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2016年11月26日 (土)

井上達夫『憲法の涙』の自己分裂

031
井上達夫氏の『憲法の涙』を読んでいます。

ご承知のように、井上氏の9条削除論がまとめられた本です。 

一種の覚醒の書であると同時に、分裂の書でもあります。 

井上さんはこの9条削除論を提唱する動機を、こう書いています。

少し長いですが引用します。

「自衛隊という戦力をわれわれは既に海外に出しています。伊勢崎賢治さん流に言うなら、9条下で既に『戦争』をしています。が、これを縛るなんの戦力統制規範も憲法の中にありません。日米安保に対する憲法の縛りもありません。
なぜなら、9条によって、日本には戦力がない事になっているからです。憲法上ないはずの戦力を統制する規範を憲法が規定できるはずがない。
つまり、9条があるために自衛隊という軍事組織と、日米安保という軍事同盟が、憲法害の存在として肥大化しているのです。(略)
そしていまや安倍政権の改釈改憲によって、その憲法外の存在、自衛隊と安保をどんどんと肥大化しようとしている。これが私がいちばん危惧していることです。」

ひとことで要約すれば、井上さんは自衛隊は化外の地で、時の為政者のためにどんどんと「肥大化」しているからをこれをしっかり「縛りたい」のです。

憲法という中に正式に「軍隊」として位置づける代わりに、統制規範を作って自衛隊と安保をこれ以上「肥大化」させるなと言っているわけです。

そして具体的にはこのようにしろと書いています。

「戦力に歯止めをかけるためにも、つまり平和主義のためにも、9条を削除せねばならない。
9条削除まで踏み切れないなら、少なくとも専守防衛明記改憲をして、専守防衛の枠を越えて戦力が濫用されないための統制規範を憲法に盛り込まなければならない。」

初めは読み違ったのかと眼をこすりました。そうではなかったのです。

読み間違いする余地なく「専守防衛明記憲法」の必要性を訴えた後に、井上さんはこんなことも続けて書いています。

前文の平和主義にふれた部分です。

「私の原理的立場から言えば、安全保障の基本政策は憲法に入れるべきではない、ということなので、前文が特定の安全保障政策をもりこんでいるんだったら、それを変えるか、削るかしなければならない」

二つの文章をつなげてみます。

憲法には特定の安全保障政策を盛り込むべきではないが、専守防衛を明記すべきである

何を言っているのか理解できません。明らかな矛盾です。わずか2頁のうちで、まったく別のことを井上さんは書いてしまって、平然としています。

気がつかないのです。

<専守防衛>という概念が、「軍隊であって軍隊でない何者か」である自衛隊が生み出した、苦し紛れの防衛ドクトリン、すなわち井上さんが自分で憲法に盛り込むなと言っている「安全保障の基本政策」だということに。

そしてこのドクトリンを作ったものこそ、まさに井上さんが鋭くその矛盾をえぐった9条そのものなのです。

<専守防衛>とは平たく言えば、「自分の国だけ守って引きこもっていたい。それも攻めてきたら守備する程度にしたい」という考え方です。

そもそも世界には、「専守防衛」に相当する外国語がありません。

「個別的自衛権」という、去年盛んに登場した用語に当たる外国語もありません。

存在するのは唯一、「自衛権」 right to defenseだけです。

防衛に集団的も個別的もなく、「専守」がないように「侵略」だけの軍隊もないのです。

「自衛隊」という表現は日本語ではなんとなくフツーに聞こえますが、欧米諸国で the Self‐Defense Forcesとは、「自分を守るための軍隊」という奇妙な意味となります。

余談ですが、かつて幹部自衛官が、外国で他国の将校たちと歓談していた際に、Self‐Defense Forcesと自己紹介すると、嘲笑を込めた爆笑に迎えられたそうです。

Self‐Defense Forcesとは直訳すれば、「自分だけを守って国民を守らない軍隊」という意味になってしまうからです。

この自衛官は憤然として、帰国後退官したそうです。

私はこういう退嬰的、かつ思考停止的な思考を、<9条ワールド>と皮肉をこめて呼んでいます。

井上さんはどうやら、<9条ワールド>を守りたいために9条削除論を唱えているわけです。

氏が誠実なことは大いに認めますが、分裂しきっています。

井上さんはいかにも憲法学者らしく、安全保障領域の現実をほとんど理解していないようです。

現代における戦争は、戦後憲法が生まれた終戦直後から劇的に変化しています。

去年安保法制の審議で、野党はしきりと「どこまでが戦闘地域か」とか「どこまでが後方支援か」と執拗に問いただそうとしていました。

私はそれを聞きながら失笑した記憶があります。

この制限・限定論の論理自体が、古色蒼然たるもので、世界の現実を知らない空論です。

では、できるだけかみ砕いてご説明しましょう。

まず現代においての<戦争>は、冷戦期の大国間の正面戦はほぼありえないと考えられています。

なぜかといえば、核戦争の恐怖によって、大国間の全面戦争をすれば己も滅亡することがわかっているからです。

この核兵器による「恐怖のバランス」のことを、「相互確証破壊」(MAD)と呼びます。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-18eb.html

そして全面戦争の代わりに登場したのが、冷戦崩壊とともに起きた各国の独裁政権の崩壊後の状況でした。

独裁政権は、たとえばイラクのフセインなどが典型ですが、国内的には恐怖政治を敷きながら、一方では宗教対立や民族紛争を押さえ込んできた側面があったわけです。

それを米国が打倒してしまったわけですから、まるで地獄の釜の蓋を開けたように宗教紛争と民族紛争が吹き出しました。

イラクに侵攻した、世界最強を誇る米軍はイラク正規軍をたちまち片づけましたが、その後に彼らを待っていたのは延々と続く、対テロ戦争でした。

軍服を着ない民間人を装ったテロリストが、身体に爆弾を巻き付けて米軍のパトロール部隊に飛び込んでくるわけです。

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(写真 イラクにおける路肩爆弾。手製信管を砲弾に取り付けて、携帯で信号を送る。市街地をパトロール中の米軍はこれに苦しめられた。Wikipedia)

大砲の弾丸に手製の起爆剤をつけた路肩爆弾が、米軍車両をようしゃなく襲いました。

イラク戦争における4千人もの米兵の戦死者の大部分は、イラク正規軍との戦闘によるものではなく、テロリストによって市街地の路上に仕掛けられた手製爆弾と自爆テロによるものでした。

そして脳天気にも、米国が支援した「アラブの春」は、統治の外にある崩壊国家を大量に作り出してしまいました。

そしてその混沌の中から、史上最凶のテロ集団であるISが生まれます。

彼らはウイルスのように各国で増殖し、パリ同時テロのように今までテロの対象とされていた軍隊や国家機関ではなく、市民が憩うカフェや劇場といった無防備な場所を血の海に変えました。

このような新しい形の戦争の特徴は、前線と後方の区別がなくなり、戦闘員と非戦闘員の区別もなくなってしまったことです。

つまりハーグ陸戦条約が通用しない世界が誕生したのです。

思い止まりましたが、米国は苛立ち、ジュネーブ協定からの離脱を言い出したことすらあります。

ですから、去年の安保法制の時に論じられた「どこまでが戦闘地域か」などという、地域限定論が存立する基盤それ自体がそもそも消え失せているのです。

前線も後方もなく、したがって危険地帯と安全地帯の区別すらもない世界、それが現代における<戦争>なのです。

そしてテロリストだけではなく、大国すら扉を開けて正面から襲ってくるのではなく、秘かに気がつけば浸透されていた、という浸透戦略を公然と取るようになります。

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(写真 ウクライナ領内におけるロシア軍。国籍マークを取り、顔を隠している。いうまでもなく、ハーグ陸戦条約違反)

また、ロシアのクリミア侵攻や、東ウクライナでの戦法は、国籍マークを外した軍隊の浸透でした。

ロシアはウクライナ紛争において、この浸透戦術とロシア系住民による住民投票を絡み合わせています。

ちなみに、私は中国の沖縄に対する攻勢は、この浸透と住民投票という戦法を使うと思っています。

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(写真 中国漁船団。漁民の中に大量の特殊部隊員や海上民兵を紛れ込ませるのが常道。いうまでもなくハーグ陸戦条約違反だが、この中露が拒否権つき常任理事国であるために、国連は機能マヒになってしまった)

さてその中国ですが、かの国が南シナ海をいつの間にか埋め立てて、軍事基地化してしまったのはご承知の通りです。

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(写真 軍事基地化されたファイアリー・クロス礁)

中国については大量に書いていますから、そちらをご覧ください。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-1ebd.html

そして今やもっとも熾烈な戦闘空間は、米中間の電子上のサイバー戦争てす。

サイバー戦争に至っては、前線も後方もあったもんじゃありません。

これらすべての現象が、20世紀末から21世紀に入って立て続けに起きました。

つまり、日本を囲む国際軍事環境は急激に変化し、それに対応して「軍事における革命」(RMA)といわれる新たな対処が生まれました。
軍事における革命 - Wikipedia

「軍事における革命」は単に技術的なものに止まらず、テロや紛争などの脅威に対して国際社会が軍隊を出し合って、ひとつの大きな集団を作り対抗しようとする所まで進んでいます。

井上さんはいまだに、「対米従属の肥大化」という古くさい左翼用語を使っていますが、現代の<戦争>はそんなに分かりやすいものではありません。

具体的には、現代の戦争は各国の軍隊を、ひとつの指揮・情報・命令系統に束ねて、ネットワークでつなぎ、ひとつのユニット単位で行動します。

日本国内で考えられているように、ここまでが多国籍軍、ここからが後方支援の自衛隊という線引き自体が、前世紀の遺物なのです。

おそらく井上氏は、これら現代の<戦争>の動向をまったく学んでいないはずです。

学んでいればのんきに、「集団的自衛権は国連のみに認める」といったレトロなことを言えるはずがありません。

そのPKO自体も第2世代PKOとして、かつてのPKF的な任務に変化してきています。

現代は大きな流れが、渦を巻いて急激に変化する時期にあたっています。

このような時期に1952年の現実である、専守防衛明記憲法など、新たに作ってどうするのですか。

日本国憲法を改憲するなら、新たな「縛り」を作る井上流9条削除論ではなく、この国際情勢の変化にいかようにも対応できる柔軟なものでなくてはなりません。

経済と安全保障は生ものです。

憲法にこまかく書着込むもんじゃないのです。

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コメント

いきなり憲法問題から逸脱しちゃいますけど…

冷戦崩壊してアメリカ1強「世界の警察官byパパ・ブッシュ」になって湾岸戦争で圧勝。実はこの時だけが絶好調でソマリアで「無法地帯と化した崩壊国家」で米軍はどうなったか・・・ハリウッドでは早々に「ブラックホーク・ダウン」なんて映画も作られたのに、軍は教訓を学んでませんねえ。もちろん米政府も。
もう四半世紀経つのに。

実際、アフリカや中東なんかアメリカが転覆仕掛けて援助→カオスとテロ→米軍投入→大火傷のマッチポンプの繰り返しです。何やってんだか。。で、投げ出して引こうとするとISみたいなのがどんどん出てくるという。

サイバー空間では先日米海軍の個人データ12万件流出が発覚したばかりです。

おはようございます。

現代の戦争のやり方というか流れ、かなり変化していますよね。
私含めて一般の素人からみたら、米中のサイバー戦なんてまるで空想ゲームにしか見えません。
実際、世界中のサイバー攻撃が見えるサイトがあって、中国大陸からアメリカ大陸方面への攻撃の流れがすごいのですが、どう見ても現実世界の出来事だと思えないのです。そのくらい変化が激しい。

あと、
>ロシアはウクライナ紛争において、この浸透戦術とロシア系住民による住民投票を絡み合わせています。

>ちなみに、私は中国の沖縄に対する攻勢は、この浸透と住民投票という戦法を使うと思っています。

私も二年前の紛争時点でそのことが気になっていました。
当事者の沖縄の人たちはその辺り、気づいているのかな?それも気になります。


「平和を欲するならば戦争を理解せよ。」
リデル・ハート卿の言葉です。

語り継がれている戦争の悲惨さなどは、そのうちの一側面にすぎないことを、9条教の人たちはわからないでしょうね。

ベトナム戦争時の左翼運動にはKGBからの資金流入されています。現在の沖縄の活動にもそりゃ中共から資金流入がなされているでしょう。

また、沖縄財界にはそれを当て込んだ人もいるでしょう。

利権の対立に他なりません。

でもって、翁長さんは沖縄関係予算、3210億円の満額確保を要請したようですね。

ニュースコメント欄は呆れる声で溢れています。

憲法は改正されるでしょうけれど、もっと早くなんとかならないかと焦れます。

中共から資金流入って具体的にはどのように?
公安や内閣調査室、および国税庁はザルか?

オナガが予算を満額で要求するのが癪ならキミんとこで「打出の小槌」の迷惑施設を誘致したまへ。

 ここ数日で、憲法の問題は大分理解が進んだ気がします。管理人さんはじめ皆様に感謝申し上げます。

 私の理解は、

0 左右ともに解釈改憲をしている。

0 井上氏は解釈改憲の立場には立たない。

0 井上氏は、すべては9条に問題の根源はある。だから、9条を削除し、憲法前文に専守防衛の概念を記述することにより、これを基に現実的な議論をすべきである。

 と、なりますが、おかしなところは是非ご指摘ください。

> このような時期に1952年の現実である、専守防衛明記憲法など、新たに作ってどうするのですか。 

 このお言葉ですが、井上東大教授を叱っているかのようにも受け取れます。しかし、「ありんくりん」さんの見方が正しいと私は思います。東大教授も正しくないことがあるということですね。

>ベトナム戦争時の左翼運動にはKGBからの資金流入されています。現在の沖縄の活動にもそりゃ中共から資金流入がなされているでしょう。
また、沖縄財界にはそれを当て込んだ人もいるでしょう。利権の対立に他なりません。

中国としては改憲などされたくないから、護憲派にも相当な資金が流されているのでしょうかね。
国民も9条改正(削除)には積極的ではありませんから、中国の作戦はある程度成功しているとも言えます。

そして、沖縄叩きをする知識人やネットを中心に嫌沖を煽り、叩かれた沖縄も反発して本土と沖縄を分断。
沖縄世論を独立に向かわせると。
9条改正は避けて通れないものですが、国民の多くはさほど危機感もなく、日米安保で今まで通り平和を維持できると考えているようです。
嫌沖が浸透していけば、国民もまた沖縄などどうでもいい、となるのでしょう。

チューゴクの珊瑚泥棒すらまともに追っ払えない国がすでに骨抜きになった9条を改憲した所で何ができるのやら。
むしろ現政権の改憲における本丸は人権条項じゃねーの。

かつてこの国を亡国の淵に追いやったのが何であったのか改めて考えてみるのも必要かと。
何時の世も徒に外の脅威を煽る輩にご用心!

鉄槌氏。長いので記事にしました。

昨日、本を買ってきたので読んでますが、まだ半分で止まってます。きちんと読んでから書きたいと思いますが、9条を削除した場合と、改正するなら専守防衛を明記しろというのを足し合わせて解釈するのはちょっと違うのではないかと感じてます。

詳細は読み終わってから。少し時間が掛かると思いますが。

ひこ~さん。まぁ私にはそう読めてしまうということです。

というのは、井上氏の論をこれ以上すすめると、ほぼ保守派の改憲に近似してしまうからです。

井上氏は彼の政治的スタンスと、学的立場にバインドされてしまったのだと思います。
また井上氏は本で受ける印象と、メディアでの言説が被妙にズレている気がします。

いずれにしても、その矛盾までふくめて、私は井上氏を大変に誠実で真摯な学者であると思っています。
並みの学者ではできないことです。

田浜雪夫氏へ。しています。先日HN「田中」に書いたことをもう一回乗せます。

なお、この人はさんざん荒らしてきていて、今日の一本目記事にも殴り込みをかけてきました。
そのために一本目は、記事がメモていどだったこともあって、全削除しました。

          ~~~

「国民」が負担を背負っていないだって?
国民っ何?
本土の国民のこと?

私は神奈川出身だが、沖縄県とほぼ同じ面積に、米海軍最大級の横須賀軍港、ここは米国にとって死活的に戦略要地だ。

また横須賀とセットで、米海軍海外の最大級航空基地である厚木基地。

私は厚木基地のすぐそばで20歳まで育った。
ジェット戦闘機の爆音が「音」ではなく「衝撃」だということ、夜のエンジンテストの音で家が震えること。
沖縄に行って、なんて静かなんだと思ったよ。

横須賀・厚木に付帯する様々な米軍施設群。
同じく最大級のオイルターミナルの鶴見、同じく最大級の弾薬庫などなどが、国道16号線沿いに文字通りひしめいているよ。

ちなみに国道16号は北上すればすぐに県境を越えて都下の横田基地だ。
クソデカイぞ。

一度神奈川の横須賀から国道16号に乗って北上してみたら。
「国民が負担する意志がない」なんて戯れ言言えなくなるから。

だから基地負担を見るなら、一定の半径を描いてエリアで見ねばダメ。
住民にも米軍にも県境なんか見えないからね。

いちおう神奈川県のデータは以下の通り。

●神奈川県の米軍基地 ※単位ヘクタール コンマ以下切り捨て
・根岸住宅地区  ・・42h
・横浜ノース・ドック・・・52
・上瀬谷通信施設・・・242
・鶴見貯油施設・・・18
・横浜ノースドック・・52
・吾妻倉庫地区 ・・・80
・横須賀海軍施設・・・236
・浦郷倉庫地区    ・・・19
・池子住宅地区   ・・・288
・相模補給廠     ・・・214
・相模住宅地区   ・・・593
・キャンプ座間   ・・・234
・厚木海軍飛行場・・・506
・長坂小銃射撃場・・・9
----------------
合計13施設    2585h  

関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-9963.html

沖縄は大変だと思いますが、本土が負担していないとか、「金がほしいならお前の県でも誘致しな」という感情的な言論はナンセンスです。

○管理人様
井上先生の主張は、86~88ページの「二項削除論との違い」に書いてあることが正しいと私は感じてます。
ここでは「保守派で集団的自衛権OKの人が第二項を削除するなら、やはりどこかに集団的自衛権OKと明記すべきでしょう。それが私の「三善」の戦略になります。」とも書いてます。
更に矛盾してると思われますか?

「専守防衛」を明記するのは、「専守防衛という新9条的な精神で第二項を削除するなら」という前提に立った上の言葉だと。

結論は最後の「憲法の解釈論争で、安全保障をめぐる実質的議論を棚上げさせてはならない。」。
つまりは、9条を残すなら解釈憲法の余地を無くせと言ってるように私は捉えてます。

原則は、9条は全て削除し、安全保障政策のような具体策は憲法に書くな。
ということだと私は理解しました。

この件に関しての私の主張は終わりにしたいと思います。私は井上先生に近い考えだということがわかりました。徴兵制を除いて。

良い本を紹介していただきありがとうございましたp(^-^)q

ひこ~さん。
井上さんのかいている「集団的自衛権」とは、安保や国連のPKOのことです。

おっしゃるように「改釈改憲をなくせ」というのは一貫した氏の持説で、まったく同意しますが、では9条を削除した後はというと、彼の持論がどこか透けて見えてしまうのです。

彼は、「民主主義の闘技場で決せよ」とまでいうわけですから(まことにその通りですが)、そこで寸止めにしてくれたら嬉しかったのですが。民主主義の格闘技場とは選挙です。
メディアのように選挙で「改憲勢力が上回った間」と言って金切り声をあげるのはいかがなものでしょうか。
それが「民意」なのです。

自分が勝てば「民意」、負けると「少数派の意見の圧殺だ」などというからおかしくなります。
またそれを無視して憲法学者という「聖職者」が登場して、ご託宣をするのがおかしいということです。

井上氏の素晴らしさは、おっしゃるように憲法論議と安全保障論議を切り離せと言っていることです。
まったくそのとおりです。
この混同は、憲法学者が特定の政党のイデオロギー製造装置となってしまったためです。

正直言って、井上氏は混乱していると思っています。
それは研究者として、人として誠実だからです。
誠実であるとは言い切れない聖職者たちは、あいもかわらずご託宣を唱えています。
彼らには矛盾がありません。
なぜなら、それは信仰だからです。

安全保障や経済は生ものです。
どうなるかわからないものを最高法規でしばってはなりません。
かといって憲法で無規制なのも困るから、最低限だけ書けと私は思っています。


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