豊洲伏魔殿と安全性評価は別だ
おおむね彼女には期待はしているんですが、あの人のパーフォーマンス政治家の側面が強く出てしまっているのが心配です。
行政官は煽ってはいけない、クールダウンして正しい情報を取捨選択すべきです。
まず、区別しなければいけないことは、東京都のガバナンス(統治)のあり方と、豊洲の安全性問題を一回分けて考えるべきことです。
例の「盛り土」がなかったと糺弾を受けています。
高速道路や卸売市場など、大規模開発事業は環境に対する影響を報告することが義務づけられています。いわゆる「環境アセス」というやつですね。
これが、でたらめだったので大騒ぎになりました。
事前環境アセスでは「盛り土」を行うという条件だったのに施行しておらず、実態とは違う虚偽の設計図で趣旨説明していたのですから、誰が見てもヘルプレスです。
当然のこととして、今提出されている環境アセスは全部パー。新たに安全評価をし直さねばなりません。
ただし、ここで区別していただきたいのは、このような相互無責任、利権の巣窟のようになっているらしい豊洲伏魔殿と、その科学的安全性とは別枠で考えるべきだということです。
まず、例によって例のごとく、この豊洲の安全性に火を点けたのは共産党でした。
しんぶん赤旗9月17日はこう述べています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-09-17/2016091701_03_1.html
「日本共産党都議団は16日、青果棟地下の空間で採取したたまり水の水質検査結果を発表し、猛毒のヒ素が土壌汚染対策法にもとづく溶出量基準(1リットル当たり0・01ミリグラム)の4割に当たる同0・004ミリグラム検出され、たまり水が地下水由来であることを明らかにしました。」
この「豊洲の地下空間から猛毒ヒ素が基準値4割検出」という共産党発表に、すべての報道機関が追随して、今回の豊洲問題に発展していきます。
毎度おなじみの共産党の手法です。毛沢東風にいえば、「一点の火が燎原を焼き尽くす」という戦術ですね。
まずはショッキングな情報を叩きつけて、それを火種にして政治ショー化して延焼させ、自分がその主導権を握ろうとします。
かつて原発事故の風評問題で、これでもかとばかりに農民や漁民をいじめまくったのがこのやり口でした。
私はこれと丸々1年間戦う羽目になりました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-3.html
オスプレイも同じで、「落ちてくるぞ」と煽りまくり、とうとう沖縄反基地運動のネタにしてしまいました。
高江の反社会的狂乱も、元はといえばこのオスプレイ・デマが元です。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-d31a-1.html
話を戻します。
当然のことながら、「基準値の4割」なら安全と評価します。
それ以外、どう評価しようがあるのでしょうか。
そもそも共産党は、「基準値」の意味を理解していません。
基準値は種々の判断の基準となる数値のことです。(あたりまえだ)
たとえば、かつての放射能問題の時に100ベクレルを食品基準値にしました。
ならば99ベクレルは安全で、101ベクレルは危険なのかと言えば、実際は測定の際の器材や手法によるブレの範囲内です。
しかし、いったん100と数値基準を決めたら、そこが食品の安全基準値になります。
100以上は食品ならば流通できませんし、環境基準ならば再度測定をして同じように基準値越えをするなら、是正措置をとらねばなりません。
逆に「基準値4割」なら、問題とするほうがおかしいのです。
29日の豊洲の新たな環境測定で、基準値の1.1~1.4倍のベンゼンが2カ所で、1.9倍のヒ素が1カ所で検出されたそうですから、その原因の特定と、その対策を明らかにする必要があります。
しかし、共産党が騒いだのは「基準値4割」です。
共産党は何か深い誤解があるようですが、ヒ素もカドミウムウなどを「猛毒」と呼ぶからおかしくなるのです。
確かに過剰に摂取すれば「猛毒」となりえますが、環境中にはごくあたりまえに存在している物質です。
確かにヒ素(As)は、IRAC(国際がん研究機関)が発がん性物質であるグループ1に指定されています。
これは「人体に対して発がん性が認められる」物質で、長期間ヒ素が体内に入るとガンの発生リスクが高くなるといわれています。
ただし条件があります。
病気になるには、「基準値を越える量を長期間、あるいは一気に大量に摂取する」という条件がついています。
だから、その目安として基準値が意味を持つのです。
たとえば俗に食品の焦げはヘテロサイクリックアミンという発癌物質を含有しますが、イワシの干物に当てはめてみると、体重60kgの人に毎日76トンの干物を食べさせてグループ2のリスク量に達します。
「基準値の4割だぁ」と悲鳴を上げている皆さん、ひとつやってみたらいかがでしょうか。
土壌、地下水、海水にもヒ素は含まれています。
たとえば、地下の岩石から湧きだす天然水には、ヒ素が含有されています。
市販のミネラルウォーターの数値を見てみましょう。
※ライフアップオンライン:支笏の秘水』と主な市販ミネラルウォーターの成分値
・ボルビック ・・・0.009mg/ℓ
・六甲のおいしい水 ・・・0.003mg
・エビアン ・・・0.002mg
cf. 豊洲地下施設 ・・・0.004mg
ちなみに日常的に飲む水と、たまに飲む清涼飲料水の基準値は異なっています。
・清涼飲料水のヒ素の規格値・・・0.05mg/ℓ
※厚生労働省「食品、添加物等の規格基準」
・水道水、地下水のヒ素規格値・・・ 0.01mg/ℓ
※環境省「地下水の水質汚濁に係る環境基準について 」
よく報道で使われる基準値は2番目の水道水の基準値で、ミネラルウォーターは1番目の清涼飲料水に入れられています。
それは使用頻度でわけているからです。
ですから、ボルビックに「基準値の9割じゃないか」と抗議したら、「なにをおっしゃっているんですか。そういうのを安全と言うんですよ」とたしなめられるでしょう。
ボルビックを毎日飲んだり、炊飯に使っていると2番目に入ってしまい、オソロシヤと思う人もいるでしょうが、食品基準は100倍のマージンを持って定められています。
基準値設定は動物実験でやっていますが、さらに人間と動物では身体の大きさや感受性が違うということで、それを10倍にし、そのうえに人間は個体差があるのでそれをまた10倍にしています。
え~、本当に危険だと思われる基準値の、とれだけになりましたか。ざっと100倍ですね。
いわば崖の数百m先を基準値にしているわけです。
だから勝手に「基準値の4割だからキケンだぁ」などというと、自分の非科学ぶりがバレてしまうことになります。
海水や地下水、土壌にも一定量含まれていますから、人体にも食物の形で移行します。
長くなるので略しますが、米にも海産物にもヒ素は含有されています。
※農林水産省 食品中のヒ素に関する基礎情報
・精米のヒ素含有量・・・0.14mg/kg(平均値)
・ひじき(乾物) ・・・93
・のり(乾物) ・・・25
もし共産党が言うように、「猛毒」ヒ素を食べた瞬間死んでしまったり病気になったら、日本民族はとっくの昔に滅亡しています。
ましてや、打って間もないコンクリートタタキの上で測定したら、石灰の強アルカリが出るのはあたりまえです。
それを「うわ~、強アルカリでリトマス試験紙が真っ青です.」とやるマスコミの頭は、ホントに大丈夫なのでしょうか。
このような一人歩きしたプロパガンダに乗って、「もはや豊洲に移転する大義はなくなった」と言っているキャスターがいたのには驚きました。
小池さんが豊洲伏魔殿の扉をこじ開けたことは拍手を送ります。
今までの都政の歪みは眼を覆うばかりなのは確かなようですから、大いに戦って下さい。
しかし、その武器に共産党やマスコミの科学的誠実さがかけらもない、悪質な政治プロパガンダに乗らないでいただきたいと思います。
それにしても、共産党のプロパガンダにまんまと乗ってしまったマスコミは、ちっとも原発事故から進歩していませんね。
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