米国議会 米中経済安保調査委員会報告書を読む
古森氏が紹介した米国議会の資料が、HN「山口」さんのご尽力で見つかりましたのでアップしておきます。
これをもってしても尚、「有機ギルダー」氏の以下のような言い分が成り立つものかどうか、ご自身で確認してください。
「『検証可能性がある情報』と言えばほとんどの情報はそこに分類されるでしょうし、公的機関の文章を名乗った偽情報なら腐るほどあります。
問題なのは未検証の情報を事実であるかのように紹介するのは大いに問題(略)、外国発の情報を意図的に大げさに訳したり歪めたものが多々ありました。」
では、私を「東日本大震災時に放射能デマばら蒔いてた連中と同じだ」とまで罵ったこの人物が言うように、「公的機関を名乗った偽情報」で、「意図的に大げさに訳して歪めたりしたもの」かどうか、見てみましょう。
原文と仮訳です。
読みやすくするために、直訳ではないことをお断りしておきます。太字は引用者です。
原文出典
http://origin.www.uscc.gov/sites/default/files/Research/USCC%20Staff%20Report%20on%20China%20Countering%20US%20Military%20Presence%20in%20Asia.pdf
「March 15, 2016
“ China’s Efforts to Counter U.S. Forward Presence in the Asia Pacific “
Author: Kristien Bergerson, Senior Policy Analyst, Security and Foreign Affairs■U.S.-China Economic and Security Review Commission 8
Okinawa: As with Guam, Beijing is likewise concerned about the U.S. force projection capability on Okinawa.沖縄:中国は、グアムと同様に沖縄における米国の戦力投射能力について懸念している。
However, China’s attempts to shape Japanese behavior through economic coercion have not been very successful.
James Reilly, a senior lecturer in the Department of Government and International Relations at the University of Sydney, notes that in response to Chinese “consumer boycotts and economic pressure, Japan has refused to backdown over the enkaku/Diaoyu islands ... [and] strengthened its cooperation with other Asian neighbors, signed a fisheries accord with Taiwan, and secured statements of support from the United States.しかしながら、経済的圧力によって日本の動きを押さえつけようとする中国の試みはあまり成功していない。
ジェームズ・ライリー(シドニー大学政府国際関係学部・上級講師)は、「中国の貿易ボイコットや経済的圧力に対応して、日本は尖閣諸島・釣魚島だけではなく、他のアジア諸国との協力を強化し、台湾と漁業協定を締結し、米国の外交的声明を支持した」と述べた。Japanese press reporting indicates Chinese investors have acquired property near U.S. DOD facilities on Okinawa.
China likely maintains a presence of intelligence officers and agitators to both collect intelligence against the U.S.military presence on the island and complicate aspects of the U.S.-Japan alliance by participating in anti-base activities.日本の報道によると、中国の投資家は沖縄の米国防総省の施設の付近で不動産を取得している。
中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。
そのために中国の諜報工作者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。
その結果、(中国は)沖縄住民の反米感情を煽り、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している。Fumio Ota, a retired Japan Maritime Self-Defense Force vice admiral and a former director of the Japan Defense Intelligence Headquarters, notes “China has supported Okinawa’s independence activities, which were developed by pro-Chinese Okinawans and probably Chinese agents as well.”
Dr. Ota goes on to say that the Chinese press in September 2012 “reported the result of 2006 referendum of Ryukyu citizens 75 percent of them supported independence from Japan and reinstating free trade with China ... [when there] was in fact no referendum by Ryukyu citizens, and the vast majority of Okinawans want to be a part of Japan.
”Aggressive Chinese activities intended to challenge Japan’s administration of the Senkaku Islands and statementsby Chinese academics and military officials questioning the status of Okinawa as part of Japan probably will increase concerns about China’s long-term intentions in the region.
China will likely continue both espionage and agitation activities on Okinawa aimed at monitoring U.S. and apanese force posture and seeking to complicate the U.S.-Japan alliance by attempting to facilitate resentment about the continuing U.S. military presence.自衛隊の情報本部長(※)だった太田文雄夫(※)氏は、中国は、沖縄の独立運動を支援している。沖縄の独立運動は、中国の沖縄人や中国によって生み出された、と述べている。
※太田文雄 - Wikipedia
情報本部 - Wikipedia
また、大田氏は、2012年9月の中国のメディア報道は、「2006年における琉球市民の国民投票の結果75%が日本からの独立を支持している」と書いたが、実際には沖縄県民によるそのような住民投票はなかった。
大半の沖縄人は日本の一部であると考えている。
中国は日本の尖閣諸島の行政権への挑戦を意図している。
日本の尖閣諸島の行政権に挑戦することに熱心な中国の活動や、日本の一部としての沖縄の地位に疑問を抱く中国の学者や軍の声明は、地域の中国の長期的な意向への懸念を高めていくことだろう。
中国は、米軍や軍人の動向を監視し、米軍の動向に対する怒りを増幅させることで日米同盟を分断するために、沖縄における諜報活動と扇動活動の両方を継続する可能性が高い。」
なお同報告書には、中国が、慰安婦問題や歴史認識、あるいは竹島領有問題などで、韓国の立場を支援することによって分断しようとする企みについても記述されています。
さて、上記の議会報告書についての、古森氏の論考の要約です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47344
すべて、米国議会報告書に記述に照応しており、恣意的乖離は見られません。
なお、上記の仮訳にない部分は、他の部分の報告書記述に存在します。 箇条書き番号は引用者です。
「①中国軍幹部たちは、米国が中国を封じ込めるために広域に戦力を展開していると見ている。つまり、北地域では日本と韓国、南地域ではオーストラリアとフィリピンを拠点とする軍事基地システムを築いている。そしてグアム島をその中核とし、中国の深部まで長距離の戦略兵器で攻撃ができるようにしている、と見ている。
②中国軍はその中でも、特に沖縄駐留の米軍が有する“遠隔地への兵力投入能力”に懸念を抱き、多角的な方法でその弱体化を図っている。例えばその1つの方法として、中国の政府機関が沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入し、沖縄の反米闘争の支援に利用している。
③中国はこうした目的のために経済的圧力を頻繁に行使する。フィリピンに対してはフルーツ類の輸入を大幅に制限し、かなりの効果を得た。日本に対してはレアアース(希土類)の輸出を規制したが、効果をあげられず、他の方法を試みている。
④中国は沖縄に、米軍の軍事情報を集める中国軍の諜報工作員と、日本の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日本と米国を離反させようとしている。また、中国は沖縄の親中勢力をあおって沖縄の独立運動も支援している。
⑤沖縄にいる中国の諜報工作員たちは、米軍基地を常にひそかに監視して、米軍の軍事活動を詳細にモニターしている。また、米軍と自衛隊の協力体制も調べている。さらに中国の政治工作員は、沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動しようとしている。
⑥中国の官営報道機関は、「琉球で2006年に行われた住民投票で、住民の75%が日本からの独立を望むという結果が出た」と報道した。だが、実際にはそのような住民投票は実施されておらず、沖縄住民のほとんどが日本に留まることを欲している。」
なお、中国の対沖縄工作については、参議院議員・青山繁晴氏の発言がありますので、資料としてリンクを貼っておきます。
http://japan-plus.net/724/
私としてはこの青山情報についてかねてから聞いていましたが、裏を取りようもない話ですので記事にはしておりません。
議会報告書と重ね合わせて改めて読むと、ありえるとは思いますが、今回はそれにとどめておきます。
何度か繰り返していますが、外国の諜報機関の動きは一般人には分かりません。
たとえば資金提供ひとつにしても、様々なトンネル・ルートを通じてロンダリングされながら供給されます。
戦前の日本共産党は、立花隆の『日本共産党研究』によれば、コミンテルンから上海ルートで武器と資金提供を受けていました。
それが途絶えた時、彼らは銀行強盗を「軍事作戦」として展開するようになり自滅します。
そしてそれが明らかになったのは、それから数十年たってのことなのです。
現在の沖縄でいかなる中国の工作があるのか、それはどのような規模で、どのようになされているのか、やがて分かる日が来るでしょう。
メディアはこのような微妙な問題には絶対に触れません。
独自取材が不可能に近く、公安(外事)情報に頼るしかないからです。
そして公安は体質的に情報を抱え込みます。
たまさか漏れてくるのは、公安が刑事警察を使って取り締まらねばならないほど緊急なことが起きた場合だけです。
そもそもスパイ防止法が日本にはないために、スパイを摘発しても外為法違反とか、旅券法違反などといった微罪で逮捕できるだけです。
そして多くはそれを察知すると、直ちに国外に出てしまいます。
ですから、ひとり工作員を捕らえるより泳がせて、そのネットワークを探ることのほうを、公安は選んでいるわけです。
それまで公安はひたすら情報を蓄積し、外国諜報機関を泳がせ続けます。
メディアは報じない、警察も公表しない、政党も動かないという一種のエアポケットのような存在が外国のインテリジェンス機関の動きなのです。
ですから、このような真実の断片をジグゾーパズルのように組み立てていくしかないわけです。
じっれったいでしょうが、しかたがありません。
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