農と島のありんくりん

移り変わる自然、移り変わる世情の中で、真実らしきものを探求する

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2016年9月

2016年9月30日 (金)

豊洲伏魔殿と安全性評価は別だ 

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豊洲問題で小池知事が燃えているようです。 

おおむね彼女には期待はしているんですが、あの人のパーフォーマンス政治家の側面が強く出てしまっているのが心配です。 

行政官は煽ってはいけない、クールダウンして正しい情報を取捨選択すべきです。 

まず、区別しなければいけないことは、東京都のガバナンス(統治)のあり方と、豊洲の安全性問題を一回分けて考えるべきことです。 

例の「盛り土」がなかったと糺弾を受けています。 

高速道路や卸売市場など、大規模開発事業は環境に対する影響を報告することが義務づけられています。いわゆる「環境アセス」というやつですね。

これが、でたらめだったので大騒ぎになりました。 

事前環境アセスでは「盛り土」を行うという条件だったのに施行しておらず、実態とは違う虚偽の設計図で趣旨説明していたのですから、誰が見てもヘルプレスです。 

当然のこととして、今提出されている環境アセスは全部パー。新たに安全評価をし直さねばなりません。 

ただし、ここで区別していただきたいのは、このような相互無責任、利権の巣窟のようになっているらしい豊洲伏魔殿と、その科学的安全性とは別枠で考えるべきだということです。 

まず、例によって例のごとく、この豊洲の安全性に火を点けたのは共産党でした。 

しんぶん赤旗9月17日はこう述べています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-09-17/2016091701_03_1.html 

「日本共産党都議団は16日、青果棟地下の空間で採取したたまり水の水質検査結果を発表し、猛毒のヒ素が土壌汚染対策法にもとづく溶出量基準(1リットル当たり0・01ミリグラム)の4割に当たる同0・004ミリグラム検出され、たまり水が地下水由来であることを明らかにしました。」 

この「豊洲の地下空間から猛毒ヒ素が基準値4割検出」という共産党発表に、すべての報道機関が追随して、今回の豊洲問題に発展していきます。 

Photo_4
毎度おなじみの共産党の手法です。毛沢東風にいえば、「一点の火が燎原を焼き尽くす」という戦術ですね。

まずはショッキングな情報を叩きつけて、それを火種にして政治ショー化して延焼させ、自分がその主導権を握ろうとします。

かつて原発事故の風評問題で、これでもかとばかりに農民や漁民をいじめまくったのがこのやり口でした。

私はこれと丸々1年間戦う羽目になりました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-3.html

オスプレイも同じで、「落ちてくるぞ」と煽りまくり、とうとう沖縄反基地運動のネタにしてしまいました。

高江の反社会的狂乱も、元はといえばこのオスプレイ・デマが元です。 
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-d31a-1.html

話を戻します。

当然のことながら、「基準値の4割」なら安全と評価します。

それ以外、どう評価しようがあるのでしょうか。 

そもそも共産党は、「基準値」の意味を理解していません。

基準値は種々の判断の基準となる数値のことです。(あたりまえだ)

たとえば、かつての放射能問題の時に100ベクレルを食品基準値にしました。

ならば99ベクレルは安全で、101ベクレルは危険なのかと言えば、実際は測定の際の器材や手法によるブレの範囲内です。

しかし、いったん100と数値基準を決めたら、そこが食品の安全基準値になります。

100以上は食品ならば流通できませんし、環境基準ならば再度測定をして同じように基準値越えをするなら、是正措置をとらねばなりません。

逆に「基準値4割」なら、問題とするほうがおかしいのです。

29日の豊洲の新たな環境測定で、基準値の1.1~1.4倍のベンゼンが2カ所で、1.9倍のヒ素が1カ所で検出されたそうですから、その原因の特定と、その対策を明らかにする必要があります。

しかし、共産党が騒いだのは「基準値4割」です。

共産党は何か深い誤解があるようですが、ヒ素もカドミウムウなどを「猛毒」と呼ぶからおかしくなるのです。

確かに過剰に摂取すれば「猛毒」となりえますが、環境中にはごくあたりまえに存在している物質です。

確かにヒ素(As)は、IRAC(国際がん研究機関)が発がん性物質であるグループ1に指定されています。

これは「人体に対して発がん性が認められる」物質で、長期間ヒ素が体内に入るとガンの発生リスクが高くなるといわれています。

ただし条件があります。

病気になるには、「基準値を越える量を長期間、あるいは一気に大量に摂取する」という条件がついています。

だから、その目安として基準値が意味を持つのです。

たとえば俗に食品の焦げはヘテロサイクリックアミンという発癌物質を含有しますが、イワシの干物に当てはめてみると、体重60kgの人に毎日76トンの干物を食べさせてグループ2のリスク量に達します。

「基準値の4割だぁ」と悲鳴を上げている皆さん、ひとつやってみたらいかがでしょうか。

土壌、地下水、海水にもヒ素は含まれています。

たとえば、地下の岩石から湧きだす天然水には、ヒ素が含有されています。

市販のミネラルウォーターの数値を見てみましょう。
※ライフアップオンライン:支笏の秘水』と主な市販ミネラルウォーターの成分値

・ボルビック      ・・・0.009mg/ℓ
・六甲のおいしい水 ・・・0.003mg
・エビアン       ・・・0.002mg
cf. 豊洲地下施設 ・・・0.004mg

ちなみに日常的に飲む水と、たまに飲む清涼飲料水の基準値は異なっています。

・清涼飲料水のヒ素の規格値・・・0.05mg/ℓ
※厚生労働省「食品、添加物等の規格基準」
・
水道水、地下水のヒ素規格値・・・ 0.01mg/ℓ
※環境省「地下水の水質汚濁に係る環境基準について 」

よく報道で使われる基準値は2番目の水道水の基準値で、ミネラルウォーターは1番目の清涼飲料水に入れられています。

それは使用頻度でわけているからです。

ですから、ボルビックに「基準値の9割じゃないか」と抗議したら、「なにをおっしゃっているんですか。そういうのを安全と言うんですよ」とたしなめられるでしょう。

ボルビックを毎日飲んだり、炊飯に使っていると2番目に入ってしまい、オソロシヤと思う人もいるでしょうが、食品基準は100倍のマージンを持って定められています。

基準値設定は動物実験でやっていますが、さらに人間と動物では身体の大きさや感受性が違うということで、それを10倍にし、そのうえに人間は個体差があるのでそれをまた10倍にしています。

え~、本当に危険だと思われる基準値の、とれだけになりましたか。ざっと100倍ですね。

いわば崖の数百m先を基準値にしているわけです。

だから勝手に「基準値の4割だからキケンだぁ」などというと、自分の非科学ぶりがバレてしまうことになります。

海水や地下水、土壌にも一定量含まれていますから、人体にも食物の形で移行します。

長くなるので略しますが、米にも海産物にもヒ素は含有されています。
※農林水産省 食品中のヒ素に関する基礎情報 

・精米のヒ素含有量・・・0.14mg/kg(平均値)
・ひじき(乾物)     ・・・93
・のり(乾物)       ・・・25

もし共産党が言うように、「猛毒」ヒ素を食べた瞬間死んでしまったり病気になったら、日本民族はとっくの昔に滅亡しています。

Photo_3

ましてや、打って間もないコンクリートタタキの上で測定したら、石灰の強アルカリが出るのはあたりまえです。

それを「うわ~、強アルカリでリトマス試験紙が真っ青です.」とやるマスコミの頭は、ホントに大丈夫なのでしょうか。

このような一人歩きしたプロパガンダに乗って、「もはや豊洲に移転する大義はなくなった」と言っているキャスターがいたのには驚きました。

小池さんが豊洲伏魔殿の扉をこじ開けたことは拍手を送ります。

今までの都政の歪みは眼を覆うばかりなのは確かなようですから、大いに戦って下さい。

しかし、その武器に共産党やマスコミの科学的誠実さがかけらもない、悪質な政治プロパガンダに乗らないでいただきたいと思います。

それにしても、共産党のプロパガンダにまんまと乗ってしまったマスコミは、ちっとも原発事故から進歩していませんね。

2016年9月30日 (金) | 固定リンク | コメント (11)

2016年9月29日 (木)

私がヒラリーを選んだわけ

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昨日の大統領選の記事について、注釈をつけておいたほうがよさそうです。 

この記事だけ読まれた場合、私がヒラリーを待望していると勘違いされるのではないか、と思いました。 

そういうわけではありません。要は、比較の問題です。 

私は何度か書いてきているようにリスク評価的判断をします。 

ヒラリーが米国大統領になるリスクより、トランプがなるリスクのほうが大きいということです。 

本来なら、共和党候補にもう少し妥当な人物が選ばれていたのなら、私は躊躇ためらいもなく、反ヒラリーに回ったことでしょう。 

まさにウ○コ味のカレーか、カレー味のウ○コのどっちがいいと聞かれているようなものです。 

で、私はいたしかたなくウ○味のカレーのほうを選んだわけで、まぁとりあえず眼をつぶれば食えますからね(笑い)。 

私がトランプを望まない最大の理由は、彼が日米同盟とNATOを破壊する可能性があるからです。 

彼のブレーンに、キッシンジャーという親中反日の頭目のような人物が座っていると聞いて得心しました。 

どうやらトランプの事実誤認を連発する反日的言いぐさは、あの男が吹き込んだもののようです。 

今、私たちが目にしているのは、米ソ冷戦という世界の統治体制が崩壊した後に現れた、パックス・アメリカ一極体制の崩壊過程です。

それによって生じるのは、多極化的された不安定な世界構造です。 

EU世界は空中分解を開始し、イスラム世界もまた自己崩壊を始めました。 

これによって生まれる新たな難民は、さらにヨーロッパ世界に流入し、その自壊を促進していきます。 

ブラジル・ベネズエラなどの新興国は深刻な経済後退によって、国家秩序そのものが崩れかかっています。 

おそらく長きに渡って、「次の覇権国」は生まれないでしょう。 

それは「次の覇権国」の唯一の候補者であった中国が、既に内部経済の自壊現象を起こしているからです。 

私はそう遠くない将来、中国は分割に進む過程を辿ると思っています。ただし、願望も入っています(笑)。

かつての文革期の内乱と異なるのは、中国がいかに嘘八百の成長の結果であったとしても、世界の経済センターのひとつとなっていることです。

したがって中国の分裂は、世界をさらに混乱に陥れるでしょう。 

Photo_3

中国が狂気にかられたように進めている海洋軍事膨張主義は、外に対する緊張だけが今の中国を統合するために、ぜひとも必要な国内向けの政治シンボルだからです。

このようなことは、ほんの5,6年前まで考えられもしませんでした。

米国の衰退なくしてはありえなかったことです。

中国の横暴がまかり通る世界、それが現代という時代です。 

覇権国が数十年のスパンで空位になる時代が、幕開けしかかっていると言ってもよいでしょう。 

私はトランプが、こういう時代に現れるべくして登場したトリックスターだと考えています。 

トリックスターとは、神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を引っかき回す剽軽者のことですが、まさに彼の役割はこれです。 

トランプは経済・安全保障という国家方針の根幹において、反グローバリストです。

彼はこういいます。 

「我々はもはやグローバリズムという誤ったイデオロギーによって国家を破壊し、アメリカ国民をその犠牲者にしてはならない。国民国家こそが幸福と調和の真の基礎をなすのである。私は国際組織を信じない」

このくだりからトランプは、NAFTA(北米貿易協定)やTPPに対して強く反対します。 

またNATOや日米同盟についてもコミットメントをやめろ、と言っています。 

「アメリカがここまで大きな負担を負う必要があるのか。NATOを再定義してみよう」
「日本はアメリカによって守られている。彼らは私たちアメリカの富をくすねているのにだ」

これは米国内にある普遍的な考え方で、リバタリアンと呼ばれる考え方です。
リバタリアニズム - Wikipedia

Photohttp://www.newsweekjapan.jp/stories/2010/10/post-1...

リバタリアンとはうまい訳語がありませんが、「自由絶対主義」「自由原理主義」とでも訳すのでしょうか。 

連邦政府は緊縮財政政策で小さな政府を目指して、余った金は再分配に回せ、軍備には金をかけず、外国から軍隊を呼び戻して専守防衛、金融緩和などとんでもない、財政出動もダメ、反成長でけっこう、という人たちです。 

ティーパーティというグループを作って、共和党に強い影響力をもっています。 

余談ですが、このティーパーティの経済・外交政策は、日本の民進党と瓜二つです。

ティーパーティは米国ではバリバリの右派ですが、それと酷似した経済・外交政策は日本では民進党がやっているということになります。

ちなみに皮肉にも、国際標準でリベラルな経済政策とは:安倍首相がとっている経済政策です。

だから向こうのポール・クルーグマンなどの、リベラル経済学者と相性がいいわけです。

たぶん国際的スタンダードで分類すると、安倍さんはリベラル、民進党はリバタリアン右派と言うことになるのでしょうね。

それはさておき、2012年の共和党リバタリアン候補であったロン・ポールは、トランプと同じことを言っていました。

「アメリカは世界中の基地から米軍を引き上げるべきだ。アメリカの国防はアメリカの国境線をしっかり守ることである」

ソ連の脅威が去り、米国内でシェールガスやシェールオイルが採掘できるようになった以上、もはや中東に関与する動機がないというわけです。 

Photo_2http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/05/...

このロン・ポールと同じ考えがトランプで、彼はそう自分で名乗っていないだけで、実はリバタリアン亜流なのです。 

トランプのいう「NATO再定義」の次に来るのは、間違いなく「日米同盟再定義」です。

この文脈から、後に取り下げましたが、日本の核武装容認がでているわけです。 

トランプは意外にも、日本の保守派の一部から拍手を持って迎えられています。

その理由は、日本が独立国として反主権状態があまりにも長きにわたったために、国として片足骨折しているのがあたりまえ、という倒錯した心理が国民に定着してしまったからです。

だから、トランプが大統領になれば、「日米同盟の再定義」をイヤでもせざるを得なくなり、日本の自主独立の機運が高まると望んでいるわけです。

私は半分は正しいと思います。

その必要がある、なしという次元ではなく、主権国家としての「独立」はせねばならないのです。

ただ、今がその時期か?と私は何度となく問うています。

中国が南シナ海の覇権を8割がた完成し、東シナ海にその血走った眼を向けようとする今、「日米同盟の再定義」をする時なのか、と問うています。 

必要なのは「再定義」ではなく、補強です。

トランプはいい意味でも悪い意味でも、刺激的な候補でした。

仮にトランプが破れることがあっても、やがて彼の言う内容を受け継ぐ大統領が登場することは必至でしょう。

それまで現状維持のヒラリーでつないでおいていただきたい、それが私の思いです。

2016年9月29日 (木) | 固定リンク | コメント (12)

2016年9月28日 (水)

ヒラリー・トランプの第1回テレビ討論 一回で勝負はついてしまった

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ヒラリーとトランプの第1回テレビ討論が終わりました。
 Watch Full Donald Trump vs Hillary Clinton First Presidential Debate 9/26/2016https://www.youtube.com/watch?v=wfzKOG5fWKg

完全に見たわけではありませんが、私の見たかんじではヒラリーの圧勝でしょう。 

すごいね、あのオバさん。徹底的に計算され尽くされています。 

あの余裕に満ちたニヤニヤ笑いもコワイ。  (「だだっ子を笑顔であやす母親のよう」という説あり)。

衣装もしゃべり方も、決めゼリフも、トランプは敵ではありませんでした。 

どう米国民に見えたかはわかりませんが、トランプは頭の悪いテレビタレントにしか見えなかったですね。 

まぁ、格が違うとでもいうのでしょうか。安倍さんとみのもんたが首相公選やっているようなもんですから。

冒頭の20分で、ヒラリーからガツンっとやられてしまいました。 

「トランプは私が討論会に準備してきた点を批判した。私が他に何を準備したかご存知だろうか?大統領になることを準備したのだ」 

このひとことは、なんの政策も持たないて、ただのノリでしゃべっているとしか思えないトランプの顎に炸裂し、8カウントのダウンです。

結局、このひとことにかけたヒラリーの、「ドナルド、あんた準備不足だよ。大統領になる資格そのものが欠落してんだよ。顔洗って出直しといで」といわんばかりのパンチに有効な反撃ができないままゴングでした。 

終わった後に、盛んに「マイクが壊れていた」「司会がフェアじゃない」なんて言っていたそうで、いっそう惨めさを引き立てました。

このダウンを食らってからのトランプは見るからに一杯一杯で、眼は虚ろにグルグルと回り(かなり笑えた)、そのうえ再三に渡ってヒラリーの発言を妨害します。 

PhotoMy Big Apple NY  My Big Apple NYより引用

左のInterruptionsとは「中断」「妨害」のことで、右のFleeting Interejectionsとは「不意に差し挟まれた叫び」ていどの意味です。 

まぁ、ご覧のとおりです。トランプは自らが劣勢になると、3度に渡って発言を妨害し、実に24回相手の発言に被せています。

ドナルド、ここは朝ナマじゃないんだぜ。 

そして、マッチョを好む米国人男性社会でこういう場合やってはいけないと言われている、ガブガブと水を飲み始める有り様で、口の中がよほど干上がっているようです。 

Photo_3同上

それを見る冷やかなヒラリーの、「バッカじゃない、この男」といった顔が対照的ですね。 

その上、トランプの経済政策が失笑ものです。 

財政投資をするというのはまだまともです。

しかし、金融政策をボロカスに叩き、連邦準備制度理事会(FRB)までバッシングするのは筋違いというものです。 

誰がリーマンショックの惨状から、米国を今の水平飛行状態に引きずり上げたのでしょうか。 FRBですね。

リーマンショック前まで米国金融は世界の覇者でした。 

米国は世界の金の心臓部として新興国へ投資し、その利益は金利や配当という形で米国に還流し、さらにそれが米国内で再分配されて、サービス業を中心とした経済と雇用の拡大を生み出しているという経済循環の構造を作っていました。 

しかし、リーマン・ショックによって、この世界の金を米国が吸い上げて循環させるという流れが変化します。 

米国金融業界はボロボロになってしまい、安価な人件費で作られた中国、韓国などの新興国産が濁流のように流入します。 

その結果、米国内では製造業の崩壊が始まり、雇用が失われました。 

また、大企業や富裕層が、タックスヘイブンを利用して国内に再分配すべき税金を脱法したために、国の財政までおかしくなりました。 

その結果、国民は一部の富裕層を除き、貧しくなるばかりでした。 

これがトランプの出現した時代背景です。 

トランプはこれを、「中国、韓国、日本なんかがオレたちの富を奪っているから貧しくなるんだ」とアジったわけです。 

おいおい、中国と一緒にするなよ、と思います。 

中国に4割の関税をかけると息巻いていますが(不可能)、日本はとうの昔に主要製品はメイドインUSAとしています。 

米国で売られる自動車などはほぼ米国工場で、米国人労働者が作ったものです。雇用を奪うどころか、創出しているのです。 

そんなことも知らないのでしょうか。トランプの脳味噌は1980年代でフリーズしてしまっているようです。 

そして、外国が米国の富を簒奪する例証に、またもや登場したのが日米安保です。 

今回もまた「日本はオレ様が守ってやっている。金出せや」と言い出したのには、やや驚きました。 

馬鹿は、一生馬鹿のまま墓に入る定めのようです。 

ちゃんと事実を教えてやるべき、まともな政策スタップもいないようで、これで勝てたら奇跡です。 

トランプが「アメリカ・ファースト」を言うのは勝手ですが、この数年起き続けている国際社会のケイオス事態は、米国が引き起こしたものです。 

米国が国際秩序の担い手から降りようとすると、世界はテンデンバラバラに自らの利害のままに分解し、争うようになっていきます。 

日本はこの米国の退場をなんとか阻止しようと、日米同盟の補強に乗り出しました。 

それは双務性を高めていくことで、去年安保法制として法案化されました。

 

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(図 米軍の駐留国。青色1000名以上。薄い青100名。オレンジ゙色施設使用 日本が米軍の世界最大の基地群を擁しているのがわかる。ウィキより) 

それはトランプが「こんなものはいらない」と言ったNATOも同じで、米国は一方的に日本や欧州を「守ってやっている」わけではありません。 

本来「同盟」とは従属関係ではなく、相互の利害によって結ばれる関係のことにすぎません。 

米国は、世界市場の覇者でいるためには国際自由貿易の保護者でなければならず、それには安定した国際関係が必須条件です。

米国はそのために世界各国に米軍を配置しています。 

それは米国の戦略的利害、つまりは米国の自分自身の事情なのです。

ですから、私たち日本人は在日米軍に感謝をしている部分はありますが、恩を着せられる筋合いではありません。

ましてや、ただ乗り呼ばわりされる理由はありません。 

日本は米国の戦略インフラの一部に自らを組み込むために横須賀、沖縄などの重要基地を提供し、米軍の戦力投射プラットホームとしています。

そのうえ、応分以上のコスト負担までしています。それはいまや世界で最大の負担額に達しています。

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毎日新聞より引用

俗にいう「おもいやり予算」(接受国支援)といって、1899億円(2015年現在)も提供しています。
 

これは米軍の在日米軍駐留経費の実に約75%に当たります。

これを全額払えというなら、その時から在日米軍は日本の傭兵となりますが、トランプさん、それでいいのですね。 

とまれ、第1回でほぼ勝負は決まりました。この流れは、ヒラリーが倒れでもしないかぎり変わらないでしょう。  

2016年9月28日 (水) | 固定リンク | コメント (14)

2016年9月27日 (火)

中国長距離爆撃機編隊、宮古海峡を通過

009_2

宮古海峡を中国軍機の編隊が通過して、西太平洋で「訓練」をしたそうです。
統合幕僚監部プレスリリースmod.go.jp/js/Press/press… 

●統合幕僚監部プレスリリース
平成28年9月25日
中国機の東シナ海における飛行について
件名について、下記のとおりお知らせします。
記
1 期日
平成28年9月25日(日)
2 国籍等
中国H-6爆撃機4機
中国TU-154情報収集機1機
中国Y-8情報収集機1機
中国戦闘機(推定) 2機

中国側も発表していますが、機数が大きく違うのはどうしたことでしょうか。

「中国空軍の申進科(しん・しんか)報道官は25日、H6K爆撃機、戦闘機スホイ30、空中給油機など四十数機が同日、宮古海峡の上空を通過して西太平洋に向かい、遠洋での実戦能力をテストする訓練を行ったと発表した。爆撃機と戦闘機は東シナ海に中国が設定した防空識別圏内で警戒パトロールも実施したとしている。」(毎日9月26日)

この長距離爆撃機4機+情報収集機2機+戦闘機2機という編隊は、9月中盤に中国空軍が行ったバシー海峡を抜け第一列島線の外に出る演習と同じ組み合わせです。

4機編隊は軍用機の基本ユニットですので、今回の訓練がただの示威ではなく、より実戦的なものだったことを現しています。

Photo
上の写真は9月25日の宮古海峡通過時に、空自が撮影したものです。

戦闘機(Su-30MKK)も護衛機として随伴していますが、今回の目玉はこちらです。

H6K(轟炸六型)爆撃機といって、旧ソ連のTu-16バジャー爆撃機です。

原型は半世紀も前のものですから、中国軍はこれをミサイルのプラットホームに使っています。

非常に長い航続距離が自慢で、1987年12月9日にはなんとソ連が嘉手納空軍基地の真上を通過させました。

この時に、紳士的なことで有名な空自が初めて警告射撃を実施して世間を騒がせました。

航法ミスだったとソ連は発表し、パイロットは降格処分してけじめをつけています。

中国だったらシカとするでしょうが、このあたりはさすがに米軍相手に冷戦馴れしたソ連です。

まぁ逆の立場だったら、ソ連は文句無しに撃墜していたでしょうがね。

それはさておき、今回注目されているのは、主翼にぶら下げた巡航ミサイルCJ-20(長剣20)、あるいはCJ10K巡航ミサイルです。

CJ-20は米国の巡航ミサイルトマホークをパクったもので、中国版GPSと地形照合誘導で超低空飛行で地形を這うように侵攻します。

レーダー断面積が小さいので、レーダーで発見することが困難です。

通常弾頭もありますが、核弾頭も搭載可能です。

今回はおそらくは実物と同じ重量の訓練弾でしょうが、実にやっかいなものをブラ下げてきました。

これは射程1000~1500キロと言われています。このH6Kを6発搭載可能です。

目一杯積むと後続距離は短くなりますが、沖縄本島からグアムまで2200㎞ですから、中国軍機がグアムを射程に入れるにはさらに間合いを詰める必要があります。

ですから、グアムまでの最短距離である宮古海峡を通過し、太平洋に出るルートを選んだのです。

もちろんグアムには、西太平洋における米国最大の空海軍基地があります。

グアムなんて新婚さんが行く観光地じゃん、と思われる方も日本には多いでしょうが、真の顔は違います。

Pn2012122201001359___ci0003グアム アンダーセン空軍基地

グアムは米国の太平洋・アジア戦略の要衝の島です。

海軍はアプラ港海軍基地には4隻の原潜(SSN)、潜水艦救難艦1隻が配備され、アンダーセン空軍基地には、今回コリアにローテション配備されたB-1、B-2、B-52爆撃機やF-16も配備されています。

2013年には、北朝鮮の弾道ミサイル対応でTHAAD部隊が配備されました。とうぜんそれを支える巨大な燃料・弾薬貯蔵施設も付属しています。

こうしたグアムの価値を、中国もよく分かっています

中国が米軍のグアム基地を叩くには方法はふた通りあります。

ひとつは海中深く潜んだ戦略原潜から、弾道ミサイルを発射することです。

これについては何度か書いてきましたが、中国海軍の悲願は宮古海峡を通過して沖縄トラフに戦略原潜を潜ませることです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-6e7e.html

Photo

またもうひとつは、長距離爆撃機から巡航ミサイルを撃つことです。

これも宮古海峡を通過していかざるをえません。

中国が日本を攻撃目標とした場合、そこまで間合いを詰める必要はありませんから、中国防空識別圏内から巡航ミサイルを発射するでしょう。

これでも充分に沖縄と九州には到達します。

これを十数機から発射された場合、その数は百発以上に達し、これを防ぎきる能力は自衛隊にはありません。

いずれにしても、宮古海峡の空と海は日本でもっともキナ臭いポイントになろうとしています。

2016年9月27日 (火) 沖縄問題 | 固定リンク | コメント (4)

2016年9月26日 (月)

蓮舫さん、嫌われる勇気を持ちなさい

021

更新可能になったようです。ああ、時間がない。

蓮舫さんはとうとう国籍選択もしていなかったのではないか、とまで疑惑が拡大してしまいました。
http://agora-web.jp/archives/2021643.html

これがホントなら、党首はおろか議員失職となりますが、まだよくわかりません。

気の毒ですが、最初から一貫した弁明をして、必要な関係書類を開示しないから、どんどんと深みにハマっています。

このテーマはコメンターの皆さんのほうが詳しそうなので、今日はふれません。

さて、彼女は「ワクワクする政治」と「さわやかな戦い」で、「女性の挑戦」をしたいのだそうです。

まことに意気たるや壮です。 

ただ気になるのは、民進党をなんでも反対政党ではない、対案政党にしていくといってしまったことです。

「私たちには政策も対案もある」から、「民進党をしっかりと選択してもらえる政党にしていく」そうです。

え、なにがいけないって。

いや、いけないのではなくて無理だからです。対案政党ということは、要は民進党が政権交替可能な第2保守党となるということですね。

そりゃ無理。

その政権可能な政党となるというおかしな夢から醒めない限り、民進党はどうにもなりません。

だって肝心な「対案」がそのつどブレるんですから。結論的ともいえる判決をだしましたね。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASJC14H1Q_W6A910C1000000/

あの判決は読み間違える余地もなく、国の全面勝訴です。

県は最高裁に上告するようですが、くつがえる可能性はラクダが針の穴を通るほど難しいでしょう。

となると、翁長さんが泣こうが怒ろうが、来年の1月には辺野古で再着工となります。

3月から10カ月近くあった「和解期間」を有効に使って、第3の道を探る努力をしなかったのですから仕方がありません。

「移転阻止」一本でなんとかなるほど、世の中は甘くはないのです。

私は心のどこかでハンセン陸上案を、翁長氏が言い出さないかと期待していたのですが、まぁ共産党が許さないでしょうね。

さて、蓮舫さんに話を戻します。

蓮舫さんは党首選でこんなことを言っています。

「選挙戦を優位に進める蓮舫氏は討論会で、現行の移設計画は旧民主党政権が米側と確認した内容であることを踏まえ、「結論は基本として守るべきだ。どんなに米国と話をしても選択肢は限られてくる。基軸はぶれるものではない。それが外交の基本戦術だ」と訴えた。」(時事9月16日)

ほーと思いました。そのとおりです。

この辺野古移設案は、ハト氏がちゃぶ台返しをして、二転三転すったもんだのあげく、結局、辺野古移設という原案に戻ったのでした。

その戻した時の民主党党首が、他ならぬ蓮舫さんが選んだ幹事長の野田さんです。

ならば、福岡高裁判決を聞いて、言うべきセリフはひとつしかないはずです。

「県は高裁判決に従って、和解合意9項を守って下さい」

ほかになにがありますか?

ところが仰天したことに蓮舫さんは、こんなことを言い出しました。

「『目標、目的以前にその途中経過は到底、賛成できない』と批判した。『今の政権の沖縄への手法はあまりにも県民の声に寄り添っていないやり方だ』とも強調した。ただ、党運営の基本方針として掲げてきた対案の提示はなかった。」(産経9月17日)

よくわかんないよ、ボク。

途中経過ってなんなのでしょう。よもやハト氏がやったジグザク暴走ではありませんよね。

はたまた、国が10カ月にものぼる工事休止をしてまで、和解期間を設けたことでしょうか?

移設は賛成だが、やり方が悪いということならば、それこそどうぞ蓮舫さんが大好きな「対案」をお出しください。

それが自称「バリバリの保守」の流儀のはずです。

自分が言った「結論はブレない」と言った翌日に、「県民の声に寄り添う」という豹変ぶりがたまらなくダメです。

この人は嫌われたくないのでしょうね、右からも左からも。

誰からも「いい人」でいたいから、右を向いて私はバリバリの保守だと言い、左を向いては「民意を聞け」と言う、一体この人の政治の軸はなんなのでしょう。

対案なら先ほども触れた、小川案ことハンセン陸上案が存在します。

実現は充分に可能で、海の埋め立ては伴いません。基地ないの滑走路建設ですから「新基地」ではありません。

これは今の翁長さんにはオール沖縄の反対があって言い出せないでしょうが、一方国もいままでの関係者との話あいの流れから逸脱するので、自分から提案できないものです。

ならば、野党第1党が提案すればよいのです。それこそ野党の出番です。

それをなにを今さら判決が出た後になって、「県民の声に沿っていない」ですか、寝ぼけないでほしい。

政権を取るということは、国民から嫌われるということです。その覚悟がない人には首相は務まりません。

たぶんあなたが秘かにライバル視している小池都知事は、右からは「厚化粧のうそつき女」とまで言われ、左からは「核武装を進める軍国主義者。女性ではない」とけなされましたが、いまや女性首相候補の最先頭を走っています。 

少しは爪の垢でも煎じたらいかがでしょうか。

蓮舫さん、二重国籍問題もそうですが、その場で繕っているだけでは続きませんよ。

そして党首になった以上、あなたの政治生命の破綻はそのまま民進党の破滅に直結することをお忘れなく。

2016年9月26日 (月) | 固定リンク | コメント (14)

2016年9月25日 (日)

日曜写真館 黄金の朝

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                              明日更新休止のお知らせ
ニフティが以下の時間、サービスを停止します。
2016/09/25(日) 23:00 - 09/26(月) 09:00
この間一切の更新ができなくなりますので、明日の更新は無理かもしれません。

                                              /////////

このように撮るとなにやら神秘的ですが、初め2枚の塔のようなものはなんだろうと思われるでしょうが、湖の水位計測用ポールです。

向こうに見えるのは養殖のイケスです。なーんだと言わないでね。

ここのところ毎日雨なので、もう湖は満杯状態です。

さて豪栄道が初優勝おめでとうございます。いやー、文句なく強い。

部屋の稽古では強いが、土俵では弱いという評判をはねのけました。苦しかったでしょう。男だねぇ。

一方わが県が誇るツインパワーである稀勢の里は失速しました(涙)。

まだ綱には精進しろということですか。少し弱くなるとあの腰高の悪癖が出てきます。

もうひとりの高安は、楽しみです。ぜひ来場所は大関取りに向かって下さい。10月には土浦巡業です。

チケット買ってあります。ホントは稀勢の里の凱旋巡業の予定だったんですが・・・。(またまた涙)

2016年9月25日 (日) 写真館 | 固定リンク | コメント (0)

2016年9月24日 (土)

やんばるの共同売店

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私が知っている沖縄は、本島北部のヤンバルといわれる地域です。 

今はどうか知りませんが、私が住んでいた当時は売店ひとつない地域がごまんとありました。

たまにあっても、なんとしたことか定価より高いのです。定価100円の上に120円などという手書きシールがペタっと貼ってあるのです。

こんなものは初めて見ました。

激安デフレの時代にまっこう楯突く地域、これがヤンバルでした。

本土から那覇に来ると、値引きどころか定価維持で精一杯、それが国道58号線で下るにつれてだんだん高くなり、名護を超えると割高セールとなってしまいます。

ちなみに西表などにいくとさらにホップし、その先の小浜島にいくとまたホップします。

台風などが来て船便が止まろうものなら、だいたい商品がないという場合も出てきます。島暮らしも、なかなか大変なのです。

それも割高であろうがなんだろうが、売ってくれる商店があればこそですが、それがないのです。食品店などがあるのは名護まで。それ以北は店すらありませんでした。

日航オクマリゾートがあるって?あれはナイチャーの作った租界地です。

ないとなると名護までいちいち出かけなければならないのであまりにも不便、というわけで「共同売店」というものを作りました。

Photo_2高江のある東村の共同売店です。

ムラの人たちが、資金を出して小さな店を作り、商品を買い入れて、あんまーやネェネェが替わり番で店番をするのです。

新聞もここに取りに来ます。ちょっと集落から離れた場所の人は、郵便もここに置いてあります。

私の住んでいた場所は、本島北部脊梁山脈の真上の猫の額のようなウルトラ過疎地だったので、郵便屋に来いというほうが無茶です。

毎夕、共同売店に出かけて新聞(沖タイでしたが)を取って、郵便をもらうという生活をしていました。

そのとき必要な買い物をするのですが、当時は米軍からの横流し物資が悪びれもせずに売られていました。

バドワイザー120円、オリンピア100円、島ビールのオリオン180円といった具合で、私が島暮らしをしていた当時はオリンピアという水みたいなビールしか飲んだことはなかったですね。

あ、そうそう、アサヒやキリンなど影もなし。

今はオリオンがアサヒの傘下に入ってしまって複雑な心境でしたが、本土でもオリオンは普通に飲めるようになりました。

しかし、沖縄で飲むとこたえられない美味と思えたのに、内地で飲むと気が抜けるのはなぜ?

島ビールは復帰特別措置法の酒税軽減でそうとうに優遇されていたはずですが、なぜか米国産ビールに価格では太刀打ちできませんでした。

ま、そりゃそうだ。アメちゃんビールは米軍基地のPXからのもので、基地に勤めている知り合いから買い込むのです。

そもそも米軍基地のPXは、在外駐留米兵のために価格を下げているのですから、かなうはずがないのです。

ですから、ヤバルで老人会や豊年祭があると、オジィ、オバアがサンシン片手に飲むのは、バドワイザーと決まっていました。

本土に帰ってから、若者たちがナウ(←死語)に「バドくれ」などと言っているのを聞くと、私は「バドワイザーはヤンバルではジジババビールだぜ」、と可笑しかったものでした。

午後、牛にやるグヒチ(カヤ)を刈りにポンコツトラックで北部を回り、1トンほど刈り取り、シャツを絞れば汗がしたたるようになった帰りすがりに寄る共同売店。

ありがたかったですね。

そこで一本のオリンピアとテンプラ(さつま揚げ)を1枚買い込み、私ひとりしか知らない東シナ海の蒼い海がみえる眺望の丘で飲む一時。

ああ、あれが人生の至福というものでしょう。

Photo_3
さて、昨日の記事でも書いたように、このちいさなムラにナイチャーたちが大挙押し寄せています。

彼らの合い言葉は、「やんばるの森を守れ」だそうです。ちょっと違うのではないでしょうか。

やんばるの森を守って来たとするなら、それはこの高江の人々たちのようなやんばるの森に住む人たちが守り手だったはずです。

しかし、彼らには「森を守る」という意識は薄いはずです。

森林は利用するものであって、自然保護のために住民は住んでいるのではないのです。

そのへんの感覚は、辺野古の漁民の海に対する感覚と、どこか共通するものがあるはずてす。

経済行為として自然を見ている、とでも言ったらいいのでしょうか。都会の人のふわふわしたエコ趣味ではありません。

だからこそ、自然の厳しさとその愛を、誰よりも肌で知っているのがこの人たちなのです。

辺野古に押しかけてきたナイチャーの主婦が、漁民に「あなたがたは海を売ったのだ」ということを言ってそうです。

私なら殴りこそしませんが、こぶしを握りしめて殺意をこめた視線で睨みかえしてやってたでしょうね。

ですから、むしろ結果として「森は守られてしまった」のです。

なにによってでしょうか。ひとつは過疎、今ひとつは米軍の訓練エリアだったためです。

やんばるは現況では、若い人の仕事を確保できません。

高校は名護までいかねばなりませんし、そのまま卒業しても那覇か、さらには大阪、東京に出ていく者が大多数です。

この深刻な過疎が森を保全してしまいました。

また、皮肉にも米軍基地である北部訓練場は立ち入りができないために、丸ごと手つかずの原生林が残っていまいました。

もっとも米軍も、自然保護に熱心だから残したのではなく、ジャングル戦訓練をするために、手つかずでないと困るからにすぎません。

好むと好まざるとにかかわらず、米軍訓練場だったことが「やんばるの森を守った」ことになります。

問題はむしろ、返還された後の使い方に移っています。

それをしっかりと議論するならともかく、何かまったく別な政治焦点化されるほうだけに論点が移ってしまっているのは残念です。

それにしてもこんなちいさな村を、土足で踏みにじることが「正義」だとは私にはとても思えません。

※2012年7月17日 記事に大幅加筆しました。

■写真 そばの花が盛りです。

2016年9月24日 (土) | 固定リンク | コメント (7)

2016年9月23日 (金)

高江で進む反対派の「ムラ殺し」

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沖縄タイムスにびっくりする記事が載りました。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/61153

「■高江の農家、ヘリパッド抗議に苦情 県道混乱で生活にも支障
2016年9月8日 ステッカーを使った対策は5日から始まった。区は村を通じ県警に通知。市民側にも伝えているが、仲嶺久美子区長は「農家から効果があったとの報告はない。周知が必要」と言う。
 県道70号では8月から、市民が「牛歩作戦」として、工事車両の前を時速10キロ未満の速度で走る抗議行動を展開。
機動隊の交通規制もあって県道は渋滞し、出荷や作付けする農家を中心に地元住民の往来に支障が出ていた。
 高江区の農家の男性(75)はカボチャの植え付けに向かう途中で渋滞に巻き込まれ、本来10分で到着するはずの畑に1時間以上を要した。
「作付け期間は限られている。このままでは1年間の収入に響く」と嘆く。「決してヘリパッドに賛成ではない。ただ、彼らのやっていることはわれわれの生活の破壊。もう爆発寸前だ」と憤慨する。当初の機動隊への怒りの矛先は市民側に変わりつつある。
 ヘリパッド建設予定地に近い国頭村の安波小学校では5日、「牛歩作戦」の影響で教員1人が授業に間に合わず、学校側は授業を急きょ変更した。
宮城尚志校長は「反対運動を否定しないが、もっと別にやり方はないのかと思う」と首をかしげる。
 高江共同売店では物品の入荷日を抗議集会のある曜日は避けるようにした。仲嶺区長は「区民のストレスは限界に来ている。早くヘリパッドを完成させた方がいいとの声も出ている」と打ち明ける
。
通勤、保育園送迎、通院などに支障が出ていると苦情は絶えない。 
7日早朝、抗議行動を遠目で眺めていた与党県議は「これでは反対していた人たちまで離れていく。工事を進めたい国の思うつぼだ」とつぶやいた。(北部報道部・城間陽介)」

いままで反対派の立場に立った報道しかしたことのない地元紙とも思えない、まことに常識的な多角的眼差しです。

城間記者がクビにならないか、真面目に心配してしまいます。城間さんもよほど腹に据えかねたのでしょうね。

私はこの高江のすぐそばの山中に暮らしていましたから、生活感覚で実感できます。 

高江はこんな場所にあります。 

Photo_2
高江は典型的なやんばるの過疎の村です。外部との交通路は県道70号線の1本きりしかありません。 

こんな住民の命の道である生活道で反対派がやっていることは、下の写真をみればお分かりになるだろうと思います。 

事実上の道路封鎖です。もはや「市民」の抗議の域を越えています。 

Photo_5ツイッターより引用

彼らの闘争自体について何を言っても無駄でしょうから、とやかくはいいませんが、ただひとこと。

住んでいる生活者のことも、少しは考えて行動しなさい。あなたたちは招からざる客なのですよ。

下の写真は成田空港反対運動の初期の情景です。

Eww
ここでスクラムを組んでいるのは:地元の農家のオバちゃん、オジちゃんたちです。

着ているものはただの野良着です。彼らは自分の農地を守るために戦っていました。

高尚な「地球環境」とやらのためではなく、手塩にかけた農地をコンクリートの下に沈めることが耐えられなかったのです。

では高江の反対派にお聞きしたいのです。

あなた方の県道封鎖部隊に、一体何人の高江の住民が参加していますか?

おそらくは数人です。

そして今や地元区長や小学校長も、記事で証言するように「もっと他の方法はないのか」とまで言うようになっています。

あなた方はやりすぎた。他人の生活の場に泥足で上がり込み、我が物顔にあぐらをかいて、地元の人々の生活を荒らしているだけです。

Photo_6

高江の住民は、通学にも畑に行くことも制限され、上の写真の共同売店の維持にも支障がでています。

共同売店とは、一般の店舗が出店できないほど過疎なために、住民がお金と人を出し合って経営している雑貨店です。本島ではこの北部にしか残っていません。 

先日、工事のブルをヘリで運んだといって反対派は激怒していましたが、この状況が放置されれば、やがてヘリで生活物資を運ばねばならなくなります。 

そのうえ、反基地活動家たちは、住民が使う山の裏道までも車で封鎖し、通行する車を検問し、とうとう地元の東村の人と事件まで引き起こす始末です。
※反対派の検問映像はこちらからhttps://www.youtube.com/watch?v=TSbJlNS9rmU&feature=youtu.be

これに対して琉球新報は、まるで検問に合った地元住民の側に責任があるかのような報道をしました。 

高江はIS国ですか?!反対派活動家はいつから民兵になったのでしょうか?

畑に行けない農家は「高江生産組合」のステッカーを大きく車に貼って、なんとか住民くらい通してくれと懇願しましたが、沖タイ記事によれば、反対派は一顧だにしなかったようです。 

今はカボチャの作つけの時期にあたっており、特産のパイナプルの管理もせねばなりません。 

ここでの1日の農作業の遅れは、1年の収入全体を左右します。 

仮にこれで作付けが全滅した場合、反対派は損害補償をするのでしょうか。

ここに来ている活動家の大部分は本土の人間ですから、損害が確定するころには本土の自宅に戻って、仲間相手に武勇伝のひとくさりでもしているのかもしれません。 

Photo沖縄タイムス同上記事より引用

生活物資は滞る、生産活動は出来ない、学校には通えないという状況が続くならば、ムラは死滅します。
 

反対派はわかってやっているのでしょうか。

わかってやっているなら、地域に対しての暴力以外なにものでもないし、わかっていないなら自己陶酔にすぎません。 

しかもツイッターやメールを使って、「東村のあいつの店は賛成派だから買うな」といった、なんとも陰険なイヤガラセをしかけています。 

こういう行為を村では、村八分と呼びます。

外部から押し寄せて来て、我が物顔に生活道路を封鎖して検問を行い、村八分まがいのことをしかけるとは見上げた根性です。

田舎では他の家に行く時は、簡単な手土産をぶら下げていきます。

たくわん一本だったり、取ったばかりの野菜だったりします。

そこの家の主婦に迷惑かけるね、という挨拶代わりなのです。

反対派の皆さんで、高江にたくわん一本ぶらさげていったことがある人が何人いますか?

地元の人ににこやかに挨拶はしていますか?

地元に金を落とそうとしていますか?たぶんしていません。持ってきたのは怒号と罵声だけです。

一体あなた方は何様なんですか。 誰に頼まれて高江に来ているのですか? 

沖縄における反基地運動の最大の弱点は、地元民の参加がないことです。 

辺野古でもそうでした。辺野古では参加どころか、地元漁協などから蛇蝎のように嫌われています。 

にもかかわらず、知事や市長、地元紙、本土インテリからもてはやされることをいいことに、漁港の一角に座り込みテントを作って居ついてしまいました。 

もう何度となく退去勧告を受けていますが、動くそぶりもありません。 

それでも辺野古の「戦場」は海上だったからまだマシでした。 

こんどの高江はムラへ通じる唯一の道路を、勝手に地元に何の断りもなく、「戦場」にしてしまいました。 

大義があればよい、正義を唱えればすべてが許されるとでも思っているのでしょう。 

反対するのはかまいません。ただし法の枠内でやりなさい。 

地元の人に迷惑になるような行いは慎みなさい。 

さもないと、沖タイ記事にあったようにこのようなことになりますよ。 

いや、もう既になっているのかもしれません。

「決してヘリパッドに賛成ではない。ただ、彼らのやっていることはわれわれの生活の破壊。もう爆発寸前だ」と憤慨する。当初の機動隊への怒りの矛先は市民側に変わりつつある。」

地元民と敵対しての運動などありえないのです。 

あなた方は「大義」という美酒の飲みすぎです。素面にもどって、己が行為を見つめなおして下さい。

2016年9月23日 (金) 沖縄問題 | 固定リンク | コメント (12)

2016年9月22日 (木)

グローバリズムからの巻き戻しが始まった

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昨日長くなりすぎたので、カットした続きです。 

まだやるのかぁといわれそうですか、すごくおもしろくはあるのですよ、このHN蓮舫ファンさんのコメント。

「ヨーロッパの王室を見てください。国籍に関係無く王妃を迎えています。昔の日本もそうでした。ブログの主さんは排外主義のようですが、本当は中国人も韓国人も日本が大好きなんですよ。」

中韓に関してはふゆみさんが書いておられましたが、ヨーロッパの王室ときたんで、すいません、馬鹿にしたわけじゃないんですが、爆笑してしまいました。 

よりによってグローバル化の見本に、あのヨーロッパ王室をもってくるなんて渋すぎます。 

確かにヨーロッパの王室は、網の目のようになっています。 

欧州王室ネットワークといっていいくらいですね。 

いちばん日本におなじみの英国の王位継承権の第何位かにノルウェー王室が入っていますし、英国王室とベルギー王室は同一家系です。

そもそも英国王室自体がドイツ系です。さきほどのベルギー王室と一緒にザクセン・コーブルク・ゴータ家というバリバリのドイツ名を持っていました。 

もっともこれだと英国王としていかがなもんかと思ったのでしょう。今はウィンザー家と改名して、なんとなくブリティシュなかんじにしています(笑)。 

あ、そもそもエリザベス女王の旦那のエディンバラ公はギリシア王室の出です。 

といってもギリシア人ですらないのですから面白い。 

彼の出身のギリシア王室は、元々はデンマーク王室の出自でしたから、デンマーク人といってもいいでしょう。 

ですからエディンバラ公は、帰化するまでギリシアとデンマークの二重国籍をもっていたわけです。 

だいたいヨーロッパの王室は、今はなきフランス、ギリシア、ルーマニア、ドイツ(プロイセン)、ロシア、オーストリアなども含めれば、パーフェクトになんらかの血の繋がりがあります。

これは王家の外交政策の結果です。有名なパプスブルク家など、政略結婚を外交の重要手段にしていたくらいです。

日本も戦国時代に盛んに政略結婚しましたね。あれです。

日本がどうのと書いていますが、たぶん朝鮮王朝に嫁いだ李方子(まさこ)様のことでしょうが、 これも合邦のための政略結婚です。

うーん、ヨーロッパも日本も特殊すぎて、参考にならないと思うんですがね。

たぶんこのHN蓮舫ファンさんは、ヨーロッパの王様たちが縁繋がりだから、蓮舫氏の二重国籍なんてチョロイもんだと言いたかったようです。 

つまりグローバル化が進んでいるから、純潔主義なんかナンセンスだ。それは差別だ。排外主義だと言いたいようです。 

実際こういうこと言っている、リベラル・インテリも多くいましたね。
リテラhttp://lite-ra.com/2016/09/post-2568.html

手放しのグローバリズム礼賛と言い換えてもいいでしょう。 

ある人は、EUのように国境がなくなり、さらには国家や民族すら無くなっていき、世界は家族のようにひとつになっていくだろうと説きました。

いわゆる文化多元主義です。

これは現実のグローバリズムを美しく表現したものです。

当初のグローバリズムは、大企業が国家経済を強化するためにグローバル市場に積極的に撃って出て、自国の商品を競争力あるものにして、国民の雇用や福祉を豊かにしていくだろうと思われていました。 

ところが、実際に起きたことはどうだったでしょうか。 

正反対でした。 

多国籍企業にとって、国は関係なくなり、同時に国民もまた無関係になってしまったのです。

ノッペラボーに巨大で無規制なグローバル・マーケットだけがあって、国民の福祉や雇用なんて、巨大企業の念頭を横切りさえしなくなっていきました。 

むしろ多国籍企業にとっては、自国の規制などうっとおしいものであって、さっさと本社をアイルランドのようなタックスヘイブン(租税回避地)に移してしまったほうかよいと考えるようになりました。 

この行き過ぎたグローバリズムが行き着いた先が、あの2008年のリーマン・ショックでした。 

米国の巨大企業はほとんどすべてタックスヘイブンに引っ越してしまい、無国籍マネーが世界を飛び回るようになりました。

そして欲ボケした金融資本が、わけのわからない素性の債権をファンドに組み込んでしまったために起きたのが、このリーマン・ショックでした。 

このリーマン・ショックで米国の金融界は壊滅的打撃を受けましたが、それだけにとどまりませんでした。 

米国を代表する巨大企業であるアップルやグーグル、Amazon、スターバックス、マクドナルドなどが、軒並み国に税金をまったくといっていいほど払っていないのがバレてしまったのです。 

米国は恒常的財政危機という持病に苦しんでいます。 

世界の警官を自認した米軍すら、演習回数を減らしたり、制服すら節約している有り様です。 

巨額な金がかかる空母は12隻あるのに、動いているのは3隻だけです。紛争に介入するなんて金がないからできません。

これだけ世界が荒れているのに、米軍はどうしてここまで腰が引けているんだ、という批判がありますが、その原因はオバマの体質だけではなく、要は金がないのです。

かくして米軍という警官不在の世界は、一気にカオスとなっていきます。

だって米国政府には金がないんだもーん、というわけですが、米国の景気は盛り返しているはずなのに不思議だと思いませんでしたか。

Photo_2http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/767ecda8f33fe7...

この最大の原因は、巨大企業が自分の国に税金を納めないからなのです。

これでは国家財政がたちゆくはずもありません。

また、大富豪や大企業がタックスヘイブンに資産を隠して、ビタ一文税金を払わないのですから、庶民はバカバカしくて税金なんか払えるか、ということになります。

脱線しますが、米国の大富豪が寄付や財団が大好きなのは、税金対策にすぎません。

それはともかく、今度の大統領選で飛び出したトランプやサンダースは、共にエスタブリシュメントを激しく攻撃しました。

それはこういう、庶民のエライさんに対する怒りが根底にあるからです。

どれだけ巨大企業の脱税がスゴイことになっているか、アップルがはしなくも暴露してしまいました。 

ニューズウィーク(2016年8月31日)はこう書いています。

「2015年度の売上高が2340億ドルと好調だった米アップル。だがここにきて、同社の税逃れをやり玉にあげるEU(欧州連合)に、145億ドルもの追徴金を支払わされる可能性が出てきた。
 欧州委員会は30日、アップルがEU域内で上げた利益に対し、2003~14年の間に1%しか法人税を払っていなかった。たった0.005%という年もあった。極度に低い税率は違法な補助金に当たると判断したのだ。
 アップルは1980年からアイルランドに子会社を置き、欧州の企業活動の拠点としている。同国の法人税率は12.5%で、アップルの子会社にかかる税率はそれを大幅に下回っていた。足りなかった分は、アイルランド政府がアップルから取り戻すべきだというのだ。」

わ、はは。もう笑うっきゃないですね。

あのアップルが払った法人税はたったの1%、時には0.005%という年もあったっていうんですから、こりゃスゴイ。

米国政府も、このまま脱税され放しになるわけにはいかないというので作った法律が、2010年に作ったFATCA(外国口座税務規律遵守法・ファトカ)でした。

この法律は米国の企業や個人が外国に持っている口座の実際をすべて米国国税当局に知らせることを義務づけたものです。

そして、この法律に基づいて米国政府は巨大企業の脱税狩りに乗り出したわけです。

まず、当時ヨーロッパの代表的タックスヘイブンだったスイスが、締め上げられてギブアップ。

続いて米国政府がターゲットにしたのが、英国のシティでした。

Photo
http://ukmedia.exblog.jp/25486824/

このタイミングで流出したのがパナマ文書です。

あまりにタイミングがよすぎるので、仕掛け人は米国政府と見て間違いないでしょう。

パナマ文書によれば、21万社のペーパーカンパニーのうち、なんと半数が英領ヴァージン諸島に本社を置いていました。

Photo_3http://jp.reuters.com/news/world/panama-papers

ちなみに、世界でもっとも多くのタックスヘイブンを持っているのが英国です。

王室海外領や海外領は、グローバルな金融ネットワークによって結ばれて、多国籍企業の脱税の巨大温床となっていたわけです。

かくして、このまま世界を覆うと見られていた、グローバリズムへの巻き戻しが始まりました。

ユナイテッドステーツ・オブ、ヨーロッパになるのは、時間の問題だと見られていたEUから、他ならぬタックスヘイブンの発信源だった英国の離脱が決まりました。

ほぼ同時期、パナマ文書が暴露され、タックスヘイブンの醜悪な実態が暴露されました。

Photo_4http://www.mag2.com/p/news/128002

そして、さらには中東難民の大量流出で、EU諸国は国境をなくしたことを激しく悔いることになりました。

難民問題で責任を追及されたメルケルは、謝罪するに至っています。

そしてトランプ現象は、グローバリズムがもたらした災厄に対する怒りから発しています。

これら数々の現象は偶然に起きたものではなく、グローバリズムが国民に幸福をもたらさなかった、世界は不安定となり混乱の巷になったことに対する警鐘にほかなりません。

こういうグローバリズムの潮目の時期に、よりによってヨーロッパ王室という例外的存在を例証にして蓮舫氏の二重国籍を弁護するのですから、大いに笑かしていただいた次第です。 

2016年9月22日 (木) | 固定リンク | コメント (21)

2016年9月21日 (水)

HN蓮舫ファンさんにお答えして 対話・外交と安全保障は矛盾する概念ではありません

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HN蓮舫ファンさんから頂戴したコメントは、以下のようなものです。

「ヨーロッパの王室を見てください。国籍に関係無く王妃を迎えています。昔の日本もそうでした。ブログの主さんは排外主義のようですが、本当は中国人も韓国人も日本が大好きなんですよ。話し合いさえすれば分かり合えます。ブログの主さん、同時に沖縄県民の苦しさも少しはわかって下さい。沖縄に基地が不要であることを理解して下さい。安保は日本にとって不要なものの筆頭格です。蓮舫さんの権力闘争の意義を理解して、彼女の可能性を信じましょう。」 

「沖縄から米軍を追い出す。宜しいと思いますよ。中国とも韓国とも対話さえ続ければ分かり合える日が必ず来ます。対話こそいさかいを避ける唯一の手段です。ブログの主さん、もう少し冷静になって欲しいです。沖縄の苦しさを少しは理解して下さい。」

思わず、あながち皮肉ではなく、私はこの楽天性をうらやましく思いました。 

まぁ、私が排外主義、というくだりは、このブログにおつきあいいただいている皆さんがよくご存じのように、私が嫌いなものは排外主義です。

他人をディスるのは正義感が高揚して気分がいいんでしょうが、ちゃんと根拠を示してくださいね。 

もちろん対話はしなきゃいけませんね。外交も大いに必要です。 

しかし、いつ私があなたが言うように、「冷静」さを忘れて、対話や外交などいらない、さぁ戦争だぁ、核武装だぁ、なんて言いましたか。 

言っていませんね。正反対に、尖閣問題などでも慎重に対応してきゃダメだよ、核武装なんかしたら国の自殺だよ、今は空母なんかいらないよ、って言い続けて、一部から不評だったほどです。

尖閣問題の対応については、あくまでも中国が海警を出してくる間は、海保で対応し、絶対に海自は出すべきではないと主張しました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-961f.html 

日中対話といえば、大きな前進がありました。

日中海上連絡メカニズムを合意したことは、偶発的な戦争を防ぐために不可欠なものです。
防衛省・自衛隊:日中防衛交流・協力:海上連絡メカニズムについて

中国情報サイトのレコードチャイナ(2016年6月17日)はこう述べています。http://www.recordchina.co.jp/a130215.html

「連絡メカニズムは、海上や上空で艦船や航空機による不測の軍事衝突が起きるのを防ぐため、防衛当局間で緊急時に連絡を取り合う枠組み。現場の当事者が直接、連絡を取る方法を決めたり、政府や防衛当局間で複数のホットラインを設けたりするのが一般的とされる。
日本は1993年10月にロシアとの間で同じような「海上事故防止協定」を締結した。双方の艦船が十分な距離をとって衝突を防ぐことや、航空機の無線周波数の統一などを定めた。双方の領海、領空は適用対象にならない。」

こういう仕組みを信頼醸成システムと呼びます。 

2016090505159000レコードチャイナより引用

よくもまぁあの習が呑んだもんです。よほど海軍を押さえられていないのだろうな、なんて勘ぐってしまいます。

今、中国空海軍は政府の指示なのかどうか、極めて戦闘的でいらっしゃいます。

接続海域で「警備行動」をしてみたり、スパイ船を領海に侵入させてみたり、はたまた戦闘機で空自機にドッグファイトをしかけたりと、手を変え品を変えて徴発行動にいそしんでいます。

もう戦争をしたくてたまらないようにすら見えます。

こういう時に、頭に血が昇ったどちらかがミサイル発射ボタンを押してしまったら、どうなるでしょうか。

はい、戦争になります。

これが偶発戦争というやつで、いちばん起きる可能性が高いものです。

実は冷戦時にもっとも現実性を持って恐れられたのが、この偶発戦争でした。

日中もシャレになりませんが、米ソが偶発戦争を引き起こしたら、北半球は全滅です。

ところが、戦争の怖さというのは、双方の政府にはやる気がなくても、現場の「戦闘」が「戦争」にまでエスカレートしてしまうことが往々にしてあるからです。

ですからこのような時に、当局者同士が、「おいおい、止めてくれよ。うちには戦闘の意志はないから、現場から即刻下がらせる。貴国も下がるように軍に命じてくれないか」みたいな対話ができるわけです。

便利ですねぇ。 

まさにHN蓮舫ファンさんが言う、「対話」そのものです。 

問題は相手に誰を連れて来るかでしょうかね。 

中国は外務省に当たる外交部なんてまるっきり力がないペーペー官庁ですし、かといってまさか共産党軍事委員会や常務委員会が出てはこないでしょう。

まぁ、常識的には軍でしょうが、今、中国軍は妙に張り切っているようですから、イヤだろうな。

というわけで、周波数が決まっていながら、なかなか交渉は遅々として進まないようです。

でも諦めずに、こういう「対話」の積み上げで、両国の緊張をほぐしていかねばならないのです。

HN蓮舫ファンさん、これが現実の外交なんです。

あなたが思っているように、「話し合えば、誤解は解けるさぁ」も大切ですが、現実にはこのような地味な信頼関係を積み重ねていくことが大事なんですよ。

たぶんあなたは国家間の対話、すなわち外交は仲良くなって誤解を解くことだと思っていますね。

あなたは、「中国とも韓国とも対話さえ続ければ分かり合える日が必ず来ます」と書いていました。

大変に美しい理想ですが、こういう言い方をすればイヤミなリアリストと思われるでしょうが、仮に国境を越えて人と人が分かり合えることがあっても、国家と国家は分かりあえません。

それでいいのです。国家間関係は友情が忍び込む余地がないドライなものです。

ひとつの国家は、数千万、数億人の国民の命と財産を背負っています。

ですから、安直に友情の杯に酔うわけにいかないのです。

日本はトルコや台湾と、世界でも珍しい国家間友情を持っていますが、それすらトルコはロシアに、台湾は中国に対して日本カードは牽制カードとして使えるからなのです。

つまるところ、戦争しないで安定した経済関係や外交関係を結ぶことが大事なのです。

つまり、国家が言う「対話」や「外交」とは、あなたが思うように一般的意味で「仲良くなる」ことではないのです。

あくまでも自国の国民・財産・領土を保全するためにするのです。

これが国益です。

ですから、外国とある時は協調して同盟し、ある時は交渉して事を成していきます。

戦争はいかなる外交的手段も閉ざされた時にすることで、下策の最たるものです。

しかし、戦争を厭わない軍事力の信奉者である中国と外交をするためには、こちらもそれなりの実力がいるということです。

SEALDs福岡のお兄ちゃんが、中国軍が上陸したら酒もって一杯やれば誤解が解けるんだぁ、なんて嬉しくなるほど楽天的なことを言っていましたが、まぁ実際やったら、ちょっと感動しますが、こんなことは映画の中だけにして下さいよ。死ぬから。(笑)

だって、外国の領土に侵入してピリピリしている中国軍の阻止線に酒瓶もった男が現れたら、火炎瓶ゲリラだと思われて、タタっでお終いですからね。

戦争始まったら投了なのです。

その前に外交や対話を積み重ねていく、その担保は自分の国を自分で守れる力なんです。

それなしに外交は成立しません。

残念ですが、中国のような力の信者に、「一杯呑もう」では通じないんですよ。

大学コンパの乗りで、国家間関係を考えないでね。

その意味で沖縄から米軍基地を減らして、自衛隊に徐々に移行していくことは必要なことでしょうね。

でもあなたが言うように、「安保は日本にとって不要なものの筆頭格」といって廃棄したら、今の防衛予算を一気に数倍にして、空母や長距離爆撃機、はては理論的可能性としては核兵器まで保有せねばなりません。

というのは、今日本は米国の「核の傘」に入っていますが、廃棄すれば「自分の傘」、つまりは独自核武装が必要となるからです。

日米同盟は、それらを不要にして、日本の軍事大国化をしないで済ませられる優れた仕掛けなのです。

じゃあ、どうやって米軍基地を縮小していきましょうか?

道に座り込んで、警官隊ともみ合うことだけなのでしょうか?そのへんを真面目に考えてくれませんか。 

政府はとっくに沖縄の米軍基地縮小計画を実行に移しています。

辺野古への普天間基地の移設も、高江ヘリパッド建設なんか巨大な北部演習場返還計画のための典型的な基地縮小政策です。 

東村がヘリパッドを容認したのは、これが大きな基地縮小になってやんばるの森が大面積で返ってくるからです。

現地自治体である東村の意志を、押さえておきましょう。

●2015年4月26日 村長選挙結果 有権者数1528人 投票率89.1%。
・基地建設容認の伊集盛久 ・・・742票(当選)
・基地建設反対の當山全伸  ・・・609票(落選)

これが選挙によって示された東村の「民意」です。

辺野古なんかもっとくっきりと容認派が圧倒的多数です。

道路を封鎖したりする前に、少しは現地の「民意」を尊重したらどうなんでしょうね。

第一あの県道は、現地住民の生活道路ですよ。

反対運動もいいけど、法律を守って、常識ある反対運動をしようね。 

仮に今、きみらがやっていることが全部勝利したとしましょう。 

普天間は代替がないから(実はひとつだけあるけどね)、そのままです。 

高江も代替ができないから、北部訓練場の返還も不可能になります。 

これって、基地反対の名を借りた、基地固定化運動じゃないのかしら。 

基地反対はいいのですが、それだけじゃあ、本当になくなりません。 

長くなったので、蓮舫氏の記事について短く。

私は蓮舫さんが二重国籍であることそのものは、「法令違反だがおおげさに騒ぐ必要はない」と思っています。

ただし、これは彼女が一般人の間だけです。議員になるというのは公職に就くということですから、厳しく問われる部分があるのです。 

蓮舫さんは弁明を二転三転させて、最後には謝罪しましたね。

経歴詐称という重大な過ちを犯したわけです。

党内選挙だから公職選挙法枠外ですが、通常の公職選挙ならこれで一発アウトでしたね。 

選挙期間中に経歴について繰り返し嘘を言ってたわけですから。 

一般の選挙なら、当選しても当選無効となるケースです。

入っていない大学を選挙公報法に掲載しただけで、辞任した議員もいたくらいですよ。

民主主義とはつるまところ選挙です。

一般国民は選挙を通じてしか自らの意志を通すことができないからです。

だから、その選挙公報に虚偽記載をした蓮舫さんの信義が問われているのです。

地方党員やサポの投票締め切り後に合わせて、謝罪会見をするって、詐欺的行為じゃありませんか。 

彼女は当然、自分が初めから二重国籍だとわかっていたのですから、さっさと明らかにすれば、投票結果に影響がでたでしょうにね。 

党内だけではなく、国民に二転三転する虚偽の説明をしたことは、政治家としての適格性に欠けるというふうに思われても仕方ないですよね。 

別に一般人ならたいしたことはなくても、野党第1党党首で、首相になっちゃうかもしれない公人中の公人ですから、そのくらい求められてもバチは当たらないでしょう。

というわけで、残念ですが、私はとてもじゃないが蓮舫ファンにはなれません。

かといって、彼女を批判すると、なぜいきなり排外主義呼ばわりされるんでしょうか。首をひねるばかりです。

ああ、ヨーロッパ王朝の結婚まで行かなかった。別の機会にしましょう。

2016年9月21日 (水) 沖縄問題 | 固定リンク | コメント (15)

2016年9月20日 (火)

北朝鮮水害はなぜ繰り返されるのか?

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北朝鮮が、またまた深刻な水害だそうです。 

今回は珍しくメンツをかなぐり捨てて、救援を求めています。 

といっても、常日頃国際社会にバケツで糞尿を撒き散らし、「火の海にしてやる」と叫んで家で手製爆弾を作っているような奴が、こういう時だけ優しさを求めてみても町内会は厳しい顔するしかないでしょうね。 

こういう時に、常に救援の手をさしのべてきたわが国も、さすがに今回は即座に支援を拒否しました。 

ミサイルを5発打ち込まれ、核実験をした直後に支援する国は世界にありません。

「【9月12日 AFP】国連(UN)は12日までに、北朝鮮北東部で発生した大規模な洪水による死者数が133人に増えたと発表した。行方不明者は395人に上っているという。
 国連人道問題調整事務所(
OCHA)の11日付の声明は、北朝鮮政府の発表として、豆満江(Tumen River)沿いの地域で10万7000人が避難を余儀なくされていると述べている。また、住宅3万5500棟が被害を受け、うち69%が全壊したほか、公共の建物も8700棟が被害に遭ったという。
 このほか農地1万6000ヘクタールが冠水し、少なくとも14万人が緊急支援を必要としているという。」(AFP2016年09月12日)

Ke北朝鮮北東部の洪水被害について示した図(c)AFP 赤い部分が水害の影響が深刻な地域

ではどうして、この北朝鮮という国は水害が多発するのでしょうか? 

私にはひとつの国家を見る時の、いわば共通の視点とでもいうものがあります。実にシンプルです。 

「国民に飯を食わせることができているか」、です。 

人間が「国家」という装置を作った目的は、煎じ詰めれば「民を外敵から守り、食わせる」ことに尽きます。 

国家などえらそうな顔をしていても、食わせてナンボなのですから。 

「民に食わせるために」国防があり、治安があり、法律や税などの諸制度があるのであって、「民に食わせられない」ような国家など国民を閉じ込めておくただの収容所でしかありません。 

この意味において、北朝鮮は核兵器を持とうが持つまいが、言葉の正しい意味で「破綻国家」、あるいは「失敗国家」そのものです。 

いくら核兵器を持ち、大量の兵士と戦車があろうと、「民を食わせられない」ような国家には自暴自棄の戦争すら起こす力はありません。  

そのようなものは軍服を着た餓死予備軍であり、戦車などさっさと鉄クズにして鋤鍬に変えたほうがいいものにすぎません。  

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この国の凋落は長きに渡っていましたが、それが決定づけられたのは1991年のソ連崩壊でした。 

いままで、中ソを手玉に取るようにして、旧社会主義圏全体からまんべんなく支援を受けることで存続してきた北朝鮮は、ソ連圏崩壊によるマグマの奔流に巻き込まれるようにして、一気に国内生産を瓦解させていきます。  

なかでも、国の基幹である食料生産が崩壊に向かったのがこのソ連崩壊の1991年以降です。下の表をご覧ください。  

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UNDP(国連開発計画)による『朝鮮民主主義人民共和国の農業復興・環境保護に関する円卓会議(Thematic Roundtable Meeting)-農業の基本的発展』(1998年5月)と、FAO (国連食糧農業機構)およびWFP(国連世界食糧計画)による『朝鮮民主主義人民共和国の作物収穫と食糧供給に関する特別報告書』による。  

ソ連崩壊前まで800万トンを超えた生産高が、もっとも落ちた96年には200万トンと4分の1にまで下落しています。

現在は300~400万トンていどで推移していると思われますが、なにぶん統計数字がなかったり、信憑性が薄いために実体は不明です。  

食糧生産が下落した直接的原因は、ソ連など社会主義圏から供給されてきた石油・化学肥料・農薬などが断たれたからだと思われます。

北朝鮮の最大の問題は、金日成の常軌を逸した軍事路線への傾斜が、国内の民生生産、なかでも農業に巨大な負担をかけたためだと言われています。  

北朝鮮のソ連崩壊前の農業政策を、FAO(国連食糧農業機構)の報告書(1998年)はこう書きます。  

「朝鮮民主主義人民共和国における農業は、協同農場、国営農場として組織され、歴史的には主に稲とトウモロコシに関心が注がれてきた。食糧自給を果たすために農業の近代化が追求され、4つの主な増産要因、つまり、灌漑普及、電化、化学化(肥料・殺虫剤・除草剤など)、それに、機械化に重点がおかれてきた。」
(引用上記グラフと同じ)

典型的な社会主義農業政策です。自作農をコルホーズに追い込み、穀物生産に重点を置いて、機械化、大型化、化学農業化を推進したわけです。  

このプロセスで取られたのが、大躍進から文革にかけての毛沢東主義農法の模倣でした。

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上の写真は文革期の宣伝写真ですが、子供が稲の上に座っている有名なものです。

単位面積あたりにギュギューに苗を植える密植農法でした。  

たとえば伝統的に2畝とる所に、中央にもうひと畝作ってしまうわけです。

こうすれば、増産できると毛沢東は考えたのです。いかにも素人が考えそうな愚かな妄想です。

そして米を喰うということでスズメを追い払いました。当時の映画には、赤いネッカチーフをした少年団が、長い竹竿をもってスズメの群を追い回しているのが映し出されています。 

また、堆肥を作る伝統がない中国で(北朝鮮も同じ)増産のために投下されたなけなしの化学肥料や殺虫剤は膨大な量に及びました。  

その結果はどうなったでしょうか。

密植した稲は、通気不十分のために蒸れてガスを発生させ、病虫害を激増させました。   

農薬で抑えきれなくなった害虫を食べてくれたはずのスズメなどの天敵生物は根絶されてしまっていたので、瞬く間に水田や畑は腐り、やがて大量発生したバッタが巨大な群をなして各地を襲い、草木も生えない土地に変えていきました。

飢饉が中国全土を襲いました。 

農民は自給に戻ろうにも、既に集団化のために村は破壊されており、鍋釜すら鉄の増産のための粗末な炉に投げ込まれてい潰されていました。

下の写真は文革以前の大躍進時代のものですが、農民が原始的な手製溶鉱炉(土法炉)に投げ込んでいるのがわかります。

出来た鉄は当然使い物にならず、残ったのは3000万から5000万人もの死者を出したといわれる大飢餓でした。

まちがいなく、世界農業史上にゴチック大文字で刻印されるべき失敗だといえるでしょう。

ちなみに、このような狂気の沙汰を、「人類史の偉大な発展」「近代を乗り越える人民の英知」と手放しで礼賛したのが、朝日新聞と左翼文化人だったことは、記憶にとどめておくべきでしょう。

中国は、こんな革命農業を数十年やった後、一転して身も蓋もない化学農法一本槍になってしまいました。

Photo_8大躍進政策 - Wikipedia

一方、この毛沢東の世紀の愚行を完全模倣したのが、毛沢東コンプレックスの正恩のジィさんにあたる金日成でした。 

金日成はこれを主体農法と名付けて、国民に強制しました。

というか、日本でいう「農民」階層そのものが、あの国にはいませんから、違う農法を試す機会すらなかったというべきでしょう。

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 上のプロパガンダ写真をみると、いくつかのことが分かります。 

まず、日本ではありえない軍隊と労働者の農作業への動員です。 

次に、驚くような密植です。この畝間では蒸れによる生育障害をおこすでしょう。 

3番目に、このていどのヘクタール規模の田んぼに動員された人のあまりの多さです。日本なら1名です。 

下の写真は日本の田植機です。もちろんプロパガンダではありません(笑)。6条植えという一般的なものです。 

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いうまでもなく、ひとり仕事です。 

これは日本の稲作の機械化が完成しているからだけではなく、植えた後の田んぼに多くの人が入ると、苗の活着を妨げるからです。 

たぶん北朝鮮の人たちが無駄にワラワラいるのは補植をしているのか、稲の根が貧相か、不揃いなために浮いた苗を取り出しているのかもしれません。 

ならば、苗作りにも問題があるのです。 

4番目に、野暮ですが、こんなショボイ耕運機に3人も乗ったら動かないですよ(苦笑)。 

5番目に、人力で稲作をするなら一枚の田んぼの区画が大きすぎます。 

これは国の指導で水田の区画を広く取るように指示されているのでしょうが、人力農法なら1枚をせいぜい10アールていどに区切ったほうが、手が隅々まで行き渡って合理的です。 

Photo_3 デイリーNKより

上の写真はたまたま撮られた北朝鮮の耕作風景ですが、私はこの写真が100年以上前に撮られたといわれても納得してしまうでしょう。 

今なお牛を使っているのはともかくとして、骨が浮きだしてガリガリです。 

土壌は乾燥しきり、地味は詳しい分析をするまでもなく貧困なことがうかがえます。 

そしてなんといっても渇ききっています。極端な水害の多さと干ばつが、くり返し襲っていることが分かります。 

これは農業が、治水システムに組み込まれていないために起きる現象です。 

また、適切な灌漑設備がないために、満足な灌水ができていないようです。 

こんな土に種を撒いても、絶望的な収量しか得られないでしょう。 

これを見ると、北朝鮮指導部がやりたいのは、旧ソ連型大農法の模倣なのでしょうが、なにぶん機械がない大農法など冗談にすぎません。 

見栄をはらずに、限られた北朝鮮のリソースを、地道に土と苗作り、あるいは寒冷な風土に適した品種改良に当てたほうがいいのでしょうが、聞く耳持たないでしょうな。 

さて金日成は、国家予算の多くを原爆開発に注ぎ込む一方、農業を主体思想化していきます。それはさきほど書いた中国の大躍進政策と瓜二つでした。

そして当然のことながら、結果もまた瓜二つになります。  

FAOの北朝鮮農業レポートはこう書きます。   

「70年代および80年代初頭には高水準の成功が得られた。(略)まったく当然なことに、こうした人工の投入物に強く依存した農業は、ひとたび資源の制約から高い投入水準をもはや維持できなくなれば、収穫の低下が起こりはじめる。
なおその上に、近年の洪水、干ばつ、極度の寒冷つづきで、それまでの農業システムの混乱と崩壊、そして、生産の激減が引き起こされた。」

特に北朝鮮農業にとって悪かったことは、治水の失敗です。

日本統治時代に作られた水豊ダムのような多目的ダムを継承しておきながら、北朝鮮は毎年恒例のようにして大水害を引き起こします。  

その原因を現地を指導した李佑弘氏という朝鮮総連に所属した農業技術者は、70年代に『暗愚の共和国』の中に貴重な実見記を残しています。  

過剰なトウモロコシの作付けが、地味を吸いつくし、またトウモロコシは根が浅いために表土を保持する力が弱く砂漠化現象をおこしました。 

大量の土砂が大水や、時に風によってすら吹き上げられて河川に流入したのでした。 

Photo土留めが不完全なまま開発されたトウモロコシ畑http://ameblo.jp/major-kim/theme2-10000059649.html

また生産増大のために山間地の河川斜面にまでトウモロコシを植えたために、斜面が崩壊し、更に多くの土砂が河川に蓄積していくことになります。 

川底は浅くなり、簡単な大水で簡単に決壊し、農地や住宅地を押し流す結果になったのです。毎年起きる北朝鮮名物の大水の原因がこれです。

まさに人災そのものです。 

主体農法の化学農薬、化学肥料に対する盲信、農地の生産量キャパを無視した過剰な作付け、自作農を否定する集団化、治水の失敗などにより農業生産インフラそのものが崩壊していました。 

それは、旧ソ連圏からの支援というカンフル剤が切れると同時に顕在化し、北朝鮮農業は立ち直る機会すら与えられないまま一挙に崩壊に向かったのでした。 

もし、この時に神格化された一人独裁体制でなければ、農業政策に根本からの修正をかけたでしょう。 

たとえば、キューバがとったような有機農業による農業の再建です。 

しかし、故キム・ジョンイル氏にとって、そのような方針転換は自らが神として君臨する国家という神殿を冒涜する自己否定ものでしかなかったが故に不可能でした。  

どのような形であれ、正恩大元帥閣下に農業を再建する考えがないかぎり、この国に未来はないことだけは確かです。  

といっても、北朝鮮農業の構造的弱点が、その政治体制と不可分な以上、まぁ、言うだけ野暮というものですが。

 

2016年9月20日 (火) | 固定リンク | コメント (2)

2016年9月19日 (月)

蓮舫氏祖母・女傑・陳杏村の黒い霧と意図的二重国籍説浮上

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がんばれ日本さん。戸籍欄の「中国」の意味は、そのとおりだと思います。 

私は「中華人民共和国」と書かなかったところに、日本政府の「含み」を感じます。  

なんていうんですかね、日中台はこのようなあうんの「含み」で成り立っている部分があって、少なくとも中国はそれを暗黙の了解していたということです。  

ですから、尚更このようなデリケートな問題を、自分の保身と野心でつつきだしてしまった意識的な粗雑さがたまりません。  

「在日台湾人は中国の法の下にある」発言など、事次第で中国がこの「含み」を投げ捨てた有事の際、妙に生々しく蘇る可能性すらあると思って記事にした次第です。 

まぁ、常識的にはありえないと思いますが、他国の主権下の在留公民と企業まで指揮下にいれてしまうというトンデモ法律を作る相手が相手だけに、ということです。 

それはともかくとして、結局蓮舫という人は、「国家」という存在を根本的に理解できていないか、あるいは単に利用するべきものだと思っているのです。

蓮舫氏にとって日本とはただ利用するものであって、時には台湾、時には中国を天秤に乗せて、自分が巧みに利用していると思っているのでしょうね。  

さてその蓮舫氏に、ここにきて意図的に二重国籍を利用したのではないかとする説が浮上しました。 

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 謝哲信氏と蓮舫氏

父・謝哲信氏が亡くなった時に、蓮舫氏には大きな遺産が残されたはずです。  

後述しますがそれもそのはず、謝氏は政商だった母・陳杏村の台湾バナナルートの日本事務所長のような立場だったからです。 

巨額の金が謝氏の元にあつまり、黒い霧の中に消えていきました。 

憶測の域を出ませんが、蓮舫氏が相続税を租税回避するために、台湾籍を捨てなかったとしてもそう不自然ではありません。  

というのは台湾は、日本よりはるかに相続税が安いからです。  

ここにも、彼女のもう一つの体質である、「違法ではないが、限りなく脱法に近い」ことをやってのける体質が現れているのではないか、と見る向きもあります。  

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蓮舫氏の祖母である陳杏村は、これはもう女傑、あるいは、女帝というにふさわしい存在でした。 

戦時中に表向きのタバコ商の看板の裏で、日本海軍の裏工作であった阿片取引などに関わっていたとされています。

Photo_3ロッキード裁判に出廷した児玉誉士夫

当時日本海軍は米国などのタングステンなどの戦略物資の禁輸で苦しんでいました。しかし、哀しいかな軍人にはどうしていいかわかりません。 

そこで白羽の矢がたったのが、大陸に様々なパイプを持つ右翼の児玉誉士夫でした。 

児玉は、上海を拠点にしてこの裏工作に当たります。これが俗にいう「児玉機関」です。 

児玉は、1937年、外務省情報部長河相達夫の知遇を得て、中国各地を視察し、翌38年には海軍嘱託となり、41年から上海で児玉機関を運営しています。 

この裏工作の資金源が阿片密売でした。  

陳は、上海で児玉機関のための物資調達や、阿片密売の売り捌きなどに協力していたようです。 

この阿片密売によって陳杏村は巨富をなし、児玉も戦後、日本に持ち帰った巨富を元手にして黒幕にのしあがっていきます。 

では陳が単純な日本軍協力者かといえば、どうも違うようです。 

状況証拠ですが、国民党政権のテロ組織であった青幇は漢奸(※裏切り者の中国人の意)狩りをして数万といわれる白色テロをおこなっています。 

青幇の本拠地は上海にありました。 

しかし、陳は日本軍に取り入って巨富を得て、しかも戦闘機を2機も贈るという派手なまねをしておきながら、結局、青幇の漢奸狩りからは逃げおおせています。 

後に一度逮捕された際も、釈放されています。 

疑わしきは容赦なく殺しまくった青幇にしては不自然です。 

ここから、陳は実は日本軍協力者という仮面をかぶって、その情報を国府に流していたスパイではなかったのか、という疑惑もささやかれています。

中国情報サイト・サーチナはこう書いています。

「1945年、日本軍が降伏したのち、陳杏村は売国罪で起訴されたが弁護士に弁護を頼んで仮釈放となり、台湾に帰った。
台湾当局の裁判所は当時の社会的事情に迫られた事、国民党の地下工作と関係があった事の理由から「陳杏村売国事件」に無罪を言い渡した。」

この陳が戦後に手がけたのが、台湾バナナの日本輸出でした。

同じくサーチナはこう述べています。

「台湾に帰った後も、陳杏村は依然として実業と政治の世界で大いに活躍する名声赫々たる女丈夫であった。
彼女は大一貿易有限公司総経理、福光貿易株式会社社長、契徳燃料廠股フェン有限公司董事長を歴任し、更に台湾地区青果輸出業同業公会理事長を務め、台湾が海外に進出を果たす、とりわけ日本向けバナナ輸出貿易事業において主導的な役割を果たしたという。」

当時、バナナ貿易ほどボロイ商売はなかったようです。 

日本人にとっては高嶺の花であるバナナは高価で売れ、しかも輸入枠があったからです。 

ですから、一回このバナナ輸入枠さえ押さえてしまえば、安く輸出できて、ベラボーに高く売れる市場を独占できたのでした。 

これが陳の錬金術第二幕でした。 

彼女がやった方法は、いうまでもありません。裏金をふんだんに政界にバラまいて、バナナ貿易を独占することです。 

このようにして政界工作をしていた「台湾バナナの女帝」・陳杏村と、既に政界のフィクサーとなっていた児玉とは二度目の協力関係を持ちます。 

そしてこのバナナ貿易利権は、蓮舫氏の父である謝哲信氏に受け継がれています。  

このバナナ利権は、司直の眼から逃れるために多数のトンネル会社に分割しており、そのひとつを息子たち謝哲信、謝哲義に管理させていたようです。 

「黒い霧・台湾バナナ事件」が取り上げられた農林水産委員会-4号昭和41年11月01日 にはこういう記載があります。

「かつて日本が台湾バナナ輸入を自由化した当時から、国民政府によって輸出総量の五〇%の割り当てを与えられて、わが国の国内バナナ輸入業者に対して絶大な支配力を持っておる、こういう人が陳杏村。
 三つ目、陳杏村氏の令息に当たる人で謝哲義と謝哲信、こういう人がおります。今度はむすこさんのことですが、それぞれ砂田という日本人商社名をつけた多数のバナナ輸入会社を実質的に支配し、まかされております。(略)
この駐日弁事処は、日本の業者がかつて輸入バナナ一かごに何百円というリベートを持参しなければ台湾バナナを輸入しない、そういうようなことでリベートを取って、外為法違反容疑で警察から取り調べを受けた事件がある」

この1966年の国会答弁に見られるように、謝は母親の陳から譲り受けたバナナ利権のために、台湾と日本政界に金をばらまいたようです。 

ちなみにこの陳が作った会社は現存していて、今は蓮舫氏の母親が代表を努めています。 

これが「黒い霧・台湾バナナ事件」です。 

この時に日本政界、台湾だけではなく、中国共産党筋にも黒い金がばらまかれたという噂がありますが、真偽は定かではありません。 

中国共産党との関わりで言えば、蓮舫氏は成人した後に北京大学に留学しています。 

陳はこれまでの経緯からなんらかの北京政府とのパイプを持っていたはずですが、それと蓮舫氏の留学と関連づけられるかとうかは不明です。 

147297343709220199179_jfn061115高野孟氏と蓮舫氏

ここにもうひとり蓮舫氏の人生に、強い影響を与えた人物が登場します。 

それがかつて総評左派労働運動を率い、「高野総評」とまで呼ばれた高野実の息子である高野孟氏でした。

父親の実氏はゴリゴリの古典的マルクス・レーニン主義者で、中ソを平和勢力と規定し、労働運動を革命の学校と位置づけたような人物です。 

長男である高野氏もまた、中国シンパとしてマスコミ業界で知らぬ人とていない存在でした。サンデープロジェクトでよく見る顔でしょう。

ちなみに、鳩山由紀夫氏と共に旧民主党の立ち上げに関わり、現在も鳩山氏の主宰する東アジア共同体研究所の理事を務めています。

その彼が蓮舫氏を北京大学に送り込み、さらには弟子格の村田信之氏まで付き添わせ、やがてふたりの結婚の媒酌人まで努めています。

後にテレビ業界に蓮舫氏を紹介し、その後、政界入りを勧めたのも、この高野氏です。 

外国インテリジェンスのする情報工作を、一般人が証拠を提示することは不可能です。

ただ、その後の蓮舫氏が中国の意に沿ったことを、多く発言し始めたことは事実なようです。

戦中戦後史を、闇社会と深く関わりながら生き抜き巨富を築いた女傑・陳杏村と孫娘が、どのような関わりを持ち、台湾と大陸、日本を舞台にして生きてきたのか、歴史ミステリーの様相も見えてきました。

今日の扉写真の白い蓮の花は、陳ばぁちゃんが孫娘に「ハスの花は平和の象徴。ハスの花の船をいくつもつないでいけるよう、台湾の祖母が『蓮舫』という名前をくれた」ことにちなみました。

蓮舫さんは薄っぺらいですが、歴史の闇を背負った女傑・陳杏村女史には好奇心をそそられるものがあります。

2016年9月19日 (月) | 固定リンク | コメント (20)

2016年9月18日 (日)

福岡高裁判決続報

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土曜に速報した福岡高裁那覇支部の判決について、続報しておきます。

                 ~~~~~~~

■沖縄県の仲井真弘多前知事がコメント 「敬意を表すべき判決」「翁長知事は政治的なけじめを」
産経9月16日

沖縄県の仲井真弘多前知事の話 

「普天間問題は歴史的な経緯があり、いろいろな考え方もあるが、高裁は全体を精査した上で踏み込んだ見解も示しており、敬意を表すべき判決だ。

埋め立て申請は9カ月にわたり慎重かつ厳格な審査を行って承認したもので違法であるはずがない。(翁長雄志知事は)選挙で当選したからといって、法律に基づいた承認を取り消す行為は無謀かつ違法であり、極めて遺憾だ。

初めて司法判断が示された以上、翁長氏は違法状態を是正するため、ただちに承認取り消しの取り消しを行うべきで法治国家の行政の長として当然の義務だ。

翁長氏は承認取り消しは適法と繰り返し県民をミスリードしてきたことについて、政治的なけじめをつける必要もある。普天間飛行場の危険性除去は喫緊の課題で、早期の移設、返還に向け国と県は協力すべきだ」

■国全面勝訴 県和解条項逃れに躍起
同上

沖縄県の翁長雄志知事は「確定判決には従う」と明言しており、最高裁で敗訴すれば埋め立て承認取り消しを撤回する。ただ、辺野古移設工事の設計変更などでは知事権限を行使して抵抗する構えで、代執行訴訟の取り下げと手続きの仕切り直しで、国と合意した和解条項から逃れることに躍起だ。

 「あれはしくじりだ」

 県幹部がそう指摘するのは国との和解条項に盛り込まれた第9項。同項は「是正の指示の取り消し訴訟」の確定判決に「従い」、判決の趣旨に沿った「手続きを実施」し、「その後も(判決の)趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約」と明記している。

 翁長氏は“しくじり”を帳消しにするため、新たな方便を使い始めた。今回の訴訟は不作為の違法確認訴訟であり、9項にある指示取り消し訴訟とは異なるとして、翁長氏はこの訴訟には9項の効力が「及ばない」としているのだ。

 ただ、和解条項の基になった和解勧告文の段階では「違法確認訴訟」と明記しており、それを指示取り消し訴訟に変更させたのは県だ。しかも県がとるべき措置として想定されていた指示取り消し訴訟提起を見送ったため、国がやむを得ず違法確認訴訟を提起した経緯がある。判決も「(県は)取り消し訴訟を提起すべきだった」と県の対応に不快感をにじませた。

 9項は別の手段による無用な抵抗を戒めており、翁長氏は苦しい立場に追い込まれたといえそうだ。

■国側全面勝訴で浮かび上がった沖縄県側の論理破綻 
同上

翁長雄志知事は最大の窮地に国が勝訴した米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる訴訟は16日、提訴から2カ月弱で判決が下されたが、主張は出尽くし、県側の論理破綻が際立った。福岡高裁が県側の主張を一切受け入れなかったのはそのためだ。辺野古移設と不可分の基地負担軽減策でも翁長雄志知事の言動は矛盾をきたしており、就任以来最大の窮地に追い込まれた。

 審理では翁長氏の代理人弁護士が裁判長の訴訟指揮に頻繁に不満を示し、翁長氏は常に傍観していた。弁護士に白紙委任された主張は支離滅裂だった。

 「防衛や外交上の政策実現を目的として指示を行うことは権限を逸脱する」

 県は国土交通相が埋め立て承認取り消しの撤回を翁長氏に指示したことについて、国交相の所管外で認められないと訴えた。自治体の立場で辺野古移設の必要性を否定し承認を取り消しておきながら、内閣の統一方針に基づく正当な指示を否定する論理はまさに破綻している。

 判決はこの争点で、国交相には「是正の指示の発動が許される」とする一方、県には国全体の安全について「判断する権限も組織体制も責任を負いうる立場も有しない」と断言した。

 「自治体裁量権なる特殊な用語を用い(翁長氏の)裁量権が拡大するかの…」

国がこう反論したように翁長氏はなりふり構わず、辺野古移設という国家公益を袖にして地域公益を前面に押し出した。しかし、その主張を認めれば、膨大な費用と労力のかかる移設事業で不可欠な法的安定性が揺らぐことは明らかだった。

 訴訟期間中、国は辺野古移設以外の基地負担軽減策を加速させたが、翁長氏の対応の支離滅裂さが浮き彫りとなっている。国は北部訓練場(東村など)の過半の返還に向け、訓練場内での移設が条件のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の工事を本格化させた。翁長氏は工事の進め方や警備のあり方を批判する一方、ヘリパッド移設自体には反対せず、革新勢力と溝を深めている。

 牧港補給地区(浦添市)の返還についても、同地区の倉庫群などを嘉手納弾薬庫地区(沖縄市など)に移設する計画で8月、国は沖縄市の桑江朝千夫市長から正式な受け入れ表明を引き出した。それに先立ち翁長氏は桑江氏から計画に対する認識をただされ、計画推進の立場を明言した。

 これらをめぐる翁長氏の姿勢は一貫しておらず、辺野古移設だけに反対を続ける矛盾は広がる一方だ。

■おまけ1 蓮舫・この判決を聞いて 「沖縄の民意に反してる。これまでの経過が大切」

■おまけ2 金平茂紀 「これは裁判の判決というよりも恫喝というものだ。これは新聞に書かれていたものです。このまま進めば、北朝鮮のようになりかねない」

2016年9月18日 (日) 沖縄問題 | 固定リンク | コメント (9)

日曜写真館 夏の終わり 秋の始まり

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2016年9月18日 (日) 写真館 | 固定リンク | コメント (1)

2016年9月17日 (土)

速報 辺野古移設 福岡高裁 国が勝訴

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本日は簡単な論評だけで事実だけ速報します。

予想されていましたが、国の全面勝訴です。

翁長氏は最高裁まで訴えると思われますが、覆る可能性はほぼ考えられません。

和解文言では、判決に従うことが明記してあるので、地方自治体としての抵抗の終末点となります。

というのは、県と国が取り交わした「和解条項9」にそう明記されているからです。
※和解条項の解説は過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-08d4.html

「9 原告及び利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する。」

翁長氏のみならず基地反対派は、今年3月に取り交わしたこの「和解条項の9」の重みを噛みしめていただきたいものです。

国と和解を結んだ時には、勝利宣言のようなことをしておきながら、その説明を県民に怠り、結局、敗訴すると「裁判所は国の追認機関だ」はないもんです。

わかってやったこと が、わかりきった結末を招いただけの話です。

高裁裁判長は翁長氏に対して、「判決が出たら従いますね,」と直接に聞いて、「はい」という言質をとっています。

これはこの「和解条項9」が前提としてあるからこそ、裁判長は念を押したのです。

もしこの判決後も、なおも戦いたいのなら、行政とは無縁な場所でやることです。

したがって、今後翁長氏が県知事在任中に、移設反対闘争に関わることは国と裁判所に対する信義違反です。

いずれにけよ、これで移設問題は大きな曲がり角を曲がったことになります。

                      ~~~~~~~

■辺野古沖 国の訴え認める「翁長知事の対応は違法」
NHK9月16日

沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設先とされる名護市辺野古沖の埋め立て承認をめぐり、国が沖縄県を訴えた裁判で、福岡高等裁判所那覇支部は「普天間基地の騒音被害を取り除くには、埋め立てを行い移設するしかなく、移設により県全体の基地負担が軽減される」として国の訴えを認め、翁長知事が承認を取り消したのは違法だとする判決を言い渡しました。

名護市辺野古沖の埋め立て承認をめぐって、国はことし3月、翁長知事が行った承認取り消しを撤回するよう求める是正指示を出しましたが、県が指示に応じないため、違法だとする訴えを起こしました。
16日の判決で、福岡高等裁判所那覇支部の多見谷寿郎裁判長は「普天間基地の騒音被害や危険性は深刻で、移設先がほかに見当たらない中で被害を取り除くには、埋め立てを行い辺野古沖に移設するしかない。
移設により県全体の基地負担が軽減され、辺野古沖の施設の面積は普天間基地の半分以下になる」と指摘しました。そのうえで「埋め立てを承認した前の知事の判断に不合理な点はなく、承認の取り消しは許されない」として、国の訴えを認め、翁長知事が承認を取り消したのは違法だと判断しました。

また判決は、国防や外交に関する知事の審査権限について「地域の利益に関わることに限られ、県は国の判断を尊重すべきだ」と指摘しました。
普天間基地の移設をめぐっては、国と県の双方が裁判を起こし、ことし3月に和解が成立したあとも再び法廷で争われる異例の経緯をたどっていて、司法の判断が示されたのは初めてです。
県は、判決を不服として最高裁判所に上告する方針で、国が中止している埋め立て工事は引き続き再開されない見通しです。

■翁長知事「裁判所は政府の追認機関」

判決のあと、沖縄県の翁長知事は県庁で記者会見し、「辺野古が唯一の移設先という国の主張を追認するかのような内容で、地方自治制度を軽視し、沖縄県民の気持ちを踏みにじる、あまりにも国に偏った判断だ。

裁判所には法の番人としての役割を期待していたが、政府の追認機関であることが明らかになり、大変失望している。三権分立という意味でも相当な禍根を残すのではないか」と、今回の判決を厳しく批判しました。
そのうえで翁長知事は、「このような判決は、沖縄県だけの問題にどとまらず、これからの日本の地方自治と民主主義の在り方に困難をもたらすのではないかと大変危惧している。今後、最高裁判所に上告し、不等な判決の破棄を求めるとともに、地方自治が本来の役割を果たすことができるよう、力のかぎりを尽くして訴えていく」と述べました。

沖縄県の代理人を務める竹下勇夫弁護士は、普天間基地の移設計画に反対する人たちが裁判所前で開いた集会で、「誠に残念な判決で、考えうる中で最も悪い内容だ。辺野古への移設が認められなければ、普天間基地がそのまま固定化してしまうといった内容が書かれていて、私たちとしては納得できない。翁長知事と話したうえで、上告に向けて速やかに作業を進めたい」と述べました。

■官房長官「国の主張認められたこと歓迎」

菅官房長官は午後の記者会見で、「沖縄県知事が埋め立て取り消し処分を取り消さないことが違法であるとの司法判断がなされたと考えており、国の主張が認められたことは歓迎したい。世界で一番危険と言われている普天間飛行場の固定化を避け、日米同盟による抑止力を考え、辺野古を選定した経緯がある。

引き続き、国と沖縄県との間の和解の趣旨に沿って誠実に対応し、話し合いと裁判を並行して進めていきたい」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団が、近く沖縄県を訪問する予定はあるか質問したのに対し、「そこは考えている。国会が26日から始まるので、国会の状況を見ながらと思っている」と述べました。

ワシントンを訪れている稲田防衛大臣は、「防衛省としては、政府と沖縄県の皆様方との共通の認識である、普天間飛行場の固定化を避け、危険性を一刻も早く除去するために、今回の司法判断を踏まえたうえで、引き続き、国と沖縄県との間の和解の趣旨に従い、沖縄県と問題解決に向けた協議を継続するなど、誠実に対応していく」というコメントを出しました。

訴えを起こした国土交通省は「今回の判決を踏まえたうえで、引き続き、政府と沖縄県との間の和解の趣旨に従い、誠実に対応していきたい」というコメントを出しました。

■沖縄の自治体は

政府がアメリカ軍普天間基地の移設先としている沖縄県名護市の稲嶺市長は、記者団に対し「納得できない判決だ。とても中立だと言える内容ではなく、沖縄の民意や民主主義、地方自治が問われているといった主張が届かなかったことが残念でならない。政府の言い分を追認する結果にとどまっているとしか受け止められず、今後も県を支援していく」と、今回の判決を厳しく批判しました。

アメリカ軍普天間基地を抱える沖縄県宜野湾市の佐喜真市長は、記者団に対し「今回の司法の判断は重いと思う。町のど真ん中にある普天間基地の全面返還が県民にとって一番象徴的な負担軽減であり、政府も県も20年前の返還合意の原点に立ち返って、この実現に取り組んでほしい。争うばかりではなく、双方が努力することが大事だ」と述べました。

■今後の裁判は

沖縄県が最高裁判所に上告できるのは1週間以内で、今月23日が期限です。

最高裁判所では通常、5人の裁判官による小法廷で審理されますが、重大な事案の場合などは15人の裁判官全員による大法廷で審理されることもあります。審理には少なくとも数か月はかかるものと見られます。

20年前に国と沖縄県が軍用地の強制使用をめぐって争った裁判では、高等裁判所の判決のおよそ5か月後に最高裁の大法廷で判決が言い渡されていて、国は、今回も同じような期間を経て、今年度中に判決が言い渡される可能性があると見ています。

(以下略)

2016年9月17日 (土) 沖縄問題 | 固定リンク | コメント (7)

2016年9月16日 (金)

蓮舫氏重国籍問題 国会議員被選挙権は二重国籍を排除していなかった

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蓮舫氏が、野党第1党の党首になったそうです。 

私は秘かに、2位3位連合で前原氏という線もあるのかなと考えていただけに、稀勢の里が序盤で2敗したくらい脱力しました。 

政府は見えない場所で肩を叩き合い、祝杯のひとつも上げたんじゃないでしょうか。 

まぁよりによってこの人を、ですか。 

民進党の自浄能力がないだのなんだのと、野暮はいいこなしにしましょう。ハナっからそんな高度なものはないんですから出しようがありません。 

あの党は極端に異なる政治哲学と政策の違いを暗黙の前提にした党ですかから、長島さんと辻本さんが一緒にいられる党なわけです。

そもそもよく言ってやれば、多様な政治主張を許容するゆるやかな連合戦線党、有体に言えば政党の看板がなくては勝てる見込みのない政治家たちが作った選挙互助会として誕生しました。 

旧民主党を母胎にして、旧社会党、旧民社党、旧維新、とキューキュー尽くしで党を作れば、どこかの派閥のスキャンダルを自浄しようとすれば、それは即内部抗争に発展してしまいます。 

それでも自民党という敵がいるうちは、なんとなくまとまっていこうという気分だけはありました。 

しかし政権を取って敵が眼前から消滅すると、さぁ大変。始まったのは壮絶な内部抗争でした。

政権期間中、野田氏を別にしてすべての代表が石持て追われています。 

だから、本来この二重国籍問題を取り上げるべき他の候補がいち早く容認してしまうというていたらくです。

文句を言ったのは、松原さんと長島さんくらいですか。やれやれのどかなことよ。 

これが米大統領選だったら、これ一発で勝敗が決まってしまうようなテーマなのですがね。 

この民進党の緊張のなさは、政権交替する可能性がかぎりなくゼロだからです。 

あればいくら彼らでも、もし仮に首相を送り出せる立場になった時、二重国籍者の蓮舫氏がなれるかどうか、ちっとは考えてみたことでしょう。 

今や、そこいらの野党一般に民進党がなってしまっているということの告白のようなものです。 

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勝利の鍵となった地方議員票が圧勝だったのは、蓮舫氏の謝罪会見(だったのか?)前に締め切ってしまったことと、地方議員にとって二重国籍問題の重さが理解できなかったからです。 

正直な話、彼らにとってただ知名度が高い、四角い顔の次は元モデルがいいじゃないのていどで、党首の蓮舫氏と一緒にニカっと笑ったポスターを貼ることができればいいだけですからね。

さて、私は二重国籍それ自体は、「たいしたこと」ではないと思っています。台湾籍を抜く義務を怒った努力義務違反でしょう。 

実際、わが国には3万3千人(2002年現在国会答弁)もの二重国籍者がいるといわれています。 

法務省は二重国籍解消を努力義務ていどで考えていたために、手ぬるい指導しかしていませんでした。

おそらくさらにグローバル化が進んだ今は、もっと増えていることが予想できます。 

ただし、ここで押さえておかねばならないことは、これはあくまでも一般ピープルの場合だということです。 

さらに地方自治体議員も、直接外国との国益が絡んだ交渉事に当たるわけではないので、いいとしましょう。 

実際に地方自治法第19条は被選挙権を、「日本国民」であることだけにしていて、二重国籍を排除していません。 

では、外国の利害対立がありえる国会議員の場合はどうでしょうか。 

実はやや驚いたことには、これもないのです。公職選挙法第10条は冒頭で「日本国民」であることだけが、被選挙権の要件であるとしています。

念のために見てみましょうか。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO100.html

■公職選挙法
(被選挙権)
第十条
 日本国民は、左の各号の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有する。

ですから、蓮舫氏は相談した弁護士に、「まったく法的には問題ないっすよ」と言われたと思います。 

では、外国との重国籍がいいくらいですから、外国人から金を貰っていいのかといえば、もちろん違います。 

政治資金規正法22条の5は、このように述べています。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO194.html 

「■政治資金規正法
第二十二条の五  何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織(中略)から、政治活動に関する寄附を受けてはならない。」 

少なくとも金のほうはこれでダメなのはわかりましたが、国籍はいいわけです。おかしな話です。

このように国会議員に対する献金に厳しい国籍の縛りをかけたのは、国会議員が国家権力を行使する立場にあるからです。 

でもなんだかねぇ、です。

国会議員の地位はよくて、金はダメだなんて、おかしくありませんか。

外国籍をもった人間のほうが、外国に利害関係者がいておかしくないわけですから、よほど献金を受けるよりストレートに外国の影響下におかれると考えるべきではないのでしょうか。

そして国会議員が外国の献金によって支配されれば、国家権力を間接的に外国の支配下に置く可能性が出ます。

ですから、国政を預かる国会議員の被選挙権規定に「日本国民」とだけあるのは、大変な手落ちだといえるでしょう。 

維新は国会議員の二重国籍禁止法案を出すようです。

その過程で、泣いても笑っても、蓮舫氏が矢面に立たされるのは火をみるより明らかです。

これで次回の国会は、蓮舫追及国会になることが決まりました。 いっそう痩せるでしょう。お気の毒に。

前原氏は党大会でこんなことを述べていました。

「代表になるということは、個人の問題が党の問題になるということなんです。党を巻き込むことの重みを受け止めてほしい。リスクマネジメントをしっかりやってほしいということです」

ごもっとも。前原さんも自分がかさまないと、いいことをおっしゃる。

自民としては、この煮詰まりを見ながら解散を仕掛けていくチャンスをうかがうことになるでしょう。 

もう既に検察も動いているという噂もあります。内調も黙っているはずがありません。

引っかかる法律は複数あります。旅券法違反、国籍法違反などなど。

彼らは適当な時期に、適当な週刊誌媒体にリークして、それで彼女の政治生命は断たれるでしょう。

そしてその時は、蓮舫氏が野党第1党の党首な以上、党全体まで巻き添えにすることでしょう。

民進党も権力に3年以上いたのですら、ちっとは国家権力のコワサを知っていてもよさそうなものなに。

おっとそうか、松原さんが党首選やり直しを緊急提案したのは、彼が国家公安委員長だったからかもしれませんね。

とまぁ、あれだけ周囲から衆参同時選挙をやれと言われても慎重姿勢を崩さなかった首相にとって、これ以上望みようがないすんばらしい野党第1党党首が誕生したものです。

あんがい衆院選は早いかもしれません。 

2016年9月16日 (金) | 固定リンク | コメント (20)

2016年9月15日 (木)

蓮舫氏の「中国ひとつ」発言について

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皆様のおかげで、複雑怪奇な国籍法がやや理解できてきたようです。 

これが理解できると、メディアでもわかってしゃべっていない奴が多数いるのか分かりますよ。 

おお、偉大なるかな、集合知。 

最大の知見をもたらして頂いた、「がんばれ日本」さんに解説願いましょう。

⑴  蓮舫さんは、昭和59年改正国籍法附則5条の規定に基づき、国籍取得の届出を行い、日本国籍を取得したようです。
この時点で、日本国籍と台湾籍の重国籍となったはずです。
 

⑵  20歳までに重国籍となった蓮舫さんは、22歳までに国籍選択の義務(日本国籍 or 台湾籍のどちらかを選ぶ義務)があります(国籍法14条1項)。 

①蓮舫さんは、日本国籍を選ぶことにしたようなので、この場合、台湾籍の離脱がベストです(国籍法14条2項前段)。 

②ただし、なんらかの事情で、台湾籍の離脱が無理なら、「日本国籍を選択し、台湾籍を放棄する」と宣言することでもかまいません(国籍法14条2項後段)。
この場合は、依然として、台湾籍を離脱する努力義務が残ります(国籍法16条1項)。
 

■まとめ
蓮舫さんの発言がブレているので、何が真実か判然としませんが、⑴を真実として話を進めます。
 

(2)については、日本国籍を選ぶつもりなら、①か②をする義務があります。どうも、①の台湾籍離脱はしていないようですね。 

そうすると、問題は、②の台湾籍離脱努力義務をしていないかです。
①に加え、②もしていなければ、⑵の「国籍選択の義務」違反で、国籍法違反と言ってよいと思います。
 

ただ、②はしている、ということなら、台湾籍の離脱努力の義務違反です。「国籍法違反」とは言いにくく、厳しく言えば、「違法状態」くらいかなあという感じです。

決論的にいえば、蓮舫さんはこの台湾国籍離脱義務をしていなかったということでしょうね。 

まぁ、がっかりされる方も多いでしょうが、それ自体は義務違反ですから、「たいしたこと」ではありません。

「がんばれ日本」さんがおっしゃるように、「違法状態くらいかな」といったレベルのことです。

問題はむしろ、蓮舫さんが弁明するにあたって、場当たり的で幼稚な答えを繰り返したあげく、外交上のデリケートな問題をつつきだしてしまったことてす。

ひとつは、中国と台湾との関係で、日本政府が取り続けている「あいまいな態度」を改めて明るみに出してしまいました。

1985年に蓮舫さんは中華民国籍から日本に帰化したと言われています。

当人は「帰化」という表現が、いかにもあたしは外国人でしたというニュアンスがあるために嫌って、「帰化でなくて日本国籍取得です」という言い方をしていますが、一緒です。

帰化は戸籍謄本に残ります。

帰化(日本国籍取得)は身分変動を伴いますので、台湾出身者が日本人と結婚したり養子縁組するのと同様、戸籍に反映されます。

では、なんと戸籍に書かれているのでしょうか。

「中国台湾省」です。この場合の「中国」は、日本と正式国交のある「中華人民共和国」を意味します。

李登輝友の会によれば、この実例として2010年に台湾人女性と結婚した日本人男性が、妻の戸籍がこの「中国台湾省」とされていたために問題となりました。

Photo
http://www.ritouki.jp/index.php/info/20160903/

上が旧台湾籍を持つ人の戸籍謄本ですが、「台湾」あるいは「中華民国」とは表記されず「中国」です。

これに対してとうぜんのことながら、台湾籍を有する人たちは反発して改正運動が起きています。

知らないうちに、自分たちは日本政府から「中華人民共和国公民」扱いを受けていたのですから当然です。

つまり、日本に在留する台湾人は約4万5千人は、日本政府の法的立場では「台湾」を否定されて「ひとつの中国」とされてしまっているからです。

これは台湾の国際的地位を脅かし、さらには各国にいる在外台湾人を中国の支配下に置くものと受け取られました。

李登輝友の会はこう述べています。

「現在の台湾(中華民国)では「台湾省」という行政区は機能停止状態にあり、一方、「台湾省」という行政区を設置しているのは中華人民共和国ですので、日本の戸籍では未だに台湾出身者を「中国人」としているのが現状です。
戸籍とはそもそも、出生や婚姻、国籍など個人の身分関係を明確にすることを目的として設けられました。しかし、台湾出身者の国籍を中国としていたのでは、日本人としての身分関係を明確に把握できません。」
台湾出身者の戸籍の国籍が「中国」とされている ... - 日本李登輝友の会

このように中国の実効支配が及ばない台湾を、法務省は「中国」とすることで在日台湾人を不安定な立場に追い込んでいるわけです。

蓮舫氏の「日本にいる台湾人には中国法が適用される」という発言、あるいは、台湾人も「中国」として戸籍に記入する法務省の対応から,やや極端なケースを想定してみましょう。

たとえば、中国は国防動員法という国家動員法を持っています。
国防動員法 - Wikipedia

この法律は2010年7月に、中国が「国家の主権、統一と領土の完全性および安全を守るため」として施行したものです。

具体的には、中国政府が有事を宣言すれば、国内、国外を問わず中国国籍を持つ者は等しく、18歳から60歳の男性、18歳から55歳の女性が国防義務を負うというものです。

罰則規定つきの法律で、たんなる努力義務ではありません。

国家動員法自体は中国に限ったものではありませんが、中国のそれが異なっているのは、外国に住む中国人にもそれを命じていることです。

他国の主権下においては、その国の法に従うのが常識ですが、他国の国家主権を超越して自国民を有事動員できるというのですから、スゴイね。

下の写真は2008年の、北京五輪の時に動員された中国人学生たちのものです。

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実は私もフリーチベット・ウイグルの立場からこの抗議行動には参加しましたが、中国人学生たちにこづきまわされました(笑)。

なんで日本人のオレが、国内で中国人にやられなきゃならないだよー、と思いました。

後にその中国人学生の動員実態が明らかになりますが、各大学の共産党支部が動員し、日当を与え、貸し切りバスを連ねてこの官製デモをしたようです。

これが、国防動員法のひな型です。

おそらく有事において、日本国内の各所で国防動員に基づいて後方攪乱が行われることになることは、想像に難くないでしょう。

中国人が米国人に次いで多く住む沖縄においては、有事においてこの国防動員法が実施され、高江のような騒ぎが全島に広がると思われます。

基地のゲート前や国道など随所で、五星紅旗が林立する「平和運動」を見ることになるかもしれません。

ましてや中国が台湾に武力侵攻した場合、在日台湾人たちは、「中国人」として徴発され、日本において台湾侵攻の支援をする「義務」が生じる可能性がでてしまうのです。

蓮舫さんの「私の国籍は形式上『中国』。中国の国内法では外国籍を取得した者は自動的に(中国籍を)喪失をしているので、二重国籍にはならない」という発言は、野党第1党の首候補として不適切であるに止まりません。

在留台湾人の地位を貶めて危機にさらし、さらには日中台の微妙な含みを残したバランスを崩す結果となったのです。

余計なお世話ですが、蓮舫さんは党員・サポーターのみならず、国民をだましたのですから、今回の党首選を仕切り直ししたほうがよいのではないでしょうか。

圧勝と伝えられる蓮舫さんが党首になれば、地雷を抱え込むことになります。

蓮舫さんが党首になれば、安倍さんは笑いをかみ殺しながら懸案の衆院解散をするかもしれませんね。

さらに地域を選択する

2016年9月15日 (木) | 固定リンク | コメント (22)

2016年9月14日 (水)

蓮舫氏 重国籍を認める

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ひこ~さんからコメントを頂戴しました。手厳しい。  

まことにごもっともなご意見です。「国籍取得」を「国籍選択」に修正しました。 

さて、さすがここに来て蓮舫氏も重国籍をみとめざるをえなくなったようです。 

当人の記者会見が出ています。
http://www.sankei.com/politics/news/160913/plt1609130016-n1.html

「先般来、私の国籍のことでお騒がせしているが、これまでのご説明したとおり、17歳のときに日本国籍を取得した。
合わせて父と一緒に台湾籍を抜く作業をしたという認識で今にいたっていたが、台湾当局に私の籍の確認をしていたところ、昨夕、代表処から連絡があり、私の籍が残っていたということを受けたので、改めて報告させていただく。
その上で、17歳のときに私が日本国籍を選択して、台湾の籍を父とともに抜いたという認識は今にいたっても同じだったが、17歳当時の私の記憶の不正確さによって、さまざまな混乱を招いたことは、本当におわび申し上げたいと思う。
合わせて、私の高校生時代の記憶によって、この間当初から発言がある意味、一貫性を欠いていたことに対してもおわび申し上げると同時に、大好きな父の台湾の方々にも心配をさせてしまったので、本当に申し訳ないと思っている。
---現在手続き中の台湾籍を抜くめどは
あの、相手があることなので、私から、いつというふうには断言できませんが、そう遠くないと思っている。
---現時点ではまだ残っている?
はい」

この「はい」のひとことで、気の毒ですが、彼女の人一倍たくましい上昇志向は頓挫しました。 

国籍法の実務に詳しい「がんばれ日本」さんによれば、以下のようです。多摩っこさんにまとめてもらいました。

①.法改正のあった未成年時に日本国籍を取得。
この時点では必然的に日本と台湾の2つの国籍になる。
②.その後20歳になったら22歳までの間に国籍の選択をする義務がある。
(成人し単独で法律行為の出来る大人として最終的な自己選択)
③.日本国籍を選択したら台湾国籍離脱手続きをとる。(台湾を選択したら日本国籍離脱手続き)
②③をせず現在に至った、法律違反

党内選挙の締め切りまで引っ張りたかったために、引っ張ってかえって傷を深くしました。

19782016.09.09 産経新聞朝刊

仮に上の記事の予測のように党首選に圧勝でもしたら、自民は大喜びするでしょうね。

こんな扱い易い、脛にキズ持つ相手はいないのですから。  

彼女はヒラリーや小池女史ばりに、「この国の硬いガラスの天井」を打ち破っていきたかったのでしょうが、政治家として迂闊に過ぎます。 

ここまでクライシス・コントロールが出来ないようだと、男女の前にひとりの政治家として致命的です。

いい軍師がついていないのでしょうね。 

大震災や原発事故が、かならず歴代で最も脆弱な統治能力しか持っていない首相の時に起きるのは、決して偶然ではありません。 

どなたかもコメントで言っていたように、当初から「事実関係を調べますから1週間下さい」と言って、徹底的に調べればよかったのです。  

初めの記者会見で全否定した時に、既にこの結末は見えていました。 

何度となく書いていますが、危機においては「最初の記者会見」こそすべてです。 

典型的な、<最初の記者会見で全否定⇒うその説明を重ねる⇒混乱拡大⇒全面謝罪>モデルです。 

おそらくこの時点で蓮舫氏は、問題のあり所そのものが、まったく飲み込めていなかったはずです。

自分は台湾国籍を放棄すると宣言したはずだ、という思い込み(※欄外追記参照)があったために、その手続きをしなかったことまで考えが及ばなかったのでしょう。

この勘違い自体はたいしたことではありませんし、さらに言えば、今回の事件すら対応を誤って自分で大火事にしてしまっただけの話で、「たいしたことではない」と言える類の話なのです。 

この「たいしたことではない」という認識の甘さが、対応のミスを連発します。 

「生まれたときから日本人」「台湾籍は抜きました」など言ってきたことが、ことごとくウソだったことになりました。

おそらく彼女は、民進党嫌いのネトウヨが騒いでいる、大手メディアは自分に甘いという思い込みがあったために、簡単に鎮火できると思っていたはずです。 

実際、大手マスコミは彼女に対して極度に友好的でした。 

なにせ産経を除いて、ほぼすべてのメディアはまったく報じなかったのですから呆れます。 

たぶんメディアは、彼女がハーフであり、女性であり、その上に政権をズバズバ斬りまくる彼女のキャラを、重宝していたのでしょうね。 

Photo_2
このメディアの甘やかしが裏目に出ました。 

たいしたことがないいいがかりだと思っていたために、説明を何度も変えたあげく、例の「中国の法ならば」発言が飛び出します。 

驚いたことには、「台湾は国ではない。日本と国交がある中国の法によれば国籍は消滅している」というこのトンデモ発言すら、多くのメディアは好意的に伝えたのです。

この発言は少しまじめに考えてみれば、蓮舫氏が看板にしていたアイデンティティの多文化共存という考え方自体を否定してしまっています。 

彼女のルーツが台湾と日本にあるのなら、よりによって中国など引き合いにだす必要はなかったのです。 

今回の記者会見でも彼女はこう言っています。

「--日本の国籍法では離脱できるが、台湾の国籍法をどう認識していたのか。中国のように自動的に失うということだが、台湾の国籍法についてはどう認識していたのか
一貫して私は台湾籍が抜けていたと思っていましたので、その細やかな部分を正直、17歳当時、すべて父に任せていた。ですから、あえて台湾の法律、言葉も分からない段階もあったので、特段に配慮したことはない。」(同)

私は蓮舫氏が、台湾についてなにか思うところがあるとのかと思いましたが、今回の「中国の法によれば」発言を聞くと、それは希薄なようです。  

それにしても、台湾の言葉がわからないとはどういうことでしょうか。

彼女は留学していたくらいですから、北京官語ができるはずですが、ルーツたる台湾語は覚える気もなかったということになります。  

父親の謝哲信氏から台湾語を学ばず、しゃべれもしなかったということになります。
※台湾語が流暢だという異説もあります。 

<言葉>とは、アイデンティティの根幹です。 

自分が何者か、どこで生まれ、どの社会で生きていこうするのかという意志です。  

それがあいまいだと、いわゆる在日韓国人のような何国人だかわからない根無し草を生み出します。 

父親はバナナ貿易による巨額の富を背景にして、日本政界に食い込んだ政商でした。

たぶん、政権党との汚濁にまみれたのでしょう。 

そのためか、娘が政界に入るのを好まなかったようです。  

むしろ今回の事件で、彼女の政治的立場が台湾にはなく、大陸の立場に立っていることがはっきりしたのが、せめてものこのくだらない騒ぎのわずかな収穫だったでしょうか。 

この発言が正しければ、在日台湾国籍の人々は中国の支配下に入って「ひとつの中国になれ」ということに等しくなってしまうからです。 

また、この「台湾は国ではない」発言は台湾にも伝わり、大きな反発を呼びました。

ある女性立法議員は、「台湾を裏切った残酷で冷酷な女」と決めつけたそうです。https://www.youtube.com/watch?v=JKyeIGwpb48&feature=youtu.be

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 ひこ~さんのご質問についてですが、わかる範囲で。  

「日本国籍を取得した」という表現については、おっしゃるように「台湾国籍をそのままにして、日本国籍を選択した」が正しい表現です。  

ご指摘にそって昨日の記事を修正しました。  

たぶん彼女は日本国籍選択の時に、「喪失宣言をした」ということで、放棄したと勘違いしたのでしょうね。  

それを今になって気がついたわけで、これも自己弁護から始めずに、当初からやっていれば、と思います。※追記 初めから重国籍だと知っていたようです。欄外参照。  

彼女が代表処に台湾パスポートを提出したかどうかの「証拠」ですか。
難しいこと聞くなぁ(笑)。
 

私は付き添ったわけではないので、わかりませんが、常識的に見れば、持っていかねばならんのじゃないですか。  

失くしたで台湾政府に通じるかどうかは、なんとも分かりかねます。そのうち当人が答えるでしょう。  

国籍法については昨日のHN「がんばれ日本」さんがものすごく細かく説明してl頂いていますので参照ください。

勉強になりました。ありがとうございます。 

※追記 1993年、25歳の時の週刊現代のインタビューで「自分は二重国籍である」と明言しているようです。

重国籍を知っていて、初めの記者会見で虚偽を言った疑いが濃厚になりました。

そうならば、これで投了です。

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2016年9月14日 (水) | 固定リンク | コメント (13)

2016年9月13日 (火)

蓮舫さんの二重国籍問題

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蓮舫さんが自沈しました。 

そのお姿は、鳥も鳴かずば撃たれまいにの、あの都知事候補Tさん(あえて名を秘す)と見事にダブります。 

どうしてこうも野党陣営は、毎回毎回、同じ失敗を繰り返すのでしょうかね。 

政府批判ばかりやっていたために、攻撃は得意でもいったん批判される立場にまわると、まったく危機管理ができません。

初めからキチンと何を謝り、何を守るのかと腑分けして、説明の手順を考えていないから、全面否定から始まるという危機管理上やってはいけない悪手をやってしまいました。

最初に、「外国籍の放棄を怠っていままで来てしまいました。申し訳ありません」と謝ってから始めるべきでした。

それを危機管理上やってはいけない、全面否定から始めたあげくに二転三転。

いや父親が、いや子供が可哀相、いや文化多様性が、いや女性差別が、そしてとうとういやネットが怖いでは処置なしです。

舛添さんやTさんと一緒で、政治家になってはいけない人だったのがバレました。 

あげく逃げきれなくなって、責任転嫁をします。

大手マスコミが沈黙していることをいいことに、「ネットが悪い」ですからなんともかとも。 

この蓮舫二重国籍問題を提起した池田信夫氏は、こうツィートしています。

「八幡さんも私もほとんど公開情報だけでたどり着いた結論を、高給をもらっているマスコミが本人の発表まで出せなかったんだから、今回の事件は日本のメディアの深刻な劣化を示している。記者クラブもいらない。」

まことにそのとおりです。今やネット言論の集合知が、既成マスコミを質量共に凌ぎつつあります。

そういえば鳥も鳴かずばのT氏もこんなことを言っていましたっけね。

「ネットはしょせん裏社会だと思っている。」

はいはい。

Photo_3蓮舫氏単独インタビューより http://news.yahoo.co.jp/feature/349

それはさておき、さて事実関係はもうネットで溢れ返っているので、今さら私が書くまでもないでしょう。 

蓮舫さんはキッチリ重国籍です。逃げも隠れもできません。 

そもそも蓮舫さんは、国籍選択と帰化をゴッチャにしていました。

帰化は、その前に国籍を離脱する必要があります。

日本の国籍法では22歳までに国籍選択をする必要があるのですが、彼女はその前に台湾の国籍放棄を放棄していないのです。

なぜそうせねばならないかについて法務省はこう述べています。
法務省:国籍Q&A

「国籍を選択する必要があるのは,重国籍者が2つ以上の国家に所属することから,
a.それぞれの国の外交保護権が衝突することにより国際的摩擦が生じるおそれがある,
b.それぞれの国において別人として登録されるため,各国において別人と婚姻するなど,身分関係に混乱が生じるおそれがある,等のためです。
 重国籍者は,重国籍となった時が20歳未満であるときは22歳に達するまでに,重国籍となった時が20歳以上であるときはその時から2年以内に,いずれかの国籍を選択しなければなりません。
 この期限内に国籍の選択をしないでいると,法務大臣から国籍選択の催告を受け,場合によっては日本国籍を失うことがあります。」

ところが蓮舫さんは、自分は18歳で国籍選択をした、と言っていますが、本来はできないのです。

一方、台湾の国籍法では20歳にならないと国籍放棄はできませんから、本来ならここで台湾国籍の放棄手続きをしてから、日本国籍の取得(※)をするのがほんとうでした。
※取得ではなく、元々両国の国籍を重国籍していたのだから、「選択」だという指摘がありました。そのとおりですので「取得」を「選択」に修正します。

蓮舫さんは、9月6日にとうとう台湾代表処(※国交がないために台湾駐日大使館に相当)で国籍離脱申請をしました。
http://www.sankei.com/politics/news/160913/plt1609130009-n1.html

ここで、蓮舫さんに質問があります。この時、あなたは何を必要書類として代表処に提出しましたか?

はい、台湾のパスポートですね。台湾パスポートを返納せねば対話国籍は離脱できませんから。
※台湾代表処 中華民国籍喪失申請に必要な書類について
http://www.roc-taiwan.org/jpyok_ja/post/102.html

なんだあなたは自分が台湾パスポートを所持していることを、知っていたんじゃないですか(笑)。急に思い出したんですか。

ですから、蓮舫さんは法務省に台湾パスポートを所持していることを知りながら、ウソの申告をしたとしか思えません。わかって言っているのでしょうか。

これには罰則規定はありませんが、菅間官房長官が穏やかに「恫喝」したように、悪質と認められれば、最悪のケースとして先の法務省見解のように日本国籍を喪失する可能性すらあります。

そうなった場合、野党第1党党首の地位はおろか、公職たる国会議員の地位も喪失します。

2013年年までHPで帰化していると書いていましたから、これが公選法違反(経歴詐称)に該当するのではないかという疑いも出てきました。

まぁ、現実には裁判所が判断することで、なんとも言えません。

むしろ問題なのは蓮舫さんが、「中国の法によれば二重国籍は認めていないので、二重国籍ではない。台湾は国ではないから二重国籍ではない」という弁明をしたことです。http://www.sankei.com/politics/news/160911/plt1609110014-n1.html

おっと、と。この論法だと、在日台湾籍居留者たちは皆中国の法の支配下にある「中華人民共和国人民」ということになります。

我が身かわいさとはいえ、スゴイことを言うものです。

蓮舫さんは、日台ハーフなのにも関わらず、台湾は中国の領土だという「ひとつの中国論」者なのですね。

さすが北京大学留学者、と合いの手が入りますよ。

日本政府はの公式の立場は、「日中共同声明第三項にあるとおり、台湾が中華人民共和
国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重す
る」です。

あくまでも「ひとつの中国論」については、「理解と尊重」であってであって、外交用語で「聞き置いた」、市民語で言えば「あんたの言い分はわかったが、オレは同意はしていない」ということです。

それを踏み越えて、蓮舫さんは「ひとつの中国論」に飛躍したわけです。

これは、本家の台湾民進党の立場と大きく違うわけで、そういえば蓮舫さんの口からひまわり革命の話が出たのは聞いたことがなかったですね。

彼女は台湾籍であっても、馬英九と同じ外省人の「華人」という風土で育った人なのでしょう。

いずれにしても、野党第1党党首になってからでは遅かったので、いいところで身体検査ができてよかったですね、民進党さん。

 

 
 
 

 

2016年9月13日 (火) | 固定リンク | コメント (24)

2016年9月11日 (日)

日曜写真館 朝は秋風

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2016年9月11日 (日) 写真館 | 固定リンク | コメント (1)

2016年9月10日 (土)

北朝鮮が目標とする核兵器の「パキスタン化」とは

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夏休みと宣言したとたん北朝鮮がミサイルを撃つは、核実験までするという狂態ぶりです。

休みですが、書かないわけにはいかなくなりました。 

狂態は狂態ですが、計算できる狂人の仕業なので困ります。 

まず、初めの弾道ミサイルですが3発発射し、非常に狭い範囲に着弾しています。 

発射した弾道ミサイルの種類は、ノドンとスカッドERで、すべて日本に対してのものです。 

狭い範囲で弾着するという技術は、ミサイル誘導技術としては高度なものに属します。 

現実に北朝鮮は弾道ミサイルをひとつの目標に対して何発か打ち込んで来ると予想されますが、このバラツキが少ないほど、被害は甚大になります。 

私たちから見れば防ぎにくくなります。

下図は散布界の大小を表した概念図ですが、左の小さな円が散布界が狭いものですが、当然こちらのほうが精度が高く、私たちにとって脅威度は高まります。 

Photo散布界の大小概念図 http://obiekt.seesaa.net/article/392722272.html


このように北朝鮮はこのところぐんぐんとミサイル誘導技術を向上させていて、あなどることが出来ない脅威に急成長しています。 

次に、今回の5回目の核実験についてです。 

当人は水爆と称していますが、真偽は定かではありませんし、かの国が体制崩壊して内部情報が出てないかぎり、ほんとうのところはわかりません。 

では、なぜこのタイミングで、何が狙いなのでしょうか?そこを押さえておきましょう。 

よくマスコミ人士は、北朝鮮のことを「狂気の金正恩体制」と冠をつけて呼びたがりますが、決して彼は発狂しているわけでも、錯乱しているわけでもありません。 

単なるイっちゃっている国ならそれなりに対処しようがありますが、大まじめに狂っているからかえって始末に負えません。

彼らはいたって正気で、計算づくでこの弾道ミサイルと核兵器のステップアップをしてます。

先代は狂人まがいの瀬戸際外交で国際社会を脅しつけて、さんざん支援を搾り取り、その隙に乗じてとうとう核兵器を作る段取りをしてしまいましたが、若殿はとうとうほんとうに作ってしまいました。

結論から言えば、私は北朝鮮が国際社会の中のボジションとして、インドとパキスタンの地位にもぐり込みたいのではないかと思っています。 

特に、具体的にミサイル技術の共同開発をしてきたパキスタンが、北朝鮮のモデルとなっています。

1998年にパキスタンは、仮想敵国であるインドに対抗して核武装を強行しました。

その原因の根源には、アジア地域で真っ先に核武装した国があったからです。もちろん中国です。

インドはこの中国の核の恫喝に、核武装せざるをえなかったわけです。

そしてインドと2回の戦争を経験したパキスタンも、また然りでした。

このように核兵器と言う代物は非常にやっかいなもので、連鎖するという性格を持っています。

隣国が持てば、持たざる国はその脅威を深刻に受け止めねばなりません。

この<核の連鎖>という悪しき現象は、印パのみならず、イスラエルと旧イラク、イランの関係にも現れています。

そしてこのパキスタンもインドも、NPT(核拡散防止条約)とCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准していません。

国際社会は印パの核武装で、一回持ってしまった核兵器を手放させることがいかに大変なことなのか、そして手ずっているうちに「なし崩し核保有国」というおかしな存在の国になってしまうかということを経験しました。

金正恩が狙っているのは、パキスタンがやったように既成事実を強引に積み上げ、核抑止力を完全に保有したと宣言することです。

正恩は、米国と中国に対して相互確証破壊の関係に入り、「援助は威張ってもらうが、口は突っ込ませない」という実に図々しい立場になろうと考えています。

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なぜこうまで核兵器にこだわるのでしょうか。

理由は簡単です。通常兵器がサビて使い物にならず、兵士は腹ペコであり、戦車も戦闘機も燃料がなくて、単なる鉄の箱だからです。

こんなていたらくの国が、まともな通常兵器での戦争をやったら、自殺街道まっしぐらです。

皮肉にも、正常な判断力が正恩に残っているからこそ、核兵器を選択したのです。

また北朝鮮は、よく知られているように徹底した相互監視・密告・管理による兵営国家です。

恐怖と死によってのみ国民を押さえ込んでいます。

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中国と比較すると、一党独裁という似た部分はありますが、北朝鮮の場合その独裁の重しは中国のような「登り龍の経済」ではなく、「米国と張り合える強大な軍事力」です。

北朝鮮はこれを「先軍政治」と呼んで、国家方針の根幹に据えています。
先軍政治 - Wikipedia

しかし軍事力の基幹である通常戦力が事実上崩壊したために、今や核兵器しかしがみつくものがないのです。

さて、現在の北朝鮮は、国際社会から核保有国とは認められていません。

いくら正恩が「オレは核保有国だもんね」と喚いても、国際社会は認知していないのです。

そして、やればやるほど国連の制裁決議は締めつけられる一方でした。

まぁ、中露というデカイぬけ穴があった上に、ミサイルの販売で潤っていましたから、北朝鮮にとってこんなハンパな国際制裁なんぞ痛くもかゆくもなかったわけですが。

ならばなおさら、完全な核保有国として認知するまでやってやるぜ、というのがこのカリアゲ君の決意なのです。

今年3月上旬から毎年恒例の米韓軍事演習が行われましたが、これには正恩をピンポイントで排除するというメッセージが含まれていました。

中国も同時期に、正恩の排除に乗り出したという噂が、飛び交いました。

正恩が挑発行為のエスカレーションを開始したのが、この時期だということに注目してください。

正恩は、こう言っているのです。

「これ以上北朝鮮の現人神たるボクを排除しようと米中が考えるなら、核兵器のボタンをほんとうに押しちゃうからね」

つまり、核兵器による独裁体制の崩壊の抑止です。

よくテレビのコメンテーターたちは、北朝鮮の意図は米国を交渉テーブルに引き出すことだ、と解説してきました。

違います。

今、「交渉テーブルに引き出した」としても、米国から出る言葉は唯一、核兵器の放棄と核兵器工場の稼働停止です。

ならば、そんなものやっても、北朝鮮にとってなんのメリットもありません。

あくまでも北朝鮮の国家目標は、独裁体制の護持と、その担保だと彼らが考えている核戦力だからです。

これはワッセットであって、どちらかを失うことになる「米国との平和交渉」などありえないのです。

もし北朝鮮が米国との平和交渉テーブルに乗るとしたら、唯一それは、北朝鮮が相互確証破壊を手にしたと確信した時に限られるでしょう。

不勉強なコメンテーターたちは、核兵器の相互確証破壊というロジックをまったく理解していないようです。

そう考えてくると、北朝鮮はこの核武装強化の危険な道を、誰がなんと言おうと突き進み、米国に対しての大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有するところまで行くことでしょう。

それが、北朝鮮が目標とする核兵器の「パキスタン化」というゴールです。

かつて北朝鮮の核を脅威だと言うと、「北には核開発能力などない。そういうことを言うこと自体が、北の狙いに乗せられているのだ」と言われた時期がありました。

あれから10年、北朝鮮は今や本格的な核の脅威として私たちの国のしかかってこようとしています。

ひとつ付け加えておくなら、核兵器というのは簡単に使用できません。

何度か書いて来ましたが、一回使用すれば報復を受けて自国もまた滅びるからです。

いわば、究極の「刺し違い兵器」だからです。

北朝鮮は今後ますます「交渉」において恫喝の道具として核を使用することでしょうが、北朝鮮がほんとうに核を使用するとすれば、それは体制崩壊を起こした時です。

ですから、それを知っている周辺国は、皮肉にも北朝鮮が不安定化しないためにやくたいもない「寸止め制裁」を繰り返すことになります。

残念ですが、今回もまた国連の制裁は北朝鮮に逃げ道を与えた上での、表向きのものになるはずです。

これが北朝鮮流「核抑止」なのです。

金正恩の高笑いが聞こえてきそうです。

2016年9月10日 (土) | 固定リンク | コメント (16)

2016年9月 7日 (水)

愛国命さんにお答えして <主なる脅威>と<従なる脅威>を混同しないように 

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愛国命さん。 

追加の2本も読みました。 

要するに、国民の危機感がないといいたいわけですね。 

そのとおりです。 

だから、私はこの何年間かそれを必死に訴えてきたのです。何度炎上したことか。それは知っていますね。 

また、尖閣に対しての対応についても海自を出す時期ではない、慎重に対応すべきだと強調してきました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-961f.html 

その上で米中がどのように動くのか、日米同盟は大丈夫なのかについても検証してきたつもりです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-0178.html 

その原因は、米国側にあるというより、日本人のあいまいな安全保障に対するスタンスに内在すると思っています。それについても書きました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-eed1.html 

米国もまた、尖閣についてはあいまいにしたがっています。

それは彼らの政府内、特に議会内で尖閣と東シナ海の、中国核戦力構築の関連性が理解されていないからです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-6e7e.html

しょせん米国議会も、選挙区大事のどぶ板なのです。

米軍のシビリアンコントロールは厳しいので、仮に太平洋軍司令官が危機感を持っていても、議員諸公が鈍かった場合、日米安保は起動しないのです。
(※ただし60日間だけ大統領の戦争権限で戦争行為を発動できます)

余談ですが、ハリー・B・ハリス太平洋軍司令官は横須賀生まれの日系です。

彼は上院の講演で明確にこう述べています。

「中国からの攻撃があれば、われわれは必ず(日米安全保障条約に基づき)防衛する」
(共同2016年1月28日)

http://this.kiji.is/65261100162121733?c=39546741839462401

ただし、政府からの命令があったらというのが大前提だ、ということを忘れないようにしましょう。

その命令がない場合、在日米軍は自動的に参戦してくれるわけではありません。

日米同盟はNATO条約第5条と違って自動参戦条約ではないのです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-d16f.html

Photo強襲揚陸艦ボノム・リシャール 佐世保が母港

ですから、愛国命さんが言うように、仮に強襲揚陸艦ボノム・リシャールがたまたま(※)東シナ海にいて、しかも第3海兵遠征軍の部隊の一部を乗せていたとしても、それは単なるハードの存在でしかなく、それによって抑止が成立しているとは限らないのです。
※ボノムリシャールは、東シナ海、太平洋、南シナ海、インド洋までを作戦範囲にしています。

あくまでもボノム・リシャールに東シナ海防衛を命じる、政治というソフトの問題なのです。

ですから、もっと大枠の米国政府・議会の動き・考え、そして戦略を読む必要があります。 

このような複数の要素に立って、あくまでも<主なる脅威>は中国、あるいは北朝鮮です。

そして<従なる脅威>とは国内の反日左翼、及び韓国です。

ちなみに「反日左翼」という表現はステロタイプ(紋切り型)な罵倒表現としてよく使われていますが、私はそのままの意味で使用することにします。

中国が彼ら反日左翼に「適当な支援を与える」とした内部文書も記事にしました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-713b.html

韓国は彼らの気分では世界最大の反日国ですが、中国や北朝鮮と比較すべきではありません。

うるさいだけだとどこかで割り切って、つきあうしかありません。

一方、<主なる同盟国>は米国です。

そして、<従なる同盟国>は、東南アジア諸国、台湾、インド、オーストラリアなどです。

日本は、自らの列島を米国の戦略的策源地(根拠地)として提供し、自衛隊をそのパートナーに位置づけることで、アジア全体の安全保障の支柱となってきました。

かつて福島瑞穂女史が国会で、「在日米軍は日本防衛のためにいるわけじゃないんですよ」とわかりきったことを言っていました。なにを今さら。

当然のことながら、在日米軍は日本の傭兵隊ではありません。

トランプが言うように駐留経費を全部日本が出すのなら、まぁそうかもしれませんがね(苦笑)。

その意味で、在日米軍は日本のためだけに配備されているわけではありません。

アジア・太平洋地域の諸国民のためにも配備されている、多目的な軍事的存在です。

特に沖縄はその地政学的位置のために、その策源地(※)を担当しています。
※策源地・ 前線にロジを提供したり、出撃する拠点を与える後方基地のこと。

下の地図を見て下さい。高江に集まっている基地反対派が反対する理由として上げているMV-22オスプレイの行動半径を描いたものです。

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これを見れば、オスプレイが、よく言われるような尖閣、台湾有事、朝鮮有事だけてはなく、広くスプラトリー諸島を含む南沙諸島や、西沙諸島までカバーしているのがわかるでしょう。

つまり沖縄は、台湾のみならず防衛力の貧弱なフィリピンやベトナムまで含めたトータルなアジア・太平洋地域の安全保障ネットワークの拠点なのです。

この対象国は、いうまでもなく軍拡と膨張を続ける中国です。

ヒラリー・クリントンは国務長官時代にASEANの会議に出席した時に、このようなシーンを目撃したことを回想録に書いているそうです。

Photo_2楊潔チ外相 スプートニク http://jp.sputniknews.com/asia/20151010/1017407.html

中国の楊潔チ外相は領土問題が取り上げられると、アジア諸国の代表をゆっくりと見まわたしながら、傲然とこういい放ったそうです。

「中国は大国である」

この数年来、米国の軍事的優越性を前提に、2国間同盟や多国間協議制度などからなる多層的な安全保障の枠組みを、「アーキテクチャ」(建築構造)という概念で表現しています。 

あるいは、地域安全保障体制のインフラと呼ぶ場合もあります。それを現す言葉をご紹介しましょう。

「現在のところ、アメリカがもたらすものが我々にはベストだろう。中国はアメリカほど温和でないと見ている。(中略)アメリカは覇権国だが穏健な覇権国だ。私はアメリカとなんとか上手くやっていける。いまある覇権国がそのままあればよいではないか」
(リー・クアンユー「未来への提言」)

これはその優れた知性と胆力に裏打ちされたタフネゴシエーターぶりを、各国の政治指導者からマスターと仰がれているシンガポールのリー・クアンユー元首相の発言です。 

台湾・淡江大学国際事務・戦略研究所の王高成教授はこう述べています。

「日米安保条約は冷戦終結後、アジア太平洋の安全を守る条約となった。条約の継続的な存在は台湾の安全にとって肯定的なものだ、と指摘する」

このように日米同盟は、その他の2国間同盟や多国間協議制度と密接に連関することで、アジア太平洋地域における安全保障アーキテクチャの構成要素として中軸的地位を占めています。
参考文献 神保謙『アジア太平洋地域の安全保障アーキテクチャ』 

さて、毎度私が口酸っぱく言っているのは、ものごとは軽重だということです。

つまりはバランスです。

前者、つまり中国の脅威を強調するあまり、後者、つまり左翼陣営の脅威を見逃すのはおかしいでしょう。

逆に後者を強調するあまり、前者の<主なる脅威>を、今は大丈夫に違いないという根拠なき平和の中に置くのはいかがなものかと思います。

私が言いたいのはそれだけです。

あすから火曜日まで夏休みに戻ります。

2016年9月 7日 (水) 沖縄問題 | 固定リンク | コメント (51)

2016年9月 4日 (日)

夏休みのお知らせ

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残暑お見舞い申し上げます。

北海道の皆様の台風被害を心よりお見舞いいたします。頑張って下さい。

さて、明日月曜日から1週間夏休みをいただきます。

再開は来週の火曜日からになります。日曜写真館はできたらやります、ていどで。

■夏休み休載期間
9月5日(月)から9月12日(月)まで

来週火曜日にまたお目にかかりましょう。

台風の被害がないことをお祈りしております。

コメント欄は開放しておきますので、ご自由にお使いください。

                                      ブログ主拝

2016年9月 4日 (日) | 固定リンク | コメント (20)

日曜写真館 夏の終わりの積乱雲

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2016年9月 4日 (日) 写真館 | 固定リンク | コメント (1)

2016年9月 3日 (土)

中国の「短期激烈戦争」の恫喝に屈する日本

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Dsc_52262週間ちかくかけて延々と核武装問題と、それをめぐるテーマについて議論してきました。 

そろそろ今回で終了します。 

昨日、中国が米国と相互確証破壊システムを完成させるためには、絶対に宮古島南西から南東海域に広がる深き沖縄トラフが必要だと書きました。 

おさらいを兼ねて、これを家にたとえてみます。 

門扉に当たるのは、宮古島の北方180キロにある尖閣諸島です。 

この尖閣諸島という門扉を破れば、その先には庭である東シナ海が広がり、そこの支配権も手に入れることが可能になるでしょう。

このような軍事的支配権を確立させた海域のことを、「内海化」と呼びます。

冷戦期に旧ソ連がオホーツクの「内海化」を目指し、日米に阻まれましたが、その目的も核戦略でした。

この尖閣の実効支配→東シナ海の内海化という一連の地ならしが終われば、次はいよいよ目的である家の中に侵入します。 

この家の扉に当たるのが宮古島です。

Photo
宮古島は、中国艦艇、特に潜水艦の安全地帯を提供する絶好の軍事拠点となります。 

また宮古海峡は、日本有数のチョークポイントで、ここを扼すことができれば、中国艦隊は自由に太平洋に進出できることになります。 

そして、彼らの核ミサイルを搭載した戦略原潜は、水深2200mに及ぶ世界有数の深海である沖縄トラフを安住の地とすることでしょう。 

ここに中国は初めて、米国を核攻撃するための水中核ミサイル基地を作ることが出来たのです。 

これによって中国は核戦略の3本の柱(トライアド)である、空中、地上、水中の三つの投射手段を得ることができ、米国との半世紀をかけた相互確証破壊体制がここに完成します。

1963年に毛沢東が、「たとえ百年かかっても、ズボンをはかなくても原爆を作る」と言った狂気の夢は、ついに百年を待たずして完成の日を迎えたわけです。
参考文献 伊藤實「中国の「核」が世界を制す」

もうあまりくどくど書くのもいやですが、日本人はいいかげんなぜ尖閣を中国が取りにくるのか、どうして東シナ海の覇権を握ろうとしているのか、なぜ宮古島が重要なのか、その意味を知るべきです。

ではなぜ、南シナ海のように、いきなり中国は軍事侵攻をしないのでしょうか。

理由はひとつしか思いつきません。

在日米軍がいるからです。

尖閣についてはグレーゾーンですが、宮古島に軍事侵攻があった場合、日米安保はさすがに機能するはずです。

ただしそれが有効なのは、日米が想定しているような、台湾侵攻のために宮古島を保障占領するといったシナリオか、あるいは日中の尖閣水域での戦闘などの場合です。

もちろんこのシナリオは大いにありえるでしょうが、中国は取らないと私は見ます。

中国が取るのは「短期激烈戦争」と呼ばれる、長距離ミサイルの飽和攻撃です。

緒戦において中国軍が、長距離巡航ミサイルの千発ちかい短時間飽和攻撃をおこなった場合、それで勝敗は決します。

これは数波に及び、日本全土の枢要な政治中枢、基地、石油ターミナル、原発が攻撃対象となります。

迎撃は事実上不可能です。

専守防衛というわが国が半世紀の間後生大事にしてきたドクトリンは、わずか30分以内に砕け散って跡形もなくなるでしょう。

しかし一方これは、中国にとっても、米中全面戦争を招きかねない危険な賭ですから、安直に踏み切るとは思えません。

軍事力という刃は、抜いたらお終いなのです。

中国は、米国が日本を見捨てたと明確に見切った時に、この攻撃が可能となったと判断します。

国内的には、日米同盟廃棄のスローガンを掲げた政治勢力が政権を握った時です。

日本には左右に、このような考え方をする勢力が現実に存在します。野党第1党内部にも多数存在します。

米国内では、トランプのような自国中心主義の人物が政権を取った場合です。

このような極端な立場の政治思想の持ち主が日米に出現しない限り、中国はこの長距離ミサイルの飽和攻撃という軍事オプションを、政治恫喝にのみに使用します。

日中間で、国家主権に関わる重大な衝突が起きた場合です。

たとえば尖閣諸島の領有権、東シナ海の日中境界線確定などが激化し、それが膠着した場合、つまり今のような状況です。

このような状況で、軍事オプションの前段としてミサイル攻撃をチラつかせることは、<恫喝>手段としてきわめて有効です。

もちろん、密室の交渉でほのめかせるていどでしょうが、まだ1発のミサイルも撃たれていないのですから、日本防衛の頼みの綱の日米同盟は動きようがありません。

その時、中国に過度に宥和的な人物が政権に座っていたり、あるいは逆に、軍事的に必要以上に自衛隊を過信した政治家が首相だった場合、日本の悲劇です。

とまれこのように、わが国は現在いつ中国の長距離ミサイル攻撃という軍事恫喝を受けても耐えられないのだということを、しっかりと認識に落とすべきです。

バランスの取れた眼を養いましょう。

中国が明日攻めてくるなどというのはデマですが、あるいは正反対に「平和な島」と叫んで警官隊と衝突してみても平和は来ません。

今、リアルに沖縄を取り巻く環境を見て、できることから考えていかねばなりません。

中国を過度に敵視する必要はありませんが、中国の危険さと弱みを知り、その意図の裏をかくていどのことを考えましょう。

まだまだ語り尽くしていませんが、いちおうここでこのテーマには区切りをつけます。

来週月曜から、1週間の夏休みを頂戴します。 

 

2016年9月 3日 (土) | 固定リンク | コメント (5)

2016年9月 2日 (金)

中国の尖閣・宮古島領有を防ぐことは、核抑止につながる

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素朴に考えて見てください。なぜ尖閣諸島という山羊しかいないような絶海の岩礁に、中国はこれほどこだわるのでしょうか。

中国が領有を叫びだしたのが、1960年代の国連機関の石油資源探査以降だったことから、石油を狙っているのではないかと当初は思われていました。 

しかし、案外埋蔵量が少ないということがわかってきており、しかも原油価格は暴落し、世界的な需要のダブつきとなっているのはご承知のとおりです。 

事実、原油のダブ゙つきが明らかになっても、中国は尖閣水域への侵入を止めませんでした。 

石油資源が彼らの動機ではないのです。 

尖閣諸島から宮古島は南東に180㎞の距離にあります。Google Earthで俯瞰してみましょう。 

Photo
画面中央左の赤い点が宮古島で、上の青い点が尖閣諸島です。 

これに水深図を重ねます。 

画面下から北東にかけて斜めに伸びているのが沖縄トラフです。トラフとは海溝のことで、深さが2200mもあります。
沖縄トラフ - Wikipedia 

これに大陸からの水深図を重ねてみましょう。 

Photo_2

海底地図 海上保安庁海洋情報部提供。海底地形名称・海上保安庁発行海図「南西諸島(No.6315)」に基づく笹川平和財団https://www.spf.org/islandstudies/jp/info_library/senkaku-islands/03-ocean/03_ocean001.html 

大陸周辺が大陸棚に囲まれていて、その水深は約200mの浅瀬だとわかります。 

普通、戦略原潜は自国周辺の安全な海で、オンステージさせておくのが常道です。 

これは米国もロシアもそうで、外国のサブマリン・キラーから身を守って、核ミサイルを発射する命令を待つのが、彼らの使命だからです。 

それに対して、不運にも中国は深い海を持っていません。 

096中国海軍 戦略原潜096型「唐」級

ですからご自慢の戦略原潜096型「唐」級ですら、たちまち補足されるような浅瀬でウロウロせざるをえないのです。
 

実際海自は、中国海軍潜水艦すべての位置情報を完全に把握していると言われています。 

これでは中国の核戦略が成立しません。 

そのためになにがなんでも、水深2000mを越える深い海へ進出したいのです。 

この沖縄トラフは琉球弧の西側に横たわる舟状海盆で、実に長さ1000㎞×幅200㎞・水深2200mの長大なサイズです。 

ここほど中国原潜にとって、身を潜めるにうってつけの海域は他にありません。 

096型の搭載する「巨浪2(JL-2」)の射程は11000㎞あり、米国東海岸の政治中枢を射程内にスッポリ納めることができます。 

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現在少なくとも4隻の戦略原潜を中国は保有し、最低でも48基の「巨浪2」潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載しているとされています。 

またこのミサイルは多弾頭(MIRV)といって、ひとつの弾頭からいくつもの弾頭に別れて飛んできます。 

ですから、約200個の核弾頭を持っていることになり、これは中国の核戦力の35%前後にあたります。 

長々と説明しましたが、この宮古島周辺の沖縄トラフが、いかに中国海軍がヨダレを流してほしい水域なのかご理解いただけましたでしょうか。 

しかしここすらも、日米の優秀な潜水艦ハンターによって常時監視されている上に、宮古海峡がチョークポイントなために、通過すれば直ちに発見されてしまいます。 

どうしたら安全に、この中国核戦力の35%を日米の眼から隠して展開させておけるでしょうか? 

簡単な方法は、ひとつしかありません。自国領土をこの水域に持てば、そこに逃げ込めるではないですか。 

領土・領海があれば、他国は手出しできません。わずかなサイズの島でいいのです。 

この中国戦略原潜が「逃げ込める領土・領海」こそが尖閣諸島なのです。

水深は500mでまだまだ浅いですが、大陸棚よりもましです。 

そして12カイリ離れた領海ギリギリの水深は1200mです。 

さらに南東に行って宮古島を領有してしまいさえすれば、その南には中国海軍「約束の海」である沖縄トラフが待っています。

このように中国が狙っているのは陸地ではなく、「海」なのです。

中国の核戦略の3割以上を支える戦略原潜の安住できる沖縄トラフの深海がなくては、中国の相互確証破壊は未完成だからです。

これが中国が尖閣諸島を狙い、さらには宮古島にまで爪を伸ばそうとしている最大の理由です。 

したがって、尖閣の中国領有を阻止することは、中国の核戦力を完成させないなによりもの力となるわけです。

 

 

2016年9月 2日 (金) | 固定リンク | コメント (1)

2016年9月 1日 (木)

「倫理戦」は間接的核抑止力です

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核廃絶というのは大変に時間がかかるものです。 

いくら私たちが「核なき世界を」と訴えても、即効性を期待してはいけません。 

私は、ほんとうに「核なき世界」が実現するのは、今世紀中には無理だと考えているほどです。 

がっかりしないで、逆にこう考えたらいかがでしょうか。

その間日本は外交カードとして、「核廃絶提唱国」というプラチナカードをずっと握っていられる、と。

核廃絶提唱国を核攻撃するなんてなかなかできないことですから、間接的核抑止力にもなります。

実効性があるかどうかなど聞かないで下さいね。

米国の核戦力すら、ほんとうに抑止力になっているのか、それはある核戦略専門家が自嘲的に言ったように、「撃たれていないからあるのだ」としかいいようのない心理的なものなのですから。

Photo_7北京の天安門から軍事パレードの開始にあたり拍手を送る(右から)中国の習近平国家主席、プーチン露大統領、韓国の朴槿恵大統領。左端は国連の潘基文事務総長(ロイター)

確かにコメントにもあったように、日本が「倫理戦としての核廃絶」を提唱した場合、東アジアの3カ国がアレルギー反応を起こすのは目に見えています。 

どうぞかまいませんから、オバマの広島訪問時のように、「戦争加害者のくせしやがって、被害者ヅラすんな」と叫んで下さい。

ツラ当てのように、大軍事演習のひとつもしてください。弾道ミサイルを日本海に打ち込むのもいいでしょう。 

まったく日本は困りませんから。 

道義的正当性がこちらにあるのが明らかな以上、そのようなことをやればやるほど、世界から孤立して浮き上がるのはあなた方3カ国であって、私たちではないのです。

そんな愚行は人類共通の理想に対する抵抗であって、私たちは<核廃絶推進国vs核推進派国家>という分類をしてあげればいいのです。 

韓国のようにどちらにつかずで、戦略原潜が欲しいなんて馬鹿を言い出した国に対しては、優しくこう言ってあげましょう。 

「ねぇ、そんなこといつまでも言っていると、人類の敵になっちゃいますよ。核武装なんか止めて、共に核なき世界を目指しましょう」 

かの3カ国が反対することなどは想定内であって、こういっちゃナンですが、「核なき世界」の理想に敵対するのが誰か自ら明示してくれたようなもので、むしろありがたいくらいです。 

これは今まで私たちの国が戦後一貫してやられてきた<ファシズム軍国主義vs民主主義国家>というカテゴライズをそのまま応用しただけのものです。 

彼らが頑迷に反日にしがみつき、その結果、核を手放さなければ包囲網の首がグイグイ締まっていくだけです。 

私たちにとって、彼らの国際的孤立は即ちわか国の国益ですから、むしろ金正恩氏のように「東京を火の海してやる」ていどことを年中言ってほしいものです。 

私は核なき世界を理想としますが、夢想はしません。

敵対する国とやり合いする手段は、なにも軍事力だけではありません。

軍事的手段はあくまでも、多くの選択肢のひとつにすぎず、それが失敗した場合に被る被害はソフトな手段よりはるかに大きいのです。

それよりもひとつの理想を掲げて、「倫理戦」によって国際的に包囲していくことのほうがより効果的ではないでしょうか。

これもひとつの「核抑止力」なのです。こんなに長いテーマになるとは思ってもいませんでした。

少々くたびれてきました。今週いっぱいでいったん終了とします。

2016年9月 1日 (木) | 固定リンク | コメント (1)

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