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核兵器保有は国家的自殺行為だ


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核兵器について、私の意見を短くまとめておきます。 

私は核武装という手段は、最後の最後、外交的・軍事的オプションがすべて消滅した後にするべきものだと思っています。 

核武装はどこからどう見ても9条の交戦権に抵触しますので、改憲を前提としますが、これについては今回はふれません。

ただ、核武装を視野に入れた改憲を試みるなら、改憲派が国民投票において勝てる見込みは限りなくゼロとなるでしょうが。

また改憲した後に、核武装を政府が提起した場合、国民の多くはだまされたと思うことでしょう。

さて、現状でもわが国は「準核武装国家」だと認識されています。 

先日、技術的に不可能だという理由をゴマンとあげましたが、実は日本が国家プロジェクトとして遂行するなら、ほぼすべてクリアできてしまうからです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-9519.html 

プルトニウムの兵器級への転用も不可能ではありませんし、運搬手段としてふさわしい固形燃料ロケットは既に保有しています。 

再突入技術も不十分ですが、有しています。

核実験場は、無人島の地下実験でやれなくもありません。(やらしてくれる自治体があればの話ですが) 

発射プラットホームの潜水艦も、1、2発搭載するていどなら、セイルの拡張でなんとか凌げます。 

しかし何度も強調しますが、その選択をするのは唯一、日米安保という安全保障の土台そのものを喪失した場合に限ります。 

いったんそれを放棄した以上独立国家として、中国、北朝鮮は当然のこととして、米国、ロシアまで含めた相互確証破壊を構築せねばならないからです。 

これは「平和国家」という、日本人が70数年にわたって築いてきた政治資産を投げ捨てるだけではなく、わが国がどの国とも同盟を結ばない外交的に孤立した立場になることを意味します。

これはとりもなおさず、戦前への回帰です。 

また見逃されがちなのは、この核武装プロセスには大きな落とし穴があることです。 

核戦力を開発するまでの短くて3年、常識的に見れば5年。さらに実戦配備するまでに同じだけの期間の間、わが国は米国の「核の傘」という核抑止力を失ってしまいます。 

つまり長く見て約10年間、日本は中国・北朝鮮の核に対して丸腰状態となるわけです。 

また、米国とは同盟解消した結果、敵性国家と認識されるでしょう。 

その場合、米国の軍事技術に依存しているわが国の通常兵器の維持・運用・調達が破綻します。 

早期警戒管制機、ペトリオット、イージスなど、自衛隊装備の大部分は米国技術に依存しています。

日米関係が悪化した場合、部品の交換すらままならなくなります。

しかもその時期には、日中の軍事バランスは、2020年を境にして逆転すると見られています。 

日中の通常兵器での拮抗関係が逆転し、通常兵器の運用も不安定となり、その上核抑止力まで失ってしまっては、国家としての自殺行為です。 

そしてNPTを脱退することによる国連の非難決議が具体化すれば、経済制裁を覚悟せねばなりません。

ウランの輸入にも待ったがかけられるでしょうから、その場合、原発は稼働できなくなります。

その結果、わが国の経済はとめどなく失速していくことになります。 

核武装がそこまでのリスクをかけてするべきこととは、到底私には思えません。

今の「寸止め核武装」状態で、核武装について様々な意見を出し合っていくことだけで、充分に「核抑止もどき」となります。

日本に対して核攻撃を仕掛けてくる可能性がある国は中国と北朝鮮でしょうが、それについては通常兵器による抑止を考えたほうが現実的です。

それについては稿を改めます。

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コメント

「「平和国家」という、日本人が70数年にわたって築いてきた政治資産」とは何を意味するのでしょう。
実際のところ、この「政治資産」なるものは左派が作った私たち日本人の頭の中にだけ存在するに過ぎない幻想なのであって、それが保守派の経済集中主義の「言い逃れ」にも利用されて来たのが原状でしょう。
その事が顕在化し、かつその証明が領土問題、拉致問題を皮切りにした最近の尖閣問題など、あまたある事象です。
そもそも我が国は朝鮮戦争はじめ、ベトナム戦争や東西冷戦の数々に参加して来たと同義です。
現実の問題はこうした側面参加、あるいは資金的負担や日本の犠牲的協力姿勢が、日米関係おいて米国に評価されない得ない事にあるのであって、国際の問題は二義的なものに過ぎないと考えます。

「平和国家」という場合、「平和」をこそ国家第一の絶対的価値観であるべきところ、その実の日本は「近代的重商主義国家」「経済第一主義国家」です。
良かれ悪かれ日本国民にとっての一大事は「経済」なのであって、私はこれを死守するためには日本人は相当の事を厭わないと思います。
そもそも日本が経済大国の道を専心して歩めたのは日米安保ゆえであって「平和国家」だったからでもありません。

ただ、日本国が憲法前文にあるとおりを実現すべく、「平和主義」を標榜してきたのは間違いありません。
しかし、これは他の民主主義の国々の憲法とほぼ同様です。
左派は、この前文の平和主義理念(実は9条とは相容れない部分がある)を9条の方に引き付け絶対化するために、一緒くたにして日本は「平和国家」などという幻想をつくりあげて来た経緯は重要です。

また、日本が核兵器を所有する事について、参・予算委1978.4.3、真田法制局長官説明のとおり「自衛のための必要最小限度の範囲内」であれば憲法上の問題はありません。
「自衛のための必要最小限度の範囲内」というところがミソで、この部分の解釈権はその時点での政府の裁量の範囲を残存させている。

ただ現時点で、総じて「日本が核武装できる」かというと事実としてほぼ幻想に近い事は明らかです。
しかし、だからといって「核武装すべき、とするのは正論ではない」とは言えません。
日本が核武装出来ないからと言って、その返す刀で世界の核を無くそうとするのはそれ以上に程遠い理想論であるでしょう。

ブログ主様のいう、「通常兵器による抑止を考えたほうが現実的」というその内容が楽しみです。
もし、通常兵器によって相互確証破壊を構築したに相当する効用が得られるのであれば、それ以上の事はありません。

投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年8月30日 (火) 08時53分

以前もコメントさせて頂きましたが、核兵器による相互確証破壊は、保有する核弾頭の数と国土の広さが決め手となります。日本のように国土が狭い国が数発の核弾頭を備えても、相手にできるのは北朝鮮程度で、米露中に対しては脅しにもならないでしょう。

しかし日本はいつでも核兵器保有が可能であると言う抑止力は留保すべきでしょう。現実的な核武装は先ず国内で反対に遭い、間違い無く潰されるでしょう。日本の核武装論議が現実化するのは北朝鮮やその他の国が実際に日本に核弾頭を打ち込み、10万人以上の死者を出した場合です。

一方、米中の間で孤立を深めつつある韓国では核武装論が湧き上がっています。韓国の核武装も日本に対する深刻な脅威であることは間違いありません。もしそのようなことがあれば、日本国内の世論も逆転する可能性があります。

ちなみに現在の国際的な対立構造の中で、大国は小国に勝てないと言う考え方があります。

確かに、アメリカはベトナムに敗れ、ロシアはアフガン侵攻で深刻な打撃を受け、中国もベトナム侵攻に失敗しています。イスラエルと言う小国も、大国エジプトを相手に戦い抜き、今だに大国イランと対峙しています。

さて、日本はどうでしょうか。戦前の日本は軍事大国でした。色々なところに軍を進め連戦連勝で国中が沸いていました。しかし結果はどうだったでしょうか。最後に待っていたのは無条件降伏と言う最悪の結果でした。

中共は今や軍事大国となりましたが、すぐ対岸にあって喉から手が出る程に欲しい台湾にすら侵攻できていません。尖閣もジャブは出しても、上陸についてはなかなか実行できていません。

何故、大国は小国に勝てないのでしょうか。それは大国が覇権を求めて拡大主義を取れば、その他の大国がそれを抑制するように動くからです。

米国が日本を守るかどうかと言う議論は日本人の視点からの議論に過ぎません。中共の覇権拡大が目立ってくれば、間違いなく米露を敵に回すことになってしまいます。これは歴史の必然であり、日本は関係ありません。これこそが中共に覇権拡大を急がせない歯止めになっています。

今、中共が最も恐れているのは核攻撃ではありません。山峡ダムに対する破壊工作です。このダムが決壊すれば、犠牲者は数億人に及ぶと言われています。核兵器どころの騒ぎではありません。

日本も含めて世界はこのダムの放流状況をウォッチしています。中共が戦争準備をする場合は、先ず、このダムを放流するだろうと言われているからです。ただ、ダムの放流は下流地域を水浸しにし、その後に訪れる水不足はその他の弊害を引き起こします。経済的な損失は天文学的に上るでしょう。最悪の場合は共産党政権の崩壊を招くでしょう。

管理人さんは通常兵器による抑止を言われていますが、ミサイル迎撃システムや対潜水艦戦力の補強は非常に重要です。また原発やその他の重要なプラントの硬化、シェルターの整備等は、防災名目でいつでもできる対応です。冷静な国際情勢の分析とそれに対する戦略的な対処が国を守ることになります。

投稿: 愛国命 | 2016年8月30日 (火) 09時54分

山路さん。どうも私が一番左みたいですね(笑い)。
確かに法制局長官答弁はあります。しかし、それは最小限、防衛用に関してだけです。

しかし、もし現在の状況で日本が核武装せねばならないとしたら、その時は日米同盟が破綻したときです。
日本は米国にとって潜在的「敵国」に変わってしまっているのです。
ここまでは共通理解としていいですね。

となると、日本が構築せねばならない核武装は、原理的には米中露北4カ国に向けての非常に大規模かつ広範なものにならざるをえません。
(あくまで原理的にはです。実際はさまざまな同盟関係を結ぶ余地がありますから、このような全周囲的相互確証破壊にはならないでしょう。)
英仏ですら露だけですからね。

日本が4カ国に対して相互確証破壊を作るのは、もはや「最小限」ではありえません。
このような規模の核武装は、世界でも指折りの大規模なものになるでしょう。

ですから日本が目指すとなると、潜水艦のセイルを大型化してミサイルを搭載するとか、ダーティボムといったやっつけではなく、本格的な核戦力にならざるをえないのです。

だから「違憲」だと書いたのです。
今の憲法の枠内での改釈憲法では無理がありすぎます。
せいぜいが、中谷大臣が去年言った米軍の核兵器の「弾頭の保管・運送」ていどまでが精一杯です。
三原則を、「持ち込まない」を取って、二原則にするていどなのです。
それが欧州流のニュークリアシェアリングのやり方です。

また明日あたりに書きますが、「平和国家」というのはただの国内向けの政治的煙幕じゃありませんよ。
それはあなたの勘違いです。

おっしゃるように、そのように保革は使ってきたきらいがありますが、厳然と70年間武力を国際問題の解決に使ってこなかったという実績は、国際的に評価されています。

私はこれを「政治資産」あるいは「外交的資産」と呼びます。
そしてこの部分を、受動的ではなく、もっと目的意識的に使っていければと思っています。
詳しくは記事で書きます。

投稿: 管理人 | 2016年8月30日 (火) 10時29分

 私は、山路さんのお説にほぼ同感しております。

 「ありんくりん」さんは、平和の実績をおっしゃいますが、確かに実績としてあるのですね。明日の議論に期待したいと思います。

 私が核の保有を主張するのは、現在の西欧の核保有国に対立してまでそれを保有すべきだというのではありません。日本が危急に陥った時に、友好国が何も支援してくれないようであれば自国でそれを今持つべきだと思うのです。

 もしかすると、友好国は日本の核装備は内心容認しているのではないかと思うことがあります。

 北朝鮮から核攻撃をされてはたまらないですよ。北朝鮮の日本への攻撃を同盟国が抑止しているという事実はあるのでしょうか。政府間の秘密の調整は行われているのでしょうかね? 政府には北朝鮮の日本への核攻撃は絶対に阻止するぐらいのことは公言してもらいたいですね。

 尖閣諸島で海保が頑張っております。尖閣は守れるかというのはとても大事なことです。ここを護れれば、日本政府を信頼してよいと思います。海保には命がけで、尖閣を守ってもらいたいものです。そう、死守するのです。

 極端な議論だと思われるかもしれませんが、その極端な状況が現実に起こらないも言えませんよ。用心、用心です。

投稿: ueyonabaru | 2016年8月30日 (火) 14時49分

安保の船に9条を乗せて上手いこと平和貢献をしてこれた、その美味しい部分をそのままにスタンダードな武装ができるのか、可か否かは同盟国の承認と敵国へ牽制しきれるかが鍵でしょうか。

今の北&中共のあからさまな威嚇具合をさっさと利用して通常兵器の充実を進めます。
それだけで核武装もするかもと他所がゾクゾク思ってれば良いのです。非核三原則です〜とスピーチで言っておいて。経済以外それ以上考える立場に無いと思うのですが…。
そこをもしウダウダと皆許すかな、どうかな、そもそもかな、とか立ち止まる行為は「別にどっちでも良いです皆の良い方で〜〜」って言ってる事になってしまい、日本は何度も何度もこういうタイミング逃しを重ねて来ました。世界の中で絶対言ってはいけないのが「皆の良いように」。
世界平和を望む声とイコールでは全くないです。

米国はクリントンになりそうですね。
彼女が自由に動き出す前にある程度戦略を現場で整えておかないと、日本我慢してよもう、殺されないよきっと中共の手下しながらウチの借金は返しなよ、とか最悪な身売りに出されます。
クリントンは中共がソフトランディング出来るなら日米同盟なんて90%off、韓国とセットでbuy one get oneで売り出しますよ。
ここで日本まで売ったらグアムどころかハワイまで任期中にヤられるぞと説得するしかないかと思っています。
中共が世界のゴミ箱だとしたら日本は世界の預金箱でしょうか。イギリス、スイス、とはまた違う箱の軍備の構築が必要です。核武装ではないと私も思っています。

投稿: ふゆみ | 2016年8月30日 (火) 17時10分

山路さん。
先日の記事でも批判を受けましたが、そこなんですよ。技術を蓄積しながら簡単に言うとイザとなれば「核保有能力」は持っていますよ!とほのめかしながら核兵器なんか持たないよ!ということです。

愛国命さん。
そんなMADを日本国民は欲していないでしょう。思想の有無は別として現実的ではないと思います。

ueyonabaruさん。
「だったら日本も核武装しようゼ!」というのはある意味理想ですが安直すぎます。MADの手段が持てればとりあえず安心ですが、経済や政治的リスクが大き過ぎます。
仰りたいことは重々承知しています。

投稿: 山形 | 2016年8月30日 (火) 17時15分

HN山形さん。HN愛国命です。
私の提言は、ミサイル迎撃システムや対潜水艦戦力の補強が非常に重要であり、また原発やその他の重要なプラントの硬化、シェルターの整備等は防災名目でいつでもできる対応であり、冷静な国際情勢の分析とそれに対する戦略的な対処が国を守ることになります、と言うごく真っ当なものだと思っております。山形さんは、それのどこを指してMADとおっしゃっているのでしょうか?ご教示願えれば幸いです。

投稿: 愛国命 | 2016年8月30日 (火) 21時35分

横入り失礼します。
愛国命さんの本日のキモは
>中共の覇権拡大が目立ってくれば、間違いなく米露を敵に回すことになってしまいます。これは歴史の必然であり、日本は関係ありません。これこそが中共に覇権拡大を急がせない歯止めになっています。
ここだなーと共感しながら拝読していました。
このお考えと最新の通常兵器増強案は全く齟齬がなく、日本の核武装やリーダーシップを夢想するでもなく、中共のダムも見てるけど日本が破壊する事はないと見ているのだと理解しています。

投稿: ふゆみ | 2016年8月30日 (火) 22時05分

北朝鮮がいざ実戦となったときに「ジュネーブ条約なんて知ったことか!」と原発やダムに攻撃してくる可能性が有るかどうか。

日本相手にここまでやっても米国を中心とした諸外国は報復攻撃をしてこないだろう、というギリギリのところを見定める時に、果たしてどこまでの事をしてくるのか?
核ミサイルを使う以上はどうせ反撃されるから、ダムとか攻撃しちゃおうぜ、と言うか。
俺たちは米国に勝つのが目的だから、木っ端(日本)相手にそこまでやって報復されたらたまらない、だから核じゃなくて普通のミサイル使うぜ、と言うか。

勿論これは中国が相手になったときにも言えますが、日本独自の核武装を考えるなら、まずは彼らの狙いの最終目的が何処に有るかを考えなければいけません。
そして……彼らの目標が日本ではなくその向こう側に有るのであれば、日本人の核アレルギーを越えての核武装は難しいでしょう。

まあ、これは私的な考察です。

投稿: 青竹ふみ | 2016年8月30日 (火) 23時42分

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