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豊洲問題 なぜ「地下空間」はできたのか?(改訂版)

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東京都はなぜ「地下空間」を作ったのでしょうか?

その経緯を追ってみます。

まず東京都に土壌汚染対策の専門家として招かれたのは、平田健正氏を座長にした4人で作る専門家会議(「土壌汚染対策等に関する専門家会議」)のメンバーでした。 

専門家会議の提言は議事録が残っていますから、お読み下さい。http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/siryou/senmon_siryou/

この第1回議事録で、当時東京都サイドの責任者だった後藤新市建設調整部長はこう述べています。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/senmonkakaigi/01/1gijiroku.pdf

「後藤新市場建設調整担当部長 市場という施設そのものが割と高層化になじまない、また地下というものになじまない施設でございますので、当初から割と平屋、あるいは2階ぐらいの建物しか考えておりません。
また、特に水産関係は水等を使いますので、地下の利用はほとんど考えてございませんので、先生からご心配いただいている部分につきましては、例えば下水とか、そういった部分で地下に入る部分だと考えられます。
したがいまして、そういったものにつきましても、現在A.P.2メートルまでは処理するという考えでございますので、それより深くには埋設しないことを基本に考えていきたいと思っております。」

これが東京都側の当初案です。

この都の「地下は使わない」とする立場が、大きく変化していきます。

東京都は専門家会議の最終報告を受けて、新たに原島文雄氏を座長にした技術会議(「土壌汚染対策工事に関する技術会議」を設置しました。 

東京都は第8回技術会議でこう言っています。
http://atsushi-mandai.com/2016/10/01/post-509/

東京都 せっかく(汚染された土壌を)取ったところを、(埋め戻さないで)なんとか地下空間として活用できないか

これがおそらく当時の東京都の「本音」です。明らかに変化しています。

誰かひとりの意志で変化したというより、積み上げ式の議論を専門家としているうちに、東京都側の御家事情の変化が生じたのでしょう。

背景は首都銀行東京の破綻だったと言われていますが、いずれにしても都は豊洲市場地下に、通常の大型施設のような地下ピットを設けることに方針転換したのです。

この二つの案を比較してみましょう。

当初案になかった地下ピットが出現しています。

Photo_2
旧案概念図

Photo_3
新案概念図

もし、盛り土で地下を塞いでしまった場合、どのようになったでしょうか?

今、地下ピットとなっている約10ヘクタール(東京ドーム2個分)が、そのまま地上部1階部分となります。

青果棟、水産卸売場棟、水産仲卸棟の1階がなくなって、地下施設にあった機械施設、排水処理施設などが占有することになります。

しかも盛り土をするために必要な重機、追加工事だけで膨大なコストの追加となります。

さらに盛り土の軟弱な基盤の上に大規模建造物を作るとなると、数年の養生期間が必要となります。

結果として、極めてコスト高の新施設となってしまったことでしょう。

当初案による盛り土工法のコスト試算は千2百億円です。

それに対して地下施設工法ならば、5百86億円(最終的に8百58億円に膨張)でした。

当案のどおりに作れば、コストは必ず膨張しますからたぶん約2千億円ちかいコストとなり、果たして民間業者でしかない卸売り業者の施設にこれだけの税金投入をすることが妥当かという議論も起きたと思われます。

これらを勘案して、当初案は退けられたのです。

このように、基本的流れにおいて東京都は間違った判断をしたとは思えません。

ただし、マスコミが不用意にゼロリスク論に火をつけてしまった以上、安全=安心ではないというあの放射能風評被害に似た騒ぎはまだしばらくは続くことでしょう。

小池知事は自分が火をつけた部分もある、この「豊洲祭り」をうまく軟着陸させるしかありません。

聞くところでは、小池さんは環境アセスをやりなおすと言っているらしいのですが、小池さん本気ですか?

そんなことをしたら1年以上の空白期間が生まれて、いっそう開場の時期が不透明になるだけではなく、オリンピックにまで影響が出ますよ。

その前に行政官としてやるべきことをなしてから、そんなことは議会と一緒に決めてください。

まず、豊洲の安全性についてのさまざまな疑問に対して、自分の口でデータを使って答えることです。

都のHPをご覧くださいではダメですよ。

今まで都の役人はそういうやり方をして不信感を植えつけてしまったのですから、小池氏の口でしっかりと説明するべきです。

次になぜ専門家会議案から、技術会議案に変更されたのか、その理由と意志決定権者を明示せねばなりません。

それもできないうちから、環境アセスのやり直しでは順番が違うのではないでしょうか。

                  ~~~~~~

■お詫び ひこーさんのご指摘を受けて、専門家会議に対するゼロリスク論という部分を削除し、「専門家案」という表現を「当初案」としました。
また「技術会議案」という表現も、「新案」といたしました。

私は本記事で、安直な図式的解説をしたと反省しています。
ただし、大筋において論旨に変更はありません。

また改訂にあたって、冒頭の部分は冗長なので大幅に削除し、タイトルも変更しました。

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コメント

1つだけ簡単な疑問があります。

汚染土壌から有害物質が浮き上がってくる恐れがあるのなら、産廃埋め立て処分場のように何十年も持つと言われる分厚いシートを敷いてブロックしようとはならなかったのかと…。

これ、ニュース観てて思った人ってけっこういるんじゃないかと…
少なくともテレビ報道等では全く話題になってませんね。

投稿: 山形 | 2016年10月 5日 (水) 06時36分

>山形 さん

第一に、土の入れ替えは建物の部分だけで、既に舗装されていた道路の地下等はそのまま汚染されている可能性がある。(本日のネットニュースで「連絡通路下に高濃度汚染物質」というのがあった)

第二に、その部分からの汚染を防ぐ為には、敷地内を完全に覆わねばいけないが、そうすると今度は敷地内に降った雨水がシートの内側に溜まる。そうなると土壌が弱くなる。(水分が土中に留まる=液状化の可能性)

素人考えですが、こういうことだと思いますよ。

投稿: 青竹ふみ | 2016年10月 5日 (水) 09時17分

青竹ふみさんあらがとう。

うーん、

投稿: 山形 | 2016年10月 5日 (水) 15時38分

またも誤送信、失礼!

青竹ふみさんありがとう。
それにしても地下ピットが水浸しにならないような工法ってあるんじゃないかと。
雨水なら無害ですから傾斜させて地下ピットの上なり下なりで廃水溝に導けばいいのではないかと思うんですけどねぇ。
日本の建築技術ってこんなもんか?と。

土建の専門化さんの意見が聞きたいですね。私の周りで高度成長期に穴を掘りまくった当時の金の卵・銀の卵の方々はことごとく「鬼籍に入られて」しまってます。

一方、フジテレビは写真1枚で「4階の柱が傾いている」ときました。
えっ、広角レンズのただのパースだろ?と。
が、そこはマスコミですから写真家や建築士の都合のよい言質ばかり取り上げて、どうにも『新たな疑惑』にしたいようです。これだからもう…。踊らせたらフジは最強ですし、あそここの5年で経営も視聴率もガタ落ちですからね。

投稿: 山形 | 2016年10月 5日 (水) 15時53分

管理人さんは、専門家会議の議事録をご覧になってからこの記事を書かれたのでしょうか?

> もはや合理的主張ではなく、極言、あるいは「信仰」です。
> 実は今回の豊洲問題において、この共産党のゼロリスク論に近いことを公式に主張していたグループがいました。
> それが平田健正氏を座長にした4人の専門家グループで作る専門家会議(「土壌汚染対策等に関する専門家会議」)でした。

まず、この専門家達を選んだのは東京都です。豊洲に移転したい都が「リスクはゼロにしろ!」って叫ぶような委員を選定すると思いますか?そんな人たちに提言されたら対策費がいくら掛かるかわからないうえ、下手したら移転さえ止まります。東京都のお役人にそんなバカはいないはずです(^^;;

議事録をざっとでも通して読めば、専門家会議が提言したことはゼロリスクではなくて「リスクコントロール」だということがわかると思うのですが。
専門会議は傍聴人を入れて一般公開されてたそうで、傍聴した一般市民との質疑応答も記録されてます。
議事録の最後に載ってますので、ゼロリスクを主張する市民vs専門会議座長との議論とか読んでみると面白いと思いますよ。


> 専門家会議の提言は要約すればこうです。
> 「建築物の地下は揮発性物質が階段を通じて建物内に入るリスクはゼロではないから利用せずに盛土すべきである」

どこを要約するとそうなるのでしょうか?
私が要約するなら

※東京都の汚染対策により
 1)汚染土は直接接しないから健康に影響はない。
 2)汚染物質が溶出した地下水は飲まない、触らないから健康に影響はない。
 3)汚染物質が溶出した地下水からガスが放出されるリスクがあるが、都が実施予定の地下水対策を行えば健康に影響はない。

と言ってるように思えます。
つまりは、地下水の管理さえできれば健康被害はありませんよ!っていうリスクコントロール。

これを「共産党のゼロリスク論に近いことを公式に主張していたグループ」というのは酷すぎませんか?

今、報告書に書いてある1点だけを取り合げて、いかにも「専門家会議は盛土がなければ一切認めないと言ってる!」ってイメージで喧伝してるのが共産党とマスコミであると思います。
専門家会議は「リスクはゼロでないけど、コントロールすれば健康被害はありません」って、管理人さんの要約とは反対のことを提言したから豊洲移転工事は進んだので、反対派の市民から叩かれてたと思うのですが(^^;;

> 専門家会議は作るなと言ったが、それに都は違反して地下施設を勝手に作った、というストーリーです。

第1回議事録。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/senmonkakaigi/01/1gijiroku.pdf
地下構造物の話をしたいなら、P.23~26くらいは目を通していたほうがよろしいかと思います。

・2.0mの汚染土を全て撤去すると最初に決めたのは誰ですか?
・2.5mの盛土を行うと最初に決めたのは誰ですか?
・地下は活用しないと最初に決めたのは誰ですか?

答えは書きませんので、議事録をお読みください。
もし、専門家会議が「地下に施設を作るな!」っていった議事が残っているなら、教えていただければ幸いです。
私は見つけきれませんでしたので(^^;;


専門家会議では、ベンゼンが揮発することにより健康被害が生じる濃度とか計算式とかもすべて公表されてますので、理系の方々は読まれてみるとよいかもしれません。パラメーターとして盛土の厚さや土壌の性質が入ってるので、これを無視したらどれだけの濃度だと健康被害が出そうだという計算ができると思います。

山形さんの疑問も、議事録を読んでいただければ解決すると思うんですけどね。
毛細管現象が生じないようにして地下水をAP.2.0mに抑えれば、有害物質は浮き上がってこないのです(微量のガス以外は)

長文、失礼しました。

投稿: ひこ~ | 2016年10月 5日 (水) 16時00分

ひこーさん。ご指摘ありがとうございます。私も拙い二項対立の図式をしたと反省しております。
常々議事録などは実証的に扱うのですが、今回はそれを怠っておりました。
深く反省しております。

当該部分を削り、タイトルも変更します。


投稿: 管理人 | 2016年10月 5日 (水) 17時03分

○山形さんへ

> それにしても地下ピットが水浸しにならないような工法ってあるんじゃないかと。
> 雨水なら無害ですから傾斜させて地下ピットの上なり下なりで廃水溝に導けばいいのではないかと思うんですけどねぇ。
> 日本の建築技術ってこんなもんか?と。

一般的には、床下ピットも排水勾配をとって釜場に水を集めるようにしますね。
ただ、釜場に排水ポンプを設置しない場合もあります。地下水の常水位面がピットより下にある場合、普段は水が貯まらないから経費の削減と故障防止のため設置しないのです。あまりに止まったままだとポンプが動かなくなるので(^^;;
今回は地下水の水位を床下ピットより数十センチ下に設定しているということで、排水ポンプが無かったということも考えられます。


もう一点、経済性と工期短縮のために勾配をつけない場合もあります。
基礎を配筋するために墨出しが必要となるのですが、そのために捨てコンクリートというのを施工します。
これと、床下ピット床のコンクリートを兼用させるのです。そのため、勾配がない平らな床面になります。
後からピット床のコンクリートを打設する場合、普通は1階床の施工が終わってからではないとできませんので、施工も大変なのです。


床下ピット内で作業する場合、普通は大梁の下を這いずり回ったりして汚れるのでできるだけ乾燥させておきたいのですが、ここは立ったまま歩けるから水があっても問題ないと判断したとも考えられます。

この建物の設計者ではないので、一般論しか言えませんが、建築士の意見としてはこんな感じで。

なお、一般的な床下ピットは、大梁下に垂れ壁を設置して水が入るのを出来るだけ防ぎます。管理施設棟がそれです。
断面図をご参照ください。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/facility/kanri.pdf


これが別の棟になると、L形擁壁で土留めをされるようになってます。
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/facility/oroshi.pdf
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/facility/seika.pdf

これだと建物と擁壁の継ぎ目から水が入ってきますよね。
更に言えば、擁壁には3㎡に水抜き穴が必要なので、それがちゃんと設置されていればピットの中に雨水が入ってきてもおかしくありません。

図面は一般図なので、このとおりに施工されてるのかどうかわかりませんけどね。
青果棟はL形擁壁が逆向きに配置されてるし(^^
ちなみに、一般的な床下ピットの高さは、青果棟の図面の右側にある低層棟くらいになります。


○管理人さん
 毎回、文句ばかり書きに現れて申し訳ありません。今回も”らしくない”と思ったので色々指摘させていただきました。
 ご対応、ありがとうございます。

投稿: ひこ~ | 2016年10月 5日 (水) 17時46分

建築関係の方からのお話、記事と併せ大変勉強になりました。

投稿: ふゆみ | 2016年10月 5日 (水) 18時11分

ひこ~さん。

なるほど。詳しく教えていただきありがとうございます。

投稿: 山形 | 2016年10月 5日 (水) 20時30分

今さらながら曰く付きの土地を高値でよく買ったと思います。
普通なら半値以下でしょう、誰かが潤ってる。

これなら米軍から返還された立川基地の跡地の方がマシ、今も立川の拘置所の北側や第八消防方面本部の北側に手付かずの国有地が遊んでます。
豊洲の敷地が約40ha、確かどちらもそれくらいありますよ。
100億前後で取得出来るはず。

難点は滑走路近接による騒音、築地から内陸部で周辺道路の混雑が見込まれることなどの物流面、他に不発弾や土壌汚染もあるけど豊洲の比でない。

普天間→辺野古じゃないけど移転先候補は幾つかあったんです。


仲卸業はどんどん衰退しており廃業も多い、築地よりも大きな建物が将来的には負の資産になりそうです。


しかし建物もほぼ完成してますし、豊洲でやるしかないですね。
OBの処分もいいけど、問題をどう対処して開場させるかです。

記事内容から逸脱してすみません。

投稿: 多摩っこ | 2016年10月 5日 (水) 23時29分

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