トランプは初め2年はおとなしくしているだろう
トランプは石破茂氏が指摘するように、「政治経験も軍隊経験も全くない初めての大統領」です。
http://blogos.com/article/197661/
つまり、政治には素人であって、ワシントンの手垢がついていない希有な人物です。
政治的来歴がないために、一体彼が何を考えているのか、これから何をしたいのか、皆目見当がつきません。
なにせ、トランプはかつて民主党党員であり、ヒラリーのスポンサーのひとりだったくらいです。
大統領選のはるか前に、トランプの講演の最前列で拍手しているヒラリーの姿が写真に残っています。
2009年に民主党から共和党に移動しました。
なんらかの心に期するものがあったのだろうと言ってあげたいのですが、よく分かりません。
わかっている確かなことは、トランプが類まれなるリアリストだということくらいです。
政策的にはほぼ何も持っていないはずです。
でなければ、米国海軍を350隻にして、海兵隊を大幅増強し、NATOや日米同盟と諍いを演じたいといった分裂したことを言えるはずがありません。
黒井文太郎氏ではありませんが、「トランプが言ったことを全部やれば米国は必ず潰れる」からです。
たぶんトランプは、大統領選の「公約」をあっさりと初期化し、最適化を計ろうとするでしょう。
よく言ってあげれば柔軟な対応力をもつウルトラ付き現実主義者、悪く言えば・・・、まぁなんとでも言えますよね(笑)。
トランプはたぶん自身が何をすべきかその筋道がよくわかっていない、可塑性のある何ものかだからです。
ですから、当座は大統領に就いたトランプは、周囲のアドバイスに従って、国の舵を取る事になるでしょう。
この重要なアドバイザーのひとりにマイケル・フリン元DIA(国防情報局)長官がいます。
出典 中日新聞2016年11月11日http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016111102000065.html
実はフリンはつい先だって訪日し、政府中枢や石破茂氏とも会談をしています。
「10月初旬に、来日中だったトランプ氏の軍事顧問的な存在であるマイケル・フリン元DIA長官(退役陸軍中将)と長時間意見交換する機会を得たのですが、運用や情報に極めて精通し、米軍内で信望の厚い、なおかつ民主党員である同氏が、職を辞してまでトランプ氏の顧問になるからには、トランプ氏に有能な人材を集める吸引力が備わっているのかも知れません。
来年1月の政権発足後に数か月をかけて編成されるスタッフや上下両院で過半数を占めた共和党議員がトランプ新大統領を良い意味でコントロールできるかどうかがカギとなります。なお、マイケル・フリン氏は新国防長官にもその名前が挙がっています。」(前掲)
ここで石破氏は米国の恥部になるので、あえて触れていませんが、「民主党員だった彼がDIA長官の職を辞して」と書いているきっかけは、フリンが暴露した米国のIS支援疑惑です。
http://blog.goo.ne.jp/aya-fs710/e/5ff077760027053ee0c2cc47556c6a96
2015年5月、マイケル・フリンはDIAの電子メールで、「ISISはオバマとヒラリー・クリントンが資金提供をしている」というショッキングな内部告発をしたことが、情報公開法によって明らかになりました。
フリンは翌月、その内容が事実であると認めています。
英語原文はこちらからIan56
「テロの脅威は、意図的に製造されたことによって悪化した。
米国はサダム・フセインを転覆するためにイラクに介入したが、得られものは予測可能だったはずの宗派間内戦だった。
また、リビアでカダフィを転覆するためにアルカイダの過激派を利用し、リビアを失敗国家としてしまった。
シリアではアサドを転覆しようとして、アルカイダやISISなどを秘かに支援し、シリアを大混乱に陥れた。」(仮訳)
このメールの中で、フリンは米国の秘密工作の結果、アルカイダやISが生まれ、さらにモンスターにまで成長させたと批判しています。
おそらくフリンは、次期国防長官になると予想されています。
このような内部告発者だったフリンが、いかなる中東政策の転換をもたらすのか注目せねばなりません。
いずれにせよ、フリンはつい先だってまで現役の陸軍将官だっただけに、極めて常識的な安全保障観を持っています。
石破氏が言うように、至極まともな国防政策を選択すると思われます。
トランプは政治家でなかったために「公約」を票を取るためのパーフォーマンスの一種ていどに考えているはずです。
したがって現実家トランプは、大統領になった瞬間、「公約」のほとんどすべてを自らから骨抜きにするはずです。
大統領としての適格性を疑われて、議会から突き上げられるようなまねは慎重に回避せねばならないからです
つまり、日米同盟の解体や日本の核武装容認(※)などは絶対にありえないシナリオだという事になります。※日本の核武装容認については既に否定しています。
TPPに関しても、何らかの再交渉をオファーしてくる可能性は捨てきれませんが、TPPの持つ対中包囲網という性格を、アドバイザーたちから叩き込まれているはずです。
ですから、私はトランプが習とねんごろな関係になる可能性は、かぎりなくないと考えています。
こうしてトランプは、まともな保守政治家の仮面をかぶることになります。
人種差別主義者で、日本に核武装を勧めるようなクレージーなキャラを期待していた向きには、衝撃的なくらいに「普通の大統領」になると思います。
どんなイカレポンチが大統領になるのかと気が気ではなかった共和党本流は、ホっと胸をなぜ下ろすでしょう。
すくなくとも初めの2年間は。
後は分かりません。
このまともな保守政治家のスタンスは、彼を熱狂的に支えた中間層をいたく失望させるはずだからです。
「なんだつまんねぇ。今までと一緒だぜ」という声は、全米各地で起きます。
いまのような初めから反トランプだった人たちの反発は読み込み済でしょうか、今度は足元からのブーイングに遭遇することになります。
初めは「われらの大統領」として熱狂的に支えた階層は、トランプから急速に離反していきます。
たぶん就任から2年たたずに、トランプはリベラル層と保守的中間層の両側から批判を浴びる事になるかもしれません。
それが端的に現れるのが支持率です。
その場合、それを打開する方法は、選挙期間中の「暴れん坊トランプ」に回帰することでしょう。
私がこう書いたところで、これもまた占いのようなもので、一体トランプ大統領が何者なのか、それを知るのは2カ月後の大統領就任式以降になります。
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私見ですが、
日米安全保障関係の実質的変容をもたらしかねず、広く日米関係や「日本の国際的地位」に影響を及ぼす最大の原因・懸念材料は、今後ともやはり「米中関係」に深く起因し続けることだろう、と考えます。
ブログ主様の見立てでは、
≫「トランプが習とねんごろな関係になる可能性は、かぎりなくないと考えています。」というものです。
私も、(希望的観測も含めて)この見方に同意します。
ただ、反安倍専門誌(笑)の週間現代によれば、トランプ側近のウールジー氏は「AIIBを歓迎しており、米国がこれを敬遠した事は失敗だった」と言っている、としています。
ここらへん、情報の出元がどうなのか懐疑的ですが、さらに今後の米中関係を予測するうえで重要と思える事柄もありました。
それは、人民日報だったか環球時報で「14日、トランプは習近平国家主席と電話で会談。中国外務省は「中国は偉大で重要な国だ。両国は互いにウインウインの関係を実現できる」とトランプが言ったと発表し、早期の会談実現で合意したという」という記事がありました。
その内容自体は何の変哲もないものですが、気になるのはトランプ氏側がこの電話会談の存在自体を全面否定した事です。
もちろんその真偽にもよりますが、会談の事実を隠したかった、のではないか。
そうだとすれば、中共は米指導者のこうした「弱さ」を見逃すはずはありません。
また、日本に対して「日中二枚舌」を用いた民主党以上にタチの悪いふうもあり、トランプの今後の弱腰の「中国との付き合いかた」を暗示していると思え、心中穏やかではありません。
そんな懸念は経済だけのものかも知れない。
それなら、国務長官には(批判は多いでしょうが)ぜひ保守強硬派のボルトン氏になって欲しいと本気で考えました。
国連改革にも積極的に臨むだろう事も期待出来ますし。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2016年11月17日 (木) 09時19分
アメリカ国内の分断をどう修復するのかに興味がありますね。
反トランプ派のデモと、KKKみたいな極右の差別主義者が、次期大統領にトランプ氏が決まった段階で、活動を活発化しているみたいな報道も見ましたので、このままアメリカが分断されたままなのか?トランプ氏がどこかで手を打つのか?
その辺りは興味あります。
アメリカの外交に関しては、トランプ、ヒラリーどちらが大統領になっても、日本としては、日米同盟、安保堅持で行くしかなかったので、あまり差はないのでは?
トランプ氏は件の安保に対する暴言がありますし、ヒラリーはクリントン財団が中国マネーの受け皿で、トランプより中国の影響下にあった可能性も報道されてますし。
いずれにしても来年の大統領就任以後の動きが注視されますね。あと、陰謀論的には、トランプが就任後あぶない団体(極右?いろいろ?)に暗殺されて、副大統領が大統領になり、差別主義がひどくなる的な話が気になります。副大統領はガチガチな差別主義者であることは有名みたいですし。
投稿: 一宮崎人 | 2016年11月17日 (木) 11時41分