにシールズ化したといわれていましたが、今回の選挙において鳥越氏に対する支持は10%台に止まっています。

10代では小池・増田両候補で65%押さえたのに対して、わずか18%にとどまっています。

この傾向は20代から50代といった、働き盛りの中堅クラスでも変化なく、鳥越氏がやや支持率を増やすのは、60歳以上の高齢層からでした。 

位さん、どこに「革命」が起きているのでしょうか?

「革命」どころか、左翼陣営は地盤を根こそぎもっていかれて います。

支持政党別投票候補
・民進党
・小池氏・・・30%
・鳥越氏・・・60%
・増田氏・・・10%

・無党派(全体の37%)
・小池氏・・・50%
・増田氏・・・20%
・鳥越氏・・・20%

民進党は支持層の基礎票の4割を保守系に崩され、共産党支持層からも2割が小池氏に流れています。

また鳥越陣営が頼みにしたはずの無党派層の支持の半分は小池氏に流れ、鳥越氏はわずか2割程度を押さえたのみです。 

つまり、土着自民党としっかり戦ってくれそうなのは、同じ自民党の小池さんだと有権者は判断したわけです。

自民も負け、共産党ら野党は惨敗を喫したのです。

戦術的にも、余りに拙速かつ稚拙で、あれで勝てたら奇跡です。 

特に鳥越氏が、下半身問題についてあいまいにしたまま、訴訟沙汰に持ち込んで、その上に「女なら誰でもいいわけではない」という言葉を吐いたことは、リベラル層の反発を呼びました。

朝日新聞系列のハフィントンポストは、選挙後に鳥越氏のインタビューをとして、掲載しています。
「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る」独占インタビューhttp://www.huffingtonpost.jp/2016/08/10/shuntaro-torigoe_n_11422752.html

責任転化と居直りだけの内容で、こんなものを発表すると「2度めの敗北」になると思えますが、この中で鳥越氏はこう述べています。

「週刊誌2誌に書かれたといっても、情報源は一緒ですよね。はっきり言って、それがそのまま、なんの裏付けも証拠もなく、「この人がこう言っている」というだけで載っちゃうのね。
でもこっちは、それに打ち勝つ方法が何もない。そういうジレンマというか、本当にもどかしい思いがありましたけれども、説明してどうなるものではない。あとはきっちり、裁判でけりをつけるしかないと覚悟を決めました。」

もう、私は、権力に対して説明責任を問い続けたジャーリストとしていかがなものかとか、慰安婦問題糺弾の時とまったく違うじゃないかなどと、ヤボはもう言いません。

論評する価値もありません。

保守、リベラルという次元ではなく、人として失格です。

こんなレベルの人物が、「日本を代表するジャーナリスト」だったことのほうが驚きです。

ただひとつ面白く思ったのは鳥越氏はこう言っていることです。

「あなたたち(ハフポスト日本版)には悪いんだけれど、ネットにそんなに信頼を置いていない。しょせん裏社会だと思っている。メールは見ますけれど、いろんなネットは見ません」

なるほど。確かに、確かに。鳥越氏が出馬するのがもう10年早かったら、SNSはここまで発達していませんでしたから、新聞・テレビなどのレガシーメディアのスターだった鳥越氏の虚像を暴くものとてなかったでしょうね。

特に共産党が期待した青年層は紙の新聞など読みません。多くは情報はネットから得ているのです。

それをハナからネットを小馬鹿にして敵対していたら、勝てるはずがありません。

鳥越氏はネット言論にも敗れたのです。

最後に余計なお世話ですが、共産党さん。いつまでも「勝った」「勝った」という総括だけでは、ほんとうに勝てませんよ。

しかし、そういう総括をしないと党指導部の方針を否定しまうことになるので、できないのが、共産党の哀しいところなのです。

普通の政党は、選挙に負ければ代表が交代するのが通例ですが、共産党だけは、「大健闘」と締めていつまでも志位氏が居すわり続けます。

一切の批判は、分派主義として許されません。

そう考えると、「民主主義革命」をしたほうがいいのは、共産党のほうなのかもしれません。

まずは代表選挙でもしないと、「民主主義革命」の旗手としてカッコつかないのではないでしょうか。

 

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HNふゆみさんにお答えして

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ふゆみさん。山路さんをご指名でしたが、私のほうからもご説明します。

ふゆみさんのご質問です。

「山路さん、しつこく私からも解説をお願いしてよいでしょうか。
その左翼陣営の主張、ネトウヨでなくとも宗主国様かよと感じるのですが、それを言われると火がついたように怒りますよね。
彼等は一部チベット人のように拡大後の中華帝国の元で己もしくは日本自治区の階級上位を目指している自覚はあるのでしょうか。」

山路さんの解説で間違ってはいないと思いますが、私は若干チベット支援に関わっていたので、補足します。

チベットはラダック亡命政府部分と、本国部分にやや温度差が生じています。

あくまでも独立を志向する人たちと、現実主義的に中国領の中での待遇改善をめざす差です。

中国は大規模な漢族移民政策を実施し、一部地域ではチベット族との人口逆転すら起きかっています。

また教育を通じて、非チベット化がすさまじい勢いで進行しています。

ただし、その一面、一人っ子政策が漢族よりも早く解除されるなど、恩恵も与えています。

つまり、独立などという夢想を抱かず、ダライラマを崇敬せず、非チベット化に協力すれば、自治政府にも登用し、恩恵を与えようということです。

さて、このような状況を日本の左翼が知っているかといえば、私の左翼経験から言って、まるで知らないでしょう。

一言でいえば、無知です。まるで関心がないのです。

驚くほどの無知で、意識的に中国の暗黒部の情報を遮断しているかのようです。

中国の暗部を語れば、それは即反共・反中国になると短絡しているようです。

反核運動をしながら、中国の核の状況にすら無知です。

ウイグル人の居住地域近辺で行われた、地上核実験により、どれほど多くのウイグル人が亡くなり、放射能障害になったのか、知ろうともしません。

中国の核ミサイルが私たちを標的にしていても、「中国が攻めてくることはありえない」の一言で、抗議すら上げません。

反原発を叫びながら、世界一の原発推進国家が隣にいることにも、口をつぐんでいます。

言論の統制反対を叫びながら、世界一の言論統制国家に抗議の声ひとつ上げません。

沖縄の分離独立を叫びながら、チベット人・ウイグル人の分離・独立運動には冷やかです。

反戦平和を叫びながら、世界一の軍拡国家には揉み手をします。

このように左翼とは、おそろしいまでの二重規範、あるいは自己欺瞞を平気でしている者たちなのです。

私はそれを批判して左翼から足を洗いました。

ですから、ふゆみさんがおっしゃるような「日本自治区で階級上位」を目指すなどという深慮遠望なことを考えているとは到底おもえません。

彼らは無責任な近視眼にすぎません。

しかも近年、デマとプロパガンダを取り違えて叫び続けてきたために、今や何が真実で、なにが宣伝なのかの境もわからなくなってしまっています。

ですから、左翼の政策が完全に実行された場合、「ヤマト民族自治区」になる可能性すらあるわけですが、そんなことは考えてもいないのではないでしょうか。

マタイ伝 第23章27節
「禍なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、 汝らは白く塗りたる墓に似たり、外は美しく見ゆれども、内は死人の骨とさまざまの穢にして満つる」

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菅官房長官の「移設・移動・予算リンク論」とは

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島尻さんが沖縄担当相補佐官になりました。

素直に、うれしいことです。

それを伝える沖タイ(8月10日)の記事です。既にご存じの方は引用下からどうぞ。

「政府が島尻安伊子前沖縄担当相を内閣府の大臣補佐官として起用する方向で調整に入ったことが9日、分かった。沖縄振興の分野を担当し、鶴保庸介沖縄担当相に助言する役割を担う。政府関係者が明らかにした。
 島尻氏は7月の参院選沖縄選挙区で落選。今月3日の内閣改造で沖縄担当相を退任した。
 島尻氏は第5次の沖縄振興特別措置法(沖振法)の成立や西普天間住宅地区跡地での国際医療拠点構想に深くかかわり、沖縄担当相時代には沖縄の子どもの貧困対策事業の予算確保と同施策展開に尽力するなど、沖縄振興に精通している。
5年目の折り返しを迎えた沖振法の後期に向けた取り組みなどについて助言するとみられる。
 大臣補佐官は2014年4月に成立した公務員制度改革関連法で新設された特別職。政策の立案などに関し大臣を補佐し、助言する役割を担う。」

あれだけ参院選でネガキャンに加担したのですから、もう少し苦々しく書くかと思っていましたが、第5次沖振法で、西普天間住宅地跡地の医療拠点建設に尽力したことや、子供貧困問題で予算確保したことを公平に取り上げています。

おもしろいですね。

地元紙は島尻さんを落としたことによって、かえって厳しい状況になったことに、今頃気がついたようです。

というのは、新たに沖縄相に任じられた鶴保庸介(つるほ)氏は、島尻さんの島内部から眼とは違うスタンスの人物だからです。

沖縄の保守穏健派に属する島尻さんを落とせば、それに替わってもっとはっきりと物申す人物が沖縄相になるのは当然です。

鶴保氏は、沖縄内部の複雑な利害関係から自由な分だけ、政府の意向の忠実な代弁者の要素が強くなります。

島尻さんを落として沖縄が参院へ送り出した伊波氏は、1年生の無所属。しかも参院。まったく国政に影響力はありません。

政府中枢に沖縄の声を届けられるダイレクトのパイプであった彼女を、寄ってたかって「腐りナイチャー」と呼んで潰したのは、あんたらでしょうに。

それはさておき、鶴保氏が就任と同時に発言したのが、「振興予算と基地問題はリンクしている」という発言でした。

朝日新聞(8月4日)です。

鶴保庸介沖縄・北方相は4日の就任会見で、「沖縄の振興策と基地問題は確実にリンクしている」と述べ、米軍普天間飛行場宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設作業が遅れた場合、沖縄振興予算を減らす可能性に言及した。県内移設に反対する同県の翁長雄志(たけし)知事を牽制するもので、県側の反発は必至だ。
政府はこれまで「振興策と基地問題はリンクしない」としてきた。
ところが鶴保氏は移設作業の遅れで跡地利用などが進まない場合、「予算額を減らすのは当然。消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、全国民の血税で使われているお金を無駄遣いしているという批判に耐えられない」とした。」

島尻さんなら、こういう言い方はしなかったでしょう。鶴保氏のやや雑な言い方が気になります。

移設と予算措置との関連をもう少し細かく説明しないと、一部だけ切り取られて、「辺野古移転に賛成しなきゃ、予算減らしてやるぞ」と短絡してとられますよ。

Photo産経新聞2015年05月14日

これをホローするように、菅氏が同日の官房長官記者会見でこう述べています。
首相官邸ホームページ 内閣官房長官記者会見

菅氏は琉新記者の質問に答えて、学校の先生よろしく噛んで含めるように説明しています。

まず、政府がどのような状況を目指しているのかについて、菅氏はこう言っています。

「米軍は沖縄に2万8,000人いるといわれてますけれども、そのうち9,000人の海兵隊が県外に出て行くというそういう状況を出来る限り早く作っていきたい」

これが沖縄海兵隊の9千人移動計画です。

菅氏は2万8千人と言っていますが、それは定員一杯の数で、常にローテション配備で、あっちこっちに出払っているために、いつも沖縄にいる海兵隊員の数は1万人を切ると言われています。

このうちから、常に常駐している海兵隊司令部要員をグアムに9千人移動し、さらに昨年5月にはハワイ州知事が2700名引き受けると明言しています。

これがうまくいけば、1万1700名程度の大規模移転が実現します。

結果、事実上海兵隊の常駐数は、定数で1万6千人ていど、実態としては5千人前後規模まで削減されるわけです。

これについては日本政府と米国政府の交渉は終了していて、グアム移転のためのインフラ整備のための費用は、2012年米会計年度で全体で86億ドルとされていました。

うち日本政府が、最大31億ドルを負担するという予算措置までできていました。

日本政府は着々と沖縄基地軽減策に手を打ってきていたわけですね。

Photo_2
これをひっくり返した者がいました。ご存じ、Loopy鳩山氏の「国外・最低でも県外」発言です。

もうくだくだ説明するのもイヤですが、これがまったくの思いつきであったことがわずか1年後に分かります。

Photo_3
この鳩山氏の「県外移設」撤回は二つの負の遺産を生みます。

ひとつは見えかけた希望が消えたことにより、怒りに燃え上がった県民感情と、そしてグアム移設予算の凍結です。

順を追ってご説明します。

菅氏はこう言います。

「現実的に民主党政権が『最低でも県外』こう発言した時に、グアムの基地建設の予算は凍結をされています。」

実は、普天間基地の過疎地への移設計画と、海兵隊員9千の移動計画は包括的パッケージになっていました。

ですから、移転計画がポシャると、兵員移動計画の予算も凍結されるのです。

返り咲いた自民党政府は兵員移転予算の凍結を解除しました。

「で、私どもの政権になって、埋め立ての承認を頂いて、今工事を始めたんですけれども、そういう中でグアムの凍結された予算も解除されました。そして9,000人の海兵隊が日本国内から出て行くことになっています。そういう意味合いも含めて辺野古移設というのはしっかり進めて行きたい」

普天間基地が残る限り、沖縄の包括的海兵隊削減にならないために、グアム移転もぶっ止まったきりだということです。

ですから、移設計画が進まないと、兵員移転予算も凍結解除されたとはいっても、事実上執行されないのです。

そして、移設に断固反対の翁長知事が誕生し、兵員移転も、基地移設も共にデッドロックに乗り上げてしまいました。

すると、どうなるのでしょうか。

再び菅氏の説明を聞いてみましょう。

「工事が進まなければ予算も少なくなるというのは、これは当然のことじゃないでしょうか。(工事がスムーズに進めば)工事の費用は当然減るわけですから。
そして米軍との間でも、嘉手納以南の土地の約7割が返還されることが決まってますから、そこは工事の進み具合によって早く返還するということになるのも、これは現実的にはそのように思います。
ですから、跡地利用が遅れれば予算が少なくなっていくというのも、そこは現実問題として、そうじゃないでしょうか。」

移設工事は、今、反対運動と和解期間だということもあって完全に停止しています。

福岡高裁の判決が翁長氏勝利となった場合、新たな移設先が具体化しない限り、包括的海兵隊予算措置は、事実上凍結したままになります。

いままでの流れを見ると、この可能性もなしとは言えません。

その場合、工事が減るわけですから、当然のこととして予算も減ります。

これが菅氏が言っている「基地移設-兵員移動-予算リンク論」です。

協力しなければ振興予算を減らすぞ、という短絡した話ではありません。

ガサツな言い方をすれば、鶴保氏の言ったように「消化できないものを無理やり口開けて食べてくださいよ」ということになります。

それにしても、県民を子供扱いしているようなこのこの言い方、なんとかならないのでしょうか。

島尻さん、うまく補佐してやって下さい。

なお8月10日、翁長氏と菅氏は会談して、菅氏は「3000億円台の確保はぜひやりたい」と応じたそうです。

いずれにせよ、間近に迫った高裁判決が分水嶺になります。

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緊迫する尖閣 中国から見たら

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オリンピックの影で、日中間が緊迫しています。 

尖閣の接続海域・領海への中国公船の侵入は、今やすさまじいレベルになってきています。 

8月に入って5日から8日のわずか3日間に、公船だけで実に延べ17隻、漁船延べ43隻が領海・接続海域を侵犯しました。 

1日当たり平均公船5隻、漁船に至っては14隻に登ります。 

「8日午後6 時までに、 最大 15 隻の中国公船が 同時に 接続水域に侵入し、 延べ 17 隻 が領海に 侵入 した 。」(海保資料)

この規模は既に南シナ海のそれを上回るもので、このような紛争事案においては世界最大・歴史上類例をみない規模となっています。 

Photo_32014年時のもの。今回の映像は海保HPにあります。

それを報じる読売新聞(8月9日)です。
 

「政府は9日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で挑発行動をエスカレートさせている中国海警局の公船や漁船の動向、日本政府の対応をまとめた資料を公表した。
 再三の抗議にもかかわらず、領海侵入が繰り返される事態を重く見た異例の対応で、今月5~8日に中国公船延べ17隻が侵入し、中国漁船延べ43隻も入ったことを明らかにした。政府は引き続き、中国側に即時退去を要求する方針だ。」

 外務省は再三再四、強い抗議をしていますが、中国は聞く耳を持ちません。 

海保と外務省が同時にこの間の状況について、詳細な資料をアップしましたので、ぜひご覧いただくことをお勧めします。 

海保・尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況(H28.8.9)
詳細は
こちら。http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/post-280.html
中国公船等による接続水域内入域及び領海侵入隻数(日毎)
詳細は
こちら。http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/1608-senkaku.pdf 

「平成 28 年8月5日午後 1時 30 分頃、 中国漁船 に続いて、中国漁船 に続いて、公船(中国 政府に所属する船舶) 1隻が 尖閣諸島周辺 領海に侵入 した 。その後、 8日午後6 時までに、 最大 15 隻の中国公船が 同時に 接続水域に入、 延べ 17 隻 が領海に 侵入 した 。
約 200 ~300 隻の漁船が 尖閣諸島周辺の接続水域 で操業するなか、最大 15 隻という多数の中国公船も同じ海域に集結し、 中国 漁船に続いて 領海侵 入を繰り返すといった事象が確認されのは 今回が 初めてである。
なお、 尖閣諸島周辺の接続水域に通常展開している中国公船(3隻程度)及び南シナ海のスカボロー礁周辺に通常展開している中国公船(4~ 5隻と言われる )に比しても、現在尖閣諸島周辺は 、はるかに多くの中国公船が展開している。」
(太字部分は海保資料のアンダバー)

Photo_4http://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/senkaku/senkaku.html

中国の目的は、公船を常時尖閣海域に侵入させ、やがてなし崩し的に居座ってしまい、この尖閣が「紛争地」であることを国際的に認知させ、機会を見て尖閣諸島に五星紅旗を翻すことです。 

今日は視点を変えて、中国サイドから見て、彼らが何を考えているのか見ることにしましょう。 

この尖閣はあくまでも清朝の時からの、「神聖不可侵の中国領土」です。ここが大前提です。

それを軍国主義・日本が、日清戦争で力づくで奪ったというストーリーです。 

そして中国に敗れた敗戦国の分際で、戦後も図々しく尖閣諸島を占拠している、ということになります。 

中国の領土観は、何百年前だろうと、その海域を通過して島を「発見」すれば中国のもの、ましてやかつて朝貢国ならば、中華帝国の版図ですから当然中国領と認識しています。

前者が、清朝の使節が沖縄に渡る際に発見した尖閣諸島であって、後者は中華帝国の属国だった沖縄のことです。 

お気の毒ですが、この「過去この海域は中国人が活躍した」という理屈は、今回の南シナ海に対しての国際仲介裁判所から完全に退けられてしまいましたけどね。

彼らの領土観では、全部ひっくるめて「オレ様のもの」なので、日本こそ不当に尖閣・沖縄を占拠しているのです。 

しかも中国の好意で、尖閣棚上げ論にしてやったのに、極右の石原が都の所有にしようと言い出し、それに便乗するように民主党政権までもが国有化してしまうという暴挙を働いたというわけです。 

ではどうやって「神聖な中国領土」を奪還したらいいでしょうか。 

いきなり、中国の虎の子である北海艦隊を出動させたらどうでしょうか。 

う~ん、負けますね。 

中国海軍はつい最近まで沿海海軍(ブラウンウォーター・ネイビー)でしたので、世界最強の日米海軍とガチンコで海戦を演じた場合、勝てる可能性はゼロに等しいでしょう。 

ではどうするか、ここで中国はこう考えました。 

以下、チャイナのモノローグ調で。

まずは、一番の障害となる米国を介入させないようにしよう。 

Dsc_4829横須賀軍港を母港とする米空母ロナルド・レーガン 

奴らがいれば負けるから、日米分断して、日本だけ裸にしてしまおう。そうするとだいぶ料理しやすくなるぞ。 

一番の目の上のたんこぶは尖閣に近い在沖米軍だ。こいつから料理しよう。

うまい具合に沖縄内部には、伊波議員のように、「(中国や北朝鮮は)脅威ではない。脅威なのは米軍。中国とは何千年もの経済・文化の交流がある」と言ってくれる左翼勢力と地元紙が県政を握っているぞ。 

彼らに、「全基地撤去・海兵隊撤退」運動を激化させよう。そしてその中のハネ上がりを使って「琉球先住民族の民族自決」を言わしてやろう。

まぁうまくいくまいが、成功すればあちらから転がり込んでくるのだから手っとり早い。

え、民族自決なんかさせたら、チベット・ウイグルのようになるって。

わけねぇっしょ。うちの勢力圏に来たら、ウイグルの独立派と一緒の扱いにするだけのこと。

とまれ日米分断のために、沖縄県民の在沖米軍への憎悪を最大限に煽ろう。

なんて思っていたら、お、不良外人が勝手に女性殺人などという場外ホームランをかっ飛ばしてくれたぞ。万、万歳だ。

Photo_5琉球新報2016年6月20日1面 

次に、同時にこの尖閣水域がある東シナ海を、文字通り「中国の海」としてしまおう。

焦らずにじっくりと料理してやるぞぉ。

いきなり軍艦を入れて刺激するようなことはしないで、海警をジャンジャン入れ続けよう。

まずは1隻、2隻いれて日本側の警備状況と対応を観察して、さぁ今年から一気に行くぞ!

いままで外野で見守ってきた海軍も、尖閣の接続海域・領海にどんどん入れてやる。

そしてド~ン!

海上民兵を乗せた漁船が230隻と、海警は15隻だ。全力投入だ。びびったろう。どうせ弱腰の日本は、憲法に縛られて抗議だけしか出来まい。

そんな口先だけなら、こちらもこう言うだけだ。

「領海侵犯しているのは貴国のほうだ。直ちに日本公船を中国領海から退去させなさい」ってね。

見たかァ小日本!手出しができまい。カ、カ、カ。

これを続ければ、国際社会はここが紛争地だと認識し、中国の肩をもってくれる国も沢山生まれてくるはずだ。

周辺国は一カ国ずつ経済圧力をかけて、こっちにたなびかせてやる。もうフィリピンやインドネシアなんか骨抜きだ。

気がつけば、アジアで、逆らうのは日本だけにしてやる。

ビビったところで、こう猫なで声で言ってやるんだ。

「このままでは戦争になります。この紛争を米国などをハズして、じっくりと二国間関係で話合いましょう。どうせ米国なんか尖閣で助けちゃくれませんぜ」

こうなれば、あとは一気に海上民兵を乗せた漁船数百隻で尖閣を取り囲み、彼ら「民間人」に五星紅旗を立てさせるだけだ。

その時、うまいこと海保が手出ししてくれたら、一気に海軍を入れて東シナ海全域を軍事制圧だぁ。

ここまできたら、後は沖縄をどう料理するかだ、あ~待ち遠しい。早く嘉手納に美しい五星紅旗がたなびくのが見たいもんだ。

チャンチャン。とまぁ、こういう感じです。

なんか書いているだけでムカムカしてきましたが、あくまで中国から見たら、ですからね(笑)。

とまれ:これが中国流サラミ・スライシングです。

 

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天皇陛下のお言葉を聞いて

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陛下がビデオレターを出されました。 

私たち日本人を励まし、慰め続けてきたあの心鎮まるお声で、大変に抑制して語られておられました。 

私には、かねてから巷間伝えられていた「生前退位」に止まらず、もっと広い皇室のあり方をお話になられたように思えます。 

私たち国民は、狭く「生前退位」だけに焦点を当てて、皇室典範、憲法論議をする以前に、ここに至った陛下のお身体とお気持ちをもっと素直に受けとめるべきです。 

Photo宮内庁HPhttp://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/12

陛下が自らのことを語られるのは、これが初めてではないでしょうか。 

陛下と皇后陛下の肩にかかっていたあまりにも重い荷を、私たち国民とその政府が軽減する努力を怠ってきたことが悔やまれます。 

陛下がこのようなお声を上げるまで、私たちは陛下に甘えすぎていました。 

昨日の放送を聞きながら、いつしか涙を流して聞き入っている自分に気がつきました。 

陛下は常に私たちを思い、抱きしめているのに、私たちはそのお気持ちをあたりまえだと思ってきたのではないでしょうか。

陛下、ありがとうございました。そして、本当に申し訳ありませんでした。

私たち日本人は陛下に励まされていながら、陛下の悩み、恐れ、苦しみを何ひとつ考えていなかったのです。 

それは形こそ違え、戦前までの神格化された天皇のあり方と、どこか通底してはいないかと思うのです。 

陛下は神ではないのです。

不敬な物言いになりますが、陛下は2度の心臓手術を受けられて、なお懸命にご公務に励んでいらしています。

市井の老人なら、とうに引退しているお歳です。

東日本大震災の折に、陛下がおられなかったらと思うと戦慄します。

陛下がおられるということ、陛下に慰謝していただけること、そのことがどれほど私たち被災地の者にとっての救いとなったことでしょうか。

痛い腰をかばうことなく、被災者と目線を共にしている陛下のお姿が、私たちの大きな慰めでした。 

激烈な風評被害で苦しむ、とある東日本の港港に行幸された際、陛下はこうおっしゃったそうです。

「食事にこの海でとれた魚を頂けませんか」

これを聞いた漁民は号泣したそうです。

当時、民主党政権の閣僚たちは、防護服を着て「慰問」に出かけ、ゴム手袋で握手したのです。

人としての覚悟に、天と地の差がありました。

陛下の難行が、その死によって解かれるのではなく、もっと違う方法がありはしないか、改めて国民一人一人が考えるべき時です。 

天皇とは日本のあり方そのものです。

日本人は陛下のお姿を通して、善き日本人とは何かを教えて頂いてきたのです。 

私は陛下がご公務をされなくとも、そのまま在位されて、死が私たち国民と陛下を分かつまで共に生きたいと願ってきました。

しかし、陛下の強すぎる責任感はそれを許さなかったようです。

陛下は摂政すら拒まれたのですから。

また、陛下は崩御に際しての1年間におよぶ皇族の重い努めについても言及されていました。

これは、単に皇族ばかりではなく、先帝が崩御された後に日本を覆った重苦しい自粛の空気を、陛下が危惧なされたのだと思います。

陛下はそこまで考えられて、ご発言なされたのです。

まずは、陛下のお気持ちを素直に受け止め、陛下のご希望を第一にして考えていこうではありませんか。

そしてお願いですから、護憲派も改憲派も、つまらない政治的色気を出さないで下さい。

                         ~~~~~~~~

象徴としてのお務めについての天皇陛下お言葉(全文) 

戦後70年という大きな節目を過ぎ、2年後には、平成30年を迎えます。
 私も八十を越え、体力の面などから様々な制約を覚えることもあり、ここ数年、天皇としての自らの歩みを振り返るとともに、この先の自分の在り方や務めにつき、思いを致すようになりました。
 本日は、社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら、私が個人として、これまでに考えて来たことを話したいと思います。

 即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました。
伝統の継承者として、これを守り続ける責任に深く思いを致し、更に日々新たになる日本と世界の中にあって、日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています。

 そのような中、何年か前のことになりますが、2度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました。
既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。

 私が天皇の位についてから、ほぼ28年、この間私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました。
私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。
天皇が象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めると共に、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。
こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました。
皇太子の時代も含め、これまで私が皇后と共に行って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした。

 天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます。
また、天皇が未成年であったり、重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には、天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。
しかし、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。
 天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。
更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。
その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。
こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。

 始めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。 

 国民の理解を得られることを、切に願っています。

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尖閣諸島に漁船230隻、公船多数が侵入 その火遊びの意図は?

Dsc_8323
困った国というのは、こんな時期に紛争は起こさないだろうという国際常識を、お手軽に破ってくれるものです。 

中国が東シナ海・尖閣水域に、漁船を230隻終結させ、それを守る形で中国海警の公船を6隻投入しました。 

Photo小笠原サンゴ乱獲に到来した中国漁船群 中国の通信社配信

まぁ、フツー、この「平和の祭典」期間は国際友好に泥をかけるまねは恥ずかしくて出来ないもんですが、やっちゃうですな、この中国とロシアという国は。 

2008年8月、北京五輪の真っ最中でしたが、ロシア軍は南オセチアに軍を侵攻させ、大規模な戦闘に拡大しました。 

そして今回は、かつて自分の五輪に泥を塗られた中国が、東シナ海をきな臭くさせています。 

それを報じる産経新聞(8月6日)です。
http://www.sankei.com/world/news/160806/wor1608060058-n1.html

「尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域に中国が漁船約230隻を集結させたのは、日本の実効支配を崩すため新たなステージに踏み出そうとする習近平政権の明確な意思がうかがえる。南シナ海問題への関与を牽制(けんせい)する狙いもあるようだ。」

これが中国特有の「人民戦争」戦術です。

「人民戦争」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、毛沢東が定理化したもので、正規軍だけが戦うのではなく、「人民を組織し、人民に依拠して戦う」という戦争のやり方です。 

なんのこっちゃと思われるでしょうが、今の全世界でISが仕掛けているテロを思い出して下さい。 

ISには正規軍もいますが、それ以上に私服を着て一般市民のような顔をしたテロリストがいきなり爆弾を投げたり、機関銃を乱射しますね。 

このように正規軍と民間人の姿をした戦闘員に区別がない、新しい戦争の形をつくりだしたのが毛沢東です。

現代ではこれを非対称戦争と呼んでいます。

非対称というのは、こちらはしっかりとハーグ陸戦条約に則った正規軍でも、中国側はそんなルールの外にいる連中がゴチャゴチャになって向かってくるからです。

それも政府や軍の施設ではなく、一般市民の生活の場で戦争を仕掛けてきます。 

パリ同時テロやバングラディシュのテロなどが典型ですが、あのような世界中のテロリストの教典を作った教祖が、実はこの毛沢東という男です。 

中国は軍が近代化するに従って、人民戦争戦術からだんだん離れて行くようになりましたが、どっこいゴリゴリの毛沢東主義者を自認する習近平は、この人民戦争戦術を手放そうとはしていません。 

まずは、現在の21世紀初頭という時期を中国はどう捉えているのか知っておきましょう。 

参考になるのは、毛沢東の「持久戦論」です。 

「持久戦論」は戦争を三段階に分けています。 

第一段階は、圧倒的に近代化が進んだ日本に対して、経済的にも遅れて、軍事的にも弱かった頃の時期で、これを「戦略的防御」の時期と考えました。 

そして第二段階は、ホントかウソか知りませんが、とにもかくにも世界第2位の経済大国になり、ジャブジャブと軍備に金をかけられる段階に到達したただ今現在、と中国は認識しています。 

しかし、日本やその同盟国の米国相手に戦って必ず勝つという確信まではありません。 

ですから、この時期を「戦略的対峙」の時期とします。

ちなみに、この第2段階で、彼我の力関係を逆転すると第3段階の「戦略的的反攻」時期になります。 

それぇ、行けぇ、という大号令がかかるというわけです。

現在の戦略的対峙の時期には、敵が最も危険だと感じているところや、弱いところに向けて行動を起こし、敵を弱体化し牽制します。 

つまり鼻面をかき回して苛立たせるのです。 

先日ご紹介した毛沢東語録がいう、「 敵進我退、敵駐我攪、敵疲我打、敵退我追(敵が進めば退き. 敵が止まれば撹乱し. 敵が疲れれば攻め. 敵が退りぞけば追撃する)」のうちの「敵駐我攪」の時期です。 

この第2段階の時期のキモは、大きい力を集中して敵の小さい部分を攻撃することです。 

尖閣海域侵攻の場合は、圧倒的多数の漁船を集めて、それを護衛させる形で海警を大量投入します。 

つまり中国流にいえば大量の民間漁船という「人民の海」に紛れ込んで、彼らを侵攻させ、日本の弱点を叩くという仕掛けです。 

もちろん、この漁船に乗っているのはただの漁師ではありません。 

「今回も漁船に乗り込んでいるのは「射撃などの軍事訓練を受けた漁民」(中国軍事研究者)で、中国当局や軍の意を受けて動く民兵の一種とみられる。」(産経 同) 

この漁民に似せた中国の民兵のことを、中国は「海上民兵」と呼んでいます。 

これは陸軍の民兵の海上版です。 

漁民を軍事訓練を施して、軍の指揮下に置きます。

かつて小笠原でサンゴの乱獲しに大量に到来したのも、この海上民兵とそれが指揮する漁船群だとも思われています。 

Photo_2小笠原サンゴ乱獲時の中国漁船群 スクラムを組んで、海保に対抗している。中国通信社

この海上民兵は、2015年5月初旬から7月中旬まで、パラセル諸島(西沙諸島)で90隻を越える数が出没したことが確認されています。
 

この時の目的は、「中国海洋石油981」の大型掘削装置の防衛のためでした。 

これが今回は、尖閣諸島海域に牙を剥いたわけです。 

そして中国公船がこれを護衛しているのは、ここはあくまでも中国領海であって、中国の正当な漁業権を守るということを主張したいわけです。 

つまり、中国による尖閣水域の実効支配です。 

やがてそう遠くない時期に、中国はこの実効支配の完成を目指すことでしょう。 

この海上民兵が乗った数百隻の「漁船」が大挙して尖閣諸島に押し寄せて、漁船で壁を作って尖閣を包囲するようにして、海保を寄せつけません。

そしてやがて上陸し、五星紅旗を立て実効支配宣言を発します。

相手が民間人なので、自衛隊に防衛出動を命じられないので、海保が対応します。

そして海警との小競り合いになり、首尾よく上陸した「漁民」を逮捕すれば、領土と国民の保護を名目にして中国海軍が介入し、海保の巡視船を攻撃します。

おそらく、数隻の巡視船が撃沈され、100人を越える海上保安官が死亡するでしょう。

さて、この難しい状況に政府はどのように対応するでしょうか。

このシナリオが、いわゆるグレーゾーン状況というものです。

まぁ 実際は準軍隊の海警と、中国軍の指揮下の海上民兵ですから、グレイではなく真っ黒ですが。

これが去年の「戦争法案」国会で、しっかりした議論せねばならなかった事態です。

これに対して野党陣営は、「戦争ができる国になる」という幼稚な反対に終始しました。

「戦争ができる」もなにも、今回のように戦争にエスカレートするかもしれな危険な行為をしかけられたらどう対応するのかを問うているのに、何言ってるんだか。

だいじなことは、仕掛けられた戦闘を拡大せずにどのように火消しをするのか、本格的二国間戦争にしないためにどうしたらよいのかなのです。

よく左翼の人たちは、中国軍が攻めて来るわけはないと主張しますが、彼らの脳内イメージは、たぶん中国軍が空母が波頭を蹴って進軍し、空を埋めつくす大編隊、といったところでしょうか。

まったくないとはいいませんが、中国がこんなマンガのような攻め方をするとは思えません。

先日の国際仲裁裁判所の判決を受けて、これを「紙くず」だとする中国と、それに対して日本をはじめとする周辺国は強い批判をしてきました。

これに対して、中国は南シナ海で大規模な軍事訓練をしてみせ、空母「遼寧」にロシアのコピー艦上戦闘機10機を載せて航行するなど威嚇行為を始めました。

戦前の砲艦外交そのものですが、なぜ遼寧は南にしか行かないのでしょうか。

理由は簡単です。南シナ海方面諸国には、「遼寧」を迎え撃つ能力がないからです。

もちろん、知られてきたように、この「空母」はバッチモンで、肝心の艦上から兵器を搭載しての離発着能力はないに等しいと言われています。これではただの航空機運搬船です。

しかも裸の空母ほど脆弱な存在はないので、今の時点では巨大な標的がブイブイ言わせて、弱い者いじめにイチびっているだけのものにすぎません。

一方、今回の偽装漁船と公船による侵入は、かつてフィリピンから南沙諸島を奪った枯れた技術で、自称「空母」よりはるかに脅威度が高いのです。

まずは海上民兵が乗った漁船を入れ、公船を投入し、頃合いを見て軍艦や航空機も入れながら日本の反応を観察していきます。

さながら、サラミソーセージを薄く一枚一枚切っていくようにして、日本領を犯していくのです。 

彼ら中国は、はるかに狡猾なリアリストなのですから。 

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日曜写真館 燃え上がる向日葵

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1945年8月6日午前8時15分 広島市島病院上空

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今日は核兵器が初めて人類の頭上に投下された日です。

改めてその意味を検証します。2013年5月29日の記事を再録しました。

                       ~~~~~~~~

1945年8月6日午前8時15分広島市島病院上空で何があったのかをみていきましょう。

上空580メートルで炸裂した原爆から照射されたガンマ線、中性子線を中心とする高エネルギーの放射線は、直下の人々の頭上に降り注ぎました。TNT換算で15キロトンでした。

その結果、当時の広島市の人口35万人(推定)のうち約半数に当たる9万から16万6千人が被爆後2カ月から4カ月以内に死亡したとされています。

ではなぜ、この広島に原爆が投下されたのでしょうか。もちろん韓国中央日報キム・ジン記者が傲岸に言うように「神の懲罰」などではありません。

1945年(昭和20)年6月の検討会議で、原爆の使用については、「労働者の住宅に囲まれた軍需工場に、事前の警告無し」で投下すべきだと決定されました。

この会議では開発に携わった科学者の一部から無警告の原爆投下に反対する発言が相次ぎましたが、結局押し切られてしまいました。

後に、これに関わった多くの科学者は終生、良心の咎めを受け続けることになります。

実際、当時の我が国には継戦能力はほとんど失われており、政府、軍部内にも和平を模索する動きが強くなってきていました。

軍事的に見ても、まったく広島・長崎への2発の核攻撃は不要なものだったのです。

もし軍事的な攻撃目標が必要ならば、広島の近隣にある呉軍港を標的にすればいいのであって、非戦闘員が大部分を占める都市に対しての核攻撃にはいかなる正当性も見いだせません

百歩譲って軍事的圧力により日本を降伏に追い込みたいのならば、後にさんざん核実験をしたような無人島で実験してみせればいいのです。それだけで、当時の日本政府は降伏を決意したでしょう。

米国は、大戦の後にくるであろう対ソ戦に備えて核兵器の実戦データを欲していました。砂漠などの実験では威力が読みきれなかったからです。

ですから、現実に人が大勢住む都市で、無警告に落としてみる「必要」があったのです。このようなことを人体実験といいます。

広島・長崎合わせて約21万人の犠牲者は、生きながらにして人体実験に供せられたのです。

言う必要もないですが、非戦闘員の大量殺戮だけを目的とした明白な戦争犯罪です。

これを戦争犯罪と呼ばなければ、なにを戦争犯罪と呼ぶのですか。

「だけ」と書いたのは、先程述べたように広島市には師団司令部があるのみで、軍事目標は皆無に等しかったからです。

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さて、上の写真を御覧ください。Google Earthによるものですが、広島は海に面して三方を山によって塞がれている地形だとお分かりいただけると思います。

このような地形は、もうひとつの被爆地・長崎にも共通していますが、核爆弾の数十万気圧の超高圧と、数万度に達する超高温、そして風速280メートルもの爆風を効果的にするにはうってつけの地形でした。

鍋の中で爆発させるほうが、広い場所でするよりも効果が高められると計算したのです。

また、市街地範囲が直径3マイル(約4.8㎞)以上あることも条件でした。この規模ならば市民の人口が30万人ていどに及び、殺傷力の測定が容易になるからです。

5月11日の第2回投下目標検討会議で、このような条件を持っていた京都、広島、横浜、小倉、新潟(※)、長崎、京都などが挙げられ、これらの都市は広島が第一目標となるまで空襲が差し控えられました。

空襲してしまうと、核兵器の威力が測定できなくなるからです。この空襲禁止指示は5月28日に出されています。

余談ですが、京都が空襲されなかったことが米国の文化的配慮という説がありますが、米国は京都を原爆投下対象にしていたために空襲しなかっただけです。

こうして8月6日の当日、小倉は近隣の八幡製鉄への空襲の煙て視界が閉ざされており、広島は晴天でした。この瞬間、広島の運命は決まりました。

照準点は市内中心部にあるT字型の相生橋。午前8時15分に投下された原爆は、相生橋の南東約300メートルにある島病院の上空約600メートルでさく裂しました。

それは人々が、夏の暑い日差しの中で一日の平和を祈りながら職場や学校へ急いでいる時間でした。

オバマが広島演説で述べたように、母親は乏しい食料から精一杯の弁当を作り、14歳の少年を送り出しました。

そしてその少年は、学校への途上、数万度の高熱により炭化した柱に変わっていたのでした。

※ 新潟だけは平野部にあって例外です。おそらく日本海側の都市を投下候補の予備で考えていたものと思われます。

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HNタンタン氏に答えて 中国はいまだ毛沢東の定理に沿って動いている

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HNタンタン氏という人から、過去記事についてこういうコメントがきました。初めはコメント欄で答えたのですが、本質的問題もあるので、加筆して記事にします。
過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-50c8.html 

まずはHNタンタン氏のコメントです。 

「と持論をのべられても 日本が中国を領海侵犯だと訴えて勝てると思います?明確な領海侵犯だという証拠がないと 日本が恥をかくだけ。
感情論で無害航行権でないと言われてもねぇーという感じ。例えば領海内をグルグルと航行したとか、意味もなく長時間領海内に停泊したとかさー。証拠もないのに領海侵犯などと叫んでも中国に足下をすくわれるだけ。」
 

この人はいくつも勘違いをしていますが、証拠うんぬんは後述するとして、最大の間違いはなんだと思いますか? 

この情報艦の領海侵犯に対して、日本政府は抗議をしなかったのです。

こここそが問題です。 

「抗議する」という外交行動が、相手国との摩擦を呼ぶだけだけだと思っているなら、まったく間違いです。

このようなことが起きるとかならず野党は、「話し合え」「武力より外交を」みたいなことをいいますが、実力行使するか否かは高度な政治判断ですので置くとして、抗議は原則的にやらねばなりません。

「抗議する」という外交行為は、紛争を求めているのではなく、正反対にこれ以上の紛争を回避しましょう、というシグナルです。 

もし、的確に抗議しない場合どうなるのかと言えば、相手国はここまでの線なら日本は許容しているのだと錯覚することになります。 

この場合なら、中国は日本は弱腰だから、情報艦という非戦闘艦種ならば、日本領海でやりたい放題だと勝手に思うことになります。 

実際、この情報艦はこの後に大東島で似たことを仕出かして、平然と帰っていきました。

この事件の直前にあった戦闘艦の尖閣諸島の接続海域への侵入には、深夜に大使を呼び出すという異例の強い抗議をしたために、とりあえずは以後の新たな戦闘艦の侵入はなくなっています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-a221.html 

学習したのです。 

中国にも、いちおうは学習能力は貧弱ながらもあることはあるのです。 

ただし、あの国は「永遠の古代国家」ですから、素朴な力の信奉者です。

力の強い者が覇者として君臨するという、まるで三国志のような世界観をいまだに持っています。 

ですから、習がオバマとの会談で、ぬけぬけと「太平洋をお前とオレで分割統治しようぜ」などという大航海時代もどきのことを平然と言いだして、オバマをのけぞらすわけです。 

ですから、中国人は、こちらが強く出れば引いてみせ、様子をうかがい、紳士的にでると、それは弱いと思ってあなどって攻勢をかけるというがき大将のような行動原理をもっています。 

これを定理にしたのが毛沢東です。毛沢東語録にはこのような有名な一節があります。

敵進我退、敵駐我攪、敵疲我打、敵退我追
(敵が進めば退き. 敵が止まれば撹乱し. 敵が疲れれば攻め. 敵が退りぞけば追撃する)」

分かりやすいですね。 

実は中国は、いまだこの毛の定理に忠実に従って動いています。 

尖閣の接続水域に海軍艦艇を入れないで、互いに公船、つまり海保で対応するというのが暗黙の相互了解ラインでした。

毛がいう「敵駐我攪 」の段階です。

え、そんな了解協定はないだろうって。ないですよ。そんなもの。 

二国の利害が対立する事案において、そのような協定は戦闘が終了してから結ばれるからです。 

有体に言えば、ドンパチやってしまってから、その戦後に取り決めるのです。

Photo_6

手前が中国海警。接近寸前で警戒に当たっているのが日本の海保。このカラーリングは海保の世界基準。

そうならないために、海軍は引いて海保という弱武装の海上警察(海保)を矢面に立たせているのです。 

互いの海軍(海自は「軍」ではありませんが)は、海保を遠巻きにして見守るというのが、これまでの構図です。 

状況のレベルは、毛の定理「敵駐我攪」(敵が止まっている)状況だから攪乱せねばならないのです。 

この攪乱行為が、尖閣の戦闘艦侵入事件です。

525525 馬鞍山http://seesaawiki.jp/w/namacha2/d/054%B7%BF%A5%D5%...

続く中国情報艦の領海侵入も、中国にとって同じ状況認識です。 

日本が情報艦というグレーゾーンの艦種を領海侵犯させた場合、どう対応するのか瀬踏みしたわけです。

つまり、もう一回別な手段で日本を試したのです。毛の定理「敵疲我打」段階に移行するか日本の動きを見極めたかったのです。

Photo

中国海軍 東調級(ドンディアオ)情報収集艦

政府の対応だけではありません。

むしろ日本国民の中から、このタンタン氏のように妙にものわかりよく、「いや証拠もねぇしさ、無害通航権じゃん」とか、果ては稲嶺名護市長のように「日本が悪い」とか、はたまた孫崎氏のように「尖閣が日本領だと国際社会は認知していない」などと言い出す者がどれだけ出るのかを、じっと観察していたと思われます。 

ちなみに念のために言っておくと、あの情報艦の領海侵犯は、タンタン氏の言うように、無害通航権(Innocent Passage)にはあたりません。 

それは国際海洋法第19条、1のC項、j項に明らかです。

●国連海洋法条約 UNCLOS 第19条第1項
(c)沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることになるような情報の収集を目的とする行為
(j)調査活動又は測量活動の実施

情報艦という艦種が国際海洋条約ができた時になかっただけの話で、国際仲介裁判所にでれば日本が勝ちます。 

まぁ、国際海洋法から離脱すると叫んでいる国に対して、なにを突きつけても「紙くず」でしょうがね。

その国際仲介裁判所の法廷に提出されるべき第1級資料が、追尾していたP-3Cによる映像証拠、監視記録、レーダーの航跡資料などです。 

朝日新聞もこう報じています。タンタン氏は読まなかったのでしょうか。

防衛省は15日、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦1隻が同日午前3時半ごろ、鹿児島県口永良部島の西側の領海を南東に進んでいるのを、海上自衛隊哨戒機P3Cが確認したと発表した。午前5時ごろには、この軍艦は同県・屋久島の南側の領海を出て、南東へ向け航行したという。」(朝日新聞 2016年6月15日)http://www.asahi.com/articles/ASJ6H3Q9ZJ6HUTFK005.html

海自P-3Cがなんの記録もとらず、ポカーンと「ヤッホー、中国の船が行くわ」と眺めていたとでも(笑)。 

Photohttp://www.47news.jp/localnews/aomori/2015/11/p3c_...

黙認することは、平和ではなく逆に紛争への近道です。

なぜなら、中国は必ず私たちがエスカレーションを許したと勘違いするからです。 

原則的にひとつひとつきちんと抗議していく姿勢こそが、感情的紛争を防止するために大事なことなのです。

さもないと中国という国が、「敵疲我打」(敵が疲れたら打ち)、そして最終的には「敵退我追」(敵が逃げれば追う)という政治的力関係を生み出していくことになっていくからです。

原則的に対応するということは、一見強硬姿勢に見え、紛争を招くと思う人もいるようですが、違うのです。

武力対応をするかしないかは、その状況判断によって一概に言えないのですが、その構えはあることを知らしめておく必要はあります。

2004年、中国海軍の漢級原子力潜水艦(SSN)が、石垣島と多良間島の間の領海を潜航したまま通航しようとしたことがありました。

完全に国際海洋条約20条の禁止行為に該当します。

第20条はこう述べています。

●国際海洋法第20条 
潜水船その他の水中航行機器:潜入船その他の水中航行機器は、領海においては、海面上を航行し、かつ、その旗を掲げなければならない。

このように潜水艦は浮上して、海上を国旗あるいは海軍旗を掲げて航行しなければならないからです。

さもないと、沈められても文句はいえません。

現実にス.ウェーデンは、冷戦期に潜行したまま領海侵犯したソ連潜水艦を沈めたことがあったといいます。

それに対して海上警備行動の発令を受けた海自は、戦後初の護衛艦とP3Cによる潜水艦狩りを実施しました。

完全に捕捉し、アクティヴピンガーという強烈な探信音を中国原潜にぶつけ続けたのですが、これはいつでもお前を撃沈できるぞという死刑宣告の音です。

結局、政府の判断で寸止めとしたものの、中国原潜艦長は失禁したことでしょう。

以後、中国潜水艦の領海侵犯が途絶えたのは当然のことです。

このように、中国という「現代に残る古代帝国」と対峙するには、不法行為にはしっかりと抗議し、二度とさせない外交的気迫と、いざという時の構えが大事なのです。

 

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北朝鮮ノドン発射の意図

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北朝鮮がノドンを、日本の排他的経済水域に向けて発射しました。

2発発射し、1発は失敗したようです。

「秋田・男鹿半島の西250キロ EEZに初の落下
韓国軍や米戦略軍によると、北朝鮮は3日午前7時50分ごろ、黄海に面した西部・黄海南道(ファンヘナムド)殷栗(ウンユル)付近から日本海に向け、中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程1300キロ)とみられる2発を発射した。防衛省によると、うち1発が約1000キロ飛行し、秋田県・男鹿半島の西約250キロの排他的経済水域(EEZ)に落下。船舶や航空機の被害は確認されていない。北朝鮮のミサイルの弾頭部分が日本のEEZに落下したのは初めて。もう1発は発射直後に爆発したとみられる。」(毎日新聞8月3日)

北朝鮮の弾道ミサイル発射実験は、今や日常茶飯事になり、日本人はどこかで麻痺してしまっています。

麻痺しちゃダメです。

今回の弾道ミサイルは、日本にだけ向けられた挑発行為なのですよ。

しっかり正しく恐れてやらないと、国民を飢えさせてまで核ミサイルを作り続けている金正恩様に失礼というものです。

日本のメディアの北朝鮮ミサイル報道がボケているのは、先日のムスダン6号と今回のノドンとの違いをちゃんと説明しないからです。

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結論から言うと、ムスダンは米国を標的にしたものに対して、今回のノドンは日本列島をターゲットにして作られたミサイルです。

つまり、今回のミサイル実験は、私たちの頭上を標的にしたものだということです。

場所を確認します。

秋田県男鹿半島です。

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次に発射した黄海南道(ファンヘナムド)殷栗(ウンユル)の位置です。

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ほぼ真東に向けて発射しているのが、分かります。

これは地球の自転方向に発射するほうが技術的に簡単だということもありますが、それだけではなく、このノドン発射基地の先には日本列島が存在しているからです。

ではもう一枚、このノドンが落ちた男鹿半島をさらに直線で延長してみます。着弾地点の先に、なにがあるでしょうか。

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お分かりでしょうか。ノドンの着弾地点の先には、空自と米空軍が共同使用している三沢基地があります。

米空軍がこの三沢に基地を構えている軍事的理由は、北朝鮮とロシアの沿海州側に対しての抑えです。

つまり、北朝鮮はこう言っていることになります。

「おい、日本人。オレたちはいつでも自由な時に、自由にお前らに核ミサイルを打ち込めるんだ。今回は三沢の米帝の基地で試してみたが、今度はどこにしようかね」

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さてノドンは、国際核兵器開発コネクションの中で作られました。

パキスタンとイランで発射実験が行われ、北朝鮮はその実験データをシェアして完成させました。

パキスタンはガウリとして配備し、核弾頭を500~700㎏搭載する核ミサイルとして実用化しました。

当然のこととして、技術提携関係にある北朝鮮は同等の核ミサイル保有能力を有していると考えるべきです。

専門家は、北朝鮮は既に、ノドンに搭載可能な濃縮ウラン型原爆を10発以上保有していると見ています。

Photo_3(出典 Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea 2012 - U.S. Depertment of Defense
邦訳 http://obiekt.seesaa.net/article/358829852.html

上図で「ランチャー数」とあるのが、車両移動式発射装置(TEL・ 輸送起立発射機)です。

移動式発射装置は大変にタチが悪いもので、どこにでも移動でき、好きな場所から発射できます。

おそらく北朝鮮はこれを山岳地帯に隠して撃つでしょう。

ですから、これを見つけ出すことはほぼ不可能ですので、先制攻撃もできません。

ひとつのランチャーには5~6発のミサイルが用意されていますから、ノドンとムスダンには、各300発が準備されています。

この300発が、仮にすべて同時に発射された場合、日本列島に秒速3キロで到達し、10分で着弾します。

北朝鮮上空のミサイル早期警戒衛星と日本海側にあるXバンドレーダーは、確実に襲来するミサイル群を探知するでしょう。

しかし、それでお終いです。

日本は「探知するだけ」だけしかできません。

なぜでしょうか?

日本の防衛の最大の弱点は武器などのハード面にはありません。その運用思想が歪んでいることです。

迎撃不可能なので、仮に核兵器が搭載されていた場合、中規模都市なら一瞬で全滅します。

日本にはノドンを高い確率で撃墜できるはずのSM-3やPAC-3があるのに、どうしたんだとお思いになるでしょうね。

日本は弾道ミサイル迎撃能力において、おそらく世界の最先端の技術力を持っていますから、撃った瞬間に探知し、直ちに迎撃してしまえば、全部とはいわずとも、相当数を撃ち落とすことは可能です。

残念ですが、現実には不可能です。それは運用面において重大欠陥があるからです。

日本は一回ごとに「ミサイル破壊措置命令」を出さねばならず、それを受けないと自衛隊は迎撃できないからです。

ノドンが着弾するまでの10分間で可能なことは、せいぜいが防衛大臣が首相承認は初めから諦めて、自衛隊法82条3項の「緊急対処要領」を超解釈して、自衛隊に迎撃命令を出す電話機に手をかけたくらいまでです。

もし、東京を狙っていれば、電話機に手をかけた瞬間に政府中枢は防衛大臣ごと蒸発しています。

しかも後に、超法規だとしてさぞかし国会で政府は野党に糺弾されることでしょう。

まぁ国会というものが、残っていたらの話ですが。

これがわが日本のリアルな姿です。

北朝鮮のミサイル問題とは、私たちの国の国内問題なのです。

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小池知事 「守屋解任攻防事件」をケーススタディする

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小池氏が、おっと、もう小池知事と呼ぶべきでしょうが、初日の各党派挨拶回りをしたところ、自民党都議団幹事長・内田茂氏の一の子分・川井しげお議長は後ろに手を回して握手を拒否したそうです。
 

下がその時の写真ですが、おお、みっともない。いい大人が。この1枚の写真でこの連中の体質が分かります。 

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どこぞの村議会かって。おおよそ首都政界の最大党派とは思えません。 

舛添問題で対応不能となり、官邸の介入を受けるまで、グチャグチャとあーでもない、こーでもないと解決能力がないところを国民にさらけだしながら、いまだ反省の色すらありません。 

ま、これが自民党の正直な顔のひとつであることは確かです。 

私が「自民党の狗」になりきれないのは、このような因循姑息な体質を保守と勘違いしているような政治家が大勢いるからです。

まるで、蓋を開けるとプーンと腐臭が立ち込める古ぼけたザーサイ瓶のよう。 

現代政治家にとって、自分の像をテレビという劇場にどう写し、視聴者である国民に、どのような魔法をかけるのか意識している者が勝利します。

都議団などまさに小池氏の正反対で、裏での根回しと利権配分が政治だと勘違いしているような人たちです。

このテレビを意識的に使用し、政治手法にとりこんだのが小泉純一郎氏であることには、誰も異議がないでしょう。

今回の小池氏の「ゆり子劇場」は、この小泉劇場の再演です。

自民党内部の「敵」を明確に設定し、彼らとの闘争を宣言して、反自民票まで取り込む手法は、かつての「自民党をぶっ壊す」宣言して始まった小泉劇場を彷彿とさせます。

わざわざ無人の時を選んで、自民党都連事務所に要請文を届けに行き、いらついている石原ジュニアの鼻面を引き回すようにしていいようにあしらうというあざとさは、まさに師匠ゆずりです。

私は小池氏を理解する上で、小澤一郎氏の存在はほぼ無視して良いかと思います。

当選後にTVではしつこく小澤氏とデュエットしている映像が流されましたが、今の彼女にとって小澤氏など自民に入った時点で既に負の政治資産でしかないはずです。

小池氏に強い影響を与えたのは小泉氏ですが、彼には高弟がもうもうひとりいました。

小泉氏の郵政選挙時の幹事長にして、後に官房長官にまで押し上げた、安倍晋三氏です。

つまり、小池氏と安倍氏は時期こそズレますが、兄弟弟子の関係に当たるのです。(小池氏のほうが姉ですが)

さて、今回、直弟子対決、あるいは直弟子共同となるでしょうか。やや野次馬的でもうしわけありませんが興味があるところです。

ケーススタディとして、小池ゆり子の勇名を上げた、「防衛庁の天皇」こと守屋武昌氏と攻防戦があります。 

当時と配役まで同じで、第1次政権時の安倍氏でした。 

守屋氏との攻防は、小池氏の『女子の本懐』という本に詳細に記されています。 

大変に面白い本で、政界に太いパイプを持つ守屋氏が専横を極めている防衛庁が舞台となる、攻防戦が描かれています。

今でも似たようなものですが、官僚は大臣を御しやすい素人としてしか見ていません。

小池氏はそれをこう書いています。

「いっとき通りかかる「通行人」である大臣には面従腹背で接するのがプロの役人であるとの説がある。「通行人」ばかりだから役所には「天皇」が生まれるともいえる。」

安倍首相はこれを問題視して、防衛庁の組織改編案を出します。

小池氏が選ばれたのは、いままで守屋氏に「恩義」を感じる必要がない政治家だったからです。

防衛庁は、自衛隊24万を束ねる官庁が故に、選挙協力を通じて政治家に影響力を及ぼしやすい所でした。

そこにメスを入れる執刀医に選ばれたのが、小池氏だったというわけてす。

「8月6日 安倍総理に9月1日の組織大改編を目前にした防衛省人事案を示した。就任5年目の守屋次官を退任させ、後任に西川官房長をという内容だ。
(安倍)総理は「5年目でしょ。いくらなんでも長すぎますよね。進めてください」と、反応した。」

当然、「防衛庁の天皇」はいたくお怒りになり、こんな小娘になにが出来るのかとばかりにあらゆる手段で小池氏を潰そうとします。 

「人事についてはこれまで守屋次官から案が上がっていた。大掛かりな変更だったが、次官ポストはそのままだった。「あっ」と思った。この人は、ずっと居続けるつもりなのだ。」

官邸人事案は既にどこからか漏れており、それを入手した守屋氏は、自分の人事案をぶつけてきます。

そして、それどころか、守屋氏は自分が退任させられるということをマスコミにリークしてしまいます。 

「その夜、私の人事案がマスコミに漏れているという情報を耳にした。守屋氏本人に連絡する必要があると考え携帯に電話した。待てど暮らせど、返事はなかった。
8月7日 毎日新聞3面に「防衛省・守屋次官退任へ」という記事が掲載された。守屋次官からの連絡はなかった。」
 

次官が大臣と連絡を遮断するというのですから、スゴイね。 

しかも呑気な官庁ならともかく、防衛庁といういつ何どき有事が起きて緊急対応せねばならないか分からないセクションで、次官が大臣とのパイプを自ら切ったのです。 

この風景、まさに昨日の自民党都議団に被りますね。

小池氏は守屋氏を正式に呼び出し、解任を告げます。

「守屋氏を呼び込み、次官退任を言い渡した。守屋氏は「断じて困る」と反発した。
8月11日 アメリカ出張の間に、守屋次官が官邸だけでなく政界関係者のところにも直訴して回ったという噂がかけ巡っていた。」

このとき守屋氏が作ろうとしていたのは、小池包囲網です。

さて、それに対して、安倍氏はどう対応したでしょうか。

「午後6時過ぎ、安倍総理のもとへ。
安倍総理「組閣後の人事検討会議で決める。やっぱり人事案が漏れたのは問題だよね」官房長官と同じ言葉に私はがっかりした。私は用意した進退伺いを置いた。安倍総理は急に悲しそうな顔に変わった。
「辞めるなんていわないでください。お願いだから」と、困惑した声が返ってきた。」

う~ん、このあたりが名はゆり子ですが、実は烈女の小池氏と、どこかまだボンボンのひ弱さが残る第1次安倍政権時の安倍氏との温度差を感じます。

おいおい、お前が進めた防衛庁改革なのに、前線指揮官をフォローしないでどうする、と誰しもが思います。

今と違って、当時の安倍政権には自民党内の守屋擁護の声を押さえきる力量がなかったと思われます。

結局、このいきさつで、守屋氏と刺し違えるようにして小池氏は辞任します。

というわけで、この前回のケースを見る限り、官邸は小池氏と一定の距離をおきつつ、かといって敵対はせずにぬるい支持を送ることになると思います。

ただし、互いにそうとうにレベルアップしていますから、予断は許しませんが。

今後の展開ですが、これだけの風を背負った小池氏ですが、慎重に、しかし徹底した改革を来年都議選まで進めることでしょう。

もうひとりの影の主役だった官邸は、小池氏のお手並みを拝見しながら、拙速な動きは控え、時期を見てなにかしらの動きに出る可能性もあります。

安倍氏が石原ジュニアを閣内に残したのは、そのための深慮遠望なのかどうなのか、菅さんくらいしかわからないでしょうね。

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東京都知事選 4野党共闘の終焉が見えた

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今回の都知事選は、ひとつの副産物を生んだようです。 

それは4野党共闘路線の実質的破綻が見えてきたことです。 

今回の鳥越氏に対しては「オール東京」どころか、日本の左翼・フェミニズム陣営が総掛かりで支援した観があったのですが、ダブルスコアを喫する大敗をしました。 

聞くところによると、この大敗を鳥越陣営は、「政府の内調を使った謀略のためだ」と総括しているようです。 

鳥越さんたち、こういう陰謀史観的総括していると、もう後はありませんよ。私はかまいませんがね。 

民進党の敗因はいくつもありますが、最大のものは基礎票すらまとめきれなかったからです。

・民進党支持層の投票先
・小池氏・・・30%
・鳥越氏・・・60%
・増田氏・・・10%

鉄の団結といわれた共産党ですら、2割が小池氏に流れました。

民進党に至っては、小池氏に3割食われ、増田氏にも1割持っていかれるのですから、基礎票が丸ごと瓦解したも同然です。

しかも民進党は、鳥越氏の反原発公約で、東京連合の主力である電力労連にソッポを向かれ、連合系の選挙マシーンが機能停止というていたらくでした。

この民共合作路線を進める限り、連合は民進と決別するか、容共と反共に分裂するでしょう。

さて、今日はこの東京で起きた4野党共闘大敗北という事態を、同じ4野党共闘で勝利した先日の参院選沖縄選挙区と比較してみることにします。

というのは、なぜ4野党共闘が沖縄だけで勝てて、他の地域ではまったくダメなのか、その理由が分かるからです。

ちょっと数字が続きますが、ご勘弁ください。 

島尻氏は苦汁を呑みましたが、基礎票が崩れたかどうか、2010年の参院選と較べてみます。

前回参院選・島尻候補得票数
・2010年参院選   ・・・258,946
・2016年参院選   ・・・249,955

約9千票減らしていますが、「オール沖縄」陣営が言うような保守陣営の大敗でありません。

むしろ島尻陣営もしっかりと基礎票は押さえきっていますから、シンザト事件というウルトラ逆風によく耐えたと評価してもいいくらいです。 

ではなぜ、伊波氏に35万票取られて、負けたのでしょうか? 

答えは簡単です。左翼陣営側の党派基礎票の積み上げによる集約効果のほうが勝ったからです。 

2010年の参院選と較べてみれば、お分かりいただけると思います。 

この時、沖縄左翼陣営は従来どおり、政党別に候補を立てて負けています。

・山城博治  ・・・215,690(39.70%)
・伊集唯行   ・・・58,262(10.70%)

山城氏には社民、伊集氏には共産党がバックについていましたが、左翼陣営分裂選挙でしたので、島尻氏に及びませんでした。

というか、ふつうは政党が独自候補を立てるのが選挙の常道であって、伊波氏に統一してしまったほうが異常なのです。

それはさておき、山城、伊集氏を合わせれば約27万ですから、保守票の25万~26万票と拮抗していますね。

そうなんです。

オスプレイ・辺野古問題が起きて、「オール沖縄」ができるまでは、保革は完全に五分五分の力でした。

本土の人たちは、マスコミが常に怒号とデモの島としてしか報じないので、沖縄のことを丸ごと「左翼の島」と勘違いしている人が多いのですが、違うのがお分かりになったでしょうか。

前回知事選、今回の参院選で左翼陣営が勝利できたのは、あくまでも「オール沖縄」という4野党共闘という共産党発案の人民戦線戦術が功を奏したからです。

これが勝利できるには条件には三つあります。

①地域で紛争が存在すること。
②共闘の相手となる中道左派、ないしは保守転向組が存在すること。
③カリスマ性を持った指導者が存在すること。

沖縄ではこの三枚のカードがすべて揃いました。

①オスプレイ配備。辺野古移転問題
②民進党県連・旧自民党の一部・沖縄経済界の一部
③翁長氏

ところが、沖縄以外ではこの3枚のカードは揃いませんでした。

東京ではどうだったでしょうか。

①待機児童・震災対策など山積
②民進党
③なし

①の問題は山積していて、待機児童だけではなくあまたあるのですが、野党連合にはそのための解決の政策が何も準備されていませんでした。

鳥越陣営がおっつけで出したのは、「住んでよし、働いてよし、環境によし」という冗談のような語呂合わせでしたから話になりません。

もうちっと準備してから立候補しろよ、と思います。

②は民進党でしたが、昨日述べたように岡田氏ひとりが野党連合に熱心なだけで、党内部では懐疑的な声が多数を占めつつあります。

おそらく、選挙後には岡田氏追及という形で火種となるでしょう。

③は、本来鳥越氏が果たすべき役割でしたが、まぁもういいでしょう、ご覧の通りです。

彼は今後、おそらくジャーナリストとしても、相手にされなくなることでしょう。

ストレスがたまりまくったでしょうから、ご静養ください。

実はもうひとつあるのです。

それは共産党の組織力です。沖縄も宜野湾市長選や今回の参院選を見れば分かるように、野党連合の実戦部隊は共産党です。

共産党の組織票が崩れ始めると、この野党共闘はボディだけ立派で車輪がない車のような状態になります。

この共産党から2割が小池氏に流れたということは、共産党の組織的締めつけが緩んできた兆候ではないでしょうか。

共産党はただの野党ではありません。「革命党」です。

党首選挙もなく、代表は密室で決まり、一端決まると十数年その地位にあります。

極端な上意下達体制が敷かれていて、下部組織が上級組織の命令に背くことは不可能です。

だから、共産党は強力な選挙マシーンだったのですが、これの弱体化の兆しが現れたのが、今回の都知事選であったようです。

共産党の小池晃書記局長は、選挙後に「民進党内でどういう議論が行われても、公党間の約束を守るのが当然のルールだ」と述べていましたが、今回の大敗を受けて、民進党は次の代表選で、岡田氏の民共合作路線を精算すると思われます。

民進党に冷静な頭脳があれば今回の敗因は、共産党と手を組んだことのツケです。

共産党支持者はおおむね60以上であり、無党派層や青年層の共産党への反発は想像以上に強いということが分かったのですから。

岡田さん、去年の国会前でのシールズに見た青年層の左傾化は、ただの幻影だったのですよ。 

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データで見る2016年東京都知事選

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都知事選が終わりました。結果は、ご承知のように小池氏の圧勝です。 

4野党共闘推薦の鳥越氏は、小池氏にダブルスコア以上をつけられ、自民党推薦の増田氏も120万票という大差をつけられて惨敗しました。 

小池氏は直接ではありませんが、舛添氏問題で浮上した都議会与党の改革を訴えました。

小池氏は選挙直後、TBSの質問に答えて、こう語っています。

「東京都の事業は多岐にわたっている、その中でまず情報が必要になってくると思っている。
いま方法論も、ベストな方法論も模索中だが、さまざまな方から内部告発も含めて情報を届けていただく、そのような受け皿作りを進めていきたい。
オリンピック・パラリンピックを前にしながら多額の税金がつぎ込まれているところでの公私混同、利益誘導、これについては明確にしていくべきだと思います。」

都政の意思決定が、どう行われているかはなはだ疑問だ。ひとにぎりのボスが決めていることが、ままある」

これは明確な、自民党東京都連幹事長・内田茂氏への挑戦状です。

彼女のこの気迫が、実に無党派層の5割、民進党の3割の票を呼び込んだのです。

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これらの票は、本来アンチ自民で、姿を変えれば鳥越氏に行ってもまったくおかしくなかったはずです。

この自民批判票がそっくり自民党籍のある小池氏に向かうという不思議さはなんなのでしょうか。

それは小泉首相の「自民党をぶっ壊す」というマジックを、小池氏がそばで見ていたから生まれたのでしょうね。

そして今回彼女は、勝つべくして勝ったのです。

就任からはいばらの道が約束されていますが、くじけないように。

さて大阪の橋下氏の時もそう思いましたが、自民党は府連、都連などの地方組織が利権集団と化してしまっています。

このオールド自民党の体質は自民中枢より、特に大都市部での組織にいまだ根強く残っています。

大阪では自民府連が、反橋下で共産党と相乗りすることすら厭いませんでした。

東京都連の内田氏には、オリンピック施設の利益誘導疑惑が浮上しています。

今回も小池氏一本でまとめられたのに、結局、都議会議員団のボスの意向に逆らえませんでした。

一回、自民党都連は解体して出直すのですね。

増田氏は不安解消を地道に訴えて奮闘しましたが、最後まで地味な印象はぬぐえませんでした。

なんというのか、ミニ・ヒラリーの小池氏、「日本を代表するジャーナリスト」の鳥越氏というケレンみたっぷりの候補に囲まれると、まったく華がない人なのです。

真面目なだけに、まことに気の毒です。

自民党の敗因は、ひとえに腐敗した都議会議員団と、石原都連会長の無能による自滅です。

そもそも増田氏を擁立した裏には、じゃじゃ馬の小池は手向かってきかねないが、官僚あがりの増田氏ならおとなしいパペットになるだろうという腹づもりが自民都連にあったはずです。

その辺が都民にも見破られて、風は反自民・反安倍の空気すら取り込んで小池氏へと吹くことになります。

おまけに最終段階で、あせった石原ジュニアが「小池の応援をしたら除名だ」と叫んでみたり、石原パパまでが「厚化粧の女」などと暴言を吐いて、オーンゴールを決めてしまう始末でした。

一方4野党連合の方は、自民の混乱に乗じるチャンスがあったにも関わらず、岡田氏が、都連の候補者を降ろす形で、鳥越氏を押し込んでしまいました。

そのために民進党の結束が乱れて、選挙期間中にまともに選挙運動をしているのは共産党だけのような状態となってしまいました。

今回の投票動向で、宇都宮氏が出たなら投票したいと答えた人の、実に3割が小池氏に流れたという報道もあります。

蓮舫などは下半身疑惑が出た瞬間に、街頭演説の支援を止めてしまい、鳥越氏の宣伝カーに乗っているのは上野千鶴子氏などの無党派フェミニストばかりの時期すらあったほどです。

元々、野党統一候補は共産党に配慮するあまり、左に傾きすぎた候補者が選ばれがちなために、民進党保守派には不満でした。

そこに土壇場で野党共闘主義者の岡田氏が、鳥越氏をねじ込んだのですから、党内保守は怒りだしました。

また候補者となった鳥越氏も、候補者としてはあまりに不適格でした。

老齢、病み上がりの上に、初期認知症疑惑、そして文春下半身スキャンダルと立て続けにパンチを浴びて、その対応も逃げの一手だったために、多くの都民から愛想を尽かされました。

鳥越氏が街頭で主張する政策も、民進党より共産党との親和性が高いものばかりで、それをその場の思いつきでしゃべるために、統一された共通公約を打ち出すにはほど遠い状況となってしまいました。

伊豆大島に行けば、その場のノリで、地方税と国税の区別もつかず、例証であげた英国のマン島がタックスヘイブンが故に、軽減税率が有利になっていることも知らずに、なにが「大島だけは消費税を5%にする」ですか。

呆れてものがいえません。この人の本業はたしかジャーナリストでしたよね。

全野党共闘は、地方においては沖縄のようにそれなりに破壊力のある戦術ですが、鳥越氏が締め切り直前に飛び込んできて、いきなり統一候補者になれてしまうようなあり方では、勝てる道理がありません。

「オール沖縄」が勝利しえたのは、明確な「共通の紛争」があり、「共通の敵」が設定できて、かつ、保革にまたがるカリスマ性があるリーダーがいたからです。

「オール東京」にはそのすべてが不在でした。

都政に関心がない鳥越氏のていどのふわふわした人気にあやかっていては、初めから勝負は見えていました。

かくして、下のデータでみればわかるように、都政批判への「風」は鳥越氏にはまったく向かず、ことごとく小池氏に吸収されてしまいました。

野村監督の箴言。「勝ちに不思議あり。負けに不思議なし」。

                      ~~~~~~

まずは、データからみていきます。 

平成28年 東京都知事選挙 開票結果(平成28年 8月 1日1時 05分確定)
http://www3.nhk.or.jp/shutoken2/senkyo/

●当日有権者数・・・11,083,304人
・投票率   ・・・59.73%
・前回投票率・・・46.14%
 

●当選 小池百合子(64)
・推薦政党・・・なし
・得票数・・・2,912,628票
・得票率・・・44.5%
・小池氏が得票率50%以上を取った地域・・千代田区、港区、豊島区、青梅市、東村山市

●2位 増田寛也氏(64)
・推薦政党・・・自民党・公明党・日本のこころ
・得票数・・・1,793,453票
・得票率・・・27.4%
・小池百合子氏よりも得票率が高かった地域・・・清瀬市、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ケ島村
 

●3位 鳥越俊太郎(76)
・推薦政党・・・民進党・共産党・社民党・生活
・得票数・・・1,346,103票
・得票率・・・20.6%
・鳥越氏の得票率がもっとも高かった地域・・・大島町38.10%               

 ●第4位 上杉隆(48)・・・179,631
・得票率・・・2.7%
 

●第5位 桜井誠(44)・・・114,171
・得票率・・1.7%
※前回知事選における田母神氏得票数・・・約60万票
 

●上位候補の獲得票差
当選の小池氏と3位鳥越氏との得票差・・・約156万票
 

・選挙直前の各紙予想 

Photo選挙ドットコムhttp://go2senkyo.com/articles/2016/07/31/23599.html

※東京新聞が鳥越氏の猛追を伝えて見事にはずした。

Photo_3

各候補の選挙演説訪問地点
NHKによるhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20160801/k10010616311000.html

・小池氏(ピンク)が選挙期間中に訪れた地点・・・140箇所
重点地区・・・23区と多摩地区・特にJR中央線と山手線駅頭

・増田氏(赤)                    ・・・160箇所
重点地区・・・小池氏と同じ

・鳥越氏(ブルー)                 ・・・50カ所重
重点地区・・・23区と伊豆大島

※鳥越氏の街頭演説の極端な少なさが目立つ。

●各候補が重点的に街頭演説で訴えたポイント

・小池氏・・・「セーフシティ」「スマートシティ」「空き家」「(都政)改革」

・増田氏・・・「不安」「解消」「子育て」

鳥越氏・・・「税金」「原発」「環境」「反安倍」

支持政党別投票候補
・自民党
・小池氏・・・50%
・増田氏・・・40%
・鳥越氏・・・一桁

・民進党
・小池氏・・・30%
・鳥越氏・・・60%
・増田氏・・・10%

・無党派(全体の37%)
・小池氏・・・50%
・増田氏・・・20%
・鳥越氏・・・20%

小池氏は自民、公明から推薦を受けていないが、自民支持層を半分獲得し、無党派層の半分、民進党の3割を押さえた。

安倍政権に対する支持・不支持層別投票候補
・安倍政権支持層
・小池氏・・・50%
・増田氏・・・30%台後半
・鳥越氏・・・一桁

・安倍政権不支持層
・小池氏・・・30%
・鳥越氏・・・40%
・増田氏・・・10%

※小池氏は、安倍政権支持層の半分、不支持層の半分を共に押さえて圧倒的強さを見せつけた。
増田氏は自民支持層の半分を小池氏に奪われた上に、政権支持層の3割しか押さえられなかった。

鳥越氏は本来、安倍政権不支持層を基盤とすべきなのに、わずか4割しか押さえきれなかった。
また無党派層の、わずか2割しか押さえていないことにも驚く。

●年齢別投票動向(朝日出口調査による)
1819歳・・・小池35%増田30%鳥越
18%
20歳代・・・小池43% 増田30%鳥越
10%
30歳代・・・小池48% 増田22% 鳥越
15%
40歳代・・・小池49% 増田22% 鳥越
17%
50歳代・・・小池45% 増田28% 鳥越
19%
60歳代・・・小池43% 増田27% 鳥越
25%
70歳代以上・・・小池39% 増田30% 鳥越27%

青年層がシールズ化したといわれたが、今回の選挙において鳥越氏に対する支持はまったくなく、60歳以上の高齢層にのみ支持されているのがわかる。

結果を受けての各候補の声
・小池氏「新しい都政に対する期待を頂けたと思う。女性都知事として、女性政策もしっかり進めることが実りある幸せな東京を実現することにつながる。」

・増田氏「これだけの強力な支援にも関わらず、こうした結果を招いたことはひとえに私の力不足で、心からお詫び申し上げる。」

・鳥越氏「私の準備不足で力が及ばなかった。私は今後、報道の現場からきちんと都政をチェックしていきたい」

●結果を受けての各政党の声
・自民党下村総裁特別補佐 「小池氏との対立を継続して、都政を混乱させることがあってはならない。小池氏に対しては是々非々で、東京都の発展にプラスになる施策には積極的に協力すべきだ」

石原伸晃東京都連会長 「完敗だった。力不足で申し訳ない」

・民進党
松原仁東京都連会長 「岡田氏が都連の内定を覆す形で鳥越氏を連れてきた。その責任をまっとうすべきだ。」

岡田克也民進党代表 「(直前辞任表明したことを聞かれて)下司の勘繰りだ。」

・共産党
小池晃書記局長 「民進党内でどういう議論が行われても、公党間の約束を守るのが当然のルールだ。」

■お断り 本日の記事はアップしてからかなりのデータを修正し、冒頭の分析部分の記事を大幅加筆しました。いつもごめんなさい。 

 

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