緊迫する尖閣 中国から見たら
尖閣の接続海域・領海への中国公船の侵入は、今やすさまじいレベルになってきています。
8月に入って5日から8日のわずか3日間に、公船だけで実に延べ17隻、漁船延べ43隻が領海・接続海域を侵犯しました。
1日当たり平均公船5隻、漁船に至っては14隻に登ります。
「8日午後6 時までに、 最大 15 隻の中国公船が 同時に 接続水域に侵入し、 延べ 17 隻 が領海に 侵入 した 。」(海保資料)
この規模は既に南シナ海のそれを上回るもので、このような紛争事案においては世界最大・歴史上類例をみない規模となっています。
2014年時のもの。今回の映像は海保HPにあります。
それを報じる読売新聞(8月9日)です。「政府は9日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で挑発行動をエスカレートさせている中国海警局の公船や漁船の動向、日本政府の対応をまとめた資料を公表した。
再三の抗議にもかかわらず、領海侵入が繰り返される事態を重く見た異例の対応で、今月5~8日に中国公船延べ17隻が侵入し、中国漁船延べ43隻も入ったことを明らかにした。政府は引き続き、中国側に即時退去を要求する方針だ。」外務省は再三再四、強い抗議をしていますが、中国は聞く耳を持ちません。
海保と外務省が同時にこの間の状況について、詳細な資料をアップしましたので、ぜひご覧いただくことをお勧めします。
●海保・尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況(H28.8.9)
詳細はこちら。http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/post-280.html
♢中国公船等による接続水域内入域及び領海侵入隻数(日毎)
詳細はこちら。http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/1608-senkaku.pdf「平成 28 年8月5日午後 1時 30 分頃、 中国漁船 に続いて、中国漁船 に続いて、公船(中国 政府に所属する船舶) 1隻が 尖閣諸島周辺 領海に侵入 した 。その後、 8日午後6 時までに、 最大 15 隻の中国公船が 同時に 接続水域に入、 延べ 17 隻 が領海に 侵入 した 。
約 200 ~300 隻の漁船が 尖閣諸島周辺の接続水域 で操業するなか、最大 15 隻という多数の中国公船も同じ海域に集結し、 中国 漁船に続いて 領海侵 入を繰り返すといった事象が確認されのは 今回が 初めてである。
なお、 尖閣諸島周辺の接続水域に通常展開している中国公船(3隻程度)及び南シナ海のスカボロー礁周辺に通常展開している中国公船(4~ 5隻と言われる )に比しても、現在尖閣諸島周辺は 、はるかに多くの中国公船が展開している。」(太字部分は海保資料のアンダバー)http://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/senkaku/senkaku.html
中国の目的は、公船を常時尖閣海域に侵入させ、やがてなし崩し的に居座ってしまい、この尖閣が「紛争地」であることを国際的に認知させ、機会を見て尖閣諸島に五星紅旗を翻すことです。今日は視点を変えて、中国サイドから見て、彼らが何を考えているのか見ることにしましょう。
この尖閣はあくまでも清朝の時からの、「神聖不可侵の中国領土」です。ここが大前提です。
それを軍国主義・日本が、日清戦争で力づくで奪ったというストーリーです。
そして中国に敗れた敗戦国の分際で、戦後も図々しく尖閣諸島を占拠している、ということになります。
中国の領土観は、何百年前だろうと、その海域を通過して島を「発見」すれば中国のもの、ましてやかつて朝貢国ならば、中華帝国の版図ですから当然中国領と認識しています。
前者が、清朝の使節が沖縄に渡る際に発見した尖閣諸島であって、後者は中華帝国の属国だった沖縄のことです。
お気の毒ですが、この「過去この海域は中国人が活躍した」という理屈は、今回の南シナ海に対しての国際仲介裁判所から完全に退けられてしまいましたけどね。
彼らの領土観では、全部ひっくるめて「オレ様のもの」なので、日本こそ不当に尖閣・沖縄を占拠しているのです。
しかも中国の好意で、尖閣棚上げ論にしてやったのに、極右の石原が都の所有にしようと言い出し、それに便乗するように民主党政権までもが国有化してしまうという暴挙を働いたというわけです。
ではどうやって「神聖な中国領土」を奪還したらいいでしょうか。
いきなり、中国の虎の子である北海艦隊を出動させたらどうでしょうか。
う~ん、負けますね。
中国海軍はつい最近まで沿海海軍(ブラウンウォーター・ネイビー)でしたので、世界最強の日米海軍とガチンコで海戦を演じた場合、勝てる可能性はゼロに等しいでしょう。
ではどうするか、ここで中国はこう考えました。
以下、チャイナのモノローグ調で。
まずは、一番の障害となる米国を介入させないようにしよう。
奴らがいれば負けるから、日米分断して、日本だけ裸にしてしまおう。そうするとだいぶ料理しやすくなるぞ。
一番の目の上のたんこぶは尖閣に近い在沖米軍だ。こいつから料理しよう。
うまい具合に沖縄内部には、伊波議員のように、「(中国や北朝鮮は)脅威ではない。脅威なのは米軍。中国とは何千年もの経済・文化の交流がある」と言ってくれる左翼勢力と地元紙が県政を握っているぞ。
彼らに、「全基地撤去・海兵隊撤退」運動を激化させよう。そしてその中のハネ上がりを使って「琉球先住民族の民族自決」を言わしてやろう。
まぁうまくいくまいが、成功すればあちらから転がり込んでくるのだから手っとり早い。
え、民族自決なんかさせたら、チベット・ウイグルのようになるって。
わけねぇっしょ。うちの勢力圏に来たら、ウイグルの独立派と一緒の扱いにするだけのこと。
とまれ日米分断のために、沖縄県民の在沖米軍への憎悪を最大限に煽ろう。
なんて思っていたら、お、不良外人が勝手に女性殺人などという場外ホームランをかっ飛ばしてくれたぞ。万、万歳だ。
琉球新報2016年6月20日1面
次に、同時にこの尖閣水域がある東シナ海を、文字通り「中国の海」としてしまおう。焦らずにじっくりと料理してやるぞぉ。
いきなり軍艦を入れて刺激するようなことはしないで、海警をジャンジャン入れ続けよう。
まずは1隻、2隻いれて日本側の警備状況と対応を観察して、さぁ今年から一気に行くぞ!
いままで外野で見守ってきた海軍も、尖閣の接続海域・領海にどんどん入れてやる。
そしてド~ン!
海上民兵を乗せた漁船が230隻と、海警は15隻だ。全力投入だ。びびったろう。どうせ弱腰の日本は、憲法に縛られて抗議だけしか出来まい。
そんな口先だけなら、こちらもこう言うだけだ。
「領海侵犯しているのは貴国のほうだ。直ちに日本公船を中国領海から退去させなさい」ってね。
見たかァ小日本!手出しができまい。カ、カ、カ。
これを続ければ、国際社会はここが紛争地だと認識し、中国の肩をもってくれる国も沢山生まれてくるはずだ。
周辺国は一カ国ずつ経済圧力をかけて、こっちにたなびかせてやる。もうフィリピンやインドネシアなんか骨抜きだ。
気がつけば、アジアで、逆らうのは日本だけにしてやる。
ビビったところで、こう猫なで声で言ってやるんだ。
「このままでは戦争になります。この紛争を米国などをハズして、じっくりと二国間関係で話合いましょう。どうせ米国なんか尖閣で助けちゃくれませんぜ」
こうなれば、あとは一気に海上民兵を乗せた漁船数百隻で尖閣を取り囲み、彼ら「民間人」に五星紅旗を立てさせるだけだ。
その時、うまいこと海保が手出ししてくれたら、一気に海軍を入れて東シナ海全域を軍事制圧だぁ。
ここまできたら、後は沖縄をどう料理するかだ、あ~待ち遠しい。早く嘉手納に美しい五星紅旗がたなびくのが見たいもんだ。
チャンチャン。とまぁ、こういう感じです。
なんか書いているだけでムカムカしてきましたが、あくまで中国から見たら、ですからね(笑)。
とまれ:これが中国流サラミ・スライシングです。
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おはようございます。
今回の記事、朝っぱらからムカつく内容ですね。
夏らしく、爽やかな内容をお願いします(笑)
尖閣上陸といえば、2012年だったかな?中華麺活動家が魚釣島に上陸したの。その時はで待ち伏せしていた沖縄県警にタイホされましたよね。今回もその手を使うのかなーと思ってたけど規模が違いすぎますね。
さて、どうなるか。
投稿: やもり | 2016年8月10日 (水) 08時32分
先ほどのコメント、読みづらい部分がありました。
>その時はで待ち伏せしていた沖縄県警 を、
>その時はすでに島に上がり、待ち伏せをしていた沖縄県警にと、
修正します。
投稿: やもり | 2016年8月10日 (水) 08時49分
ムカつく記事、興味を持って読ませていただいました。
確かに中華帝国の歴史的な流れからすれば、このような戦略を持ち、そして今の中国の行動があることを説明できるとと思います。
”取った者勝ち”であり、居座った者(実効支配)のもの、が領土の国際常識なのですね。
一方、私が理解できないのは、少なくとも現代の中国は共産主義の理念、すなわち労働者・農民など被抑圧人民の解放=幸福を目的とした国家です。したがって軍隊も共産党の私兵ともいえる人民解放軍を名乗ったままだということです。
このような本来弱い人民を解放=幸福にするために存在している軍事力が、チベット・ウイグルをはじめ近隣諸国の領土を踏みにじり、そこに住む人民を苦しめ、また、南シナ海や尖閣諸島などひたすら領土拡張の手段に使われていることを、どのように整理しているのだろうか、という疑問です。
沖縄左翼は、米国や日本本土(大和)を自分達琉球を抑圧する者として批判し、時に敵対的行動すらとりますが、このような中国を正面きって批判することはありません。
沖縄の直接的な利害対立者=”敵”は米国や日本本土(大和)という認識があり、その日本の敵が中国ならば”敵の敵は味方”という論理で、中国は沖縄の味方と言う理屈になるのかもしれません。
「中国や北朝鮮にリアルな危険はない」と言ってのけた、某都知事候補をはじめ日本の左翼・リベラル陣営、そして沖縄左翼の人達が、今回の尖閣諸島における中国の行動をどのように理解しているのか知りたいところです。
私の目には、尖閣をはじめ日本に対する中国共産党の言動は、日本の左翼・リベラル陣営の言動に支えらているようにすら見える時があります。
投稿: 九州M | 2016年8月10日 (水) 14時49分
無知が故に、非常に単純な疑問があります。領空の場合、UNKNOWN機に対しては、空自がスクランブルするのに、領海に関しては、海自は何の行動も取れないものなのでしょうか?相手が漁船で民間であるなら、あくまで警察権力である海保が対応するのは理解できますが、公船である中国海警船が領海侵犯している場合、国家による侵略と理解出来ないのでしょうか?自国の領土領海が脅かされている場合なのに、何もできない自衛隊とは?と素朴に疑問に感じます。国際常識や法規は知りませんが、日本が自国の領土とし、尚且つ他国との係争地でないと主張しているのであれば、正々堂々自衛隊を派遣し、侵略してくるものを排除することに、何の齟齬が生じるのか?今一つよく分かりません。万が一、中国との紛争になったらマズいから?日本の軍国主義の復活?自国の領土国民を守らなくて、何の国家かと思うのですが、それもやはり無知が故でしょうか?
投稿: 一宮崎人 | 2016年8月10日 (水) 15時37分
一宮崎人さん
> 領海に関しては、海自は何の行動も取れないものなのでしょうか?
拿捕することはできるでしょう。撃沈することは憲法の専守防衛の原則からできないようです。空については
領空侵犯機に対し警戒射撃をすることはできるようです。これは、沖縄の上空で警戒射撃をした実績があります。ここでも専守防衛の原則から、こちらが領空侵犯機を侵犯したという理由で撃墜することはできないと考えられているようです。相手機が先に射撃してきてこれへの反撃という対応しかできないということのようです。
> 何もできない自衛隊とは?と素朴に疑問に感じます。
多くの方々は疑問、悔しさを感じているでしょうが、憲法を破棄でもしない限りダメだと思いますよ。
> 万が一、中国との紛争になったらマズいから?
それはあるでしょう。
> 日本の軍国主義の復活?
日本の軍国主義の復活と騒ぐ方々は多くおりますが、これこそが無知なのだと言えましょう。戦前の時代環境と現在のそれとは大きな違いがあります。今さら軍国主義というのはあり得ません。今心配すべきは、極端な平和主義、観念的な平和主義、極端な反軍事主義です。
> 自国の領土国民を守らなくて、何の国家かと思うのですが、それもやはり無知が故でしょうか?
それは正論であり、逆の考え方が無知なのです。
ホントはお分かりの筈ですが・・・・・
投稿: ueyonabaru | 2016年8月10日 (水) 23時40分
九州Mさんの疑念について
共産主義の理念や人民解放軍の設立以来の主旨からして、現在の中共の侵略的方法は理論的にどう整理されているのだろう、という疑問をお持ちなのですね。
彼らを理解するための重要な問いです。
しょせん共産主義の行きかたは現実的矛盾に満ちたものですが、論理そのものはあるんです。
簡単に端折って言えば、現在は「過程」にすぎず将来的に世界を彼らの目指す「理想郷」として完成させる為に、今ある矛盾は問題ではない、という事です。
「目的は手段を正当化させる」と言いますか。
一方、弾圧されているウイグルやチベット人の中にも、積極的に中共支持の考え方を持つ人々も存在します。
彼らの考えでは、彼ら自身現在の中国では「二等国民」に甘んじる立場を自覚していますが、台湾が併合され南シナ海周辺国が中共の手に落ちたとき、三等国民や四等国民、あるいは中共を中心とした衛星的周辺民族が多数現出する事によって、比較優位の立場が実現します。
現在のチベット・ウイグル人はこうした考えに基ずく教育を幼少時より受けているので、若年層の中共支持者は増えているのが現状です。
もちろん、このような言説は階級打破を目指す共産主義のありかたに矛盾するものですが、共産主義的理想論では騙せない場合の方便として、これもまた全く「問題ではない」のです。
>日本の左翼・リベラル陣営、そして沖縄左翼の人達が、今回の尖閣諸島における中国の行動をどのように理解しているのか知りたいところです。
「無法な行動」としては理解しています。
そのうえで、「裁定が出た今こそ、中国抑止の国際的な動きに加わらず、対中関係を改善すべき最良のタイミングだ」としています。
「中国政府が国内のナショナリズムに配慮して対外的に強硬な行動に出る事は、やむを得ない面がある」とし、「中国外交は伝統的に言葉は強硬だが、穏健な問題管理の方法をきちんと見つけ出してきた」となります。
で、もっとも主張したい事は、
「日本が自衛隊を米海軍などと共同安全保障行動に出す事の危険」であり、これを熱心に説きます。
なんと言いますか、数十年に渡るすさまじい認識の誤謬を基礎にした、リアリズムの一片もない態度を取り続けているんですね。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年8月11日 (木) 01時21分
山路さん、しつこく私からも解説をお願いしてよいでしょうか。
その左翼陣営の主張、ネトウヨでなくとも宗主国様かよと感じるのですが、それを言われると火がついたように怒りますよね。
彼等は一部チベット人のように拡大後の中華帝国の元で己もしくは日本自治区の階級上位を目指している自覚はあるのでしょうか。
投稿: ふゆみ | 2016年8月11日 (木) 06時57分
ふゆみさん。コメント欄では狭いので記事でアップします。
投稿: 管理人 | 2016年8月11日 (木) 07時37分
管理人さん、早朝からお手数おかけします、ありがとうございました。
本音を見透かされて怒ってるじゃなくて、偽善者というか、幼子のように共産の理想をいいなーと思ってホントにやってるだけ!だから怒る訳ですか。
チベットやウイグルの惨状は知ろうとしなくても溢れ出てきてますよね。どうやっても信じきれないと思うのですが、、、無心なヒナ鳥のふりをしている訳ではないのですか。はー。
投稿: ふゆみ | 2016年8月11日 (木) 08時36分
現在、今回の記事のような状況にあって、中国が一番嫌がる事(激怒して何をしでかすが分からないという面もありますが)は何かと考えた場合、「米日+印」の同盟の強化ではないかと思います。
日本政府は実際に共同演習もしていて中国の反応も見ていますから、当然、選択肢に入れていると思うのです。
国会対策など、私にはその為にはどのような課題があるのか手順がどうなるのかのは分からずに言っているのですが憲法改正よりは容易そうに思えるのですが・・・・・?
投稿: ume | 2016年8月11日 (木) 14時24分